JP2014135906A - 形質転換微細藻類及びその培養方法 - Google Patents

形質転換微細藻類及びその培養方法 Download PDF

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剛 田中
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祐圭 田中
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Terubumi Matsumoto
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Abstract

【課題】 オイルを高蓄積できる微細藻類に対して特定の遺伝子を導入することでグリセロール資化性を向上させる。
【解決手段】オイル蓄積能を有する微細藻類、例えばFistulifera sp. JPCC DA0580株にグリセロールキナーゼ遺伝子を導入する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、オイル蓄積能を有する微細藻類を宿主とした形質転換微細藻類、及び当該形質転換微細藻類の培養方法に関する。
化石燃料については、枯渇の懸念、価格の高騰、環境への負荷など様々な問題が指摘されている。そのような背景の中、化石燃料の代替となるバイオ燃料への期待が高まっている。バイオ燃料とは、微生物や酵素といった生体触媒の働きを利用して製造した燃料を意味する。バイオ燃料には、ガソリンを代替するバイオマスアルコール燃料、ディーゼル燃料を代替するバイオディーゼル燃料(BDF/Bio Diesel Fuel)及びバイオジェット燃料が知られている。
微細藻類は、水素やエチレン等の気体燃料、エタノールといったアルコール燃料、炭化水素及び中性脂質を用いたディーゼル燃料を生産することができる。なかでも微細藻類が蓄積した中性脂質を用いてディーゼル燃料を製造するシステムは、高等植物由来のバイオ燃料に替わる新たな液体燃料の生産手法として注目されている。さらに生産性の面においても、微細藻類は、高等植物のなかで最も生産性の高いパーム油と比較して10倍以上もの生産性を有する種の存在が知られる。これまでに発明者らは、バイオ燃料生産を目的とし、特許文献1のように最も高いオイル生産性を示す微細藻類種の一つであるFistulifera sp. JPCC DA0580(Navicula sp. JPCC DA0580から改名)をスクリーニングし、本株を用いたオイル生産の実用化開発を進めている(非特許文献1)。
すべての微細藻類は光合成を行うことでCO2を固定化し、生育することが知られる。一方、グリセロールなど培地中の炭素源を資化できる微細藻類の存在も一部に知られている。このような微細藻類は光合成による炭素固定だけでなく、培地中の炭素源を利用することで細胞増殖度及び細胞密度を向上できることが期待される。具体的には光合成のできない夜間での培養、さらには培養密度が上がった際に生じる、透過光の減少による生育の悪化を解決または改善できる可能性がある。培地中の炭素源としては、バイオディーゼル燃料を生産する際に副産物として得られるグリセロールが注目される。実際、酵母などの微生物において、グリセロールを培地中に添加したバイオディーゼル生産が特許文献2や非特許文献2で試みられている。
発明者らは、非特許文献3で示す通り、JPCC DA0580株への遺伝子組み換え技術を確立してきた。真核微細藻類の形質転換は、細胞壁の存在やエピジェネティックなサイレンシングなどのため、非常に困難であることが知られる。現在までに18属の微細藻類のみで安定的な形質転換の実施例が報告されている。しかしながらオイル生産性が高く、遺伝子組み換えが可能な微細藻類株は、当該株を含めて2株のみである(非特許文献4)。さらにこの2株における代謝改変によるオイル生産性の向上は、これまでに1例も達成されていない。
オイルを高蓄積しない微細藻類においては、珪藻のモデル生物として知られるP. tricornutumで研究が進んでいる。P. tricornutumでは、グルコーストランスポーター遺伝子を導入し、培地中に存在するグルコースを資化することが可能な形質転換体が作成されている(非特許文献5)。グルコース存在下では、野生株に比べ形質転換体では3倍高い細胞密度が達成された。一方、非特許文献6では同じP. tricornutumに対し、高等植物由来Acyl-ACP thioesterasesを導入し、ラウリン酸(C12:0)やミリスチン酸(C14:0)をトリグリセリドとして蓄積する形質転換体の作出が達成された。しかしながら、いずれの報告でも用いられている微細藻類P. tricornutumは、オイル含量が30%程度と低いためバイオディーゼル燃料生産に利用することは難しい。
WO 2010/116611 特許公表2010−528627 欧州特許公報EP1780283
