JP2014156382A - カーボンナノチューブの剥離方法、剥離装置及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】効率よくカーボンナノチューブを剥離する。
【解決手段】本発明に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、少なくとも一部を湾曲させたワイヤ11を、基材20上に固定されたカーボンナノチューブに接触させ、ワイヤ11と基材20とを相対移動させて、カーボンナノチューブを基材20から剥離する剥離工程を包含している。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブを基材から剥離する剥離方法及び剥離装置、並びに、当該剥離装置を備えたカーボンナノチューブの製造装置に関する。
従来、カーボンナノチューブを製造する方法(以下、「CNT」とも称する。)として、基材上にCNTの原料ガスを供給して堆積させるCVD法等が知られている。このように基材上に形成されたCNTを、基材上から剥離して収集する方法として、例えば、特許文献1〜4に記載された方法が知られている。
特許文献1には、基材上のCNTをスクレーバにより掻き落として収集することが記載されている。特許文献2には、基材上のCNTにガスを吹き付け、ガス圧によりCNTを基材上から剥離して収集することが記載されている。
特許文献3には、基材上のCNTに接着させた接着層を吸引することによりCNTを基材上から剥離して収集することが記載されている。特許文献4には、基材上のCNTに高温高圧水を噴射することによりCNTを基材上から剥離して開封することが記載されている。
特開2005−067916号公報(2005年3月17日公開) 特開2007−91482号公報(2007年4月12日公開) 特開2011−201732号公報(2011年10月13日公開) 特開2011−084446号公報(2011年4月28日公開)
基材上に堆積させてCNTを製造する場合、基材上に固定されたCNTを効率よく剥離及び収集することが求められている。
特許文献1に記載されたように、スクレーバによりCNTを掻き落とす場合、基材が平坦でなければ効率よくCNTを掻き落とすことができず、剥離ムラが生じてしまう。したがって、適用可能な基材の形状が限定されるのみならず、CNTの成長過程において基材に反り等が生じた場合にも対応できない。また、スクレーバによりCNT及び基材が傷つく場合がある。
また、特許文献2に記載されたように、ガス圧によりCNTを剥離する場合、CNTが飛散してしまい、効率よく収集することができず、剥離ムラが生じてしまう。さらに、特許文献3に記載されたように、CNTに接着させた接着層を吸引してCNTを剥離する場合、接着剤及びこれを溶解させる溶剤等の不純物が混入するという問題がある。また、特許文献4に記載されたように、高温高圧水を噴射してCNTを剥離する場合、剥離処理を行う密閉空間、高温高圧水の供給手段等を備えた、大型で複雑な装置が必要である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、CNTが形成された基材の形状や反り等の影響を受けることなく、簡易な手段により効率よく基材からCNTを剥離することが可能なCNTの剥離方法及び剥離装置、並びに、これを備えたCNTの製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、線状の弾性部材の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を、基材上に固定されたカーボンナノチューブに接触させ、当該弾性部材と当該基材とを相対移動させて、カーボンナノチューブを基材から剥離する剥離工程を包含していることを特徴としている。
上記の構成によれば、湾曲部を介してカーボンナノチューブに接触した弾性部材と基材との相対移動により生じる摩擦力によって、基材からカーボンナノチューブを効率よく剥離することができる。また、線状の弾性部材の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を基材上のカーボンナノチューブに接触させるので、弾性部材とカーボンナノチューブとの接触部分が線状になり、接触部分が点状の場合と比較して、剥離ムラを低減することができる。さらに、弾性部材は、基材に押し付けることにより変形させることが可能であり、表面に起伏のある基材、反りが生じた基材等、種々の基材の表面形状に適合させることができるため、基材の表面形状に影響されることなく、ムラなくカーボンナノチューブを剥離することが可能である。
また、線状の弾性部材と基材との接触面積はブレード等と比較して小さいため、接触圧力が高く力が分散しにくいことにより、ムラなくカーボンナノチューブを剥離することができる。さらに、線状の弾性部材と基材との接触面積はブラシ等と比較して大きいため、複数の弾性部材を用いる場合にその設置密度を低くすることが可能であり、剥離したカーボンナノチューブが複数の弾性部材間に詰まることによる収集効率の低下を防ぐことができる。
また、本発明に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、上記剥離工程において、上記弾性部材及び上記基材の少なくとも一方を往復運動させながら、当該往復運動方向に交差する方向に、上記弾性部材と上記基材とを相対移動させることが好ましい。
上記の構成によれば、弾性部材の湾曲部をカーボンナノチューブに接触させて、弾性部材と基材とを相対移動させるときに、弾性部材及び基材の少なくとも一方を往復運動させる。これにより、より効率よく基材からカーボンナノチューブを剥離することができる。このとき、弾性部材と基材との相対移動方向が、弾性部材及び基材の少なくとも一方の往復移動方向に交差する方向であるため、さらに効率よく基材からカーボンナノチューブを剥離することができる。
さらに、本発明に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、上記剥離工程において上記基材から剥離されたカーボンナノチューブを吸引する収集工程をさらに包含することが好ましい。
上記の構成によれば、基材から剥離されたカーボンナノチューブを吸引することによって収集するため、より効率よくカーボンナノチューブを収集することができる。
本発明に係るカーボンナノチューブの剥離装置は、少なくとも一部に湾曲部を有する線状の弾性部材を備えた剥離手段と、上記湾曲部を、基材上に固定されたカーボンナノチューブに接触させて、上記弾性部材と当該基材とを相対移動させる駆動手段とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係るカーボンナノチューブの剥離方法と同様の効果を奏する。
本発明に係るカーボンナノチューブの製造装置は、本発明に係るカーボンナノチューブの剥離装置を備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、効率よくカーボンナノチューブを製造することができる。
本発明は、線状の弾性部材の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を、基材上に固定されたカーボンナノチューブに接触させ、当該弾性部材と当該基材とを相対移動させて、カーボンナノチューブを基材から剥離するので、カーボンナノチューブが形成された基材の表面形状に影響されることなく、簡易な手段で効率よくカーボンナノチューブを剥離することができる。
本発明の一実施形態に係る剥離方法において用いられる弾性部材の例を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る剥離方法を説明する模式図である。 本発明の他の実施形態に係る剥離方法を説明する模式図である。 本発明の一実施形態に係る剥離装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る製造装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る剥離方法において用いられるコルゲート形状の基材の例を模式的に示す図である。
〔剥離方法〕
本発明に係るCNTの剥離方法は、CNTを基材から剥離する剥離工程を包含している。
<CNT>
剥離方法において剥離するCNTは、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」とも称する。)から成長した多数のCNTが特定の方向に配向したCNT配向集合体である。
<基材>
