JP2014154956A - チャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システム、並びに、クロスオーバー周波数を設定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複していても、適切にクロスオーバー周波数を設定することができるチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システムを提供する。
【解決手段】 音声再生システムは、チャンネルデバイダの制御回路が、テスト信号発生回路からテスト信号をウーファー及びツィーターにそれぞれ独立に供給させて、これらに対応するマイクロホンからの測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録し、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合の音圧のパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算し、表示回路部が、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczをパワースペクトル関数に基づいて表示する。
【選択図】 図1
【解決手段】 音声再生システムは、チャンネルデバイダの制御回路が、テスト信号発生回路からテスト信号をウーファー及びツィーターにそれぞれ独立に供給させて、これらに対応するマイクロホンからの測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録し、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合の音圧のパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算し、表示回路部が、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczをパワースペクトル関数に基づいて表示する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マルチウェイスピーカーシステムによる音声信号再生で使用するチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システム、並びにクロスオーバー周波数を設定する方法であって、特に、適切にチャンネルデバイダのクロスオーバー周波数を設定することができて、良好な音声再生が可能なチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システムに関する。
低音域再生用のウーファー及び高音域再生用のツィーターを含むマルチウェイスピーカーシステムでは、各スピーカーユニットの再生周波数帯域に合わせてアンプで増幅された音声信号を帯域分割するネットワーク回路を含む場合が一般的である。一方で、スピーカーシステムのネットワーク回路を使用せずにマルチアンプ(バイアンプ)駆動を実現する方法として、パワーアンプの前段にチャンネルデバイダを設けて、このチャンネルデバイダによって音声信号を帯域分割する場合がある。
チャンネルデバイダは、上記のようなマルチアンプ−マルチウェイスピーカーシステムの音声再生システムにおいて、入力される音声信号を少なくとも低音域側出力信号と高音域側出力信号とに帯域分割して、マルチアンプに出力する。チャンネルデバイダを用いることで、スピーカーシステムのネットワークよりも急峻な過渡帯域を持つLPF(低域通過フィルタ)あるいはHPF(高域通過フィルタ)を設定できる、クロスオーバー周波数を比較的自由に設定できる、等の利点がある(例えば、特許文献1)。また、チャンネルデバイダを採用する場合には、低音域用のアンプ回路と高音域用のアンプ回路が独立するので、低音成分と高音成分とが重畳して発生する混変調歪が低減し、再生音質に優れるという利点があると言われている。
近年、DSPおよびマルチアンプを含むAVレシーバー等を利用してネットワーク回路を備えないスピーカーシステムを接続できるように、DSPにチャンネルデバイダの機能を持たせようとするものがある(特許文献2)。チャンネルデバイダをデジタルフィルタで実現する場合にはFIRフィルタまたはIIRフィルタによる場合がある。チャンネルデバイダを使用するには、マイクロホン等を用いてスピーカーシステムの各スピーカーユニットの再生帯域を測定して、クロスオーバー周波数を適切に設定する必要がある(特許文献3)。
しかしながら、音声再生システムにチャンネルデバイダを採用しようとしても、一部を除く一般ユーザーにとっては、マイクロホンを利用して適切なクロスオーバー周波数を設定すること、はハードルが高いという問題があり、AVレシーバー等の家庭用のオーディオ装置では、マルチチャンネルアンプ回路を利用したバイアンプ駆動が可能であっても、チャンネルデバイダの機能はほとんど採用されていない。
従来は、適応イコライザ制御するオーディオ装置の制御帯域決定方法において、クロスオーバー周波数を自動的に設定しようとするものがある(特許文献4)。例えば、フィルタ設計パラメータを、パワー効率の重み係数に基づいて演算しようとする自動パワー効率オーディオ調整システムが公知である(特許文献5)。ただし、ネットワーク回路を用いない使用条件では、ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複していることが多いので、ユーザーが実際にチャンネルデバイダを採用してクロスオーバー周波数を設定しようとすると、実際にはクロスオーバー周波数の設定が困難であると言う問題がある。つまり、ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複していても、ウーファーおよびツィーターがそれぞれ十分な再生能力を有する範囲はその中でも限られているので、重複する帯域の端部で帯域分割すると、結果的に適切に再生されない帯域が広くなるという問題がある。
