JP2014123520A - ガレート複合酸化物およびそれを用いた固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

ガレート複合酸化物およびそれを用いた固体酸化物形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高い酸素イオン伝導性を有し、高温における化学的安定性の高いAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物とそれを用いた固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】一般式A Ga0.8Mg0.23−z・・・(1)
(ただし、Aは希土類元素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素であって、AはBa、SrおよびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種類である。)
で表されるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物であって、xが下記の関係式(2)を満たし、yが関係式(3)を満たす正の数であり、0<a≦0.06、0.18<z<0.21であることを特徴とするガレート複合酸化物。
x=2a−2z+1.2 ・・・ (2)
y=−3a+2z−0.2・・・(3)
【選択図】 図1

Description

本発明は、酸素イオン伝導性が高く、高温における化学的安定性の高いAサイト欠損型のガレート複合酸化物、およびそれを用いた固体酸化物形燃料電池に関するものである。
1899年にNernst が固体電解質を発見した後、1937 年にBaurとPreisが1000℃で固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell ) を運転して以来、固体酸化物形燃料電池は進歩を続け、近年、市場への導入が始まり、高効率の発電システムとして注目を集めるようになってきた。
固体酸化物形燃料電池は高温( ≧700℃ ) で運転されるために、炭化水素系燃料を電池内で改質(internal reforming )することができ、高い燃焼効率( > 60% )を得ることが可能であると考えられている。
通常、固体酸化物形燃料電池の構成は、カソード、アノード、固体電解質およびカソードやアノードと固体電解質との間の中間層からなる。これらすべての構成材料は、アノードおよび固体電解質は還元雰囲気で、カソードおよび固体電解質は酸化雰囲気で、他の材料と相互に反応せず、安定で適度な酸素イオン伝導性を有する必要があり、かつ相互に熱膨張係数が近いことが要求される。また、カソードとアノードは多孔体でガスが透過できることが必要であり、焼結体としたときの強度と靭性が高く、安価であることが望まれる。さらには運転時の安定性の観点から、イオン伝導体の基本要件としてできるだけ低温で作動する材料系が望ましい。
固体酸化物形燃料電池は、通常700℃ 以上の高温で運転されるが、固体酸化物形燃料電池の作動温度がかような高温であるので電池構成材料の選択の幅が非常に狭められる。例えば、金属部品を電池容器に用いることが困難となる。そこで、低温でも高い酸素イオン伝導性を有するセラミックス材料からなる固体電解質材料の開発が所望されている。現在、固体電解質に用いられるセラミックス材料は、安定化ZrOが主流であり、安定化剤としては2価あるいは3価のアルカリ土類金属の酸化物や希土類酸化物、例えばCaO、MgO、Sc、Yなどが用いられている。
アルカリ土類金属であるCaOをドープしたZrOの酸素イオン伝導度は、800℃で1×10−2(Ωcm) を示す。また、H.Tannenbergerらにより、希土類酸化物、例えばY、YbやGdをドープしたZrOの酸素イオン伝導度は、800℃で1×10−2 から1×10−1(Ωcm)−1程度であるが、650℃以下になると2×10−2(Ωcm)−1以下にかなり減少することが報告されている。(非特許文献1参照)
低温で使用できる他の固体電解質としてはペロブスカイト型化合物があり、研究開発が推進されている。ペロブスカイト型化合物は通常ABOから成る化合物であり、例えば、BaCe0.9Gd0.12.95、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.22.8、CaAl0.1Ti0.92.95や、SrZr0.9Sc0.12.95などがある。LaGaOのAサイトとBサイトにそれぞれSrとMgをドープして酸素欠損させたLa1−xSrGa1−y Mg3-δ系のペロブスカイト型化合物は、T.Ishihara らや、Keqin HuangとJ.B.Goodenough らにより高い酸素イオン伝導性を示すことが報告されており、低温、酸化還元雰囲気下での高い酸素イオン伝導性が期待されている。(非特許文献2、3参照)
固体酸化物形燃料電池を実用化するにあたって、燃料電池の運転温度での固体電解質の空気極材料、中間層や燃料極材料に対する熱安定性は重要である。
650℃以下の温度域において、高い電極特性を有する空気極材料として、La1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δなどのBサイトにコバルト元素を含有し、ペロブスカイト構造を有する空気極材料が用いられている。しかしながら、La1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δは固体電解質であるLa1−xSrGa1−y Mg3-δとの反応性が高く、La1−xSrGa1−y Mg3-δと、La1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δ中のコバルト元素とが容易に反応する。そのため、La1−xSrGa1−y Mg3-δと、La1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δとを共焼結する際や、空気極材料としてLa1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δを、固体電解質としてLa1−xSrGa1−y Mg3-δを使用した固体酸化物形燃料電池を長時間使用した際に、徐々に機械的強度および酸素イオン伝導性が低下してしまうという問題がある。
