以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1〜図5を参照しながら、実施形態におけるコモンレール式のエンジン1の概略構造について説明する。なお、以下の説明では、出力軸3に沿う両側部(出力軸3を挟んだ両側部)を左右、冷却ファン9配置側を前側、フライホイル11配置側を後側、排気マニホールド7配置側を左側、吸気マニホールド6配置側を右側と称し、これらを便宜的に、エンジン1における四方及び上下の位置関係の基準としている。
図1〜図5に示すように、トラクタ等の作業車両に搭載される原動機としてのエンジン1は、連続再生式の排気ガス浄化装置2(DPF)を備えている。排気ガス浄化装置2によって、エンジン1から排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)が除去されると共に、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
エンジン1は、出力軸3(クランク軸)とピストン(図示省略)とを内蔵するシリンダブロック4を備える。シリンダブロック4上にシリンダヘッド5を搭載している。シリンダヘッド5の右側面に吸気マニホールド6を配置する。シリンダヘッド5の左側面に排気マニホールド7を配置する。すなわち、エンジン1において出力軸3に沿う両側面に、吸気マニホールド6と排気マニホールド7とを振り分けて配置する。シリンダヘッド5の上面にヘッドカバー8を配置する。エンジン1において出力軸3と交差する一側面、具体的にはシリンダブロック4の前面に、冷却ファン9を設ける。出力軸3の前端側から冷却ファン用Vベルト22aを介して、冷却ファン9に回転動力を伝達する。
シリンダブロック4の後面にフライホイルハウジング10を設ける。フライホイルハウジング10内にフライホイル11を配置する。出力軸3の後端側にフライホイル11を軸支する。作業車両の作動部に出力軸3を介してエンジン1の動力を取り出すように構成している。また、シリンダブロック4の下面にはオイルパン12を配置する。オイルパン12内の潤滑油は、シリンダブロック4の右側面に配置されたオイルフィルタ13を介して、エンジン1の各潤滑部に供給される。
シリンダブロック4の右側面のうちオイルフィルタ13の上方(吸気マニホールド6の下方)には、燃料を供給するための燃料供給ポンプ14を取付ける。電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ(図示省略)付きの3気筒分のインジェクタ15をエンジン1に設ける。各インジェクタ15に、燃料供給ポンプ14及び円筒状のコモンレール16及び燃料フィルタ17を介して、作業車両に搭載される燃料タンク(図示省略)を接続する。
前記燃料タンクの燃料が燃料フィルタ17を介して燃料供給ポンプ14からコモンレール16に圧送され、高圧の燃料がコモンレール16に蓄えられる。各インジェクタ15の燃料噴射バルブをそれぞれ開閉制御することによって、コモンレール16内の高圧の燃料が各インジェクタ15からエンジン1の各気筒に噴射される。なお、フライホイルハウジング10にエンジン始動用スタータ18を設けている。エンジン始動用スタータ18のピニオンギヤはフライホイル11のリングギヤに噛み合っている。エンジン1を始動させる際は、スタータ18の回転力にてフライホイル11のリングギヤを回転させることによって、出力軸3が回転開始する(いわゆるクランキングが実行される)。
シリンダヘッド5の前面側(冷却ファン9側)には、冷却水ポンプ21が冷却ファン9のファン軸と同軸状に配置されている。エンジン1の左側、具体的には冷却水ポンプ21の左側方に、エンジン1の動力にて発電する発電機としてのオルタネータ23が設けられている。出力軸3の前端側から冷却ファン用Vベルト22aを介して、冷却ファン9と冷却水ポンプ21とに回転動力を伝達する。また、出力軸3の前端側からオルタネータ用Vベルト22bを介して、オルタネータ23に回転動力を伝達する。作業車両に搭載されるラジエータ内の冷却水が、冷却水ポンプ21の駆動によって、シリンダブロック4及びシリンダヘッド5に供給され、エンジン1を冷却する。
オイルパン12の左右側面には機関脚取付け部24をそれぞれ設けている。各機関脚取付け部24には、防振ゴムを有する機関脚体(図示省略)をそれぞれボルト締結可能である。実施形態では、作業車両における左右一対のエンジンフレームにオイルパン12を挟持させ、オイルパン12側の機関脚取付け部24を各エンジンフレームにボルト締結することによって、作業車両の両エンジンフレームがエンジン1を支持する。
