JP2014146958A - 水晶発振器 - Google Patents

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洋平 中嶋
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Abstract

【課題】周波数安定度が高い発振装置を提供すること。
【解決手段】水晶振動子20,30が置かれる雰囲気(容器11)の温度を検出し、温度の検出結果に基づいて、前記雰囲気の温度を制御する発振装置1を実装した後、発振装置1の電源部13を投入する。電源部13が投入されると、ペルチェ素子6を一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させるプログラムが実行される。前記ペルチェ素子6の昇降温が終了すると、温度の検出結果に基づいて、容器11内が設定温度になるようにペルチェ素子6の温度を温度制御回路8により調整して、発振出力を取得する。ペルチェ素子6を昇降温させると、水晶振動子のパッケージ4とプリント基板12とのハンダ付け部分や導電性接着剤44の熱歪が小さくなってヒステリシス特性が改善されるため、周波数安定度が向上する。
【選択図】図4

Description

本発明は、水晶振動子が置かれる雰囲気の温度を検出し、温度の検出結果に基づいて、前記雰囲気の温度を制御する恒温槽付きの発振装置に関する。
恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)は、水晶振動子の動作温度を一定に保つことにより、温度変化に伴う発振周波数の変化を抑えた発振器である。このOCXOは、広い温度範囲に亘って安定した周波数を供給することができる発振器として知られている。
ところで、発振器は通常ユーザにてプリント基板へ実装される。この実装では、例えばプリント基板上にハンダペーストを印刷し、その上に発振器を載せてからリフロー炉において例えば230℃以上に加熱して、ハンダを溶かすリフロー方式が用いられている。このようにリフロー時に発振器は高温環境下に置かれるため、熱影響により特性が変化し、出力の安定度が低下するおそれがある。近年、さらに高い周波数特性が要求されるアプリケーションに発振器を組み込むことが予想され、OCXOから外れた温度となったときのために、温度補償水晶発振器(TCXO)のような温度補償機能を備えた発振器が検討されている。しかしながら、発振器の性能を高めたとしても、実装時の熱影響により製品としての周波数安定度が劣化するおそれが払拭できず、この対策が求められている。
特許文献1には、圧電振動子に対する周囲環境温度を平準化し安定させるために、発熱体としてペルチェ素子を用いる構成が記載されている。特許文献2には、温度制御型水晶発振器において、水晶発振器の電源立ち上げ当初における温度補正制御の頻度を通常時よりも多くすることにより、周波数安定度を改善する構成が記載されている。
特許文献3には、圧電振動子の温度上昇時及び温度下降時において、予め取得した温度補償データに基づいて温度補償電圧を発生させ、この温度補償電圧に応じて圧電振動子の負荷容量を変化させる構成が記載されている。この構成では、温度に関係なく圧力を一定の周波数で発振させることにより、温度上昇や温度下降の際の温度変化に対する周波数のヒステリシスが少なく安定した周波数温度特性を得ることができる。
しかしながら、特許文献1〜特許文献3には、リフロー後に悪化した周波数安定度の改善については示唆されておらず、これらの特許文献によっても本発明の課題を解決することは困難である。
特開2007−97036号公報(段落0012) 特開2010−56986号公報(段落0012、段落0026、図5) 特開2011−103636号公報(段落0023、0035、0036)
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、周波数安定度が高い発振装置を提供することにある。
このため、本発明の発振装置は、
水晶振動子に接続された発振回路と、
前記水晶振動子が置かれる雰囲気を加熱又は冷却するペルチェ素子と、
