JP2014144696A - 耐雷ファスナのシーラント層成形用治具、耐雷ファスナのシーラント層成形方法、及び、航空機の翼 - Google Patents

耐雷ファスナのシーラント層成形用治具、耐雷ファスナのシーラント層成形方法、及び、航空機の翼 Download PDF

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Abstract

【課題】必要な膜厚を有するシーラント層を迅速かつ精度よく得ることができるシーラント層の成形用治具を提供する。
【解決手段】シーラント剤28をカラー26の周囲に被せるシーラントカップ13と、シーラントカップ13を、ファスナ部材24に対して位置決めするカップホルダ12と、カップホルダ12を、ファスナ部材24に対して位置決めするダミーカップ11と、からなる。カップホルダ12は、ファスナ部材24に対して位置決めされたダミーカップ11に案内されることで、ファスナ部材24に対して位置決めされる。また、シーラントカップ13は、ファスナ部材24に対して位置決めされたカップホルダ12からダミーカップ11を取り除いた後に、カップホルダ12に案内されることで、シーラント剤28を、カラー26の周囲に被せる。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機の機体、特に、翼に用いられる耐雷ファスナのシーラント層成形用治具に関する。
航空機の機体を構成する翼は一般に中空構造となっており、翼表面を形成する翼パネルは、翼内部にある構造部材にファスナ部材によって固定されている。
このとき、ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、翼パネルおよび翼内部の構造部材の双方に形成された貫通孔に翼の外部側から挿入し、その先端部を翼の内部側からカラー、ナットなどの締結金具で固定することで、翼パネルと構造部材とを締結する。
また、この他にも翼内部や胴体部で、翼パネル以外の構造部材や装備品の固定用の部材もファスナ部材によって締結・固定されている。
ところで、航空機においては、ファスナ部材に耐雷性を付与することにより被雷対策を万全に期す必要がある。
すなわち、航空機が被雷して主翼等の翼パネルや構造部材に大電流が流れると、ファスナ本体および締結金具からなるファスナ部材によって締結された締結部に、大電流の一部、場合によっては全部が流れる。その電流値が各締結部における通過許容電流の限界値を超えると、電気的アーク(あるいはサーマルスパーク)と呼ばれる放電が発生する(以下、本明細書中ではこれをアークと称する)。これは、締結部を通過する電流により締結部を構成する主として導電部材からなる部材の締結界面に急激な温度上昇が生じて部材が局部的に溶融し、近傍の大気中に放電が発生する現象で、多くの場合、溶融部分からホット・パーティクルと言われる高温の溶融物の飛散が発生する。
一般に、翼の内部空間は燃料タンクを兼ねているため、被雷した際の燃料タンクの防爆対策を施す必要がある。前述のアークやホット・パーティクルがある一定のエネルギーを超えると、燃料タンク内の燃料蒸気の着火源となる可能性がある。そのため、被雷時において、アークの発生を抑えるか、またはアークを封止することによって、発生したアークの放電を防止するとともに、そこから飛散するホット・パーティクルが可燃性の燃料蒸気に接触しないようにして発火を防止する必要がある。ここで、可燃性の燃料蒸気が存在する可能性があるのは、翼内部および胴体部の、燃料タンク内部、一般に燃料タンクの翼端側に設置されるサージタンク(ベントスクープやバーストディスクなどが設置されるタンク)内部、燃料系統装備品内部等である。
一方、アークの封止方法としては、ファスナ部材の必要な部位を覆うように、絶縁性材料からなるキャップを取り付け、さらに、キャップの内部にシーラント剤を充填し、ファスナ部材とキャップとの隙間を塞ぐ構成が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、キャップを装着するには、装着するためのファスナ部分が必要となるため、ファスナ本体の長さを延長する必要がある。しかし、航空機には、極めて多数のファスナ部材が設けられるため、航空機の重量が重くなり、燃費が悪くなってしまう。
また、周囲が狭い狭隘部にファスナ部材が取り付けられている場合、キャップを装着するスペースがないこともある。
特開2010−254287号公報
そこで、従来からキャップを取り付けることなく、ファスナ部材に絶縁性のシーラント層を被せ、耐雷性を確保する方法も適用されている。しかし、作業員は通常目視によりシーラント層の成形作業をするため、ファスナ部材の周囲に耐雷性を確保するのに必要な厚さのシーラント層を精度よく成形するのは容易ではない。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、ファスナ部材の周囲に、必要な厚さのシーラント層を迅速かつ精度よく成形することができる耐雷ファスナのシーラント成形用治具を提供することを主目的とする。
かかる目的のもと、本発明の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具は、航空機に用いられるファスナ部材の要絶縁部位の周囲に絶縁性のシーラント層を成形する際に用いられるものであり、シーラントカップと、カップホルダと、ダミーカップと、からなる。
シーラントカップは、キャビティに収容されるシーラント剤を、要絶縁部位の周囲に被せるのに用いられる。
カップホルダは、シーラントカップを、ファスナ部材に対して位置決めするガイドを備える。
ダミーカップは、カップホルダを、ファスナ部材に対して位置決めする。
