JP2014154598A - 薄膜太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】モジュール内の微小領域における短時間の発電能力の変動に対して出力の調整が可能であり、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールを得ること。
【解決手段】表面透明電極層12と半導体層13と裏面電極層14とをこの順で備え、前記裏面電極層14における前記半導体層13と反対側の面と、前記半導体層における発電時に前記裏面電極層14と異なる電位を有する対向電極層7と、の間に誘電体層6が挟持されて前記裏面電極層14と前記誘電体層6と前記対向電極層7とにより構成されるキャパシタ15を有する薄膜太陽電池セルを用いる。
【選択図】図2
【解決手段】表面透明電極層12と半導体層13と裏面電極層14とをこの順で備え、前記裏面電極層14における前記半導体層13と反対側の面と、前記半導体層における発電時に前記裏面電極層14と異なる電位を有する対向電極層7と、の間に誘電体層6が挟持されて前記裏面電極層14と前記誘電体層6と前記対向電極層7とにより構成されるキャパシタ15を有する薄膜太陽電池セルを用いる。
【選択図】図2
Description
本発明は、薄膜太陽電池モジュールに関する。
一般的に複数の薄膜太陽電池を電気的に直列接続して作製される集積型薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ場合がある)は、細長い短冊状の薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)を該セルの短軸方向に直列接続した構造を有している。この様な集積型薄膜太陽電池を搭載した薄膜太陽電池モジュールにおいては、使用中に受光面の一部に木の葉や鳥のような飛来物による影が生じた場合には、影が生じた部分のセルの発電電力が低下し、モジュール全体の起電力が大きく低下する。セルの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴ってモジュールの発電量が低下する。これは、各セルが電気的に直列接続されているため、影が生じたセルの電流によりモジュールの発電電流が制約されるからである。
例えば、100個のセルが電気的に直列に接続されたモジュールにおいて1個のセルの半分の領域だけが影に覆われた場合は、影の領域はモジュールの受光面全体の0.5%に過ぎない。しかし、影に覆われたセルの発電電流は、影が無い場合の電流を例えば1Aとすると、影が生じた場合には0.5Aとなる。このため、セルが直列接続されて構成されているモジュール全体の発電電流も0.5Aとなり、正常動作時の半分の値となる。したがって、1個のセルの半分の領域、すなわちモジュールの受光面全体の0.5%の領域に影が生じただけで、発電電力が1/2まで低下してしまう。
また、モジュールを設置する際には複数のモジュールを設置し、これらを接続して発電させることが一般的となっている。その際にも、モジュールを電気的に直列に接続することが行われ、前述の場合と同様に1枚のモジュールの出力低下が全体の出力影響を与えることになる。さらに、スマートコミュニティと呼ばれる次世代送配電網を基盤とした都市などで、独立発電系統の自家発電設備として太陽電池を用いる場合においては、僅かな時間であっても電力が供給不足に陥ることは許されないことから、微少時間における電力変動の影響は無視できない。
以上のように、太陽光発電システムにおいては、モジュール内の微小領域における短時間の発電能力の変動であっても十分な対策を講じる必要があるといえる。
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1においては、太陽電池パネル(モジュール)にコンデンサを設置することにより太陽電池パネル発電量の短期的な低下を抑制する方法を開示している。
しかしながら、上記先行技術においては、太陽電池パネル全体の出力変動をコンデンサで対応することになり、前述のように微小領域の出力低下が太陽電池パネル全体の出力を変動させることを考慮すると、一部のセルで生じた短期的な出力低下に対して対応が困難になる、という問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モジュール内の微小領域における短時間の発電能力の変動に対して出力の調整が可能であり、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールを得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる薄膜太陽電池モジュールは、表面透明電極層と半導体層と裏面電極層とをこの順で備え、前記裏面電極層における前記半導体層と反対側の面と、前記半導体層における発電時に前記裏面電極層と異なる電位を有する対向電極層と、の間に誘電体層が挟持されて前記裏面電極層と前記誘電体層と前記対向電極層とにより構成されるキャパシタを有する薄膜太陽電池セルを用いること、を特徴とする。
本発明によれば、モジュール内の微小領域における短時間の発電能力の変動に対して出力の調整が可能であり、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる、という効果を奏する。
以下に、本発明にかかる薄膜太陽電池モジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。また、平面図であっても、図面を見易くするためにハッチングを付す場合がある。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるキャパシタ15を内蔵した薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ場合がある)1の構造を示す平面図である。本明細書における平面図では、各層の成膜面側(基板2と反対側)から見た平面図を示す。実施の形態1にかかるモジュール1は、ガラスもしくは透明なフィルム等の透光性を有する長方形状の透光性絶縁基板(以下、基板と呼ぶ場合がある)2上に該基板2と略同様の長方形状の1つの薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)3が形成された薄膜太陽電池モジュールである。便宜上、図1の上下方向を基板2およびセル3の長辺方向、左右方向を短辺方向とする。
図1は、本発明の実施の形態1にかかるキャパシタ15を内蔵した薄膜太陽電池モジュール(以下、モジュールと呼ぶ場合がある)1の構造を示す平面図である。本明細書における平面図では、各層の成膜面側(基板2と反対側)から見た平面図を示す。実施の形態1にかかるモジュール1は、ガラスもしくは透明なフィルム等の透光性を有する長方形状の透光性絶縁基板(以下、基板と呼ぶ場合がある)2上に該基板2と略同様の長方形状の1つの薄膜太陽電池セル(以下、セルと呼ぶ場合がある)3が形成された薄膜太陽電池モジュールである。便宜上、図1の上下方向を基板2およびセル3の長辺方向、左右方向を短辺方向とする。
また、モジュール1におけるセル3の短辺方向における一端(図1中の左端)側には、モジュール1で発生した電力を取り出すための取り出し電極5として左側取り出し電極5L(陰極取り出し電極)が、他端(図1中の右端)側には右側取り出し電極5R(陽極取り出し電極)が形成されている。そして、この取り出し電極5(左側取り出し電極5L、右側取り出し電極5R)により、モジュール1で発生した電力が外部に取り出される構造になっている。
更に、モジュール1の絶縁性を保つために、基板2におけるセル3の形成面の外周縁部には外周縁部膜除去領域4が設けられている。このように、モジュール1の基本的な外観構造は、従来型の薄膜太陽電池モジュールと同様の構造となっている。以下では、セル3の短辺方向における一端(図1中の左端)側をセル左側、セル3の短辺方向における他端(図1中の右端)側をセル右側と呼ぶ場合がある。
なお本明細書においては、便宜上、モジュール1の左側取り出し電極5Lがマイナス極、右側取り出し電極5Rがプラス極になるように図示することとする。
図2は、実施の形態1にかかるモジュール1の構造を模式的に示す断面図であり、図1におけるA−A断面図である。モジュール1の内部では、図2の左側から右側に向かって電流が流れる。
モジュール1におけるセル3は、図2に示されるように多数の薄膜が積層された層状の断面構造を有する。すなわち、セル3は、基板2上に第1電極である表面透明電極層12、半導体層13、および第2電極である裏面電極層14が順次積層された積層構造を有する。表面透明電極層12と半導体層13と裏面電極層14とをまとめて発電ユニット11と呼ぶことにする。セル3においては、表面透明電極層12がカソード(陽極)となり、裏面電極層14がアノード(陰極)となる。モジュール1においては、基板2側からセル3に光が入射される。
表面透明電極層12は、例えば、SnO2系膜やZnO系膜などの透光性を有する透明導電膜からなる。半導体層13は、例えば基板2側からp型半導体層(例えばp型不純物がドープされたシリコン層)13a、i型半導体層(例えば真性シリコン層)13b、n型半導体層(例えばn型不純物がドープされたシリコン層)13cが積層されてpin接合を有する半導体積層膜、例えば基板2側からp型半導体層(例えばp型不純物がドープされたCdTe層)、n型半導体層(例えばn型不純物がドープされたCdTe層)が積層されてpn接合を有する半導体積層膜、またはこれらの半導体積層膜が複数重なった積層構造を有する半導体積層膜などが用いられる。裏面電極層14は、例えば基板2側からSnO2系膜やZnO系膜などの透光性を有する透明導電膜と、例えばAgやAlなどの高反射金属膜とが積層されて構成される。
また、裏面電極層14における半導体層13と反対側の面上には、誘電体層6と対向電極層7とがこの順で形成されている。誘電体層6は、誘電体により構成され、電荷の保持性能を高めるために、例えばTaO5、BSTOなど誘電率の高い材料により構成されることが好ましい。誘電体層6は、裏面電極層14における半導体層13と反対側の面上から、裏面電極層14および半導体層13におけるセル右側の側面に当接して設けられている。
対向電極層7は、低抵抗な金属層であれば問題ないが、裏面電極層14と同様の金属を用いる方が接触抵抗の低減などの点で効果的である。また、対向電極層7は、誘電体層6との反応などを考慮して積層構造を形成してもよい。対向電極層7は、誘電体層6における裏面電極層14と反対側の面上から、誘電体層6におけるセル右側の側面に当接して設けられている。
そして、左側取り出し電極5Lは、裏面電極層14のセル左側の端部において誘電体層6が形成されずに露出した領域に接続されている。右側取り出し電極5Rは、対向電極層7上のセル右側の端部に接続されている。この薄膜太陽電池内の半導体層13に基板2側より光が入射すると、電力が発生する。発生した電流は、図2中に矢印で示した経路で、左側取り出し電極5L→裏面電極層14→半導体層13→表面透明電極層12→右側取り出し電極5Rの順で流れる。