前記水晶振動子が置かれる雰囲気の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記雰囲気が設定温度となるように、ペルチェ素子の温度を調整するための温度調整部と、
前記温度検出部の検出結果に基づいて、発振回路の出力周波数の設定値を補正する補正部と、
前記ペルチェ素子を、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させるプログラムを含む制御部と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、水晶振動子が置かれる雰囲気を設定温度に調整するための熱源としてペルチェ素子を用いている。ペルチェ素子は加熱及び冷却を行うことができるため、温度の可変幅が大きい。このため、発振装置に、ペルチェ素子を一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させるプログラムを持たせることができる。例えば発振装置の実装時に発振装置が高温環境に置かれると、実装前と比べてヒステリシス特性が変化することがある。このようにヒステリシス特性が変化すると、実装前の基準のヒステリシス特性に基づいて設定された補正値とのずれ量が大きくなり、周波数安定度が低下する。一方、ヒステリシス特性が変化した発振装置に対して、前記プログラムを駆動させてペルチェ素子を昇降温させると、ヒステリシス特性が基準のヒステリシス特性に近くなる。このため、基準のヒステリシス特性に基づいて設定された補正値とのずれ量が小さくなり、高い周波数安定度を得ることができる。
本発明の発振装置の一例を示す縦断面図である。 水晶電子構成部品を示す縦断面図と、水晶振動子を示す平面図である。 ペルチェ素子の一例を示す側面図である。 発振装置の一例を示すブロック図である。 水晶振動子の周波数温度特性を示す特性図である。 ペルチェ素子の温度プロファイルを示す特性図である。 水晶振動子の周波数温度特性を示す特性図である。 水晶振動子の周波数温度特性を示す特性図である。
本発明の発振装置の実施の形態について説明する。本発明の発振装置1は、いわゆる恒温槽付きの発振装置(OCXO)と温度制御発振装置(TCXO)との融合装置であり、図1は本発明の発振装置の概略構造、図2は水晶振動子をパッケージ内に搭載した電子構成部品の一例を夫々示す。本発明の発振装置1の構成について概略的に説明すると、図1中11は容器、12は容器11内に設けられたプリント基板である。このプリント基板12の上面側には、後述する水晶振動子20,30を収納したパッケージ4と、前記水晶振動子20、30の発振回路及び周波数差検出部などを含むディジタル処理を行う回路を含む回路部5と、が設けられている。また、プリント基板12の下面側には、例えばパッケージ4と対向する位置に、水晶振動子が置かれる雰囲気を加熱又は冷却するペルチェ素子6と、水晶振動子20,30のヒステリシス特性を改善するためのプログラムを含む制御部7と、が設けられている。前記パッケージ4、回路部5、ペルチェ素子6及び制御部7は例えばハンダによりプリント基板12に実装され、互いに電気的に接続されている。
続いて、前記電子構成部品について図2を参照して説明する。図中10は、例えばATカットの例えば短冊状の水晶片であり、この水晶片10を長さ方向に2分割し、各分割領域(振動領域)の表裏両面に第1の励振電極21,22及び第2の励振電極31、32が形成されている。これら第1の励振電極21,22及び第2の励振電極31,32は、夫々水晶片10の上下面において当該水晶片10を介して相対向するように形成されている。従って、一方の分割領域と一対の励振電極21、22とにより第1の水晶振動子20が構成され、他方の分割領域と一対の励振電極31、32とにより第2の水晶振動子30が構成される。図2b)中23a,23bは第1の励振電極21,22の引出電極、33a,33bは第2の励振電極31,32の引出電極であり、これら引出電極23a,23b,33a,33bは、水晶片10の端部領域に引き回されている。