そして、カップホルダは、ファスナ部材に対して位置決めされたダミーカップにガイドを沿わせることで、ファスナ部材に対して位置決めされる。
また、シーラントカップは、ファスナ部材に対して位置決めされたカップホルダからダミーカップを取り除いた後に、カップホルダにガイドを沿わせることで、シーラント剤を、要絶縁部位の周囲に被せる。
本発明の治具によれば、ダミーカップを用いて位置決めされたカップホルダにシーラントカップを装着すると、ファスナ部材に対してシーラントカップを位置決めできる。したがって、要絶縁部位の周囲に必要な膜厚を有するシーラント層を迅速かつ精度よく成形させることができる。
本発明のシーラント成形用治具において、ファスナ部材が第1の部材と第2の部材を貫通して連結し、第1の部材及びは第2の部材の一方又は双方から突出しているファスナ部材の要絶縁部位の周囲にシーラント層を成形することができる。
要絶縁部位の周囲にシーラント層を成形することにより、ファスナ部材の耐雷性を確保できる。
本発明において、シーラントカップ及びダミーカップの外形は任意であるが、円形にすれば、軸線周りの向きを気にすることなく、カップホルダに装着できる。したがって、シーラントカップは、キャビティが軸方向の一端に開口する円筒状の部材からなり、カップホルダは、ガイドが、シーラントカップの外周に対応する曲率半径を有する円弧面からなり、ダミーカップは、ガイドで支持されるシーラントカップの外周に対応する被ガイド域を有することが好ましい。
また、本発明のカップホルダのガイドは、シーラントカップ及びダミーカップを受容する側に面取りが形成されていることが好ましい。
カップホルダをダミーカップに向けて装着する際、また、シーラントカップをカップホルダに向けて装着する際に、面取りがガイドの役割を果たすことで、装着をスムーズに行うことができる。
また、本発明において、カップホルダにシーラントカップを装着した際に、シーラントカップとカップホルダの間に隙間が形成されることが好ましい。
シーラントカップとカップホルダの間に隙間を形成することにより、シーラント剤がスクィーズアウトする領域を確保することができる。
また、本発明のカップホルダのガイドは、円周面にすることができるが、シーラントカップ、及び、ダミーカップの外径に対応する曲率半径を有する、中心角が180°以上の円弧面とすることもできる。
つまり、カップホルダを用いるスペースが十分に確保できない場合には、中心角が180°の円弧面、つまり半円形のガイドにすればよい。もちろん、中心角が180°を越える円弧面にすることもできる。そうすれば、シーラントカップ、及び、ダミーカップを安定して保持することができる。
本発明のシーラントカップは、キャビティの開口近傍における肉厚が、開口近傍から軸方向に離れた領域よりも薄いことが好ましい。キャビティ内のシーラント剤を容易にスクィーズアウトすることができる。
本発明のシーラントカップは、キャビティの径が、開口に向けて連続的に、又は、断続的に大きくなることが好ましい。シーラント剤が硬化した後にシーラントカップを容易に取り外すことできる。
また、本発明は、以上説明したシーラント層成形用治具を用いて、シーラント層を成形する方法を提供する。
この方法は、ダミーカップをファスナ部材に装着する第1ステップと、ガイドをダミーカップに沿わせてカップホルダをダミーカップに装着する第2ステップと、カップホルダのファスナ部材に対する相対的な位置を維持した状態で、ダミーカップを取り除いた後に、シーラントカップをカップホルダのガイドに沿わせながらファスナ部材に装着する第3ステップと、を備えている。
こうしてシーラント層が成形された耐雷ファスナは、典型的には、航空機の翼に用いられる。
また、本発明のシーラント層の成形方法において、第3ステップの前に、シーラントカップには、予めキャビィティにシーラント剤が充填されていることが好ましい。
シーラント剤が予め充填されているシーラントカップをファスナ部材に被せることにより、シーラント剤の圧力により空気をシーラントカップの外に押し出すことができるため、ボイドの発生を抑制できる。
また、本発明のシーラント層の成形方法において、第1ステップの前に、要絶縁部位の周囲を、シーラントカップに予め充填されているシーラント剤よりも、粘度の低いシーラント剤で被覆しておくことが好ましい。
粘度の低いシーラント剤が予め塗布されていることにより、シーラントカップから供給されるシーラント剤は空気を巻き込まず流動するため、ボイドの発生を抑制することができる。
本発明によれば、ダミーカップを用いて位置決めされたカップホルダにシーラントカップを装着すると、ファスナ部材に対してシーラントカップを位置決めできる。したがって、ファスナ部材の周囲に必要な厚さのシーラント層を迅速かつ精度よく成形させることができる。
第1実施形態で使用する治具の上面図および断面図であり、(a)ダミーカップ、(b)はカップホルダ、(c)はシーラントカップを示す。 第1実施形態における第1ステップを説明するための断面図である。 第1実施形態における第2ステップを説明するための断面図である。 第1実施形態における第3ステップを説明するための断面図である。 第2実施形態を説明する図であり、(a)はダミーカップを示し、(b)〜(d)は第0ステップ〜第1ステップを示す断面図である。 第2実施形態を説明する断面図であり、(a)は第2ステップを示し、(b)は第3ステップを示し、(d)はシーラント層が成形されたファスナ部材を示す。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
初めに、本発明が対象とするファスナ部材の一例について説明する。
図2(a)に示すように、本実施形態のファスナ部材24は、翼パネル21(第1の部材)と、翼パネル21に積層される補強構造材22(第2の部材)とを接合する。翼パネル21は、航空機の翼の外側に配置され、補強構造材22は翼の内側に配置される。
