JP2014132863A - 神経変性疾患バイオマーカー - Google Patents
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Abstract
【課題】難治性神経変性疾患の検査診断並びに治療に利用することができるバイオマーカーとなるmiRNAを提供する。
【解決手段】本発明で特定したmiRNAを測定することにより、難治性神経変性疾患、特に多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病を検出することができる。また、本発明におけるmiRNAを同疾患の検査診断並び治療に利用することができる。さらに、同疾患の治療薬となる化合物のスクリーニングに利用することができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明で特定したmiRNAを測定することにより、難治性神経変性疾患、特に多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病を検出することができる。また、本発明におけるmiRNAを同疾患の検査診断並び治療に利用することができる。さらに、同疾患の治療薬となる化合物のスクリーニングに利用することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、神経変性疾患の存在を検出するための検査診断および同疾患の治療標的として有用なマイクロRNA(miRNA)に関する。
認知症を含む神経変性疾患は、一般に進行性であり、脳神経細胞の不可逆的な変性を伴うことから、早期に診断し治療を開始することが重要である。しかし、現時点では有効なバイオマーカーが確立されておらず、血清学的検査方法を用いた診断法は確立されておらず、また確実な治療法も確立されていない。その結果、難治性で、日常生活が破壊される状況となり、患者本人の肉体的負担のみならず、家族にも多大の負担を来している。神経変性疾患は患者本人だけでなく、介護者にも多大な負担が及び、社会全体の活力の大きな損失につながるという実態がある。超高齢化社会が進む我が国では、神経変性疾患対策が国家的な重要課題となってきている。すなわち、(1)高齢化社会における医療福祉行政の基幹的課題であること、(2)認知症による膨大な経済的損失(年間5兆円相当)を軽減すること、(3)医療イノベーションで日本発の革新的治療法の開発を推進し、日本の医薬品輸入赤字(2兆円超)を解消すること、(4)国の5ヵ年計画(2012)で対策が必要な重点疾患(がん、難病・希少疾病、肝炎、感染症、糖尿病、脳心血管疾患、精神神経疾患、小児疾患)に指定されていること、などである。このように、新たなバイオマーカーの開発、検査診断薬の開発、治療薬・治療法の開発が緊急の課題となっている。
検査診断法については、疾患関連バイオマーカーが特定され、血清学的診断法により簡便に早期の診断及び病態のモニタリングが実施できるようになれば、早期治療が可能となり、多くの患者の不可逆的なダメージを最小限に抑えることが可能となる。早期診断が可能となれば、患者だけでなく介護者のQOLの向上、ひいては超高齢化を迎えた日本社会全体の活力の維持にも大きく貢献することは間違いない。治療法に関しては、病態改善薬のみならず、進行抑制薬も十分に医療上の意義が高く、そのためのバイオマーカーの神経機能への関与の解析も重要である。
神経変性疾患の発症や病態に関わる生体内因子は、遺伝子から細胞まで広く研究されているが、未解明な部分が非常に多く、未だに診断や治療につながる有用なバイオマーカーは見出されていない。難治性神経変性疾患のうちでも、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)と多系統萎縮症(Multiple System Atrophy:MSA)は重篤な神経機能障害と死に至る疾患であり、またアルツハイマー病(Alzheimer’s Disease:AD)は深刻な認知障害を伴う疾患であり、有用なバイオマーカーの開発は緊急の課題となっている。
近年、生体内因子の重要な因子として、マイクロRNA(miRNAと略す)が注目されている。miRNAは、約22塩基の蛋白質非翻訳RNA(small non-coding RNA)であり、ヒトには約1000種類以上存在することが示唆されている。miRNAは生体内でさまざまな遺伝子の発現抑制を行う分子として注目されている。ゲノム上には各miRNA遺伝子の領域が存在し、RNAポリメラーゼIIによって転写され、約数百塩基のmiRNA初期転写産物が形成される。miRNA初期転写産物は核内でDrosha、細胞質内でDicerと呼ばれる2種類のRNase III酵素によってプロセシングされ、成熟miRNAが形成される。成熟miRNAは制御タンパク質複合体(RNA-induced silencing complex:RISC)と協調しつつ、相補的配列をもつ複数のターゲット遺伝子のmRNAと相互作用し、遺伝子の発現を抑制することが知られている。