前記水晶片10はパッケージ4内に搭載されており、このパッケージ4はベース体41と蓋体42とにより構成され、前記ベース体41は水晶片10を支持する台座部43を備えている。前記水晶片10は、その一端側が前記台座部43に導電性接着剤44により固定されている。前記前記引出電極23a、23b、33a、33bは、夫々台座部43及びベース体41を上下方向に貫通する導電路(図示せず)を介して、ベース体41の底面に形成された外部電極45a,45b、46a,46b(45b、46bは図示せず)に夫々接続されている。そして、図5のブロック図に示すように、第1の水晶振動子20は外部電極45a,45bにより第1の発振回路51に接続され、第2の水晶振動子30は外部電極46a,46bにより第2の発振回路52に接続される。
前記ペルチェ素子6は、温度制御対象である容器11内の雰囲気(水晶振動子20、30)を目標温度に加熱する役割がある。ペルチェ素子6は、図3に示すように、上下に離間した基板61,62同士の間にP型半導体63とN型半導体64とを互いに間隔を開けて交互に配列すると共に、これらP型半導体63とN型半導体64とを金属電極65,66により接続して構成されている。P型半導体63とN型半導体64とは交互に配列されているので、P型半導体63とこれに隣接するN型半導体64の一端側(上部側)同士が金属電極65により接続され、N型半導体64とこれに隣接するP型半導体63の他端側(下部側)同士が金属電極66で接続される。金属電極65,66の一方例えば金属電極66はリード線67aにより電力供給部67に接続されている。このペルチェ素子6は、例えば基板61がプリント基板12に接触するようにプリント基板12に設けられる。
このようなペルチェ素子6は、電流を流すと、N→P接合部分では吸熱現象が、P→N接合部分では放熱現象が発生する。従って、例えば図3(a)に示す向きで電流を流すと、基板61側が放熱、基板62側が吸熱し、プリント基板12及びパッケージ4を介して水晶振動子20,30が加熱される。一方、例えば図3(b)に示す向きで電流を流すと、基板61側が吸熱、基板62側が放熱し、プリント基板12及びパッケージ4を介して水晶振動子20,30が冷却される。このように、水晶振動子20,30の加熱及び冷却は電力供給部67から供給される電流の向きにより制御され、加熱及び冷却の程度は電力供給部67から供給される電力量により制御される。図3では、点線の矢印により熱の移動を示している。
続いて、発振装置1の回路部5について図4を参照して説明する。第1の水晶振動子20に接続された第1の発振回路51、第2の水晶振動子30に接続された第2の発振回路52の後段側には、周波数差検出部53、補正値演算部54、PLL回路部55、ローパスフィルタ(LPF)56、電圧制御発振器(VCO)57及びメモリ58が接続されている。PLL回路部55は、第1の発振回路51からの発振出力をクロック信号とし、ディジタル値である周波数設定信号に基づいて生成されるパルス信号と電圧制御発振器57からの帰還パルスとの位相差に相当する信号をアナログ化し、そのアナログ信号を積分してローパスフィルタ56に出力する。電圧制御発振器57の出力が発振装置1の発振出力である。
第1の発振回路51からの発振出力f1と第2の発振回路52からの発振出力f2との周波数差ΔFに対応する値は、水晶振動子20、30が置かれている雰囲気の温度に対応し、温度検出値ということができる。なお、説明の便宜上f1、f2は、夫々第1の発振回路51及び第2の発振回路52の発振周波数をも表しているものとする。周波数差検出部53は、この例では、{(f2−f1)/f1}―{(f2r−f1r)/f1r}の値を取り出しており、この値が温度に対して比例関係にある温度検出値に相当する。f1r及びf2rは、夫々基準温度例えば25℃における第1の発振回路51の発振周波数及び第2の発振回路52の発振周波数である。
補正値演算部54は、本発明の補正部に相当し、温度の検出結果と、予め作成した周波数補正値との関係と、に基づいて周波数補正値を算出し、この周波数設定値と補正値とを加算部59にて加算して周波数設定信号を設定する。前記温度検出値と周波数補正値との関係はメモリ58に格納されている。前記補正値は、第1の水晶振動子20の温度が目標温度から変動した時に、その変動分、つまり前記クロック信号の温度変動分を補償するための値である。
