JP2014126480A - マイクロ電極及びマイクロ電極の製造方法 - Google Patents

マイクロ電極及びマイクロ電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度に優れ、容易に取り扱うことができ、かつ走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極及びその製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロ電極100は、導電性繊条120と、絶縁樹脂130と、を備える。導電性繊条120は、一端がリード線110に接続されている。絶縁樹脂130は、導電性繊条120とリード線110とを被覆する。導電性繊条120の他端が絶縁樹脂130より露出している先端部を有し、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ電極及びマイクロ電極の製造方法に関する。
微小な先端形状を有するマイクロ電極は、高感度の計測が可能であり、電極近傍の局所的な反応を観察できることから、電気化学の分野において幅広く利用されている。マイクロ電極では、電極先端外径がマイクロオーダーに形成されている。
マイクロ電極は主に、走査型電気化学顕微鏡の探針として、金属材料表面の電気化学反応の解析や細胞状態の評価等のために使われている。
マイクロ電極は通常、電流を検出するための金属細線と、それを絶縁する素材と、により構成されている。
マイクロ電極及びその製造方法について、いくつか報告がなされている。
特許文献1には、フッ素樹脂とガラスを組み合わせて電気的絶縁層を形成し、金属細線を絶縁被覆したマイクロ電極が記載されている。
また、特許文献2には、ガラス、テフロン(登録商標)、ポリイミド類、ポリカーボネート類等から選択される少なくとも1種の中空絶縁体と、中空絶縁体に封入された中空絶縁体より融点が低い金属線と、により構成されたマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、中空絶縁体(ガラスキャピラリー)の中空部分に溶融状態の金属(低融点はんだ)を吸引しながら充填させ、その後ガラスキャピラリーの一部を加熱して軟化させ(それに伴いガラスキャピラリーに充填された低融点はんだが溶融状態となる)、溶融状態となった低融点はんだとともにガラスキャピラリーを引き伸ばして切断することが記載されている。
また、特許文献3には、金属細線の表面をシロキサン結合(−SiO−)による共有結合によって化学吸着された単分子膜またはその積層膜またはそのポリマー膜先端により絶縁被覆したマイクロ電極が記載されている。
また、非特許文献1には、電流を検出する白金線と、これを電気的に絶縁するガラス管と、からなるマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、直径数μmの白金線を内径1mmの片方が閉じられているガラス管に入れ、他方のガラス管の口を真空ポンプにつなぎ、管内部を真空にして、ガラス管の回りにヒーター線を巻き、これによってガラス管を溶融して白金線を封入し、その後このガラス管の先端を、白金線が表面にでてくるまで磨き、次に、白金線の周りのガラス壁を磨いて、このガラス管の先端を尖らせることが記載されている。
また、非特許文献2にも、白金線と、これを電気的に絶縁するガラス管と、からなるマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、白金線の一端をリード線と接続し、先鋭化したガラスキャピラリーに入れ、ガラス管の周りをヒーター線で加熱し、これによってガラス管を溶融して白金線を封入し、その後、このガラス管の先端を、白金が表面に出てくるまで磨くことが記載されている。
また、非特許文献3には、電流を検出するカーボン線と、これを電気的に絶縁するエポキシ樹脂及びガラス管と、からなるマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、カーボン線の一端をリード線と接続し、先鋭化したガラスキャピラリーに入れ、エポキシ樹脂に先端を浸漬することでカーボン線とガラスの空間に樹脂を充填した後、加熱して硬化させ、その後このガラス管の先端を、カーボンが表面に出てくるまで磨くことが記載されている。
また、非特許文献4には、電流を検出するカーボンと、これを電気的に絶縁するポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートと、からなるマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、ポリエチレンテレフタレートフィルムに形成した流路にカーボンインクを充填し、加熱後にポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート製のラミネートフィルムを重ねて、カーボンを封入し、その後、フィルムの電極部分を0.5−1mmにカットすることが記載されている。
また、非特許文献5には、電流を検出するカーボン線と、これを電気的に絶縁するpoly(acrylic−carboxylic acid)と、からなるマイクロ電極が記載されている。また、その製造方法として、カーボン線の一端をリード線と接続し、電気塗装ペイント液に浸漬し、カーボン線の周囲にらせん状の白金線を配置し、カーボン線と白金線の間に電圧をかけることでペイント液をカーボン線に付着させ、加熱して固化させ、この作業を繰り返すことでカーボン線を封入し、その後、絶縁された先端を切断することが記載されている。
特開2005−241506号公報 特開2005−227145号公報 特開平05−296967号公報