基板2の面方向において裏面電極層14の大部分と対向する対向電極層7は、基板2の短辺方向(図2中の左右方向)における右端の外周縁部において表面透明電極層12と電気的に接続されている。この場合は、半導体層13における発電時に、対向する位置にある裏面電極層14と対向電極層7との間には電位差が発生するため、これらの間に挟持された誘電体層6と合わせてキャパシタ15を構成することになる。すなわち、セル3においては、発電ユニット11とキャパシタ15とが裏面電極層14を共有して接続されている構造となっている。
このキャパシタ15では、セル3の発電に伴って対向電極層7と裏面電極層14とに挟まれた誘電体層6に対して電位差が生じ、この電位差によってキャパシタ15内に電荷が蓄積されていく。そして、対応するセル3の短期的な起電流の低下時に、キャパシタ15から電荷を補填することが可能となる。
つぎに、上述した実施の形態1にかかるモジュール1の製造方法について説明する。以下で示すプロセス技術は、基本的に一般的な薄膜太陽電池モジュールの製造方法と同じである。したがって、各プロセスの詳細な説明は行わず概略の説明を行う。図3−1〜図3−3は、実施の形態1にかかるモジュール1の製造方法を模式的に示す工程図である。なお、以下の図3−1〜図3−3において、(a)は図2に対応する断面図、(b)は図1に対応する要部平面図である。
まず、基板2上の全面に、表面透明電極層12と、p型半導体層13a、i型半導体層13b、n型半導体層13cからなる半導体層13と、裏面電極層14とをこの順で積層形成する。基板2には、透光性および絶縁性を有する基板として例えばガラスや透明なフィルムなどが用いられる。
この表面透明電極層12としては、例えばSnO2系やZnO2系などの透光性を有する透明導電膜が用いられている。また、この表面透明電極層12は、入射した光を散乱させること、発電層となる半導体層13に光を閉じ込めることにより発電効率を改善するために、表面に凹凸形状を有する(図示せず)。この表面透明電極層12は、一般的にはCVD法で形成する場合と、スパッタリング法で成膜された膜をウエットエッチングして形成する場合がある。
半導体層13のp型半導体層13a、i型半導体層13b、n型半導体層13cは、たとえばプラズマCVD法などによりシリコン薄膜層が形成される。前述の半導体層13のうち、i型半導体層13bが発電を行う層である。これらの3層をあわせて積層半導体層と呼ぶ場合がある。複数の半導体層13を積層化させる(一般にタンデム構造と呼ばれる)ことでより大きな発電をすることも可能であるが、その場合においても同様に積層半導体層と呼ぶ場合がある。
裏面電極層14は、たとえばスパッタリング法などにより形成される。半導体層13を表面透明電極層12と裏面電極層14とで挟むことによって、発電した電流を効率良く外部に取り出すことができる。裏面電極層14は、半導体層13を通過した光を再度半導体層13に供給するという目的から、光の反射率が高い方が好ましく、Al,Agなどがよく使われる。裏面電極層14と半導体層13との界面を安定させる目的で、半導体層13側に例えばZnO系の透明導電層などを用いて積層化させることも多い。
本実施の形態では、裏面電極層14は、例えば基板2側からSnO2系膜やZnO系膜などの透光性を有する透明導電膜と、例えばAgやAlなどの高反射金属膜とが積層されて構成される。裏面電極層14に用いる透明導電膜はCVD法やスパッタリング法により、高反射金属膜はスパッタリング法により形成される。
そして、裏面電極層14の形成後、基板2の短辺方向(図3−1中の左右方向)における右端の外周縁部の裏面電極層14および半導体層13(図3−1中の点線で囲まれた部分)が、基板2の右端の長辺と平行な方向に細長の矩形形状に除去されてスクライブ溝101が形成される。図3−1は、裏面電極層14の形成後、スクライブ溝101が形成された状態を示している。スクライブ溝101は、紫外線レーザーなどを用いてレーザースクライブ法により形成される。これにより、基板2の短辺方向における右端の外周縁部に、右端の長辺と平行な方向に延在する矩形形状に表面透明電極層12が露出する。なお、本明細書におけるスクライブ溝は、紫外線レーザーなどを用いてレーザースクライブにより形成される。また、本実施の形態では素子領域の分離等にはレーザースクライブを用いる方法について述べるが、パターニングやエッチング、印刷などの方法によるパターン形成を用いることも可能である。
つぎに、基板2上の全面に誘電体層6が形成され、基板2の短辺方向における左側および右側の外周縁部の裏面電極層14(図3−2中の点線で囲まれた部分)が基板2の長辺と平行な方向に細長形状に除去されて、素子分離領域を形成するスクライブ溝102が形成される。図3−2は、誘電体層6の形成後、スクライブ溝102が形成された状態を示している。誘電体層6は、たとえばイオンプレーティング法などを用いて、裏面電極層14上の全面および表面透明電極層12上に形成される。誘電体層6は、誘電率および耐圧が共に高い方が好ましく、たとえばTiO2、Ta2O5などが低温での成膜が容易な高誘電率材料として挙げられる。これにより、誘電体層6が裏面電極層14上から、裏面電極層14および半導体層13における基板右側の側面に当接した状態にパターニングされる。
つぎに、基板2上の全面に対向電極層7が形成され、基板2の短辺方向における左側および右側の外周縁部の対向電極層7(図3−3中の点線で囲まれた部分)が基板2の長辺と平行な方向に細長形状に除去されて、素子分離領域を形成するスクライブ溝103が形成される。これにより、対向電極層7が誘電体層6上から、誘電体層6における基板右側の側面に当接した状態にパターニングされる。そして、対向電極層7は、基板2の短辺方向における右端の外周縁部において表面透明電極層12と電気的に接続される。この場合、対向電極層7と誘電体層6との界面反応を抑制するために、酸化物透明導電膜を挿入する積層構造も有効である。
そして、基板2の短辺方向における左端の外周縁部の裏面電極層14上に左側取り出し電極5Lが接続され、基板2の短辺方向における右端の外周縁部の対向電極層7上に右側取り出し電極5Rが接続される。これにより、図3−3に示す構造が得られ、図1および図2に示される実施の形態1にかかるモジュール構造が得られる。
つぎに、このようにキャパシタを内蔵した実施の形態1にかかるモジュール1の受光面の一部に影等による動作不良が発生した場合の電流の流れについて説明する。図4は、実施の形態1にかかるモジュール1における影発生時の電流の流れを模式的に示す断面図である。なお、図4では、セル3の受光面に影がかかり、セル3が動作不良セルとなった場合の電流の経路を図に矢印で示している。また、図4では、キャパシタ15を流れる電流の経路を点線の矢印で示し、左側取り出し電極5L、半導体層13、裏面電極層14、表面透明電極層12、右側取り出し電極5Rを流れる通常の電流の経路を実線の矢印で示している。また、図中においてセル3の受光面に影がかかり動作不良となり発電しない半導体層13の領域を黒色の塗りつぶし部で示している。
図4に示されるように、セル3の受光面内に影(図中の黒色の★印部)がかかった場合、この部分では半導体層13に対して光が当たらないため、発電しない半導体層13の領域(図中の黒色の塗りつぶし部)が発生する。この結果、セル3においては、影がある場合の発電電流量(I2)は、影が無い場合の発電電流量(I1)と比較して電流量が落ちることになる。一般的に太陽電池モジュールを設置する際には、複数の太陽電池モジュールを電気的に直列に電気接続することにより大きな電力を発生させることが多く、この場合の等価回路図は図5のようになる。図5は、実施の形態1にかかるモジュール1が電気的に直列接続された場合の等価回路図である。
一般的に太陽電池の等価回路は、光が当たった際に電流を発生する発電ユニットを電流源21として示し、光が当たっていない場合の半導体層のダイオード特性を与えるダイオード22と電流源21との並列接続構造23で示される。また、本実施の形態にかかるモジュール1においてはキャパシタ15が付加されていることから、並列接続構造23にキャパシタ24が付加されて図5に示すような等価回路図となる。
この内の1枚のモジュール、たとえば図5におけるモジュール番号Mのモジュール1で半導体層13からの発電電流量がI1→I2に低下すると、キャパシタ24が付加されていない場合には、直列接続内のモジュール全ての電流がI2に低下してしまうことになる。このため、電流が低下したパネルにおいて電流低下分(I1−I2)の電流を補填することが必要となる。
そこで、実施の形態1にかかるモジュール1では、図4に示したように、キャパシタ15に蓄積された電荷が電流源となって、図4中の点線矢印で示した経路で電流が流れ、発電電流の不足分を補填することができる。この結果、電気的に直列接続されたモジュール群全体での電流低下に伴う発電量の低下を抑制できる。
なお、実施の形態1では、対向電極層7は発電ユニット11の表面透明電極層12と電位が等しい構造となっている。この構造の他にも、対向電極層7を表面透明電極層12と接続することなく、後付けで配線を行い、フレームなどの裏面電極層14と異なる電位差を持たせることも可能である。ただし、この場合においては、新たな配線部品が発生することになるのに対し、実施の形態1の構造では部品点数の削減が可能となる利点がある。
上述したように、実施の形態1にかかるモジュール1では、セル3の裏面に直結されたキャパシタ15に電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュール1における短期的な起電流の低下時に、キャパシタ15から電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュール1の受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴うモジュール1の発電量の低下を抑制することができ、出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態1にかかるモジュール1では、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
また、実施の形態1にかかる複数のモジュール1が電気的に直列接続されたモジュール群では、モジュール1の受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、単一モジュールの出力低下に伴うモジュール群全体の出力低下を抑止することが可能となる。
また、実施の形態1にかかるモジュール1では、セル3の裏面電極層14と対向する対向電極層7が、セル3の表面透明電極層12と電気的に接続しているため、取り出し配線などが不要になる。
実施の形態2.