基材は、基板の上にCNTの成長反応の触媒を担持してなるものである。基材を構成する基板は、その表面にCNTの触媒を担持することのできる部材であればよく、400℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。その材質としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、及びアンチモンなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金及び酸化物;シリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイト、及びダイヤモンドなどの非金属;並びにセラミックなどを例示できる。金属はシリコン及びセラミックと比較して、低コストであるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金等は好適である。
基材の形態は、平板状、薄膜状、ブロック状、コルゲート形状等が挙げられる。ここで、コルゲート形状とは、基材の側面から観察したときの断面形状が、山部及び谷部が交互に並んだ波状の形状を表すものである。断面形状の種類(波形)としては、図6に示すように、三角波、矩形波、円弧波、正弦波、のこぎり波、台形波等の凹凸形状を挙げることができる。なお、基材の形状及び大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基材の一辺の大きさに特に制限はないが、CNTの量産性の観点から、大きいほど望ましい。また、コルゲート形状は、基材を設置する面積に対しCNTを成長させる表面積を広くできるという観点から好ましい。
(剥離工程)
剥離工程においては、線状の弾性部材の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を、基材上に固定されたCNTに接触させ、当該弾性部材と当該基材とを相対移動させることによって、CNTを基材から剥離する。図1及び2を参照して、剥離工程の例について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る剥離方法において用いられる弾性部材の例を示す模式図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る剥離方法を説明する模式図である。
図1及び2に示すように、剥離工程においては、剥離部10に取り付けられたワイヤ(弾性部材)11を用いて、基材20上に固定されたCNT配向集合体21を剥離する。なお、図1及び2においては、線状の弾性部材がワイヤ11であり、基材20がコルゲート形状である場合を例として示しているが、本発明はこれに限定されない。
<剥離部10>
剥離部10は、例えば図1に示すように、支持棒に設けられた複数の孔のそれぞれに、リング状のワイヤ11を取り付けて構成されている。リング状のワイヤ11の弧が、湾曲部を構成している。ワイヤ11は、リング状でなくてもよく、半月状及び扇形状等、少なくとも一部に湾曲部を有していればよい。
<ワイヤ11>
ワイヤ11がリング状である場合、その径は、基材20の形状により決定することができる。例えば、基材20がコルゲート形状であるとき、ワイヤ11の径は、基材20の谷部の平均深さよりも大きいことが好ましく、平均深さの2倍以上であることがより好ましい。このようにワイヤ11の径を設定することによって、表面が平坦でないコルゲート形状の基材20に固定されたCNTに対しても、ワイヤ11を好適に接触させることが可能であり、CNTを効率よく剥離することができる。また、基材20が平板状であるとき、ワイヤ11の径は、5mm以上、50mm以下であることが好ましく、10mm以上、20mm以下であることがより好ましい。これにより、CNTを効率よく剥離することができる。ワイヤ11がリング状でない場合は、その湾曲部の曲率半径をワイヤ11がリング状の場合と同様とすればよい。
ワイヤ11は支持棒に複数取り付けられている。これにより多線状にCNTに接触することができ、より効率よくCNTを剥離することができる。このとき、ワイヤ11の配列間隔を適度に疎にすることによって、剥離したCNTがワイヤ11間に詰まることを防ぎ、CNTの収集率の低下を防ぐことができる。
ワイヤ11の配列間隔は、基材20の形状により決定することができる。例えば、基材20がコルゲート形状であるとき、ワイヤ11の間隔は、基材20の谷部間の平均間隔よりも小さいことが好ましく、谷部間の平均間隔の2/3以下であることがより好ましい。また、基材20が平板状であるとき、ワイヤ11の間隔は、5mm以上、20mm以下であることが好ましく、7mm以上、15mm以下であることがより好ましい。
ワイヤ11の材質としては、基材20からCNT配向集合体21を剥離するに適した弾性を有している限り特に限定されないが、例えば、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、塩ビ(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテフタレート(PBT)、テフロン(登録商標)、アラミド繊維、ポリフェレンサルファイド、及び、モノエイト等の化学繊維、硬鋼、鉄、ステンレス、超弾性金属、形状記憶合金、及び、ゴムメタル等の金属、動物繊維、並びに、植物繊維等が挙げられ、PP、PET、又は、PBTであることが好ましい。
ワイヤ11のヤング率は、基材20からCNT配向集合体21を剥離するに適していれば特に限定されないが、0.1GPa以上、200GPa以下であることが好ましく、1GPa以上、100GPa以下であることがより好ましい。また、ワイヤ11は完全弾性体に近い物質により形成されていることがさらに好ましい。このようにワイヤ11が弾性を有していることによって、基材20がどのような形状であっても、ワイヤ11を基材20に押し付けることによってワイヤ11が追随変形し、好適にCNTに接触させることができる。また、CNTを剥離した後には、ワイヤ11が元の形状に戻る。
ワイヤ11の太さは特に限定されないが、0.05mm以上、1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上、0.6mm以下であることがより好ましい。
剥離工程においては、まず、図2中(a)に示すように、剥離部10のワイヤ11を基材20に押し付けてCNT配向集合体21に接触させる。ここで、ワイヤ11を基材20に押し付ける時の圧力は、ワイヤ11を固定する支持棒等の固定治具の単位長さ当たりの押し付け力として、0.1N/cm以上、10N/cm以下であることが好ましく、0.2N/cm以上、1N/cm以下であることがより好ましい。
そして、図2中(b)に示すように、ワイヤ11及び基材20の少なくとも一方を移動させて、ワイヤ11と基材20とを相対移動させることによって、CNT配向集合体21を基材20から剥離する。
このように、CNTに接触したワイヤ11と基材20との相対移動により生じる摩擦力によって、基材20からCNT配向集合体21を効率よく剥離することができる。また、ワイヤ11の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を基材20上のCNTに接触させるので、ワイヤ11とCNTとの接触部分が線状になり、接触部分が点状の場合と比較して、剥離ムラを低減することができる。さらに、ワイヤ11は、基材20に押し付けることにより変形させることが可能であり、表面に起伏のある基材、反りが生じた基材等、種々の基材の表面形状に適合させることができるため、基材の表面形状に影響されることなく、ムラなくCNTを剥離することが可能である。
また、ワイヤ11と基材20との接触面積はブレード等と比較して小さいため、接触圧力が高く力が分散しにくいことにより、ムラなくCNTを剥離することができる。さらに、ワイヤ11と基材20との接触面積はブラシ等と比較して大きいため、複数のワイヤ11を用いる場合にその設置密度を低くすることが可能であり、剥離したCNTがワイヤ11間に詰まることによる収集効率の低下を防ぐことができる。
剥離工程においては、ワイヤ11及び基材20の少なくとも一方を往復運動させながら、当該往復運動方向に交差する方向に、ワイヤ11と基材20とを相対移動させてもよい。すなわち、図2中(b)に示すように、例えば、基材20を固定し、ワイヤ11とCNTを接触させた状態でワイヤ11を横方向に振動させながら、振動方向に交差する縦方向にワイヤ11をスライドさせる。これにより、より効率よく基材20からCNTを剥離することができる。
ここで、ワイヤ11を振動させる速度は10〜1000mm/秒であることが好ましく、30〜300mm/秒であることがより好ましい。また、ワイヤ11を振動させる速度はワイヤ11と基材20とを相対移動させる速度よりも早いことが好ましく、1〜20倍速いことがより好ましく、1〜5倍速いことがさらに好ましい。これにより、より効率よく基材20からCNTを剥離することができる。
