JP2014137102A - 車両の変速制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速モデルを用いて自動変速機の所望の変速を実行する。
【解決手段】自動変速機の運動方程式の拘束条件としてトルク分担率を設定したので、変速制御において難しいとされる係合装置のトルクの受け渡しを制御するのに適しており、且つその運動方程式を解くことができる。更に、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態でトルク分担率の変更を行うので、クラッチ圧指令値に対してクラッチトルクの実際値が追従する為、変速モデルに従った変速を実行することができる。また、トルク分担率を変更する部分に条件を設けている為、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となる前であっても変速制御自体は開始されるので、変速制御自体の開始を一律に遅延させる場合と比べて、変速制御を早く開始でき、素早く変速を完了させられる。
【選択図】図4

Description

本発明は、自動変速機の変速制御を実行する車両の変速制御装置に係り、特に、変速モデルを用いて自動変速機の変速を実行する技術に関するものである。
駆動力源からの動力を受ける入力軸と駆動輪に動力を伝達する出力軸との間で回転とトルクとを伝達する複数の係合装置を有して、その係合装置の係合と解放との切替えによって変速が実行される自動変速機が良く知られている。一般的に、このような自動変速機では、実車にて評価しながら各ギヤ段毎に制御対象に対して操作する要素(例えばトルク等)の要求値(すなわち制御操作量)の適合を行い、その適合結果により各ギヤ段毎に予め求められた制御マップから決定される制御操作量を用いて変速が実行される。しかしながら、自動変速機の多段化が進む中では、適合作業に非常に多くの労力が必要となり、制御マップを基にした変速制御の態様を採用することが困難化してきている。その為、自動変速機を構成する各回転要素における運動方程式を基にした変速制御の態様である変速モデル制御が提案されている。このような変速モデル制御では、変速時に実現したい変化態様(変速目標値)に基づいて予め求められた運動方程式を解くことで制御操作量を一意に決定し、その決定された制御操作量を用いて変速が実行される。例えば、特許文献1には、イナーシャ相制御において、変速目標値として変速機の入力軸回転速度の目標値を設定すると共に、制御操作量として係合側のクラッチトルクの要求値を変速モデルを用いて算出して変速を実行する技術、及び変速目標値として変速機の入力軸回転速度と出力軸トルクとの各目標値を設定すると共に、制御操作量として係合側のクラッチトルクの要求値と解放側のクラッチトルクの要求値とを変速モデルを用いて算出して変速を実行する技術が記載されている。
特開2000−97325号公報
ところで、前記特許文献1に記載の技術は、1つの変速目標値に対して1つの制御対象を操作することで、或いは2つの変速目標値に対して2つの制御対象を操作することで変速を実行している。しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、イナーシャ相中のイナーシャトルクを相殺する為に(換言すれば、イナーシャ相中の出力軸トルクが実質的に変化しないように)、解放側の係合装置の油圧を、解放に向けて減じた後に一時的に再度係合に向けて上昇させており、変速完了が遅くなってドライバビリティが悪化してしまう可能性がある。一方で、上記イナーシャトルクを相殺する為に、イナーシャ相中にてエンジントルクを一時的に減じる所謂エンジントルクダウン制御という手法が良く知られている。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、エンジンが制御対象として運動方程式に組み込まれていない。つまり、特許文献1に記載の技術では、成り行きのエンジントルクに対して運動方程式を解いている為、特許文献1に記載の変速モデル制御では、解放側の係合装置の一時的な油圧上昇に替えて、エンジントルクダウン制御によってイナーシャトルクを相殺することができない。この際、変速モデル制御とは別にエンジントルクダウン制御を実行することは可能であるが、そうすると変速モデル制御の全体が崩れ再度運動方程式から解を導くこととなり、結局、変速完了が遅くなったり、変速ショックが増大してドライバビリティが悪化してしまう可能性がある。他方で、エンジントルクについても制御操作量として変速モデル制御にて一意に決定しようとすると、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量となり、運動方程式を解くことができず、変速モデル制御を用いた自動変速機の変速が実行できなくなる。
尚、上述したような課題は未公知であり、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量がある場合に、パワーオンアップシフト、パワーオフアップシフト、パワーオンダウンシフト、及びパワーオフダウンシフトといった何れの変速パターン(変速様式)にも所定の変速モデルにて対応できるように、運動方程式を解く為の拘束条件を適切に設定することについて、未だ提案されていない。これに対して、本発明は、拘束条件を適切に設定して運動方程式を解くという新たな技術を提案するものである(本件出願人が先に出願した、現時点で未公開の国際出願(国際出願番号:PCT/JP2012/069408)を参照)。加えて、本発明は、上記新たな技術を基礎として、その技術を更に改良する技術を提案するものである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量があったとしても変速モデルを用いて自動変速機の所望の変速を実行することができる車両の変速制御装置を提供することにある。
前記目的を達成する為の第1の発明の要旨とするところは、(a) 駆動力源からの動力を受ける入力軸と駆動輪に動力を伝達する出力軸との間で回転とトルクとを伝達する複数の係合装置を有して、その係合装置の係合と解放との切替えによって変速が実行される自動変速機を備え、変速目標値を実現させる制御操作量を決定する予め定められた変速モデルを用いて前記自動変速機の変速を実行する車両の変速制御装置であって、(b) 前記変速目標値を、前記出力軸側の回転部材上のトルクと、前記入力軸側の回転部材の速度変化量との2つの値で設定し、(c) 前記制御操作量を、前記入力軸側の回転部材上のトルクと、前記変速時における係合側の係合装置のトルク容量と、前記変速時における解放側の係合装置のトルク容量との3つの値で設定し、(d) 前記変速時に前記係合側の係合装置と前記解放側の係合装置とで受け持つ伝達トルクのトルク分担率を設定することで、(e) 前記変速モデルを用いて前記自動変速機の変速を実行するものであり、(f) 前記トルク分担率の変更は、前記係合側の係合装置が解放状態において所定の状態まで作動していることを条件とすることにある。上記トルク分担率は、前記変速時に前記係合側の係合装置と前記解放側の係合装置とで受け持つ伝達トルクを前記入力軸側の回転部材上のトルクに置き換えたときの両係合装置にて分担するその伝達トルクのトルク分担率である。
このようにすれば、2つの変速目標値を実現する為に3つの制御操作量を決定する必要がある場合に、何らかの拘束条件を設定しなければそれら制御操作量を決定することができないことに対して、解放側の係合装置と係合側の係合装置とで受け持つ伝達トルクのトルク分担率を拘束条件としたので、変速制御において難しいとされる解放側の係合装置と係合側の係合装置とのトルクの受け渡し(すなわち変速進行度)を制御するのに適しており、且つ3つの制御操作量を決定することができる。見方を換えれば、3つの制御操作量を決定する為に何れかの制御操作量を予め定めた所定の値とする場合には、その所定の値としては各変速パターン毎に合わせた値とするなど無数にある。これに対して、本発明では、トルクの受け渡しを表現した前記トルク分担率を拘束条件としたので、何れの変速パターンにも所定の変速モデルにて対応することができる。具体的には、係合側の係合装置のトルク容量及び解放側の係合装置のトルク容量の一方のみを拘束条件とすると、タイアップやある回転部材の吹き上がりが発生する可能性があるが、変速進行度を制御するのに適した前記トルク分担率を拘束条件とすることで、上記タイアップや吹き上がりの発生を抑制したり、反対に、敢えてタイアップや吹き上がりを発生させる制御の制御性が向上する。また、入力軸側の回転部材上のトルクを拘束条件とすると、駆動力源の出力トルクを一時的に変化させるような制御を実行できなくなる可能性があるが、本発明では、例えばイナーシャ相中にて駆動力源の出力トルクを一時的に減じるようなトルクダウン制御を適切に実行することができる。このように、本発明では、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量があったとしても、変速モデルを用いて3つの制御操作量を適切に決定し、2つの変速目標値を実現するような自動変速機の所望の変速を実行することができる。