miRNAはヒト疾患に広く関連が示唆されているが、特にがんとmiRNAの関係に関して、様々な臓器において正常組織とがん組織で多くのmiRNAの発現様式が異なる事から、発がん過程へのmiRNA発現異常の関与が強く示唆されている。すなわち、腫瘍抑制的miRNAの発現低下あるいは発がん促進的miRNAの発現上昇がヒト発がん過程に関与している可能性が強く示唆されている(非特許文献1)。miRNAの産業上の利用に関しても、もっぱらがんの領域での利用が主体であるが、ようやく各種疾患に対する創薬への利用が報告され始めてきた(非特許文献2)。
血中に存在するmiRNAを疾患関連バイオマーカーとして、検査診断に利用できることも、がん(非特許文献3)や心疾患(非特許文献4)で報告されている。
神経疾患分野においては、血液よりも、中枢神経系の脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)に存在するmiRNAが診断学的な意味があることが報告され、たとえば、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)では、miR-922、miR-181c、miR-633などがその候補として報告されている(非特許文献5)。また一方で、損傷後の神経の再生にmiRNAを利用する方法(特許文献1)や多能性ストローマ細胞のニューロン分化を刺激する方法(特許文献2)が報告されている。
血中に存在するmiRNAを疾患関連バイオマーカーとして、検査診断に利用できることも、がん(非特許文献3)や心疾患(非特許文献4)で報告されている。
神経疾患分野においては、血液よりも、中枢神経系の脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)に存在するmiRNAが診断学的な意味があることが報告され、たとえば、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)では、miR-922、miR-181c、miR-633などがその候補として報告されている(非特許文献5)。また一方で、損傷後の神経の再生にmiRNAを利用する方法(特許文献1)や多能性ストローマ細胞のニューロン分化を刺激する方法(特許文献2)が報告されている。
神経変性疾患の病理は、神経細胞の委縮・脱落や組織破壊、脱髄、再生など多彩であり、特に多くのmiRNAの関与が想定される。また、神経細胞変性という共通の現象では、各種神経変性疾患で共通的なmiRNAの関与も想定される。
検査試料としては、CSFよりは血漿が、採取時の患者負荷も少なく簡便で利用性が高い。加えて、臨床検査が最終的な診断の補助的役割を果たすことからは、神経変性疾患に共通性の高いバイオマーカーを血液検査で検出することが、極めて実用性が高いと考えられる。ただし、この場合でも、神経変性疾患である以上、血液とCSFとの整合性のあることが望ましい。
しかしながら、従来、血液検査で共通的に一次スクリーニングに適した神経変性疾患関連バイオマーカーという観点からのmiRNAの探索はほとんど行われていない。特に進行性疾患で早期の診断が重要である、MSA、ALS、ADなどの疾患では、血液検査でも利用でき、神経変性の兆候をいち早く検出できる簡便な、miRNAを利用した検査診断あるいは創薬に有用な疾患バイオマーカーの開発が切望されている。
検査試料としては、CSFよりは血漿が、採取時の患者負荷も少なく簡便で利用性が高い。加えて、臨床検査が最終的な診断の補助的役割を果たすことからは、神経変性疾患に共通性の高いバイオマーカーを血液検査で検出することが、極めて実用性が高いと考えられる。ただし、この場合でも、神経変性疾患である以上、血液とCSFとの整合性のあることが望ましい。
しかしながら、従来、血液検査で共通的に一次スクリーニングに適した神経変性疾患関連バイオマーカーという観点からのmiRNAの探索はほとんど行われていない。特に進行性疾患で早期の診断が重要である、MSA、ALS、ADなどの疾患では、血液検査でも利用でき、神経変性の兆候をいち早く検出できる簡便な、miRNAを利用した検査診断あるいは創薬に有用な疾患バイオマーカーの開発が切望されている。
microRNAの制御異常と癌、実験医学 vol.27, No.8, 2009.
臨床・創薬利用が見えてきたmicroRNA、遺伝子医学MOOK23 2012.
Allegra A et al., Int J Oncol. 2012;41(6):1897-912.
Fichtlscherer S. et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2011;31(11):2383-90.
Haghikia A. et al., Neurology. 2012;79(22):2166-2170.