実施の形態1においては、1つのセル3によりモジュールを構成する場合について説明した。しかしながら、実際には図6に示すようにガラスもしくは透明なフィルムからなる基板2上に短冊状の複数のセル3が複数形成されて、これらの複数のセル3が短冊状の短辺方向(直列接続方向)に電気的に直列接続されたセル群を有する多接合型薄膜太陽電池モジュールとして使用されることが多い。図6は、実施の形態2にかかる多接合型薄膜太陽電池モジュール(以下、単にモジュールと呼ぶ場合がある)の構造を模式的に示す平面図である。実施の形態2では、このように複数のセル3が電気的に直列接続されてモジュールを構成する場合について説明する。
実施の形態1においては、1つのセル3によりモジュールを構成する場合について説明した。しかしながら、実際には図6に示すようにガラスもしくは透明なフィルムからなる基板2上に短冊状の複数のセル3が複数形成されて、これらの複数のセル3が短冊状の短辺方向(直列接続方向)に電気的に直列接続されたセル群を有する多接合型薄膜太陽電池モジュールとして使用されることが多い。図6は、実施の形態2にかかる多接合型薄膜太陽電池モジュール(以下、単にモジュールと呼ぶ場合がある)の構造を模式的に示す平面図である。実施の形態2では、このように複数のセル3が電気的に直列接続されてモジュールを構成する場合について説明する。
なお、本明細書においては、便宜上、多接合型薄膜太陽電池モジュールの左側取り出し電極5Lがマイナス極、右側取り出し電極5Rがプラス極になるように図示することとする。そして、直列接続方向においては、マイナス極(左側取り出し電極5L)側を上流側、プラス極(右側取り出し電極5R)側を下流側とする。したがって、直列接続方向における左からm番目(以下、m番目と呼ぶ場合がある)のセル3は、セル3の直列接続方向における上流側からm番目のセル3である。また、左側取り出し電極5Lに隣接する薄膜太陽電池セル3を1番目の薄膜太陽電池セルとし、右側取り出し電極5R側に進むにつれてセル3の番号が増加するように示す。なお、キャパシタについても同様の規則に従って呼称し、たとえばm番目のセル3の直上に形成されたキャパシタ構造については、セルと同様にm番目のキャパシタと呼ぶ。
図7は、実施の形態2にかかる多接合型薄膜太陽電池モジュールの構造を模式的に示す要部断面図であり、図6におけるB−B断面図である。図8は、図7における領域Cの拡大図であり、セル3の直列接続方向における左からm番目およびm+1番目のセル3を示す要部断面図である。なお、実施の形態2においては、上述した実施の形態1にかかるモジュール1の構成部材と同じ部材については同じ符号を付すことで、詳細な説明は省略する。
実施の形態2にかかるモジュールにおけるセル3は、図7および図8に示されるように多数の薄膜が積層された層状の断面構造を有する。すなわち、セル3は、基板2上に第1電極である表面透明電極層12、半導体層13、および第2電極である裏面電極層14が順次積層された積層構造を有する。
また、裏面電極層14における半導体層13と反対側の面上には、誘電体層6と対向電極層7とがこの順で形成されている。誘電体層6は、裏面電極層14における半導体層13と反対側の面上に当接して設けられるとともに、裏面電極層14と半導体層13とを厚み方向において貫通して表面透明電極層12に達するように設けられたセルのP3スクライブ溝203に埋設されている。対向電極層7は、誘電体層6における裏面電極層14と反対側の面上から、誘電体層6におけるセル右側の側面に当接して設けられている。
図8に示されるように、1個のセル3は、表面透明電極層12を厚み方向に貫通して基板2に達するように設けられたセルのP1スクライブ溝201と、半導体層13と裏面電極層14とを厚み方向において貫通して表面透明電極層12に達するように設けられたセルのP3スクライブ溝203によって、隣接するセル3と電気的に分離されている。また、半導体層13を厚み方向に貫通して表面透明電極層12に達するように設けられて半導体層13の素子分離領域となるセルのP2スクライブ溝202中に形成(埋設)されて隣接するセル3の表面透明電極層12に接続した裏面電極層14によって、隣接するセル3同士が電気的に直列接続されている。
また、基板2の面方向において左からm番目のセル3の裏面電極層14と大部分で対向する対向電極層7は、誘電体層6を厚み方向に貫通して左からm+1番目のセル3の裏面電極層14に達するように形成されたスクライブ溝204を介して、左からm+1番目のセル3の裏面電極層14と電気的に接続されている。この場合は、左からm番目のセル3の裏面電極層14と、これに対向する位置にある対向電極層7との間には電位差が発生するため、これらの間に挟まれた誘電体層6と合わせてキャパシタ構造を構成することになる。すなわち、実施の形態2にかかるモジュールにおいては、発電ユニット11とキャパシタ15とが裏面電極層14を共有して接続されている構造となっている。
なお、図7および図8においては、図示の関係上、縦(膜厚方向)と横(基板面方向)との比率が実際のものと大きく異なっている。一般的にはスクライブ溝の幅が数十μmから数百μmであるのに対して、表面透明電極層12の膜厚は数μm程度であり、実際の構造は縦方向に1/100程度圧縮した形状であるといえる。
このモジュール内のセル3の半導体層13に基板2側より光が入射すると電力が発生する。発生した電流は、モジュールの内部では図8中に矢印で示した経路で、半導体層13→表面透明電極層12→裏面電極層14→半導体層13の順で、隣接するセル3へ順に流れていく。この際、左からm番目のセル3の裏面電極層14_mにおける電位をV_m、左からm+1番目のセル3の裏面電極層14_m+1における電位をV_m+1とした場合には、両者に電位差が生じる。m+1番目のセル3の裏面電極層14_m+1における電位V_m+1は、m番目のセル3の表面透明電極層12の電位に等しいことから、この電位差である(V_m+1)−(V_m)は、一般に太陽電池セルで開放電圧(Voc)と呼ばれるものであり、半導体層13の構成によって異なる。
半導体層13としてアモルファスシリコン半導体を用いる場合には、開放電圧(Voc)は0.7V〜1.0V程度である。半導体層13としてアモルファスシリコン半導体層と微結晶シリコン半導体層とを積層させた2層タンデム型のセルでは、開放電圧(Voc)は1.3V〜1.5V程度である。また、3層タンデム構造のセルでは、開放電圧(Voc)は1.9V〜2.1V程度となる。すなわち、基板2の面方向において、左からm番目のセル3の領域においては、裏面電極層14はV_mの電位となっているが、表面透明電極層12と対向電極層7との電位はV_m+1の電位となっている。このため、誘電体層6に対して、(V_m+1)−(V_m)の電位差が生じており、この電位差によって表面透明電極12と誘電体層6と対向電極層7とで構成されるキャパシタ構造内に電荷が蓄積されていく。
なお、図6における右端部のセル3、すなわち右側取り出し電極5Rと接続されるセル3においては、対向電極層7は右端部のセル3の表面透明電極層12上へのコンタクトと接続されるか、n番目のセル3の表面透明電極層12とのコンタクトを形成された裏面電極パット上へのコンタクトを形成すればよい。
つぎに、上述した実施の形態2にかかるモジュールの製造方法について説明する。以下で示すプロセス技術は、基本的に一般的な薄膜太陽電池モジュールの製造方法と同じである。したがって、詳細な説明は行わず概略の説明を行う。図9−1〜図9−5は、実施の形態2にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程図である。なお、以下の図9−1〜図9−5において、(a)は実施の形態2にかかるモジュールの構成を示す断面図(図2に対応する断面図)であり、(b)は実施の形態2にかかるモジュールの構造を成膜面側(基板2と反対側)から見た要部平面図である。
まず、基板2上の全面に表面透明電極層12が形成され、セル3の形成領域を分離するP1スクライブ溝201が表面透明電極層12に形成される。P1スクライブ溝201は、基板2の長辺方向と平行な方向において表面透明電極層12の全幅において形成される。図9−1は、基板2上に表面透明電極層12が形成された後、P1スクライブ溝201が表面透明電極層12に形成された状態を示している。
この表面透明電極層12としては、例えばSnO2系やZnO2系などの透光性を有する透明導電膜が用いられている。また、この表面透明電極層12は、入射した光を散乱させるため、発電層となる半導体層13に光を閉じ込めることにより発電効率を改善するために、表面に凹凸形状を有する(図示せず)。このような表面透明電極層12は、一般的にはCVD法で形成する場合と、スパッタリング法で成膜された膜をウエットエッチングして形成する場合がある。
また、P1スクライブ溝201は、表面透明電極層12における各セル3の形成領域間の絶縁を図るために設けられ、表面透明電極層12にレーザースクライブにより基板2の長辺方向と平行に形成される。レーザースクライブには、例えば赤外線レーザーや紫外線レーザーが用いられる。レーザー光の照射は、基板2側(表面透明電極層12が形成されている面と反対側の基板2の表面)、表面透明電極層12が形成されている側のいずれの側から行っても構わない。なお、また、本実施の形態では素子領域の分離にはレーザースクライブを用いる方法について述べるが、パターニングやエッチング、印刷などの方法によるパターン形成を用いることも可能である。
つぎに、表面透明電極層12上の全面にp型半導体層13a、i型半導体層13b、n型半導体層13cよりなる半導体層13が形成され、半導体層13の素子分離領域となるP2スクライブ溝202が半導体層13に形成される。図9−2は、表面透明電極層12上に半導体層13が形成された後、P2スクライブ溝202が半導体層13に形成された状態を示している。
半導体層13のp型半導体層13a、i型半導体層13b、n型半導体層13cは、たとえばプラズマCVD法などによりシリコン薄膜層が形成される。この半導体層13は、P1スクライブ溝201内を埋めて形成される。前述の半導体層13のうち、i型半導体層13bが発電を行う層である。複数の半導体層13を積層化させる(一般にタンデム構造と呼ばれる)ことでより大きな発電をすることも可能である。
また、P2スクライブ溝202は、セル3における表面透明電極層12と裏面電極層14間のコンタクト部形成のために設けられ、レーザースクライブにより基板2の長辺方向と平行な方向において半導体層13の全幅に形成される。P2スクライブ溝202は、該P2スクライブ溝202を形成する領域のみにグリーンレーザー光を基板2越しに半導体層13に照射し、半導体層13を除去することにより基板2の長辺方向と平行に形成される。