これは固体電解質であるLa1−xSrGa1−y Mg3-δ中のガリウム元素と、La1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δから熱拡散したコバルト元素とが置換することによって、ペロブスカイト構造を有するLaGa1−xCo3-δが生成するためである。また、一方でコバルト元素が抜けてしまったLa1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δ焼結体中には、伝導性の低い異相であるLaSrCo相(237相)やLaSrCoO相(214相)粒子が成長するためである。
これでは、燃料電池などの各種用途に実際に適用することは難しく、従来のランタンガレート複合酸化物を母材とする焼結体の機械的強度を向上させる試みは、熱安定性の低下という新たな問題を生じる。(非特許文献4参照)
このような問題を解決するために、固体電解質であるLa1−xSrGa1−y Mg3-δと空気極であるLa1−xSrCoO3-δやLa1−xSrCo1−yFe3-δのランタンコバルタイトとの間に、LaCe1-x2−x/2、GdCe1-x2−x/2やSmCe1-x2−x/2からなる緩衝層(中間層)を設ける手法などの試みがなされている。(特許文献1、非特許文献5、6参照)
しかし、固体酸化物形燃料電池に上記のようなセリウム複合酸化物からなる緩衝層(中間層)を設けた場合でも、固体電解質と緩衝層(中間層)との反応性に対する問題が残ってしまう。
一方、酸素イオン伝導が発生する要因の一つである酸素欠損は、上記のような異なる価数の金属元素のドープのほかに、Aサイト自身を欠損させることによっても生成する。本発明者は、以前にこのAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するA1−αBO3−δで表わされる複合酸化物であって、αが0<α<0.2、δが0<δ≦0.5であり、Bサイトに少なくともGaを含むことを特徴とするガレート複合酸化物は、酸素イオン伝導性が高く、化学的安定性に優れた固体電解質材料であることを見出している。(特許文献2参照)
本発明者のさらなる研究では、Aサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するA1−αBO3−δで表わされる複合酸化物であって、αが0<α<0.2、δが0<δ≦0.5であり、Bサイトに少なくともGaを含むガレート複合酸化物でも、空気極と固体電解質との間に中間層として形成するSm、Gd、Y、LaまたはNdをドープしたセリウム複合酸化物に対する高温における化学的安定性に関しては不十分であり、高温で、固体電解質であるガレート複合酸化物とセリウム複合酸化物が反応してしまい、これらを用いた固体酸化物形燃料電池は、長時間運転した際に電池特性が劣化する懸念があることがわかった。
特開平09−129252号公報 特開2002−075405号公報
Proc.Int'l Etude Piles Combust,19-26(1965) J. Am. Chem. Soc., 116, 3801-3803(1994) J. Am. Ceram.Soc., 81(10), 2565-2675 (1998) Electrochimica Acta, 53, 4420-4427(2008) Russian J. Electrochem., 43(8), 883-887(2007) Electrochemical and Solid-State Letter, 8(8), A389-A391(2005)
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い酸素イオン伝導性を有し、電極と固体電解質の間に存在する中間層であるセリウム複合酸化物と反応しない、高温における化学的安定性の高いAサイト欠損型のガレート複合酸化物、およびそれを用いた固体酸化物形燃料電池を提供することである。
本発明者らは、非特許文献3で酸素イオン伝導度が高かったLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.22.8の構造安定性を向上させることを目的に鋭意検討したところ、ペロブスカイト構造を有するAサイト欠損型のガレート複合酸化物のうち、Aサイトを構成する元素の組成と酸素欠損量とが特定の関係を有するものが高い化学的安定性を有することを見出した。より具体的には、酸素イオン伝導に最適な酸素欠損量を0.2近傍とし、Bサイトの組成をGa0.8Mg0.2に保持したまま、Aサイト欠損量を適切な範囲にせしめることにより化学的安定性が大きく向上することを見出し、以下を要旨とする本発明を完成した。
〔1〕一般式(1)(ただし、Aは希土類元素の少なくとも1種類の元素であって、AはBa、SrおよびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種類である。)で表されるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物であって、xが下記の関係式(2)を満たし、yが関係式(3)を満たす正の数であり、0<a≦0.06、0.18<z<0.21であることを特徴とするガレート複合酸化物。
Ga0.8Mg0.23−z・・・(1)
x=2a−2z+1.2 ・・・ (2)
y=−3a+2z−0.2 ・・・(3)
〔2〕0.03≦a≦0.05、かつ0.19≦z<0.21である上記〔1〕に記載のガレート複合酸化物。
〔3〕AがLaであり、AがSrである上記〔1〕または〔2〕に記載のガレート複合酸化物。
〔4〕燃料極と、固体電解質と、一般式(4)で表されるセリウム複合酸化物を含む中間層と、空気極と、を有する固体酸化物形燃料電池であって、前記固体電解質が請求項1〜3のいずれか1項に記載のガレート複合酸化物であること特徴とする固体酸化物形燃料電池。
RECe1−w2−(w/2) ・・・ (4)