上記のとおり、難治性のALS、MSA、ADに対する検査法や治療法は確立しておらず、医療上の大きな課題になっている。疾患に関与すると言われているmiRNAの神経変性疾患におけるバイオマーカーとなり得るmiRNAを見出し、その利用方法を確立すれば、新しい検査診断法、病態モニタリング法、さらには治療薬への応用が可能となる。
本発明の目的は、神経変性疾患の検査と治療に対するmiRNAの利用であり、特にALS、MSA、ADを含む神経変性疾患に共通的あるいは個別的なバイオマーカーとなるmiRNAを臨床検査や病態モニタリング、さらには治療法へ応用することである。
本発明の目的は、神経変性疾患の検査と治療に対するmiRNAの利用であり、特にALS、MSA、ADを含む神経変性疾患に共通的あるいは個別的なバイオマーカーとなるmiRNAを臨床検査や病態モニタリング、さらには治療法へ応用することである。
本発明は、以下の発明に関する:
[1]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、神経変性疾患の検出方法。
[2]神経変性疾患が、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病のうち、いずれか1つである、[1]の検出方法。
[3]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1に記載のmiRNAの少なくとも1つである、多系統萎縮症の検出方法。
[4]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表2に記載のmiRNAの少なくとも1つである、筋萎縮性側索硬化症の検出方法。
[5]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、アルツハイマー病の検出方法。
[6]神経変性疾患に対する治療を行った対象から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、前記治療効果の判定方法。
[7]表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つの全長あるいは一部を有効成分とする医薬組成物。
[8]表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つを抑制するオリゴヌクレオチドを有効成分とする医薬組成物。
[9]表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの発現を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
[10]表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の遺伝子産物を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
[1]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、神経変性疾患の検出方法。
[2]神経変性疾患が、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病のうち、いずれか1つである、[1]の検出方法。
[3]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1に記載のmiRNAの少なくとも1つである、多系統萎縮症の検出方法。
[4]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表2に記載のmiRNAの少なくとも1つである、筋萎縮性側索硬化症の検出方法。
[5]被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、アルツハイマー病の検出方法。
[6]神経変性疾患に対する治療を行った対象から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、前記治療効果の判定方法。
[7]表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つの全長あるいは一部を有効成分とする医薬組成物。
[8]表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つを抑制するオリゴヌクレオチドを有効成分とする医薬組成物。
[9]表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの発現を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
[10]表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の遺伝子産物を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
本発明の検出方法によれば、簡便な遺伝子検査方法により、神経変性疾患、特にMSA、ALSあるいはAD含む神経変性疾患を検出することができる。また、本発明におけるmiRNAを同疾患の検査診断並び治療に利用することができる。さらに、同疾患の治療薬となる化合物のスクリーニングに利用することができる。
以下に特に記載すること以外は、本発明の検出方法・治療効果判定方法・治療方法・医薬組成物・治療薬のスクリーニング方法において、適宜、相互に参照することができる。
本発明の検出方法では、神経変性疾患、特にはMSA又はALSあるいはADを検出する共通的あるいは個別的バイオマーカーとして、表1〜表3に記載のmiRNAを使用することができる。表1〜表3において、miRNAの変動は、各疾患で健常対照に比べて増大している場合には「増」、減少している場合は「減」と表した。また、複数の神経変性疾患に共通的に検出されたmiRNAは「共通」に丸印を付記して示したが、これらは好ましく神経変性疾患の一次スクリーニングに用いることができる。複数の疾患で共通性が高い方が好ましく、少なくとも2つの疾患、好ましくは3つの疾患、更に好ましくは4つの疾患で共通であることが挙げられる。
該miRNAは、単独の使用も、複数の使用も、いずれも可能である。精度を高めるためには、複数を組み合わせて使用する方が好ましく、具体的には、miRNAを1〜20、好ましくは3〜10を組み合わせて利用することが望ましい。また、公知のmiRNAを組み合わせて利用することもできる。