(収集工程)
本発明に係るCNTの剥離方法は、剥離工程において基材20から剥離されたCNTを吸引する収集工程をさらに包含していてもよい。収集工程においては、図3に示すように、ワイヤ11をCNT配向集合体21に接触させ、ワイヤ11と基材20とを相対移動させることによって剥離したCNTを吸引部30から吸引することによって収集する。吸引部30としては、従来公知の吸引装置を用いることが可能であり、剥離したCNTを吸引するノズル、及び、ノズルに接続された吸引ポンプ等により構成してもよい。
収集工程において、基材20から剥離したCNTを吸引することによって収集するため、より効率よくCNTを収集することができる。
〔剥離装置〕
本発明に係るCNTの剥離装置は、少なくとも一部に湾曲部を有する線状の弾性部材を備えた剥離部(剥離手段)と、上記湾曲部を、基材上に固定されたCNTに接触させて、上記弾性部材と当該基材とを相対移動させる駆動部(駆動手段)とを備えている。
剥離装置について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る剥離装置を示す模式図である。なお、剥離装置における剥離部の一実施形態は、上述した剥離部10であるため、剥離部の詳細については、省略する。
図4に示すように、剥離装置は、ワイヤ11を備えた剥離部、及び、剥離部を駆動する駆動部40を備えている。駆動部40は、ワイヤ11を振動させるアクチュエータ41と、ワイヤ11を基材20に押し付けるシリンダーピストン42と、ワイヤ11をスライドさせるアクチュエータ43とを有している。剥離装置は、剥離部が剥離したワイヤ11を吸引する吸引部30をさらに備えていてもよい。吸引部30は、吸引収集機31に接続された吸引ノズルであってもよい。
剥離装置によりCNTを剥離するとき、まず、CNT配向集合体21が成長した基材20を、剥離装置が設けられた密閉空間内のテーブル上に載置する。アクチュエータ43を、ガイドレールに沿って移動させることによって、テーブル上に載置された基材20の所望の位置にワイヤ11を移動させる。そして、シリンダーピストン42により、ワイヤ11の湾曲部を基材20に押し付ける。このとき、ワイヤ11はその弾性により、基材20表面に追随変形し、CNTに適切に接触する。
ワイヤ11をCNTに接触させた状態で、アクチュエータ41によりワイヤ11を振動させる。そして、ワイヤ11を振動させながら、アクチュエータ43をガイドレールに沿って移動させることによって、ワイヤ11の振動方向に交差する方向にワイヤ11をスライドさせる。このようにワイヤ11と基材20とを相対移動させることによって、基材20からCNTを剥離することができる。剥離したCNTを吸引部30により吸引し、吸引収集機31に収集する。
このように、剥離装置によれば、CNTに接触したワイヤ11と基材20との相対移動により生じる摩擦力によって、基材20からCNT配向集合体21を効率よく剥離することができる。また、ワイヤ11の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を基材20上のCNTに接触させるので、ワイヤ11とCNTとの接触部分が線状になり、接触部分が点状の場合と比較して、剥離ムラを低減することができる。さらに、ワイヤ11は、基材20に押し付けることにより変形させることが可能であり、表面に起伏のある基材、反りが生じた基材等、種々の基材の表面形状に適合させることができるため、基材の表面形状に影響されることなく、ムラなくCNTを剥離することが可能である。
また、ワイヤ11と基材20との接触面積はブレード等と比較して小さいため、接触圧力が高く力が分散しにくいことにより、ムラなくCNTを剥離することができる。さらに、ワイヤ11と基材20との接触面積はブラシ等と比較して大きいため、複数のワイヤ11を用いる場合にその設置密度を低くすることが可能であり、剥離したCNTがワイヤ11間に詰まることによる収集効率の低下を防ぐことができる。
〔CNT製造装置〕
本発明に係るCNT製造装置は、本発明に係るCNTの剥離装置を備えている。したがって、効率よくCNTを製造することができる。CNT製造装置について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る製造装置を示す模式図である。なお、CNT製造装置100が備える剥離装置の一実施形態は、上述した剥離装置であるため、剥離装置の詳細については省略する。なお、一実施形態において、剥離装置はCNT製造装置100における搬送ユニット6の最も下流である出口パージ部5の外側に配置されていればよい。
<CNT配向集合体>
まず、CNT製造装置100により得られるCNTについて説明する。
CNT製造装置100において製造されるCNTは、基材20から成長した多数のCNTが特定の方向に配向した構造体(以下、「CNT配向集合体」ということがある)を形成することが好ましい。CNTの好ましい比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、600m2/g以上であり、より好ましくは、800m2/g以上である。比表面積が高いほど、金属などの不純物、若しくは炭素不純物を重量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができるので好ましい。
重量密度は0.002g/cm3以上、0.2g/cm3以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm3以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。つまり、重量密度が0.2g/cm3以下とすることで、均質な分散液を得ることが容易となる。また重量密度が0.002g/cm3以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
特定方向に配向したCNT配向集合体は高い配向度を有していることが好ましい。高い配向度とは、
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が、第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ第1方向からの反射強度が、第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在すること。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現すること。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1より小さいこと。より好ましくは0.25以上、1以下であること。
以上の1.から3.の少なくともいずれか1つの方法によって評価することができる。また、前述のX線回折法において、単層CNT間のパッキングに起因する(CP)回折ピーク及び(002)ピークの回折強度と、単層CNTを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行と垂直との入射方向の回折ピーク強度との度合いが互いに異なるという特徴も有している。
CNT配向集合体が配向性、及び高比表面積を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上、10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、比表面積を向上できる。
CNTのG/D比は好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
<浸炭防止層>
基材20の表面及び裏面のうち少なくともいずれか一方には、浸炭防止層が形成されていてもよい。表面及び裏面の両面に浸炭防止層が形成されていることが望ましい。この浸炭防止層は、CNTの生成工程において、基材20が浸炭されて変形することを防止するための保護層である。
浸炭防止層は、金属又はセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料であることが好ましい。金属としては、銅及びアルミニウム等が挙げられる。セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物が挙げられ、なかでも浸炭防止効果が高いことから、酸化アルミニウム、酸化ケイ素が好ましい。
<触媒>