ファスナ部材24は、ピン状のファスナ本体25と、翼の内側でファスナ本体25の軸部25aに装着される円錐台状のカラー26と、絶縁素材からなるワッシャ27と、から構成される。
なお、本発明は、ピン状のファスナ本体25の替わりにボルトを用い、かつ、カラー26の替わりにボルトに噛合うナットを用いてファスナ部材を構成することを許容する。つまり、本発明のファスナ部材は、具体的な形態にかかわらず、一方の部材が軸部を有し、他方の部材がこの軸部に装着される締結具を含む概念を有している。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に、チタン合金等の金属材料により形成される。ファスナ本体25は、周囲にねじ溝25cが形成された軸部25aと、軸部25aの一端部に設けられる、軸部25aより拡径したテーパ状の頭部25bと、からなる。
ワッシャ27は、所定の厚さを有した環状で、通常は金属材料を用いる。ワッシャ27に金属材料を用いる場合は、ステンレススチールやアルミニウム等が用いられる。
ファスナ本体25、カラー26、ワッシャ27などの金属部材の表面には通常、被膜を施す。例えば、アノダイズ被膜を施すと、防食性の維持と締め付け時の潤滑性が向上する。また、導電性の化成被膜を施すと、防食性が維持されるとともに、アーク発生防止や静電気除去性能向上のための導電性を向上させることができる。
ワッシャ27を絶縁材料で形成した場合、補強構造材22とワッシャ27との界面においてアーク放電が生じるのを防止する能力を高めることができる。ただし、強度は低下するため、構造設計上の配慮が必要である。ワッシャ27に絶縁材料を用いる場合は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
ファスナ本体25は、翼パネル21及び補強構造材22を各々貫通して形成された孔21a、22aに翼の外側(図中の下側)から挿入される。頭部25bが孔21aの周囲の翼パネル21の表面に突き当てられた状態で、軸部25aが翼の内側に突出される。
この状態で、ファスナ本体25の軸部25aの先端部は、カラー26よりも翼の内側に突出している。内側に突出した軸部25aは、アーク発生を防止するために、カラー26とともに絶縁性材料からなるシーラント層29で覆われる(図4(b)参照)。
シーラント層29は、耐雷性を確保するために、必要な厚さを有していることが望まれる。このシーラント層29が耐雷性を確保することができる所定厚さを有さない場合、すなわち、アーク発生防止手段の性能が不十分で、雷電流によりファスナ部材24と他の周囲の部材との接触面でアークが発生した場合、アークを封止しきれず、アーク自体あるいはアークから発生するホット・パーティクルがシーラント層29を破壊して噴き出し、可燃性の燃料蒸気と接触して着火を引き起こすおそれがある。このシーラント層29の破壊には、シーラントのバルク部分が破れたり溶融したりして破壊する場合と、シーラント層29と補強構造材22の内表面22bの密着面でシーラント層29が剥がれて、ホット・パーティクルが噴き出す場合がある。必要なシーラント層29の厚さとしては、それぞれの締結部に流れる雷電流の大きさに充分耐えるようにそれぞれ設定する必要があり、例えば0.8mm〜3.0mm程度である。また、必要な厚さは、同じファスナ部材24の周囲であっても、部位によって異なる。
また、シーラント層29の成形の際、シーラント層29内に極力ボイドが発生しないようにしなければいけない。シーラント層29に多数ボイドが存在すると、アークの封止能力が低下し、耐雷性が損なわれるためである。また、航空機の翼には、極めて多数のファスナ部材24が設けられるため、一つ一つのファスナ部材24にかけられるシーラント層29の成形時間を短くする必要がある。
ここで、ファスナ部材24の周囲に必要な厚さのシーラント層を成形するには、先ず、所定量のシーラント剤が必要である。しかし、シールガン等の器具を用いて、所定量のシーラント剤をファスナ部材に正確に塗布することは容易ではない。
そこで、本実施形態では、図1(c)に示すように、未硬化のシーラント剤28を収容するキャビティ13aを備えるシーラントカップ13を用いる。
必要な厚さのシーラント層を成形するためには、まず、キャビティ13aの外径及び深さがファスナ部材24の外径および突出した長さに対し必要な厚さを確保できる大きさでなければならない。これについての検討の詳細は後述する。また、被覆するシーラント剤28が不足しないことが前提となる。そのために、シーラントカップ13のキャビティ13aを満たすようにシーラント剤28を充填することを原則とするが、後述するように、キャビティ13a内のシーラント剤28を少なく調整する場合もある。
しかし、キャビティ13aの外径,深さ、およびキャビティ13a内に充填するシーラント剤28の量が特定されただけでは必要な厚さを得ることはできない場合がある。すなわち、キャビティ13aの中心軸とファスナ部材24の中心軸が一致しない場合である。キャビティ13aの中心軸が横方向にずれたり、斜めになる状態である。
そこで、キャビティ13aの中心軸を、ファスナ部材24の中心軸と同軸とする。つまり、互いの中心軸同士を合わせると、キャビティ13aは、ファスナ部材24の中心軸に対して、線対称な回転体をなす。しかし、シーラントカップ13をファスナ部材24に対して直接中心軸を一致させて被せることは、熟練した技能が必要である。