Marine Diatom, Navicula sp. Strain JPCC DA0580 and Marine Green Alga, Chlorella sp. Strain NKG400014 as Potential Sources for Biodiesel Production, The Ecology of Cyanobacteria. Their Diversity in Time and Space, M. Matsumoto, H. Sugiyama, Y. Maeda, R. Sato, T. Tanaka, T. Matsunaga, Appl Biochem Biotechnol, (2010), 161: 483-490 Development of a Saccharomyces cerevisiae Strain for Increasing the Accumulation of Triacylglycerol as a Microbial Oil Feedstock for Biodiesel Production Using Glycerol as a Substrate, K. O. Yu, J. Jung, A. B. Ramzi, S. H. Choe, S. W. Kim, C. Park, S. O. Han, Biotechnol Bioeng, (2013), 110(1): 343-347 Establishment of a Genetic Transformation System for the Marine Pennate Diatom Fistulifera sp. Strain JPCC DA0580-A High Triglyceride Producer, M. Muto, Y. Fukuda, M. Nemoto, T. Yoshino, T. Matsunaga, T. Tanaka, Mar Biotechnol, (2013) 15(1): 48-55 Draft Genome Sequence and Genetic Transformation of the Oleaginous Alga Nannochloropis Gaditana, Radakovits R, Jinkerson RE, Fuerstenberg SI, Tae H, Settlage RE, Boore JL, Posewitz MC., Nat Comm, (2012), 3: 686 Trophic Conversion of an Obligate Photoautotrophic Organism Through Metabolic Engineering, L. A. Zaslavskaia, J. C. Lippmeier, C. Shih, D. Ehrhardt, A. R. Grossman, K. E. Apt, Science, (2001), 292: 2073-2075 Genetic engineering of fatty acid chain length in Phaeodactylum tricornutum, R. Radakovits, P. M. Eduafo, M. C. Posewitz, Metab Eng, (2011), 13: 89-95
上述のように、オイルを高蓄積できる微細藻類において、グリセロール資化性を向上させることができれば、当該微細藻類のバイオマス量を向上できることが可能となる。しかしながら、オイルを高蓄積できる微細藻類において、グリセロール資化性の向上を可能とするような遺伝子改変を実現した例は知られていない。特に、上述のように、形質転換効率が著しく低い微細藻類においては、所望の遺伝子を導入した形質転換微細藻類を取得する事自体が非常に困難である。
そこで、本発明は、上述したような実情に鑑み、オイルを高蓄積できる微細藻類に対して特定の遺伝子を導入することでグリセロール資化性を向上した形質転換微細藻類及びその利用方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために本発明者等が鋭意検討した結果、オイル蓄積能の優れた微細藻類に対してグリセロールキナーゼ遺伝子を導入した形質転換微細藻類を作出することに成功し、当該形質転換微細藻類におけるグリセロール資化性が著しく向上していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)オイル蓄積能を有する微細藻類にグリセロールキナーゼ遺伝子を導入してなる形質転換微細藻類。
(2)微細藻類は、乾燥重量当たり40重量%を超えるオイル蓄積能を有することを特徴とする(1)記載の形質転換微細藻類。
(3)上記微細藻類は、Fistulifera 属に属することを特徴とする(1)記載の形質転換微細藻類。
(4)上記微細藻類は、Fistulifera sp. JPCC DA0580株又はその変異株であることを特徴とする(1)記載の形質転換微細藻類。
(5)上記グリセロールキナーゼ遺伝子は、上記微細藻類に内在する遺伝子であることを特徴とする(1)乃至(4)いずれかに記載の形質転換微細藻類。
(6)上記グリセロールキナーゼ遺伝子は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のタンパク質をコードすることを特徴とする(1)記載の形質転換微細藻類。
(a)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対して80%以上の同一性を有し、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質
(c) 配列番号1又は3に記載の塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされ、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質
(7)上記(1)乃至(6)いずれかに記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養することを特徴とする形質転換微細藻類の培養方法。
(8)上記(1)乃至(6)いずれかに記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養し、培養した形質転換微細藻類から中性脂肪を含むオイル成分を抽出することを特徴とする油脂の製造方法。