本発明の検出方法では、神経変性疾患、特にはMSA又はALSあるいはADを検出する共通的あるいは個別的バイオマーカーとして、表1〜表3に記載のmiRNAを使用することができる。表1〜表3において、miRNAの変動は、各疾患で健常対照に比べて増大している場合には「増」、減少している場合は「減」と表した。また、複数の神経変性疾患に共通的に検出されたmiRNAは「共通」に丸印を付記して示したが、これらは好ましく神経変性疾患の一次スクリーニングに用いることができる。複数の疾患で共通性が高い方が好ましく、少なくとも2つの疾患、好ましくは3つの疾患、更に好ましくは4つの疾患で共通であることが挙げられる。
該miRNAは、単独の使用も、複数の使用も、いずれも可能である。精度を高めるためには、複数を組み合わせて使用する方が好ましく、具体的には、miRNAを1〜20、好ましくは3〜10を組み合わせて利用することが望ましい。また、公知のmiRNAを組み合わせて利用することもできる。
後述の実施例において具体的実験データが示すとおり、血漿とCSFにおいて、MSA患者では健常者と比較して表1のmiRNAがCSF及び血漿中で変動し、ALS患者では健常者と比較して表2のmiRNAが変動し、他方、AD患者では健常者と比較して表3のmiRNAが変動していた。従って、被験者、特に、神経変性疾患が疑われる患者又は神経変性疾患患者から採取した体液である、リンパ液、唾液、涙液、鼻汁、尿等の試料中でも、これらのmiRNA(以下、検出用miRNAと称する)の少なくとも1つを、それ自体公知の方法に従って測定することにより、神経変性疾患であるか否か、あるいはMSA、ALS又はADであるか否かを判定することができる。
また、減少したmiRNAの全部または一部を医薬組成物として投与し、miRNAを補充すること、あるいは増大したmiRNAを減少させる作用の有するオリゴヌクレオチド類の核酸医薬を投与して過剰なmiRNAの作用を抑制することは、いずれもMSA、ALS、ADを含む神経変性疾患の治療に有用な薬剤を提供することができる。
存在が増大しているmiRNAの場合は、その変動率(Fold change)が高い傾向にある。よって、変動率(Log2表記)が+0.1以上、好ましくは+0.5以上のmiRNAを神経変性疾患バイオマーカーとして使用することができる。他方、存在が減少しているmiRNAの場合は、その変動率(Fold change)が低い傾向にある。よって、変動率(Log2表記)が−0.1以下、好ましくは−0.5以下のmiRNAを神経変性疾患バイオマーカーとして使用することができる。ただし、変動率は測定条件によって変化する場合があるので、変動率の基準値によらず、変動幅の大きい順からバイオマーカーとなるmiRNAを選定することもできる。表1〜表3のmiRNAの配列は公知のデータベース(miRBase:http://www.mirbase.org/)から入手することができる。
本発明の検出方法においてバイオマーカーとしてmiRNA又はその標的遺伝子のmRNAを使用する場合、それ自体公知の遺伝子検査方法、例えば、核酸プローブを用いるハイブリダイゼーション法や、PCRプライマーを用いるPCR法により、測定することができる。
また、本発明の検出方法においてバイオマーカーとしてmiRNAの標的遺伝子がコードするポリペプチドを使用する場合、それ自体公知のタンパク質分析方法、例えば、抗体を用いる免疫学的分析方法、電気泳動等の生化学的分析方法や質量分析方法により実施することができ、臨床検査用の自動分析機を使用することもできる。
また、本発明の検出方法においてバイオマーカーとしてmiRNAの標的遺伝子がコードするポリペプチドを使用する場合、それ自体公知のタンパク質分析方法、例えば、抗体を用いる免疫学的分析方法、電気泳動等の生化学的分析方法や質量分析方法により実施することができ、臨床検査用の自動分析機を使用することもできる。
本発明方法で用いる試料としては、例えば、脳疾患部位、脳脊髄液、血液試料(例えば、末梢血、血漿、血清)、唾液、涙液、鼻汁、尿、リンパ液、その他の体液、好ましくは、脳疾患部位やその周辺部位(脳脊髄液等)を用いることができる。さらには生検で採取された臓器組織、病理組織、細胞、又はそれらからの抽出成分も利用できる。
本発明の検出方法においてバイオマーカーとして用いる表1〜表3に記載のmiRNAは、神経変性疾患、特にはMSA、ALS又はADの患者に対して行う各種治療の効果を判定するために使用することもできる。
本発明の治療効果判定方法は、神経変性疾患に対する治療を行った対象から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含む。
本発明の治療効果判定方法は、神経変性疾患に対する治療を行った対象から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含む。
本発明の治療効果判定方法において、MSA患者に対する治療効果を判定する場合には、表1に記載のMSA検出用miRNAを使用することができる。
表1に記載のMSA検出用miRNA(MSA患者において存在率が増加しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のMSA患者では、そのmiRNA値が健常者よりも高い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより低下した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても低下しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。また、表1に記載のMSA検出用miRNA(MSA患者において存在率が減少しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のMSA患者では、そのmiRNA値が健常者よりも低い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより増加した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても増加しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。ただし、miRNAは複数種で個々に標的遺伝子の発現制御を行っていることが推定されるので、個々のmiRNA値が協調的に変動せずともよく、臨床症状の状態を勘案して治療効果が判定される。