(ただし、REは、Sm、Gd、Y、LaおよびNdからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、wは0<w<0.5を満たす。)
〔5〕REがGdである上記〔4〕に記載の固体酸化物形燃料電池。
本発明によれば、酸素イオン伝導性が高く、高温における化学的定性に優れ、その結果、電極中間層のセリウム複合酸化物と反応性の低いガレート複合酸化物が提供される。また、それを固体電解質材料として使用した固体酸化物形燃料電池は、電池特性、特に熱サイクルに対して優れた安定性を示すことができる。
実施例2と比較例1の酸素イオン伝導度の温度依存性を示す図である。
本発明は、一般式A Ga0.8Mg0.23−z・・・(1)
(ただし、Aは希土類元素の少なくとも1種類の元素であって、AはBa、SrおよびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種類である。)で表されるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物のうち特定の組成を有するガレート複合酸化物を対象とする。
すなわち、一般式(1)において、xが下記の関係式(2)を満たし、yが関係式(3)を満たす正の数であり、0<a≦0.06、0.18<z<0.21であるガレート複合酸化物である。
x=2a−2z+1.2 ・・・ (2)
y=−3a+2z−0.2・・・(3)
本発明に係るペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物のBサイトの構成元素である、Ga元素とMg元素の比率を0.8:0.2に固定することにより、酸素イオン伝導度を高くせしめることができる。
上記一般式(1)において、Aで表される希土類元素とは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、またはスカンジウム(Sc)のことをいう。
は、2つ以上のこれらの希土類元素の組み合わせであってもよい。なかでもAはLaであり、A”はSrであるのが好ましい。
上記一般式(1)において、xが関係式(2)を満たし、yが関係式(3)を満たす正の数であって、0<a≦0.06、0.18<z<0.21であるとき、Aサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物は酸素イオン伝導度が高く、化学的安定性が高く、固体酸化物形燃料電池の中間層であるSm、Gd、Y、LaやNdをドープしたセリウム複合酸化物との反応を抑制せしめることができる。
希土類元素から選ばれた少なくとも1種類の元素を表わすAの組成xを表わす上記の関係式(2)と、Ba、SrおよびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素Aの組成yを表わす上記の関係式(3)は、ABOで表わされるペロブスカイト構造のAサイトが欠損量aの欠損をしていることを表わす下記の関係式(5)と、一般式(1)を構成する陽イオンであるA’3+、A”2+、Ga3+およびMg2+と陰イオンであるO2−とのチャージバランスの関係式(6)より導き出せる。
x+y=1−a・・・(5)
+3×x+2×y+3×0.8+2×0.2=2×(3−z)・・・(6)
本発明に係るガレート複合酸化物は、具体的には、例えば、下記のものが挙げられる。
La0.86Ba0.12Ga0.8Mg0.22.81
(一般式(1)においてA=La、A=Baであり、関係式(2)および(3)においてa=0.02、z=0.19のとき)
La0.86Sr0.12Ga0.8Mg0.22.81
(一般式(1)においてA=La、A=Srであり、関係式(2)および(3)においてa=0.02、z=0.19のとき)
La0.86Sr0.11Ga0.8Mg0.22.8
(一般式(1)においてA=La、A=Srであり、関係式(2)および(3)においてa=0.03、z=0.2のとき)
La0.86Ca0.11Ga0.8Mg0.22.8
(一般式(1)においてA=La、A=Caであり、関係式(2)および(3)においてa=0.03、z=0.2のとき)
La0.90Sr0.05Ga0.8Mg0.22.8
(一般式(1)においてA=La、A=Srであり、関係式(2)および(3)においてa=0.05、z=0.2のとき)
La0.90Ca0.05Ga0.8Mg0.22.8
(一般式(1)においてA=La、A=Caであり、関係式(2)および(3)においてa=0.05、z=0.2のとき)
関係式(2)および(3)において、aは0<a≦0.06、かつzは0.18<z<0.21である場合、ガリウム複合酸化物は、Aサイトの欠損量が十分であるため高温における確実な化学的安定性が得られる。なかでも、0.03≦a≦0.05、かつzは0.19≦z<0.21であるのがさらに好ましい。この場合のガレート複合酸化物は、高温における化学的安定性がとりわけ高いからである。
本発明に係るガレート複合酸化物は、固相法、クエン酸塩法、錯体重合法などの通常の複合酸化物の製造方法で製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、例として固相法について説明する。
本発明に係るガレート複合酸化物の原料は、好ましくは以下に記載される希土類化合物、Ba元素、Sr元素またはCa元素を含有する化合物、Ga化合物、およびMg化合物である。
希土類化合物は、希土類元素を含有する酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩または酢酸塩などである。Ba元素、Sr元素またはCa元素を含有する化合物は、Ba元素、Sr元素またはCa元素を含有する酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩または酢酸塩などである。Ga化合物は、Ga元素を含有する酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩または酢酸塩などである。Mg化合物は、Mg元素を含有する酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩または酢酸塩などである。