(9)上記(1)乃至(6)いずれかに記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養し、培養した形質転換微細藻類から中性脂肪を含むオイル成分を抽出し、抽出したオイル成分中の中性脂肪をメチルエステル化処理して脂肪酸メチルエステルとグリセリンに分解することを特徴とするバイオ燃料の製造方法。
(10)上記メチルエステル化処理により生じたグリセリンを、上記形質転換微細藻類の培養に利用することを特徴とする(9)記載のバイオ燃料の製造方法。
本発明に係る形質転換微細藻類は、二酸化炭素以外の炭素源として培地に含まれるグリセロールを資化することができる。このため、本発明に係る形質転換微細藻類は、形質転換前の微細藻類と比較してバイオマス量が著しく向上することとなる。したがって、本発明に係る形質転換微細藻類を利用することによって、例えば、脂肪酸メチルエステルを含むバイオ燃料をより効率的に製造することができる。
Fistulifera sp. JPCC DA0580株においてグリセロールキナーゼ遺伝子を発現させるための発現ベクターの概略構成図である。 生育評価に基づくクローンの一次スクリーニング結果を示す特性図である。 PCRに基づくクローンの二次スクリーニングにおける増幅断片の位置を模式的に示す構成図(A)、及びPCRの結果を示す電気泳動写真(B)である。 培地に含まれるグリセロール濃度とGK2_16株の細胞密度との関係を示す特性図である。 グリセロール非含有培地及び50mMグリセロールを含有する培地を用いてGK遺伝子導入株及び野生株を培養して得られる増殖曲線を示す特性図である。 グリセロール非含有培地及び7.5mMグリセロールを含有する培地を用いてGK2遺伝子導入株及び野生株を培養して得られる増殖曲線を示す特性図である。 GK1_7株(A)及びGK2_16株(B)についてrps遺伝子、ub遺伝子、GK1遺伝子及びGK2遺伝子の発現量をリアルタイムPCRで評価した結果を示す特性図である。
以下、本発明に係る形質転換微細藻類及びその利用方法についてより詳細に説明する。
本発明に係る形質転換微細藻類は、オイル蓄積能を有する微細藻類にグリセロールキナーゼ遺伝子を導入したものである。すなわち、オイル蓄積能を有する微細藻類を宿主として、当該宿主内において発現するかたちでグリセロールキナーゼ遺伝子を形質転換することで、本発明に係る形質転換微細藻類を作製することができる。本発明に係る形質転換微細藻類は、宿主とした微細藻類と比較してグリセロール資化能が向上するといった特徴を備えている。この特徴により、本発明に係る形質転換微細藻類は、グリセロールを含有する培地において、宿主とした微細藻類よりも優れた増殖特性を示すことができる。
<宿主>
本発明に係る形質転換微細藻類を作製する際に、宿主として使用する微細藻類について説明する。本発明に係る形質転換微細藻類における宿主は、オイル蓄積能を有する微細藻類としている。換言すれば、本発明に係る形質転換微細藻類は、グリセロールを含有する培地における優れた増殖特性を有するとともにオイル蓄積能を有しているため、グリセロール含有培地を利用して培養することで優れたオイル生産効率を達成することができる。
より具体的にオイル蓄積能を有する微細藻類とは、特に限定されないが、通常の微細藻類におけるオイル蓄積能(乾燥重量当たり30重量%程度)を超える程度にオイルを蓄積する藻類である。オイル蓄積能を有する微細藻類としては、更に詳細には、乾燥重量当たり40重量%以上のオイルを蓄積できる藻類を挙げることができる。このようなオイル蓄積能を有する微細藻類としては、Nannochloropis属に属するオイル蓄積能を有する微細藻類及びFistulifera属に属するオイル蓄積能を有する微細藻類を挙げることができる。Nannochloropis属に属するオイル蓄積能を有する微細藻類としては、Nat. Comm., (2012), 3:686に開示されているNannochloropis gaditana CCMP526を例示することができる。また、Fistulifera属に属するオイル蓄積能を有する微細藻類としては、WO 2010/116611に開示されているFistulifera sp. JPCC DA0580(Navicula sp. JPCC DA0580から改名)を挙げることができる。
また、本発明に係る形質転換微細藻類は、自然に存在している野生株を宿主とするものに限定されず、何らかの変異を有する変異株を宿主とすることもできる。ここで変異株とは、所定の遺伝子を導入するように改変した変異株、特定の遺伝子の発現を抑制するように改変した変異株、及び所定の株に突然変異誘発処理を施して得られる変異株を含む意味である。ここで、微細藻類に対する突然変異誘発処理としては、特に限定されず、紫外線照射処理、及びニトロソ化合物やアルキル化剤等の化学物質による処理を挙げることができる。例えば、上述したFistulifera sp. JPCC DA0580に対して突然変異誘発処理を施して得られる変異株を宿主とし、本発明に係る形質転換微細藻類を作製することもできる。
<グリセロールキナーゼ遺伝子>
グリセロールキナーゼ遺伝子とは、グリセロール及びATPを基質としてグリセロール3-リン酸及びADPを生成する反応を触媒するグリセロールキナーゼ(EC 2.7.1.30)をコードする遺伝子を意味する。本発明に係る形質転換微細藻類において使用するグリセロールキナーゼ遺伝子としては、特に限定されないが、微細藻類由来のグリセロールキナーゼ遺伝子を使用することが好ましい。微細藻類由来のグリセロールキナーゼ遺伝子を使用することで、上述した宿主、すなわちオイル蓄積能を有する微細藻類内において効果的に機能し、グリセロール資化性をより確実に向上できるからである。