Allen J.Bard et al.,Anal.Chem.,61,1989,132 Tomokazu Matsue et al.,BBRC,197,1993,1283 Tomoyuki Yasukawa et al.,Biophysical Journal,76,1999,1129 Fernando Cortes−Salazar et al.,Anal.Chem.,81,2009,6889 Albert Schulte and Robert H.Chow,Anal.Chem.,68,1996,3054
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1−3に記載のマイクロ電極では、絶縁材料としてガラスが用いられているため、物理的な接触により、マイクロ電極の先端が破損しやすいという難点を有していた。また、特許文献2に記載のマイクロ電極では、絶縁材料としてガラスを用いる場合、同様に物理的な接触によりマイクロ電極の先端が破損しやすいという難点を有していた。そして、マイクロ電極を走査型電気化学顕微鏡の探針として用いる場合には、対象物に応じて(マイクロ電極に用いられる)金属の種類を選択する必要があるが、特許文献2に記載のマイクロ電極では、使用可能な金属線が中空絶縁体より融点の低い金属に限られるため、対象物に応じて適切な金属を選択することが困難であり、走査型電気化学顕微鏡の探針としての適用性に関しては限界があった。また、非特許文献4に記載のマイクロ電極では、絶縁材料としてガラスではなくポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いているが、このような樹脂では、微小な先端形状を形成させること自体が困難であった。また、絶縁材料としてガラス以外の材料を用いた特許文献3及び非特許文献5に記載のマイクロ電極では、マイクロ電極の先端を先鋭化させることができたものの、マイクロ電極の先端部の強度が十分であるとはいえず、物理的な接触による先端の破損を避けることが困難であったため、取り扱いに熟練を要するという課題を残していた。また、マイクロ電極の先端が破損した場合には、新しい電極に交換しなければならないため、手間とコストがかかっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機械的強度に優れ、容易に取り扱うことができ、かつ走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るマイクロ電極は、
一端がリード線に接続された導電性繊条と、
前記導電性繊条と前記リード線とを被覆する絶縁樹脂と、
を備え、
前記導電性繊条の他端が前記絶縁樹脂より露出している先端部を有する、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いられる。
前記絶縁樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、及びポリアリレートからなる群より少なくとも1つ選択されてもよい。
前記絶縁樹脂は、ポリエーテルエーテルケトンであってもよい。
前記先端部の先端外径は、200μm以下であってもよい。
前記マイクロ電極において、前記先端部に向かってテーパ状に形成されていてもよい。
前記導電性繊条の断面の直径は、50μm以下であってもよい。
前記導電性繊条は、白金、金、ロジウム、イリジウム、銅、銀、タングステン、ステンレス及びカーボンからなる群より少なくとも1つ選択されてもよい。
本発明の第2の観点に係るマイクロ電極の製造方法は、
導電性繊条の一端にリード線を接続する工程と、
キャピラリー状の絶縁樹脂の内部に前記リード線に接続された前記導電性繊条を挿入する工程と、
前記絶縁樹脂を加熱して引き延ばすことにより、前記絶縁樹脂を前記導電性繊条の他端側に向かってテーパ状に形成させ、前記リード線に接続された前記導電性繊条に前記絶縁樹脂を被覆させる工程と、
前記導電性繊条の他端側において前記絶縁樹脂を加熱することで、前記絶縁樹脂に前記導電性繊条を封入する工程と、
前記導電性繊条の他端側において前記絶縁樹脂を研磨することで、前記導電性繊条の他端を前記絶縁樹脂から露出させる工程と、
を含む。
本発明によれば、機械的強度に優れ、容易に取り扱うことができ、かつ走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るマイクロ電極を示す図である。(a)は、マイクロ電極の先端部付近を示す図、(b)は、マイクロ電極の先端部を拡大して示した模式図、(c)は、マイクロ電極の先端を、(b)の矢印Xから見た模式図である。 本発明の一実施形態に係るマイクロ電極の作製工程を示す模式図である。(a)は、導電性繊条の一端にリード線を接続する工程を示す模式図であり、(b)は、キャピラリー状の絶縁樹脂の内部の空洞部分にリード線に接続された導電性繊条を挿入し、絶縁樹脂をY方向に引き延ばす工程を示す模式図であり、(c)は、絶縁樹脂をテーパ状に形成させ、リード線に接続された導電性繊条に絶縁樹脂を密着させ、被覆させる工程を示す模式図であり、(d)は、絶縁樹脂の内部に導電性繊条を封入する工程を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るマイクロ電極の写真の図である。(a)は、マイクロ電極を全体的に示す写真の図、(b)は、マイクロ電極の先端を、(a)の矢印Zから見た写真の図である。 本発明の一実施形態に係るマイクロ電極のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るマイクロ電極、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)、及びRG値=2の場合の計算値の電流応答アプローチカーブを示す図である。 物理的接触前後のマイクロ電極のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す図である。