つぎに、半導体層13上の全面に裏面電極層14が形成され、隣接するセル3間を分離するP3スクライブ溝203が形成される。図9−3は、半導体層13上に裏面電極層14が形成された後、P3スクライブ溝203が裏面電極層14および半導体層13に形成された状態を示している。
裏面電極層14は、たとえばスパッタリング法などにより形成される。半導体層13を表面透明電極層12と裏面電極層14とで挟むことによって、発電した電流を効率良く外部に取り出すことができる。裏面電極層14は、半導体層13を通過した光を再度半導体層13に供給するという目的から、光の反射率が高い方が好ましく、Al,Agなどがよく使われる。裏面電極層14と半導体層13との界面を安定させる目的で、半導体層13側に例えばZnO系の透明導電層などを用いて積層化させることも多い。
本実施の形態では、裏面電極層14は、例えば基板2側からSnO2系膜やZnO系膜などの透光性を有する透明導電膜と、例えばAgやAlなどの高反射金属膜とが積層されて構成される。裏面電極層14に用いる透明導電膜は、CVD法やスパッタリング法により、高反射金属膜はスパッタリング法により形成される。この裏面電極層14は、P2スクライブ溝202内を埋めて形成されるので、P2スクライブ溝202内の裏面電極層14部分により半導体層13上の裏面電極層14と、該半導体層13の下層の表面透明電極層12とが接続される。
P3スクライブ溝203は、レーザースクライブにより基板2の長辺方向と平行な方向において裏面反射電極層14の全幅に形成される。P3スクライブ溝203は、P3スクライブ溝203を形成する領域のみにグリーンレーザー光を基板2越しに半導体層13に照射し、半導体層13と裏面電極層14を除去することにより、基板2の長辺方向と平行に形成される。
つぎに、裏面電極層14上の略全面に誘電体層6が形成され、素子分離領域を形成するスクライブ溝204が形成される。図9−4は、裏面電極層14上に誘電体層6が形成された後、スクライブ溝204が形成された状態を示している。誘電体層6は、たとえばイオンプレーティング法などを用いて、P3スクライブ溝203を埋めて裏面電極層14上に形成される。誘電体層6は、誘電率および耐圧が共に高い方が好ましく、たとえばTiO2、Ta2O5などが低温での成膜が容易な高誘電率材料として挙げられる。スクライブ溝204は、基板2の長辺方向と平行な方向に、誘電体層6の全幅に形成される。
つぎに、誘電体層6上の全面に対向電極層7が形成され、キャパシタ領域を分離するスクライブ溝205が形成される。図9−5は、誘電体層6上に対向電極層7が形成された後、スクライブ溝205が形成された状態を示している。この対向電極層7は、スクライブ溝204内にも埋設されるので、スクライブ溝204内の対向電極層7部分により誘電体層6上の対向電極層7と、隣接するセル3の裏面電極層14とが電気的に接続される。
この場合、対向電極層7と誘電体層6との界面反応を抑制するために、酸化物透明導電膜を挿入する積層構造も有効である。スクライブ溝205は、基板2の長辺方向と平行な方向において対向電極層7の全幅に形成される。これにより、図9−5に示すような構造が得られ、キャパシタが接続されたセル3が電気的に直列接続された構造が得られる。
そして、基板2の短辺方向における左端の裏面電極層14上に左側取り出し電極5Lが接続され、基板2の短辺方向における右端の裏面電極層14上に右側取り出し電極5Rが接続される。これにより、図6および図7に示される実施の形態2にかかるモジュール構造が得られる。
つぎに、このようにキャパシタを内蔵した実施の形態2にかかるモジュールの受光面の一部に影等による動作不良が発生した場合の電流の流れについて説明する。図10は、実施の形態2にかかるモジュールにおける影発生時の電流の流れを模式的に示す断面図である。なお、図10では、左からm+1番目のセル212の受光面に影がかかり、電流起電力が低下した動作不良セルとなった場合の電流の経路を図に矢印で示している。また、図10では、キャパシタ15を流れる電流の経路を点線の矢印で示し、発電ユニット11の裏面電極層14、半導体層13、表面透明電極層12を流れる通常の電流の経路を実線の矢印で示している。また、図中においてセル3の受光面に影がかかり動作不良となり発電しない半導体層13の領域を黒色の塗りつぶし部で示している。
図11は、実施の形態2にかかるモジュールの等価回路図である。実施の形態2にかかるモジュールの内部では、全体的には左側のセル3から右側のセル3に向かって電流が流れる。この時に左からm+1番目のセル212が動作不良セルとなった場合には、左からm番目のセル211までは、正常な電流経路(図10中の実線矢印で示される経路)で電流が流れる。しかし、動作不良セルとなった左からm+1番目のセル212では、流せる電流が減少するため、左からm番目のセル211までのセルが流している電流に対して不足してしまう。
そこで、実施の形態2にかかるモジュールでは、図10に示したように、キャパシタ15に蓄積された電荷が電流源となって、図10中の点線矢印で示した経路で電流が流れ、電流の不足分を補填することができる。すなわち、実施の形態2にかかるモジュールでは、不足した電流を補充するためにキャパシタ15内に蓄積された電荷を利用して、図10中の図中の点線矢印で示したようにm+1番目のセル212に連結されたキャパシタ15から対向電極層7を通って左からm+2番目のセル213の裏面電極層14へ通じる経路に沿って電流を流すことができる。その結果、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)全体での電流低下に伴う発電量の低下を抑制できる。
このように、実施の形態2にかかるモジュールでは、実施の形態1の場合のように対向電極層7が表面透明電極層12ではなく、裏面電極層14に接続される方法を用いることによって、複数のセル3が電気的に直列接続されるモジュール構造においても容易にキャパシタ15を形成することが可能となる。これにより、実施の形態1の場合と同様に、キャパシタ15に蓄積された電荷を有効に活用して、モジュールにおける短期的な起電流の低下時にキャパシタから電荷をセル3に補填することが可能となる。
上述したように、実施の形態2にかかるモジュールでは、セル3の裏面に直結されたキャパシタ15に電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタ15から電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセル3の出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態2にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
実施の形態3.
実施の形態2において示したように、太陽電池モジュールにおいては一般的にセルの総数nは2より大きな値をとることが多い。そこで、実施の形態3では、複数(n>2)のセルを電気的に直列接続した構造の太陽電池モジュールに対して有効な方法について説明する。
実施の形態2において示したように、太陽電池モジュールにおいては一般的にセルの総数nは2より大きな値をとることが多い。そこで、実施の形態3では、複数(n>2)のセルを電気的に直列接続した構造の太陽電池モジュールに対して有効な方法について説明する。
実施の形態3では、実施の形態2において示した構造を有するモジュールでのキャパシタによる電流補填におけるキャパシタ容量について検討した結果について説明する。キャパシタの容量Cは、下記の式(1)で示される。
C=ε0×εr×S/d ・・・(1)
(Cはキャパシタの容量、ε0は真空の誘電率、εrは誘電体の比誘電率、Sはキャパシタと電極との接触面積[m2]、dは誘電体膜厚[m])
(Cはキャパシタの容量、ε0は真空の誘電率、εrは誘電体の比誘電率、Sはキャパシタと電極との接触面積[m2]、dは誘電体膜厚[m])
式(1)に示されるように、キャパシタの容量Cは、誘電体の比誘電率εrと、キャパシタと電極との接触面積とに比例し、誘電体膜厚dに反比例する。セルの受光面における飛来物の影などに起因した電流低下により不足する電流を不足電流Is[A]とし、前述のキャパシタ間の電位差(誘電体層6に対する電位差)(V_m+1)−(V_m)を用いると、キャパシタの放電可能時間(t)は、下記の式(2)で示される。
t={C×(V_m+1−V_m)}/Is ・・・(2)
この式から、キャパシタからセルへの電流補填をt秒間保持するために必要なキャパシタ容量Cを求めると、C=Is×t/(V_m+1−V_m)となる。
たとえば3層タンデム構造のセルが電気的に直列接続された構造において、(V_m+1)−(V_m)=2.0V、電流密度8mA/cm2とし、セルのサイズ(Sc)を10cm×1mとする。この場合においては、電流は約8A流れることになり、影の発生によって、あるセルにおける電流が1/10だけ不足する場合を想定すると、上記の式(2)において、Is=0.8A、(V_m+1)−(V_m)=2Vとなるため、t=2.5×C(秒)となる。
一般に瞬時電圧低下と呼ばれる場合の時間は0.05秒〜0.2秒であることから、瞬時電圧低下を回避させるのに必要なキャパシタ容量Cとしては、少なくとも0.02[F]必要であり、0.1[F]以上あれば秒単位での対応が可能となる。式(1)においてキャパシタの表面積を上記のセルサイズScと同様と考え、真空の誘電率ε0(8.854×10−12[F/m])を10×10−12[F/m]と近似して用いると、キャパシタの容量Cは約(εr/d)×10−12[F]となる。誘電体層6の膜厚を50nmとして考えた場合、εrは1000程度必要となる。高誘電材料においても誘電率としては数百程度であることを考慮すると、キャパシタの表面積を数倍程度に拡大させることができれば十分に効果が得られることがわかる。
つぎに、キャパシタ容量Cを大きくする方法について説明する。キャパシタ容量Cは、上記の式(1)に示されるように、誘電体の比誘電率εrと、キャパシタと電極との接触面積Sに比例し、誘電体膜厚dに反比例する。このため、キャパシタ容量Cを大きくする方法としては、(1)誘電体材料の比誘電率εrを向上させる、(2)誘電体膜厚dを薄くする、(3)キャパシタと電極との接触面積Sを広くする、という3つの方法が考えられる。
この中で、(1)および(2)に関しては、材料的な問題が大きい。具体的には、(1)の誘電体の誘電率εrを向上させる方法については、高誘電体材料を得るためには高温でのアニールなどが必要であり、ガラス基板を用いる場合にはプロセス的な制約を受ける場合がある。また、(2)の誘電体膜厚dを薄くする方法については、耐圧との関係を考慮する必要がある。誘電体層6が絶縁破壊を起こした場合には、セル間でのリークが発生することになるため、耐圧を考慮した膜厚の設定が必要となる。このため、キャパシタ容量Cの向上に対して、前記の(1)および(2)に関しては材料開発が進むことにより、性能向上が見込める部分であり、製造段階において、プロセス・コストを考慮して材料の選定を行うこととなる。一方、(3)キャパシタと電極との接触面積Sを広くする方法については、複数の方法が考えられ、以下ではこれらについて具体的に説明する。