ところで、係合装置は、ピストンが所定位置まで移動した待機状態にならないと(すなわちパッククリアランスが詰まった状態にならないと)、トルク容量を発生させることができない。一方で、前記変速モデルでは、前記トルク分担率を拘束条件に設定しており、変速目標値を実現するようにトルク分担率が変化させられ、決定された制御操作量に対応する指令値を出力することで、前記入力軸側の回転部材上のトルク、前記係合側の係合装置のトルク容量、及び前記解放側の係合装置のトルク容量が制御される。この際、係合装置のパッククリアランスが詰まった状態となる前に、指令値を変化させても、トルク容量の実際値はその変化に追従しておらず、入力軸側の回転部材の回転吹きや出力軸側の回転部材上のトルク抜けのような現象が生じる為、変速目標値通りの変速を実行できない可能性がある。このような現象を回避する為に、変速要求が為されたときに、係合側の係合装置のパッククリアランスが詰まった状態となるまで、変速制御自体の開始を一律に遅らせることが考えられる。しかしながら、その分、変速が進行させられず、変速完了が遅くなって、ドライバビリティが悪化する可能性がある。このような課題に対して、前記第1の発明では、更に、係合側の係合装置のパッククリアランスが詰まった状態でトルク分担率の変更を行うので、指令値に対してトルク容量の実際値が追従する為、変速モデルに従った変速を実行することができる。また、トルク分担率を変更する部分に条件を設けている為、係合側の係合装置のパッククリアランスが詰まった状態となる前であっても変速制御自体は開始されるので、変速制御自体の開始を一律に遅延させる場合と比べて、変速制御を早く開始でき、素早く変速を完了させられる。よって、本発明では、変速モデルを用いて自動変速機の所望の変速を一層適切に実行することができる。
ここで、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両の変速制御装置において、前記条件が成立していれば前記トルク分担率の変更が開始される開始時点において実際にはその条件が未成立である為に前記トルク分担率の変更ができない場合は、その開始時点での変速目標値を保持することにある。このようにすれば、係合側の係合装置のパッククリアランスが詰まった状態でない場合は、そのときの変速目標値を保持することでパッククリアランスが詰まった状態となるまで待機することができるので、指令値に対してトルク容量の実際値が追従する状態で、変速モデルに従った変速を実行することができる。
また、第3の発明は、前記第1の発明又は第2の発明に記載の車両の変速制御装置において、前記自動変速機の変速中に別の種類の変速が判断された場合は、その変速中の変速に対応するトルク分担率の変更を実行した後にその別の種類の変速を実行するものであり、その変速中の変速における前記係合側の係合装置が前記条件を満たすまでその変速中の変速に対応する前記トルク分担率の変更を実行しないと共に、前記変速目標値をその別の種類の変速に対応する変速目標値へ切り替えることにある。このようにすれば、変速中に別の種類の変速が判断された場合は、係合側の係合装置のパッククリアランスが詰まった状態で変速中の変速に対応するトルク分担率の変更を行うので、変速モデルに従った変速を実行することができる。この際、それまでの変速目標値をその別の種類の変速に対応する変速目標値へ切り替えるので、一つずつ変速を完了させる場合と比べて、変速を速やかに進行させることができ、別の種類の変速を含めた変速全体を素早く完了させられる。
また、第4の発明は、前記第1の発明乃至第3の発明の何れか1つに記載の車両の変速制御装置において、前記所定の状態は、前記係合側の係合装置が係合圧を増大すればトルク容量を発生させられる状態にまで作動させられている状態である。このようにすれば、係合側の係合装置が所定の状態まで作動していることを条件としてトルク分担率の変更を行うことで、指令値に対してトルク容量の実際値が適切に追従させられる。
また、第5の発明は、前記第1の発明乃至第4の発明の何れか1つに記載の車両の変速制御装置において、前記変速モデルは、前記変速目標値と前記制御操作量とを含む前記自動変速機の運動方程式と、前記トルク分担率を表す関係とを用いて、前記変速目標値に基づいて前記制御操作量を算出するものである。このようにすれば、変速制御において難しいとされる解放側の係合装置と係合側の係合装置とのトルクの受け渡しに関連する制御を運動方程式に反映させることができ、3つの制御操作量を適切に決定することができる。
本発明が適用される車両における動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、車両に設けられた制御系統の要部を説明する図である。 電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 変速パターン毎に予め定められたトルク分担率を変化させる時期の一例を示す図である。(a)はパワーオンアップシフトの場合であり、(b)はパワーオンダウンシフトの場合であり、(c)はパワーオフアップシフトの場合であり、(d)はパワーオフダウンシフトの場合である。 電子制御装置の制御作動の要部すなわち変速モデルを用いて自動変速機の所望の変速を一層適切に実行する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図4のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであって、パワーオンダウンシフト時の一例である。 電子制御装置の制御作動の要部すなわち多重変速が発生したとしても変速モデルを用いて自動変速機の所望の変速を適切に実行する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであって、パワーオンダウンシフト時の一例である。
本発明において、好適には、前記車両は、例えば前記駆動力源の動力を前記自動変速機などの動力伝達装置を介して前記駆動輪へ伝達するものである。また、前記自動変速機は、所定の係合装置の係合と解放との切替えによって各々異なる変速比(ギヤ比)を有する複数の変速段(ギヤ段)が択一的に形成される有段式自動変速機である。例えば、この有段式自動変速機は、公知の遊星歯車式自動変速機により構成される。この遊星歯車式自動変速機における係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ、或いはバンドブレーキ等の係合装置が広く用いられる。また、前記車両は、例えば複数の係合装置の油圧アクチュエータにそれぞれ油圧を供給する油圧制御回路を備えている。この油圧制御回路は、例えばリニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブ等を備え、それらソレノイドバルブの出力油圧を直接的或いはシフトコントロールバルブ等を介して間接的に係合装置の油圧アクチュエータにそれぞれ供給する。尚、上記「油圧を供給する」とは、「油圧を作用させる」或いは「ある油圧に制御された作動油を供給する」ことを意味する。
