JP2014129348A - 液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】電圧保持率が高く残留DCが抑制され、かつ長期光信頼性が高い液晶表示素子を提供するための液晶配向剤、さらにはこれに用いるポリマーの原料であるジアミンを提供する。
【解決手段】式(I−2)で表されるジアミン。又は、前記ジアミンとその他のジアミンとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸又はその誘導体を含有する液晶配向剤。
Figure 2014129348

【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤に用いるポリアミック酸またはその誘導体の原料であるジアミンに関する。
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビとしても用いられるようになってきた。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子はネマチック液晶を用いた表示素子が主流であり、例として、1)90度ツイストしたTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子や、2)通常180度以上ツイストしたSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子があり、また、駆動電圧をスィッチングする素子として、3)薄膜トランジスタを使用したTFT(Thin Film Transistor)型液晶表示素子が実用化されている。
これらの液晶表示素子は画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストの低下および中間調での輝度反転を生じるという欠点を有している。近年、この視野角の問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN-TFT型液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、3)垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi Domain Vertical Alignment)型液晶表示素子、または4)横電界方式のIPS(In-Plane Switching)型液晶表示素子、5)ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子、6)光学補償ベンド(Optically Compensated BendまたはOptically self-Compensated Birefringence:OCB)型液晶表示素子等の技術により改良されて、これらの表示素子が実用化され、或いは実用化が検討されている。
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の1つであり、表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
液晶配向膜は、液晶配向剤より調製される。現在主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜してポリイミド系配向膜を形成する。ポリアミック酸または可溶性のポリイミド以外のポリマーを用いる種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、電圧保持率および残留DCが挙げられる。電圧保持率が低いと、フレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が低下して正常な諧調表示に支障をきたす。一方、残留DCが大きいと、電圧印加後に電圧をOFFにしたにもかかわらず、消去される像が残ってしまういわゆる「残像」が発生する。
これらの問題を解決する試みとして、最近いくつかの方法が提案されている。
(1)液晶配向膜を形成させるための、物性の異なる2以上のポリアミック酸を組み合わせて用いたポリアミック酸組成物が知られている(特許文献1および2)。
(2)ポリアミック酸とポリアミドを用いたポリマー成分と、溶剤とを用いるワニス組成物が知られている(特許文献3)。
(3)物性の異なる2以上のポリアミック酸およびポリアミド、ならびに溶剤を用いたワニス組成物が知られている。(特許文献4)。
(4)特定の構造を有するアミン成分を用いて合成されるポリアミック酸等を用いた高分子材料を用いたワニス組成物が知られている(特許文献5)。
しかしながら、これらの先行技術によっては、電圧保持率および残留DCの問題が十分には解決されておらず、多くの検討が今なお継続されている。
また、液晶配向膜を形成させるためのポリイミドの原料としてジアミンを使用するが、このジアミンには非側鎖型ジアミン即ち側鎖基を持たないジアミンと、側鎖型ジアミン即ち側鎖基を有するジアミンが使用されている。これらのうち、側鎖型ジアミンは殆どがプレチルト角の付与のために使用されており(特許文献6)、残留DCなど電気特性を改善するための側鎖型ジアミンの開発はあまりおこなわれておらず、改善の余地がある。
特開平11−193345号公報 特開平11−193347号公報 国際公開00/061684号パンフレット 国際公開01/000733号パンフレット 特開2002−162630号公報 特開平3―179323号公報
上記の状況を考慮して、電圧保持率および残留DCの問題が改善された液晶表示素子用の液晶配向剤の開発が望まれている。そして、この配向剤を用いて形成される液晶配向膜を液晶表示素子に適用することが望まれている。
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、末端−OHの側鎖基を有するジアミンを原料としてポリアミック酸を製造するとき、これを含有する液晶配向剤が前記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明のジアミンを用いた液晶配向剤は次の[1]項に示される。
[1] 式(I)で表されるジアミンまたはこのジアミンとその他のジアミンとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤:

Figure 2014129348
ここに、Aは単結合、−O−、−COO−、−CO−、−CONH−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Rは独立して水素または炭素数1〜6のアルキルである。
本発明の液晶配向剤は、種々の表示駆動方式の液晶表示素子の液晶配向膜の形成に使用されることができ、いずれの表示駆動方式の液晶表示素子においても、電圧保持率および残留DCの改善に効果を有する。
まず最初に、本発明で用いる用語について説明する。式(I)で表されるジアミンをジアミン(I)と称することがある。他の式で表されるジアミンも同様の略記法で示すことがある。テトラカルボン酸二無水物を酸無水物と略記することがあり、例えば式(H−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を酸無水物(H−1)と略記することがある。
化学式の定義において用いる用語「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。但し、任意の−CH−が他の基で置き換えられてもよいとするとき、連続する複数の−CH−が同じ基で置き換えられることは含まれない。
環を構成する炭素の何れか1つと明確に結合していない置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。
複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時に同じ基でなければならないことを意味しない。そのような場合は、複数の式において同じ基が選択されてもよいし、式ごとに異なる基が選択されてもよい。このとき、1つの式に複数の同じ記号が用いられている場合は、そのすべてが他の式における基と異なってもよいし、一部が異なってもよい。
特に限定しない「アルキル」は、直鎖アルキルおよび分岐アルキルの総称として用いられる。
本発明は前記の[1]項と次に示す[2]〜[20]項とで構成される。
[2] Aが−COO−または炭素数1〜3のアルキレンであり、Rが水素または炭素数1〜4のアルキルである、[1]項に記載の液晶配向剤。
[3] その他のジアミンが式(1−1)〜式(1−3)、式(2−1)、式(2−2)、式(3)、式(4−1)および式(4−2)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つのジアミンである、[1]項または[2]項に記載の液晶配向剤:

Figure 2014129348
ここに、式(1−1)において、aは0または1であり;環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンまたは1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイルであり;シクロヘキシレンおよびフェニレンの任意の水素はメチル、ジエチルアミノまたはジビニルアミノで置き換えられてもよく;
式(1−2)におけるWは−CH−または−NH−であり;
式(1−3)におけるbは0〜2の整数であり:

Figure 2014129348
ここに、Xは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、−CH=CH−、−C≡C−、−N=N−、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよく;ベンゼン環の任意の水素はフッ素、メチル、メトキシ、−CFまたは−OCFで置き換えられてもよく:

Figure 2014129348
ここに、Yは炭素数3〜30のアルキルであり;このアルキルの任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または1,4−シクロヘキシレンで置き換えられてもよく;Yは水素またはYであり:

Figure 2014129348
式(3)において、Xは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−または炭素数1〜6のアルキレンであり;Rは炭素数3〜30のアルキル、コレステリル、または式(a)で表される基であり;
式(a)において、XおよびXは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり;環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;RおよびRは独立してフッ素またはメチルであって、fおよびgは独立して0、1または2であり;c、dおよびeは独立して0または1であって、これらの合計は1〜3であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり、これらのアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく:

Figure 2014129348
ここに、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;jは0または1であり;Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり;環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;hは0または1である。

Figure 2014129348
ここに、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;jは0または1であり;Rは水素、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり;Rは炭素数6〜30のアルキルまたはコレステリルである。
[4] その他のジアミンが式(3)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つのジアミンである、[3]項に記載の液晶配向剤。
[5] その他のジアミンが式(3−1)〜式(3−7)、式(3−21)〜式(3−25)、式(3−34)および式(3−35)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤:

Figure 2014129348
ここに、Yは炭素数2〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Yは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。
[6] その他のジアミンが式(4−1)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つのジアミンである、[3]項に記載の液晶配向剤。
[7] その他のジアミンが式(4−1−1)〜式(4−1−8)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤:

Figure 2014129348
ここに、Yは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。
[8] その他のジアミンが式(1−1)〜式(1−3)および式(2−1)で表されるジアミンの群から選択される少なくとも1つのジアミンである、[3]項に記載の液晶配向剤。
[9] その他のジアミンが式(1−1−3)、式(1−1−5)、式(1−1−8)、式(1−1−9)、式(1−1−12)〜式(1−1−14)、式(1−2−2)、式(1−3−1)、式(1−3−2)、式(2−1−1)、式(2−1−7)、式(2−1−10)、式(2−1−13)、式(2−1−27)、式(2−1−28)、式(2−1−32)〜式(2−1−35)、式(2−1−54)〜式(2−1−56)および式(2−1−66)〜式(2−1−68)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[3]項に記載の液晶配向剤。

Figure 2014129348


Figure 2014129348
[10] その他のジアミンが式(1−1−8)、式(1−1−9)、式(1−1−12)、式(1−2−2)、式(1−3−1)、式(1−3−2)、式(2−1−32)、式(2−1−33)、および式(2−1−66)〜式(2−1−68)で表されるジアミンの少なくとも1つ、またはこの(これらの)ジアミンを含む混合物である、[9]項に記載の液晶配向剤。
[11] テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つである、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
[12] テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つである、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
[13] テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとの混合物である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
[14]芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(H−1)、式(H−5)、式(H−8)〜式(H−10)、式(H−15)、式(H−19)、式(H−20)および式(H−21)で表される化合物であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物が式(S−1)、式(S−6)、式(S−9)〜式(S−11)、式(S−21)、式(S−22)、式(S−30)、式(S−43)、式(S−44)、式(S−45)、式(S−48)および式(S−53)で表される化合物である、[13]項に記載の液晶配向剤。

Figure 2014129348


Figure 2014129348
[15] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(H−1)で表される化合物であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物が式(S−1)で表される化合物である、[14]項に記載の液晶配向剤。
[16] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が式(H−1)で表される化合物であり、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物が式(S−48)で表される化合物である、[14]項に記載の液晶配向剤。
[17] 式(I)で表されるジアミンを用いないで得られるポリアミック酸またはその誘導体をさらに含有する、[1]〜[16]のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
[18] [1]〜[17]のいずれか1項に記載の液晶配向剤を基板に塗布して得られる塗膜を加熱することによって形成される液晶配向膜。
[19] [18]項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
[20] 式(I−2)で表されるジアミン。

Figure 2014129348
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーと溶剤を含有する組成物である。ポリアミック酸の誘導体としては、ポリアミック酸を完全に脱水閉環反応させて得られるポリイミド、ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イミド化ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置き換えることによって得られるポリアミック酸−ポリアミド共重合体、およびこのポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部または全部を脱水閉環反応させて得られるポリアミドイミドが挙げられる。これらの誘導体のうちポリイミドおよび部分イミド化ポリアミック酸が好ましく、ポリイミドがより好ましい。実施例を除く以下の説明では、特に断らない限り、ポリアミック酸とこのようなポリアミック酸の誘導体との総称として「ポリアミック酸」を用いる。
本発明の液晶配向剤を調製するに当たっては、酸無水物と反応させるジアミンとして、ジアミン(I)またはジアミン(I)とその他のジアミンとの混合物を用いる。

Figure 2014129348
式(I)において、Aは単結合、−O−、−COO−、−CO−、−CONH−または炭素数1〜6のアルキレンであり、好ましくは−COO−または炭素数1〜3のアルキレンであり、より好ましくは−COO−または−CH−である。Rは独立して水素または炭素数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素または炭素数1〜4のアルキルであり、より好ましくは水素またはターシャリブチル(以下の説明では、t−ブチルまたはt−Buと略称することがある。)である。
ジアミン(I)の好適例として、ジアミン(I−1)およびジアミン(I−2)を挙げることができる。

Figure 2014129348
その他のジアミンの好ましい例として、ジアミン(1−1)〜ジアミン(1−3)、ジアミン(2−1)、ジアミン(2−2)、ジアミン(3)、ジアミン(4−1)およびジアミン(4−2)を挙げることができる。

Figure 2014129348
ここに、aは0または1であり、環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイルであり、好ましくは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイルである。そして、シクロヘキシレンおよびフェニレンの任意の水素はメチル、−CF、ジエチルアミノまたはジビニルアミノで置き換えられてもよい。
ジアミン(1−1)の好ましい例を次に示す。