表1に記載のMSA検出用miRNA(MSA患者において存在率が増加しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のMSA患者では、そのmiRNA値が健常者よりも高い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより低下した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても低下しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。また、表1に記載のMSA検出用miRNA(MSA患者において存在率が減少しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のMSA患者では、そのmiRNA値が健常者よりも低い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより増加した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても増加しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。ただし、miRNAは複数種で個々に標的遺伝子の発現制御を行っていることが推定されるので、個々のmiRNA値が協調的に変動せずともよく、臨床症状の状態を勘案して治療効果が判定される。
本発明の治療効果判定方法において、ALS患者に対する治療効果を判定する場合には、表2に記載のALS検出用miRNAを使用することができる。
表2に記載のALS検出用miRNA(ALS患者において存在率が増加しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のALS患者では、そのmiRNA値が健常者よりも高い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより低下した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても低下しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。また、表2に記載のALS検出用miRNA(ALS患者において存在率が減少しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のALS患者では、そのmiRNA値が健常者よりも低い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより増加した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても増加しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。ただし、miRNAは複数種で個々に標的遺伝子の発現制御を行っていることが推定されるので、個々のmiRNA値が協調的に変動せずともよく、臨床症状の状態を勘案して治療効果が判定される。
表2に記載のALS検出用miRNA(ALS患者において存在率が増加しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のALS患者では、そのmiRNA値が健常者よりも高い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより低下した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても低下しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。また、表2に記載のALS検出用miRNA(ALS患者において存在率が減少しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のALS患者では、そのmiRNA値が健常者よりも低い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより増加した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても増加しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。ただし、miRNAは複数種で個々に標的遺伝子の発現制御を行っていることが推定されるので、個々のmiRNA値が協調的に変動せずともよく、臨床症状の状態を勘案して治療効果が判定される。
表3に記載のAD検出用miRNA(AD患者において存在率が増加しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のAD患者では、そのmiRNA値が健常者よりも高い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより低下した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても低下しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。また、表3に記載のAD検出用miRNA(AD患者において存在率が減少しているmiRNA)をバイオマーカーとして用いる場合、当該治療を行う前のAD患者では、そのmiRNA値が健常者よりも低い数値を示す傾向がある。当該miRNA値が、治療を行うことにより増加した場合、その治療は効果があったと判定することができる。一方、治療を行っても増加しなかった場合には、その治療は効果がなかったと判定することができる。ただし、miRNAは複数種で個々に標的遺伝子の発現制御を行っていることが推定されるので、個々のmiRNA値が協調的に変動せずともよく、臨床症状の状態を勘案して治療効果が判定される。