図4及び図5に示すように、吸気マニホールド6の入口部には、EGR装置26(排気ガス再循環装置)を介してエアクリーナを連結する。EGR装置26は主としてエンジン1の右側、具体的にはシリンダヘッド5の右側方に位置している。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナによって除塵及び浄化された後、ターボ過給機60のコンプレッサケース62(詳細は後述する)及びEGR装置26を介して吸気マニホールド6に送られ、エンジン1の各気筒に供給される。
EGR装置26は、エンジン1の排気ガスの一部(EGRガス)と新気とを混合させて吸気マニホールド6に供給するEGR本体ケースと、エアクリーナにEGR本体ケースを連通させる吸気スロットル部材28と、排気マニホールド7にEGRクーラ29を介して接続される再循環排気ガス管30と、再循環排気ガス管30にEGR本体ケースを連通させるEGRバルブ部材31とを備えている。実施形態では、吸気マニホールド6の吸気取込側がEGR本体ケースを構成している。
すなわち、吸気マニホールド6の吸気取込側には吸気スロットル部材28を連結している。また、吸気マニホールド6の吸気取込側には再循環排気ガス管30の出口側も接続している。再循環排気ガス管30の入口側は、EGRクーラ29を介して排気マニホールド7に接続している。EGRバルブ部材31内にあるEGR弁の開度を調節することによって、吸気マニホールド6の吸気取込側へのEGRガスの供給量が調節される。
上記の構成において、エアクリーナから吸気スロットル部材28を介して吸気マニホールド6の吸気取込側に新気を供給する一方、排気マニホールド7から吸気マニホールド6の吸気取込側にEGRガスを供給する。エアクリーナからの新気と排気マニホールド7からのEGRガスとが吸気マニホールド6の吸気取込側で混合される。エンジン1から排気マニホールド7に排出された排気ガスの一部を吸気マニホールド6からエンジン1に還流することによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、エンジン1からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減する。
シリンダヘッド5の左側方で排気マニホールド7の上方には、ターボ過給機60を配置している。ターボ過給機60は、タービンホイル内蔵のタービンケース61と、ブロアホイル内蔵のコンプレッサケース62とを備えている。排気マニホールド7の出口部にタービンケース61の排気取込側を連結する。タービンケース61の排気排出側には排気ガス浄化装置2の排気取込側の外周部に設けた浄化入口管36を連結する。すなわち、エンジン1の各気筒から排気マニホールド7に排出した排気ガスは、ターボ過給機60及び排気ガス浄化装置2等を経由して外部に放出される。
コンプレッサケース62の吸気取込側は、給気管65を介してエアクリーナの吸気排出側に接続される。コンプレッサケース62の吸気排出側は、過給管66及びEGR装置26を介して吸気マニホールド6に接続している。すなわち、エアクリーナによって除塵された新気は、コンプレッサケース62から過給管66を介してEGR装置26に送られた後、エンジン1の各気筒に供給される。
エンジン1の上面側のうち排気マニホールド7及びターボ過給機60の上方、すなわちシリンダヘッド5の左側方で排気マニホールド7及びターボ過給機60の上方には、排気ガス浄化装置2を配置している。この場合、排気ガス浄化装置2の長手方向をエンジン1の出力軸3と平行に延びるように、排気ガス浄化装置2の姿勢を設定している。
次に、従前の図と図6〜図10とを参照しながら、排気ガス浄化装置2の構造について説明する。排気ガス浄化装置2は、浄化入口管36を有する浄化ハウジング38を備えている。浄化ハウジング38の内部に、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒39と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ40とを、排気ガス移動方向に直列に並べている。ディーゼル酸化触媒39及びスートフィルタ40は、浄化ハウジング38に収容されるガス浄化フィルタに相当するものである。なお、浄化ハウジング38の排気ガス出口41に排気管を介して例えば消音器やテールパイプを連結し、排気ガス出口41から消音器やテールパイプを介して排気ガスを外部に排出する。
上記の構成において、ディーゼル酸化触媒39の酸化作用によって生成された二酸化窒素(NO2)がスートフィルタ40内に取り込まれる。エンジン1の排気ガス中に含まれる粒子状物質はスートフィルタ40に捕集され、二酸化窒素(NO2)によって連続的に酸化除去される。エンジン1の排気ガス中の粒状物質(PM)の除去に加え、エンジン1の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の含有量が低減される。