Figure 2014129348
上記のジアミン(1−1−1)〜ジアミン(1−1−15)のうち、ジアミン(1−1−3)、ジアミン(1−1−5)、ジアミン(1−1−8)、ジアミン(1−1−9)、およびジアミン(1−1−12)〜ジアミン(1−1−14)がより好ましい。

Figure 2014129348
ここに、Wは−CH−または−NH−である。即ち、ジアミン(1−2)は、具体的にはジアミン(1−2−1)およびジアミン(1−2−2)である。

Figure 2014129348

Figure 2014129348
ここに、bは0〜2の整数であり、好ましくは0または2である。即ち、ジアミン(1−3)の好ましい例は、ジアミン(1−3−1)およびジアミン(1−3−2)である。

Figure 2014129348

Figure 2014129348
ここに、Xは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−、−SO−、−CH=CH−、−C≡C−、−N=N−、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよい。ベンゼン環の任意の水素はフッ素、メチル、メトキシ、−CFまたは−OCFで置き換えられてもよい。そして、好ましくは、Xは単結合または基中の任意の−CH−が−O−、1,4−フェニレンまたはピペラジン−1,4−ジイルで置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキレンであり、ベンゼン環の1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。なお、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置はXに対してパラ位またはメタ位であり、パラ位が好ましい。
ジアミン(2−1)の好ましい例を次に示す。

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348
上記のジアミン(2−1−1)〜ジアミン(2−1−76)のうち、ジアミン(2−1−1)、ジアミン(2−1−7)、ジアミン(2−1−10)、ジアミン(2−1−13)、ジアミン(2−1−27)、ジアミン(2−1−28)、ジアミン(2−1−32)〜ジアミン(2−1−35)、ジアミン(2−1−54)〜ジアミン(2−1−56)およびジアミン(2−1−66)〜ジアミン(2−1−68)がより好ましい。

Figure 2014129348
ここに、Yは炭素数3〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数3〜20のアルキルであり、より好ましくは素数3〜10のアルキルである。そして、これらのアルキルの任意の−CH−は−O−、−CH=CH−または1,4−シクロヘキシレンで置き換えられてもよい。Yは水素またはYである。
ジアミン(2−2)の好ましい例を次に示す。

Figure 2014129348
これらの式において、Yは炭素数3〜10のアルキル、炭素数3〜10のアルコキシ、または炭素数3〜10のアルケニルであり、Yは炭素数2〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルである。そして、Yは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルである。

Figure 2014129348
式(3)において、Xは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−または炭素数1〜6のアルキレンであり、Rは炭素数3〜30のアルキル、コレステリル、または式(a)で表される基である。Rは好ましくは炭素数3〜10のアルキルまたは式(a)で表される基である。そして、ベンゼン環に対する2つのアミノ基の結合位置は、Xに対して共にメタ位であることが好ましい。
式(a)において、XおよびXは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンである。環Bおよび環Cは独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。RおよびRは独立してフッ素またはメチルであって、fおよびgは独立して0、1または2である。c、dおよびeは独立して0または1であって、これらの合計は1〜3である。Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。そして、これらのアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルおよびアルケニルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
ジアミン(3)の好ましい例を次に示す。以下の例において、Yは炭素数3〜10のアルキル、炭素数3〜10のアルコキシ、炭素数3〜10のアルコキシアルキル、または炭素数3〜10のアルケニルであり、Yは炭素数2〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。そして、Yは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348
上記のジアミン(3−1)〜ジアミン(3−37)のうち、ジアミン(3−1)〜ジアミン(3−7)、ジアミン(3−21)〜ジアミン(3−25)、ジアミン(3−34)およびジアミン(3−35)がより好ましく、ジアミン(3−2)〜ジアミン(3−7)がさらに好ましい。

Figure 2014129348
式(4−1)において、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり、jは0または1である。Rは炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、Xは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、hは0または1である。そして、jが1であるとき、ベンゼン環に対する2つのアミノ基の結合位置は、Xに対して共にパラ位であることが好ましい。
ジアミン(4−1)の好ましい例を次に示す。以下の例において、Yは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。

Figure 2014129348

Figure 2014129348
式(4−2)において、Xは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;jは0または1であり;Rは水素、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、または炭素数2〜30のアルケニルであり、好ましくは水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。そして、Rは炭素数6〜30のアルキルまたはコレステリルであり、好ましくは炭素数6〜10のアルキルである。
ジアミン(4−2)の好ましい例を次に示す。下記の例において、Yは水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである。そして、Yは炭素数6〜10のアルキルである。

Figure 2014129348
ここで、前記の側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンについて詳しく説明する。ジアミンはその構造の違いによって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。側鎖基を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって、ポリマーの主鎖に対して多数の側鎖基を有するポリアミック酸が得られる。このような、ポリマー主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸を使用するとき、このポリマーを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。即ち、この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、本発明ではこの炭素数3以上の基を側鎖基として定義する。その具体的な例として、環を含まない基であってその末端が炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、または炭素数3以上のアルケニルである基、および1つ以上の環を有する基を挙げることができる。そして、1つ以上の環を有する基においては、プレチルト角を大きくする効果をより強く求める場合には、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシ、炭素数2以上のアルコキシアルキルおよび炭素数2以上のアルケニルのいずれか1つを有する基であることが好ましい。このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンとし、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンとするとき、ジアミン(I)は側鎖型ジアミンであり、そして上記のその他のジアミンのうち、ジアミン(1−1)〜ジアミン(1−3)およびジアミン(2−1)は非側鎖型ジアミンであり、ジアミン(2−2)、ジアミン(3)、ジアミン(4−1)およびジアミン(4−2)は側鎖型ジアミンである。
そして、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを適宜使い分けることにより、種々の表示素子のそれぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。即ち、TN方式やVA方式に代表される縦電界方式では比較的大きなプレチルト角が必要となるため、側鎖型ジアミンが主に用いられる。このとき、さらにプレチルト角をコントロールするためには非側鎖型ジアミンを併用すればよい。非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンの配合比率は、目的とするプレチルト角の大きさに応じて決めればよい。もちろん、側鎖基を適当に選ぶことにより、側鎖型ジアミンのみを用いて対応することも可能である。横電界方式ではプレチルト角が小さく、高い液晶配向性が必要となるため、非側鎖型ジアミンの少なくとも1つを用いればよい。
本発明では、大きなプレチルト角を発現させることを目的とする場合には、ジアミン(I)の少なくとも1つと側鎖型ジアミンであるジアミン(2−2)、ジアミン(3)、ジアミン(4−1)およびジアミン(4−2)から選択される少なくとも1つとを組み合わせて用いる。この組み合わせの好ましい例は、ジアミン(I)とジアミン(3)の組み合わせ、およびジアミン(I)とジアミン(4−1)の組み合わせである。
そして、小さなプレチルト角を発現させることを目的とする場合には、ジアミン(I)の少なくとも1つと非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとを組み合わせて用いる。目的とするプレチルト角次第では、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを組み合わせて用いてもよい。
本発明では、残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有するジアミンをジアミン(I)と組み合わせ使用することにより、ジアミン(I)のOH基と窒素原子の相乗効果により、長期光信頼性、即ち長時間の光照射に対する信頼性に対するジアミン(I)の効果をさらに大きくすることができる。このような残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有するジアミンの好ましい例を次に挙げる。