触媒基材において、基材20上(基材20上に浸炭防止層が形成されている場合には浸炭防止層上)には、触媒が担持されて触媒層が形成されている。触媒としては、CNTの製造が可能であればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、及びこれらの塩化物及び合金、またこれらが、さらにアルミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化し、又は層状になっていてもよい。例えば、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、及びアルミナ−鉄−モリブデン薄膜、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。触媒の存在量としては、CNTの製造が可能な範囲であればよい。例えば鉄を用いる場合、製膜厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
基板表面への触媒の形成は、ウェットプロセス又はドライプロセスのいずれを適用してもよい。具体的には、スパッタリング蒸着法や、金属微粒子を適宜な溶媒に分散させた液体の塗布・焼成による方法などを適用することができる。また周知のフォトリソグラフィーやナノインプリンティング等を適用したパターニングを併用して触媒を任意の形状とすることもできる。
本発明の製造方法においては、基板上に成膜する触媒のパターニング及びCNTの成長時間により、薄膜状、円柱状、角柱状、及びその他の複雑な形状をしたものなど、CNT配向集合体の形状を任意に制御することができる。特に薄膜状のCNT配向集合体は、その長さ及び幅寸法に比較して厚さ(高さ)寸法が極端に小さいが、長さ及び幅寸法は、触媒のパターニングによって任意に制御可能であり、厚さ寸法は、CNT配向集合体を構成する各CNTの成長時間によって任意に制御可能である。
<触媒形成ウェットプロセス>
触媒層を形成するウェットプロセスは、触媒となる元素を含んだ金属有機化合物および/または金属塩を有機溶剤に溶解したコーティング剤を基材上へ塗布する工程と、その後加熱する工程から成る。コーティング剤には金属有機化合物及び金属塩の縮合重合反応を抑制するための安定剤を添加してもよい。
塗布工程としては、スプレー、ハケ塗り等による塗布する方法、スピンコーティング、ディップコーティング等、いずれの方法を用いてもよいが、生産性および膜厚制御の観点からディップコーティングが好ましい。
塗布工程の後に加熱工程を行うことが好ましい。加熱することで金属有機化合物及び金属塩の加水分解及び縮重合反応が開始され、金属水酸化物及び/又は金属酸化物を含む硬化被膜が基材表面に形成される。加熱温度はおよそ50℃以上、400℃以下の範囲で、加熱時間は5分以上、3時間以下の範囲で、形成する触媒薄膜の種類によって適宜調整することが好ましい。
例えば、触媒として、アルミナ−鉄薄膜を形成する場合、アルミナ膜を形成した後に鉄薄膜を形成する。
アルミナ薄膜を形成するための金属有機化合物及び/又は金属塩としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等が挙げられる。これらは、単独あるいは混合物として用いることができる。アルミニウムを含む金属有機化合物としては他に、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)等の錯体が挙げられる。金属塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらのなかでも、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。
鉄薄膜を形成するための金属有機化合物及び/又は金属塩としては、鉄ペンタカルボニル、フェロセン、アセチルアセトン鉄(II)、アセチルアセトン鉄(III)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(II)、トリフルオロアセチルアセトン鉄(III)等が挙げられる。金属塩としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄等の有機酸鉄等が挙げられる。化合物1種又は2種以上混合してもよい。これらのなかでも、有機酸鉄を用いることが好ましい。
安定剤としては、β−ジケトン及びアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。β−ジケトン類では、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオルアセトン、フロイルアセトン及びトリフルオルアセチルアセトン等があるが、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルを用いることが好ましい。アルカノールアミン類ではモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等があるが、第2級又は第3級アルカノールアミンであることが好ましい。
有機溶剤としては、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル類、炭化水素類等種々の有機溶剤が使用できるが、金属有機化合物及び金属塩の溶解性がよいことから、アルコール又はグリコールを用いることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が、取り扱い性、保存安定性といった点で好ましい。
次に、CNT製造装置100の説明と共に、CNT製造装置100を用いてCNTを製造する製造方法についても説明する。CNT製造装置100は、表面に触媒を担持した基材20上にCNTを成長させる装置である。
CNT製造装置100は、入口パージ部1、フォーメーションユニット2、ガス混入防止手段101〜103、成長ユニット3、冷却ユニット4、出口パージ部5、搬送ユニット6、及び、接続部7〜9を備えている。
フォーメーションユニット2はフォーメーション炉2aを、成長ユニット3は成長炉3aを、及び、冷却ユニット4は冷却炉4aを、それぞれ備えている。フォーメーション炉2a、成長炉3a、及び、冷却炉4aの各炉内空間は、接続部7〜9によって空間的に連結された状態になっている。
(入口パージ部1)
CNT製造装置100の入口には入口パージ部1が設けられている。入口パージ部1とは、基材20の入口から装置炉内へ外部空気が混入することを防止するための装置一式のことである。入口パージ部1は、装置内に搬送された基材20の周囲環境をパージガスで置換する機能を有する。
入口パージ部1は、パージガスを上下からシャワー状に噴射するガスカーテン構造となっている。これにより、入口からCNT製造装置100内に外部の空気が混入することを防止している。入口パージ部1は、例えば、パージガスを保持するための炉又はチャンバ、及び、パージガスを噴射するための噴射部等により構成されてもよい。
パージガスとしては不活性ガスが好ましく、特に安全性、コスト、及び、パージ性等の点から、窒素であることが好ましい。
本実施形態のように搬送ユニット6がベルトコンベア方式である場合など、基材20の入口が常時開口しているような場合には、入口パージ部1は、上述したガスカーテン構造であることが好ましい。この構成により、基材20の入口からCNT製造装置100の内部に、外部の空気が混入することを防止することができる。
(フォーメーションユニット2)
フォーメーションユニット2とは、フォーメーション工程を実現するための装置一式のことである。フォーメーションユニット2は、基材20の表面に形成された触媒の周囲環境を還元ガス環境にすると共に、触媒及び還元ガスのうち少なくとも一方を加熱する機能を有する。
フォーメーションユニット2は、還元ガスを保持するためのフォーメーション炉2aと、還元ガスをフォーメーション炉2a内に噴射するための還元ガス噴射部2bと、触媒及び還元ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター2cと、フォーメーション炉2a内のガスを排気するための排気フード2dとにより構成される。
還元ガス噴射部2bには、複数の噴射口を備えるシャワーヘッドを用いてもよい。かかる還元ガス噴射部2bは、基材20の触媒形成面を臨む位置に設けられている。臨む位置とは、各噴射口における噴射軸線と基材20の法線との成す角が0以上90°未満となる位置である。つまり還元ガス噴射部2bにおける噴射口から噴出するガス流の方向が、基材20に概ね直交するようにされている。
還元ガス噴射部2bにこのようなシャワーヘッドを用いれば、還元ガスを基材20上に均一に散布することができ、効率良く触媒を還元することができる。その結果、基材20上に成長するCNTの均一性を高めることができ、かつ還元ガスの消費量を削減することもできる。
ヒーター2cとしては加熱することができるものであれば限定されず、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーターなどが挙げられる。加熱の温度としては400℃から1100℃の範囲が好ましい。