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、マルチウェイスピーカーシステムによる音声信号再生で使用するチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システム並びにクロスオーバー周波数を設定する方法であって、特に、ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複していても、ウーファーおよびツィーターがそれぞれ十分な再生能力を有する範囲で適切にチャンネルデバイダのクロスオーバー周波数を設定することができるチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システムを提供することにある。
本発明の音声再生システムは、入力される音声信号を、少なくとも低音域側の第1出力信号と第1出力信号よりも高音域側の第2出力信号とに帯域分割してそれぞれ第1出力端子および第2出力端子に出力する低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを含む信号処理部と、所定の帯域を含むテスト信号を発生させて第1出力端子または第2出力端子に出力するテスト信号発生回路と、マイクロホンからの測定信号の周波数およびレベルを表示する表示回路部と、信号処理部および表示回路部と、を制御する制御回路と、を含むチャンネルデバイダと、音声を音声信号に変換して測定信号としてチャンネルデバイダへ入力するマイクロホンと、チャンネルデバイダのそれぞれの第1出力端子または第2出力端子に対応する増幅回路を含む増幅器と、少なくともウーファー及びツィーターを少なくとも含み、ウーファー及びツィーターが増幅器とそれぞれ接続が可能なスピーカーシステムと、を含む音声再生システムであって、制御回路が、ユーザー操作に応じて信号処理部を設定して、スピーカーシステムにおけるウーファー及びツィーターの帯域分割を規定する任意のクロスオーバー周波数fc0を指定する場合に、チャンネルデバイダの制御回路が、テスト信号発生回路からテスト信号をウーファー及びツィーターにそれぞれ独立に供給させて、これらに対応するマイクロホンからの測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録し、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合のマイクロホンの位置での音圧のパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算し、チャンネルデバイダの表示回路部が、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczをパワースペクトル関数に基づいて表示する。
好ましくは、本発明の音声再生システムは、チャンネルデバイダの制御回路が演算するクロスオーバー周波数fc0を変数に設定したパワースペクトル関数が、クロスオーバー周波数fc0未満での第1測定信号に基づく第1パワースペクトル積分値と、クロスオーバー周波数fc0以上での第2測定信号に基づく第2パワースペクトル積分値と、の和を正規化した関数として演算されて、表示回路部においてグラフ表示される。
また、好ましくは、本発明の音声再生システムは、チャンネルデバイダの表示回路部が、パワースペクトル関数とともに、制御回路が演算するパワースペクトル関数の微分値から導出される変曲点又は極大値をグラフ表示する。
また、好ましくは、本発明の音声再生システムは、チャンネルデバイダの信号処理部が、第1出力信号または第2出力信号のレベル調整を行なうレベル調整回路と、第1出力信号または第2出力信号の位相反転を行なう位相反転回路と、第1出力信号または第2出力信号の遅延時間を調整する遅延回路と、をそれぞれ含み、チャンネルデバイダの制御回路が、レベル調整回路および位相反転回路および遅延回路の設定を反映してパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算する。
また、本発明のチャンネルデバイダは、上記のいずれかの音声再生システムを構成する。
また、好ましくは、本発明のチャンネルデバイダは、入力される音声信号を、第1出力信号よりも低音域側の第3出力信号、および/または、第2出力信号よりも高音域側の第4出力信号に帯域分割して、それぞれ第3出力端子、および/または、第4出力端子にさらに出力するチャンネルデバイダであって、低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFが、それぞれ直列接続する他の高域通過フィルタHPFまたは他の低域通過フィルタLPFと組み合わせて帯域通過フィルタBPFを構成し、それぞれ第1出力端子または第2出力端子に出力する。
また、上記のチャンネルデバイダにおいて、ユーザー操作に応じて信号処理部を設定してクロスオーバー周波数fc0を指定する動作を実行する本発明の方法は、チャンネルデバイダのテスト信号発生回路からテスト信号をウーファー及びツィーターにそれぞれ独立に供給させるステップと、これらに対応するマイクロホンからの測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録するステップと、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合のマイクロホンの位置での音圧のパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算するステップと、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczをパワースペクトル関数に基づいて表示するステップと、を含む。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明のチャンネルデバイダは、少なくとも低音域側の第1出力信号と第1出力信号よりも高音域側の第2出力信号とに帯域分割してそれぞれ第1出力端子および第2出力端子に出力する低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを含む信号処理部と、所定の帯域を含むテスト信号を発生させて第1出力端子または第2出力端子に出力するテスト信号発生回路と、マイクロホンからの測定信号の周波数およびレベルを表示する表示回路部と、信号処理部および表示回路部と、を制御する制御回路と、を含む。このチャンネルデバイダを含む音声再生システムは、音声を音声信号に変換して測定信号としてチャンネルデバイダへ入力するマイクロホンと、チャンネルデバイダのそれぞれの第1出力端子または第2出力端子に対応する増幅回路を含む増幅器と、少なくともウーファー及びツィーターを少なくとも含み、ウーファー及びツィーターが増幅器とそれぞれ接続が可能なスピーカーシステムと、を含む。