Figure 2014129348

Figure 2014129348
上記の例のうち、ジアミン(1−1−8)、ジアミン(1−1−9)、ジアミン(1−1−12)、ジアミン(1−2−2)、ジアミン(1−3−1)、ジアミン(1−3−2)、ジアミン(2−1−32)、ジアミン(2−1−33)、およびジアミン(2−1−66)〜ジアミン(2−1−68)がより好ましい。
本発明で用いる酸無水物は、芳香族酸無水物と芳香族酸無水物以外の酸無水物に分けられる。芳香族酸無水物は、芳香環に直接結合する4つのカルボキシル基を1分子中に有する化合物を脱水することによって得られる二無水物を意味する。芳香族酸無水物を用いれば、液晶表示素子の耐光性を高める効果並びに残留DCを低減する効果が得られる。本発明の液晶配向剤においては、ポリアミック酸を合成する際に用いる酸無水物全量中の0〜70モル%を芳香族酸無水物とすることが好ましく、10〜60モル%とすることがより好ましい。芳香族酸無水物の好ましい例を次に示す。

Figure 2014129348

Figure 2014129348
これらの芳香族酸無水物のうち、酸無水物(H−1)、酸無水物(H−5)、酸無水物(H−8)〜酸無水物(H−10)、酸無水物(H−15)、および酸無水物(H−17)〜酸無水物(H−21)がより好ましく、酸無水物(H−1)、酸無水物(H−5)、酸無水物(H−8)〜酸無水物(H−10)、酸無水物(H−15)、および酸無水物(H−19)〜酸無水物(H−21)がさらに好ましい。
芳香族酸無水物以外の酸無水物の好ましい例を次に示す。

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348
これらの芳香族酸無水物以外の酸無水物のうち、酸無水物(S−1)、酸無水物(S−6)、酸無水物(S−9)、酸無水物(S−11)、酸無水物(S−21)、酸無水物(S−22)、酸無水物(S−30)、酸無水物(S−43)、酸無水物(S−44)、酸無水物(S−45)、酸無水物(S−48)および酸無水物(S−53)がより好ましく、酸無水物(S−1)、酸無水物(S−6)、酸無水物(S−48)および酸無水物(S−53)がさらに好ましい。芳香族酸無水物以外の酸無水物、即ち脂環式酸無水物や脂肪族酸無水物を用いれば、液晶表示素子の耐熱性を高める効果並びに透明性を改善する効果が得られる。本発明の液晶配向剤においては、ポリアミック酸を合成する際に用いる酸無水物全量中の30〜100モル%を芳香族酸無水物以外の酸無水物とすることが好ましく、40〜90モル%とすることがより好ましい。
前記の、残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有するジアミンをジアミン(I)と組み合わせ使用することによる効果は、残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有する酸無水物をジアミン(I)と反応させることによっても得られる。残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有する酸無水物の好適例は酸無水物(S−48)である。
本発明においては、芳香族酸無水物の少なくとも1つと芳香族酸無水物以外の酸無水物の少なくとも1つを混合して用いることが、液晶配向剤の保存安定性が向上するので好ましい。そして、上記の酸無水物のうち、酸無水物(H−1)と酸無水物(S−1)との組合せが特に好ましく、酸無水物(H−1)と酸無水物(S−48)との組合せも特に好ましい。
また、酸無水物の一部をジカルボン酸無水物に置き換えてもよい。こうすることによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、重合反応の進行を抑えることができる。このため、得られるポリアミック酸の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。酸無水物に対するジカルボン酸無水物の比率は、本発明の効果を損なわない範囲にすればよいが、目安として全酸無水物量の10モル%以下にすることが好ましい。ジカルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、n−テトラデシル無水コハク酸、n−ヘキサデシル無水コハク酸およびシクロヘキサンジカルボン酸無水物である。
本発明におけるポリアミック酸の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。この分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
本発明におけるポリアミック酸は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR、NMRで分析することによりその存在を確認することができる。また、ポリアミック酸をKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によって分解した後、その分解物から有機溶剤によって抽出した成分をGC、HPLCもしくはGC−MSで分析することにより、使用されている原料化合物を確認することができる。
本発明の液晶配向剤は、前記のポリアミック酸以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分は、1つであっても2つ以上であってもよい。
本発明の配向剤は、特性の経時劣化や環境による劣化を防ぐ観点から、ポリアミック酸のカルボキシル基と反応する官能基を2つ以上有する化合物、いわゆる架橋剤をさらに含有していてもよい。このような架橋剤の例としては、特許第3049699号公報、特開2005−275360号公報、特開平10−212484号公報等に記載されているような多官能エポキシ、イソシアネート材料等が挙げられる。
また、架橋剤自身が反応して網目構造のポリマーとなり、ポリアミック酸の膜強度を向上するような架橋剤も上記と同様な目的に使用することができる。このような架橋剤としては、特開平10−310608号公報、特開2004−341030号公報等に記載されているような多官能ビニルエーテル、マレイミドおよびアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。これらの架橋剤を使用するとき、その好ましい割合は、ポリマー成分の合計量に対する重量比で0.01〜1.00であり、より好ましくは0.01〜0.5である。
特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物の例を次に示す。