また、本発明に係るガレート複合酸化物の原料は、希土類元素、Ba元素、Sr元素、Ca元素、Ga元素、およびMg元素をそれぞれ別々に含有する化合物でもよい。また、ガレート複合酸化物の原料は、希土類元素、Ba元素、Sr元素、Ca元素、Ga元素、およびMg元素からなる群からなる任意の2元素以上を同時に含有する化合物であってもよい。
上記の各元素の原料については、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩などから選ばれた任意の1種以上の化合物を元素源として選択することができる。
本発明に係るガレート複合酸化物を固相法で製造する場合、好ましくは、次のように実施される。まず、希土類化合物からなる群から選択される1種以上と、Ba元素、Sr元素およびCa元素からなる群から選択される1種以上を含有する化合物、Ga化合物と、Mg化合物とを、目的の組成になるように秤量する。
次に、上記の秤量した原料粉末を均一に混合し、原料混合粉末を得る。混合方法は、乾式法でも湿式法でもどちらでも使用できるが、均一な原料混合粉末を得ることができるので湿式法が好ましい。乾式法の場合は、乳鉢で混合してもよいが、生産性を考慮するとVミキサー、ロッキングミキサーなどの混合機を使用することが好ましい。湿式法の場合は、秤量した原料粉末をアルコールなどの分散媒に分散し、攪拌翼などを用いて分散し混合することが好ましい。乾式法または湿式法における原料粉末の混合時間や回転速度などの混合条件は、原料粉末の量や、混合機の種類により、原料粉末が均一に混合される条件に設定することができ、特に限定されない。
次に、上記の原料混合粉末を焼成容器に移し、焼成炉にて焼成する。焼成は基本的には仮焼成、本焼成の焼成温度の異なる2工程からなるのが好ましいが、本焼成のみからなる工程でもよい。また、場合によっては、仮焼成の前工程として、粗焼成の工程を入れてもよい。焼成容器の材質は、特に限定されず、例えばアルミナ、ムライト、コージェライトなどが挙げられる。
焼成炉は、熱源として、電気式またはガス式のシャトルキルンでも、場合によってはローラーハースキルンでもロータリーキルンでもよく、特に限定されない。
(粗焼成)
粗焼成工程においては、焼成炉の温度を所定の昇温速度で目的の焼成温度である、好ましくは500〜700℃まで上げる。粗焼成時の焼成温度は、550〜650℃がより好ましい。500℃以上にすることにより本焼成工程後の最終生成物中の不純物量が少なくなるので好ましい。また、700℃以下にすることによりガレート複合酸化物の構成元素が偏析しにくくなるので好ましい。
粗焼成の焼成時間は、4〜24時間が好ましく、8〜20時間がより好ましい。4時間以上にすることにより、本焼成工程後の最終生成物中に不純物ピークが生成しにくくなるので好ましい。また、24時間を超えても、生成物に変化はないが、生産性を勘案すると24時間以下にすることが好ましい。この粗焼は一定温度、たとえば600℃で8時間保持するようにしてもよいし、500℃から700℃に昇温するようにしてもよい。
粗焼成を行う際の雰囲気は、酸素含有雰囲気であり、空気中(大気中)であることが好ましい。空気中であると原料混合粉中の原料粉同士の固相反応が円滑に進行するので、空気中で粗焼成にすることが好ましい。
粗焼成を所定時間行った後、所定の降温速度で室温まで降温する。次いで、粗焼成工程で得られた酸化物を必要に応じて解砕する。解砕にはカッターミル、ジェットミル、アトマイザーなどを用い、一般に乾式で行う。解砕後の体積平均粒径としては1〜50μmが好ましい。より好ましくは1〜20μmである。
(仮焼成)
まず、上記の原料混合粉末、または粗焼成粉末を焼成容器に移し、800〜1300℃の温度にて仮焼成する。
仮焼成工程においては、焼成炉の温度を所定の昇温速度で目的の焼成温度である、好ましくは800〜1300℃まで上げる。仮焼成の温度は、1000〜1300℃がより好ましい。800℃以上であると本焼成工程後の最終生成物中に不純物ピークが生成しにくくなるので好ましい。また、1300℃以下であると仮焼成時に過度に焼結しにくくなるので好ましい。
焼成時間は、1〜24時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。1時間以上であると、本焼成工程後の最終生成物中に不純物ピークが生成しにくくなるので好ましい。また、24時間を超えても、生成物に変化はないが、生産性を勘案すると24時間以下にすることが好ましい。
仮焼成を行う際の雰囲気は、酸素含有雰囲気が好ましい。仮焼成を所定時間行った後、所定の降温速度で室温まで降温する。
次いで、仮焼成で得られた酸化物を必要に応じて解砕する。解砕にはカッターミル、ジェットミル、アトマイザーなどを用い、一般に乾式で行なう。解砕後の体積平均粒径としては1〜50μmが好ましい。より好ましくは1〜20μmである。
(本焼成)
さらに、この仮焼成粉を、好ましくは1350〜1600℃の温度において本焼成する。
本焼成工程においては、焼成炉の温度を所定の昇温速度で目的の焼成温度である好ましくは1350〜1600℃まで上げる。昇温速度は各温度での反応物質の化学変化が十分に進行し、反応物質が均一な状態で目的の焼成温度に到達する範囲であれば特に限定されない。
本焼成の温度は、1400〜1500℃がより好ましい。1350℃以上にすることにより焼成が十分に進行しやすく、または1600℃を超えると本材料系は溶融してしまう。
焼成時間は、5〜24時間が好ましく、8〜20時間がより好ましい。5時間以上にすることにより、未反応物質が目的とする酸化物中に混在しにくく、また、24時間を超えても、生成物に変化はないが、生産性を勘案すると24時間以下とすることが好ましい。
本焼成を行う際の雰囲気は、仮焼成時と同様に酸素含有雰囲気中であることが好ましい。
本焼成を所定時間行った後、室温まで降温する。降温速度は、50〜200℃/hが好ましい。生産性を勘案すると50℃/h以上にすることが好ましい。また、200℃/hを超えると、材料内の酸素の拡散が十分に行われず、不均質になってしまう。
次いで、本焼成で得られた酸化物を粗焼成の後に行ったのと同様に必要に応じて解砕する。解砕にはカッターミル、ジェットミル、アトマイザーなどを用い、一般に乾式で行う。解砕後の粉体の体積平均粒径は0.5〜50μmが好ましい。より好ましくは0.5〜20μmである。その後、必要に応じて粒度調整のために湿式で粉砕してもよい。