本発明の治療方法では、神経変性疾患、特にはMSA、ALS又はADで存在率が減少している、それぞれ表1、表2又は表3で変動が「減」と表記されているmiRNAの全長又は一部を血中あるいはCSF中に補充することで、神経変性疾患を治療することができる。他方、それぞれ表1、表2又は表3で変動が「増」と表記されているmiRNAの全長又は一部に対しては、増加しているmiRNAを患者体内において抑制することにより、神経変性疾患を治療することができる。生体内のmiRNAを抑制する方法としては、それ自体公知の方法に従って実施することができ、例えば、対象miRNAの全長または一部とハイブリダイズ可能な相補的配列を含むオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)を投与することによって行うことができる。
上記の、miRNAあるいは抑制性オリゴヌクレオチドを患者に投与する方法としては、それ自体公知の方法に従って実施することができ、miRNA又はその誘導体を、エキソソームを模倣したリポソームに封入する方法、コラーゲンとの複合体として徐放化させる方法、RNAの糖部分のO(酸素) をS (硫黄) で置き換えた4’−チオRNA化による化学修飾体の利用、オリゴヌクレオチドの糖の部分を2’−F、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチルに修飾した化学修飾体の利用、などで生体内において安定的に補充することができる。同時に、miRNAは複数分子で標的遺伝子を制御する可能性が高いため、上記の核酸補充法に関しても、複数の核酸カクテルによる補充を好んで用いることができる。これらは、本発明における医薬組成物である。
なお、本明細書において、用語「治療」には、疾患発症後の患者を処置する狭義の「治療」と、疾患発症前の患者を処置する「予防」が含まれる。
なお、本明細書において、用語「治療」には、疾患発症後の患者を処置する狭義の「治療」と、疾患発症前の患者を処置する「予防」が含まれる。
本発明の検出方法においてバイオマーカーとして用いる表1〜表3に記載のmiRNAは、神経変性疾患、特にはMSA、ALS又はADを含む神経変性疾患の治療薬をスクリーニングするために使用することができる。
本発明において、miRNAまたはその標的遺伝子の遺伝子産物を標的とする候補物質(例えば化合物)をスクリーニングする方法は、in vitroでは、直接標的に結合する候補物質を分光学的な変化で調べる方法や培養細胞に候補物質を暴露させて培養細胞中の標的(miRNAまたはその標的遺伝子の遺伝子産物)の発現を調べる方法などが適用され、さらにin vivoでは、モデル動物にて神経変性症状または神経変性病理像の改善を指標とした方法などが適用される。
また、本発明のスクリーニング方法のうち、表1〜表3に記載のmiRNAの発現を指標とする態様では、例えば、候補物質を培養細胞、組織、又は動物個体(特には、非ヒト動物)に投与する工程、前記個体から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含む方法により、実施することができる。
本発明において、miRNAまたはその標的遺伝子の遺伝子産物を標的とする候補物質(例えば化合物)をスクリーニングする方法は、in vitroでは、直接標的に結合する候補物質を分光学的な変化で調べる方法や培養細胞に候補物質を暴露させて培養細胞中の標的(miRNAまたはその標的遺伝子の遺伝子産物)の発現を調べる方法などが適用され、さらにin vivoでは、モデル動物にて神経変性症状または神経変性病理像の改善を指標とした方法などが適用される。
また、本発明のスクリーニング方法のうち、表1〜表3に記載のmiRNAの発現を指標とする態様では、例えば、候補物質を培養細胞、組織、又は動物個体(特には、非ヒト動物)に投与する工程、前記個体から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含む方法により、実施することができる。
本発明のスクリーニング方法で評価する候補物質は、特に限定されるものではないが、各種化合物に加え、各種抽出物、例えば、微生物の培養上清、各種生物若しくはその組織由来の天然成分若しくは抽出物を挙げることができる。また、使用する細胞は、組織から分離された培養細胞、樹立された培養細胞株、ES細胞、iPS細胞、Muse細胞などが、非ヒト動物においては、特定遺伝子のノックアウトあるいはノックインの処理を施したモデルマウス、モデルラットなどを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法において、表1〜表3で変動が「減」と表記されているmiRNAの少なくとも1つを測定する場合、そのmiRNA量を増加させることができる物質を神経変性疾患の治療薬の候補として選択することができる。他方、表1〜表3で変動が「増」と表記されているmiRNAの少なくとも1つを測定する場合、そのmiRNA量を減少させることができる物質を神経変性疾患の治療薬の候補として選択することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:MSA、ALS及びADの患者の血漿と脳脊髄液中のmiRNAの分析》
確定診断された多系統萎縮症(MSA)患者、確定診断された筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者、確定診断されたアルツハイマー病(AD)患者、並びに健常者から、末梢血並びに脳脊髄液(CSF)を、本人の同意の下に採取した。本試験に参加された被験者の内訳は表4のとおりであった。性別カラムのMは男性、Fは女性の例数を示す。
確定診断された多系統萎縮症(MSA)患者、確定診断された筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者、確定診断されたアルツハイマー病(AD)患者、並びに健常者から、末梢血並びに脳脊髄液(CSF)を、本人の同意の下に採取した。本試験に参加された被験者の内訳は表4のとおりであった。性別カラムのMは男性、Fは女性の例数を示す。
採血は被験者の上腕静脈から20mLの末梢血を採取し、速やかに4℃、3000rpmで10分間、遠心処理し、上清を0.6mLずつポリプロピレンチューブに分注して−80℃で凍結保存した。
CSFは、被験者に対して腰椎穿刺を行い約3mLを採取した。採取後、速やかに4℃、3000rpmで10分間、遠心処理し、上清(血漿)を0.6mLずつポリプロピレンチューブに分注して−80℃で凍結保存した。凍結保存した各群3例から、それぞれRNA抽出後、マイクロアレイによるmiRNA分析を行った。