本発明のチャンネルデバイダは、制御回路が、ユーザー操作に応じて信号処理部を設定して、スピーカーシステムにおけるウーファー及びツィーターの帯域分割を規定する任意のクロスオーバー周波数fc0を指定する場合に、チャンネルデバイダの制御回路が、テスト信号発生回路からテスト信号をウーファー及びツィーターにそれぞれ独立に供給させて、これらに対応するマイクロホンからの測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録する。そして、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合のマイクロホンの位置での音圧のパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算して、チャンネルデバイダの表示回路部が、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczをパワースペクトル関数に基づいて表示する。本発明の方法は、上記のチャンネルデバイダにおいて、それぞれの動作を実行するステップを含み、ユーザー操作に応じて信号処理部を設定してクロスオーバー周波数fc0を指定する動作を実行する。
したがって、ユーザーは、容易に信号処理部を設定して、スピーカーシステムにおけるウーファー及びツィーターの帯域分割を規定する任意のクロスオーバー周波数fc0を指定することができる。クロスオーバー周波数fc0を変更する場合に、表示回路部に、クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczがパワースペクトル関数に基づいて表示される、あるいは、クロスオーバー周波数fc0を変数にするパワースペクトル関数が表示されるので、最も適切な帯域が直感的に分かりやすくなるからである。チャンネルデバイダを適切に調整して、クロスオーバー周波数fc0を変更できるので、再生音質の調整が容易になるという利点がある。マルチウェイスピーカーシステムで用いられるネットワーク回路は、±6〜18dB/Oct.の遷移域特性が一般的であるのに対して、チャンネルデバイダのLPFおよびHPFは±24〜96dB/Oct.以上も可能であり、チャンネルデバイダを導入することで遷移域および阻止域の減衰率を大きくすることができる。
また、音声再生システムでは、チャンネルデバイダの制御回路が演算するクロスオーバー周波数fc0を変数に設定したパワースペクトル関数が、クロスオーバー周波数fc0未満での第1測定信号に基づく第1パワースペクトル積分値と、クロスオーバー周波数fc0以上での第2測定信号に基づく第2パワースペクトル積分値と、の和を正規化した関数として演算されて、表示回路部においてグラフ表示される。ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複している場合には、従来技術のように単に横軸を周波数としたパワースペクトル関数のみで表示すると、クロスオーバー周波数が設定可能な帯域が幅広く表示されてしまう一方で、本発明の場合には、ウーファーおよびツィーターがそれぞれ十分な再生能力を有する範囲の中でも最も効率よく帯域分割するクロスオーバー周波数fc0を選択可能な範囲を、基準化された大きな値となる範囲として、表示回路部にグラフ表示することができる。したがって、ユーザーは、適切にチャンネルデバイダのクロスオーバー周波数を設定することができる。なお、チャンネルデバイダの表示回路部では、パワースペクトル関数とともに、制御回路が演算するパワースペクトル関数の微分値から導出される変曲点又は極大値をグラフ表示する様にしても良い。ユーザーは、パワースペクトル関数が最も大きくなる範囲を特定しやすくなる利点がある。
また、チャンネルデバイダの信号処理部は、第1出力信号または第2出力信号のレベル調整を行なうレベル調整回路と、第1出力信号または第2出力信号の位相反転を行なう位相反転回路と、第1出力信号または第2出力信号の遅延時間を調整する遅延回路と、をそれぞれ含むようにしてもよい。チャンネルデバイダの制御回路が、レベル調整回路および位相反転回路および遅延回路の設定を反映してパワースペクトル関数を第1測定信号および第2測定信号に基づいて演算するので、ユーザーは、信号処理部でのレベル調整及び遅延及び位相反転の処理を反映したパワースペクトル関数を見てクロスオーバー周波数fc0を設定できて、再生音質を調整することができる。
また、本発明のチャンネルデバイダは、ウーファーおよびツィーターを含む2wayのスピーカーシステムに適用するものに限られない。チャンネルデバイダは、サブウーファーおよび/またはミッドレンジおよび/またはスーパーツィーターを含む3〜5wayのマルチウェイスピーカーに対応するように、入力される音声信号を、第1出力信号よりも低音域側の第3出力信号、および/または、第2出力信号よりも高音域側の第4出力信号に帯域分割して、それぞれ第3出力端子、および/または、第4出力端子にさらに出力するものであってもよい。2wayのマルチウェイスピーカーシステムでのウーファーおよびツィーターに対応する低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFが、それぞれ直列接続する他の高域通過フィルタHPFまたは他の低域通過フィルタLPFと組み合わせて帯域通過フィルタBPFを構成すれば、3〜5wayのマルチウェイスピーカーであっても同様に、チャンネルデバイダを動作させても、隣接するスピーカーユニット間の任意のクロスオーバー周波数fc0を指定することができる。