本発明に係る特定の組成を有するガレート複合酸化物と中間層成分であるガドリニウムをドープしたセリア(GDC)などのセリウム複合酸化物との混合物からなる焼結体の酸素イオン伝導度は、Aサイト欠損のない化学量論組成のガレート複合酸化物とセリウム複合酸化物との混合物からなる焼結体のそれと比較して高い値を示す。
これは、本発明に係る特定の組成を有するAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物は高温における化学的安定性が高いため、焼結体の製造時の熱処理によっても、中間層であるセリウム複合酸化物と反応し酸素イオン伝導性の低いLaSrGa相やLaSrGaO相などの異相を生じにくいためであると考えられる。
本発明に係るガレート複合酸化物を固体電解質とする平板型の固体酸化物形燃料電池は、基本的に、本発明に係るガレート複合酸化物を有する固体電解質の一方の面にセリウム複合酸化物を含む中間層を介して空気極を配置し、他方の面に燃料極を配置した構成をもつ単セルをインターコネクターを介して直列に接続したスタック構造を有する。インターコネクターの両面には溝があり、一方の面を空気が、他方の面を燃料が、それぞれ交差して流れる。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の固体電解質は、本発明に係るガレート複合酸化物の他に、他の複合酸化物、例えば前記一般式(4)で表されるセリウム複合酸化物を含んでもよいが、本発明に係るガレート複合酸化物からなるのが好ましい。
空気極を構成する空気極材料は、例えば、ランタンストロンチウムマンガン酸化物(La1-xSrMnO3-δ)、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(La1-xSrCoO3-δ)、ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物(La1-xSrCo1-yFe3-δ)などを使用することができる。
燃料極を構成する燃料極材料は、ニッケル酸化物(NiO)とイットリアやスカンジアで安定化されたジルコニア(Y−ZrO、Sc−ZrO)やガドリニウムやサマリウムをドープしたセリア(GdCe1-x2-x/2、SmCe1-x2-x/2)とのサーメットなどを使用することができる。
空気極と固体電解質との間に形成する中間層は、下記の一般式(4)で表されるセリウム複合酸化物を含有するのが好ましい。
RECe1−w2−(w/2) ・・・ (4)
ここで、REは、Sm、Gd、Y、LaおよびNdからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、wは0<w<0.5を満たす。
上記一般式(4)のREは、Gd、SmまたはLaであるのが好ましく、Gdであるのがより好ましい。
本発明に係るガレート複合酸化物である固体電解質は、酸素イオン伝導性が高く、かつ高温において化学的に安定であり、上記式(4)で表される中間層であるセリウム複合酸化物との高温における反応性が低いため、それを使用した固体酸化物形燃料電池は、高温で長期の熱サイクルによっても出力の劣化が少なく、優れた電池特性を示す。
インターコネクターを構成する材料はインコネルやハステロイなどの合金のほか、ランタンクロム酸化物(LaCrO3-δ)などを使用することができる。
以下に、本発明に係る固体酸化物形燃料電池の作製方法の一例について説明するが、この方法に限定されず、いずれの公知の方法でも作製することができる。
まず、本発明に係るガレート複合酸化物をペレット成形し、厚さ0.2〜2mm程度の円盤状に切り出して固体電解質基板を形成する。
次いで、固体電解質の一方の面に、上記の燃料極材料のスラリーを塗布し、乾燥し、焼成して燃料極を形成する。
次いで、上記の固体電解質の一方の面にセリウム複合酸化物を含む中間層の構成材料の金属イオンを含む有機金属溶液を塗布し、この溶液を熱処理により乾燥および共焼成させる。これにより、中間層を形成する。
次いで、中間層上にスラリー状の上記空気極材料をスクリーン印刷などの公知の方法により塗布し、固体酸化物形燃料電池の動作温度よりも高い温度で焼成することにより空気極を形成することにより単セルが形成される。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の作動温度は500〜1000℃が好ましく、600〜800℃がより好ましい。
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比して説明する。これら実施例は、本発明の実施態様の一例であり、本発明がこれらの実施例に特に限定されるものではなく、また、これにより限定的に解釈されたりするものではない。
〔実施例1〕
La0.86Sr0.11Ga0.8Mg0.22.8で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.86:0.11:0.8:0.2となるように秤量し、乳鉢を用いて3時間粉砕混合した。得られた粉砕粉を大気中で1250℃にて2時間仮焼した。得られた仮焼粉を再度乳鉢により粉砕して得られた粉砕粉を、大気中で1400℃にて10時間本焼成した。得られた焼結体を粉砕することで、ランタンガレート複合酸化物Aの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Aの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.03、z=0.2である。
(X線回折測定)
ランタンガレート複合酸化物Aの粉末のX線回折測定を行った。X線回折測定には、Rigaku社製のXRD測定装置RINT2000を使用した。40kV×40mAの出力のCuKα線をX線源とし、2°/分のスキャン速度で測定した。その結果、ランタンガレート複合酸化物Aはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔実施例2〕