微細藻類由来のグリセロールキナーゼ遺伝子としては、特に、宿主として使用する微細藻類に内在するグリセロールキナーゼ遺伝子を使用することが好ましい。例えば、グリセロールキナーゼ遺伝子としては、Fistulifera sp. JPCC DA0580に内在するグリセロールキナーゼ遺伝子を使用することが好ましい。Fistulifera sp. JPCC DA0580のグリセロールキナーゼ遺伝子は、一対の相同遺伝子として内在している。一対のFistulifera sp. JPCC DA0580のグリセロールキナーゼ遺伝子におけるコーディング領域の塩基配列をそれぞれ配列番号1及び3に示す。また、配列番号1に示すグリセロールキナーゼ遺伝子がコードするグリセロールキナーゼのアミノ酸配列を配列番号2に示し、配列番号3に示すグリセロールキナーゼ遺伝子がコードするグリセロールキナーゼのアミノ酸配列を配列番号4に示す。
ただし、本発明に係る形質転換微細藻類に使用できるグリセロールキナーゼ遺伝子は、これら配列番号にて特定される遺伝子に限定さない。例えば、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上の同一性を有し、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することもできる。ここで、同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基の数を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記数の割合として算出される。
さらに、本発明に係る形質転換微細藻類に使用できるグリセロールキナーゼ遺伝子は、これら配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列に対して、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有し、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することもできる。ここで、数個とは、例えば、2〜120個、好ましくは2〜60個、より好ましくは2〜30個、最も好ましくは2〜15個である。
さらにまた、グリセロールキナーゼ遺伝子は、例えば、配列番号1又は3に記載の塩基配列からなるDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することもできる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25〜500mM、好ましくは25〜300mMであり、温度が42〜68℃、好ましくは42〜65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。
上述したように、配列番号1又は3と異なる塩基配列からなる遺伝子、配列番号2又は4とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、グリセロールキナーゼ遺伝子として機能するか否かは、当該遺伝子を適当なプロモーターとターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いて例えば微細藻類、酵母等の宿主を形質転換し、発現するタンパク質のグリセロールキナーゼ活性を測定すればよい。グリセロールキナーゼ活性は、基質としてグリセロール及びATPを含む溶液を準備し、検査対象のタンパク質を適当な温度で作用させ、生成するグリセロール3-リン酸又はADPを分光学的に計測して測定することができる。
特に、本発明に係る形質転換微細藻類においては、配列番号3及び4に示す塩基配列及びアミノ酸配列にて特定されるグリセロールキナーゼ遺伝子を使用することが好ましい。配列番号3及び4にて特定されるグリセロールキナーゼ遺伝子は、上述した微細藻類の中でも特にFistulifera sp. JPCC DA0580に導入されると、当該株のグリセロール資化性を大幅に向上することができる。
<形質転換>
上述したグリセロールキナーゼ遺伝子を宿主の微細藻類に導入する方法により、当該微細藻類を形質転換することができる。ここで、微細藻類の形質転換は、一般に非常に効率が低いため、目的の形質転換体を取得できる方法論は確立されているとは言えない。ところが、詳細を後述する実施例に示すように、特定の発現ベクターにグリセロールキナーゼ遺伝子を組み込み、パーティクルガン法を所定の条件下にて適用したところ、非常に低い効率ではあったもののグリセロールキナーゼ遺伝子を強発現する形質転換微細藻類を複数株取得することに成功している。
<形質転換微細藻類の利用>
上述した本発明に係る形質転換微細藻類は、形質転換前(すなわち、グリセロールキナーゼ遺伝子を導入する前)と比較してグリセロール資化性が大幅に向上している。グリセロールの代謝経路についてはグリセロールキナーゼを含む多数の酵素が関与することが知られている。よって、グリセロールキナーゼ遺伝子を導入したとしても、グリセロール資化性が直ちに向上するとは予測できない。しかしながら、本発明に係る形質転換微細藻類は、グリセロールの代謝経路に関与する多くの遺伝子のうちグリセロールキナーゼ遺伝子を単独で導入したものであるにも拘わらず、グリセロール資化性が向上しており、また、その向上の程度についても顕著である。
このように、本発明に係る形質転換微細藻類は、光合成による炭素固定だけでなく、培地中のグリセロールを炭素源として増殖することができるため、光合成が減弱する条件であってもグリセロールを含む培地において良好に生育・増殖することができる。