Figure 2014129348

Figure 2014129348

Figure 2014129348
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。このラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の例は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸誘導体およびビスマレイミドである。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル酸誘導体であることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、オキサジン化合物をさらに含有してもよい。オキサジン化合物の例を1つ示す。

Figure 2014129348
ここに、Wはフェニルまたは炭素数1〜20のアルキルである。
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、エポキシ化合物をさらに含有してもよい。エポキシ化合物は、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、および環状脂肪族型エポキシ化合物が例示される。
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有してもよい。各種添加剤の例は、ポリアミック酸以外のポリマー、および低分子化合物であり、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタンまたはシリコーン変性ポリエステルを本発明の液晶配向剤に添加することにより、液晶表示素子の電圧保持率を高くし、イオン密度を低減し、そして耐光性および耐熱性を高くして、信頼性の高い液晶表示素子を製造することが期待される。
前記の低分子化合物としては、塗布性の向上を望むときには係る目的に沿った界面活性剤、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、基板との密着性や耐ラビング性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、そして低温でイミド化を進行させる場合にはイミド化触媒を例示することができる。
シランカップリング剤の具体例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、およびN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンである。シランカップリング剤を用いるとき、その好ましい添加量はポリアミック酸の総重量に対する重量比で0.001〜0.05である。
イミド化触媒の具体例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類が挙げられる。イミド化触媒は、N,N−ジメチルアニリン、o−ヒドロキシアニリン、m−ヒドロキシアニリン、p−ヒドロキシアニリン、o−ヒドロキシピリジン、m−ヒドロキシピリジン、p−ヒドロキシピリジンおよびイソキノリンから選ばれる1つまたは2つ以上であることが好ましい。イミド化触媒を用いるとき、その好ましい添加量は、ポリアミック酸のカルボニル基に対して0.01〜0.5等量であり、0.05〜0.3等量であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤は溶剤を含有する。溶剤はポリアミック酸の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤から適宜選択できる。溶剤は1種類でもよく、2種類以上を混合溶剤として使用してもよい。溶剤は、ポリアミック酸の親溶剤と塗布性改善を目的とした他の溶剤に大別される。
親溶剤は非プロトン性極性有機溶剤であり、その具体例はN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、およびγ−ブチロラクトン等のラクトンである。
塗布性改善等を目的とした他の溶剤は、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、およびこれらの化合物のアセテート等のエステル化合物が例示される。
これらの溶剤の中では、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤は、前記のポリアミック酸を含むポリマー成分を溶剤に溶解した溶液の形態で実用に供される。その際のポリマー成分の好ましい濃度は、0.1〜40重量%である。この液晶配向剤を基板に塗布するときには、膜厚調整のため含有されているポリマー成分を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。このとき液晶配向剤に対して溶剤を容易に混合するのに適した粘度に液晶配向剤の粘度を調整する観点から、前記ポリマー成分の濃度は40重量%以下であることが好ましい。
液晶配向剤中における前記ポリマー成分の濃度は、液晶配向剤の塗布方法に応じて調整される場合もある。液晶配向剤の塗布方法がスピンナー法や印刷法のときには、膜厚を良好に保つために、前記ポリマー成分の濃度を通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法では更に濃度を低くすることもあり得る。一方、ポリマー成分の濃度が0.1重量%以上であると、得られる液晶配向膜の膜厚が最適となり易い。したがって前記ポリマー成分の濃度は、通常のスピンナー法や印刷法等では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、液晶配向剤の塗布方法によっては、更に低い濃度で使用してもよい。
なお、液晶配向膜の作製に用いる場合において、本発明の液晶配向剤の粘度は、この液晶配向剤の膜を形成する手段や方法に応じて決めることができる。例えば、印刷機を用いて液晶配向剤の膜を形成する場合は、十分な膜厚を得る観点から5mPa・s以上であることが好ましく、また印刷ムラを抑制する観点から100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80mPa・sである。スピンコートによって液晶配向剤を塗布して液晶配向剤の膜を形成する場合は、同様の観点から、5〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜100mPa・sである。液晶配向剤の粘度は、溶剤による希釈や撹拌を伴う養生によって低くすることができる。
本発明では、ジアミン(I)またはジアミン(I)とその他のジアミンとの混合物を酸無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸(ポリマーA)に加えて、ジアミン(I)を用いないで得られるポリアミック酸(ポリマーB)を用いてもよい。この2つのポリアミック酸の併用は、いわゆるポリマーブレンドである。ジアミン(I)を用いないで得られるポリアミック酸は、具体的には前記のその他のジアミンと酸無水物を反応させて得られるポリアミック酸である。
そして、前記の残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有するジアミンを使用する効果は、このジアミンまたはこのジアミンとその他のジアミンとの混合物を酸無水物と反応させて得られるポリアミック酸をポリマーBとして、ポリマーAとブレンドすることによっても得られる。このとき、残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基または窒素含有複素環基を有するジアミンと混合するその他のジアミンは、目的とするプレチルト角に応じて選択すればよい。
本発明の液晶配向膜は、前述の液晶配向剤を基板に塗布する工程と、それによって得られる塗膜を焼成する工程とによって得られ、必要に応じて、前記焼成工程で得られる膜をラビング処理することが好ましい。
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。好ましい基板としては、ITO(Indium Tin Oxide)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。
液晶配向剤を基板に塗布する方法としては、スピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
塗膜の焼成は、ポリアミック酸が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成の方法としては、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に150〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましい。
ラビング処理は、通常の液晶配向膜の配向処理のためのラビング処理と同様に行うことができ、本発明の液晶配向膜において十分なリタデーションが得られる条件であればよい。特に好ましい条件は、毛足押し込み量0.2〜0.8mm、ステージ移動速度5〜250mm/sec、ローラー回転速度500〜2,000rpmである。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング法の他に、光配向法や転写法等が一般に知られている。本発明の効果が得られる範囲において、これらの他の配向処理方法を前記ラビング処理に置き換えることも可能であり、ラビング処理と併用してもよい。
本発明では、感光性の基を有するジアミンをジアミン(I)と組み合わせ用いてポリアミック酸を製造し、これを用いて液晶配向剤を調製する場合には、前記の光配向法を利用して配向膜を得ることができる。例えば、このような液晶配向剤を用いて基板上に形成したポリイミド膜に直線偏光された紫外光を照射し、その後2枚の基板を貼り合わせて製造したセルに液晶組成物を封入すれば、所望の配向状態を与えられた液晶を有する液晶表示素子を得ることができる。次に、感光性の基を有するジアミンの例を示す。