本発明のチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システム並びにクロスオーバー周波数を設定する方法は、特に、ウーファーおよびツィーターが再生可能な帯域が広く重複していても、ウーファーおよびツィーターがそれぞれ十分な再生能力を有する範囲で適切にチャンネルデバイダのクロスオーバー周波数を設定することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態によるチャンネルデバイダおよびこれを含む音声再生システム、並びに、チャンネルデバイダのクロスオーバー周波数を設定する方法について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態による音響再生システムについて説明する図である。具体的には、音響再生システムは、チャンネルデバイダを含むアンプ装置1と、アンプ装置1に接続するスピーカーシステム8およびマイクロホン9と、を含み、図1は、それぞれの内部構成を示すブロック図である。また、図2および図4スピーカーシステム8の音圧周波数特性を説明するグラフである。また、図3は、アンプ装置1において、スピーカーシステム8のクロスオーバー周波数fc0を指定する動作を実行する方法を説明するフローチャートである。また、図5〜7は、アンプ装置1のチャンネルデバイダのクロスオーバー周波数fc0を変数にするパワースペクトル関数Mfcの導出及び結果を説明するグラフである。なお、説明に不要な一部の構成や、内部構造等は、図示ならびに説明を省略する。
音響再生システムは、アンプ装置1と、アンプ装置1に接続するスピーカーシステム8と、を含み、アンプ装置1に入力されるデジタル信号データadataをステレオ音声信号LおよびRに変換し、アンプ装置1で増幅した後に2本のスピーカー8Lおよび8Rからなるスピーカーシステム8によってステレオ音声を再生する音声再生システムである。アンプ装置1は、DSPおよびマルチアンプを含み、チャンネルデバイダを動作させたマルチアンプ接続が可能である。また、スピーカーシステム8は、それぞれウーファーWOおよびツィーターTWを含む2wayのスピーカーシステムであり、アンプ装置1とは、スピーカーコードによってウーファーWOおよびツィーターTWのそれぞれにバイワイヤリング接続される。したがって、アンプ装置1を使用するユーザーは、チャンネルデバイダを調整して、ウーファーとツィーターとが重複して再生する周波数帯域とその再生レベルを変更して、スピーカーシステム8の再生音質の調整が可能になる。
アンプ装置1は、デジタル信号データadataを信号処理するDSP(デジタルシグナルプロセッサ)10と、DSP10の4チャンネル分の出力を受けてアナログ信号に変換するD/A変換器2、および、これらのアナログ信号をそれぞれ増幅してスピーカーシステム8へ出力するアンプ回路3と、を少なくとも含む。ステレオ音声信号LおよびRは、アナログで供給されるステレオ信号(左信号Lおよび右信号R)として(図示しない)A/D変換器を介してDSP10に供給されてもよい。アンプ装置1は、全体を制御する制御回路であるCPU4と、CPU4に接続してユーザーからの指示入力を受ける操作部5と、ディスプレイを含む表示回路6と、マイクロホン9が接続するマイクアンプ回路7と、を含む。
具体的には、アンプ装置1は、マルチチャンネル音声に対応したDSPおよびマルチチャンネルアンプ回路を内蔵するAVレシーバー等により構成し得る。操作部5は、スイッチ、ジョグダイヤル、あるいは、リモコン装置、等の入力デバイスを含む。表示回路6は、内蔵するFLディスプレイ、液晶ディスプレイ等でもよく、又は他に接続するディスプレイ装置であってもよい。もちろん、アンプ装置1は、DSP10と、D/A変換器2と、マルチチャンネルアンプ回路3と、マイコン等のCPU4と、を含む他の音響再生装置により構成してもよい。また、D/A変換器2と、マルチチャンネルアンプ回路3と、表示回路6と、マイクロホン9が接続するマイクロホン端子Mを備えるマイクアンプ回路7とは、必ずしもアンプ装置1が備えなくてもよく、アンプ装置1から独立させてもよい。
スピーカーシステム8は、ウーファーWOおよびツィーターTWを含む2wayのバイワイヤリングSSであり、それぞれのスピーカーユニットに対応する入力端子を含む。左スピーカー8Lおよび右スピーカー8Rの低音域再生用のウーファーWOは、入力端子tLに接続する。また、高音域再生用のツィーターTWは、入力端子tHに接続する。低音域再生用のウーファーWOと入力端子tLとの間、あるいは、高音域再生用のツィーターTWと入力端子tHとの間には、コンデンサ等の保護用のネットワーク回路が接続されていても良い。
図2は、スピーカーシステム8の音圧周波数特性について説明するグラフである。ただし、図2のグラフのスピーカーシステム8のウーファーWOおよびツィーターTWは、主に音声再生する周波数帯域を、(図示しない)ネットワーク回路nLおよびnHにより、クロスオーバー周波数fcを境にして分割されている。ネットワーク回路nLは、クロスオーバー周波数fcよりも高い周波数で−12dB/Oct.の遷移域特性を示す2次のLPFフィルタである。また、ネットワーク回路nHは、クロスオーバー周波数fcよりも低い周波数で12dB/Oct.の遷移域特性を示す2次のHPFフィルタである。したがって、低音域再生用のウーファーWOは、クロスオーバー周波数fc以下の周波数帯域を主に再生し、ツィーターTWは、クロスオーバー周波数fc以上の周波数帯域を主に再生する。一方で、スピーカーシステム8は、(図示しない)ネットワーク回路nLおよびnHを備えない場合には、クロスオーバー周波数fcの付近でのスピーカーシステム8の再生音は、ウーファーWOからの再生音とツィーターTWからの再生音とが、図2で図示する場合よりもさらに幅広く重複することになる。
(図示しない)ネットワーク回路nLおよびnHは、スピーカーシステム8のウーファーWOおよびツィーターTWに同一の信号を入力する場合(つまり、入力端子tLおよびtHを接続して入力する場合)に、比較的にフラットな合成音圧周波数特性(図示するWO+TW)を実現するように調整されている。なお、図2に図示する場合には、スピーカーシステム8のネットワーク回路nLおよびnHは、緩やかな遷移域特性を示す2次のフィルタである。ネットワーク回路nLおよびnHは、後述するチャンネルデバイダの低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFで置き換えることができる。