(a)は、マイクロ電極先端への物理的接触を説明する図であり、(b)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)の物理的接触前後のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極の物理的接触前後のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す図である。 物理的接触後のマイクロ電極の状態を示す写真の図である。(a)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)を示す写真の図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極を示す写真の図である。 ガラスの凹凸の形状イメージを示す図である。(a)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)で測定した形状イメージを示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極で測定した形状イメージを示す図であり、(c)は、(a),(b)の白線部分の1ラインスキャンによる電気応答を示す図である。 生細胞の形状イメージを示す図である。(a)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)で測定した形状イメージを示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極で測定した形状イメージを示す図である。 拍動する細胞の拍動解析及び酸素消費量解析を示す図である。(a)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)で測定した電流応答を示す図であり、(b)は、白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(比較例)で測定した細胞上の酸素濃度分布を示す図あり、(c)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極で測定した電流応答を示す図であり、(d)は、本発明の一実施形態に係るマイクロ電極で測定した細胞上の酸素濃度分布を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1.マイクロ電極)
本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の詳細について、以下に説明する。
マイクロ電極100は、図1(a)に示すように、導電性繊条120と、絶縁樹脂130と、リード線110と、を備える。
導電性繊条120は、マイクロ電極100の電気伝導部として、マイクロ電極100の先端部近傍の局所的な電流を検出する役割を果たしている。図1(a)に示すように、導電性繊条120の一端は、リード線110に接続されており、リード線110の導電性繊条120が接続された側とは反対側には、検出装置(図示せず)が接続されている。導電性繊条120とリード線110とは、後述する絶縁樹脂130の内部において電気的に接続されている。
導電性繊条120の素材は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、銀(Ag)、タングステン(W)、ステンレス及びカーボンからなる群より少なくとも1つ選択され、これらの2つ以上からなる合金であってもよい。走査型電気化学顕微鏡の探針については、対象物に応じて金属の種類が選択されるが(例えば、細胞周辺の酸素濃度を測定する場合には白金を選択する等)、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100では、多種の金属の中から対象物に応じて適切な金属を選択することができるため、走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有する。なお、電気伝導性を有し、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いられ得る金属であれば、導電性繊条120の素材として適宜選択され得る。
絶縁樹脂130は、導電性繊条120を電気的に絶縁する役割を果たしている。図1(a)に示すように、絶縁樹脂130は、導電性繊条120と、リード線110と、を被覆している。
絶縁樹脂130の素材としては、電気的絶縁性を有し、固化した状態で機械的強度に優れ、弾力性を有する熱可塑性樹脂が用いられる。具体的は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、及びポリアリレートからなる群より少なくとも1つ選択される樹脂であり、これらの2つ以上からなる樹脂であってもよい。このような樹脂は、熱可塑性樹脂であるため、加工性に優れる。また、固化した状態で機械的強度に優れるため、マイクロ電極100を走査型電気化学顕微鏡の探針として用いて、固体表面に近接させて測定を行う場合に、固体表面への物理的接触によるマイクロ電極100の先端付近の破損を回避することができる。さらに、固化した状態で弾力性を有するため、固体表面への物理的接触が生じた場合でも、ガラスのような硬質の素材とは異なり柔軟に変形することができるため、破損する可能性が低く、丈夫で、取り扱いが容易である。なお、絶縁樹脂130の素材は、電気的絶縁性を有し、固化した状態で機械的強度に優れ、弾力性を有する熱可塑性樹脂であれば、適宜選択され得る。