Figure 2014129348
主鎖に感光性基を有するポリマーを含有する液晶配向剤を用いて製造した配向膜を有する液晶表示素子において、所定のプレチルト角を発現させたい場合、紫外光を照射する際に基板に対し任意の角度から直線偏光を照射する方法や、基板に対し垂直方向からの直線偏光照射と任意の角度からの無偏光照射とを組み合わせる方法を適宜選択することができる。
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。このような他の工程としては、前記塗膜を乾燥させる工程や、ラビング処理前後の膜を洗浄液で洗浄する工程等が挙げられる。
乾燥工程は、前記の焼成工程と同様に、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も同様に適用可能である。乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。
配向処理の前後における液晶配向膜の洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
本発明の液晶表示素子は、一対の基板と、その一対の基板の間に形成される液晶層と、液晶層に電圧を印加する電極と、液晶分子を所定の方向に配向させる液晶配向膜とを有する。液晶配向膜には前述の本発明の液晶配向膜が用いられる。
基板には前述したガラス製の基板を用いることができ、電極には液晶配向膜の説明で例示したガラス製の基板に形成されるITO電極を用いることができる。
誘電率異方性が負の好ましい液晶組成物には、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307号公報、特開2001−019965号公報、特開2001−072626号公報、特開2001−192657号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
本発明の液晶配向剤によって製造される液晶配向膜を有する液晶表示素子がTN方式またはIPS方式で駆動される場合は、液晶表示素子には誘電率異方性が正の液晶組成物も用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1明細書)、特開平9−302346号公報(EP806466A1明細書)、特開平8−199168号公報(EP722998A1明細書)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1明細書)、特開平10−204016号公報(EP844229A1明細書)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040号公報、特開2001−48822号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
前記誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
本発明の液晶表示素子は、一対の基板の少なくとも一方に本発明の液晶配向膜を形成し、得られた一対の基板を、液晶配向膜を内向きにスペーサーを介して対向させ、基板間に形成された隙間に液晶組成物を封入して液晶層を形成することによって得られる。本発明の液晶表示素子の製造には、必要に応じて基板に偏光フィルムを貼り付ける等のさらなる工程が含まれていてもよい。
本発明の液晶配向剤を原料として作製される液晶配向膜は、その原料であるポリマーを適宜選択することにより、種々の表示駆動方式の液晶表示素子に適用させることができる。
本発明の液晶表示素子は、前述した構成要素以外の要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素として、本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路等の、液晶表示素子に通常使用される構成要素が実装されてもよい。
以下、本発明を実施例により説明する。
最初に、実施例において用いられる酸無水物、ジアミンおよび溶剤を、化合物No.または略号と共に次に示す。なお、実施例においては容量の単位リットルを略号Lで示す。従って、ミリリットルはmLで示される。
<酸無水物>
酸無水物(H−1)
Figure 2014129348