そこで、本実施形態では、ファスナ部材24に対して同軸上に配置されるカップホルダ12(図1(b))を用いてシーラントカップ13を位置決めし、保持する。この前提として、カップホルダ12がファスナ部材24と同軸上に配置されている必要がある。そのために、シーラントカップ13のダミーとなるカップ(ダミーカップ11:図1(a))を予めファスナ部材24に装着させる。ダミーカップ11は、ファスナ部材24と同軸上に配置するためのガイド面15aを有している。このダミーカップ11にカップホルダ12を装着すれば、カップホルダ12はファスナ部材24に対して同軸状に位置決めされる。
本実施形態では、ダミーカップ11、カップホルダ12、シーラントカップ13の3種類の治具を使用し、必要な厚さのシーラント層29を迅速かつ正確に成形する手法を提案する。この手法は、シーラント層29を除いて既に組み付けられているファスナ部材24に対して施される。
初めに、図1を参照して、後述する第1ステップから第3ステップで使用する3種類の治具について説明する。
[ダミーカップ11]
ダミーカップ11は、第1ステップにおいて、ファスナ部材24(カラー26及びカラー26から露出する軸部25a)に装着することで、ファスナ部材24の中心軸をダミーカップ11との関係で特定する。
図1(a)に示すように、ダミーカップ11は、軸方向の一端が塞がれ、他端が第1空隙14の部分で開口する円筒状の本体11aと、本体11a内に形成される第1空隙14と、第1空隙14に連通する第2空隙15と、を備えている。本体11a、第1空隙14及び第2空隙15は、中心軸C11が一致するように形成されている。また、本体11aの外径(直径)d1は、後述するカップホルダ12の保持孔16の内径d2およびシーラントカップ13の外径(直径)d3と等しく設定されている。
第1空隙14は、ダミーカップ11をファスナ部材24に装着した状態でワッシャ27を収容する。第1空隙14は、そのために必要な直径を有している。
第2空隙15は、ダミーカップ11をファスナ部材24に装着した状態でカラー26及びカラー26から露出する軸部25aを収容する。第2空隙15を区画する本体11aの内周面はガイド面15aをなしており、ガイド面15aがカラー26の側面に接する。ガイド面15aの傾斜はカラー26の側面の傾斜と等しくなるよう形成されている。したがって、ダミーカップ11をファスナ部材24に装着させることによって、ダミーカップ11とファスナ部材24の中心軸を一致させることができる。
ダミーカップ11の外周面(円筒面)は、カップホルダ12のガイド面16aに沿って案内され、かつ支持されるガイド面をなす。
なお、ダミーカップ11は、アルミニウム合金などの金属材料、あるいはフッ素樹脂などの樹脂材料から作製することができる。
また、ダミーカップ11の高さh1は、後述するカップホルダ12の高さh2より高く設定する。保持孔16においてカップホルダ12とダミーカップ11を係合させるためである。
なお、高さh1は、ダミーカップ11をカップホルダ12から取り外す際に取手となる部分を考慮して設定することが好ましい。
[カップホルダ12]
カップホルダ12は、ダミーカップ11により中心軸が特定されたファスナ部材24の位置を固定するためのものであり、第2ステップにおいて、ダミーカップ11の周囲に装着される。
図1(b)に示すように、カップホルダ12は、軸方向の一方端が開口した円筒状の部材であり、他方端には保持板17が形成されている。保持板17には、表裏を貫通する円形の保持孔16が形成されており、保持孔16を区画する保持板17の内周面がガイド面16aをなしている。
保持孔16の内径d2は、ダミーカップ11の本体11aの外径d1と一致しており、ダミーカップ11が保持孔16に挿入され、カップホルダ12に装着されると、ガイド面16aは、ダミーカップ11の外周面(ガイド面)に接する。そうすると、ファスナ部材24を装着しているダミーカップ11とカップホルダ12とは、中心軸C11とC12が一致するように位置決めされることになる。
カップホルダ12は、保持板17を除く部分の内径d4は、ダミーカップ11の外径d1よりも大きく設定されている。後述するシーラント剤28が溢れ出す(スクィーズアウト)隙間を確保するためである。
また、カップホルダ12の保持孔16の周囲には面取り16bが形成されている。面取り16bを形成することにより、カップホルダ12のダミーカップ11への装着、及び、シーラントカップ13のカップホルダ12への装着がスムーズに行うことができる。
また、カップホルダ12の高さh2は、ダミーカップ11の高さh1よりも低く設定する。保持孔16においてカップホルダ12とダミーカップ11を係合させるためである。
カップホルダ12も、ダミーカップ11と同様に、アルミニウム合金などの金属材料、あるいはフッ素樹脂などの樹脂材料から作製することができる。
[シーラントカップ13]
図1(c)に示すように、シーラントカップ13は、未硬化状態のシーラント剤28が充填されるキャビティ13aを有するカップ状の部材であり、第3ステップにおいて、ダミーカップ11を取り除いた後に、カップホルダ12の保持孔16に挿入して装着される。
シーラントカップ13の外周面(円筒面)は、カップホルダ12のガイド面16aに沿って案内され、かつ支持されるガイド面をなす。
前述したように、シーラントカップ13は、カップホルダ12の保持孔16の内径d2と同じ外径d3をもつ。シーラント剤の離形性を担保するため、また、シーラント剤28のスクィーズアウトを容易にするため、シーラントカップ13は、剛性の低いフッ素性樹脂から構成される。
シーラントカップ13のキャビティ13aは、カラー26及びカラー26から露出している軸部25aの周囲(絶縁が必要とされる部位)に必要な厚さのシーラント層29を成形するために十分な容積を備えている。