浄化ハウジング38の排気取込側の外周部に浄化入口管36を設けている。浄化入口管36の排気取込側はタービンケース61の排気排出側に連通している。この場合、後述するハウジング支持体を構成する入口側第二ブラケット82の下端側を排気マニホールド7にボルト締結している。入口側第二ブラケット82の上部側に、排気中継路としての排気中継管85を形成している。排気中継管85の排気取込側は入口側第二ブラケット82の上下中途部で前向きに開口している。排気中継管85の排気排出側は入口側第二ブラケット82の上端側で上向きに開口している。入口側第二ブラケット82における排気中継管85の排気取込側をタービンケース61の排気排出側にボルト締結し、排気中継管85の排気排出側を排気マニホールド7の出口部に締結している。従って、排気マニホールド7と排気ガス浄化装置2とは入口側第二ブラケット82の排気中継管85を介して連通している。
浄化ハウジング38の排気下流側の端部には蓋体42を溶接固定する。浄化ハウジング38の排気下流側の端部を蓋体42によって塞いでいる。蓋体42の略中央部に排気ガス出口41を開口させている。浄化ハウジング38の排気上流側の端部には入口側蓋体43を溶接固定する。浄化ハウジング38の排気取込側の端部は入口側蓋体43によって塞いでいる。
次に、図6〜図14を参照しながら、エンジン1に排気ガス浄化装置2を組み付ける構造について説明する。エンジン1には、排気ガス浄化装置2(浄化ハウジング38)を支持固定するハウジング支持体としての入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72を備えている。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、エンジン1の出力軸3と交差する方向に幅広に形成されている。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、エンジン1のシリンダヘッド5に直接、又は、吸気マニホールド6や排気マニホールド7を介して着脱可能に連結している。入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72は、シリンダヘッド5において出力軸3と交差する前面側及び後面側に振り分けて立設している。入口側ブラケット体71は、シリンダヘッド5の後面側に位置していて、浄化ハウジング38の排気取込側を支持している。出口側ブラケット体72は、シリンダヘッド5の前面側に位置していて、浄化ハウジング38の排気排出側を支持している。
図7、図8、図10及び図12〜図14に示すように、入口側ブラケット体71は、シリンダヘッド5の後面側(フライホイルハウジング10の上方)に位置している。実施形態の入口側ブラケット体71は、入口側第一ブラケット81と入口側第二ブラケット82とに分離構成している。入口側第一ブラケット81の下端側をシリンダヘッド5の後面にボルト締結している。入口側第一ブラケット81の上端側には中継ブラケット83をボルト締結している。中継ブラケット83の中途部には延長ブラケット84の基端側をボルト締結し、延長ブラケット84の先端側は、ボルト及びナットを介して浄化ハウジング38の入口側蓋体43に締結している。入口側第二ブラケット82の下端側は排気マニホールド7にボルト及びナットを介して締結している。入口側第二ブラケット82の上部側に形成した排気中継管85の排気排出側を排気マニホールド7の出口部に締結している。
図6〜図11及び図13に示すように、出口側ブラケット体72は、シリンダヘッド5の前面側(冷却ファン9側)に位置している。実施形態の出口側ブラケット体72は、出口側第一ブラケット91と出口側第二ブラケット92とに分離構成している。出口側第一ブラケット91は、縦長の支柱部93と、支柱部93の上部側から横向きに延びる横桟部94とを有する略L字状の部材である。支柱部93の下端側は、吸気マニホールド6の上面側にボルト締結している。横桟部94の先端側は出口側第二ブラケット92の上部側面にボルト締結している。出口側第二ブラケット92の下端側はシリンダヘッド5の左側面前部にボルト締結している。出口側第二ブラケット92の上端側は、浄化ハウジング38における出口挟持フランジ54の下部側に形成したブラケット締結部54aにボルト締結している。このため、出口側ブラケット体72は、シリンダヘッド5の前面側において略門形の形状を呈している。