ところで、グリセロールは、いわゆるバイオディーゼル生産プロセスにおけるトリグリセリドのメチルエステル化処理において、副産物として生成される。例えば3.8 Lのバイオディーゼルあたり0.3 kgのグリセロールが生成されることが報告されている。本発明に係る形質転換微細藻類は、例えば、バイオディーゼル生産プロセスに伴うグリセロール廃液を利用して、そのバイオマス量を増大することができる。すなわち、本発明に係る形質転換微細藻類は、バイオディーゼル生産プロセスに伴うグリセロール廃液の最終処理に利用することができる。
一方、本発明に係る形質転換微細藻類は、バイオディーゼルの原料となるオイル(中性脂肪、トリグリセリド)の蓄積能を有しているため、バイオディーゼル生産プロセスに利用することができる。したがって、本発明に係る形質転換微細藻類をバイオディーゼル生産プロセスに利用するシステムでは、副産物として生成したグリセロールを当該形質転換微細藻類の炭素源として利用できるため、グリセロール廃液が生ずるといった問題を解消することができる。
すなわち、本発明に係る形質転換微細藻類は、グリセロールを含有する培地を用いて培養され、その後、中性脂肪を含むオイル成分を抽出するといった油脂の製造方法や、抽出したオイル成分中の中性脂肪をメチルエステル化処理して脂肪酸メチルエステルとグリセリンに分解するバイオ燃料の製造方法に適用することができる。また、本発明に係る形質転換微細藻類を利用した油脂の製造方法及びバイオ燃料の製造方法では、メチルエステル化処理により生じたグリセリンを、形質転換微細藻類の培養に利用することでグリセロール廃液が生ずるといった問題を解消することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では、微細藻類としてオイル蓄積能に優れたFistulifera sp. JPCC DA0580を宿主としてグリセロールキナーゼ遺伝子を高発現する形質転換体を作製し、そのグリセロール資化性を検証した。なお、Fistulifera sp. JPCC DA0580は、WO 2010/116611に記載されているように、FERM BP-11201(FERM P-21788より移管)として独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター (IPOD, NITE)に国際寄託されている。
<実験方法>
<1.培養方法>
Fistulifera sp. JPCC DA0580株はhalf strength of Guillard’s f solution (f/2培地)を1Lの人工海水(富田製薬)に溶解した培地を用いて前培養を行った。また、グリセロールキナーゼ遺伝子発現株はf/2培地を用いて、500 mLの扁平フラスコ内で、25℃、0.6L/L/minの通気条件、120 μmol/m2/s (Toshiba 葉タバコ用蛍光灯)の連続光照射下で培養を行った。サブクローニングにはEscherichia coli DH5αを用い、50μg/mLのampicillinを添加したLB培地中で培養を行った。
<2.プラスミドの構築>
Fistulifera sp. JPCC DA0580株からTotal RNAを抽出し、cDNA合成を行った。得られたcDNAを鋳型とし、グリセロールキナーゼ遺伝子をPCR増幅し、制限酵素サイトEcoRI-PstIを導入した。ここで、Fistulifera sp. JPCC DA0580株の全ゲノム配列からグリセロールキナーゼの相同塩基配列をBLASTXにより検索し、g11728 (GK1)及びg14921 (GK2)の2配列が得られた。GK1及びGK2遺伝子の塩基配列長は1827-bpであり、609残基のアミノ酸配列をコードしていた。これらGK1及びGK2遺伝子の塩基配列の相同性は92%であった。GK1遺伝子の塩基配列及び当該遺伝子がコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示した。また、GK2遺伝子の塩基配列及び当該遺伝子がコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び4に示した。
なお、GK1遺伝子をPCR増幅する際にはATGCTGTCCT TCGAAATGAA TG(配列番号5)及びTTAGTTTAAG CGGCTAGTTT TTCTA(配列番号6)のプライマーを使用した。また、GK2遺伝子をPCR増幅する際にはATGCCGTCCT TCGAAATAAA AG(配列番号7)及びTTAGTTTAAG CGACTAGTTC TTCTA(配列番号8)のプライマーを使用した。
一方、PCRにより得られたGK1遺伝子及びGK2遺伝子を組み込む発現ベクターとして、pSP-NPT/H4(Mar Biotechnol, (2013) 15(1): 48-55)に対して新たにプロモーター及びターミネーター配列を導入したものを作製した。すなわち、JPCC DA0580株由来のfucoxanthin chlorophyll a/c-binding protein B (fcpB)遺伝子プロモーター(500-bp)及びPhaeodacylum tricornutum由来のfucoxanthin chlorophyll a/c-binding protein A (fcpA)遺伝子ターミネーター配列(227-bp)がEcoRI-PstIサイトを挟んで連結された配列を人工合成 (Integrated DNA Technologies)し、両末端にSalI-SphIサイトを設けたプロモーター及びターミネーター配列断片 (751-bp)を作製し、これをpSP-NPT/H4のSalI-SphIサイトにライゲーションした。