<還元ガス>
還元ガスは、一般的には、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態である微粒子化の促進、及び、触媒の活性向上のうち少なくとも一つの効果を持つ、気体状のガスである。還元ガスとしては、例えば、水素ガス、アンモニア、水蒸気、及び、それらの混合ガスを適用することができる。また、これらをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、一般的には、フォーメーション工程で用いるが、適宜成長工程に用いてもよい。
<フォーメーション工程>
フォーメーション工程とは、基材20に担持された触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒及び/又は還元ガスを加熱する工程である。この工程により、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態である微粒子化の促進、及び、触媒の活性向上のうち少なくとも一つの効果が現れる。
フォーメーション工程における触媒及び/又は還元ガスの温度は、好ましくは400℃以上、1100℃以下である。またフォーメーション工程の時間は、3分以上、30分以下が好ましく、3分以上、8分以下がより好ましい。フォーメーション工程の時間がこの範囲であれば、触媒微粒子の粗大化が防止され、成長工程における多層カーボンナノチューブの生成を抑制することができる。
例えば、触媒として鉄を用いる場合、水酸化鉄薄膜又は酸化鉄薄膜が形成され、同時もしくはその後に還元及び微粒子化がおこり、鉄の微粒子が形成される。そして、浸炭防止層の材質がアルミナであり、且つ、触媒金属が鉄である場合、鉄触媒層は還元されて微粒子化し、アルミナ層上にナノメートルサイズの鉄微粒子が多数形成される。これにより触媒はCNTの生産に好適な触媒に調製される。
(成長ユニット3)
成長ユニット3は、成長工程を実現するための装置一式であり、基材20の周囲の環境を原料ガス環境に保持する炉である成長炉3aと、原料ガスを基材20上に噴射するための原料ガス噴射部200と、触媒と原料ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター3bと、成長炉3a内のガスを排気するための排気フード3cとを含んでいる。
成長炉3aとは、成長工程を行うための炉のことであり、基材20上の触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することで、基材20上にCNT配向集合体を成長させるための炉である。
成長工程では、成長炉3a内を移動する基材20に対し、原料ガス噴射部200から原料ガスを噴射することが好ましい。
原料ガス噴射部200及び排気フード3cはそれぞれ少なくとも1つ以上備えられており、全ての原料ガス噴射部200から噴射される全ガス流量と、全ての排気フード3cから排気される全ガス流量は、ほぼ同量又は同量であることが好ましい。このようにすることが、原料ガスが成長炉3a外へ流出すること、及び、成長炉3a外のガスを成長炉3a内に流入させることを防止する。
ヒーター3bとしては、400℃から1100℃の範囲で加熱することができるものが好ましく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーター等が挙げられる。
成長炉3a内で基材20上にCNT配向集合体を成長させるときの、成長炉3a内の圧力としては、102Pa以上、107Pa(100大気圧)以下であることが好ましく、104Pa以上、3×105Pa(3大気圧)以下であることがさらに好ましい。
また、成長炉3aにおいて、CNTを成長させる反応温度は、金属触媒、原料炭素源及び反応圧力等を考慮して適宜定められるが、触媒失活の原因となる副次生成物を排除するための触媒賦活物質の効果が十分に発現する温度範囲に設定することが望ましい。つまり、最も望ましい温度範囲としては、アモルファスカーボン、グラファイト等の副次生成物を触媒賦活物質が除去し得る温度を下限値とし、主生成物であるCNTが触媒賦活物質によって酸化されない温度を上限値とすることである。
<原料ガス>
原料ガス噴射部200から噴射する原料ガスとしては、CNTの原料となる物質であればよく、例えば、成長温度において原料炭素源を有するガスである。例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレン、及び、アセチレン等の炭化水素が好適である。この他にも、メタノール、エタノール等の低級アルコール、及び、アセトン、一酸化炭素等の低炭素数の含酸素化合物でもよい。これらの混合物も使用可能である。また原料ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。
<不活性ガス>
不活性ガスとしては、CNTが成長する温度で不活性であり、且つ、成長するCNTと反応しないガスであればよく、触媒の活性を低下させないものが好ましい。例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン及びクリプトン等の希ガス、窒素、水素、並びに、これらの混合ガスを例示できる。
<触媒賦活物質>
原料ガス噴射部200は、原料ガスと共に触媒賦活物質を噴射することが好ましい。用いる触媒賦活物質としては、酸素を含む物質であり、成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質が好ましく、例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、並びに、一酸化炭素及び二酸化炭素等の低炭素数の含酸素化合物が挙げられる。また、触媒賦活物質の例として、エタノール、メタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、アルデヒド類、エステル類、硫化水素、並びに、これらの混合物が挙げられる。触媒賦活物質として、二酸化炭素又は二酸化炭素とそれ以外の触媒賦活物質との混合物を用いることが好ましい。触媒賦活物質の添加によって、CNTの製造効率及び純度をより一層改善することができる。
原料ガスを不活性ガス及び/又は触媒賦活物質と共に噴射するときの原料ガスの濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜40体積%であり、より好ましくは2〜20体積%である。また、触媒賦活物質として二酸化炭素を用いる場合の二酸化炭素濃度は、0.2〜70体積%が好ましく、より好ましくは0.3〜50体積%、さらに好ましくは0.7〜20体積%である。
<成長工程>
成長工程とは、例えばフォーメーション工程等によってCNT配向集合体の製造が可能な状態となった、CNTを成長させる触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱することにより、CNT配向集合体を成長させる工程である。成長工程においては、例えば、基材20に対向する位置に複数配列した原料ガス噴射部200の噴射口から、基材20に対して原料ガスを噴射する。噴射口をこのように構成することで、原料ガスを基材20上に均一に散布することができ、効率よく原料ガスを消費することができる。その結果、基材20上に成長するCNT配向集合体の均一性を高めることができ、かつ原料ガスの消費量を削減することができる。
基材20がコルゲート形状であるとき、噴射口はコルゲート形状の山部、谷部、及びその中間のいずれに対向する位置に設けられていてもよいが、コルゲート形状の谷部と谷部との平均間隔p以下の平均間隔で配列されていることが好ましい。複数の噴射口の間隔が広すぎると、CNTの成長が不均一となる場合がある。しかしながら、基材20と噴射口とが相対的に移動しながら、原料ガスを噴射する場合は、基材20及び/又は噴射口を移動させることで、原料ガスの拡散が促進されるので、噴射口の平均間隔がp以上であっても、基材20全面に均一なCNTを成長させることが可能になる。
原料ガス噴射部200の噴射口の形状は、例えば、円、三角、四角、六角、長円、十文字等いずれも可能であるが、加工の容易さからは円形であることが好ましく、円の直径は0.1mm以上、10mm以下であることがより好ましい。また、例えば基材20として500mm四方のものを用いる場合、噴射口は3列以上300列以下を等間隔で並べた噴射口列を構成することが好ましく、各噴射口列一列あたりの噴射口の数は3個以上、300個以下であることが好ましい。