La0.90Sr0.05Ga0.8Mg0.22.8で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.90:0.05:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Bの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Bの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.05、z=0.2である。
ランタンガレート複合酸化物Bの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Bはペロブスカイト構造に帰属できた。
(酸素イオン伝導度測定)
ランタンガレート複合酸化物Bの粉末5gとGd0.1Ce0.91.955gを、内容積250mlのジルコニア製ポットに入れ、直径5mmのジルコニアボールとともにフリッチュ社製の遊星ミルを用いて100rpmの回転速度で10分間粉砕混合した。単味のランタンガレート複合酸化物Bの粉末、または上記のランタンガレート複合酸化物Bの粉末とGd0.1Ce0.91.95との混合物を用い、JIS曲げ試験(JIS−R1601) 片の作製方法に従い試験片を作製した。なお、試験片の焼成温度は1400℃とした。
酸素イオン伝導度の測定には直流4 端子法を用いた。上記試験片を用い、白金線を等間隔に白金ペーストで固定した後、1000℃で焼成し、試験片とした。測定は空気中で692.6K〜1075.58Kの温度範囲で5度/分の降温速度で降温しながら抵抗率を測定して逆数を酸素イオン伝導度とした。伝導は100%酸素イオン伝導性に基づくものと仮定した。計算式は以下の式を用いた。その結果を図1に示す。
σ(S/cm)=電流( A )/電圧(V)×有効試験片長さ(cm)/試験片断面積(cm
〔実施例3〕
La0.92Sr0.02Ga0.8Mg0.22.8で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.92:0.02:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Cの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Cの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.06、z=0.2である。
ランタンガレート複合酸化物Cの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Cはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例1〕
La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.22.8で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.8:0.2:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Dの粉末を得た。ランタンガレート複合酸化物Dの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.00、z=0.2である。
ランタンガレート複合酸化物Dの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Dはペロブスカイト構造に帰属できた。
実施例1と同様にして、単味のランタンガレート複合酸化物粉末Dからなる、またはランタンガレート複合酸化物Dの粉末とGd0.1Ce0.91.95との混合物からなる酸素イオン伝導度測定用の焼結体を作製し、酸素イオン伝導度を測定した。その結果を図1に示す。
〔比較例2〕
La0.79Sr0.2Ga0.8Mg0.22.785で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.79:0.2:0.8:0.2となるように秤量した以外には、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Eの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Eの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.01、z=0.215である。
ランタンガレート複合酸化物Eの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Eはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例3〕
La0.77Sr0.2Ga0.8Mg0.22.755で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.77:0.2:0.8:0.2となるように秤量した以外には、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Fの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Fの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.03、z=0.245である。
ランタンガレート複合酸化物Fの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Fはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例4〕
La0.75Sr0.2Ga0.8Mg0.22.725で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.75:0.2:0.8:0.2となるように秤量した以外には、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Gの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Gの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.05、z=0.275である。