そして、PCRにより得られたGK1遺伝子及びGK2遺伝子を上記発現ベクターのEcoRI-PstIサイトにライゲーションし、ベクターを構築した(図1)。
<3.パーティクルガン法による遺伝子導入>
上記2で作製した2種の発現ベクターはパーティクルガン法によりJPCC DA0580株に導入した。先ず、50%グリセロール中に懸濁した0.6μmのタングステン粒子(60mg/ml;高純度化学研究所)50μLに対し、1μg/μLベクター5μL、2.5M CaCl2 50μL、0.1Mスペルミジン20μLを添加し、粒子上にベクターを固定化した。また、対数増殖期初期(細胞濃度:1〜2×107cells/mL)の細胞5×107cellsを1 %寒天f/2培地(直径3.6 cmシャーレ)上に塗布した。シャーレをBiolistic PDS-1000/He Particle Delivery System (BIO-RAD)内にセットし、打ち出し圧力を1100 psiに調整し、ベクターを導入した。遺伝子導入後、寒天培地上の細胞を140μmol/m2/sの連続光、25℃条件下で24時間培養を行った。寒天培地上の細胞は1 mL f/2培地に懸濁し、1×107cells (200μL)を500μg/mLG418を含む1 %寒天培地 (直径9 cmシャーレ)に播種した。3週間培養を行い、G418耐性コロニーを獲得した。
<4.生育評価によるクローンの選抜>
上記3で得られたコロニーからバイオマス量の向上したポジティブクローンを選抜するために、一次スクリーニングとして96穴ウェルプレートによる生育評価を行った。抗生物質耐性を示すコロニーを500μg/mL G418を含むf/2液体培地に播種し、前培養とした。2週間培養後、96穴ウェルプレート中のf/2培地に1/10量の培養液を植え継ぎ、25℃、連続光照射下(140μmol/m2/s)で培養を行った。コントロールとしてグリセロールキナーゼ遺伝子を含まないpSP-NPT/H4ベクターを導入したクローンを培養した。培養6日後に750 nmの吸光度をMicroplate Reader SH-9000 (コロナ電気)により測定し、細胞濃度を測定した。
<5.PCRによるクローンの選抜>
上記4の生育評価により選抜されたクローンをf/2培地中で前培養し、培養液1mLを6000g、4℃の条件で10分間遠心回収を行った。ペレットを20μLの超純水で懸濁し、99℃で10分間加熱処理を行うことでDNAを破砕した。細胞破砕液1μLを鋳型とし、TaKaRa LA Taq (TaKaRa)を用いて、表1に示したプライマーによりPCR増幅した。ポジティブコントロールとして、グリセロールキナーゼ遺伝子発現ベクターを用いた。ネガティブコントロールには野生株及びpSP-NPT-H4ベクターを導入した株の細胞懸濁液を用いた。増幅産物であるnptII遺伝子断片(795-bp)及びグリセロールキナーゼ遺伝子断片(1900-bp)、nptII-グリセロールキナーゼ遺伝子断片(3.2-kbp)は1%アガロースゲルを用いて電気泳動し、目的遺伝子断片のゲノム挿入を評価した。
Figure 2014135906
<6.選抜クローンのグリセロール添加培地での培養>
各濃度のグリセロールを添加したf/2培地に、1×106cells/mLとなるようにJPCC DA0580野生株、及び選抜された株を植え、96穴ウェルプレートまたは扁平フラスコで25℃、140μmol/m2/s (Toshiba 葉タバコ用蛍光灯)の連続光照射下で培養を行った。10日後に750 nmの吸光度をMicroplate Reader SH-9000 (コロナ電気)により測定、または顕微鏡観察による細胞カウントにより細胞濃度の評価を行った。
<7.リアルタイムPCR >
継代培養後も遺伝子を保持し、生育が良好と判断される株をグリセロール存在下で培養し、遠心回収 (3000g、10分間、24℃)した。細胞ペレットを液体窒素中で乳鉢、乳棒を用いて粉砕し、Concert Plant RNA Reagent (Invitrogen)によりTotal RNA抽出を行った。得られた抽出物をRNeasy Mini Kit (QIAGEN)により精製を行った。その後、DNase I (TaKaRa)により37℃、30分間の条件でサンプル中のDNAを分解した。吸光度及びAgilent RNA 6000 Nano Assay kitを用いてキャピラリー電気泳動によりTotal RNAの定量を行った。得られたTotal RNA 1μgをテンプレートとし、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit (TaKaRa)によりcDNA合成を行った。このcDNA 2 ngを鋳型として、グリセロールキナーゼ遺伝子 (g11728及びg14921)をPlatinum SYBR Green qPCR SuperMix-UDG with ROX (Invitrogen)を用いて定量PCRを行った (Applied Biosystems 7500 Real-time PCR System (ABI))。リアルタイムRT-PCRに用いたプライマーを表2に示した。また、ハウスキーピング遺伝子としてGAPDH遺伝子(g19411)及びrps遺伝子 (g2459)、Ub遺伝子 (g19562)に対し、同様に定量PCRを行った。
Figure 2014135906