絶縁樹脂130の素材としては、耐薬品性(有機溶媒、酸、アルカリ等)に優れ、温度変化に強く、市場において入手しやすいという観点から、PEEKを好適に用いることができる。なお、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)及びポリカーボネートは、機械的強度の観点から、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100に用いる絶縁樹脂130の素材としては好ましくない。
導電性繊条120の他端は、図1(b),(c)に示すように、マイクロ電極100の先端部110aにおいて、絶縁樹脂130より露出している。導電性繊条120が露出していることで、導電性繊条120は、対象物(細胞、電池材料等)の表面付近で生じている電気的反応を検出することができる。
マイクロ電極100の先端部110aの先端外径は、例えば、200μm以下である。マイクロ電極100の先端外径が1〜200μmの場合、走査型電気化学顕微鏡の探針として利用した場合の解像度が高くなる。また、より解像度の高い探針とするために、マイクロ電極100の先端部110aの先端外径は、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1〜20μmである。
マイクロ電極100の電流応答は、導電性繊条120の断面における半径(a)と、マイクロ電極100の先端部の半径(rg)との比(RG値=rg/a)に依存し、RG値が小さいほど分解能が高くなる。分解能の高いマイクロ電極100を実現するために、例えば、RG値は1〜10であり、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜2である。例えば、マイクロ電極100の先端外径が100μmであり(すなわち、rg=50)、導電性繊条120の断面における直径が50μm(すなわち、a=25)である場合、RG値は2となる。RG値を小さくする観点から、導電性繊条120の断面における直径は、例えば、0.2〜50μm、好ましくは0.2〜30μm、より好ましくは0.2〜10μmである。
マイクロ電極100の先端部分の形状は、例えば、図1(a)に示すように、先端部110aに向かって細くなるように、テーパ状に形成されている。テーパ状とすることで、先端部110aの機械的強度を維持しつつ、マイクロ電極100の先端外径を小さくする(すなわち、マイクロ電極100の解像度を高くする)ことができる。なお、マイクロ電極100の先端部110aの機械的強度を保つことができ、先端外径を小さくすることのできる先端部分の形状であれば、テーパ状の形状に限らず採用され得る。
本発明の実施形態に係るマイクロ電極100は、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いられる。本発明の実施形態に係るマイクロ電極100は、先端外径がマイクロオーダーの電極であり、従来の先端外径がミリオーダーの電極(溶液の性質の評価等に用いられる)とは異なり、解像度が高く、溶液中の電極近傍の局所的な反応を検出することができる。主に、細胞の機能評価(ウシ胚の酸素消費量の評価等)、細胞の形状イメージ測定、動きを有する細胞(心筋細胞等)の拍動等の解析、電池表面の劣化の評価等に用いられ得る。本発明の実施形態に係るマイクロ電極100は、機械的強度に優れるため、探針の位置合わせの際などに、固体の対象物に物理的に接触した場合でも、破損する可能性が低く、熟練者でなくても、容易に取り扱うことができる。また、破損する可能性が低いことから、電極交換の手間とコストを削減することができる。
特に、先端外径が1〜200μmであり、導電性繊条120の断面の直径が0.2〜50μmであり、先端部110aの形状がテーパ状となっているマイクロ電極100では、解像度が高くなり、かつ、より機械的強度に優れ、容易に取り扱うことができる。
(2.マイクロ電極の製造方法)
本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法の詳細について、以下に説明する。
まず、図2(a)に示すように、導電性繊条120の一端に、例えばスポット溶接や銀ペーストによりリード線110を接続する。用いられる導電性繊条120の素材や直径については、前述の通りである。
次に、図2(b)に示すように、キャピラリー状の絶縁樹脂130の内部の空洞部分にリード線に接続された導電性繊条120を挿入する。キャピラリー状の絶縁樹脂130については、例えば、外径0.8〜3.0mm、内径0.2〜1.5mmであり、内部に空洞を有する筒状の形状をしており、その素材については、後述の通りである。
次に、図2(b)に示すように、導電性繊条120を挿入した箇所の絶縁樹脂130をヒーター140により絶縁樹脂130の“ガラス転移温度”以上“融点”未満の温度に加熱し、柔らかくなった絶縁樹脂130を、導電性繊条120の他端側に向かって、すなわち導電性繊条120のリード線110が接続された側とは反対方向(図2(b)、矢印Yの方向)に引き延ばす。こうすることで、図2(c)に示すように、マイクロ電極100の先端部分の形状は、先端部110aに向かって細くなるように、テーパ状に形成されるとともに、導電性繊条120に絶縁樹脂130が密着し、リード線110に接続された導電性繊条120が絶縁樹脂130により被覆される。なお、絶縁樹脂130を加熱して引き延ばす際には、プラー(例えば、ナリシゲ社製のキャピラリープラー)を用いて、加熱温度及び(引き延ばす際の)張力を制御しながら絶縁樹脂130を引き延ばしてもよい。
次に、図2(d)に示すように、マイクロ電極100の先端部110a(導電性繊条120の他端側)をヒーター150により絶縁樹脂130の“ガラス転移温度”以上“融点”未満の温度に加熱し、柔らかくなった絶縁樹脂130の内部に導電性繊条120を封入する。こうすることで、マイクロ電極100の先端部分の導電性繊条120に絶縁樹脂130を高度に密着させることができる。
最後に絶縁樹脂130の先端(導電性繊条120の他端側)を研磨することで、導電性繊条120の他端を絶縁樹脂130から露出させて、完成となる。