ランタンガレート複合酸化物Gの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Gはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例5〕
La0.7Sr0.2Ga0.8Mg0.22.650で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.7:0.2:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Hの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Hの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.10、z=0.35である。
ランタンガレート複合酸化物Hの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Hはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例6〕
(La0.8Sr0.20.99Ga0.8Mg0.22.786で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.792:0.198:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Iの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Iの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.01、z=0.214である。
ランタンガレート複合酸化物Iの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Iはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例7〕
(La0.8Sr0.20.97Ga0.8Mg0.22.758で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.776:0.194:0.8:0.2となるように秤量した以外には、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Jの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Jの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.03、z=0.242である。
ランタンガレート複合酸化物Jの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Jはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例8〕
(La0.8Sr0.20.95Ga0.8Mg0.22.73で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.76:0.19:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Kの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Kの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.05、z=0.27である。
ランタンガレート複合酸化物Kの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Kはペロブスカイト構造に帰属できた。
〔比較例9〕
(La0.8Sr0.20.90Ga0.8Mg0.22.66で表わされるランタンガレート複合酸化物を作製するにあたり、Laと 、SrCOと 、Gaと、MgOとをLaとSrとGaとMgが原子比で0.72:0.18:0.8:0.2となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、ランタンガレート複合酸化物Lの粉末とした。ランタンガレート複合酸化物Lの一般式(1)における組成xとyは、関係式(2)および(3)において、a=0.10、z=0.34である。
ランタンガレート複合酸化物Lの粉末のX線回折測定を実施例1と同様にして行った。ランタンガレート複合酸化物Lはペロブスカイト構造に帰属できた。
(セリウム複合酸化物に対する化学的安定性の評価)
実施例1〜3および比較例1〜9で得られたランタンガレート複合酸化物A〜Lについて、固体酸化物形燃料電池の中間層であるCe0.9Gd0.11.95に対する高温(1400℃)での化学的安定性について評価した。評価条件は以下の通りである。
実施例1〜3および比較例1〜9で得られたランタンガレート複合酸化物とCe0.9Gd0.11.95とを重量比でランタンガレート複合酸化物:Ce0.9Gd0.11.95=1:1となるよう秤量し、メノウ乳鉢を用いて乾式混合し、評価用の試料とした。その試料を1400℃にて2時間熱処理した。熱処理後の結晶相の変化をCuKα線を線源とするX線回折測定により調べ、ランタンガレート複合酸化物とCe0.9Gd0.11.95との化学的反応性について評価した。X線回折測定には、Rigaku社製のXRD測定装置RINT2000を使用した。CuKα線の管電圧、管電流は、それぞれ40KV、40mAとし、2°/分の速度で連続測定した。
上記実施例1〜3と比較例1〜9における、ランタンガレート複合酸化物(LSGM)とCe0.9Gd0.11.95(GDC)との混合物の熱処理に対する安定性の評価結果を表1に示す。