なお、野生株に対する形質転換における遺伝子発現量比はGAPDH遺伝子発現量を基準とし、下記のようにノーマライゼーションを行うことで算出した。すなわち、検量線作成に用いる各遺伝子断片は、cDNA 1ngを鋳型として、PrimeStar MAX (TaKaRa)を用いPCR増幅によって調製した。PCR産物は、QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen)を用いて精製した。その後、キャピラリー電気泳動 (Agilent 2100 bioanalyzer (Agilent))により定量した。102〜108コピーの希釈系列を作製し、リアルタイムRT-PCRの検量線作成に用いた。
<結果および考察>
<1.生育評価によるクローンの一次スクリーニング>
GK1及びGK2遺伝子の発現ベクターをJPCC DA0580株に導入した結果、GK1遺伝子では48個、GK2遺伝子では42個の抗生物質耐性コロニーが得られた。得られた90個のコロニーから遺伝子導入による生育阻害のないクローンを取得するため、96穴ウェルプレート中で培養し、増殖を評価した。コントロールとして、pSP-NPT/H4ベクターを導入したクローンを培養し、コントロールと増殖に差が見られないグリセロール遺伝子導入株の選抜を行った。その結果、GK1遺伝子を導入した4クローン(GK1_7、GK1_14、GK1_16及びGK1_24)及びGK2遺伝子を導入した6クローン(GK2_16、GK2_24、GK2_38、GK2_39、GK2_40及びGK2_41)が生育阻害を受けていない株として得られた(図2)。
<2.PCRによるクローンの二次スクリーニング>
上記1で選抜した10クローンに目的とする遺伝子断片が挿入されていることをPCRにより評価した。すなわち、図3Aに示すように、PCR増幅する断片としてセレクションマーカーであるnptII遺伝子全長(795-bp)及びGK遺伝子全長(1827-bp)を増幅した。また、nptII遺伝子の5’末端からGK遺伝子の3’末端まで(3.2-kbp)をPCR増幅した。
その結果、図3Bに示すように、全てのクローンにおいてnptII遺伝子断片が含まれていることが示されたが、GK遺伝子は10クローン中5クローン(GK1_7、GK2_16、GK2_24、GK2_38及びGK2_39)でのみ確認された。全てのクローンでnptII遺伝子が存在することから、抗生物質G418を添加したセレクション培地により、nptII遺伝子が導入されたクローンを選択できていることが示された。一方、GK遺伝子は50 %のクローンにのみ存在することから、ゲノムDNAに挿入される際にプラスミドが様々に断片化されていることが示唆された。さらに、GK遺伝子が機能するために必要なF-fcpBプロモーター配列を含むプラスミドの断片を確認した結果、図3Bに示すように、3クローン(GK1_7、GK2_16及びGK2_39)でPCR増幅が確認された。以上から、上記1で選抜された10クローンの中で、GK遺伝子を発現可能な配列として保持しているクローンはGK1_7、GK2_16及びGK2_39であることが示された。次に、GK1_7、GK2_16及びGK2_39を用いて、グリセロールを添加した培地で細胞増殖量の評価を行った。
<3.グリセロール添加による混合栄養培養における生育評価>
GK2_16株を用いて増殖に適したグリセロール濃度を検討した結果、図4に示すように、グリセロール濃度50mMの培地で最も高い増殖量が示された。グリセロール濃度1mMから50mMまでは細胞濃度は向上し、75mM以上では細胞濃度が低下し始めた。このことから、グリセロール濃度が75mM以上となるとグリセロール添加による生育阻害が始まると考えられた。生育阻害は、主にグリセロール添加に伴って培地の粘性が上がることに起因していると考えられる。他の微細藻類種で報告されているグリセロール濃度は、珪藻P. tricornutumで100 mM、C. vulgarisで110 mM (1 % v/v)であることから、JPCC DA0580株はグリセロールによる生育阻害を受けやすいことが示された。
次に、生育に最適なグリセロール濃度である50 mMを添加した培地で、GK遺伝子導入株の培養を行った。その結果、図5に示すように、選抜された形質転換体3クローン中2クローンにおいて野生株と比較して72時間までの生育に顕著な向上が見られた。しかし、最終藻体到達濃度は、GK1_7株(黒塗り三角)、GK2_39株(白抜き四角)、野生株(白抜き円)は同等であり、GK2_16株(黒塗り四角)においてのみ有意な差が見られた。野生株の最終藻体到達濃度は1.06×107cells/mLであったのに対し、GK2_16株は1.23×107 cells/mLまで向上した。また、GK2_16株の倍化時間は0.57 dayと最も速いことがわかった。
より低濃度のグリセロール濃度(7.5mM;0.7g/L)についてもGK2_16株の増殖評価を行った。結果を図6に示した。図6において、野生株をグリセロール非含有培地で培養したときの増殖曲線を白抜きの円とし、野生株をグリセロール含有培地で培養したときの増殖曲線を黒塗りの円とし、GK2_16株をグリセロール非含有培地で培養したときの増殖曲線を白抜き四角とし、GK2_16株をグリセロール含有培地で培養したときの増殖曲線を黒塗り四角として示した。図6に示すように、野生株に比べてグリセロールを添加した培地中でのGK2_16株の最終藻体到達濃度が20%増加した。野生株とGK2_16株の細胞密度の比は50mMグリセロール濃度の培地を用いた場合と同程度であった。また、グリセロール濃度を低濃度にしたことにより、野生株ではグリセロール添加による細胞数の増加は示されなかった。一方、GK2_16株では、グリセロール添加により1.2倍の細胞数の増殖が示された。脂質含量の評価として、培養後の細胞をBODIPY 505/515により染色し、細胞内のオイルドロップを観察した。その結果、全ての細胞においてオイルが蓄積されていることが観察された。形質転換によるオイル量の顕著な減少などは観察されなかったことから、細胞数増加に伴い、オイル生産性が向上したことが示唆された。