上記の説明から明らかなように、実施形態の排気ガス浄化装置2(浄化ハウジング38)は、エンジン1の上方において、ハウジング支持体である入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72を介してエンジン1のシリンダヘッド5、吸気マニホールド6及び排気マニホールド7に着脱可能に連結している。また、排気ガス移動方向上流側(排気取込側)にある入口側ブラケット体71(入口側第一ブラケット81及び入口側第二ブラケット82)を、シリンダヘッド5と排気マニホールド7とに振り分け、排気ガス移動方向下流側(排気排出側)にある出口側ブラケット体72(出口側第一ブラケット91及び出口側第二ブラケット92)を、シリンダヘッド5と吸気マニホールド6とに振り分けることによって、排気ガス浄化装置2(浄化ハウジング38)を四点支持している。
図9及び図13に示すように、出口側第二ブラケット92の上端側中央部には、係止軸体としての埋込みボルト97を設けている。埋込みボルト97は、出口側第二ブラケット92の上端側中央部の前面から前向きに突出させる。浄化ハウジング38における出口挟持フランジ54のブラケット締結部54aには、下向き開口状の仮止めノッチ98を形成している。すなわち、出口挟持フランジ54のブラケット締結部54aに形成される埋込みボルト97挿入用のボルト穴を上向き開放状に切り欠いて、仮止めノッチ98を形成している。出口挟持フランジ54におけるブラケット締結部54aの仮止めノッチ98に、出口側第二ブラケット92の埋込みボルト97を係止可能に構成している。浄化ハウジング38の排気ガス移動方向下流側(排気排出側)を出口側第二ブラケット92の上端側に載せて、仮止めノッチ98を埋込みボルト97に係合させることによって、出口側第二ブラケット92に浄化ハウジング38の排気ガス移動方向下流側(排気排出側)を支持させている。
埋込みボルト97と仮止めノッチ98との係合によって、浄化ハウジング38の排気排出側は所定位置に保持される。すなわち、浄化ハウジング38に延長ブラケット84を介して取り付けた中継ブラケット83を入口側第一ブラケット81の上端側に載せると共に、浄化入口管36の排気取込側を入口側第二ブラケット82の上端側(排気中継管85の排気排出側)に載せた上で、浄化ハウジング38側の仮止めノッチ98を出口側第二ブラケット92側の埋込みボルト97に係合させることによって、入口側ブラケット体71及び出口側ブラケット体72上に浄化ハウジング38を仮止めする。このため、エンジン1に対する排気ガス浄化装置2の搭載位置を簡単に位置決めでき、組付け作業をする作業者は、仮止め状態において排気ガス浄化装置2から両手を離せることになる。従って、排気ガス処理装置2の全重量を支えながら、ボルト締結等の組付け作業や取外し作業をする必要がなくなり、排気ガス浄化装置2の載せ降ろし作業時や、排気ガス浄化装置2の組立分解作業時の手間を大幅に軽減できる。
その後、仮止めノッチ98を埋込みボルト97に係合させた状態で、埋込みボルト97に係止ナット99をねじ込んで(増し締めして)、浄化ハウジング38における出口挟持フランジ54のブラケット締結部54aを出口側第二ブラケット92の上端側中央部に連結する。なお、実施形態とは逆に、浄化ハウジング38側に埋込みボルト97を設け、出口側第二ブラケット92側に仮止めノッチ98を設けてもよい。仮止めノッチ98の開口方向は、埋込みボルト97との位置関係で設定すればよく、下向き開口状に限るものではない。
上記の記載並びに図6〜図14から明らかなように、エンジン1の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置2を備え、前記排気ガス浄化装置2を前記エンジン1に搭載しているエンジン装置であって、前記排気ガス浄化装置2を構成する浄化ハウジング38に連結する複数のハウジング支持体71(81,82),72(91,92)を備え、前記浄化ハウジング38は、前記エンジン1の上方において、前記ハウジング支持体71(81,82),72(91,92)群を介して、前記エンジン1のシリンダヘッド5、吸気マニホールド6及び排気マニホールド7に連結しているから、前記エンジン1の高剛性部品である前記シリンダヘッド5、前記吸気マニホールド6及び前記排気マニホールド7を利用して、前記エンジン1の構成部品の一つとして前記排気ガス浄化装置2を高剛性に支持でき、振動等による前記排気ガス浄化装置2の損傷を防止できる。前記排気ガス浄化装置2を前記排気マニホールド7に至近距離でつなげるから、前記排気ガス浄化装置2に常に高温の排気ガスを導入でき、排気ガス浄化性能を良好な状態に維持し易い。
特に実施形態では、入口側第一ブラケット81及び出口側第二ブラケット92の下端側をシリンダヘッド5に締結しているため、エンジン1に対する排気ガス浄化装置2の取付け基準位置を高精度に設定できる。このため、後処理装置であるマフラー等に比べて重量の重い排気ガス浄化装置2であっても、所定の位置に適正に搭載できる。