また、成形するシーラント層29の厚さは、シーラント層が硬化する際に厚さがその厚さの10%〜20%の分だけ収縮することと、各種の製造公差が発生することを考慮して、十分な厚さとする必要がある。しかし、必要以上の厚みとすると航空機の総重量の増加につながり、燃費に影響する。そのため、シーラントカップ13のキャビティ13aの外径は、以下の手順で決定する大きさとすることが好ましい。先ず、必要なシーラント層の厚さに、その厚さの10%〜20%の値を加えた厚さを求める。次に、その厚さの2倍の厚さを求める。最後に、その求めた厚さに、ファスナ部材24の外径と各種の製造公差を加えた大きさを求め、その大きさをキャビティ13aの外径とする。
具体的には、必要なシーラント厚さが2.5mmとすると、その厚さの20%を加えた値の2倍の厚さ6.0mmに、製造公差1.0mmとワッシャ位置のファスナ本体位置からの最大公差とを加えた値を、キャビティ13aの外径とする。
また、キャビティ13aの深さh4は、ファスナ本体25の突出した長さに、必要なシーラント層の厚さの10%〜20%の値を加えた厚さと、ファスナ本体25の突出した長さとキャビティ13aの深さh4の公差を、加えた大きさとするのが好ましい。また、ファスナ部材24の外形に倣い、キャビティ13aは、開口部分に向かうに従い拡径されている。したがって、シーラントカップ13は裾部18の肉厚が薄くなる。もし、裾部18が厚いと、シーラントカップ13のフットプリントが大きくなるため、その分補強構造材22の内面に平らな部分を広く必要としてしまう。そうすると、補強構造材22を構造設計上必要なサイズより大きくすることが必要になり、航空機の重量増につながるので、裾部18の厚さはできるだけ薄い方がよい。しかし、薄すぎるとシーラントカップ13が変形しやすくなり、所望のシーラント層29の厚さを形成できない場合が発生するのに加え、後述のシーラントを充填する作業が困難になってしまう。そのため、裾部18の厚さは0.5mm〜2.0mmとするのが好ましい。
また、シーラントカップ13の高さh3は、カップホルダ12の高さh2よりも高く設定する。保持孔16においてカップホルダ12とシーラントカップ13を係合させるためである。
ダミーカップ11、カップホルダ12及びシーラントカップ13を用いて、ファスナ部材24の周囲にシーラント層29を成形する手順を、図2〜図4を参照して、説明する。
[第1ステップ:図2]
第1ステップでは、補強構造材22の表面から突出しているファスナ部材24にダミーカップ11を装着させる(図2(b))。この際、ダミーカップ11の本体11aに形成されたガイド面15aを円錐台状のカラー26の傾斜側面に沿わせて相互に案内させる。こうして、ファスナ部材24(軸部25a)とダミーカップ11は、中心軸C24と中心軸C11とが正確に一致するよう相互に位置決めされる。
[第2ステップ:図3]
第2ステップでは、カップホルダ12の保持孔16とファスナ部材24に装着されているダミーカップ11とを概ね位置合わせした後に、カップホルダ12を下降させて保持孔16にダミーカップ11が貫通するように装着する。
図3(a)に示すように、カップホルダ12のガイド面16aをダミーカップ11の外周面に沿わせると、カップホルダ12とダミーカップ11は相互に案内される。カップホルダ12の下端が補強構造材22の表面に接するまでカップホルダ12を下降させる。以後、カップホルダ12が位置ずれしないようにする。なお、カップホルダ12と補強構造材22の間に粘着材、例えば、粘着性シリコンを設けると、位置ずれの防止に有効である。
ダミーカップ11の外径d1とカップホルダ12の保持孔16の内径d2が等しいため、ファスナ部材24(軸部25a)とカップホルダ12は、中心軸C24と中心軸C12が正確に一致するよう相互に位置決めされる。
ここで、保持孔16の周囲には面取り16bが形成されている。第2ステップにおいて、ダミーカップ11をカップホルダ12の保持孔16に挿入(装着)する際、図中の下側の面取り16bがガイドの役割を果たすことで、装着をスムーズに行うことができる。
次に、ファスナ部材24に対するカップホルダ12の相対的な位置を維持したままで、ダミーカップ11を取り除く(図3(b))。カップホルダ12はファスナ部材24に対して同軸上に位置決めされたままである。
[第3ステップ:図4]
図4(a)に示すように、第3ステップでは、シーラント剤28を充填したシーラントカップ13を、それまで装着されていたダミーカップ11の代わりにカップホルダ12に装着させる。つまり、シーラントカップ13をカップホルダ12の保持孔16の上方で位置合わせした後に、保持孔16に向けて押込む。シーラントカップ13がガイド面16aに沿って案内されながら下降することで、ファスナ部材24はシーラント剤28で覆われる。
保持孔16の周囲には面取り16bが形成されているため、シーラントカップ13をカップホルダ12に挿入する際、図中の上側の面取り16bがガイドの役割を果たすことで、装着をスムーズに行うことができる。
なお、シーラント剤28は、一般に厚手のタンク内のフィレットシールやファスナシールに用いられている高粘度のポリスルフィドポリマー材料、例えば、PRC−Desoto社製 PR−1776M B−2 Class B Low Weight Fuel Tank Sealantを用いる。シーラント剤28は、ボイドの混入が極めて少ないものを用いることが好ましい。
シーラントカップ13は、保持孔16の直径と同じ外径d3を有しているので、ファスナ部材24とシーラントカップ13は、中心軸C24と中心軸C13が正確に一致するよう相互に位置決めされる。したがって、シーラントカップ13のキャビティ13aにおいて、シーラント剤28は、耐雷性確保のため、要絶縁部位(カラー26及び露出している軸部25a)の周囲を必要な厚さで覆うことができる。