DSP10は、入力データadataをステレオ信号LおよびRに変換するデコーダ11と、デジタルフィルタを含むチャンネルデバイダ12と、デコーダ11に接続してステレオ信号(左信号Lおよび右信号R)に代えてテスト信号をチャンネルデバイダ12に入力するテスト信号源13と、を内部に含む。DSP10は、チャンネルデバイダ12の4チャンネル分の出力端子(DL1、DL2、DR1、DR2)をD/A変換器2へ出力する。チャンネルデバイダ12は、左信号Lおよび右信号Rにそれぞれ対応する低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFと、スイッチSW1およびSW2と、を含む。DSP10のチャンネルデバイダ12の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFのフィルタ設定と、スイッチSW1およびSW2の切換えは、CPU4により制御される。
チャンネルデバイダ12の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFは、FIRフィルタまたはIIRフィルタおよびそれらの組み合わせにより構成されるデジタルフィルタである。低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFは、バターワースフィルタ、Linkwitz−Rileyフィルタ、等が好ましく、FIRフィルタによる直線位相特性を含むものであってもよい。再生音質を調整する範囲が広がり、幅広いスピーカーシステムにも対応できるように、低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFはそれぞれ、レベル調整を行なう(図示しない)レベル調整回路と、位相反転を行なう(図示しない)位相反転回路と、遅延時間を調整する(図示しない)遅延回路と、をそれぞれ含ようにしてもよい。
スイッチSW1は、低域通過フィルタLPFの出力を第1の出力端子(DL1、DR1)へ出力するか否かを切り換える。スイッチSW2は、高域通過フィルタHPFの出力を高音域側のD/A変換器2に接続する第2の出力端子(DL2、DR2)へ出力するか、低音域側のD/A変換器2に接続する出力端子(DL1、DR1)へ出力するか、を切り換える。
チャンネルデバイダ12のスイッチSW1およびSW2は、通常の音声再生時には、図1のように、低域通過フィルタLPFと高域通過フィルタHPFとを並列接続して、入力信号がそれぞれに供給されて、低域通過フィルタLPFと高域通過フィルタHPFのそれぞれの出力がD/A変換器2へ出力するように切り替えられる。つまり、スイッチSW1およびSW2はそれぞれ閉じられて、低域通過フィルタLPFの出力を第1の出力端子(DL1、DR1)へ出力し、高域通過フィルタHPFの出力を第2の出力端子(DL2、DR2)へ出力する。なお、本実施例では、チャンネルデバイダ12を動作させて音声再生する上記のスイッチ接続状態を「通常音声再生モード」という。ユーザーは、「通常音声再生モード」では、チャンネルデバイダ12を動作させて、スピーカーシステム8のウーファーWOから再生する音声とツィーターTWから再生する音声との合成音を確認しながら、再生音質を調整することができる。
マイクアンプ回路7は、マイクロホン9からの入力信号を増幅する増幅段71と、増幅段71の出力をCPU4に出力するようにフィルタ処理ならびにA/D変換する出力回路72と、を含む。したがって、アンプ装置1のCPU4は、テスト信号出力モードにおいてテスト信号源13から発生させたテスト信号に同期してマイクロホン9から検出される音声信号を、テスト信号の再生音として検出し、表示回路6に表示することができる。
図3は、この音声再生システムのアンプ装置1において、スピーカーシステム8のクロスオーバー周波数fc0を指定する動作を実行する方法を説明するフローチャートである。具体的には、アンプ装置1のCPU4が、テスト信号出力モードにおいてアンプ装置1を制御してこのフローチャートを実行する。その結果、テスト信号出力モードにおいて、アンプ装置1の表示回路6は、少なくとも、設定するクロスオーバー周波数fc0を横軸にとって、スピーカーシステム8のウーファーWOからのテスト信号に対応するウーファーWO測定信号と、スピーカーシステム8のツィーターTWからのテスト信号に対応するツィーターTW測定信号と、から演算したパワースペクトル関数を縦軸にとってグラフ表示するとともに、適切なクロスオーバー周波数fc0の範囲を示唆する表示を行なうことができる。
次に、図3を参照して、本実施例のアンプ装置1のチャンネルデバイダ12の「テスト信号出力モード」について説明する。テスト信号出力モードでは、アンプ装置1は、スイッチSW1およびSW2をそれぞれOn/Offするように切り換えることで、低域通過フィルタLPFの出力を出力端子(DL1、DR1)のみへ出力し、又は、高域通過フィルタHPFの出力を出力端子(DL2、DR2)へのみへ出力することができる。CPU4がスイッチSW1およびSW2の開閉状態を変えて、テスト信号源13からのテスト信号を出力端子DL1およびDL2からスピーカーシステム8に出力する。
最初に、DSP10のテスト信号源13を動作させて、テスト信号をステレオ信号(左信号Lおよび右信号R)に代えてチャンネルデバイダ12に入力するとともに、スイッチSW1をONにして(閉じて)低域通過フィルタLPFの出力を出力端子(DL1、DR1)へ出力し、スイッチSW2をOFFにする(オープンにする)と、スピーカーシステム8のウーファーWOのみからテスト信号による音声が再生されるので、CPU4は、マイクロホン9およびマイクアンプ回路7からの測定信号をウーファーWO測定信号として記録する(S1)。次に、スイッチSW1をOFFにして(オープンにして)、スイッチSW2をONにして(閉じて)高域通過フィルタHPFの出力を出力端子(DL2、DR2)へ出力すると、スピーカーシステム8のツィーターTWのみからテスト信号による音声が再生されるので、CPU4は、マイクロホン9およびマイクアンプ回路7からの測定信号をツィーターTW測定信号として記録する(S2)。その後、テスト信号源13からのテスト信号出力は、停止すればよい。