上記の記載並びに図6〜図14から明らかなように、前記浄化ハウジング38の排気ガス移動方向と前記エンジン1の出力軸3方向とが平行になるように、前記エンジン1の上方に前記浄化ハウジング38を配置し、前記ハウジング支持体71(81,82),72(91,92)群のうち排気ガス移動方向上流側の二つのハウジング支持体81,82を、前記シリンダヘッド5と前記排気マニホールド7とに振り分け、前記ハウジング支持体71(81,82),72(91,92)群のうち排気ガス移動方向下流側の二つのハウジング支持体91,92を、前記シリンダヘッド5と前記吸気マニホールド6とに振り分けることによって、前記浄化ハウジング38を四点支持しているから、前記ハウジング支持体71(81,82),72(91,92)群を介して前記エンジン1に前記排気ガス浄化装置2を高強度に取付けでき、前記排気ガス浄化装置2の振動防止効果を向上できる。
上記の記載並びに図6〜図14から明らかなように、前記排気マニホールド7に連結する前記ハウジング支持体82に排気中継路85を形成し、前記排気中継路85を介して前記排気マニホールド7と前記排気ガス浄化装置2とを連通させているから、前記ハウジング支持体82を高剛性に形成できるものでありながら、前記ハウジング支持体82の前記排気中継路85を介して、前記排気マニホールド7に前記排気ガス浄化装置2を短距離で簡単に接続できる。
次に、図15〜図20を参照しながら、作業車両としてのトラクタ101にエンジン1を搭載した構造について説明する。実施形態のトラクタ101では、左右両側の前後に配置した前輪103及び後輪104によって走行機体102を支持している。走行機体102の前部には原動機としてのエンジン1を搭載している。エンジン1からの動力によって左右両後輪104及び左右両前輪103を回転させ、走行機体102を前後進走行させるように構成している。左右両前輪103及び左右両後輪104がトラクタ101の走行部を構成している。
走行機体102は、前バンパ106及び前車軸ケース107を有するエンジンフレーム108と、エンジン1からの動力伝達を継断する主クラッチを内蔵したクラッチハウジング110と、エンジン1の動力を適宜変速して左右両後輪104及び左右両前輪103に伝達するためのミッションケース111と、クラッチハウジング110にミッションケース111を連結するミッション前面ケース112と、クラッチハウジング110の外側面に外向き突設した左右一対のステップフレーム113とを備えている。
エンジン1の前方に水冷用のラジエータ109を配置している。エンジンフレーム108の後端側は、エンジン1の左右外側面(具体的にはオイルパン12に設けた機関脚取付け部24)に連結している。エンジン1におけるフライホイルハウジング10の後面側に、クラッチハウジング110の前面側を連結している。クラッチハウジング110の後面側には、ミッション前面ケース112を介してミッションケース111の前面側を連結している。
走行機体102の上面側には、オペレータが着座する操縦座席117と、操縦座席117の前方に位置する操縦コラム115とを設けている。操縦コラム115の上部側に操縦ハンドル116を設けている。操縦座席117に着座したオペレータが操縦ハンドルを回動操作することによって、回動操作量に応じて左右両前輪103のかじ取り角(操向角度)を変更するように構成している。
エンジン1はボンネット114で覆っている。クラッチハウジング110の上面側には操縦コラム115を立設している。操縦コラム115の上面側に、左右両前輪103の舵取り角(操向角度)を変更操作する操縦ハンドル116を設けている。ミッションケース111の上面側には、オペレータが着座する操縦座席117を配置している。左右両ステップフレーム113の上面側には平坦な床板118を設けている。左右両前輪103は前車軸ケース107を介してエンジンフレーム108に取り付けている。左右両後輪104は、ミッションケース111の外側面から外向きに突出する後車軸ケース119の左右先端側に回転可能に取り付けている。左右各後輪104の上面側はリヤフェンダ105で覆っている。
ミッションケース111の後部上面には、走行機体102の後部に連結されるロータリ耕耘機等の作業部(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構120を着脱可能に取り付けている。ミッションケース111の後面には、作業部にPTO駆動力を伝達するPTO軸121を後向き突設している。なお、作業部は、左右一対のロワーリンク122及び1本のトップリンク123からなる三点リンク機構124を介して、ミッションケース111の後部に連結される。油圧式昇降機構120における左右のリフトアーム120aはリフトロッド20bを介して左右のロワーリンク122に連結している。油圧式昇降機構120のリフトアーム120aを上下回動させることによって、三点リンク機構124を介して作業部が昇降動する。