実施例1〜3のランタンガレート複合酸化物A〜CとCe0.9Gd0.11.95との混合物の熱処理後のX線回折パターンには、ランタンガレート複合酸化物に該当する回折ピークと、Ce0.9Gd0.11.95に該当する回折ピークのみが観測された。しかし、比較例1〜9のランタンガレート複合酸化物D〜LとCe0.9Gd0.11.95との混合物の熱処理後のX線回折パターンには、ランタンガレート複合酸化物とCe0.9Gd0.11.95とが反応した結果として2θ=30°付近にLaSrGa相に該当する回折ピークや、31.5°付近にLaSrGaO相に該当する回折ピークが観測された。
表1において、ランタンガレート複合酸化物とCe0.9Gd0.11.95との混合物を熱処理した結果、2θ=30°付近にLaSrGa相に該当する回折ピークが観測されなかった場合を○印で表わし、LaSrGa相に該当する回折ピークが観測された場合は×印で表わした。
Figure 2014123520
表1より、実施例1〜3の本発明に係るAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物A〜Cは、1400℃の熱処理によって、不純物相であるLaSrGa相が生成せず、Ce0.9Gd0.11.95に対して化学的に安定であることがわかる。それに対し、本発明に該当しない従来のランタンガレート複合酸化物D〜Lは、1400℃において、ランタンガレート複合酸化物とCe0.9Gd0.11.95とが反応した結果としてLaSrGa相が生成していることが分かる。
本発明に係わるAサイト欠損型ペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物のセリウム複合酸化物に対する化学的安定性は、酸素イオン伝導度にも現れている。
図1に本発明のランタンガレート複合酸化物B、従来法のランタンガレート複合酸化物D、本発明のランタンガレート複合酸化物Bと中間層材料であるCe0.9Gd0.11.95との混合物、および従来法のランタンガレート複合酸化物DとCe0.9Gd0.11.95との混合物について、それぞれの焼結体試験片を用いて測定した酸素イオン伝導度の温度依存性を示す。図1より実施例2のAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物BとGd0.1Ce0.91.95との混合物から得られた焼結体試験片の酸素イオン伝導度は、熱処理によってもその酸素イオン伝導度が低下していないことがわかる。なお、図1においてランタンガレート複合酸化物Bを◇で示し、ランタンガレート複合酸化物BとGd0.1Ce0.91.95との混合物を◆で示す。一方、比較例1の化学量論組成のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物DとGd0.1Ce0.91.95の混合物から得られた焼結体試験片の酸素イオン伝導度は、熱処理により大幅に低下していることがわかる。なお、図1においてランタンガレート複合酸化物Dを○で示し、ランタンガレート複合酸化物DとGd0.1Ce0.91.95との混合物を●で示す。これは、本発明に係わるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物のGd0.1Ce0.91.95に対する高温における化学的安定性が高いことに起因すると考えられる。
すなわち、酸素イオン伝導度測定用の焼結体作製時の1400℃での熱処理の際に、実施例2の本発明に係わるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物Bは、比較例1の化学量論組成のペロブスカイト構造を有するランタンガレート複合酸化物DよりもGd0.1Ce0.91.95と反応しにくく、酸素イオン伝導性の低いLaSrGa相や、LaSrGaO相を生じにくいことによると考えられる。
固体電解質として本発明に係わるランタンガレート複合酸化物を、中間層としてGd0.1Ce0.91.95を使用して固体酸化物形燃料電池を作製した場合に、作製過程における熱処理により固体電解質と中間層とが反応しないため、作製した固体酸化物形燃料電池は優れた電池特性を示すことが期待できる。
本発明によれば、高い酸素イオン伝導性を有し、高温における化学的安定性の高いAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物を提供することができる。また、本発明に係るAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物を固体電解質とする固体酸化物形燃料電池の出力は、長期燃料電池運転に対して優れた熱安定性が期待できる。

Claims (5)

  1. 下記の一般式(1)(ただし、Aは希土類元素の少なくとも1種の元素であって、AはBa、SrおよびCaからなる群から選ばれる少なくとも1種である。)で表されるAサイト欠損型のペロブスカイト構造を有するガレート複合酸化物であって、xが下記の関係式(2)を満たし、yが関係式(3)を満たす正の数であり、0<a≦0.06、0.18<z<0.21であることを特徴とするガレート複合酸化物。
    Ga0.8Mg0.23−z・・・(1)
    x=2a−2z+1.2 ・・・(2)
    y=−3a+2z−0.2 ・・・(3)
  2. 0.03≦a≦0.05であり、かつ、0.19≦z<0.21である請求項1に記載のガレート複合酸化物。
  3. 一般式(1)における、A 元素がLaであり、AがSrである請求項1または2に記載のガレート複合酸化物。
  4. 燃料極と、固体電解質と、一般式(4)で表されるセリウム複合酸化物を含む中間層と、空気極と、を有する固体酸化物形燃料電池であって、前記固体電解質が請求項1〜3のいずれか1項に記載のガレート複合酸化物である固体酸化物形燃料電池。
    RECe1−w2−(w/2) ・・・ (4)
    (ただし、REは、Sm、Gd、Y、LaおよびNdからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、wは0<w<0.5である。)
  5. REがGdである請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
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