テスト信号は、所定の周波数帯域成分を持つホワイトノイズ、ピンクノイズ、等の雑音信号、または、純音をスイープするスイープ信号、あるいは、インパルス信号、等のいずれかのテスト信号であればよい。ウーファーWO測定信号およびツィーターTW測定信号は、FFT等の演算処理により、周波数データとして記録できる。アンプ装置1のテスト信号出力モードでは、ユーザーは、バイワイヤリングSSであるスピーカーシステム8のウーファーWOおよびツィーターTWの音圧周波数特性が未知の場合でも、テスト信号出力モードにおいてアンプ装置1のDSP10の所定の帯域を含むテスト信号源13を動作させるとともに、低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFをフィルタ処理を行わないスルーに設定し、スイッチSW1およびSW2の開閉状態を変えるようにして、ウーファーWOおよびツィーターTWのそれぞれの音圧周波数特性を知ることができる。
図4は、上記テスト信号出力モードで測定したスピーカーシステム8のウーファーWOおよびツィーターTWの音圧周波数特性(ウーファーWO測定信号、ツィーターTW測定信号)について説明するグラフである。また、図5は、上記のウーファーWO測定信号に基づくパワースペクトルと、ツィーターTW測定信号に基づくパワースペクトルと、の和のグラフである。ただし、図4および図5のグラフのスピーカーシステム8のウーファーWOおよびツィーターTWは、ネットワーク回路nLおよびnHまたはチャンネルデバイダ12を用いずに帯域分割されていない。したがって、スピーカーシステム8の再生音は、ウーファーWOからの再生音とツィーターTWからの再生音とが、図2で図示する場合よりもさらに幅広く図示する周波数帯域fcxにおいて重複することになる。なお、本実施例の場合には、周波数帯域fcxは約400Hz〜約5kHzである。
この周波数帯域fcxは、図4のグラフではウーファーWOおよびツィーターTWの特性が重複している帯域として、図5のグラフではパワースペクトルの値が一段と大きくなる帯域として、読みとることができる。スピーカーシステム8においては、ウーファーWOおよびツィーターTWがそれぞれ十分な再生能力を有しており、クロスオーバー周波数fc0を設定すべき範囲(クロスオーバー周波数fc0を設定するのに最も適当な周波数帯域であり、後述する最適クロスオーバー周波数帯域fcz。)は、この周波数帯域fcxに含まれる。しかし、この周波数帯域fcxは広すぎて、その下限付近は、適切にチャンネルデバイダ12のクロスオーバー周波数fc0を設定することができる周波数帯域ではない。例えば、ツィーターTWは、その最低共振周波数f0付近では動作が不安定であり、動作が安定する最低共振周波数f0よりも高い周波数帯域で使用するのが一般的であるからである。したがって、マイクロホン9の位置での音圧のパワースペクトル関数をウーファーWO測定信号およびツィーターTW測定信号に基づいて演算して、適切なクロスオーバー周波数fc0を設定できるようにする。以下では、図3〜図7を参照して、その方法を説明する。
「テスト信号出力モード」では、ウーファーWO測定信号およびツィーターTW測定信号を測定した後に、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定してパワースペクトル関数Mfcを演算する(S3)。クロスオーバー周波数fc0を変数に設定するとは、チャンネルデバイダ12において所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させた場合を想定し、そのクロスオーバー周波数fc0を変化させることを意味する。したがって、演算するパワースペクトル関数Mfcは、チャンネルデバイダ12を動作させてクロスオーバー周波数fc0を変化させた場合に、スピーカーシステム8のパワースペクトルが変化する様子を表すものに相当することになる。所定の低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを動作させるのは、実際にフィルタを動作させる、あるいは、測定信号にフィルタ特性をたたみ込み処理する、等しても良いが、周波数データに変換したウーファーWO測定信号およびツィーターTW測定信号を、所定の演算処理で周波数に基づいて通過帯域と阻止帯域に分類することで代用して良い。
図6は、パワースペクトル関数Mfcを演算する方法を説明する例示であり、具体的には、クロスオーバー周波数fc0=250Hzにおけるパワースペクトル関数Mfcを計算する方法を概念的に説明するグラフである。図示する|WO|は、ウーファーWO測定信号に基づくパワースペクトルであり、|TW|は、ツィーターTW測定信号に基づくパワースペクトルである。また、図示する領域Swoは、所定の低域通過フィルタLPFを動作させた場合の下限周波数fl(=20Hz)からクロスオーバー周波数fc0までのパワースペクトル|WO|の積分値を概念的に示している。同様に、図示する領域Stwは、所定の高域通過フィルタHPFを動作させた場合のクロスオーバー周波数fc0から上限周波数fh(=20kHz)までのパワースペクトル|TW|の積分値を概念的に示している。以下の説明では、SwoならびにStwを、ウーファーWO測定信号ならびにツィーターTW測定信号に基づくパワースペクトルの積分値として説明する。
図6から分かるように、ツィーターTWが再生可能な周波数帯域よりも遙かに低い250Hzをクロスオーバー周波数fc0に設定する場合には、ウーファーWOとツィーターTWとのつながりが悪くなり、スピーカーシステム8の周波数特性には、クロスオーバー周波数fc0以上のツィーターTWが再生する範囲でレベル低下してしまう(周波数特性にディップができる)という問題を生じる。その場合には、パワースペクトルの積分値の和Ssum(=Swo+Stw)は、ウーファーWOとツィーターTWとのつながりがよい上記の周波数帯域fcxの場合よりも小さい値になる。言い換えると、クロスオーバー周波数fc0が周波数帯域fcxの範囲では、パワースペクトルの積分値の和Ssumは、それ以外の場合よりもより大きい値になり、ウーファーWOとツィーターTWとのつながりが最も良い周波数範囲では、さらに大きな値になるといえる。したがって、クロスオーバー周波数fc0を変数にしてパワースペクトルの積分値の和Ssumを求めると、ウーファーWOおよびツィーターTWがそれぞれ十分な再生能力を有し、クロスオーバー周波数fc0を設定すべき範囲が分かることになる。