また、好適には、前記駆動力源としては、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンが用いられる。或いは、前記駆動力源としては、例えば電動機等の原動機が単独で或いは上記エンジンと組み合わせて用いられる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられたエンジン12から駆動輪26までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、車両10に設けられた制御系統の要部を説明する図である。図1において、駆動力源としてのエンジン12により発生させられた動力は、トルクコンバータ14を経て入力軸16から自動変速機18に入力され、自動変速機18の出力軸20から差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)22や一対の車軸(ドライブシャフト)24等を順次介して左右の駆動輪26へ伝達される。
自動変速機18は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース内において1組乃至複数組の遊星歯車装置と複数の係合装置(係合要素)とを有し、その係合装置によって複数のギヤ段が択一的に成立させられる公知の遊星歯車式自動変速機である。例えば、自動変速機18は、複数の係合装置の何れかの掴み替えにより(すなわち係合装置の係合と解放との切替えにより)変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。複数の係合装置はそれぞれ、エンジン12からの動力を受ける入力軸16と駆動輪26に動力を伝達する出力軸20との間で回転とトルクとを伝達する油圧式の摩擦係合装置である。この入力軸16は、自動変速機18の入力軸であるが、トルクコンバータ14のタービン翼車によって回転駆動されるタービン軸でもある。
前記油圧式の摩擦係合装置は、油圧制御回路28によってそれぞれ係合と解放とが制御され、その油圧制御回路28内のソレノイドバルブ等の調圧によりそれぞれのトルク容量すなわち係合力が変化させられて、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するクラッチやブレーキである。ここで、係合装置のトルク容量(以下、クラッチトルクという)は、例えば係合装置の摩擦材の摩擦係数や摩擦板を押圧する係合油圧(以下、クラッチ圧という)によって決まるものである。係合装置を滑らすことなく(すなわち係合装置に差回転速度を生じさせることなく)入力軸16と出力軸20との間でトルク(例えば入力軸16に入力される変速機入力トルクTiすなわちタービントルクTt)を伝達する為には、そのトルクに対して各係合装置にて受け持つ必要がある伝達トルク分(すなわち係合装置の分担トルク)が得られるトルク容量が必要になる。但し、伝達トルク分が得られるトルク容量においては、トルク容量を増加させても伝達トルクは増加しない。尚、本実施例では、便宜上、クラッチトルクとクラッチ圧とを同義に取り扱うこともある。
自動変速機18におけるギヤ段の一例としては、例えばクラッチC1とブレーキB1との係合により低車速側ギヤ段(ローギヤ段例えば第1速ギヤ段)が成立させられ、クラッチC1とブレーキB2との係合により高車速側ギヤ段(ハイギヤ段例えば第2速ギヤ段)が成立させられる。従って、上記ローギヤ段とハイギヤ段との間の変速時には、ブレーキB1とブレーキB2とで掴み替えが行われる。本実施例では、変速時に掴み替えが行われる係合装置のうちで、ローギヤ段側の成立に関与する係合装置(例えばブレーキB1)をローギヤ段係合装置と称し、ハイギヤ段側の成立に関与する係合装置(例えばブレーキB2)をハイギヤ段係合装置と称する。ローギヤ段係合装置は、ローギヤ段からハイギヤ段へのアップシフト時には解放側の係合装置(以下、解放側クラッチという)となり、ハイギヤ段からローギヤ段へのダウンシフト時には係合側の係合装置(以下、係合側クラッチという)となる。一方で、ハイギヤ段係合装置は、上記アップシフト時には係合側クラッチとなり、上記ダウンシフト時には解放側クラッチとなる。上記ギヤ段とは別のギヤ段の一例としては、例えばクラッチC1とクラッチC2との係合により上記第2速ギヤ段よりも高車速側のギヤ段(例えば第3速ギヤ段)が成立させられる。第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間の変速においては、第2速ギヤ段はローギヤ段となり、第3速ギヤ段はハイギヤ段となる。
図1に戻り、車両10には、例えば自動変速機18の変速制御などに関連する変速制御装置を含む電子制御装置70が備えられている。電子制御装置70は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置70は、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や油圧制御用(変速制御用)等に分けて構成される。また、電子制御装置70には、各種センサ(例えば各回転速度センサ50,52,54、アクセル開度センサ56、スロットル弁開度センサ58、シフトセンサ60など)により検出された各種信号(例えばエンジン12の回転速度を表すエンジン回転速度ωe,入力軸16の回転速度を表すタービン回転速度ωtすなわち変速機入力回転速度ωi,車速Vに対応する出力軸20の回転速度を表す変速機出力回転速度ωo、車両10の駆動力(駆動トルク)に対する運転者の要求量を表すアクセル開度Acc、スロットル弁開度θth、シフトレバー或いはパドルスイッチによるシフト操作SHなど)が、それぞれ供給される。また、電子制御装置70からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、自動変速機18の油圧アクチュエータを制御する油圧制御回路28を作動させる為の油圧指令信号Spなどが、それぞれ出力される。
図2は、電子制御装置70による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図2において、エンジン出力制御手段すなわちエンジン出力制御部72は、例えば要求されたエンジントルクTe(以下、要求エンジントルクTedem)が得られるように、スロットル制御の為にスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射量制御の為に燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、点火時期制御の為にイグナイタ等の点火装置を制御するエンジン出力制御指令信号Seを出力する。エンジン出力制御部72は、例えばアクセル開度Accをパラメータとして車速Vと要求駆動力Fdemとの予め記憶された不図示の関係(駆動力マップ)から実際のアクセル開度Acc及び車速Vに基づいて要求駆動力Fdemを算出する。そして、エンジン出力制御部72は、例えば駆動輪26のタイヤ有効半径、現在の自動変速機18のギヤ段におけるギヤ比、出力軸20よりも駆動輪26側の動力伝達経路における終減速比、及びトルクコンバータ14のトルク比tに基づいて、要求駆動力Fdemが得られる要求エンジントルクTedemを算出する。尚、トルクコンバータ14のトルク比tは、例えば速度比(=タービン回転速度ωt/ポンプ回転速度ωp(エンジン回転速度ωe))とトルク比t、効率、及び容量係数とのそれぞれの予め記憶された公知の関係(トルクコンバータ14の作動特性図)から実際の速度比eに基づいて算出される。
変速制御手段すなわち変速制御部74は、自動変速機18の変速制御を実行する。具体的には、変速制御部74は、車速V及びアクセル開度Accを変数として予め記憶された公知の関係(変速マップ、変速線図)から実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて変速判断を行う。そして、変速制御部74は、自動変速機18の変速を実行すべきと判断した場合には、変速すべきギヤ段が得られるように自動変速機18の自動変速制御を実行する。例えば、変速制御部74は、判断したギヤ段が達成されるように、自動変速機18の変速に関与する係合装置を係合及び/又は解放させる油圧指令信号Spを油圧制御回路28へ出力する。この油圧指令信号Spとしては、例えば解放側クラッチのトルク容量(以下、解放側クラッチトルクという)を得る為の油圧指令値、及び係合側クラッチのトルク容量(以下、係合側クラッチトルクという)を得る為の油圧指令値である。