マイクロアレイは3D-geneチップ(東レ(株)製)を用い、メーカー指定のmiRNA抽出液並びにハイブリダイゼーション試薬セットとHuman miRNA Oligo chip(データベースmiRBase Release17.0から選定したヒト約1800種のmiRNAプローブを搭載)で行い、プローブに結合したmiRNAのシグナル値を標準化(global normalization)して用いた。健常対照群に対する患者群のシグナル強度の変化を変動率(Fold change)として求め、変動率はLog2表記で表した。
Log2表記の変動率で「0.1以上」を「増大したmiRNA(upregulated miRNA)」、「-0.1以下」を「減少したmiRNA(downregulated miRNA)」と規定した。
マイクロアレイは3D-geneチップ(東レ(株)製)を用い、メーカー指定のmiRNA抽出液並びにハイブリダイゼーション試薬セットとHuman miRNA Oligo chip(データベースmiRBase Release17.0から選定したヒト約1800種のmiRNAプローブを搭載)で行い、プローブに結合したmiRNAのシグナル値を標準化(global normalization)して用いた。健常対照群に対する患者群のシグナル強度の変化を変動率(Fold change)として求め、変動率はLog2表記で表した。
Log2表記の変動率で「0.1以上」を「増大したmiRNA(upregulated miRNA)」、「-0.1以下」を「減少したmiRNA(downregulated miRNA)」と規定した。
CSFから得られたmiRNAは、中枢神経系の病態情報を反映し、他方、血漿中のmiRNAは全身状態のmiRNAを反映していると考えられる。全身状態としては、中枢神経系のみならず、循環器系や免疫系の影響も大きいと考えられ、中枢神経系の整合性がどこまででているかが、神経変性疾患関連バイオマーカーとしてのmiRNA選定の重要な鍵となる。
これを検討するために、CSFと血漿から得られたmiRNAのプロファイルを調べた。図1は、MSA患者の場合、図2はALS患者の場合、図3はAD患者の場合である。CSFにおけるmiRNAの変動を軸としてプロットすると、血漿中のmiRNAのプロファイルはCSF中のmiRNAプロファイルと必ずしも全体としては一致せず、一部のmiRNAがCSFと血漿とで変動が一致すると読み取ることができる。
それゆえ、各図から、変動の整合性が得られたmiRNAを表1〜表3に抽出してまとめた。表1はMSA患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群、表2はALS患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群、表3はAD患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群である。
各表には、miRNA名、血漿(Plasma)と脳脊髄液(CSF)におけるシグナル値、変動率(FC=Fold change)、変動の程度(「増」は増大、「減」は減少)、さらに、後述するMSも含む複数の疾患で共通して検出され、神経変性疾患に一般的な検査用に好適な分子を「共通」で示した。「共通」以外のmiRNAは、それぞれ疾患個別的を検出するためのバイオマーカーとして利用できる。
さらに、これらのmiRNA群は、それぞれの疾患の検査診断バイオマーカーあるいは治療のためのmiRNA情報として利用することができる。
なお、本明細書に記載のmiRNAは、先述したとおり、データベースmiRBase Release17.0から選定したヒト約1800種のmiRNAプローブを搭載した市販の3D-geneチップ(東レ(株)製)を使用したため、データベースmiRBase Release17.0に基づいた名称(ID)を使用している。本明細書に記載したmiRNAの名称と、データベースmiRBase(http://www.mirbase.org/)におけるAccession No.を表5〜表7に示す。
それゆえ、各図から、変動の整合性が得られたmiRNAを表1〜表3に抽出してまとめた。表1はMSA患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群、表2はALS患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群、表3はAD患者の血漿とCSFで共通して変動したmiRNA群である。
各表には、miRNA名、血漿(Plasma)と脳脊髄液(CSF)におけるシグナル値、変動率(FC=Fold change)、変動の程度(「増」は増大、「減」は減少)、さらに、後述するMSも含む複数の疾患で共通して検出され、神経変性疾患に一般的な検査用に好適な分子を「共通」で示した。「共通」以外のmiRNAは、それぞれ疾患個別的を検出するためのバイオマーカーとして利用できる。
さらに、これらのmiRNA群は、それぞれの疾患の検査診断バイオマーカーあるいは治療のためのmiRNA情報として利用することができる。
なお、本明細書に記載のmiRNAは、先述したとおり、データベースmiRBase Release17.0から選定したヒト約1800種のmiRNAプローブを搭載した市販の3D-geneチップ(東レ(株)製)を使用したため、データベースmiRBase Release17.0に基づいた名称(ID)を使用している。本明細書に記載したmiRNAの名称と、データベースmiRBase(http://www.mirbase.org/)におけるAccession No.を表5〜表7に示す。
《実施例2:多発性硬化症(MS)患者の血漿と脳脊髄液中のmiRNAの分析》
多発性硬化症multiple sclerosis(MS)は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。MSの原因はいまだ明らかでないが、病巣にはリンパ球やマクロファージの浸潤があり、自己免疫機序を介した炎症により、最終的に中枢神経系ミエリン構成蛋白に対する自己免疫状態を惹起して。脱髄が起こると考えられる。したがって、MSは神経変性疾患ではあるが、自己免疫疾患でもあり、小脳の変性・萎縮を伴うMSA、運動ニューロンの変性・消失と伴うALS、アミロイドβの沈着と脳萎縮を伴うADなどの神経変性機序とは異なると考えられている。それゆえ、炎症と免疫が大きく関与するMSでは、疾患バイオマーカーmiRNAは、MSA、ALS、ADなどとは異なる可能性が高いが、神経細胞の変性・破壊、新生、再構成という神経組織のリモデリングに関する部分は共通している可能性がある。