ミッション前面ケース112の前面側には静油圧式無段変速機125(HST)を設けている。実施形態の静油圧式無段変速機125はクラッチハウジング110の後部に内蔵している。詳細は省略するが、エンジン1の回転動力は、フライホイル11に主クラッチを介して連結した主動軸経由で静油圧式無段変速機125に伝達される。次いで、静油圧式無段変速機125からの出力を副変速ギヤ機構で適宜変速し、当該変速出力を後車輪用差動ギヤ機構経由で左右両後輪104に伝達する。副変速機構で適宜変速した変速出力は、二駆四駆切換機構及び前車軸ケース107内の差動ギヤ機構を介して左右両前輪103にも伝達可能である。一方、主動軸経由の回転動力は、PTO伝動軸を介してPTO減速機構にも伝達され、PTO減速機構にて適宜減速されてから、PTOクラッチを介してPTO軸121に伝達される。
図15及び図16に示すように、操縦コラム115の左方にはクラッチペダル131を配置している。オペレータがクラッチペダル131を足踏み操作することによって、クラッチハウジング110内の主クラッチが作動し、エンジン1からの動力伝達が遮断される。操縦コラム115の右方には、左右の後車輪104制動用のブレーキ機構(図示省略)をそれぞれ作動させる左右のブレーキペダル132を配置している。ブレーキペダル132の足踏み操作によってブレーキ機構が作動し、左右の後車輪104が制動する。なお、操縦ハンドル116の下方で操縦コラム115の左方には、前進又は後進に移動方向を切換えるリバーサレバー127を配置している。操縦ハンドル116の下方で操縦コラム115の右方には、エンジン1の回転数を変更するアクセルレバー128を配置している。
図16に示すように、操縦座席117の右方には、静油圧式無段変速機125を変速操作する主変速レバー133を配置している。操縦座席117の右方には、作業部昇降レバー134及び耕耘深さ調節レバー135も配置している。作業部昇降レバー134又は耕耘深さ調節レバー135の手動操作によって、油圧式昇降機構120のリフトアーム120aが上下回動する。操縦座席117の左方には、副変速機構を切換操作する副変速レバー136を配置している。副変速レバー136の手動操作によって、副変速機構の各変速ギヤは、低速位置、中速位置及び高速位置の三段階に択一的に切り換えられる。低速位置と中速位置との間並びに中速位置と高速位置との間には、副変速出力が零になる中立位置をそれぞれ設けている。また、操縦座席117の左方には、PTO軸121への動力伝達を継断操作するPTOレバー137を配置している。
次に、ボンネット114の取付け構造について説明する。ボンネット114の前部下側にフロントグリル138を形成している。エンジンフレーム108に支持させた左右のエンジンカバー139とボンネット114とによって、エンジン1の前方、上方及び左右を覆っている。エンジンフレーム108の前部側には、ファンシュラウド141を背面側に取り付けたラジエータ109を、エンジン1の前面側に位置するように立設している。ファンシュラウド141は冷却ファン9の外周側を囲っていて、ラジエータ109と冷却ファン9とを連通させている。
ラジエータ109の前面側には矩形枠状の枠フレーム142を立設している。枠フレーム142の前方には、ミッションケース111内の作動油を冷却するオイルクーラ143と電力供給用のバッテリ144とを配置している。冷却ファン9の回転によって、冷却風はオイルクーラ143及びラジエータ109に吹き当たった後、ファンシュラウド141を経由してエンジン1に向けて流れる。
枠フレーム142の前方のうちオイルクーラ143及びバッテリ144の上方には、エンジン1に導入される新気を浄化するエアクリーナ145を配置している。エアクリーナ145の一側面から延びる吸気中継管146は、EGR装置26を介して吸気マニホールド6の入口部に連結している。エアクリーナ145の外周面には、新気をエアクリーナ145に導入するための新気導入管147を形成している。
エンジンフレーム108の前端側(具体的にはフロントグリル138の下方)には、ボンネット114の前部下側(フロントグリル138の下端側)を係脱可能に係止するボンネットロック機構151を設けている。ボンネットロック機構151によって、エンジン1の前方及び上方を覆う姿勢でボンネット114を保持するように構成している。操縦コラム115の前面側には、エンジン1側と操縦コラム115側とを区画する遮蔽板152を設けている。左右のエンジンカバー139、ボンネット114及び遮蔽板152は、エンジン1の前後左右及び上方を囲うエンジンルーム153を構成している。