ここで、変速制御としては、例えば変速ショックや変速時間等が適切であるかを実車にて評価しつつ適合により予め定められた制御マップから、変速時のトルク容量(或いは油圧指令値)を決定して自動変速機18の変速を実行する手法がある。このような制御マップを用いる手法では、どの変速の種類での変速であるかによって、各々異なる制御マップを作成する必要がある。その為、自動変速機18のギヤ段が多段化される程、上記適合作業に多くの労力等が必要となってくる。上記変速の種類とは、例えばパワーオンアップシフト、パワーオフアップシフト、パワーオンダウンシフト、及びパワーオフダウンシフトといった各種の変速パターン(変速様式)と、1速−2速間、2速−3速間などの各種のギヤ段間との組み合わせで表される各種の変速態様である。より具体的には、変速の種類は、3速→2速パワーオンダウンシフト、2速→1速パワーオンダウンシフトなどとして表される。
そこで、本実施例では、変速制御として、上記制御マップを用いる手法に替えて、変速目標値を実現させる制御操作量を決定する予め定められた変速モデルを用いて自動変速機18の変速を実行する手法を採用する。上記変速目標値は、変速時に実現したい変化態様を定める要素(例えば変速時間、駆動力等)の目標値である。上記制御操作量は、制御対象に対して操作する要素(エンジントルク、クラッチトルク等)の要求値である。
以下において、変速モデルを用いた自動変速機18の変速制御について詳しく説明する。自動変速機18の変速中における運動方程式は、次式(1)及び次式(2)で表される。この式(1)及び式(2)は、自動変速機18を構成する相互に連結された各回転要素毎の運動方程式、及び自動変速機18を構成する遊星歯車装置における関係式から導き出されたものである。上記各回転要素毎の運動方程式は、各回転要素におけるイナーシャと回転速度時間変化率との積で表されるトルクを、遊星歯車装置の3つの部材(サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ)、及び係合装置の両側の部材のうちで各回転要素に関与する部材に作用するトルクにて規定した運動方程式である。また、遊星歯車装置における関係式は、遊星歯車装置の歯車比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)を用いて、その遊星歯車装置の3つの部材におけるトルクの関係と回転速度時間変化率の関係とを各々規定した関係式である。この式(1)及び式(2)において、dωt/dtは、タービン回転速度ωt(すなわち変速機入力回転速度ωi)の時間微分すなわち時間変化率であり、入力軸16側の回転部材の速度変化量としての入力軸16の角加速度(以下、入力軸角加速度)を表している(図面乃至数式においては時間変化率をドットで示している、以下の説明において同じ)。dωo/dtは、変速機出力回転速度ωoの時間変化率であり出力軸角加速度を表している。Ttは、入力軸16側の回転部材上のトルクとしての入力軸16上のトルクであるタービントルクすなわち変速機入力トルクTiを表している。このタービントルクTtは、トルクコンバータ14のトルク比tを考慮すればエンジントルクTe(=Tt/t)と同意である。Toは、出力軸20側の回転部材上のトルクとしての出力軸20上のトルクである変速機出力トルクを表している。Tcaplは、係合側クラッチトルクであり、アップシフト時にはハイギヤ段側クラッチトルクとなり、ダウンシフト時にはローギヤ段側クラッチトルクとなる。Tcdrnは、解放側クラッチトルクであり、アップシフト時にはローギヤ段側クラッチトルクとなり、ダウンシフト時にはハイギヤ段側クラッチトルクとなる。a1,a2,b1,b2,c1,c2,d1,d2はそれぞれ、この式(1)及び式(2)を導き出した際に定数としたものであり、上記各回転要素におけるイナーシャ及び上記遊星歯車装置の歯車比から設計的に定められる係数である。この定数の具体的な数値は、例えば変速の種類(例えば変速パターンやギヤ段間)毎に異なる。従って、上記運動方程式としては1つの所定のものであるが、自動変速機18の変速には、変速の種類毎に異なる定数とされたそれぞれの変速の種類に対応する運動方程式が用いられる。
Figure 2014137102
前記式(1)及び式(2)は、変速目標値と制御操作量との関係を定式化した自動変速機18のギヤトレーン運動方程式である。ここでの変速目標値は、変速時間及び駆動力の各目標値を表現でき、ギヤトレーン運動方程式上で取り扱えるものである。本実施例では、変速時間を表現できる要素の一例として、入力軸角加速度dωt/dtを用いている。また、駆動力を表現できる要素の一例として、変速機出力トルクToを用いている。つまり、本実施例では、変速目標値を、入力軸角加速度dωt/dtと、変速機出力トルクToとの2つの値で設定している。一方で、本実施例では、それら変速目標値を成立させる制御操作量を、タービントルクTt(エンジントルクTeも同意)と、係合側クラッチトルクTcaplと、解放側クラッチトルクTcdrnとの3つの値で設定している。そうすると、運動方程式が前記式(1)及び式(2)の2式で構成されることに対して制御操作量が3つある為に、2つの変速目標値を成立させる制御操作量を一意に解くことはできない。その為、変速モデルを用いて、2つの変速目標値を実現するような自動変速機18の所望の変速を実行することができない。尚、出力軸角加速度dωo/dtは、回転速度センサ54の検出値である変速機出力回転速度ωoから算出される。
ところで、前記式(1)及び式(2)の運動方程式に、ある拘束条件を追加することで制御操作量を一意に解くことができると考えられる。ここで、自動変速機18の変速制御において難しいとされることは、解放側クラッチと係合側クラッチとのトルクの受け渡し(すなわち変速進行度)を制御することである。一方で、3つの制御操作量を決定する為に何れかの制御操作量を所定の値とする場合には、各変速パターン毎に合わせた所定の値とするなど無数の定め方がある。この所定の値に関し、例えば解放側クラッチトルクTcdrn及び係合側クラッチトルクTcaplのうちで一方のみを拘束条件とすると、変速中にタイアップや吹き上がりが発生し易くなったり、また、敢えて変速中にタイアップや吹き上がりを発生させる制御の制御性が低下したりする可能性がある。或いは、例えばエンジントルクの変化態様を拘束条件とすると、イナーシャ相中にエンジントルクを一時的に変化させるようなエンジントルクダウン制御を実行できなくなる可能性がある。そこで、本実施例では、変速中のトルクの受け渡しを表現したり制御するのに適しており、また、何れの変速パターンにも対応することができる、解放側クラッチと係合側クラッチとで受け持つ伝達トルクのトルク分担率を、上記拘束条件として設定することを見出した。つまり、変速中のトルクの受け渡しを運動方程式に組み込むことができ、且つ制御操作量を一意に解くことができる、伝達トルクのトルク分担率を上記拘束条件として設定することを見出した。上記トルク分担率は、自動変速機18の変速時に解放側クラッチと係合側クラッチとで受け持つ必要がある合計の伝達トルク(合計伝達トルク)を例えば入力軸16上のトルク(入力軸上合計伝達トルク)に置き換えたときに、その入力軸上合計伝達トルクに対して両係合装置が各々分担する伝達トルクの割合である。本実施例では、係合側クラッチのトルク分担率を「xapl」とし、解放側クラッチのトルク分担率を「xdrn」として、それぞれのトルク分担率を、変速中のトルクの受け渡しを反映するように時系列で変化するトルク分担率x(例えば0≦x≦1)を用いて次式(3)及び次式(4)のように定義する。
xapl = x ・・・(3)
xdrn = 1−x ・・・(4)
