JP2014119616A - マイクロデバイス及び光偏向器並びに光学デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】より平坦な反射面を有するマイクロデバイスを提供する。
【解決手段】基板上に反射層を含む1以上の層が形成されてなるマイクロデバイスであって、基板と反射層との間に、金属化合物若しくは半金属化合物で構成された、1以上の層が基板に与える応力を緩和する応力緩和層をさらに備える。
【選択図】図3
【解決手段】基板上に反射層を含む1以上の層が形成されてなるマイクロデバイスであって、基板と反射層との間に、金属化合物若しくは半金属化合物で構成された、1以上の層が基板に与える応力を緩和する応力緩和層をさらに備える。
【選択図】図3
Description
本発明はマイクロデバイス及び光偏向器並びに光学デバイスに関し、特にMEMS(Micro−Electro−Mechanical−System)技術を利用して作成されるマイクロデバイス及び光偏向器並びに光学デバイスに関する。
近年、ディスプレイ又はプリンタなどの多くの分野で、MEMS技術を応用したデバイスの実用化が進んでいる。このMEMS技術により製造され、光を透過、反射、あるいは吸収する光学機能を有するマイクロ構造体を含むデバイスは光学MEMSと呼ばれる。その中でも、反射ミラーとして用いられるデバイスはマイクロミラーデバイスと呼ばれ、例えばスキャナなどで用いられる(例えば、特許文献1)。
このようなマイクロミラーデバイスは光反射層を有し、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、又は金(Au)などの金属膜が反射層として用いられる。従来マイクロミラーデバイスは、これらの金属膜を、蒸着又はスパッタのような物理蒸着法により基板上に形成することにより作製されてきた。
例えば、マイクロミラーデバイスを作製するために、基板上に金属膜を形成すると、形成された金属膜が基板に与える応力のために、ミラー面が変形するという問題があった。特に引用文献1に記載のマイクロミラーデバイスにおいては、ねじれモーメントを小さくするために基板を薄くする必要があり、より応力の影響を受けやすい。
本発明は、より平坦な反射面を有するマイクロデバイス及び光偏向器並びに光学デバイスを提供することを目的とする。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明のマイクロデバイスは以下の構成を備える。すなわち、
基板上に反射層を含む1以上の層が形成されてなるマイクロデバイスであって、
前記基板と前記反射層との間に、金属化合物若しくは半金属化合物で構成された、前記1以上の層が前記基板に与える応力を緩和する応力緩和層をさらに備える
ことを特徴とする。
基板上に反射層を含む1以上の層が形成されてなるマイクロデバイスであって、
前記基板と前記反射層との間に、金属化合物若しくは半金属化合物で構成された、前記1以上の層が前記基板に与える応力を緩和する応力緩和層をさらに備える
ことを特徴とする。
より平坦な反射面を有するマイクロデバイス及び光偏向器並びに光学デバイスを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
図3に、本発明の一実施形態に係るマイクロデバイスとなるマイクロミラーデバイスの構造を示す。図3(A)に示すマイクロミラーデバイス300は、基板310上に、反射層330を含む1以上の層が形成された構造を有する。後述するように、この1以上の層は増反射層340を含んでいてもよい。また、マイクロミラーデバイス300は、基板310と反射層330との間に応力緩和層320を有する。図3(A)の例においては、マイクロミラーデバイス300は、基板310と、応力緩和層320と、反射層330と、が積層された構造を有する。
基板310は、反射層330などを保持し、マイクロミラーデバイス300に適当な剛性を与える。基板310の材料としては特に制限されず、例えばシリコン基板(Si基板)、金属基板、ガラス基板、又はセラミック基板などを用いることができる。また、基板310として金属薄膜基板を用いることもできる。金属薄膜基板は、例えばガラス板上にスパッタ法などの薄膜形成方法により金属薄膜を成膜し、その後金属薄膜をガラス板から剥離することにより作製することができる。
応力緩和層320は、反射層330などによって生じる応力を緩和する機能を有する。より具体的には、基板310上に形成される応力緩和層320以外の各層が全体として引張り応力を有する場合には、応力緩和層320が圧縮応力を有するように応力緩和層320の材料を選択する。また、基板310上に形成される応力緩和層320以外の各層が全体として圧縮応力を有する場合には、応力緩和層320が引張り応力を有するように応力緩和層320の材料を選択する。
応力緩和層320の膜厚は、応力緩和層320が基板310に与える応力が、応力緩和層320以外の各層が全体として基板310に与える応力を相殺あるいは低減するように、適宜選択することができる。
応力緩和層320は、金属化合物若しくは半金属化合物で構成されていることが望ましい。これらの材料で構成された膜は、金属膜よりも大きい応力を有する。このため、応力緩和層320が比較的薄い場合であっても、応力緩和層320以外の各層が全体として基板310に与える応力を相殺あるいは低減することができる。応力緩和層320が薄いことは、生産コストの低下及び軽量化などの点で有利である。より大きい応力が得られうる点で、この金属化合物若しくは半金属化合物は、酸化物、窒化物、若しくはフッ化物のうちの少なくとも1つを含むことがより好ましい。