ファンシュラウド141の後面上部と遮蔽板152の前面上部との間には、前後長手の上支持フレーム154を掛け渡している。一方、ボンネット114内面側のうち上支持フレーム154との対峙箇所に、前後長手のボンネットステー155を設けている。ボンネットステー155の後端側は、ボンネット開閉支点軸156を介して遮蔽板152に上下回動可能に取り付けている。上支持フレーム154とボンネットステー155との間にはガスダンパ157を装架している。ガスダンパ157のロッド側の端部は、上支持フレームの前部側に左右横向きのピン軸によって回動可能に枢着している。ガスダンパ157のシリンダ側の端部は、ボンネットステー155の前後中途部に左右横向きのピン軸によって回動可能に枢着している。ボンネットロック機構151のロックを解除する操作をしてから、ボンネット114の前部を上方に持ち上げることによって、ボンネット開閉支点軸156回りにボンネット114が上向き回動して、エンジン1の前方及び上方が開放される。そして、ガスダンパ157の突張り作用によって、ボンネット114が開放位置に保持される。
図17〜図20に示すように、実施形態のエンジン1は、冷却ファン9を前側に、フライホイルハウジング10を後側に位置させた状態で、走行機体102の前部に縦置き式に搭載している。すなわち、出力軸3の向きを走行機体102の進行方向に沿わせるようにして、走行機体102の前部にエンジン1を搭載している。排気ガス浄化装置2の長手方向(浄化ハウジング38の排気ガス移動方向)は出力軸3と平行であるから、排気ガス浄化装置2(浄化ハウジング38)は、走行機体102の進行方向(前後方向)に沿って延びる縦置きの姿勢で、エンジン1上方のうち排気マニホールド7寄りに配置している。
図20に示すように、トラクタ101のボンネット114は断面下向きコ字状に形成している。ボンネット114の左右角部は、正面視で左右外側の斜め下向きに傾斜するように面取りされた面取り部158になっている。ボンネット114の左右角部を面取り部158に構成したことによって、操縦座席107に着座したオペレータの前方視界、特にボンネット114の左右両面取り部158から先の視界を良好に確保している。そして、ボンネット114における左面取り部158の内面側に排気ガス浄化装置2を対峙させている。
エンジン1から排気ガス浄化装置2が左右方向にはみ出ないように、排気ガス浄化装置2をエンジン1の左右幅Wzの中心(エンジン1の出力軸3と直交する鉛直仮想線L参照)寄りにオフセットさせている。排気ガス浄化装置2はエンジン1の出力軸3と直交する左右方向の左右幅Wz内に収まっている。実施形態では、エンジン1の左右幅Wzの中心から左右幅Wzの最外部までの距離Wyよりも、排気ガス浄化装置2の左右幅Waを小さくしている。すなわち、鉛直仮想線Lからオルタネータ23の最外部までの距離Wy(エンジン1の左右幅Wzの略半分に相当する)よりも、排気ガス浄化装置2の左右幅Waを小さくしている。また、排気ガス浄化装置2は、平面視でエンジン1の出力軸3に沿う前後方向の前後幅Wx内に収まっている。すなわち、エンジン1の前後幅Wx(冷却ファン9からフライホイルハウジング10までの距離)よりも排気ガス浄化装置2の前後幅Wbを小さくしている。
上記の記載並びに図15〜図20から明らかなように、走行機体102に搭載し且つボンネット114で覆われるエンジン1を備えたトラクタ101搭載用のエンジン装置であって、前記エンジン1の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置2を、前記エンジン1上方のうち排気マニホールド7寄りの左右一側に配置するにあたり、前記排気ガス浄化装置2の排気ガス移動方向と前記エンジン1の出力軸3方向とを平行に設定し、前記エンジン1から前記排気ガス浄化装置2がはみ出ないように前記排気ガス浄化装置2を前記エンジン1の左右幅Wzの中心寄りにオフセットさせ、前記エンジン1の前記左右幅Wzの中心から前記左右幅Wzの最外部までの距離Wyよりも、前記排気ガス浄化装置2の左右幅Waを小さくしているから、従来技術のようなボンネット左右角部の外向き張り出し部を設けなくても、前記エンジン1の上方空間を有効活用して、前記エンジン1上部と前記ボンネット114内面との間に、前記排気ガス浄化装置2をコンパクトに収容できる。また、オペレータの視界を遮る前記ボンネット114の外向き張り出し部をなくせるので、前記トラクタ101の前方視認性向上に貢献する。更に、重量物である前記排気ガス浄化装置2を前記エンジン1の重心に寄せて支持できることになり、前記排気ガス浄化装置2搭載に伴う前記エンジン1の振動や騒音等の増大を抑制できる。