ここで、シーラント剤28は、第3ステップの過程で、補強構造材22の表面とシーラントカップ13の下端縁との間から溢れ出す(スクィーズアウトする)量(図4(a)の符号SO)を考慮した量だけキャビティ13aに充填される。この際、シーラント剤28は、キャビティ13aを満たすまで充填することを原則とする。しかし、シーラント層29を成形するファスナ部材24の形状によってはスクィーズアウトが多量となるので、適度に減量することがある。ただし、減量しすぎるとシーラント層29の成形に必要な量に足りなくなり、ボイド発生の原因となる。そこで、適量の充填の目安とするために、予めキャビティ13aの内側に目安線を付けてもよい。
シーラントカップ13をファスナ部材24に被せると、シーラントカップ13は、キャビティ13aとファスナ部材24との間隔を均等に保って押し込まれるため、シーラントカップ13に充填されたシーラント剤28はファスナ部材24の周囲に均等に、かつ、ファスナ部材24の軸方向と平行に押し出されながら供給される。そのため、シーラント剤28の周囲からこの中に空気を巻き込むおそれは極めて低い。したがって、最終的に得られるシーラント層29は、空気の混入が原因で形成されるボイドが抑制される。
また、シーラントカップ13の円縁部の全周面にスクィーズアウトSOが形成されていれば、これは、ファスナ部材24の全周にシーラント剤28が行き渡っていることを示している。したがって、スクィーズアウトSOの形成を確認することによって、ファスナ部材24の全周面にシーラント剤28が行き渡り、ボイドが形成されないことを視覚的に判断することができる。
また、シーラントカップ13の裾部18の肉厚が薄いので、スクィーズアウトしやすい。また、シーラントカップ13が比較的剛性の小さいフッ素性樹脂から形成されているので、スクィーズアウトがよりしやすくなっている。
最後に、シーラント剤28の表面に触れても変形しない状態(タックフリー)まで硬化する時間(タックフリータイム)以上経過した後に、カップホルダ12およびシーラントカップ13を取り外す(図4(b))。
タックフリータイム前に、シーラントカップ13を取り外すと、硬さの低いシーラント剤28の表面に傷や異物が付きやすい。そこで、本実施形態は、タックフリータイム以上経過した後に、シーラントカップ13を取り外す。
なお、シーラントカップ13のキャビティ13aの内表面にシーラントカップ13を特定する固有の番号(製造番号,図番など)を打刻することもできる。そうすれば、成形されたシーラント層29の表面に固有番号をマークすることができ、成形後にシーラント層29の形態管理を行うことができる。
また、キャビティ13aの径が、開口に向けて大きくなっているので、シーラントカップ13を取り外すのが容易である。
なお、ダミーカップ11の高さh1、カップホルダ12の高さh2、シーラントカップ高さh3は、上記した一連の手順において、必要な装着状態を得るのに必要な値を適宜設定することが必要である。
次に、第1ステップ〜第3ステップの手順によりシーラント層29を成形させる本実施形態の効果を説明する。
本実施形態によると、第1ステップ〜第3ステップにおいて、ダミーカップ11はファスナ部材24に対して、カップホルダ12はダミーカップ11に対して、また、シーラントカップ13はカップホルダ12に対して、装着するだけで中心軸同士を一致させることができる。結果として、シーラントカップ13をファスナ部材24と中心軸を一致させることができる。したがって、要絶縁部位(カラー26および露出する軸部25a)の周囲に必要な厚さのシーラント層29を簡易かつ正確に成形させることができる。
また、第3ステップにおいて、シーラント剤28を充填したシーラントカップ13を、上方からファスナ部材24に被せると、ファスナ部材24の周囲の空気はシーラント剤28の圧力によって、シーラントカップ13の外に押し出される。そうすると、空気が原因となるボイドの少ないシーラント層29が成形される。したがって、本実施形態によるシーラント層29は、ファスナ部材24の耐雷性を確保できる。
また、本実施形態は、タックフリータイム以上経過した後に、シーラントカップ13を取り外すため、硬化の途中でシーラント層29の形状が崩れることがなく、シーラント層29の表面に傷や異物が付きづらい。
[第2実施形態]
本実施形態では、ダミーカップの他の実施例、および、狭隘部でも使用可能なカップホルダを用いてシーラント層を成形する手段を提供する。さらに、2種類のシーラント剤を使用して、ボイドの発生をさらに抑制する手段をも提供する。なお、以下では上述した第1実施形態との相違点を中心に説明する。
第2実施形態では、シーラント剤28として、粘度の低いシーラント剤28Aと、シーラント剤28Aよりも粘度が高いシーラント剤28Bを用いる。なお、第1実施形態のシーラント剤28は、粘度の高いシーラント剤28Bに相当する。シーラント剤28Aは、一般にタンク内ブラシシールに用いられている低粘度のポリスルフィドポリマー材料、例えば、PRC−Desoto社製 PS−890A−2 Class A Fuel Tank Sealantを用いる。
図5(c)および図5(d)に示すように、第2実施形態で使用するダミーカップ31は、シーラント剤28Aを用いることに対応して、軸部25aとの接触を回避する空隙32と、カラー26との接触が上端部の一部に限定する空隙33と、を備えている。なお、ダミーカップ31の外径d1は、後述するカップホルダ41のフォルダ本体42(ガイド面42a)の内径d2と等しく設定されている。
また、図5(a)に示すように、カップホルダ41は、支持台43と、可動アーム44によって支持台43と接続されているフォルダ本体42と、から構成される。フォルダ本体42は、曲率半径がd2/2で中心角が180°の円弧面からなるガイド面42aを備えている。
可動アーム44は締結具48によって支持台43に上下方向に移動可能に接続されており、また、フォルダ本体42は締結具47によって可動アーム44に回動可能に接続されている。したがって、フォルダ本体42は、締結具47を中心軸とした周方向の位置、および、高さを任意に調整が可能である。