なお、以下で説明するセルの形成方法においては、裏面電極層14が形成された前記図9−3の構造を得るまでは前記の実施の形態1の場合と基本的に同一であるので、これ以降の異なる工程のみを記述する。
(第1の方法)
キャパシタと電極との接触面積Sを広くする第1の方法は、裏面電極層14の誘電体層6側の表面を荒らす、すなわち粗面化する方法である。図12は、実施の形態3にかかる第1のモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態3にかかる第1のモジュールは、図8に示した実施の形態2にかかるモジュールにおいて裏面電極層14における誘電体層6との界面に凹凸301が形成された構造を有する。
キャパシタと電極との接触面積Sを広くする第1の方法は、裏面電極層14の誘電体層6側の表面を荒らす、すなわち粗面化する方法である。図12は、実施の形態3にかかる第1のモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態3にかかる第1のモジュールは、図8に示した実施の形態2にかかるモジュールにおいて裏面電極層14における誘電体層6との界面に凹凸301が形成された構造を有する。
このような実施の形態3にかかる第1のモジュールによれば、図8に示したように誘電体層6との界面が平坦な裏面電極層14を有する場合と比較して、裏面電極層14の誘電体層6との界面の表面積において、数十%の増大が実現できる。なお、このような構成の場合は、誘電体層6の膜厚は、裏面電極層14の表面の凹凸301の高さを考慮し、この凹凸301の高さに対して十分に厚い膜厚を用いる必要がある。
このような実施の形態3にかかる第1のモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールの製造工程において、裏面電極層14の形成後、サンドブラストなどを用いて裏面電極層14の表面に凹凸を形成した後にP3スクライブ溝203を形成することにより得られる。
(第2の方法)
キャパシタと電極との接触面積Sを広くする第2の方法は、キャパシタ構造を積層化させる方法である。図13は、実施の形態3にかかる第2のモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態3にかかるモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールと同様に多接合型薄膜太陽電池モジュールであり、裏面側(基板2と反対側)から見た構成は図6とほぼ同様である。図13においては、電気的に直列接続された複数のセル3のうち、左からm−2番目〜左からm+1番目のセルおよびキャパシタについて示しており、m>2である。なお、m番目のセル3の直上に形成されたキャパシタ構造については、セルと同様にm番目のキャパシタと呼ぶ。
キャパシタと電極との接触面積Sを広くする第2の方法は、キャパシタ構造を積層化させる方法である。図13は、実施の形態3にかかる第2のモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態3にかかるモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールと同様に多接合型薄膜太陽電池モジュールであり、裏面側(基板2と反対側)から見た構成は図6とほぼ同様である。図13においては、電気的に直列接続された複数のセル3のうち、左からm−2番目〜左からm+1番目のセルおよびキャパシタについて示しており、m>2である。なお、m番目のセル3の直上に形成されたキャパシタ構造については、セルと同様にm番目のキャパシタと呼ぶ。
図13に示すように、左からm番目のセル3の裏面電極層14は、m−1番目のキャパシタの対向電極層7aおよびm−2番目のキャパシタの対向電極層7bと電気的に接続されている。これにより、m−1番目のキャパシタの対向電極層7aおよびm−2番目のキャパシタの対向電極層7bは、m−1番目のセルの表面透明電極層12と同じ電位となる。また、左からm−1番目のセル3の裏面電極層14は、m−2番目のキャパシタの対向電極層7aと電気的に接続されている。これにより、m−1番目のセルの裏面電極層14とm−2番目のキャパシタの対向電極層7aとが同じ電位となる。
すなわち、m−2番目のセル3の直上では、対向電極層7bと対向電極層7aとの間(図13中におけるキャパシタ領域X)に第1層目キャパシタが形成され、m−1番目のセル3の直上では、対向電極層7aと裏面電極層14の間(図13中におけるキャパシタ領域Yと示す領域)に第2層目キャパシタが形成されている。そして、キャパシタ領域Xとキャパシタ領域Yとのキャパシタがスクライブ溝204aを介して接続されている。これにより、左からm−1番目のセル3における短期的な起電流の低下時に、m番目のセル3の裏面電極層14に電荷を補填する1つのキャパシタ構造が構成されている。
したがって、実施の形態3にかかる第2のモジュールにおいては、各セル3の直上に誘電体層6と対向電極層7bとが2層ずつ交互に積層されることにより各セル3の直上に第1層目キャパシタと第2層目キャパシタとが構成される。そして、セル3の第2層目キャパシタは、該セル3とセル番号の大きい側において隣接するセル3の第1層目キャパシタと電気的に接続することにより、1つのキャパシタ構造が構成されている。
このような実施の形態3にかかる第2のモジュールでは、領域Yのみにキャパシタ15が形成されている場合と比べて、概ね2倍のキャパシタ面積が得られている。したがって、実施の形態3にかかる第2のモジュールでは、1つのキャパシタに充電される電荷も概ね2倍となるため、保持時間、すなわちキャパシタの放電可能時間の長時間化が可能となる。なお、ここではキャパシタと電極との接触面積Sを2倍の表面積にする方法を説明したが、セル3の直列数以下であれば、誘電体層6と対向電極層7とを積層させていく方法を用いれば更に表面積を広げることが可能である。
つぎに、実施の形態3にかかる第2のモジュールの製造方法について説明する。図14−1〜図14−4は、実施の形態3にかかる第2のモジュールの製造方法を模式的に示す工程断面図である。このような実施の形態3にかかる第2のモジュールの製造においては、実施の形態2にかかるモジュールの製造工程の誘電体層6を形成した後にスクライブ溝204を形成する工程(図9−4に示す工程)までは実施の形態2にかかるモジュールの製造工程と同じ工程が実施される。なお、ここでは、誘電体層6の代わりに誘電体層6aが、スクライブ溝204の代わりにスクライブ溝204aが形成される。図14−1は、誘電体層6aが形成された後にスクライブ溝204aが形成された状態を示している。
つぎに、誘電体層6a上に対向電極層7aが形成される。図14−2は、対向電極層7aが形成された後にスクライブ溝205aが形成された状態を示している。この対向電極層7aは、スクライブ溝204a内にも埋設されるので、スクライブ溝204a内の対向電極層7a部分により誘電体層6a上の対向電極層7aと、隣接するセル3の裏面電極層14とが電気的に接続される。そして、対向電極層7aを厚み方向に貫通して誘電体層6aに達し、誘電体層同士の接続部となるスクライブ溝205aが形成される。
スクライブ溝205aは、誘電体層同士の接続部を形成するために設けられ、対向電極層7aにおける基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。また、スクライブ溝205aは、スクライブ溝204aに隣接するセル番号の大きなセル側の位置に形成される。
つぎに、対向電極層7a上に誘電体層6bが形成され、誘電体層6bを分離するスクライブ溝204bが形成される。図14−3は、誘電体層6bが形成された後にスクライブ溝204bが形成された状態を示している。この誘電体層6bは、スクライブ溝205a内にも埋設されるので、スクライブ溝205a内の誘電体層6b部分により、対向電極層7a上の誘電体層6bが、セル3の直列接続方向における下流側(セル番号の大きい側に)に隣接するセル3の裏面電極層14上の誘電体層6aと、が接続される。スクライブ溝204bは、誘電体層同士の接続部を形成するために設けられ、対向電極層7aにおける基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
つぎに、誘電体層6b上に対向電極層7bが形成され、キャパシタ領域を分離するスクライブ溝205bが形成される。図14−4は、誘電体層6b上に対向電極層7bが形成された後、スクライブ溝205bが形成された状態を示す。この対向電極層7bは、スクライブ溝204b内にも埋設されるので、スクライブ溝204b内の対向電極層7b部分により誘電体層6b上の対向電極層7bと、直列接続方向における下流側(セル番号の大きい側に)に隣接するセル3の対向電極層7bとが電気的に接続される。スクライブ溝205bは、基板2の長辺方向と平行な方向において対向電極層7bの全幅に形成される。
これにより、図13に示すように、キャパシタが接続されたセル3が電気的に直列接続されたモジュール構造が得られ、図13に示される実施の形態3にかかる第2のモジュールが得られる。
上述した方法を用いることによって、キャパシタと電極との接触面積Sを増加させることができ、電流低下時に対応できる時間、すなわちキャパシタの放電可能時間を延ばすことができる。また、上記の2つの方法を併用することにより、さらにキャパシタの容量を増大させることも可能である。
上述したように、実施の形態3にかかるモジュールでは、セル3の裏面に直結されたキャパシタ15に電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタ15から電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセル3の出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態3にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
そして、実施の形態3にかかるモジュールでは、キャパシタと電極との接触面積Sを増加させることにより、セル3の電流低下時にキャパシタ15から電荷を補填できる時間、すなわちキャパシタの放電可能時間を延ばすことができる。
実施の形態4.