例えば(f2−f2r)/f2r=OSC2とすると、水晶振動子の生産時に(OSC2−OSC1)と温度との関係を実測により取得し、この実測データから、温度に対する周波数変動分を相殺する補正周波数曲線を導き出し、最小二乗法により9次の多項近似式係数を導き出している。そして多項近似式係数を予めメモリ58に記憶しておき、補正値演算部54は、これら多項近似式係数を用いて、補正値の演算処理を行っている。
図5は、OCXOの発振出力である第1の水晶振動子20の周波数温度特性を模式的に示しており、縦軸は周波数偏差量(周波数変化率)、横軸は温度、実線は昇温時データを夫々示している。周波数偏差量とは(f1−f1r)/f1rにより得られる値であり、前記補正値演算部54における多項式近似式係数を用いた補正値演算処理にて補正された周波数温度特性である。このように、水晶片は熱に対する履歴効果があり、熱によって水晶片にかかる歪応力が回復しきれないために、昇温時と降温時との間において、発振周波数が一致しないというヒステリシス特性を有する。図5中Hはヒステリシス幅であり、前記補正値演算部54における補正値演算処理では補正しきれない周波数温度特性を示している。
これらの昇温時データ及び降温時データは、例えば水晶振動子の生産時に取得される基準のヒステリシス特性であり、この基準のヒステリシス特性に基づいて補正値が設定される。前記補正値は、例えば同じ温度における昇温時の周波数偏差量と降温時の周波数偏差量とが揃うように設定される。例えば図5に一点鎖線により、昇温時データと降温時データとの中点のデータを示すが、ある温度の周波数偏差量がこの中点のデータに揃うように補正値が設定される。このように、周波数補正値は、既述の温度の検出結果と、予め作成した周波数補正値との関係とに基づいて算出される。
さらに、前記回路部5は、温度の検出結果に基づいて、水晶振動子20,30が置かれる雰囲気(容器11)が設定温度となるように、ペルチェ素子6の温度を調整するための温度調整部をなす温度制御回路8を備えている。この温度制御回路8では、周波数差検出部53から出力された温度検出値(ディジタル値)が、加算部81にて温度目標値に対応するディジタル値に加算される。加算部81からのディジタル値はループフィルタ82にて積分され、その積分値に応じたPWMパルスが一定期間PWM内挿部83から出力され、そのパルスがローパスフィルタ84にて平均化される。従ってローパスフィルタ84からは、ループフィルタ82からのディジタル値に応じたアナログ電圧が得られる。加算部81にて温度目標値に対応するディジタル値に、温度検出値を加算することにより、ローパスフィルタ84からアナログ電圧が出力され、こうしてペルチェ素子6の電力供給部57には制御電圧が入力される。
また、OCXOの容器11には、OCXOの駆動のON/OFFを行う電源部13が設けられている。この例では、電源部13が投入されると、制御部7が駆動し、OCXOを運転モードと、ヒステリシス特性改善モードと、の2つのモードのいずれかのモードで動作させるように構成されている。運転モードとは、容器11内をペルチェ素子6により設定温度に加熱し、第1の発振回路51の発振出力をクロックとしてPLL回路部を動作させて、電圧制御発振器57から発振装置1の出力信号を得るモードである。また、ヒステリシス特性改善モードとは、水晶振動子のヒステリシス特性が基準のヒステリシス特性から変化したときに実行されるモードであり、ヒステリシス特性を基準のヒステリシス特性に近付けるように、ペルチェ素子6により水晶振動子20,30の昇降温を繰り返すモードである。このように、ヒステリシス特性を改善するとは、変化したヒステリシス特性を基準のヒステリシス特性に近付けることをいうが、ヒステリシス特性は、基準のヒステリシス特性よりもヒステリシス幅が大きくなるように変化するので、ヒステリシス特性を改善するとは、ヒステリシス幅を低減することでもある。
制御部7は、ヒステリシス特性改善モードを実行するプログラムを備えており、この例では、電源部13が投入されると、このプログラムを実行するように構成されている。このプログラムは、ペルチェ素子6を所定の温度プロファイルに沿って昇降温させるように、電力供給部67を制御する機能を備える。この温度プロファイルは、図6に示すように、一の温度例えば25℃よりも高い温度と低い温度とを交互に繰り返すように設定されている。図中縦軸は温度、横軸は時間である。具体的には、温度プロファイルは、初めは約−45℃から約+90℃まで昇温→約−40℃まで降温→約+80℃まで昇温→−約25℃まで降温→約+75℃まで昇温→約−10℃まで降温→約+70℃まで上昇→約0℃まで降温→約+60℃まで昇温→約5℃まで降温→約50℃まで昇温→約10℃まで降温→約30度まで昇温→一の温度である25℃まで降温のように、温度の振幅が徐々に狭まるように設定されている。