図7は、クロスオーバー周波数fc0を変数にするパワースペクトル関数Mfcのグラフである。パワースペクトル関数Mfcは、クロスオーバー周波数fc0を変数にしてパワースペクトルの積分値の和Ssumを求めたのち、積分値の和Ssumをその平均値で正規化して得られる関数である。したがって、図7から分かる様に、その値が1を超えて最も大きい数値(1.30以上)を示す最適クロスオーバー周波数帯域fcz(=3.0kHz〜4.5kHz)が、ウーファーWOおよびツィーターTWがそれぞれ十分な再生能力を有する範囲に相当することがわかる。この最適クロスオーバー周波数帯域fczは、上記の周波数帯域fcxの中で相対的にパワースペクトル関数Mfcが大きな値となる周波数範囲である。そこで、「テスト信号出力モード」では、クロスオーバー周波数fc0を変数に設定してパワースペクトル関数Mfcを演算(S3)した後に、クロスオーバー周波数fc0を横軸にとってパワースペクトル関数Mfcを縦軸にとって、図7のようにグラフ表示する(S4)。
この最適クロスオーバー周波数帯域fczは、アンプ装置1の表示回路6においてパワースペクトル関数Mfcとともにグラフ表示されるのが最も好ましいが、クロスオーバー周波数帯域fczの数値範囲のみを表示するものであっても良い。また、アンプ装置1の表示回路6において、クロスオーバー周波数帯域fczを数値で直接示さなくても、パワースペクトル関数Mfcとともに、CPU4が演算するパワースペクトル関数Mfcの微分値から導出される変曲点又は極大値をグラフ表示して、最適クロスオーバー周波数帯域fczが読みとれるようにしてもよい。パワースペクトル関数Mfcをクロスオーバー周波数fc0で微分した微分値が0になる点は、パワースペクトル関数Mfcの極値であるので、容易にパワースペクトル関数Mfcのピーク値(またはディップ値)を読みとることができる。
ユーザーは、パワースペクトル関数Mfcが最も大きくなる範囲を特定しやすくなる。アンプ装置1のテスト信号出力モードにおいては、パワースペクトル関数Mfcに基づいて最適クロスオーバー周波数帯域fczを表示するので、ユーザーは、スピーカーシステム8のクロスオーバー周波数が未知であっても、設定すべきクロスオーバー周波数fc0を知ることができる。CPU4は、最適クロスオーバー周波数帯域fczに基づいて、クロスオーバー周波数fc0を自動的に最適クロスオーバー周波数帯域fczの範囲内に設定するようにしてもよい。
本実施例においては、パワースペクトル関数Mfcは、下限周波数fl(=20Hz)から上限周波数fh(=20kHz)までの範囲のパワースペクトルの周波数データを基に演算しているが、下限周波数flおよび上限周波数fhは、ウーファーWOおよびツィーターTWの特性が重複している帯域である周波数帯域fcxを含んでいればよく、上記実施例に限定されない。さらに、正規化されるパワースペクトル関数Mfcは、横軸を対数表示のクロスオーバー周波数fc0としてグラフ表示する場合に、高い周波数でデータが多くなるので、1/6オクターブ〜オクターブで一様なデータ数になるように間引いた周波数データを用いて演算あるいは表示するようにしても良い。
また、チャンネルデバイダ12は、低域通過フィルタLPFまたは高域通過フィルタHPFのそれぞれの出力信号のレベル調整を行なう(図示しない)レベル調整回路と、位相反転を行なう(図示しない)位相反転回路と、遅延時間を調整する(図示しない)遅延回路と、をそれぞれ含む場合には、それぞれを機能させた上でウーファーWO測定信号およびツィーターTW測定信号を測定すればよい。低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFをスルーにして、レベル調整回路と、位相反転回路および遅延回路と、を機能させない場合であっても、CPU4がパワースペクトル関数Mfcを演算する段階でこれらのレベル調整、位相反転、遅延時間を調整する、といった信号処理を反映させてもよい。ユーザーは、チャンネルデバイダ12での低域通過フィルタLPFまたは高域通過フィルタHPFの設定と、レベル調整及び遅延及び位相反転の処理と、を反映したパワースペクトル関数Mfcに基づいてクロスオーバー周波数fc0を設定できて、再生音質を調整することができる。
ただし、アンプ装置1のチャンネルデバイダ12は、上記実施例のようなウーファーWOおよびツィーターTWを含む2wayのバイワイヤリングSSに適用するものに限られない。チャンネルデバイダ12は、サブウーファーおよび/またはミッドレンジおよび/またはスーパーツィーターを含む3〜5wayのマルチウェイスピーカーである(図示しない)マルチウェイスピーカーシステムに対応するように、3〜5way用の帯域通過フィルタBPFを含む構成にしてもよい。帯域通過フィルタBPFは、低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFに、それぞれ他の高域通過フィルタHPFまたは他の低域通過フィルタLPFを直列接続して構成してもよい。つまり、隣接して帯域分割するフィルタの間で「オーバーラップ有り」とするようにフィルタを設定することで、3〜5wayのマルチウェイスピーカーシステムに対応してチャンネルデバイダを動作させても、音圧周波数特性上にディップが生じないようにすることができる。
もちろん、ネットワーク回路を用いるウーファーおよびツィーターを含むマルチウェイスピーカーの場合にも、本実施例のチャンネルデバイダ12の「テスト信号出力モード」は有効である。また、スピーカーシステム8がネットワーク回路を用いないフルレンジスピーカーを含む場合にも、同様に「テスト信号出力モード」は有効である。フルレンジスピーカー、あるいは、ウーファー、ツィーター等のスピーカーの再生音圧周波数特性の限界に起因するレベル低下に対応して、他のスピーカーとの実質的なクロスオーバー周波数fcが設定されている場合にも、これに合わせたチャンネルデバイダ12のクロスオーバー周波数fc0を設定することができる。