係合側クラッチトルクTcaplと解放側クラッチトルクTcdrnとの関係式は、入力軸16上のトルクに置き換えた「Tcapl」及び「Tcdrn」と、前記式(3)及び式(4)とに基づいて、「x」(=xapl)と「1−x」(=xdrn)とを用いて定義することができる。そして、前記式(1)、前記式(2)、及び「Tcapl」と「Tcdrn」との関係式から、制御操作量である、タービントルクTt、係合側クラッチトルクTcapl、及び解放側クラッチトルクTcdrnを算出する関係式が導き出される。タービントルクTt(エンジントルクTeも同意)は、「x」(=xapl)、「1−x」(=xdrn)、入力軸角加速度dωt/dt、及び変速機出力トルクToなどを用いた関係式にて表される。同様に、係合側クラッチトルクTcaplは、「x」(=xapl)、入力軸角加速度dωt/dt、及び変速機出力トルクToなどを用いた関係式にて表される。同様に、解放側クラッチトルクTcdrnは、「1−x」(=xdrn)、入力軸角加速度dωt/dt、及び変速機出力トルクToなどを用いた関係式にて表される。つまり、本実施例の変速モデルは、前記変速目標値と前記制御操作量とを含む自動変速機18の運動方程式(前記式(1),(2))と、前記トルク分担率を表す関係(前記式(3),(4))とを用いて、前記変速目標値に基づいて前記制御操作量を算出するものである。このように、本実施例では、前記式(1),(2)に、トルク分担率xにて設定した拘束条件を追加することで、変速モデルを用いて自動変速機18の変速を実行する。よって、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量があったとしても、上記変速モデルを用いて3つの制御操作量を適切に決定することができる。この変速モデルとしては1つの所定のものであるが、上述したように変速の種類(例えば変速パターンやギヤ段間)毎に異なる定数とされたギヤトレーン運動方程式が用いられるので、自動変速機18の変速には、それぞれの変速の種類に対応する変速モデルが用いられることになる。
ここで、自動変速機18の変速制御においては、パワーオンアップシフト、パワーオフアップシフト、パワーオンダウンシフト、及びパワーオフダウンシフトといった様々な変速パターンがある。その為、各変速パターンに合わせてトルク分担率を設定することが望ましい。例えば、本実施例では、変速パターンに合わせて変速を適切に進行させる為に、変速パターンに基づいてトルク分担率を変化させる時期を変更する(すなわち変速パターンに基づいて解放側クラッチと係合側クラッチとのトルクを受け渡すタイミングを変更する)。以下に、各変速パターンに合わせたトルク分担率の設定について詳細に説明する。
パワーオンアップシフト或いはパワーオフダウンシフトでは、エンジントルクTe(パワーオン時の正トルク、或いはパワーオフ時の負トルク(エンジンフリクショントルク))によってタービン回転速度ωt(すなわち変速機入力回転速度ωi)が変化させられる方向と、変速に伴うタービン回転速度ωtの変化方向(変速によって進められる方向)とが異なる。すなわち、パワーオンアップシフト或いはパワーオフダウンシフトでは、エンジントルクTeにより自発的に変速を進行できない。従って、トルク分担率を変えないまま解放側クラッチトルクTcdrnの絶対値のみを低下させるだけでは(すなわち解放側クラッチを解放に向かわせるだけでは)変速を進行させられないので、係合側クラッチによりタービン回転速度ωtを変速に伴う変化方向へ変化させる必要がある。そこで、変速パターンがパワーオンアップシフト或いはパワーオフダウンシフトの場合には、図3の(a),(d)に示すように、変速を適切に進行させる為に、トルク分担率を変化させる時期をイナーシャ相開始前とする(すなわち解放側クラッチと係合側クラッチとのトルクの受け渡しをイナーシャ相開始前に実行する)。
一方で、パワーオフアップシフト或いはパワーオンダウンシフトでは、エンジントルクTeによってタービン回転速度ωtが変速に伴う変化方向へ変化させられる。すなわち、パワーオフアップシフト或いはパワーオンダウンシフトでは、エンジントルクTeにより自発的に変速を進行できる。従って、トルク分担率を変えないまま解放側クラッチトルクTcdrnの絶対値のみを低下させるだけで変速を進行させられるので、係合側クラッチによりタービン回転速度ωtを変速に伴う変化方向へ変化させる必要がない。パワーオフアップシフト或いはパワーオンダウンシフトでは、係合側クラッチにより変速を進行させようとすると、却ってイナーシャトルクが増大して変速ショックが悪化する可能性がある。そこで、変速パターンがパワーオフアップシフト或いはパワーオンダウンシフトの場合には、図3の(c),(b)に示すように、変速を適切に進行させる為に、トルク分担率を変化させる時期をイナーシャ相終了時とする。すなわち、パワーオフアップシフト或いはパワーオンダウンシフトの場合には、変速ショックが抑制された滑らかな変速を実現する為に、エンジントルクTeに合わせて解放側クラッチを解放することだけで変速を進行させた後、解放側クラッチと係合側クラッチとのトルクの受け渡しをイナーシャ相の終了に合わせるように実行することで係合側クラッチによりタービン回転速度ωtを変速後の同期回転に合わせる。ここでの、イナーシャ相終了時とは、例えばイナーシャ相が概ね終了したような、タービン回転速度ωtが変速後の同期回転に概ね近づいた時点である。つまり、イナーシャ相終了時とは、係合側クラッチを係合に向かわせなくとも、エンジントルクTeと解放側クラッチの解放とによりイナーシャ相が開始されて更に進行させられ、タービン回転速度ωtを変速後の回転速度に同期させるところだけ係合側クラッチを係合に向けて制御すれば良いような、イナーシャ相の終了間近の時点である。尚、エンジントルクTeと解放側クラッチの解放とによりイナーシャ相が進行させられて終了させられ得る場合には、イナーシャ相終了時をイナーシャ相終了後としても良い。
より具体的には、図2において、変速制御部74は、自動変速機18の変速中であるか否かを、例えば実行すべきと判断した変速が未だ終了していないか否かに基づいて判定する。
制御操作量算出手段すなわち制御操作量算出部76は、変速制御部74により自動変速機18の変速中であると判定された場合には、上記変速モデルを用いて、前記変速目標値に基づいて前記制御操作量を算出する。制御操作量算出部76は、トルク分担率算出手段すなわちトルク分担率算出部78と、変速目標値算出手段すなわち変速目標値算出部80とを備えている。
トルク分担率算出部78は、例えばトルク分担率xを変化させる態様(例えば傾き等)が予め定められた関係(変速進行度マップ)から、変化開始時(或いは変速制御開始時、前回算出時等)からの経過時間に基づいてトルク分担率xを算出する。そして、トルク分担率算出部78は、前記式(3)及び式(4)から、その算出したトルク分担率xに基づいて係合側クラッチのトルク分担率xaplと解放側クラッチのトルク分担率xdrnとを算出する。上記変速進行度マップは、例えば変速の種類(変速パターンやギヤ段間)毎に予め定められている。また、トルク分担率xの初期値は、「0」とされている。
変速目標値算出部80は、例えばイナーシャ相中のタービン回転速度ωt(=変速機入力回転速度ωi)の変化が変速ショックの抑制と変速時間とを両立させる所定変化となるように入力軸角加速度dωt/dtを変化させる態様が予め定められた関係(入力軸角加速度変化マップ)から、イナーシャ相開始時(或いは前回算出時)からの経過時間に基づいてイナーシャ相中の入力軸角加速度dωt/dtの目標値を算出する。また、変速目標値算出部80は、例えばイナーシャ相中以外では、タービン回転速度ωt(=変速機入力回転速度ωi)の変化に基づいて入力軸角加速度dωt/dtの目標値を算出する。加えて、変速目標値算出部80は、例えば変速機出力トルクToを変化させる態様が予め定められた関係(変速機出力トルク変化マップ)から、エンジン出力制御部72により算出された要求駆動力Fdem及び変速制御開始時(或いは前回算出時)からの経過時間に基づいて変速機出力トルクToの目標値を算出する。尚、上記入力軸角加速度変化マップ及び変速機出力トルク変化マップは、例えば変速の種類(変速パターンやギヤ段間)毎に予め定められている。
制御操作量算出部76は、前記制御操作量を算出する関係式から、トルク分担率算出部78により算出された係合装置のトルク分担率(x,xapl,xdrn)、及び変速目標値算出部80により算出された各変速目標値(dωt/dt、Toの各目標値)に基づいて、制御操作量としての、タービントルクTt(エンジントルクTeも同意)、係合側クラッチトルクTcapl、及び解放側クラッチトルクTcdrnの各要求値を算出する。
エンジン出力制御部72は、制御操作量算出部76により算出されたタービントルクTtの要求値が得られるように、エンジン出力制御指令信号Seを出力する。変速制御部74は、判断した自動変速機18のギヤ段が達成されるように、制御操作量算出部76により算出された係合側クラッチトルクTcapl及び解放側クラッチトルクTcdrnの各要求値を得る為の油圧指令信号(例えばクラッチ圧指令値)Spを油圧制御回路28へ出力する。