なお、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法においては、キャピラリー状の絶縁樹脂130の素材として、“ガラス転移温度”以上“融点”未満の温度に加熱することで、細長く引き延ばすことのできる熱可塑性樹脂が用いられる。例えば、前述同様、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、及びポリアリレートからなる群より少なくとも1つ選択される樹脂又はこれらの2つ以上からなる樹脂であってもよい。なお、絶縁樹脂130の素材としては、前述の通り、耐薬品性に優れ、温度変化に強く、市場において入手しやすいという観点から、PEEKを好適に用いることができる。一方、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)は、ガラス転移温度以上に加熱して引き延ばすとちぎれやすいため、好ましくない。また、ポリイミド及びポリカーボネートは、外径0.8〜3.0mm、内径0.2〜1.5mmキャピラリー状に加工することが困難であるため、好ましくない。
また、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法に用いられるキャピラリー状の絶縁樹脂130については、樹脂単独では内径を制御して細長く、直線状に引き延ばすことが困難であるが、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、導電性繊条120をキャピラリーの内部に挿入してから絶縁樹脂130を加熱溶融して引き延ばすため、導電性繊条120が芯となって機械的強度を向上させることができ、絶縁樹脂130を内径を制御して細長く、直線状に引き延ばすことが可能となる。また、絶縁樹脂130は、どのような種類の導電性繊条120であっても、良好に密着し得るため、導電性繊条120の金属の種類を問わず、優れた電気絶縁性を実現できる。走査型電気化学顕微鏡の探針については、前述の通り、対象物に応じて金属の種類が選択されるが、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、さまざまな種類の金属が選択可能であるため、走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極100を製造できる。
また、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法においては、キャピラリー状の絶縁樹脂130の素材として、導電性繊条120の融点よりも低い温度のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が用いられ得る。このような素材の絶縁樹脂130を用いることで、絶縁樹脂130を加熱して引き延ばす際に、(導電性繊条120の融点は絶縁樹脂130のガラス転移温度よりも高いため)導電性繊条120が溶融して変形等することなく、絶縁樹脂130だけを引き延ばすことができる。その結果、マイクロ電極100の先端部分を効率的にテーパ状に加工することができるとともに、マイクロ電極100の先端外径を容易に制御することができ、効率的に解像度の高いマイクロ電極100を製造することができる。また、導電性繊条120の断面の直径が変化することなく、マイクロ電極100の先端外径を制御することができるため、マイクロ電極100のRG値を効率的に制御することができる。
また、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法において用いられる導電性繊条120の金属の種類については、前述の通り、絶縁樹脂130のガラス転移温度よりも高い融点を有する金属を選択することができる。絶縁樹脂130のガラス転移温度よりも低い融点を有する金属よりも、絶縁樹脂130のガラス転移温度よりも高い融点を有する金属のほうが種類が多いため、多種の金属から選択することができる。本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法によれば、この観点からも、多種の金属の中から対象物に応じて適切な金属を選択することができるため、走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極100を製造することができる。
また、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法によれば、導電性繊条120をキャピラリー状の絶縁樹脂130の内部の空洞部分に挿入した状態で、絶縁樹脂130を引き延ばして、マイクロ電極100の先端部分をテーパ状に加工する。このため、導電性繊条120の周囲に絶縁樹脂130の膜を形成させるような方法とは異なり、導電性繊条120を被覆する絶縁樹脂130の厚さを薄くすることができる。その結果、マイクロ電極100の先端外径を小さくすることができるため、解像度の高いマイクロ電極100を作製することができる。
また、本発明の実施形態に係るマイクロ電極100の製造方法によれば、前述のような固化した状態で機械的強度に優れ、弾力性を有する熱可塑性樹脂を用いるため、破損する可能性が低く、丈夫で、取り扱いが容易であるマイクロ電極100を作製することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(実施態様1:白金線によるマイクロ電極の作製)