このように、ヒステリシス特性改善モードは、予め設定された時間、ペルチェ素子6を温度プロファイルに沿って昇降温させるものであるので、プログラムが駆動してから設定された時間が経過すると、自動的に終了する。そして、この例の制御部7は、前記プログラムの設定時間(ペルチェ素子6を昇降温させる時間)が終了した後、運転モードを自動的に実行するように構成されている。この運転モードでは、OCXOの第1の発振回路51及び第2の発振回路52への電力供給を開始して回路部5を駆動し、ペルチェ素子6を温度制御回路8により制御しながら、発振出力の取得が行われる。このように、前記制御部7は、前記ペルチェ素子6を、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させた後、前記温度制御回路8を駆動させて、ペルチェ素子6により、水晶振動子が置かれる雰囲気を設定温度例えば95℃に調整するように構成されている。
前記温度プロファイルは、例えば予めヒステリシス特性を改善するための実験を行い、実際にヒステリシス幅が低減される昇降温温度や時間を決定することにより作成される。従って、ヒステリシス幅が低減する温度プロファイルであればよく、温度プロファイル中の最も高い温度は前記設定温度(この例では95℃)よりも高い温度でも低い温度でもよい。また、前記一の温度(この例では25℃)についても自由に設定できる。さらに、ペルチェ素子6を昇降温させる時間が終了するときに、最も一の温度に近付くように、昇降温の温度幅が次第に小さくなるように設定することが好ましい。但し、昇降温の温度幅が一定である時間があってもよいし、プログラムの開始時から昇降温の温度幅が次第に大きくなり、次いで設定時間が終了するときに向けて、昇降温の温度幅が次第に小さくなるものであってもよい。また、温度幅は、最終的に一の温度に接近するように設定する必要はなく、温度幅の変化量が小さくてもよい。さらに、降温時には必ずしも0℃以下まで降温させる必要はない。
続いて、本発明の発振装置1の動作について説明する。この発振装置1を使用するときには、例えばユーザが図示しないプリント基板へ実装する。この実装は、背景技術の項にて説明したように、リフロー炉により例えば230℃以上に加熱して、プリント基板上にOCXOをハンダ付けすることにより行われる。こうして、発振装置1を実装した後、電源部13を投入する。これにより、既述のように、制御部7にてヒステリシス特性改善用のプログラムが動作し、ヒステリシス特性改善モードが実行される。
予め設定された時間ヒステリシス特性改善モードを実行すると、プログラムが終了し、次いで運転モードが実行される。運転モードは、発振装置1の出力である周波数信号を生成するモードであるが、第1の水晶振動子20及び第1の発振回路51は、前記周波数信号を生成すると共に、第2の水晶振動子30及び第2の発振回路52と共に温度検出部としての役割を持っている。これら発振回路51、52から各々得られる周波数信号の周波数差は環境温度に正確に対応した値であり、この値に基づいて、既述のように、動作クロックの周波数温度変化分が補償される。また、この出力信号の周波数は第1の水晶振動子20の周波数温度特性の影響を受けるため、第1の水晶振動子20が置かれる雰囲気を設定温度例えば95℃に維持しようとしている。そこで、温度制御回路8では、発振回路51、52から各々得られる周波数信号の周波数差を温度検出値として用い、容器11内が設定温度に維持されるように、ペルチェ素子6の温度を制御している。なお、この例では既述のように温度の検出値に基づいて、周波数設定値の補正も合わせて行っている。
このように、この発振装置1は、OCXOとTCXOとの融合装置であり、OCXOの温度が変動した場合に、TCXOの温度補償を行うことで、極めて精度の高い発振周波数を得ることができる。