ところで、前記変速モデルを用いて、前記変速目標値に基づいて算出した前記制御操作量の各要求値が得られるように各指令値を出力したとしても、例えばトルク分担率xapl,xdrnを変化させるときに係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態になっていないと、クラッチ圧(或いはクラッチトルク)の実際値はクラッチ圧指令値に追従し難い。そこで、本実施例では、電子制御装置70は、トルク分担率xapl,xdrnの変更は、係合側クラッチが解放状態において所定の状態まで作動していることを条件とする。この所定の状態は、係合側クラッチがクラッチ圧(特にはクラッチ圧指令値)を増大すればクラッチトルクを直ちに発生させられる係合開始直前状態にまで作動させられている状態であって、係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了している量として予め定められた所定量分作動させられている状態である。これにより、係合側クラッチが所定の状態まで作動していることを条件としてトルク分担率xapl,xdrnの変更を行うことで、クラッチ圧指令値に対してクラッチトルクの実際値が適切に追従させられる。
このように、電子制御装置70は、変速モデルに従った変速制御の実行中に、本来であればトルク分担率xapl,xdrnを変化させる時期であっても、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となるまではトルク分担率xapl,xdrnを変化させない。この際、変速目標値を保持すれば、変速モデルに従った変速を実行する形で、パッククリアランスが詰まった状態となるまでトルク分担率xapl,xdrnの変化を待機することができる。そこで、本実施例では、電子制御装置70は、前記条件が成立していればトルク分担率xapl,xdrnの変更が開始される開始時点において実際にはその条件が未成立である為にトルク分担率xapl,xdrnの変更ができない場合は、その開始時点での変速目標値を保持する。つまり、トルク分担率xapl,xdrnの変更を本来なら開始する時点(例えば変速制御開始後の予め定められた時点)にて設定された変速目標値を、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となるまではそのまま保持する。
具体的には、トルク分担率変更可否判定手段すなわちトルク分担率変更可否判定部82は、前記条件が成立しているか否か、すなわち係合側クラッチが解放状態において所定の状態まで作動しているか否かを判定する。つまり、トルク分担率変更可否判定部82は、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となっているか否か、すなわち係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了しているか否かを判定する。係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となっているか否かは、例えば係合側クラッチのクラッチ圧指令値の積分値が予め定められたパック詰め完了値以上となっているか否か、又は、係合側クラッチへ係合圧を入れている期間が予め定められたパック詰め完了時間以上となっているか否かなどに基づいて判定される。
トルク分担率変更可否判定部82は、係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了していると判定した場合には、トルク分担率算出部78によるトルク分担率xapl,xdrnの変化を許可する。この場合、トルク分担率算出部78は、前述した通り、トルク分担率xapl,xdrnを算出する。
トルク分担率変更可否判定部82は、係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを未だ完了していないと判定した場合には、トルク分担率算出部78によるトルク分担率xapl,xdrnの変化を禁止する。この場合、トルク分担率算出部78は、今回算出したトルク分担率xの値が前回値から変化しているときには、前回値をトルク分担率xの今回値として算出する。変速目標値算出部80は、トルク分担率xapl,xdrnの変化の禁止が解除されるまで、トルク分担率xapl,xdrnの変化が禁止されなければトルク分担率xが変化開始した時点で算出した変速目標値を保持する。
図4は、電子制御装置70の制御作動の要部すなわち変速モデルを用いて自動変速機18の所望の変速を一層適切に実行する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。図5は、図4のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであって、パワーオンダウンシフト時の一例である。
図4において、先ず、変速制御部74に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば自動変速機18の変速中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合はトルク分担率変更可否判定部82に対応するS20において、係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了しているか否かが判定される(図5のt1時点乃至t5時点)。このS20の判断が肯定される場合はトルク分担率変更可否判定部82に対応するS30において、例えばトルク分担率xapl,xdrnの変化が許可される(図5のt4時点乃至t5時点)。一方で、上記このS20の判断が否定される場合はトルク分担率変更可否判定部82に対応するS40において、例えばトルク分担率xapl,xdrnの変化が禁止される(図5のt1時点乃至t4時点)。上記S30或いは上記S40に次いで、トルク分担率算出部78に対応するS50において、例えば前記変速進行度マップを用いて係合装置のトルク分担率(x,xapl,xdrn)が算出される。特に、このS50が上記S40に次いで実行される際には、今回算出したトルク分担率xの値が前回値から変化している場合はその前回値がトルク分担率xの今回値として算出される。次いで、変速目標値算出部80に対応するS60において、各変速目標値(入力軸角加速度dωt/dt、変速機出力トルクToの各目標値)が算出される。特に、このS60が上記S40に次いで実行される際には、トルク分担率xapl,xdrnの変化が禁止されなければ上記S50にてトルク分担率xが変化開始した時点の変速目標値が保持される。次いで、制御操作量算出部76に対応するS70において、前記制御操作量を算出する関係式から、上記S50にて算出された各係合装置のトルク分担率、及び上記S60にて算出された各変速目標値に基づいて、制御操作量(エンジントルクTe、係合側クラッチトルクTcapl、解放側クラッチトルクTcdrnの各要求値)が算出される。次いで、エンジン出力制御部72及び変速制御部74に対応するS80において、上記S70にて算出された各制御操作量が得られるように、エンジン出力制御指令信号Se及び油圧指令信号Spが出力されて、エンジン12、解放側クラッチ、係合側クラッチが制御される。
図5において、例えば変速モデルを用いて各目標値を実現させる各要求値が決定され、変速制御が開始される(t1時点)。この図5の実施例は、パワーオンダウンシフト時であるので、変速を適切に進行させる為に、トルク分担率xapl,xdrnを変化させる時期が、本来は(破線で示す比較例参照)、イナーシャ相開始(t2時点)後において変速機入力回転速度ωiが変速後の同期回転に概ね近づいたようなイナーシャ相終了時とされる(t3時点乃至t4時点)。実線で示す本実施例では、本来はトルク分担率xapl,xdrnを変化させる時期において、係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが未だ完了していない為、そのトルク分担率xapl,xdrnの変化が禁止されている。係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが完了した(t4時点)後に、トルク分担率xapl,xdrnが変化させられ(t4時点乃至t5時点)、変速制御が終了させられる(t5時点)。比較例では、係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが完了する前からトルク分担率xapl,xdrnが変化させられる為、係合側クラッチのクラッチ圧指令値に対するクラッチ圧(或いはクラッチトルク)の実際値の応答が遅れて、変速機出力トルクToの実際値が目標値に追従できない。これに対して、本実施例では、係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが完了した後に、保持されていた変速目標値と共にトルク分担率xapl,xdrnが変化させられるので、係合側クラッチのクラッチ圧指令値に対して応答性良く確実にクラッチトルクを発生させることができ、変速目標値に追従した滑らかな変速が実現される。