まず、白金線(半径5μm、ニラコ社)(以下、Pt細線という)の一端に、スポットウェルダー(MH−21AC、MT−510AC、MEA−100A、ミヤチテクノス社)を用いて、銅製のリード線をスポット溶接した(図2(a))。それを、PEEK製のキャピラリー(PEEKマイクロチューブ、外径0.8mm、内径0.3mm、アズワン社)(以下、PEEK樹脂という)の空洞部分に挿入し(図2(b))、キャピラリープラー(PM−3、ナリシゲ社)を用いて、Pt細線を被覆している辺りのPEEK樹脂を15秒間加熱(250〜300℃)した(図2(c))。その後、キャピラリープラーに表示されるMAGNET SUB(始めにキャピラリーを徐々に引っ張る弱い張力を表す数値(マグネットの最大出力を100とした値))の設定値を1.7から2.5に上げることで、PEEK樹脂を、リード線が接続されている側とは反対方向に(図2(b)、矢印Yの方向)、水平方向に30mm引き延ばし、テーパ状に形成した(図2(c))。この時、キャピラリープラーに表示されるMAGNET MAIN(キャピラリーを細長く引き延ばすための張力を表す数値(マグネットの最大出力を100とした値))の設定値は、2.8とした。
次に、マイクロフォージ(MF−900、ナリシゲ社)を用いて、マイクロ電極の先端部分のPt線にPEEK樹脂を高度に密着させる目的で、マイクロ電極の先端部分を加熱(250〜300℃)し、Pt細線をPEEK樹脂に封入した(図2(d))。最後に、マイクログラインダー(EG−400、ナリシゲ社)を用いてマイクロ電極の先端を研磨することで、PEEK樹脂からPt細線を露出させて先端部とし、マイクロ電極を完成させた。
このように作製したマイクロ電極の外観の写真を、図3(a)に示す。また、マイクロ電極の先端の、図3(a)の矢印Zの方向から見た写真を図3(b)(デジタルマイクロスコープ(VHX−200、キーエンス社)を利用して撮影した)に示す。図3(b)より、マイクロ電極の先端の断面においてPt細線がPEEK樹脂より露出し、Pt細線の周りがPEEK樹脂により被覆されていることがわかる。また、作製されたマイクロ電極の先端外径は20μmであったため、RG値は2であった。
(実施態様2:白金ロジウム合金線によるマイクロ電極)
前述のPt細線の代わりに、白金ロジウム合金線(半径10μm、ニラコ社)を用いて、前述と同様の方法でマイクロ電極を作製した。
(実施態様3:金線によるマイクロ電極)
前述のPt細線の代わりに、金線(半径12.5μm、ニラコ社)を用いて、前述と同様の方法でマイクロ電極を作製した。
〔実施例2〕
(電流応答の評価)
実施例1で作製した3種類のマイクロ電極(実施態様1〜3)について、電流応答を評価した。
実施例1で作製した3種類のマイクロ電極について、4mM K[Fe(CN)]、100mM KCl溶液中のサイクリックボルタモグラム(CV)(掃引速度:20mV/s)を測定した。
電気化学測定には、ポテンショスタット(HA1010M2B、北斗電工社)、PIEZO駆動ポジショニングシステム(ピーアイジャパン社)、LabVIEW(ナショナルインスツルメンツ社)、及びデータ収録ボード(ナショナルインスツルメンツ社)を組み合わせたシステムを利用した(Yu Hirano,et.al.,Anal.Chem.,80,2008,9349)。
溶存するK[Fe(CN)]をマイクロ電極で酸化する場合、基板から十分離れていると、電極表面上に球状の定常拡散層が形成され、電気化学活性種の濃度に比例した定常電流応答が得られる。電子移動速度が十分速い速度で起きている場合、この電流は、下記の式(1)で表される。
bulk=4nFDaC・・・(1)
式(1)中、nは反応電子数、Fはファラデー定数、Dは拡散係数、aは電極半径、Cは濃度である。
結果を図4に示す。Pt細線によるマイクロ電極のCVを(a)に、白金ロジウム合金線によるマイクロ電極のCVを(b)に、金線によるマイクロ電極のCVを(c)に示す。
Pt細線(半径5μm)によるマイクロ電極のCVの定常電流応答は、式(1)において半径5μmの電極で計算される電流値と一致した(図4(a))。このことから、マイクロ電極中のPt細線が、マイクロ電極特有の電流応答をすることが示された。
白金ロジウム合金線(半径10μm)によるマイクロ電極のCVの定常電流応答は、式(1)において半径10μmの電極で計算される電流値と一致した(図4(b))。このことから、マイクロ電極中の白金ロジウム合金線が、マイクロ電極特有の電流応答をすることが示された。
金線(半径12.5μm)によるマイクロ電極のCVの定常電流応答は、式(1)において半径12.5μmの電極で計算される電流値と一致した(図4(c))。このことから、マイクロ電極中の金線が、マイクロ電極特有の電流応答をすることが示された。
以上より、実施例1で作製した3種類のマイクロ電極(実施態様1〜3)は、導電性繊条の素材が異なっても、いずれもマイクロ電極特有の電流応答をするため、走査型電気化学顕微鏡の探針として用い得ることが示された。
〔実施例3〕
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極を、走査型電気化学顕微鏡の探針として用い、固体表面近傍での電流応答を評価した。
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極(以下、本実施例において“PEEK電極”という)と、比較例である、半径5μmの白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(RG=2)(以下、“ガラス電極”という)と、を用いた。4mM K[Fe(CN)]、100mM KCl溶液中で、PEEK電極又はガラス電極に0.5V(vs.Ag/AgCl)を印加し、走査速度一定(2μm/s)で絶縁基板表面に近づけ、電流応答を測定した。
マイクロ電極で観察される電気化学活性種の酸化又は還元に伴う電流値は、電極先端と絶縁基板との間の距離に依存し、絶縁基板上では電極を絶縁基板に近づけると電流値は減少する。また、この時の距離の変化に対応した電流応答は、電極形状に応じて変化し、計算で求めることができる(Yuanhua Shao and Michael V.Mirkin,J.Phys.Chem.B,102,1998,9915.)。