実施の形態4では誘電体層の折り返し構造を用いて5層のキャパシタが重なり合った構造とすることにより、キャパシタの面積を概ね5倍に増加させる例について説明する。図15は、実施の形態4にかかるモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態4にかかるモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールと同様に多接合型薄膜太陽電池モジュールであり、裏面側(基板2と反対側)から見た構成は図6とほぼ同様である。
実施の形態4では誘電体層の折り返し構造を用いて5層のキャパシタが重なり合った構造とすることにより、キャパシタの面積を概ね5倍に増加させる例について説明する。図15は、実施の形態4にかかるモジュールの構造を模式的に示す要部断面図である。実施の形態4にかかるモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールと同様に多接合型薄膜太陽電池モジュールであり、裏面側(基板2と反対側)から見た構成は図6とほぼ同様である。
実施の形態4にかかるモジュールにおいては、各セル3の裏面電極層14上に該裏面電極層14側から誘電体層6a、対向電極層7a、誘電体層6ba、電極層411a、誘電体層6bb、対向電極層7b、誘電体層6ca、電極層411b、誘電体層6cb、対向電極層7cがこの順で積層されてキャパシタ15が構成されている。誘電体層6aと誘電体層6ba、誘電体層6baと誘電体層6bb、誘電体層6bbと誘電体層6ca、誘電体層6caと誘電体層6cbとは、それぞれ基板2の短辺方向における一方の端部において接続されている。
また、電極層411bは、対応するセル3の裏面電極層14に電気的に接続するとともに、電極層411aにも電気的に接続している。対向電極層7cは、直列接続方向において下流側に隣接するセル3の裏面電極層14に電気的に接続するとともに、対向電極層7bおよび対向電極層7aにも電気的に接続している。これにより、実施の形態4にかかるモジュールでは、各セル3上に設けられたキャパシタは、3つのキャパシタが直列接続された構造を有する。
このような構成を有することにより、実施の形態4にかかるモジュールは誘電体層の折り返し構造を用いて5層のキャパシタが重なり合った構造とされ、キャパシタと電極との接触面積Sを増加させることができる。これにより、セル3の電流低下時にキャパシタ15から電荷を補填できる時間、すなわちキャパシタの放電可能時間を延ばすことができる。
つぎに、実施の形態4にかかるモジュールの製造方法について説明する。図16−1〜図16−7は、実施の形態4にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程断面図である。このような実施の形態4にかかるモジュールの製造においては、まず実施の形態2にかかるモジュールの製造工程の誘電体層6を形成する工程(図9−4に示す工程の途中)までは実施の形態2にかかるモジュールの製造工程と同じ工程が実施される。なお、ここでは、誘電体層6の代わりに誘電体層6aが形成される。
つぎに、誘電体層6a上に対向電極層7aが形成される。そして、対向電極層7aを厚み方向に貫通して誘電体層6aに達し、対向電極層7aを基板2の短辺方向(図16−1における左右方向)において分離するスクライブ溝401aが対向電極層7aに形成される。図16−1は、対向電極層7aが形成された後にスクライブ溝401aが形成された状態を示している。スクライブ溝401aは、誘電体層同士の接続部を形成するために設けられ、対向電極層7aにおける基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
つぎに、対向電極層7a上に誘電体層6baと電極層411aとがこの順で形成され、電極層411aを基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝402aが形成される。図16−2は、電極層411aが形成された後にスクライブ溝402aが形成された状態を示している。この誘電体層6baは、スクライブ溝401a内にも埋設されるので、スクライブ溝401a内の誘電体層6ba部分により、対向電極層7a上の誘電体層6baと該対向電極層7aの直下の誘電体層6aとが接続される。スクライブ溝402aは、誘電体層同士の接続部を形成するために設けられ、電極層411aにおける基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
つぎに、電極層411a上に誘電体層6bbと対向電極層7bとがこの順で形成され、対向電極層7bを基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝401bが形成される。図16−3は、電極層411a上に誘電体層6bbと対向電極層7bとが形成された後、スクライブ溝401bが形成された状態を示している。この誘電体層6bbは、スクライブ溝402a内にも埋設されるので、スクライブ溝402a内の誘電体層6bb部分により電極層411a上の誘電体層6bbと、該電極層411aの直下の誘電体層6baとが接続される。スクライブ溝205bは、基板2の長辺方向と平行な方向において対向電極層7bの全幅に形成される。
つぎに、対向電極層7b上に誘電体層6caが形成され、誘電体層6caから裏面電極層14までの各層を基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝403が形成される。図16−4は、誘電体層6caが形成された後にスクライブ溝403が形成された状態を示している。この誘電体層6caは、スクライブ溝401b内にも埋設されるので、スクライブ溝401b内の誘電体層6ca部分により、対向電極層7b上の誘電体層6caと該対向電極層7bの直下の誘電体層6bbとが接続される。スクライブ溝403は、電極層と裏面電極層14との接続部を形成するために設けられ、誘電体層6caから裏面電極層14までの各層を厚み方向に貫通して基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
ここで、スクライブ溝403は、基板2の短辺方向において少なくとも溝の片側がスクライブ溝401aおよびスクライブ溝401bが形成された領域に重なり、一部が電極層411aに重なるようにする。これは、つぎに形成される電極層411bと、対向電極層7aおよび対向電極層7bとを電気的に分離するための配置である。
つぎに、誘電体層6ca上に電極層411bが形成され、電極層411bを基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝402bが形成される。図16−5は、電極層411bが形成された後にスクライブ溝402bが形成された状態を示している。この電極層411bは、スクライブ溝403内にも埋設されるので、スクライブ溝403a内の電極層411b部分により、誘電体層6ca上の電極層411bと裏面電極層14とが電気的に接続される。また、電極層411aも、スクライブ溝403の側面部分を介して電極層411bおよび裏面電極層14と電気的に接続される。スクライブ溝402bは、誘電体層同士の接続部を形成するために設けられ、電極層411bにおける基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
つぎに、電極層411b上に誘電体層6cbが形成され、誘電体層6cbから裏面電極層14までの各層を基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝404が形成される。図16−6は、誘電体層6cbが形成された後にスクライブ溝404が形成された状態を示している。この誘電体層6cbは、スクライブ溝402b内にも埋設されるので、スクライブ溝402b内の誘電体層6cb部分により、電極層411b上の誘電体層6cbと該電極層411bの直下の誘電体層6caとが接続される。スクライブ溝403は、対向電極層と裏面電極層14との接続部を形成するために設けられ、誘電体層6cbから裏面電極層14までの各層を厚み方向に貫通して基板2の長辺方向に平行な方向の全幅に形成される。
つぎに、誘電体層6cb上に対向電極層7cがこの順で形成され、対向電極層7cから裏面電極層14までの各層を基板2の短辺方向において分離するスクライブ溝405が形成される。図16−7は、誘電体層6cb上に対向電極層7cが形成された後、スクライブ溝405が形成された状態を示している。ここで、スクライブ溝405は、基板2の短辺方向において少なくとも一部が対向電極層7bおよび対向電極層7aに重なるように、スクライブ溝404とスクライブ溝403との間の領域に形成される。
この対向電極層7cは、スクライブ溝404内にも埋設されるので、スクライブ溝404内の対向電極層7c部分により誘電体層6cb上の対向電極層7cと裏面電極層14とが電気的に接続される。また、対向電極層7bおよび対向電極層7aも、スクライブ溝405の側面部分を介して対向電極層7cおよび裏面電極層14と電気的に接続される。スクライブ溝405は、対向電極層7cから裏面電極層14までの各層を厚み方向に貫通して基板2の長辺方向と平行な方向において全幅に形成される。
これにより、セルの上部において5層のキャパシタが折り重なって接続された構造が得られ、図15に示される実施の形態4にかかるモジュールが得られる。
なお、上述した図16−1〜図16−3に示した工程においては、誘電体層と電極層とを連続して形成しており、一部の電極層(対向電極層7a、対向電極層7b、対向電極層7c)はスクライブ溝の側面においてスクライブ溝に埋設された電極層と電気的な接続を取っていることから、接触抵抗が大きくなったり、接触不良を生じる可能性がある。この対策として、誘電体層の形成後、電極層の形成前にスクライブ溝を作製し、下層の電極層とのコンタクト溝を形成することも可能である。
上述したように、実施の形態4にかかるモジュールでは、上述した実施の形態と同様にセルの裏面に直結されたキャパシタ15に電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタ15から電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセル3の出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態4にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
また、実施の形態4にかかるモジュールでは、誘電体層の折り返し構造を用いて5層のキャパシタが重なり合った構造とすることによりキャパシタと電極との接触面積Sを増加させることができる。これにより、セル3の電流低下時にキャパシタ15から電荷を補填できる時間、すなわちキャパシタの放電可能時間を延ばすことができる。
そして、実施の形態4にかかるモジュールでは、実施の形態3における第2の方法(図13参照)の場合にはキャパシタと電極との接触面積Sを増加させることができなかった基板2の短辺方向における端部のセルに対しても、キャパシタと電極との接触面積Sを増加させたキャパシタを付加することが可能となる。これにより、基板2の短辺方向における端部のセルに対しても、キャパシタの放電可能時間を延ばすことができる。
実施の形態5.