上述のように、本実施例によれば、前記式(1)及び式(2)の運動方程式に何らかの拘束条件を設定しなければその式が解けないことに対して、トルク分担率xを拘束条件としたので、変速制御において難しいとされる係合装置のトルクの受け渡しを制御するのに適しており、且つその式を解くことができる。見方を換えれば、トルクの受け渡しを表現したトルク分担率xを拘束条件としたので、何れの変速パターンにも所定の変速モデルにて対応することができる。具体的には、変速進行度を制御するのに適したトルク分担率xを拘束条件とすることで、タイアップや吹き上がりの発生を抑制したり、反対に、敢えてタイアップや吹き上がりを発生させる制御の制御性が向上する。また、エンジントルクダウン制御を適切に実行することができる。このように、本実施例によれば、2つの変速目標値に対して3つの制御操作量があったとしても、変速モデルを用いて3つの制御操作量を適切に決定し、2つの変速目標値を実現するような自動変速機18の所望の変速を実行することができる。
また、本実施例によれば、更に、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態でトルク分担率xapl,xdrnの変更を行うので、クラッチ圧指令値に対してクラッチトルクの実際値が追従する為、変速モデルに従った変速を実行することができる。また、トルク分担率xapl,xdrnを変更する部分に条件を設けている為、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態となる前であっても変速制御自体は開始されるので、変速制御自体の開始を一律に遅延させる場合と比べて、変速制御を早く開始でき、素早く変速を完了させられる。よって、本発明では、変速モデルを用いて自動変速機18の所望の変速を一層適切に実行することができる。
また、本実施例によれば、前記条件が成立していればトルク分担率xapl,xdrnの変更が開始される開始時点において実際にはその条件が未成立である為にトルク分担率xapl,xdrnの変更ができない場合は、その開始時点での変速目標値を保持するので、係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態でない場合は、そのときの変速目標値を保持することでパッククリアランスが詰まった状態となるまで待機することができる。よって、クラッチ圧指令値に対してクラッチトルクの実際値が追従する状態で、変速モデルに従った変速を実行することができる。
また、本実施例によれば、前記式(1)及び式(2)の運動方程式と、前記式(3)及び式(4)の関係とを用いて、変速目標値に基づいて制御操作量を算出するので、変速制御において難しいとされるトルクの受け渡しに関連する制御を上記運動方程式に反映させることができ、3つの制御操作量を適切に決定することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例1では、単発の変速が実行される場合を例示したが、自動変速機18の変速中に、更に別の種類の変速が判断される多重変速が発生する場合がある。例えば、3速→2速ダウンシフト中に、アクセルペダルの踏み増し操作などによって2速→1速パワーオンダウンシフトが判断されたり、ブレーキ操作による減速などによって2速→1速パワーオフダウンシフトが判断される場合がある。尚、多重変速の発生時において、先に実行されている変速の種類を第1変速と称し、その第1変速中に判断された別の種類の変速を第2変速と称す。
本実施例では、電子制御装置70は、変速モデルを用いた自動変速機18の第1変速中に第2変速が判断された場合は、第1変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnの変更を実行した後に、第2変速を実行する。このようにすると、多重変速発生時の変速全体の完了が遅くなる可能性がある。その為、電子制御装置70は、自動変速機18の第1変速中に第2変速が判断された場合は、更に、第1変速に対応した変速目標値を第2変速に対応する変速目標値へ切り替える。つまり、変速目標値(特には、入力軸角加速度dωt/dtの目標値)が次の変速の完了に向けて速やかに増大させられるように、第2変速が判断された時点でその第2変速に対応する変速目標値へ切り替える。そして、第1変速に対応するトルク分担率の変更が完了した後に、第1変速に対応するギヤトレーン運動方程式を第2変速に対応するギヤトレーン運動方程式へ切り替える。尚、前述の実施例1と同様に、第1変速における係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了していると判定されるまで第1変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnの変更を実行しないことは勿論のこと、第2変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnの変更は、第2変速における係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了していることを条件とする。
より具体的には、図2において、変速制御部74は、自動変速機18の第1変速中であるか否かを、例えば実行すべきと判断した第1変速が未だ終了していないか否かに基づいて判定する。また、変速制御部74は、自動変速機18の第1変速中に第2変速を実行すべきと判断した第2変速要求(多重変速)が発生したか否かを判断する。
制御操作量算出部76は、変速制御部74により多重変速が発生したと判定された場合には、第1変速に対応する変速目標値を第2変速に対応する変速目標値へ切り替える。そして、制御操作量算出部76は、第1変速に対応するギヤトレーン運動方程式を用いて、第2変速に対応する変速目標値に基づいて制御操作量を算出する。制御操作量算出部76は、第1変速に対応するトルク分担率の変更が完了したと判定した後に、第1変速に対応するギヤトレーン運動方程式を第2変速に対応するギヤトレーン運動方程式へ切り替える。そして、制御操作量算出部76は、第2変速に対応するギヤトレーン運動方程式を用いて、第2変速に対応する変速目標値に基づいて制御操作量を算出する。
図6は、電子制御装置70の制御作動の要部すなわち多重変速が発生したとしても変速モデルを用いて自動変速機18の所望の変速を適切に実行する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。図7は、図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであって、パワーオンダウンシフト時の一例である。この図6は、前述した実施例1における図4に対応する別の実施例であり、以下に図4と相違する点について主に説明する。
図6において、先ず、変速制御部74に対応するS10’において、例えば自動変速機18の第1変速中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は変速制御部74に対応するS12において、多重変速(第2変速要求)が発生したか否かが判定される(図7のt1時点乃至t8時点)。このS12の判断が肯定される場合は制御操作量算出部76に対応するS14において、第1変速に対応する変速目標値が、第2変速に対応する変速目標値へ切り替えられる(図7のt3時点)。次いで、制御操作量算出部76に対応するS16において、第1変速におけるトルク分担率xapl,xdrnの変化が終了したか否かが判定される(図7のt1時点乃至t6時点)。このS16の判断が肯定される場合は制御操作量算出部76に対応するS18において、第1変速に対応するギヤトレーン運動方程式が、第2変速に対応するギヤトレーン運動方程式へ切り替えられる(図7のt6時点)。上記S12の判断が否定される場合、上記S16の判断が否定される場合、或いはS18に次いで、トルク分担率変更可否判定部82に対応するS20’において、次にトルク分担率xapl,xdrnを変化させる必要がある変速に対応する係合側クラッチのピストンストロークがパック詰めを完了しているか否かが判定される(図7のt1時点乃至t8時点)。このS20’の判断が肯定される場合は前記S30が実行される(図7のt5時点乃至t6時点(第1変速)、t7時点乃至t8時点(第2変速))。一方で、上記このS20’の判断が否定される場合は前記S40が実行される(図7のt1時点乃至t5時点(第1変速)、t6時点乃至t7時点(第2変速))。上記S30或いは上記S40に次いで、前記S50乃至S80が実行される。