原料ガスの噴射方向は、基材20がコルゲート形状であるとき、その各谷部の溝の深さ(各山部の畝の高さ)方向である。コルゲート形状の溝の深さ方向に原料ガスを噴射することで、谷部の溝深くまで原料ガスが均一に流通し、基材20全面に均一な密度でCNTを成長させることができる。したがって、原料ガスの噴射方向はコルゲート形状の溝の深さ方向と厳密に一致する必要はない。具体的には、噴射方向と各谷部の溝の深さ(各山部の畝の高さ)方向との成す角度θが、0°≦θ≦60°、さらには0°≦θ≦30°であることが好ましい。このような関係を満たすことで、原料ガスがコルゲート形状の谷部の溝深くにまで均一に流通し、その結果、基材20全体に均一な密度でCNTを成長させることができる。
成長工程においては、触媒及び原料ガスの少なくとも一方を加熱する。均一な密度でCNTを成長させる観点からは、少なくとも原料ガスを加熱することが好ましい。加熱の温度は、400℃〜1100℃がより好ましい。400℃以上とすることで触媒賦活物質の効果が良好に発現され、1100℃以下とすることで、触媒賦活物質がCNTと反応することを抑制できる。
成長工程においては、基材20と噴射口とが相対的に移動しながら、原料ガスを噴射することが好ましい。ここで、相対的に移動とは、基材20と噴射口との一方又は両方が移動することで、両者の相対的な位置関係が連続的に変化することを表す。具体的には、基材20をベルトコンベア上に載置して、原料ガスが噴射される噴射口の下を連続的に搬送する方法が挙げられる。基材20と噴射口とが相対的に移動するときの移動方向は、例えば基材20のコルゲート形状が一方向に沿って真っすぐに伸びる形状である場合、該方向に対し垂直であることが好ましい。
(搬送ユニット6)
搬送ユニット6とは、複数の基材20をCNT製造装置100内に連続的に搬入するために必要な装置一式のことである。搬送ユニット6は、メッシュベルト6aとベルト駆動部6bとを備えている。基材20は、搬送ユニット6によって各炉内空間を、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、及び、冷却ユニット4の順に搬送されるようになっている。
搬送ユニット6は、ベルトコンベア式のものであり、フォーメーション炉2a内空間から成長炉3a内空間を経て冷却炉4a内空間へと、表面に触媒が形成された基材20を搬送する。搬送ユニット6は、例えば減速機付き電動モータなどを用いたベルト駆動部6bで駆動されるメッシュベルト6aによって搬送する。そして、フォーメーション炉2a内空間と成長炉3a内空間との間、及び、成長炉3a内空間と冷却炉4a内空間との間は、接続部8及び9によって空間的に接続されている。これにより、基材20を載置したメッシュベルト6aは、各炉間を通過することができる。
なお、CNT製造装置100が、連続式にCNTを製造するものである場合であって、搬送ユニットを備える場合、その具体的な構成としては、上述した構成に限らず、例えば、マルチチャンバ方式におけるロボットアーム、ロボットアーム駆動装置等などであってもよい。
(接続部7〜9)
接続部7〜9とは、各ユニットの炉内空間を空間的に接続し、基材20がユニットからユニットへ搬送されるときに、基材20が外気に曝されることを防ぐための装置一式のことである。接続部7〜9としては、例えば、基材周囲環境と外気とを遮断し、基材20をユニットからユニットへ通過させることができる炉又はチャンバなどが挙げられる。
入口パージ部1とフォーメーションユニット2とは、接続部7によって空間的に接続されている。接続部7には、ガス混入防止手段101が配置されており、入口パージ部1において噴射されたパージガスと還元ガス噴射部2bから噴射された還元ガスとの混合ガスが排気される。これによって、フォーメーション炉2a内空間へのパージガスの混入、及び、入口パージ部1側への還元ガスの混入が防止される。
フォーメーションユニット2と成長ユニット3とは、接続部8によって空間的に接続されている。接続部8には、ガス混入防止手段102が配置されており、フォーメーション炉2a内空間の還元ガスと成長炉3a内空間の原料ガス及び触媒賦活物質を排気している。これにより、フォーメーション炉2a内空間への原料ガス又は触媒賦活物質の混入、及び、成長炉3a内空間への還元ガスの混入が防止される。
成長ユニット3と冷却ユニット4とは、接続部9によって空間的に接続されている。接続部9には、ガス混入防止手段103が配置されており、成長炉3a内空間の原料ガス及び触媒賦活物質と冷却炉4a内空間の不活性ガスとの混合ガスを排気している。これにより、冷却炉4a内空間への原料ガス又は触媒賦活物質の混入、及び、成長炉3a内空間への不活性ガスの混入が防止される。
なお、成長ユニット3と冷却ユニット4との間の接続部9を加熱する加熱手段をさらに備えていてもよい。ここで、成長炉3aの出口付近の温度が低下すると、原料ガスの分解物がアモルファスカーボンとなって、CNTの先端部に堆積する可能性がある。これによって、基材から垂直方向に成長するCNTにおける先端部(top)のG/D比が、根元部(bottom)のG/D比よりも小さくなる可能性がある。
しかし、成長ユニット3と冷却ユニット4との間の接続部9を加熱することにより、先端部のG/D比と根元部のG/D比との差を小さくすることができる。そのため、品質の安定したCNTを得ることが可能になる。
加熱手段の具体的な形態としては、例えば、成長ユニット3と冷却ユニット4との間のガス混入防止手段103において噴出されるシールガスを加熱するものであってもよい。シールガスを加熱することによって成長炉3aの出口及びその付近を加熱することができる。
(ガス混入防止手段101〜103)
ガス混入防止手段101〜103は、各ユニットの炉内空間に存在するガスが、相互に混入することを防ぐ機能を実現するための装置一式のことである。ガス混入防止手段101〜103は、各ユニットの炉内空間を互いに空間的に接続する接続部7〜9に設置される。ガス混入防止手段101〜103は、各炉における基材20の入口及び出口の開口面に沿ってシールガスを噴出するシールガス噴射部101b〜103bと、主に噴射されたシールガス(及びその他近傍のガス)を各炉内に入らないように吸引して装置外に排気する排気部101a〜103aとを、それぞれ少なくとも1つ以上備えている。
シールガスが炉の開口面に沿って噴射されることで、シールガスが炉の出入り口を塞ぎ、炉外のガスが炉内に混入することを防ぐことができる。また、シールガスを製造装置外に排気することにより、シールガスが炉内に混入することを防ぐことができる。
シールガスは不活性ガスであることが好ましく、特に安全性、コストなどの点から窒素であることが好ましい。シールガス噴射部と排気部との配置としては、1つのシールガス噴射部101b〜103b及び排気部101a〜103aの配置としては、1つのシールガス噴射部に隣接して1つの排気部を配置してもよいし、メッシュベルト6aを挟んでシールガス噴射部に対面するように排気部を配置してもよい。なお、ガス混入防止手段101〜103の全体の構成が、炉長方向に対称な構造となるようにシールガス噴射部101b〜103b及び排気部101a〜103aを配置することが好ましい。
例えば、1つの排気部の両端にシールガス噴射部を2つ配置し、排気部を中心にして炉長方向に対称な構造とするとよい。また、シールガス噴射部101b〜103bから噴射される全ガス流量と排気部101a〜103aから排気される全ガス流量とはほぼ同量であることが好ましい。これによって、ガス混入防止手段101〜103を挟んだ両側の空間からのガスが相互に混入することを防止するとともに、シールガスが両側の空間に流出することも防止することが可能になる。このようなガス混入防止手段101〜103を成長炉3aの両端に設置することで、シールガスの流れと成長炉3a内のガスの流れとが相互に干渉することを防止できる。また、シールガスの成長炉3a内流入によるガス流れの乱れも防止することができる。よって、CNTの連続製造に好適な装置を実現できる。
また、ガス混入防止手段101〜103によって防止されるガス混入の程度としては、CNT配向集合体の製造を阻害しない程度であることが好ましい。特に、フォーメーション炉2a内の還元ガス環境中の炭素原子個数濃度を5×1022個/m3以下、より好ましくは1×1022個/m3以下に保つように機能することが好ましい。
複数ある排気部101a〜103aの各排気量Qは、互いに独立に決定することはできない。装置全体のガス供給量(還元ガス流量、原料ガス流量、及び、冷却ガス流量など)に応じて調整する必要がある。だたし、ガス混入防止を満たすための必要条件は以下の式のように示すことができる。
Q≧4DS/L
ここで、Dは混入を防止したいガスの拡散係数、Sはガス混入を防止する境界の断面積、Lは排気部の長さ(炉長方向)である。この条件式を満たし、かつ装置全体の給排気バランスを保つように、各排気部101a〜103aの排気量が設定される。
<炭素原子個数濃度>