実施の形態5では、キャパシタに対して生じる電位差を大きくする方法について説明する。図17−1〜図17−3は、実施の形態5にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程図である。図17−1〜図17−3において、(a)は、実施の形態5にかかるモジュールのセルの長辺方向の中心付近におけるD−D断面を示し、(b)は、実施の形態5にかかるモジュールの構造を成膜面側(基板2と反対側)から見た要部平面図であり、(c)は、実施の形態5にかかるモジュールのセルの長辺方向の端部付近におけるE−E断面を示す。
実施の形態5では、キャパシタに対して生じる電位差を大きくする方法について説明する。図17−1〜図17−3は、実施の形態5にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程図である。図17−1〜図17−3において、(a)は、実施の形態5にかかるモジュールのセルの長辺方向の中心付近におけるD−D断面を示し、(b)は、実施の形態5にかかるモジュールの構造を成膜面側(基板2と反対側)から見た要部平面図であり、(c)は、実施の形態5にかかるモジュールのセルの長辺方向の端部付近におけるE−E断面を示す。
まず、実施の形態2において説明した方法により、裏面電極層14の成膜およびスクライブ溝203の形成によって、図9−3に示した構成を得る。図17−1は、図9−3の構成の一部を拡大して示している。
つぎに、裏面電極層14上に誘電体層6が形成され、膜厚方向において貫通して裏面電極層14まで達して誘電体層6を分離するスクライブ溝204が形成される。図17−2は、裏面電極層14上に誘電体層6が形成された後、スクライブ溝204が形成された状態を示している。この誘電体層6は、スクライブ溝203内にも埋設されるので、スクライブ溝203内の誘電体層6部分により裏面電極層14上の誘電体層6と、該誘電体層6の下層に配置された表面透明電極層12とが電気的に接続される。
ここで、スクライブ溝204の形成においては、モジュールにおける左から奇数番目のセル領域上では、セルの長辺方向における一端側、たとえば図17−2(b)においては上側に、スクライブ溝204が形成されていない未切断領域501が設けられる。また、モジュールにおける左から偶数番目のセル領域上では、セルの長辺方向における他端側、たとえば図17−2(b)においては下側に、スクライブ溝204が形成されていない未切断領域501が設けられる。なお、未切断領域501の形成パターンは、上記のパターンと逆としてもかまわない。
つぎに、誘電体層6上に対向電極層7が形成され、対向電極層7を分離するスクライブ溝205が形成される。図17−3は、誘電体層6上に対向電極層7が形成された後、スクライブ溝205が形成された状態を示している。この対向電極層7は、スクライブ溝204内にも埋設されるので、スクライブ溝204内の対向電極層7部分により誘電体層6上の対向電極層7と、該誘電体層6の下層に配置された裏面電極層14とが電気的に接続される。そして、このスクライブ溝204内の対向電極層7部分により誘電体層6上の対向電極層7と、該対向電極層7の下層に配置された裏面電極層14とが電気的に接続される。
ここで、スクライブ溝205は、左からm番目のセルの裏面電極層14に対向する対向電極層7が、左からm+2番目のセルの裏面電極層14と接続されるように基板面方向においてパターニングされる。すなわち、左からm番目のセル領域上の対向電極層7は、左からm+1番目のセル領域上の対向電極層7と電気的に分離されるように、且つ左からm+2番目のセルの裏面電極層14と接続されるように、未切断領域501を含む基板2の長辺方向における外周縁部の領域を接続領域として、左からm+2番目のセル領域上のスクライブ溝204上の対向電極層7と接続される。この場合のモジュールにおけるセルの直列接続数は、3以上である。
この場合のモジュールの等価回路図は、図18のようになる。図18は、実施の形態5にかかるモジュールの等価回路図である。図18の等価回路図からわかるように、左からm番目のセルの裏面電極層14に対向する対向電極層7は、左からm+2番目のセルの裏面電極層14と接続されている。これにより、実施の形態2にかかるモジュールと比較した場合、キャパシタ24にかかる電界は2層の半導体層13で形成される電位差を反映する、すなわち、キャパシタに対して生じる電位差が2倍になることから、キャパシタ24に充電される電荷も2倍になり、キャパシタ24の容量を2倍にすることができる。
上述したように、実施の形態5にかかるモジュールでは、上述した実施の形態と同様にセルの裏面に直結されたキャパシタに電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタから電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセルの出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態5にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
そして、実施の形態5にかかるモジュールでは、左からm番目のセル領域上の対向電極層を左からm+2番目のセル領域上の裏面電極層と接続することにより、キャパシタの容量を2倍にすることができる。したがって、実施の形態5によれば、キャパシタに対して生じる電位差を大きくすることにより、キャパシタに充填される電荷を増大させることができる。
実施の形態6.
モジュールの幅(ここでは短辺方向)全体にセルを形成してモジュールの幅方向にセルの直列接続を実施している場合には、セル中に流れる電流が大きくなり、また微小な断線やショートがモジュール全体の出力に大きな影響を及ぼす。このため、上述したように複数のセルを電気的に直列接続する構成だけではなく、図19に示すようにセルの最表面から基板2に達するスクライブ溝601を用いて、マトリックス形状にセルを分離する方法が取られる。図19は、マトリックス形状にセルが分離された多接合型薄膜太陽電池モジュール(以下、単にモジュールと呼ぶ場合がある)の構造を模式的に示す平面図である。
モジュールの幅(ここでは短辺方向)全体にセルを形成してモジュールの幅方向にセルの直列接続を実施している場合には、セル中に流れる電流が大きくなり、また微小な断線やショートがモジュール全体の出力に大きな影響を及ぼす。このため、上述したように複数のセルを電気的に直列接続する構成だけではなく、図19に示すようにセルの最表面から基板2に達するスクライブ溝601を用いて、マトリックス形状にセルを分離する方法が取られる。図19は、マトリックス形状にセルが分離された多接合型薄膜太陽電池モジュール(以下、単にモジュールと呼ぶ場合がある)の構造を模式的に示す平面図である。
ここでは、k列S行のマトリックス形状に分割されたセルを個別セル602と呼ぶ。図19に示すようにセルがマトリックス形状に分離されている場合は、図6に示したモジュールにおいて1つのセルに流れていた電流がk分割される、すなわち、個別セル602に流れる電流は、図6に示したモジュールにおいて1つのセルに流れていた電流の1/kになり、大電流を流すことによる課題(例えばエレクトロマイグレーションなど)が軽減される効果が得られる。
また、図19に示すモジュールでは、複数のセルがセルの行方向に電気的に直列接続されたセル群が、セルの列方向に複数列だけ電気的に並列接続される。このため、そのうちの1列のセル群に不具合が生じた場合においても、モジュール全体の出力が落ちることを防ぐこともできる。また、このような場合においても、上述した実施の形態2〜5の構造を適用できる。すなわち、上述した実施の形態2〜5の構造を作製した後、スクライブ溝601を最表面の対向電極層から基板2まで到達するように形成ことにより、複数のセルが電気的に直列接続されたセル群が複数列だけ電気的に並列接続された構造が得られ、各実施の形態における効果が得られる。さらに、このようなセル接続構造に対して、個別セル602のサイズに対してキャパシタの容量を大きくすることができる。
以下では、図19に示すようなマトリックス形状のセル接続構造において、個別セル602のサイズに対してキャパシタの容量を大きくする方法について説明する。図20−1および図20−2は、実施の形態6にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程図である。図20−1および図20−2において、(a)は図9−1〜図9−5の(a)に対応する要部断面図、(b)は図9−1〜図9−5の(b)に対応する要部平面図である。また、図20−1および図20−2において、(b)は(a)におけるF−F断面図である。
まず、実施の形態2において説明した方法により、裏面電極層14の成膜およびスクライブ溝203の形成によって、図9−3に示した構成を得る。そして、セル3を個別セル602に分割するスクライブ溝601が形成される。図20−1は、スクライブ溝601が形成された状態を示している。その後は前述の実施の形態2と同様に誘電体層6および対向電極層7を形成する。図20−2は、スクライブ溝601が形成された後に、誘電体層6および対向電極層7が形成された状態を示す。
これにより、セル部分、すなわち発電を行う半導体層13の部分がマトリックス形状の個別セル602に分割されて列方向に電気的に直列接続されているのに対して、キャパシタ15の部分は、行方向においては各個別セル602に対応して分割されているが、セルの列方向(セル群の並列方向)においては分割されていない状態(同一行番号の領域は分割されていない状態)を得ることができる。
この場合の等価回路図は、図21のようになる。図21は、実施の形態6にかかるモジュールの等価回路図である。図21の等価回路図からわかるように、実施の形態6にかかるモジュールでは、個別セル602のうち、ほぼ同電位となる個別セル602同士が対向電極層7を共有する構成となる。すなわち、同じ行番号を有して列方向に並ぶ異なる個別セル602同士が対向電極層7を共有する構成となる。したがって、個別セル602の立場から見れば、各個別セル602には、列数倍(この場合ではk倍)の容量のキャパシタが接続されているということになる。したがって、小さな電流が流れている個別セル602に対して大きな容量のキャパシタを接続することができ、受光面における影などの発生の際における電流の補填時間を長くすることができる。
なお、本実施の形態では、キャパシタ15の部分が列方向は全く分離されていない状態について述べたが、列方向に複数の個別セル602が対向電極層7を共有する形になれば、キャパシタ容量増加の効果は得られる。本実施の形態で述べた、全ての列のキャパシタ15(対向電極層7)を接続する方法は、キャパシタ容量を増加させる点では最も望ましい形態である。また、列番号1と列番号kの領域に対して実施の形態5の構造を適用し、列番号2から列番号k−1までの領域ではキャパシタが列方向に分離されない構造を適用することにより、列番号1と列番号kの領域においてキャパシタにかかる電界を2倍にすることも可能である。
また、実施の形態3における第1の方法および第2の方法で説明した構造と、実施の形態4において説明した構造および本実施の形態において行数を30行とした構造を併用することで、キャパシタ面積は実質300〜500倍に拡大させることが可能である。実施の形態2中で述べた例において、誘電体層6の比誘電率として1000程度が必要であることが示唆されたことから、誘電体層6の比誘電率として1000程度以上であれば誘電体層6の比誘電率としては2程度であっても構造によっては、十分瞬時電圧低下に対応できる可能性があることがわかる。すなわち、裏面電極層14における誘電体層6と接する面の面積が、裏面電極層7における半導体層13と接する面の面積の500倍以上であり、誘電体層6の比誘電率が2以上であることにより、セル3の瞬時電圧低下の抑制が可能なキャパシタ要領を得ることができる。
なお、セルの直列接続行数が増加することによって発電できないスクライブ溝601の領域が増加することを考慮すると、セルの直列接続行数は10から20が適当と考えられる。また、実施の形態3における第2の方法においても工程数の増加抑制を考慮すると、誘電体層6の比誘電率は10程度ある方が好ましい。
上述したように、実施の形態6にかかるモジュールでは、上述した実施の形態と同様にセルの裏面に直結されたキャパシタに電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタから電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセルの出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態6にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
そして、実施の形態6にかかるモジュールでは、セル部分がn行k列のマトリックス形状の個別セル602に分割され、行方向において個別セル602が直列接続方向に配列されて電気的に直列接続されたセル群が、列方向においてk列に配列されて電気的に並列接続される。一方、キャパシタ部分は、誘電体層6および対向電極層7が個別セル602のマトリックス形状に対応したn行に分離されるとともにセル群の列方向の配列位置に対応してk−1以下の行に分離されて配置される。これにより、マトリックス形状の個別セル602のうち、ほぼ同電位となる個別セル602同士が対向電極層7を共有する構成となり、同じ行番号を有して列方向に並ぶ異なる個別セル602同士が対向電極層7を共有する構成となる。
したがって、実施の形態6にかかるモジュールでは、小さな電流が流れている個別セル602に対して大きな容量のキャパシタを接続することができ、受光面における影などの発生の際における電流の補填時間を長くすることができる。
実施の形態7.