第2実施形態のカップホルダ41,ダミーカップ31を用いて、ファスナ部材24の周囲にシーラント層29を成形する手順を、図5、図6を参照して、説明する。
[第0ステップ:図5(b)]
初めに、第0ステップでは、シーラント剤28Aをファスナ部材24の周囲に刷毛を用いて塗布する(図5(b))。この際、シーラント剤28Aは、シーラントカップ13の外径程度の範囲とする。
[第1ステップ:図5(c)]
図5(c)に示すように、第1ステップでは、第1実施形態で説明した第1ステップの操作と同様に行い、シーラント剤28Aが塗布されているファスナ部材24にダミーカップ31を装着させる。この装着により、ファスナ部材24(軸部25a)の中心軸C24とダミーカップ31の中心軸C31が一致する。
この装着状態において、カラー26は、その先端の側壁が空隙33においてダミーカップ31と接触し、その先端面が空隙32と空隙33との境界部分に形成される段差面に突き当たるのみである。つまり、ダミーカップ31は、カラー26との接触が一部に限られているため、ダミーカップ31を装着することによりシーラント剤28Aが剥ぎ取られる領域は狭い。後述するようにシーラント剤28Aはシーラント剤28Bに対して潤滑剤のように作用するため、カラー26の周囲のより広い領域にシーラント剤28を残すためである。
[第2ステップ:図5(d)]
図5(d)に示すように、第2ステップでは、カップホルダ41のフォルダ本体42のガイド面42aを、ダミーカップ31の外周面に沿わせる。その後、カップホルダ41が位置ずれしないようにその位置を固定する。カップホルダ41は、支持台43を備えているので、この支持台43を固定すればよい。
ダミーカップ31の外径d1とフォルダ本体42の内径d2が等しいため、ファスナ部材24(軸部25a)の中心軸C24とフォルダ本体42の中心軸C42とを一致させることができる(図5(d)
その後、カップホルダ41の位置を固定したままで、ダミーカップ31を取り除く。ファスナ部材24とカップホルダ41は同軸上に配置されたままである。
[第3ステップ:図6(a)〜(c)]
第3ステップでは、シーラント剤28Bを充填したシーラントカップ13を、それまで装着されていたダミーカップ31の代わりにカップホルダ41に装着させる(図6(a))。つまり、シーラントカップ13の外周面をカップホルダ41のガイド面42aに沿わせながら、ファスナ部材24に向けて押込む。シーラントカップ13は、ガイド面42aにその外周面が相互に案内されながら、ファスナ部材24に装着される。そうすると、シーラント剤28Bはシーラント剤28Aを覆い、さらに、ファスナ部材24(軸部25a)の中心軸C24とシーラントカップ13の中心軸C13とを一致させることができる。
最後に、シーラント剤28Aおよびシーラント剤28Bがタックフリーになった後、カップホルダ41およびシーラントカップ13を取り外す。
以上の一連の手順により、ファスナ部材24の周囲にシーラント層29を成形させることができる。
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。
カップホルダ41のフォルダ本体42は、ダミーカップ31およびシーラントカップ13の外周の半分のみを支持する。したがって、フォルダ本体42が占有する領域が小さいので、ファスナ部材24の周囲が狭隘であっても、使用することができる。
また、フォルダ本体42の向き、高さを任意に調整きるため、適用できる範囲は広い。
なお、円弧状のガイド面42aは、中心角を180°としたが、180°未満、あるいは、180°超の中心角にすることができる。ただし、ダミーカップ31およびシーラントカップ13を安定して支持するためには、中心角を180°より大きくすることが好ましい。
また、第2実施形態は、粘度の異なる2つのシーラント剤を用いることにより、以下の効果を奏する。
つまり、シーラント剤28Aが予め塗布されていれば、シーラント剤28Aはファスナ部材24の近傍においても容易に流動しやすいのに加えて、シーラント剤28Bに押し出されるのでファスナ部材24の表面に窪みがあってもそれを埋める。しかも、シーラント剤28Bは、シーラント剤28Aがあたかも潤滑剤として機能することで、シーラント剤28Aの表面を滑るようにして流動することができる。したがって、シーラント剤28Aおよびシーラント剤28Bに空気が巻き込まれるおそれが小さいため、ボイドの発生を抑制することができる。
なお、以上説明した2種類のシーラント剤を使用して、シーラント層29を成形させる方法は、第1実施形態にも適用することができる。
また、シーラント剤28Aの粘度は、以上の作用、効果が得られるように適宜選択される。
以上、本発明を第1実施形態、第2実施形態に基づいて説明したが、ダミーカップ、カップホルダおよびシーラントカップの形態は、その機能を果たすことができるのであれば、上記形態に限定されるものではない。
例えば、ダミーカップは、カラー26及び露出する軸部25aの中の一部に接触して、ファスナ部材24と中心軸を一致させればよい。したがって、カラー26の一部の側面と接触するガイド面、あるいは、露出している軸部25aの側面と接触するガイド面を備えていれば本発明におけるダミーカップとして十分に機能する。カラー26の一部とは、カラー26の軸方向における一部、および、周方向の一部の両者を含む。このことは、カップホルダ、シーラントカップについても同様に当てはまる。
また、ダミーカップおよびシーラントカップの外形、および、カップホルダの保持孔は円形に限るものでない。例えば、矩形にすることもできるが、矩形の場合には、軸線回りに位置合わせしないとダミーカップおよびシーラントカップとカップホルダとを相互に装着できないのに対して、円形であれば、軸線周りの位置合わせは不要である。