酸無水物(S−1)
Figure 2014129348

酸無水物(S−6)
Figure 2014129348

酸無水物(S−48)
Figure 2014129348
<ジアミン>
ジアミン(I−1)
Figure 2014129348

ジアミン(I−2)
Figure 2014129348

ジアミン(2−1−1)
Figure 2014129348

ジアミン(2−1−66)
Figure 2014129348
ジアミン(3−7−1)(Y=n−ペンチル)
Figure 2014129348
ジアミン(4−1−4−1)(Y=n−ペンチル)
Figure 2014129348
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
[合成例1]
<ジアミン(I−1)(4−(3,5−ジアミノベンジル)フェノール)の合成>
特開2006−124371号公報に従って、4−(3,5−ジニトロベンジル)フェノールを合成した。この化合物10gと5%パラジウム活性炭1gをジメチルホルムアミド100mLに混合し、40℃で水素添加反応を行った(水素圧680kPa)。反応後、温度を室温まで冷却し、触媒をろ過により除去し、溶媒を減圧留去して目的物を得た。収量7.5g、(96%)。
融点;230.4−233.8℃
H NMR;9.15(s,1H), 6.98(d,2H,J=8.35Hz),6.72(d,2H,J=8.52Hz),5.66(s,3H),4.63(br s,4H)
[合成例2]
<ジアミン(I−2)(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル 3,5−ジアミノベンゾエート)の合成>
温度計、攪拌機および滴下漏斗を装着した2L−3つ口フラスコに、市販の水素化ホウ素ナトリウム6.4g(170mmol)を入れ、脱水テトラヒドロフラン500mLを加えた。溶液を5℃以下に冷却し、そこに市販の2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノン50g(230mmol)を脱水テトラヒドロフラン500mLに溶解させた溶液を滴下した。反応液を室温まで昇温させ、室温で8時間攪拌させた。攪拌後、得られた反応液を3M−塩酸1Lにあけ、酢酸エチル1Lで抽出した。有機層を純水1Lで2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。無水硫酸マグネシウムをろ過して除去した後、溶媒を減圧留去して、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノンを得た(収量46g、収率91%)。
温度計、攪拌機および滴下漏斗を装着した1L−3つ口フラスコに、市販の3,5−ジニトロベンゾイルクロライド47g(204mmol)を入れ、ジクロロメタン300mLを加えた。溶液を5℃以下に冷却し、そこに先の方法で得られた2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン45g(202mmol)およびトリエチルアミン42mL(303mmol)をジクロロメタン200mLに溶解させた溶液を滴下した。反応液を室温まで昇温させ、窒素雰囲気下、室温で3時間攪拌させた。攪拌後、反応液を純水1Lにあけ、ジクロロメタン500mLで抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液1Lで2回、次いで純水1Lで2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え、乾燥させた。無水硫酸マグネシウムをろ過して除去した後、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。得られた粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン)で分離精製し、エタノール−トルエン混合溶媒(容量比=1/1)から再結晶させ、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル 3,5−ジニトロベンゾエートを得た(収量46g、収率55%)。
1L−オートクレーブ用反応管に先の方法で得られた3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジニトロベンゾエート45g(108mmol)、Pd/C粉末4.5gを入れ、トルエン150mLおよびエタノール150mLを加えた。水素圧8kgf/cm、室温で12時間反応させた後、pd/C粉末をろ過にて除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。粗結晶をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=1:1)で分離精製し、トルエンで再結晶させ、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジアミノベンゾエートを得た(収量31g、収率81%)。
融点;203.1−206.5℃
H−NMR(ppm);1.44(18H,s,−CH)、3.74(4H,br・s、、−NH),5.11(1H,s,−OH),6.24(1H,m,arm・H),6.92(2H,m,arm・H)、7.26(2H,m,arm・H).
[合成例3]
<ポリアミック酸の合成1>
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた100mLの四つ口フラスコに、ジアミン(I−1)を2.55g、ジアミン(2−1−1)を0.591gおよび脱水NMP60.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで酸無水物(H−1)を1.30g、酸無水物(S−1)を1.75gを添加し、室温環境下で30時間反応させた。反応中に反応温度が上昇する場合は、反応温度を約70℃以下に抑えて反応させた。
得られた溶液に、BCを34.0gを加えて、濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PA1を調製した。得られたPA1の粘度は26.8mPa・sであった。また、生成したポリアミック酸の重量平均分子量は55,000であった。
ここで、ポリマーの重量平均分子量は、得られたポリマーを(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)希釈液でポリマー濃度が約1重量%になるように希釈し、クロマトパックC−R7A(島津製作所製)を用いて、上記希釈液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。なお、カラムはGF−7HQ(昭和電工株式会社製)を使用し、カラム温度50℃、流速0.6mL/minの条件で測定した。
[合成例4および5]
<ポリアミック酸の合成2および3>
表1に示した割合に酸無水物、ジアミンおよび溶剤の組成を変更した以外は、合成例1に準拠してポリアミック酸溶液(PA2、PA3)を調製した。
[合成例6]
<ポリアミック酸の合成4>
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた100mLの四つ口フラスコに、ジアミン(3−7−1)を1.17g、ジアミン(2−1−1)を2.14g、および脱水NMP60.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで酸無水物(H−1)を0.59g、酸無水物(S−1)を2.11gを添加し、室温環境下で30時間反応させた。反応中に反応温度が上昇する場合は、反応温度を約70℃以下に抑えて反応させた。
得られた溶液に、BCを34.0gを加えて、濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PA4)を調製した。得られたPA1の粘度は23.6mPa・sであった。また、生成したポリアミック酸の重量平均分子量は約36,000であった。このPA4は、PA1〜PA3とブレンドするためのポリマー溶液として用いた。
[比較合成例1および2]
表1に示したようにジアミンを変更した以外は合成例3に準じて、ジアミン(I)を使用しない濃度6重量%のポリアミック酸溶液CA1およびCA2を調製した。合成例3を含めて、原料組成および得られたポリアミック酸の重量平均分子量を表1にまとめた。
<表1>
Figure 2014129348
[実施例1]
合成例3で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例6で調製した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA4)を重量比2/8で混合した。得られた混合物を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤で4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤を用いて、下記の通り液晶表示素子を作製した。
一対のITO透明電極付き基板に、液晶配向剤AL1をスピンコート法で塗布し、80℃にて90秒間ホットプレート上で乾燥した。次いで、200℃に設定したオーブン中で60分間加熱焼成し、液晶配向膜が形成された基板を得た。配向膜が形成された面を内側にして、一方の基板には周辺を液晶の注入孔を残してエポキシ系接着剤を帯状に塗布し、もう一方の基板には4.25μmのギャップ材を散布し貼り合わせた。得られたセルに下記の液晶組成物Aを真空注入し、注入孔をUV硬化型の封止剤で封止した。最後に110℃で30分間加熱処理(アイソトロピック処理)し、VA型液晶表示素子を得た。
<液晶組成物A>