応力緩和層320が、十分に反射層330又は後述する増反射層340の応力を緩和するためには、応力緩和層320は極薄の層であるよりも、反射層330又は後述する増反射層340に近い膜厚を有する層であることが好ましい。具体的には、応力緩和層320の膜厚は、反射層330の膜厚の1/10以上であることが好ましい。
応力緩和層320の材料のより具体的な例としては、SiOx、SiOxNy、SiNx、TiOx、TiNx、AlOx、MgOx、及びMgFxなどが挙げられる。ここでx及yは金属原子に対する酸素原子などの割合を表す任意の数値である。例えばTiOxにおいて、x=2の時は、TiO2を表す。x及びyは、応力緩和層320が基板310に対して所望の応力を与えるように、必要とする条件に応じて適宜選択することができる。
反射層330は、光を反射する機能を有する。反射層330の具体例としては金属膜が挙げられる。金属膜の材料としてより具体的には、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び金(Au)などが挙げられる。
マイクロミラーデバイス300は、反射層330に積層された増反射層340をさらに有していてもよい。もっとも、マイクロミラーデバイス300が増反射層340を有することは必須ではない。増反射層340は、マイクロミラーデバイス300の反射率を向上させるために設けられる。反射層330として用いられる金属膜のみによっては十分な反射率が得られない場合であっても、増反射層340を設けることにより、マイクロミラーデバイス300に所望の反射率を与えることができる。増反射層340の材料としては、従来から知られている材料を用いる事ができる。
増反射層340は、反射層330を保護する役割を有していてもよい。例えば反射層330として用いられる金属膜の表面には比較的傷がつきやすい。また、金属膜の表面は酸化や腐食などにより変化しやすい。これらの理由により、金属膜の反射率が徐々に低下してしまう可能性がある。増反射層340をマイクロミラーデバイス300に設けることにより、金属膜を保護し、反射率の低下を防ぐことができる。
マイクロミラーデバイス300は、反射層330と増反射層340との間に、反射層330の酸化を防止する酸化防止層を有していてもよい。酸化防止層の材料としては、例えばSiO2などが挙げられる。
マイクロミラーデバイス300は、さらに密着層410を有していてもよい。このようなマイクロミラーデバイス300の例を図4に示す。密着層410は、基板310と応力緩和層320との間に設けられることが好ましい。密着層410は、基板310と、基板310上に設けられる薄膜との密着性を向上させる機能を有する。密着層410の材料の例としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、TiO2、SiO2、SiOなどが挙げられる。
応力緩和層320と密着層410とは異なる材料で構成されることが好ましい。例えば、応力緩和層320がTiO2で構成され、密着層410がTiで構成されることができる。一方で、応力緩和層320と密着層410とが同じ材料で構成されていてもよいし、さらには応力緩和層320が密着層としての機能を有していてもよい。すなわち、応力緩和層320が、基板310と反射層330との密着性を向上させてもよい。このように、応力を緩和する機能及び密着性を向上させる機能を有する応力緩和層320は、通常は、密着性を向上させることのみを目的として設けられる極薄の層よりも大きい膜厚を有する。
以上のように、比較的大きい応力を有する、金属化合物又は半金属化合物の層を、基板と反射層との間に設けることにより、光学特性を損なうことなくミラー面の変形を防ぐことができる。
[製造方法]
応力緩和層320、反射層330、増反射層340及び密着層410の形成方法は特に限定されない。例えば、物理蒸着により応力緩和層320及び反射層330を含む各層を形成することができ、膜厚を正確に制御する観点からは、良好な再現性を有する点で真空蒸着法を用いることがより好ましい。真空蒸着法としては、スパッタ法、IAD法、IBS法、クラスター蒸着法、及びイオンプレーティング法などを利用できる。必要とされる膜の性質や、基板310を含めたマイクロミラーデバイス300を構成する材料に由来する制約条件などに従って、最適な製造プロセスを選択することができる。
応力緩和層320、反射層330、増反射層340及び密着層410の形成方法は特に限定されない。例えば、物理蒸着により応力緩和層320及び反射層330を含む各層を形成することができ、膜厚を正確に制御する観点からは、良好な再現性を有する点で真空蒸着法を用いることがより好ましい。真空蒸着法としては、スパッタ法、IAD法、IBS法、クラスター蒸着法、及びイオンプレーティング法などを利用できる。必要とされる膜の性質や、基板310を含めたマイクロミラーデバイス300を構成する材料に由来する制約条件などに従って、最適な製造プロセスを選択することができる。