実施の形態2における図8に示した構造において、誘電体層6の絶縁破壊が発生する可能性もあるため、その対策を検討しておく必要がある。作製時の異物などに起因したピンホールなどが絶縁破壊の原因となることもあるため、膜厚などで耐圧に対してマージンをとるとともに、キャパシタを直列に接続するなどして、一部で破壊が生じた場合においても対応できる構造が必要となる。
実施の形態2における図8に示した構造において、誘電体層6の絶縁破壊が発生する可能性もあるため、その対策を検討しておく必要がある。作製時の異物などに起因したピンホールなどが絶縁破壊の原因となることもあるため、膜厚などで耐圧に対してマージンをとるとともに、キャパシタを直列に接続するなどして、一部で破壊が生じた場合においても対応できる構造が必要となる。
図22は、実施の形態7にかかるモジュールの構造を模式的に示す要部断面図であり、図8に対応する図である。実施の形態7にかかるモジュールは、実施の形態2にかかるモジュールと同様に多接合型薄膜太陽電池モジュールであり、裏面側(基板2と反対側)から見た構成は図6とほぼ同様である。
実施の形態7にかかるモジュールにおいては、裏面電極層14上に該裏面電極層14側から誘電体層6a、対向電極層7a、誘電体層6b、対向電極層7b、誘電体層6c、対向電極層7cがこの順で積層されている。そして、対向電極層7cが直列接続方向において下流側に隣接するセル3の裏面電極層14に電気的に接続されている。これにより、実施の形態7にかかるモジュールでは、各セル3上に設けられたキャパシタは、3つのキャパシタが直列接続された構造を有する。
つぎに、実施の形態7にかかるモジュールの製造方法について説明する。図23−1〜図23−3は、実施の形態7にかかるモジュールの製造方法を模式的に示す工程断面図である。このような実施の形態7にかかるモジュールの製造においては、まず実施の形態2にかかるモジュールの製造工程の誘電体層6を形成する工程(図9−4に示す工程の途中)までは実施の形態2にかかるモジュールの製造工程と同じ工程が実施される。なお、ここでは、誘電体層6の代わりに誘電体層6aが形成される。
つぎに、誘電体層6a上の全面に対向電極層7a、誘電体層6b、対向電極層7bがこの順で積層形成され、膜厚方向において対向電極層7bの表面から誘電体層6aに達するスクライブ溝701が形成される。図23−1は、誘電体層6a上に対向電極層7a、誘電体層6b、対向電極層7bが形成された後、スクライブ溝701が形成された状態を示している。スクライブ溝701は、基板2の長辺方向と平行な方向において各層の全幅に形成される。
つぎに、対向電極層7b上の全面に誘電体層6cが形成され、裏面電極層14へのコンタクト形成用のスクライブ溝702が形成される。図23−2は、誘電体層6a上に誘電体層6cが形成された後、スクライブ溝702が形成された状態を示している。スクライブ溝702は、誘電体層6cから誘電体層6aまでの各層を厚み方向に貫通して裏面電極層14に達するように、基板2の長辺方向と平行な方向において各層の全幅に形成される。
つぎに、誘電体層6c上の全面に対向電極層7cが形成され、対向電極層7cから誘電体層6aまでを基板2の短辺方向においてキャパシタ毎に分離するスクライブ溝703が形成される。図23−3は、誘電体層6c上に対向電極層7cが形成された後、スクライブ溝703が形成された状態を示している。スクライブ溝703は、基板2の長辺方向と平行な方向において各層の全幅に形成される。この対向電極層7cは、スクライブ溝702内にも埋設されるので、スクライブ溝702内の対向電極層7c部分により誘電体層6c上の対向電極層7cと裏面電極層14とが電気的に接続される。
この場合の等価回路図は、図24のようになる。図24は、実施の形態7にかかるモジュールの等価回路図である。図24の等価回路図からわかるように、実施の形態7にかかるモジュールでは、3つのキャパシタが直列接続されたキャパシタ直列接続構造704が得られる。これにより、キャパシタの一部で破壊が生じた場合でもキャパシタ全体が絶縁破壊されることを抑制することができ、絶縁破壊によるセル間のリーク電流の発生を抑制することが可能となる。
なお、ここでは3つのキャパシタの直列接続の構成について示しているが、キャパシタの直列接続数に関しては3に限られるものではない。
上述したように、実施の形態7にかかるモジュールでは、上述した実施の形態と同様にセルの裏面に直結されたキャパシタに電荷が充電される構造を得ることができ、該モジュールにおける短期的な起電流の低下時に、キャパシタから電荷を補填することが可能となる。これにより、モジュールの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する電流低下に伴う発電量の低下を抑制することができ、電気的に直列接続されたセル群(モジュール)のうちの一部のセルの出力低下に伴うセル群(モジュール)全体の出力低下を抑止することが可能となる。したがって、実施の形態7にかかるモジュールでは、発電特性と信頼性に優れた薄膜太陽電池モジュールが得られる。
そして、実施の形態7にかかるモジュールでは、各セル3上に設けられたキャパシタは、3つのキャパシタが直列接続された構造を有する。これにより、キャパシタの一部で破壊が生じた場合でもキャパシタ全体が絶縁破壊されることを抑制することができ、絶縁破壊によるセル間のリーク電流の発生(ショート)を抑制でき、キャパシタの挿入効果を維持することが可能となる。
なお、上述した実施の形態のうち任意の構造を組み合わせて用いることができることができ、モジュール内のセル接続方式に無関係に受光面における小さな範囲での電流低下の補正が可能である。
以上のように、本発明にかかる薄膜太陽電池モジュールは、太陽電池セルの受光面における飛来物の影などが原因となり、短時間の周期で発生する太陽電池セルの電流低下に伴うモジュール全体の出力低下の抑止に有用である。
1 薄膜太陽電池モジュール(モジュール)、2 透光性絶縁基板(基板)、3 薄膜太陽電池セル(セル)、4 外周縁部膜除去領域、5 取り出し電極、5L 左側取り出し電極、5R 右側取り出し電極、6,6a,6b,6ba,6bb,6ca,6cb 誘電体層、7,7a,7b,7c 対向電極層、11 発電ユニット、12 表面透明電極層、13 半導体層、13a p型半導体層、13b i型半導体層、13c n型半導体層、14 裏面電極層、15 キャパシタ、21 電流源、22 ダイオード、23 並列接続構造、24 キャパシタ、101,102,103 スクライブ溝、201 P1スクライブ溝、202 P2スクライブ溝、203 P3スクライブ溝、204,204a,204b,205,205a,205b スクライブ溝、211 左からm番目のセル、212 左からm+1番目のセル、213 左からm+2番目のセル、301 凹凸、401a,401b,402a,402b,403,403a,404,405 スクライブ溝、411a,411b 電極層、501 未切断領域、601 スクライブ溝、602 個別セル、701,702,703 スクライブ溝、704 キャパシタ直列接続構造、X キャパシタ領域、Y キャパシタ領域。
Claims (10)
- 表面透明電極層と半導体層と裏面電極層とをこの順で備え、
前記裏面電極層における前記半導体層と反対側の面と、前記半導体層における発電時に前記裏面電極層と異なる電位を有する対向電極層と、の間に誘電体層が挟持されて前記裏面電極層と前記誘電体層と前記対向電極層とにより構成されるキャパシタを有する薄膜太陽電池セルを用いること、
を特徴とする薄膜太陽電池モジュール。 - 前記薄膜太陽電池セルまたは前記薄膜太陽電池モジュールが、電気的に直列接続されること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記キャパシタでは、前記直列接続における陰極側を上流側とした場合における上流側からn番目の前記薄膜太陽電池セルの前記裏面電極層と対向する前記対向電極層が、前記直列接続における上流側からn番目の前記薄膜太陽電池セルの前記表面透明電極層と電気的に接続していること、
を特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記キャパシタでは、前記直列接続における上流側からn番目の前記薄膜太陽電池セルの前記裏面電極層と対向する前記対向電極層が、前記直列接続における上流側からn+1番目の前記薄膜太陽電池セルの前記裏面電極層と電気的に接続していること、
を特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記キャパシタでは、前記直列接続における上流側からn番目の前記薄膜太陽電池セルの前記裏面電極層と対向する前記対向電極層が、前記直列接続における上流側からn+2番目の前記薄膜太陽電池セルの前記裏面電極層と電気的に接続していること、
を特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記裏面電極層における前記誘電体層と接する面の面積が、前記裏面電極層における前記半導体層と接する面の面積よりも広いこと、
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記裏面電極層および前記裏面電極層と電気的に接続された1または複数の電極層を一方の電極層とし、
前記対向電極層および前記対向電極層と電気的に接続された1または複数の電極層を他方の電極層とし、
前記裏面電極層の前記半導体層と反対側において前記一方の電極層と前記他方の電極層との間に前記誘電体層が挿入された構造を有すること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記薄膜太陽電池セルがn行k列のマトリックス形状に分離され、
行方向におけるn個の前記薄膜太陽電池セルが電気的に直列接続されたセル群が、列方向においてk列に配列されて電気的に並列接続され、
前記キャパシタでは、前記誘電体層および前記対向電極層が、前記薄膜太陽電池セルのマトリックス形状に対応したn行に分離されるとともに前記セル群の列方向の配列位置に対応してk−1以下の行に分離されて配置されていること、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記裏面電極層における前記誘電体層と接する面の面積が、前記裏面電極層における前記半導体層と接する面の面積の500倍以上であり、
前記誘電体層の比誘電率が2以上であること、
を特徴とする請求項8に記載の薄膜太陽電池モジュール。 - 前記裏面電極層と前記対向電極層との間に複数層のキャパシタが電気的に直列に接続された構造を有すること、
を特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池モジュール。
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