Figure 2014129348
得られた液晶表示素子について、下記の方法により電圧保持率、残留DCおよびプレチルト角の評価を行った。結果を表2に示す。
<電圧保持率(VHR)の測定>
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いて、液晶表示素子のVHRの測定を行った。測定条件は、ゲ−ト幅60μsec、周波数3Hz、波高±1Vであり、測定温度は60℃である。
<VHRの長期光信頼性の評価>
VA型液晶表示素子は家庭用テレビに使用される場合が多く、様々な環境で長時間使用されるため、長期間使用した場合の光焼付きが問題となり、長期光信頼性が求められる。長期光信頼性の評価は、点灯させた5000cd/mの液晶ディスプレイ用冷陰極管型バックライトの上に電圧保持率を測定した液晶表示素子を載せておき、2週間後に再度電圧保持率を測定することによりおこなった。バックライトの上に載せる前に測定した電圧保持率と2週間後の再測定との差が小さいほど長期光信頼性が高いといえる。
<誘電吸収法による残留DCの測定>
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いて、誘電吸収法による残留DCの測定を行った。測定条件は、セルに直流5Vを1時間印加後1秒ショートして30分間電位差を観察した。表には最大の残留DCと最小の残留DCを記載した。なお測定温度は60℃である。この値が小さいほど電気特性が良好といえる。
<プレチルト角の測定>
プレチルト角はクロスニコル下でサンプル回転角−透過率曲線を求めて透過率極小となるサンプル回転角の値より算出した。
[実施例2、3および比較例1〜3]
PA1に代えてPA2、PA3およびCA1をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして液晶表示素子を作成し、実施例1と同様に特性の評価を行った。また、PA1に代えてCA1を用い、PA4に代えてCA2を用いた場合(比較例2)について、他の条件は実施例1と同様にして液晶表示素子を作成し、実施例1と同様に特性の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
<表2>
Figure 2014129348
これらの結果から、ジアミン(I)を用いることにより電圧保持率向上および長期光信頼性改善の効果が得られることが分かる。また、残留DCも著しく抑制されている。そして、実施例1と実施例2および3との比較から、残基に3級アミノ基を有する酸無水物をジアミン(I)と組み合わせ使用することにより、長期光信頼性改善の効果がさらに高くなることが分かる。
[合成例7〜11および比較合成例3〜7]
酸無水物、ジアミンおよび溶剤の組成を変更した以外は、合成例3に準拠してポリアミック酸溶液(PA5〜PA9およびCA3〜CA7)を調製した。結果を表3に示す。
<表3>
Figure 2014129348
[実施例4]
表3に示したポリアミック酸溶液PA5を、NMP/BC(重量比1/1)の混合溶媒で4重量%になるように希釈して液晶配向剤とした。この液晶配向剤を2枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚70nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約5分間加熱乾燥した後、220℃にて10分間加熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
配向膜が形成された一方のガラス基板を、株式会社飯沼ゲージ製作所製のラビング処理装置を用いて、ラビング布(毛足長1.9mm:レーヨン)の毛足押し込み量0.40mm、ステージ移動速度を60mm/sec、ローラー回転速度を1000rpmの条件で、ラビング処理した。もう一方のガラス基板は、他方のラビング方向と直交するようにラビング方向を90°変えて同様にラビング処理した。これらの基板を、超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中120℃で30分間乾燥した。一方のガラス基板に7μmのギャップ材を散布した。
配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が直交するように対向配置させた後、エポキシ硬化剤でシールし、ギャップ7μmの90°ツイストセルを作製した。このセルに、下記の液晶組成物B100重量部に対して光学活性物質であるコレステリックノナノエート5重量部を加えて均質にした組成物を注入し、注入口を光硬化剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、TN型液晶表示素子を作製した。
<液晶組成物B>

Figure 2014129348
得られたTN型液晶表示素子について、下記の測定法によって電圧保持率、フリッカーフリー法による残留DCおよびプレチルト角の評価を行った。結果を表4に示す。
<電圧保持率(VHR)の測定>
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いて、液晶表示素子のVHRの測定を行った。測定条件は、ゲ−ト幅60μsec、周波数3Hz、波高±1Vであり、測定温度は60℃である。
<VHRの長期光信頼性の評価>
TN型液晶表示素子に関しても、実施例1と同様にVA型液晶表示素子と同様に長期光信頼性を評価した。
<フリッカーフリー法による残留DCの測定>
TN型液晶表示素子については、以下に示すフリッカーフリー法により残留DCを測定した。
偏光板を90度配置した(株)ニコン製偏光顕微鏡に治具を用いて装着したTN型液晶表示素子に、横河電機(株)製FG110型ファンクジョンジェネレーターを用いて30Hz、3Vの矩形波を印加した。そこに3Vの直流電圧を30分間重畳した後、直流電圧の重畳を終了してから、アジレント・テクノロジー社製DSO3062型オシロスコープに接続した浜松ホトニクス製光電子増倍管により、液晶表示素子の透過光量を検出した。オシロスコープに映し出された光量の変化を表す波形の変化が最も少なくなるようにファンクションジェネレーターのオフセット電圧を調節し、そのオフセット電圧をフリッカー消去電圧として記録した。表には最大の残留DCと最小の残留DCを記載した。この値が小さいほど電気特性が良好といえる。
<プレチルト角の測定>
TN型液晶表示素子のプレチルト角は、中央精機製液晶特性評価装置OMS−CA3型で測定した。
[実施例5〜7および比較例3〜5]
ポリアミック酸溶液PA6〜PA8およびCA3〜CA5のそれぞれについて、実施例4と同様にして液晶表示素子を作製し、評価した。結果を表4に示す。
<表4>
Figure 2014129348
表4のデータから、ジアミン(I)を用いて得られるポリアミック酸を使用することにより長期光信頼性が向上することが判る。そして、残留DCに関しても顕著な効果が見られる。プレチルト角は、TN型液晶表示素子に好適な値であり、OCB型液晶表示素子にも好適である。なお、実施例4〜6の光照射後の電圧保持率を実施例7と比較してみると、明らかに差が認められ、実施例4〜6の方がよい値を示している。これは残基の骨格中に2級アミノ基、3級アミノ基もしくは窒素含有複素環基を有する、ジアミンまたは酸無水物をジアミン(I)と組合せ使用することの、長期光信頼性に対する効果であると考えられる。
[実施例8および比較例6、7]
表3に記載のPA9、CA6およびCA7をそれぞれ単独で用いた他は実施例1と同様にして、VA型液晶表示素子を作製し、評価した。結果を表5に示す。
<表5>
Figure 2014129348
表5のデータから、前記のTN型液晶表示素子の場合と同様に、VA型液晶表示素子であってPA酸溶液を単独使用する場合においても、ジアミン(I)を用いることによって長期光信頼性向上と残留DC抑制に関する顕著な効果が得られることが分かる。
以上のように、本発明の液晶配向剤は、種々の表示駆動方式の液晶表示素子の液晶配向膜の形成に使用されることができる。そして、いずれの表示駆動方式の液晶表示素子においても、長期光信頼性が高く、かつ残留DCが抑制されている。
本発明により、残留DCが低く、電圧保持率の長期光信頼性にも優れた液晶表示素子を提供することができる。

Claims (1)

  1. 式(I−2)で表されるジアミン。

    Figure 2014129348
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