結果を図5に示す。PEEK電極による電流応答のグラフは実線、ガラス電極による電流応答のグラフは点線、及びRG値=2の場合の電流応答の計算値のカーブは破線で表される。PEEK電極(実線)では、ガラス電極(点線)と同様の電流応答が得られ、それはRG値=2の場合の計算値のカーブ(破線)と一致していた。
以上より、PEEK電極は、走査型電気化学顕微鏡の探針として利用可能であることが示された。
〔実施例4〕
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極を用いて、電極先端の接触前後の電流応答を評価した。
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極(以下、本実施例において“PEEK電極”という)と、比較例である、半径5μmの白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(以下、“ガラス電極”という)と、を用いた。PEEK電極とガラス電極とを、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いて、前述のように電位を印加しながら絶縁基板表面に近づけ、電極先端が接触(電流値がほぼ0となった位置)した後、さらに100μm近づけて、初期位置まで戻した(図6(a))。接触前後において、前述同様の方法により、CV測定を行った。
図6(b)に、ガラス電極の先端を物理的に接触した前後のCVを示し、図6(c)に、PEEK電極の先端を物理的に接触した前後のCVを示す。図6(b),(c)において、実線は接触前のCV、破線は接触後のCVを表す。比較例のガラス電極(図6(b))では、接触後(破線)に電流値が数倍になっている。接触後(破線)では、前述の式(1)で表されるマイクロ電極特有の電流応答ではなくなっており、電極が破損していることが示された。一方、PEEK電極(図6(c))では、接触前後で同じ電気化学応答がみられた。このことから、PEEK電極は、物理的な接触があっても破損せず、機械的強度が高いことが示された。
図7(a)に、比較例のガラス電極の先端の物理的接触後の写真、図7(b)に、PEEK電極の先端の物理的接触後の写真を示す(図7(a),図7(b)とも、デジタルマイクロスコープ(VHX−200、キーエンス社)を利用して撮影した)。ガラス電極(図7(a))では、物理的接触後に先端が折れており、電極が破損していることが示された。一方、PEEK電極(図7(b))では、物理的接触後でも先端の形状に変化は見られなかった。これらのことから、PEEK電極は、物理的な接触があっても破損せず、機械的強度が高いことが確認された。
〔実施例5〕
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極を走査型電気化学顕微鏡の探針として用いて、絶縁基板を対象とした形状イメージ測定を行った。
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極(以下、本実施例において“PEEK電極”という)と、比較例である、半径5μmの白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(以下、“ガラス電極”という)と、を用いた。4mM K[Fe(CN)]、100 mM KCl溶液中で、PEEK電極又はガラス電極に0.5V(vs.Ag/AgCl)を印加した状態で、線状の凹みを有する絶縁基板(ガラス)表面から9μmの位置に、電極先端を配置した。一定速度(20μm/s)で水平方向に電極を走査して、形状イメージを得た。その際、絶縁基板表面の線状の凹みを横切るように電極を走査した。
図8(a)に、比較例のガラス電極による形状イメージ、図8(b)にPEEK電極による形状イメージを示す。ガラス電極(図8(a))とPEEK電極(図8(b))とで、同様の形状イメージが得られた。
また、図8(a),(b)の中央部付近の横方向の白線における電気応答(1ラインスキャン)を、前述と同様の方法により測定した。その結果を、図8(c)に示す。図8(c)において、実線はPEEK電極、破線はガラス電極の電気応答を表す。PEEK電極(実線)とガラス電極(破線)とで、電気応答が一致していることが示された。
以上より、PEEK電極は、走査型電気化学顕微鏡の探針として、絶縁基板を対象とした形状イメージ測定に利用可能であることが示された。
〔実施例6〕
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極を走査型電気化学顕微鏡の探針として用いて、生細胞を対象とした形状イメージ測定を行った。
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極(以下、本実施例において“PEEK電極”という)と、比較例である、半径5μmの白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(以下、“ガラス電極”という)と、を用いた。1mM K[Fe(CN)]を含む無血清培地溶液中で、PEEK電極又はガラス電極に0.5V(vs.Ag/AgCl)を印加した状態で、電極を走査して、HepG2(ヒト肝がん細胞、理化学研究所バイオリソースセンター)の形状イメージを測定した。なお、マイクロ電極で観察される親水性の電気化学活性種の酸化又は還元に伴う電流値は、電極先端と細胞との距離に依存し、絶縁基板と同様に形状イメージを測定できる。
図9(a)に、比較例のガラス電極による形状イメージ、図9(b)にPEEK電極による形状イメージを示す。ガラス電極(図9(a))とPEEK電極(図9(b))とで、同様の形状イメージが得られた。
以上より、PEEK電極は、走査型電気化学顕微鏡の探針として、生細胞を対象とした形状イメージ測定に利用可能であることが示された。