GK遺伝子はグリセロールをリン酸化し、グリセロール3リン酸を合成する際にATPを1分子消費する。JPCC DA0580株においてグリセロール3リン酸が解糖系で利用されていると仮定すると、解糖系を経て、ピルビン酸に至るまでの経路でATPを2分子生産することから、1分子のグリセロールから正味1分子のATPが生産される。そのため、GK遺伝子の強発現により、ATP生産が促進され、細胞増殖量が増加したと考えられた。
<4.リアルタイムPCRによる遺伝子発現量の定量>
GK1遺伝子を導入したGK1_7株及びGK2遺伝子を導入したGK2_16株について、rps遺伝子、ub遺伝子、GK1遺伝子及びGK2遺伝子の発現量評価を行った結果をそれぞれ図7A及び7Bに示した。
図7Bに示すように、GK2遺伝子を導入したGK2_16株の遺伝子発現量評価を行った結果、GK2遺伝子の発現量が野生株に比べ3.4倍に増加した。一方、GK2_16株においては、遺伝子導入していないGK1遺伝子 (g11728)の発現量の変動は見られなかった。GK遺伝子の転写発現に用いたF-fcpBプロモーターは恒常的に遺伝子発現が可能であるため、GK遺伝子の発現に適していたと考えられる。
以上の結果から、GK2遺伝子発現量の増加により、細胞増殖量が増加したことが示唆された。一方、GK1遺伝子の導入が確認されているGK1_7株についても発現量評価を行った。GK1_7株は、グリセロール添加に伴う最終藻体到達濃度の向上は見られないが、72時間までの生育速度に顕著な向上が見られている(図5)。リアルタイムPCRの結果、図7Aに示すように、野生株に比べてGK1遺伝子発現量が4.3倍に上昇し、導入していないGK2遺伝子には顕著な変動は見られなかった。以上のことから、GK1_7株の野生株との表現型の違いは、GK1遺伝子発現量の増加に起因していることが考えられた。
<結言>
本実施例では、メタボリックエンジニアリングによりFistulifera sp. JPCC DA0580株のオイル生産性を向上することを目的とし、グリセロールキナーゼ遺伝子の導入によって、野生株の発現量に比べ、約3〜4倍の発現量を示す株を作出することに成功した。特に、生育が良好であった形質転換体GK2_16株をグリセロール添加培地で培養した結果、野生株と比較して約20%の細胞濃度の増加が達成された。また、同条件においてオイル蓄積能に影響がないことが確認されている。したがって、本実施例では、グリセロールキナーゼ遺伝子の導入によって、オイル生産株におけるバイオマス量を向上できることが初めて示され、この技術によりオイル生産株におけるオイル生産性を向上できることが示された。

Claims (10)

  1. オイル蓄積能を有する微細藻類にグリセロールキナーゼ遺伝子を導入してなる形質転換微細藻類。
  2. 微細藻類は、乾燥重量当たり40重量%を超えるオイル蓄積能を有することを特徴とする請求項1記載の形質転換微細藻類。
  3. 上記微細藻類は、Fistulifera 属に属することを特徴とする請求項1記載の形質転換微細藻類。
  4. 上記微細藻類は、Fistulifera sp. JPCC DA0580株又はその変異株であることを特徴とする請求項1記載の形質転換微細藻類。
  5. 上記グリセロールキナーゼ遺伝子は、上記微細藻類に内在する遺伝子であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項記載の形質転換微細藻類。
  6. 上記グリセロールキナーゼ遺伝子は、以下の(a)〜(c)いずれかに記載のタンパク質をコードすることを特徴とする請求項1記載の形質転換微細藻類。
    (a)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対して80%以上の同一性を有し、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質
    (c) 配列番号1又は3に記載の塩基配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされ、グリセロールとATPを基質としてグリセロール3-リン酸を合成する活性を有するタンパク質
  7. 請求項1乃至6いずれか一項記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養することを特徴とする形質転換微細藻類の培養方法。
  8. 請求項1乃至6いずれか一項記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養し、培養した形質転換微細藻類から中性脂肪を含むオイル成分を抽出することを特徴とする油脂の製造方法。
  9. 請求項1乃至6いずれか一項記載の形質転換微細藻類をグリセロール含有培地にて培養し、培養した形質転換微細藻類から中性脂肪を含むオイル成分を抽出し、抽出したオイル成分中の中性脂肪をメチルエステル化処理して脂肪酸メチルエステルとグリセリンに分解することを特徴とするバイオ燃料の製造方法。
  10. 上記メチルエステル化処理により生じたグリセリンを、上記形質転換微細藻類の培養に利用することを特徴とする請求項9記載のバイオ燃料の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016034925A (ja) * 2014-08-04 2016-03-17 国立大学法人東京農工大学 新規珪藻タンパク質及びその利用

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