原料ガスがフォーメーション炉2a内空間に混入すると、CNTの成長に悪影響を及ぼす。フォーメーション炉2a内の還元ガス環境中の炭素原子個数濃度を、5×1022個/m3以下、より好ましくは1×1022個/m3以下に保つように、ガス混入防止手段101及び102により原料ガスのフォーメーション炉2a内への混入を防止することが好ましい。ここで炭素原子個数濃度は、還元ガス環境中の各ガス種(i=1、2、・・・)に対して、濃度(ppmv)をD1、D2・・・、標準状態での密度(g/m3)をρ1、ρ2・・・、分子量をM1、M2・・・、ガス分子1つに含まれる炭素原子数をC1、C2・・・、アボガドロ数をNAとして下記数式(1)で計算している。
Figure 2014156382
フォーメーション炉2a内の還元ガス環境中の炭素原子個数濃度を5×1022個/m3以下に保つことによって、CNTの製造量及び品質を良好に保つことができる。つまり、炭素原子個数濃度が5×1022個/m3以下とすることによって、フォーメーション工程において、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態の微粒子化促進、及び、触媒の活性向上等の効果を良好に発揮し、ひいては、成長工程におけるCNTの製造量及び品質を良好に保つことができる。
なお、ガス混入防止手段101〜103としては、本実施形態における構成に限らず、例えば、基材20がユニットからユニットに移動する時間以外の時間に、各ユニットの空間的な接続を機械的に遮断するゲートバルブ装置であってもよい。また、各ユニットの空間的な接続を不活性ガス噴射によって遮断するガスカーテン装置であってもよい。
ガス混入防止を確実に行うためには、ゲートバルブ装置及び/又はガスカーテンと排気装置とを併用することが好ましい。また、基材のユニット−ユニット間搬送を途切れなく行なうことによって連続的なCNT成長を効率的に行うという観点、及び、製造装置の簡素化の観点からは、排気装置を単独で用いることがより好ましい。
(冷却ユニット4)
冷却ユニット4とは、冷却工程を実現するため、すなわちCNTが成長した基材20を冷却するための装置一式のことである。冷却ユニット4は、成長工程後のCNT、及び、基材20を冷却する機能を有する。
冷却ユニット4は、水冷方式と空冷方式とを組み合わせた構成であり、不活性ガスを保持するための冷却炉4a、冷却炉4a内空間に不活性ガスを噴射する冷却ガス噴射部4b、及び、冷却炉4a内空間を囲むように配置した水冷冷却管4cにより構成される。なお、冷却ユニット4は、水冷方式のみの構成又は空冷方式のみの構成であってもよい。
冷却ユニット4にて冷却することにより、成長工程後のCNT、触媒、及び基材20の酸化を防止することができる。
<冷却工程>
冷却工程とは、成長工程後に、CNT、触媒、及び基材を不活性ガス下において冷却する工程である。成長工程後のCNT、触媒、及び基材は、高温状態にあるため、酸素存在環境下に置かれると酸化してしまうおそれがある。これを防ぐために、冷却工程では、不活性ガス環境下でCNT、触媒、及び基材を冷却する。冷却工程における温度は400℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。
(出口パージ部5)
CNT製造装置100の出口には、入口パージ部1とほぼ同様の構造をした出口パージ部5が設けられている。出口パージ部5とは、基材20の出口からCNT製造装置100の内部に外部の空気が混入することを防止するための装置一式のことである。出口パージ部5は、基材20の周囲環境をパージガス環境にする機能を有する。
出口パージ部5は、パージガスを上下からシャワー状に噴射することで、出口から冷却炉4a内に外部の空気が混入することを防止している。なお、出口パージ部5は、パージガス環境を保持するための炉又はチャンバ、及び、パージガスを噴射するための噴射部等により構成されてもよい。
パージガスとしては、不活性ガスが好ましく、特に安全性、コスト、及び、パージ性等の点から窒素であることが好ましい。
搬送ユニット6がベルトコンベア方式である場合など、基材20の出口が常時開口しているような場合は、出口パージ部5は、上述したようなガスカーテン構造であることが好ましい。この構成により、基材20の出口からCNT製造装置100の内部に外部の空気が混入することを防止することができる。
<還元ガス又は原料ガスに曝される装置部品の材質>
還元ガス又は原料ガスに曝される装置部品は、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、搬送ユニット6、ガス混入防止手段101〜103、及び、接続部7〜9の一部部品である。具体的には、フォーメーション炉2a、還元ガス噴射部2b、成長炉3a、原料ガス噴射部200、メッシュベルト6a、排気部101a〜103a、シールガス噴射部101b〜103b及び、接続部7〜9の炉等の装置部品が挙げられる。
還元ガス又は原料ガスに曝される装置部品の材質としては、高温に耐えられる材質、例えば、石英、耐熱セラミック、金属などが挙げられ、金属加工の精度、自由度、及び、コスト等の点からこれらの材質が好ましい。金属としては、耐熱合金等が挙げられる。耐熱合金としては、耐熱鋼、ステンレス鋼、及び、ニッケル基合金等が挙げられる。Feを主成分として、他の合金濃度が50%以下のものが、耐熱鋼と一般に呼ばれる。また、Feを主成分として、他の合金濃度が50%以下であり、Crを約12%以上含有する鋼は、一般にステンレス鋼と呼ばれる。また、ニッケル基合金としては、NiにMo、Cr及びFe等を添加した合金が挙げられる。具体的には、SUS310、インコネル600、インコネル601、インコネル625、インコロイ800、MCアロイ、及び、Haynes230アロイなどが、耐熱性、機械的強度、化学的安定性、及び、低コストなどの点から好ましい。
炉内壁及び/又は炉内使用部品を金属で構成する際に、材質を耐熱合金とし、且つ、その表面を溶融アルミニウムめっき処理、若しくは、その表面が算術平均粗さRa≦2μmとなるように研磨処理することが好ましい。この構成により、高炭素環境下でCNTを成長させた場合に、壁面などに付着する炭素汚れを低減することができる。これによって、CNTの製造量の低下及び品質の劣化を防ぐことができ好適である。
<溶融アルミニウムめっき処理>
溶融アルミニウムめっき処理とは、溶融アルミニウム浴中に被めっき材料を浸漬することによって、被めっき材の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金層を形成する処理をいう。処理方法の一例は次の通りである。被めっき材(母材)の表面を洗浄した(前処理)後、約700℃の溶融アルミニウム浴中に浸漬させることによって、母材表面中へ溶融アルミニウムの拡散を起こさせ、母材とアルミとの合金を生成し、浴より引上げた時にその合金層にアルミニウムを付着させる処理のことである。さらに、その後に、表層のアルミナ層並びにアルミ層を低温熱拡散処理し、その下のFe−Al合金層を露出させる処理を行ってもよい。
<研磨処理>
耐熱合金を算術平均粗さRa≦2μmにするための研磨処理方法としては、バフ研磨に代表される機械研磨、薬品を利用する化学研磨、電解液中にて電流を流しながら研磨する電解研磨、及び、機械研磨と電解研磨とを組み合わせた複合電解研磨等が挙げられる。
<算術平均粗さ>
算術平均粗さRaの定義は「JIS B 0601:2001」を参照されたい。
以上のようにして、本発明に係る製造方法は、CNT製造装置100において、表面に触媒を有する基材20を搬送ユニット6によって連続的に搬送しつつ、入口パージ部1、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、冷却ユニット4、及び、出口パージ部5を順次通過させる。その間に、フォーメーションユニット2における還元ガス環境下で触媒が還元され、成長ユニット3における原料ガス環境下で基材の表面にCNTが成長し、冷却ユニット4において冷却される。
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
例えば、原料ガス、加熱温度等の反応条件を適宜に設定することにより、単層あるいは多層のCNTを選択的に製造することも可能であるし、両者を混在して製造することも可能である。
また、本実施の形態においては、製造装置とは別の成膜装置によって基材表面への触媒の形成を行なうものとして説明した。しかし、フォーメーションユニット2の上流側に触媒成膜ユニットを設け、フォーメーションユニット2に先立って触媒成膜ユニットを基材が通過するように製造装置を構成してもよい。
また、本実施の形態においては、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、及び、冷却ユニット4の順に各ユニットを設けて、接続部7〜9にて各炉内空間を空間的に接続している。しかし、フォーメーション工程、成長工程、及び、冷却工程以外の他の工程を実現するユニットをどこかに複数追加して、接続部7〜9にて各ユニットの炉内空間を空間的に接続してもよい。