図7において、例えば第1変速に対応する変速モデルを用いて各目標値を実現させる各要求値が決定され、第1変速の変速制御が開始される(t1時点)。第1変速のイナーシャ相中(t2時点以降)にて第2変速が判断されると(t3時点)、その判断時点にて第1変速に対応する変速目標値が第2変速に対応する変速目標値に切り替えられる。この図7の実施例は、パワーオンダウンシフト時であるので、第1変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnを変化させる時期が、破線で示す比較例のように第2変速要求時点から(t3時点以降)とされるか、或いは変速機入力回転速度ωiが変速後の同期回転に概ね近づいたようなイナーシャ相終了時(t4時点以降)とされる。実線で示す本実施例では、本来は第1変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnを変化させる時期において、第1変速に対応する係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが未だ完了していない為、そのトルク分担率xapl,xdrnの変化が禁止され、係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが完了した(t5時点)後に、トルク分担率xapl,xdrnが変化させられる(t5時点乃至t6時点)。この第1変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnの変化が完了した後、第1変速に対応するギヤトレーン運動方程式が第2変速に対応するギヤトレーン運動方程式に切り替えられる(t6時点)。第2変速が進行して、変速機入力回転速度ωiが変速後の同期回転に概ね近づいたようなイナーシャ相終了時(t7時点以降)とされると、第2変速に対応する係合側クラッチのピストンストロークのパック詰めが既に完了しているので、第2変速に対応するトルク分担率xapl,xdrnが変化させられ(t7時点乃至t8時点)、変速制御が終了させられる(t8時点)。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例1と同様の効果が得られることに加え、自動変速機18の多重変速が判断された場合は、第1変速に対応するトルク分担率の変更を実行した後に第2変速を実行するものであり、第1変速における係合側クラッチのパッククリアランスが詰まった状態で第1変速に対応するトルク分担率の変更を行うので、変速モデルに従った変速を実行することができる。この際、それまでの変速目標値を第2変速に対応する変速目標値へ切り替えるので、一つずつ変速を完了させる場合と比べて、第1変速における変速後の変速機入力回転速度ωiの同期回転速度付近で、入力軸角加速度dωt/dtの目標値を停滞させることなく第2変速の完了に向けて速やかに増大させられる。よって、一つずつ変速を完了させる場合と比べて、変速を速やかに進行させることができ、第2変速を含めた変速全体を素早く完了させられる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は実施例相互を組み合わせて実施可能であると共にその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例2では、変速目標値を切り替える場合には入力軸角加速度dωt/dtの目標値と変速機出力トルクToの目標値とを共に切り替えたが、これに限らない。例えば、入力軸角加速度dωt/dtの目標値のみを切り替える態様であっても、本発明は適用され得る。このようにしても、一応の効果は得られる。
また、前述の実施例では、多重変速として、ダウンシフトが連続する多重変速を例示したが、これに限らない。例えば、アップシフトが連続する多重変速、アップシフトとダウンシフトとが連続する多重変速であっても良い。このような多重変速であっても、本発明は適用され得る。
また、前述の実施例における図4,6のフローチャートにおいて、ステップS50とS60との実行順が入れ替わっても良いなど、各ステップの実行順は差し支えのない範囲で適宜変更することができる。
また、前述の実施例では、出力軸20側の回転部材として出力軸20を例示したが、これに限らず、出力軸20側の回転部材は、出力軸20から駆動輪26までの動力伝達経路における回転部材であれば良い。入力軸16側の回転部材として入力軸16を例示したが、これに限らず、入力軸16側の回転部材は、エンジン12から入力軸16までの動力伝達経路における回転部材であれば良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン(駆動力源)
16:入力軸
18:自動変速機
20:出力軸
26:駆動輪
70:電子制御装置(変速制御装置)
B1,B2:ブレーキ(係合装置)
C1,C2:クラッチ(係合装置)

Claims (5)

  1. 駆動力源からの動力を受ける入力軸と駆動輪に動力を伝達する出力軸との間で回転とトルクとを伝達する複数の係合装置を有して、該係合装置の係合と解放との切替えによって変速が実行される自動変速機を備え、変速目標値を実現させる制御操作量を決定する予め定められた変速モデルを用いて前記自動変速機の変速を実行する車両の変速制御装置であって、
    前記変速目標値を、前記出力軸側の回転部材上のトルクと、前記入力軸側の回転部材の速度変化量との2つの値で設定し、
    前記制御操作量を、前記入力軸側の回転部材上のトルクと、前記変速時における係合側の係合装置のトルク容量と、前記変速時における解放側の係合装置のトルク容量との3つの値で設定し、
    前記変速時に前記係合側の係合装置と前記解放側の係合装置とで受け持つ伝達トルクのトルク分担率を設定することで、
    前記変速モデルを用いて前記自動変速機の変速を実行するものであり、
    前記トルク分担率の変更は、前記係合側の係合装置が解放状態において所定の状態まで作動していることを条件とすることを特徴とする車両の変速制御装置。
  2. 前記条件が成立していれば前記トルク分担率の変更が開始される開始時点において実際には該条件が未成立である為に前記トルク分担率の変更ができない場合は、該開始時点での変速目標値を保持することを特徴とする請求項1に記載の車両の変速制御装置。
  3. 前記自動変速機の変速中に別の種類の変速が判断された場合は、該変速中の変速に対応するトルク分担率の変更を実行した後に該別の種類の変速を実行するものであり、該変速中の変速における前記係合側の係合装置が前記条件を満たすまで該変速中の変速に対応する前記トルク分担率の変更を実行しないと共に、前記変速目標値を該別の種類の変速に対応する変速目標値へ切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の変速制御装置。
  4. 前記所定の状態は、前記係合側の係合装置が係合圧を増大すればトルク容量を発生させられる状態にまで作動させられている状態であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両の変速制御装置。
  5. 前記変速モデルは、前記変速目標値と前記制御操作量とを含む前記自動変速機の運動方程式と、前記トルク分担率を表す関係とを用いて、前記変速目標値に基づいて前記制御操作量を算出するものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両の変速制御装置。
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