本発明のチャンネルデバイダは、ステレオ音声信号を再生するステレオ装置のみならず、マルチチャンネルサラウンド音声再生装置を含む音響再生システムにも適用が可能である。
1 アンプ装置
2 D/A変換器
3 アンプ回路
4 CPU
5 操作部
6 表示回路
7 マイクアンプ回路
8 スピーカーシステム
9 マイクロホン
10 DSP
11 デコーダ
12 チャンネルデバイダ
13 テスト信号源
2 D/A変換器
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4 CPU
5 操作部
6 表示回路
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8 スピーカーシステム
9 マイクロホン
10 DSP
11 デコーダ
12 チャンネルデバイダ
13 テスト信号源
Claims (7)
- 入力される音声信号を、少なくとも低音域側の第1出力信号と該第1出力信号よりも高音域側の第2出力信号とに帯域分割してそれぞれ第1出力端子および第2出力端子に出力する低域通過フィルタLPFおよび高域通過フィルタHPFを含む信号処理部と、所定の帯域を含むテスト信号を発生させて該第1出力端子または該第2出力端子に出力するテスト信号発生回路と、マイクロホンからの測定信号の周波数およびレベルを表示する表示回路部と、該信号処理部および該表示回路部と、を制御する制御回路と、を含むチャンネルデバイダと、
音声を音声信号に変換して該測定信号として該チャンネルデバイダへ入力する該マイクロホンと、
該チャンネルデバイダのそれぞれの該第1出力端子または該第2出力端子に対応する増幅回路を含む増幅器と、
少なくともウーファー及びツィーターを少なくとも含み、該ウーファー及び該ツィーターが該増幅器とそれぞれ接続が可能なスピーカーシステムと、
を含む音声再生システムであって、
該制御回路が、ユーザー操作に応じて該信号処理部を設定して、該スピーカーシステムにおける該ウーファー及び該ツィーターの該帯域分割を規定する任意のクロスオーバー周波数fc0を指定する場合に、
該チャンネルデバイダの該制御回路が、該テスト信号発生回路から該テスト信号を該ウーファー及び該ツィーターにそれぞれ独立に供給させて、これらに対応する該マイクロホンからの該測定信号を第1測定信号および第2測定信号として記録し、該クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の該低域通過フィルタLPFおよび該高域通過フィルタHPFを動作させた場合の該マイクロホンの位置での音圧のパワースペクトル関数を該第1測定信号および該第2測定信号に基づいて演算し、
該チャンネルデバイダの該表示回路部が、該クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczを該パワースペクトル関数に基づいて表示する、
音声再生システム。 - 前記チャンネルデバイダの前記制御回路が演算する前記クロスオーバー周波数fc0を変数に設定した前記パワースペクトル関数が、
該クロスオーバー周波数fc0未満での前記第1測定信号に基づく第1パワースペクトル積分値と、該クロスオーバー周波数fc0以上での前記第2測定信号に基づく第2パワースペクトル積分値と、の和を正規化した関数として演算されて、前記表示回路部においてグラフ表示される、
請求項1に記載の音声再生システム。 - 前記チャンネルデバイダの前記表示回路部が、前記パワースペクトル関数とともに、前記制御回路が演算する該パワースペクトル関数の微分値から導出される変曲点又は極大値をグラフ表示する、
請求項1または2に記載の音声再生システム。 - 前記チャンネルデバイダの前記信号処理部が、前記第1出力信号または前記第2出力信号のレベル調整を行なうレベル調整回路と、該第1出力信号または該第2出力信号の位相反転を行なう位相反転回路と、該第1出力信号または該第2出力信号の遅延時間を調整する遅延回路と、をそれぞれ含み、
該チャンネルデバイダの前記制御回路が、該レベル調整回路および該位相反転回路および該遅延回路の設定を反映して前記パワースペクトル関数を前記第1測定信号および前記第2測定信号に基づいて演算する、
請求項1から3のいずれかに記載の音声再生システム。 - 請求項1から4のいずれかに記載の前記音声再生システムを構成するチャンネルデバイダ。
- 入力される音声信号を、前記第1出力信号よりも低音域側の第3出力信号、および/または、前記第2出力信号よりも高音域側の第4出力信号に帯域分割して、それぞれ第3出力端子、および/または、第4出力端子にさらに出力するチャンネルデバイダであって、
前記低域通過フィルタLPFおよび前記高域通過フィルタHPFが、それぞれ直列接続する他の高域通過フィルタHPFまたは他の低域通過フィルタLPFと組み合わせて帯域通過フィルタBPFを構成し、それぞれ第1出力端子または第2出力端子に出力する、
請求項5に記載のチャンネルデバイダ。 - 請求項5または6に記載の前記チャンネルデバイダにおいて、前記ユーザー操作に応じて前記信号処理部を設定して前記クロスオーバー周波数fc0を指定する動作を実行する方法であって、
該チャンネルデバイダの前記テスト信号発生回路から前記テスト信号を前記ウーファー及び前記ツィーターにそれぞれ独立に供給させるステップと、
これらに対応する前記マイクロホンからの前記測定信号を前記第1測定信号および前記第2測定信号として記録するステップと、
該クロスオーバー周波数fc0を変数に設定して所定の前記低域通過フィルタLPFおよび前記高域通過フィルタHPFを動作させた場合の前記マイクロホンの位置での音圧の前記パワースペクトル関数を該第1測定信号および該第2測定信号に基づいて演算するステップと、
該クロスオーバー周波数fc0が選択されるべき最適クロスオーバー周波数帯域fczを該パワースペクトル関数に基づいて表示するステップと、
を含む方法。
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