また、本実施の形態においては、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、及び、冷却ユニット4の各ユニットの配置が直線状配置である場合について説明した。しかし、これに制限されるものではなく、例えば環状配置であってもよい。
また、これまで主に、CNTを連続的に製造するために好適な形態である、フォーメーションユニット2及び成長ユニット3を別々に設けて、基材20をそれぞれのユニットに連続的に搬入する形態について説明したが、本発明で用いるCNT製造装置はこのような形態に限定されない。例えば、一つの炉でフォーメーション工程及び成長工程を行なう、バッチ式の製造装置であってもよい。この場合、CNT製造装置が備える成長ユニットの噴射部等によって、フォーメーション工程で必要な還元ガスの供給等を行なうことができる。そのため、基材上により均一に触媒の層を形成できるという利点を有する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
(コルゲート形状を有する基材の作製)
厚さ0.3mmのFe−Cr合金SUS430(JFEスチール株式会社製、Cr18%)をプレス加工することで、表1のA、B及びCに示す3種類の形状の基材(幅90mm、長さ90mm)をそれぞれ10枚ずつ作製した。基材A及びBは、図6に模式的に示した形状である。
Figure 2014156382
各基材について、レーザ顕微鏡を用いて複数個所の表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRa≒0.063μmであった。また、プレス加工による角部の曲率半径は、0.1mm以上、1.0mm以下であった。
(触媒形成)
上記の基材上に以下のような方法で触媒を形成した。まず、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド 1.9gを2−プロパノール 100mL(78g)に溶解させ、さらに安定剤としてトリイソプロパノールアミン 0.9gを加えて溶解させて、アルミナ膜形成用コーティング剤を作製した。
ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下において、基材上に上述のアルミナ膜形成用コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材をコーティング剤に浸漬した後、20秒間保持して、10mm/secの引き上げ速度で基板を引き上げた後、5分間風乾した。次に、コーティング剤が塗布された基材を300℃の空気環境下で30分間加熱した後、室温まで冷却した。これにより、基材上に膜厚40nmのアルミナ膜を形成した。
続いて、酢酸鉄 174mgを2−プロパノール 100mLに溶解させ、安定剤としてトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、鉄膜コーティング剤を作製した。ディップコーティングにより、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、前述のアルミナ膜が成膜された基材上に鉄膜コーティング剤を塗布した。塗布条件としては、基材をコーティング剤に浸漬した後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度で基板を引き上げた後、5分間風乾した。次に、鉄膜コーティング剤が塗布された基材を100℃の空気環境下で30分加熱した後、室温まで冷却した。これにより、膜厚3nmの触媒生成膜を形成した。
(CNT配向集合体の製造)
CNT製造装置100を用いて、上述のように作製した触媒基材に対して、フォーメーション工程及び成長工程を含む各製造工程を連続的に行なうことで、CNT配向集合体を製造した。
CNT製造装置100を、入口パージ部1、フォーメーションユニット2、成長ユニット3、冷却ユニット4、出口パージ部5、搬送ユニット6、接続部7〜9、及び、ガス混入防止手段101〜103から構成した。フォーメーション炉2a、成長炉3a、還元ガス噴射部2b、原料ガス噴射部200、排気フード2d及び3c、ガス混入防止手段101〜103、排気部101a〜103a、シールガス噴射部101b〜103b、メッシュベルト6a、接続部7〜9の各材質はSUS310とし、その表面を溶融アルミニウムめっき処理した。
触媒基材をメッシュベルト6a上に載置し、メッシュベルト6aの搬送速度を変更しながら、基材上にCNT配向集合体を製造した。CNT製造装置100の入口パージ部1、フォーメーションユニット2、ガス混入防止手段101〜103、成長ユニット3、冷却ユニット4、及び、出口パージ部5の各条件を表2に示すように設定した。なお、表2において、空欄部分は設定していないことを示している。
Figure 2014156382
還元ガス噴射部2b及び原料ガス噴射部200で噴射するガス量は、炉の体積に比例させてCNT配向集合体の製造に好適なガス量に設定した。また、フォーメーション炉2aと成長炉3aとのガスの相互混入を確実に防止するため、3つのガス混入防止手段101〜103の中でガス混入防止手段102のシールガス量及び排気量は最も多く設定した。
(CNT配向集合体の剥離及び回収)
図4に示すような剥離装置を用いて、上述したように製造したCNT配向集合体を剥離及び回収した。まず、図1に示すような治具でワイヤ11を固定し、その治具をアクチュエータ41に取り付けた。材質ポリプロピレン及び線径0.3mmのワイヤ11を、直径約15mmのリング状にし、ワイヤ11の間隔を8mmとして治具に固定した。ワイヤ11が取り付けられたアクチュエータ41の振動幅は30mm、最大振動速度は100mm/s、基材の山及び畝方向に移動するアクチュエータ41の速度は80mm/sとした。
各種形状の触媒基材A、B及びCのそれぞれについて、CNT製造後の平均CNT重量、剥離及び回収後の平均CNT重量、並びに、剥離及び回収率を以下の表に示す。
Figure 2014156382
いずれの形状の基材であっても、高い収率で剥離及び回収できることが確認できた。また、本実施例によって剥離及び回収されたCNT配向集合体のその他の特性としては、密度:0.03g/cm3、平均外径:2.9nm(半値幅:2nm)、炭素純度:99.9%、ヘルマンの配向係数:0.7、BET法による平均比表面積:1100m2/g、平均G/D比:5.0であった。
本発明は、カーボンナノチューブの製造に利用することができる。
1 入口パージ部
2 フォーメーションユニット
3 成長ユニット
4 冷却ユニット
5 出口パージ部
6 搬送ユニット
7,8,9 接続部
10 剥離部(剥離手段)
11 ワイヤ(弾性部材)
20 基材
21 CNT配向集合体(カーボンナノチューブ集合体)
30 吸引部
31 吸引収集機
40 駆動部(駆動手段)
41 アクチュエータ
42 シリンダーピストン
43 アクチュエータ
100 CNT製造装置
101,102,103 ガス混入防止手段

Claims (5)

  1. 線状の弾性部材の少なくとも一部を湾曲させた湾曲部を、基材上に固定されたカーボンナノチューブに接触させ、当該弾性部材と当該基材とを相対移動させて、カーボンナノチューブを基材から剥離する剥離工程を包含していることを特徴とするカーボンナノチューブの剥離方法。
  2. 上記剥離工程において、上記弾性部材及び上記基材の少なくとも一方を往復運動させながら、当該往復運動方向に交差する方向に、上記弾性部材と上記基材とを相対移動させることを特徴する請求項1に記載のカーボンナノチューブの剥離方法。
  3. 上記剥離工程において上記基材から剥離されたカーボンナノチューブを吸引する収集工程をさらに包含することを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブの剥離方法。
  4. 少なくとも一部に湾曲部を有する線状の弾性部材を備えた剥離手段と、
    上記湾曲部を、基材上に固定されたカーボンナノチューブに接触させて、上記弾性部材と当該基材とを相対移動させる駆動手段と
    を備えていることを特徴とするカーボンナノチューブの剥離装置。
  5. 請求項4のカーボンナノチューブの剥離装置を備えていることを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2016072096A1 (ja) * 2014-11-06 2016-05-12 日本ゼオン株式会社 炭素ナノ構造体集合物およびその製造方法

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