〔実施例7〕
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極を走査型電気化学顕微鏡の探針として用いて、心筋細胞の拍動の解析、及び細胞の酸素消費量の解析を行った。
実施例1で作製したPt細線によるマイクロ電極(以下、本実施例において“PEEK電極”という)と、比較例である、半径5μmの白金線をガラスで絶縁したマイクロ電極(以下、“ガラス電極”という)と、を用いた。
1mM K[Fe(CN)]を含む無血清培地溶液中で、PEEK電極又はガラス電極に0.5V(vs.Ag/AgCl)を印加した状態で、心筋細胞(拍動する細胞)(プライマリーセル社)又は繊維芽細胞(拍動しない細胞)(プライマリーセル社)の近傍で電極を走査して、拍動イメージを測定した。なお、心筋細胞は自律的な拍動に伴い、細胞高さが変化するため、細胞表面近傍にマイクロ電極を配置すると、拍動に伴い電極と細胞との間の距離が変化し、規則的な電流変化が観察される。
図10(a)に、比較例のガラス電極により測定した、拍動による形状変化に伴う電流応答を、図10(c)に、PEEK電極により測定した、拍動による形状変化に伴う電流応答を示す。図10(a),図10(c)において、実線は心筋細胞の電流応答、破線は繊維芽細胞の電流応答である。PEEK電極(図10(c))では、比較例のガラス電極(図10(a))と同様の心筋細胞の拍動イメージが得られた。
また、前述と同様に心筋細胞又は繊維芽細胞の近傍でPEEK電極又はガラス電極を走査して、細胞近傍の酸素濃度を測定した。なお、酸素還元電流から電極先端付近の局所的な酸素濃度を測定することができるため、この酸素濃度を測定しながら細胞表面に向かって電極を走査することで、細胞の酸素消費速度を測定できる(Hitoshi Shiku,et.al.,Anal.Chem.,73,2001,3751.)。また、細胞の酸素消費量が高いほど、細胞活性が高いことを示す。
図10(b)に、比較例のガラス電極により測定した、細胞上の酸素濃度分布を、図10(d)に、PEEK電極により測定した、細胞上の酸素濃度分布をグラフにて示す。図10(b),図10(d)において、実線は心筋細胞のグラフ、破線は繊維芽細胞のグラフである。PEEK電極(図10(d))では、比較例のガラス電極(図10(b))と同様の酸素濃度分布のグラフが得られ、心筋細胞上の酸素濃度が繊維芽細胞上のそれに比して低く、心筋細胞では酸素消費量が多いことが示された。
以上より、PEEK電極は、走査型電気化学顕微鏡の探針として、心筋細胞のような動きを持つ細胞の拍動の解析、及び細胞の酸素消費量の解析に利用可能であることが示された。
以上説明したように、本実施例によれば、機械的強度に優れ、容易に取り扱うことができ、かつ走査型電気化学顕微鏡の探針として良好な適用性を有するマイクロ電極及びその製造方法を提供することができる。
本発明によるマイクロ電極は、走査型電気化学顕微鏡の探針として、細胞の機能評価(ウシ胚の酸素消費量の評価等)、細胞の形状イメージ測定、動きを有する細胞(心筋細胞等)の拍動等の解析、電池表面の劣化の評価、その他学術及び研究用途において用いられ得る。
100 マイクロ電極
110a 先端部
110 リード線
120 導電性繊条
130 絶縁樹脂
140,150 ヒーター

Claims (8)

  1. 一端がリード線に接続された導電性繊条と、
    前記導電性繊条と前記リード線とを被覆する絶縁樹脂と、
    を備え、
    前記導電性繊条の他端が前記絶縁樹脂より露出している先端部を有する、走査型電気化学顕微鏡の探針として用いられるマイクロ電極。
  2. 前記絶縁樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、及びポリアリレートからなる群より少なくとも1つ選択される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ電極。
  3. 前記絶縁樹脂は、ポリエーテルエーテルケトンである、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ電極。
  4. 前記先端部の先端外径は、200μm以下である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマイクロ電極。
  5. 前記先端部に向かってテーパ状に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマイクロ電極。
  6. 前記導電性繊条の断面の直径は、50μm以下である、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマイクロ電極。
  7. 前記導電性繊条は、白金、金、ロジウム、イリジウム、銅、銀、タングステン、ステンレス及びカーボンからなる群より少なくとも1つ選択される、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のマイクロ電極。
  8. 導電性繊条の一端にリード線を接続する工程と、
    キャピラリー状の絶縁樹脂の内部に前記リード線に接続された前記導電性繊条を挿入する工程と、
    前記絶縁樹脂を加熱して引き延ばすことにより、前記絶縁樹脂を前記導電性繊条の他端側に向かってテーパ状に形成させ、前記リード線に接続された前記導電性繊条に前記絶縁樹脂を被覆させる工程と、
    前記導電性繊条の他端側において前記絶縁樹脂を加熱することで、前記絶縁樹脂に前記導電性繊条を封入する工程と、
    前記導電性繊条の他端側において前記絶縁樹脂を研磨することで、前記導電性繊条の他端を前記絶縁樹脂から露出させる工程と、
    を含む、マイクロ電極の製造方法。
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