上記の記載並びに図15〜図19から明らかなように、平面視で前記エンジン1の前後幅Wx内に前記排気ガス浄化装置2の前後幅Wbを収めているから、前記排気ガス浄化装置2を組付けた前記エンジン1であっても、前後左右の全幅を極力小さく抑えた構造にでき、エンジン装置全体としてのコンパクト化に寄与する。前記排気ガス浄化装置2を前記エンジン1に組付けたことによるボンネット114形状への影響を少なくでき、ボンネット114形状を複雑化しなくて済む。
図20に詳細に示すように、ボンネット114の左右両側面には開口穴160を形成している。左右一方の開口穴160に排気ガス浄化装置2を臨ませている。実施形態では、ボンネット114の左右両側面のうち左右内側から左右外側に向かって斜め下向きに傾斜した面取り部158に、各開口穴160を形成している。各開口穴は排気ガス浄化装置の側面視形状よりも小さく形成しており、排気ガス浄化装置2を対峙させた左開口穴160から排気ガス浄化装置2をはみ出さないように構成している。
ボンネット114内面側のうち各開口穴160の箇所には、飛散物の進入を阻止するパンチングメタル製や金網製等の通気カバー161を取り付けている。ボンネット114の各面取り部158のうち開口穴160の左右外側には、当該開口穴160を外側から覆い隠すガード板162を、面取り部158と適宜間隔を開けて取り付けている。各ガード板162は対応する開口穴160よりも一回り大きい矩形形状に形成している。実施形態では、ガード板162内面側のうち開口穴160外周側に位置する前後二箇所に、締結用ボス体163を突設している。ボンネット114の面取り部158内面側から、ガード板162の各締結用ボス体163に止めネジをねじ込むことによって、各面取り部158における開口穴160の左右外側にガード板162を固定している。
上記の記載並びに図20から明らかなように、走行機体102の前部に搭載したエンジン1と、前記エンジン1の排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置2とを備え、前記エンジン1の上部側に前記排気ガス浄化装置2を搭載し、前記エンジン1及び前記排気ガス浄化装置2をボンネット114で覆っている作業車両101において、前記ボンネット114の左右両側面には開口穴160を形成し、前記一方の開口穴160に前記排気ガス浄化装置2を臨ませるように配置しているから、前記エンジン1駆動中だけでなく、前記エンジン1の停止後であっても、前記排気ガス浄化装置2から発する熱気を前記各開口穴160経由で前記ボンネット114外に逃がすことが可能になり、前記ボンネット114内部に熱気をこもり難くできる。その結果、前記排気ガス浄化装置2自体や前記ボンネット114等に対する熱害の発生を抑制できる。
上記の記載並びに図20から明らかなように、前記排気ガス浄化装置2の排気ガス移動方向と前記エンジン1の出力軸3方向とを平行に設定し、前記排気ガス浄化装置2の排気ガス移動方向を前記ボンネット114の前後方向に沿わせ、前記排気ガス浄化装置2を、前記エンジン1上方のうち排気マニホールド7寄りの左右一側に配置しているから、前記一方の開口穴160に前記排気ガス浄化装置2を臨ませるにあたり、前記排気ガス浄化装置2の排気ガス移動方向、すなわち、前記排気ガス浄化装置2の長手方向を前記ボンネット114の前後方向に沿わせることになり、前記排気ガス浄化装置2の外周面の広範囲を前記一方の開口穴160に対峙できる。このため、前記排気ガス浄化装置2から発する熱気を前記一方の開口穴160経由で前記ボンネット114外にスムーズに逃がせる。
上記の記載並びに図20から明らかなように、前記各開口穴160は、前記ボンネット114の左右両側面のうち左右内側から左右外側に向かって斜め下向きに傾斜した面取り部158に形成し、前記排気ガス浄化装置2を前記一方の開口穴160からはみ出さないように構成し、前記各開口穴160には飛散物の侵入を阻止する通気カバー161を配置し、前記各開口穴160の左右外側には、前記開口穴160を外側から覆い隠すガード板162を、前記面取り部158と適宜間隔を開けて配置しているから、前記エンジン1の停止後も前記排気ガス浄化装置2から発する熱気を前記ボンネット114外に逃がせるものでありながら、例えば雨水や塵埃等の飛散物が前記排気ガス浄化装置2に降りかかるのを防止できる。また、前記ガード板162の存在によって高温の前記排気ガス浄化装置2や前記通気カバー161にオペレータが直接触れるのを防止できる。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。