以上の理由から、神経変性に共通的なmiRNAを抽出するために、MS患者のCSFと血漿のmiRNAを調べた。
多発性硬化症multiple sclerosis(MS)は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。MSの原因はいまだ明らかでないが、病巣にはリンパ球やマクロファージの浸潤があり、自己免疫機序を介した炎症により、最終的に中枢神経系ミエリン構成蛋白に対する自己免疫状態を惹起して。脱髄が起こると考えられる。したがって、MSは神経変性疾患ではあるが、自己免疫疾患でもあり、小脳の変性・萎縮を伴うMSA、運動ニューロンの変性・消失と伴うALS、アミロイドβの沈着と脳萎縮を伴うADなどの神経変性機序とは異なると考えられている。それゆえ、炎症と免疫が大きく関与するMSでは、疾患バイオマーカーmiRNAは、MSA、ALS、ADなどとは異なる可能性が高いが、神経細胞の変性・破壊、新生、再構成という神経組織のリモデリングに関する部分は共通している可能性がある。
以上の理由から、神経変性に共通的なmiRNAを抽出するために、MS患者のCSFと血漿のmiRNAを調べた。
被験者は、確定診断されたMS患者6例(3M+3F、32.7±4.03歳)及び健常対照者6例(血漿採取者:3M+3F、41.0±12.6歳、CSF採取者:3M+3F、60.6±1.8)で、末梢血並びに脳脊髄液(CSF)を、本人の同意の下に採取した。miRNAの抽出・分析方法は、実施例1と同一である。
その結果、疾患の違いによる増減の変化は一部に観察されるものの、表8に示したように、MSA、ALS及びADの患者で変動していたmiRNAがMS患者でも同様に検出され、これらが神経変性疾患に共通的なmiRNAであることが示された。
また、表9にmiRNA毎に各疾患の共通性をまとめた。hsa-miR-1280は、4つの疾患全てで共通に変動が認められた。表中の血漿とCSFの数値は、マイクロアレイ測定時のシグナル値(発現強度)を示す。
その結果、疾患の違いによる増減の変化は一部に観察されるものの、表8に示したように、MSA、ALS及びADの患者で変動していたmiRNAがMS患者でも同様に検出され、これらが神経変性疾患に共通的なmiRNAであることが示された。
また、表9にmiRNA毎に各疾患の共通性をまとめた。hsa-miR-1280は、4つの疾患全てで共通に変動が認められた。表中の血漿とCSFの数値は、マイクロアレイ測定時のシグナル値(発現強度)を示す。
本発明者らの現時点での考えは、一部でMSA、ALS、AD、MSの各疾患の共通的miRNAの間で、異なる変動(「増」と「減」が逆となる変動)が発現する場合があるが、これは疾患の病理機序によるものである。すなわち、MSA、ALS、ADは神経細胞変性が主たる病理像であるが、MSは神経線維の脱髄が主たる病理像で、炎症と免疫反応が強いのが特徴ある。これによって、MSA、ALS、ADにおけるmiRNAの挙動とMSのmiRNAの挙動では、当該病理機序の影響を受けて、miRNAの挙動が異なることにつながると考えられる。しかしながら、本発明における表1〜表3に示したmiRNAは神経組織に関与し、神経病理に鋭敏な特徴を有する共通的なmiRNAであり、各疾患毎に変動の傾向を規定することにより、神経変性疾患関連バイオマーカーとしての有用性は高いといえる。
本発明は、神経変性疾患、特にMSA、ALSあるいはAD含む神経変性疾患の検査診断並びに治療に利用することができる。さらに、同疾患の治療薬となる化合物のスクリーニングに利用することができる。
Claims (10)
- 被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、神経変性疾患の検出方法。
- 神経変性疾患が、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病のうち、いずれか1つである、請求項1に記載の検出方法。
- 被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1に記載のmiRNAの少なくとも1つである、多系統萎縮症の検出方法。
- 被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表2に記載のmiRNAの少なくとも1つである、筋萎縮性側索硬化症の検出方法。
- 被験者から採取した試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、アルツハイマー病の検出方法。
- 神経変性疾患に対する治療を行った対象から試料を採取する工程、および前記試料中のmiRNAを測定する工程を含み、前記miRNAが表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つである、前記治療効果の判定方法。
- 表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つの全長あるいは一部を有効成分とする医薬組成物。
- 表1〜表3に記載のmiRNAの少なくとも1つを抑制するオリゴヌクレオチドを有効成分とする医薬組成物。
- 表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの発現を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
- 表1〜表3に記載したmiRNAの少なくとも1つの標的遺伝子の遺伝子産物を指標とする、神経変性疾患の治療薬をスクリーニングする方法。
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JP7471834B2 (ja) | 2020-01-24 | 2024-04-22 | シスメックス株式会社 | 認知機能に関する情報を取得する方法、認知機能に関する医学的介入の有効性の判定方法、認知機能の判定を補助する方法、試薬キット、判定装置及びコンピュータプログラム |
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2013
- 2013-01-10 JP JP2013002997A patent/JP2014132863A/ja active Pending
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