また、本発明は、ファスナ部材24の形態に限定されない。例えば、カラー26の側面がテーパ状の例を示したが、軸方向に外径が等しいカラーに対して使用することもできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
11,31 ダミーカップ
12 カップホルダ
13 シーラントカップ
13a キャビティ
14 第1空隙
15 第2空隙
15a ガイド面
16 保持孔
16a ガイド面
16b 面取り
18 裾部
21 翼パネル(第1の部材)
22 補強構造材(第2の部材)
24 ファスナ部材
25 ファスナ本体
25a 軸部
25b 頭部
28,28A,28B シーラント剤
29 シーラント層
32,33 空隙
41 カップホルダ
42 フォルダ本体
42a ガイド面
44 可動アーム
47,48 締結具

Claims (12)

  1. 航空機に用いられるファスナ部材の要絶縁部位の周囲に絶縁性のシーラント層を成形する際に用いられる治具であって、
    キャビティに収容されるシーラント剤を、前記要絶縁部位の周囲に被せるシーラントカップと、
    前記シーラントカップを、前記ファスナ部材に対して位置決めするガイドを備えるカップホルダと、
    前記カップホルダを、前記ファスナ部材に対して位置決めするダミーカップと、からなり、
    前記カップホルダは、前記ファスナ部材に対して位置決めされた前記ダミーカップに前記ガイドが沿うことで、前記ファスナ部材に対して位置決めされ、
    前記シーラントカップは、前記ファスナ部材に対して位置決めされた前記カップホルダから前記ダミーカップを取り除いた後に、前記カップホルダに前記ガイドが案内されることで、前記シーラント剤を、前記要絶縁部位の周囲に被せる、
    ことを特徴とする耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  2. 前記ファスナ部材が第1の部材と第2の部材を貫通して連結し、前記第1の部材及び前記第2の部材の一方又は双方から突出している前記ファスナ部材の前記要絶縁部位の周囲に前記シーラント層を成形する、
    請求項1に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  3. 前記シーラントカップは、前記キャビティが軸方向の一端に開口する円筒状の部材からなり、
    前記カップホルダは、前記ガイドが、前記シーラントカップの外周に対応する曲率半径を有する円弧面からなり、
    前記ダミーカップは、前記ガイドで支持される前記シーラントカップの外周に対応するガイド面を有する、
    請求項1又は2に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  4. 前記カップホルダの前記ガイドは、
    少なくとも、前記シーラントカップ及びダミーカップを受容する側に面取りが形成されている、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  5. 前記カップホルダに前記シーラントカップを装着した際に、
    前記シーラントカップとカップホルダの間に隙間が形成される、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  6. 前記カップホルダの前記ガイドは、
    前記シーラントカップ、及び、ダミーカップの外径に対応する曲率半径を有する、中心角が180°以上の円弧面からなる、
    請求項3〜5のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  7. 前記シーラントカップは、
    前記キャビティの開口近傍の裾における肉厚が、前記開口近傍から軸方向に離れた領域よりも薄い、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  8. 前記シーラントカップは、
    前記キャビティの径が、前記開口に向けて連続的に、又は、断続的に大きくなる、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形用治具を用いて、前記シーラント層を形成する方法であって、
    前記ダミーカップを前記ファスナ部材に装着する第1ステップと、
    前記ガイドを前記ダミーカップに沿わせて前記カップホルダを前記ダミーカップに装着する第2ステップと、
    前記カップホルダの前記ファスナ部材に対する相対的な位置を維持した状態で、
    前記ダミーカップを取り除いた後に、前記シーラントカップを前記カップホルダの前記ガイドに沿わせながら前記ファスナ部材に装着する第3ステップと、
    を備えることを特徴とする耐雷ファスナのシーラント層成形方法。
  10. 前記第3ステップの前に、
    前記シーラントカップには、予め前記キャビィティにシーラント剤が充填されている、
    請求項9に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形方法。
  11. 前記第1ステップの前に、
    前記要絶縁部位の周囲を、前記シーラントカップに予め充填されているシーラント剤よりも、粘度の低いシーラント剤で被覆しておく、
    請求項10に記載の耐雷ファスナのシーラント層成形方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法によりシーラント層が成形された耐雷ファスナを備えた航空機の翼。
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