上述の実施の形態によれば、OCXOにおいて、水晶振動子が置かれる雰囲気を設定温度に調整するための熱源としてペルチェ素子6を用いている。ペルチェ素子6は加熱及び冷却を行うことができるため、温度の可変幅が大きい。このため、発振装置1に、ペルチェ素子6を一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させるプログラムを持たせることができる。既述のように、実装(リフロー)後のOCXOは、実装前に比べて特性が変化し、周波数安定度が劣化することが知られている。この理由は、OCXOが高温下に晒されると、パッケージ4とプリント基板12との接合部分(ハンダ付け部分)や、導電性接着剤44に熱によるストレスが加わり、熱歪が発生して、ヒステリシス特性が変化し、ヒステリシス幅が大きくなるためと推察される。ヒステリシス幅が大きくなると、補正値演算部54にて基準のヒステリシス特性を用いて設定された補正値とのずれ量が大きくなって対応できず、出力の安定性が低下するからである。
一方、ヒステリシス特性を改善するためのプログラムを実行し、ペルチェ素子6の昇降温を繰り返すと、前記ハンダ付け部分や導電性接着剤44においても加熱と冷却が繰り返して行われる。この昇降温の繰り返しにより、熱歪が小さくなり、OCXOが高温環境下に置かれる前の状態に近付いていくため、ヒステリシス特性が基準のヒステリシス特性に近付いていく。これにより、基準のヒステリシス特性を用いて設定された補正値とのずれ量が小さくなって、補正値演算部54の補正により出力を安定化させることができ、周波数安定度が向上する。このとき、昇降温の温度幅を次第に小さくしていくことにより、よりヒステリシス幅が小さくなることが後述の実施例から認められている。
以上において、ヒステリシス特性の変化は、既述のように発振装置1が高温環境下に置かれた場合等に発生し、出力の安定度が低下する。従って、出力の安定度が低下したときには、例えば電源部13を一旦オフにしてから再びオン状態にすることにより、ヒステリシス特性改善モードを実行させるようにすればよい。
また、本発明の発振装置は、容器内に一つの水晶振動子を収納する構成であってもよい。この場合には、例えば温度検出部としてサーミスタを用い、当該サーミスタの温度検出結果に基づいて、温度調整部によりペルチェ素子の温度を調整して水晶振動子が置かれる雰囲気を設定温度に維持すると共に、前記温度検出値に基づいて、水晶振動子の発振回路から得られる周波数信号の補正が行われる。そして、ヒステリシス特性が変化したときには、ヒステリシスを低減させるためのプログラムを動作させて、前記ペルチェ素子を、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させた後、水晶振動子が置かれた雰囲気が設定温度になるように、前記温度調整部によりペルチェ素子の温度を調整しながら、発振出力を得る。
また、ペルチェ素子として、複数個の加熱用のペルチェ素子と冷却用のペルチェ素子とを用意して配列し、加熱用のペルチェ素子を用いて容器を加熱し、冷却用のペルチェ素子を用いて容器を冷却することにより、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させる温度プロファイルを実行するようにしてもよい。さらに、ペルチェ素子を、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させる間も発振出力を得るようにしてもよい。
さらに、電源部13にて、運転モードとヒステリシス特性改善モードとを選択できるように構成してもよい。この場合には、例えば電源部13を投入した後、ヒステリシス特性改善モードを選択することにより、制御部のヒステリシス特性改善用のプログラムを動作して、ペルチェ素子6を昇降温させる。次いで、運転モードを選択することにより、温度の検出結果に基づいて、水晶振動子が置かれた雰囲気が設定温度になるように、前記温度調整部によりペルチェ素子の温度を調整しながら、発振出力を得る。さらに、上述の例では、ヒステリシス特性改善モードが終了すると、自動的に運転モードが実行されたが、ヒステリシス特性改善モードの終了後、作業者が例えば電源部13にて運転モードを選択することにより、当該モードを実行させるようにしてもよい。
(実施例1)
既述の実施の形態に示した発振装置をプリント基板に230℃以上でハンダ付けして実装し、ペルチェ素子6を−25℃から+75℃に昇温させたときの第1の水晶振動子の周波数偏差量と、+75℃から−25℃まで降温させたときの第1の水晶振動子の周波数偏差量を求めた。この結果を図7(a)に示す。
次いで、ペルチェ素子6を、図6に示す温度プロファイルに沿って昇降温させ、この昇降温が終了した後、温度を−25℃から+75℃に上昇させたときの周波数偏差量と、+75℃から−25℃まで降温させたときの周波数偏差量を求めた。この結果を図7(b)に示す。図7(a),(b)に示す夫々周波数データは、既述のように、補正値演算部54により温度による周波数変化分が補正されたデータである。
このように、補正値演算部54にて温度による周波数変動が補正されるものの、ヒステリシス幅が大きい場合には補正により対応できず、昇温時と降温時の発振周波数が異なっている。しかしながら、ヒステリシス特性を改善するためのプログラム実行後のデータ(図7(b))は、実行前のデータ(図7(a))に比べて、ヒステリシス幅が小さくなっており、前記プログラムの実行により、ヒステリシス特性が改善されることが認められた。
(実施例2)
ペルチェ素子6を、図6に示す温度プロファイルに沿って昇降温させたときに、前記第1の水晶振動子の周波数偏差量を求めた。この結果を図8(a)に示し、その一部(図8(a)にて点線の○で囲んだ部分)を拡大したものを図8(b)に夫々示す。図8(a),(b)中、縦軸は周波数偏差量であり、横軸は第1の水晶振動子と第2の水晶振動子の発振周波数の周波数差を温度に換算した温度換算値である。また、図8(b)には、図6の温度プロファイルのT1の昇温時、T2の降温時、T3の昇温時、T4の降温時、T5の昇温時、T6の降温時のデータを示している。図8(a)では昇温時と降温時のデータが重なっているように見えるが、図8(b)のように拡大すると、昇温時と降温時のデータが一致せず、ヒステリシス特性を有することが認められる。また、温度幅を徐々に小さくするに従って、昇温時のデータと降温時のデータとのヒステリシス幅(が小さくなることが認められ、温度幅を次第に小さくしていくことは、ヒステリシス特性の改善に有効であることが認められる。但し、T1〜T4までの温度幅は、それ程大きくないものの、ヒステリシス幅は小さくなっていることから、温度幅の変化量が小さい場合でも、ヒステリシス特性の改善が期待できる。
1 発振装置
10 水晶片
11 容器
12 プリント基板
13 電源部
20 第1の水晶振動子
21,22 第1の励振電極
30 第2の水晶振動子
31,32 第2の励振電極
4 パッケージ
5 回路部
53 周波数差検出部
54 補正値演算部
6 ペルチェ素子
63 P型半導体
64 N型半導体
67 電力供給部
7 制御部

Claims (4)

  1. 水晶振動子に接続された発振回路と、
    前記水晶振動子が置かれる雰囲気を加熱又は冷却するペルチェ素子と、
    前記水晶振動子が置かれる雰囲気の温度を検出する温度検出部と、
    前記温度検出部の検出結果に基づいて、前記雰囲気が設定温度となるように、ペルチェ素子の温度を調整するための温度調整部と、
    前記温度検出部の検出結果に基づいて、発振回路の出力周波数の設定値を補正する補正部と、
    前記ペルチェ素子を、一の温度よりも高い温度と低い温度との間で繰り返して昇降温させるプログラムを含む制御部と、を備えたことを特徴とする発振装置。
  2. 前記プログラムは、昇降温の温度幅が次第に小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の発振装置。
  3. 発振装置を駆動する電源部を備え、
    前記制御部は、電源部を投入したときに前記プログラムを実行するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の発振装置。
  4. 前記制御部は、前記プログラムが終了した後、前記温度調整部を駆動させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の発振装置。
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