また、得られる膜の性質を制御するために、異なる方法を用いて各層を形成してもよい。例えば、応力緩和層320を形成する際には、応力を調整する為にアシスト付加を行わずに成膜を行い、増反射層340を形成する際には、耐環境性を高めるためにイオンアシスト蒸着により成膜を行ってもよい。具体的には、TiO2を材料として用い、上述のように応力緩和層320及び増反射層340を形成することができる。このように、同一のマイクロミラーデバイス300上に、膜密度などの点で異なる膜質を持つ複数の層を、同種の材料を用いて形成してもよい。
特に、反射率を増加させ、耐環境性を高めるために、増反射膜340の膜密度を向上させることがある。膜密度を高めていくと、膜応力は引張り応力から圧縮応力へと変化していく。このような場合、応力緩和層320が引張り応力を有するように、膜密度がより低くなるように応力緩和層320を形成することができる。特に、応力緩和層320及び増反射層340の材料として、TiO2のような同じ材料を用いる場合、膜密度がより低くなるように応力緩和層320を形成し、膜密度がより高くなるように増反射層340を形成することが好ましい。
本実施形態では、基板310としてSiウエハを用いる場合について主に説明した。しかしながら、基板310として金属基板又はセラミック基板を用いることもできる。
[光偏向器]
上述した本発明の一実施形態に係るマイクロデバイスを用いて、マイクロデバイスを備える種々の光学デバイスを作製することができる。図1及び図2は、本実施形態に係るマイクロミラーデバイスを備える光学デバイスの一種であるスキャナ用の光偏向器を示す。図1は一軸偏向可能なジンバルタイプの光偏向器であり、図2は二軸偏向可能なジンバルタイプの光偏向器である。このような光偏向器を有するスキャナは、この光偏向器を用いて対象を光走査することができる。
上述した本発明の一実施形態に係るマイクロデバイスを用いて、マイクロデバイスを備える種々の光学デバイスを作製することができる。図1及び図2は、本実施形態に係るマイクロミラーデバイスを備える光学デバイスの一種であるスキャナ用の光偏向器を示す。図1は一軸偏向可能なジンバルタイプの光偏向器であり、図2は二軸偏向可能なジンバルタイプの光偏向器である。このような光偏向器を有するスキャナは、この光偏向器を用いて対象を光走査することができる。
本実施形態に係るマイクロミラーデバイスである可動ミラー3は、二本のトーションバー1により可動ミラーを取り囲むように構成されたジンバルに支持される。もっとも、可動ミラー3とトーションバー1とジンバルとが一体的に形成されていてもよい。ジンバルはフレーム5に固定されている。また、対向電極2もフレーム5に配置されている。可動ミラー3は、可動ミラー3に対向して配置された対向電極2との静電力や電磁力により、トーションバー1の回転軸4の回りで偏向する。このように可動ミラー3を駆動することにより、可動ミラー3のミラー面に入射する光を所望の方向へと反射することができる。
また、図2のような二軸偏向可能な光偏向器においては、反射膜9を有する可動ミラー3(本実施形態に係るマイクロミラーデバイス)が2つのトーションバー1を介してジンバル8に固定される。また、ジンバル8は別の2つのトーションバー12を介してフレーム5に支持される。可動ミラー3は静電力や電磁力により、トーションバー1又は12の回転軸の回りで偏向する。図2に示す光偏光器においては、可動ミラー3とジンバル8との回転軸が互いに直交している。具体的には、図2の光偏向器においては、可動ミラー3には可動磁石7が固定されている。また、フレーム5はスペーサー10を介して共通基板11に固定されており、この共通基板11には、対向電極2及び固定コイル6が配置されている。これらの対向電極2、固定コイル6、及び可動磁石7の働きにより、可動ミラー3は偏向する。
本実施形態に係るマイクロミラーデバイスである可動ミラー3は、平坦性に優れた反射面を有するため、これを用いた光偏向器は高い精度を有する。
基板上に応力緩和層及び反射層を形成することにより作製された、スキャナ用のMEMSミラーに関する実施例について、以下に詳細に記述する。以下では、基板として直径4インチの円形ウエハを用い、このウエハ上に各層を形成することにより、膜応力が緩和されたマイクロミラーを作製する。より複雑な形状を有するミラーも、同様の方法により作製することができ、膜応力が緩和された平坦なミラー面を実現することができる。
[実施例1]
実施例1に係るマイクロミラーは、図3(B)に示す積層構造を有する。すなわち本実施例に係るマイクロミラーは、基板上に、応力反射層、反射層(金属膜層)及び増反射層が積層された構造を有する。本実施例では、Siウエハ上に、アシストの付加は行わずに、EB蒸着により順次物理蒸着薄膜を形成した。
実施例1に係るマイクロミラーは、図3(B)に示す積層構造を有する。すなわち本実施例に係るマイクロミラーは、基板上に、応力反射層、反射層(金属膜層)及び増反射層が積層された構造を有する。本実施例では、Siウエハ上に、アシストの付加は行わずに、EB蒸着により順次物理蒸着薄膜を形成した。
具体的には、厚さ400μmのSiウエハ上に、TiO2からなる応力緩和層を形成した。本実施例においては、応力緩和層を形成する際には基板の加熱を行わなかった。後述するように金属膜を形成する際には基板を加熱しないことが好ましいことから、応力緩和層を形成する際に基板の加熱を行わないことは、製造時間を短縮しうる点で有利である。しかしながら、基板を加熱せずに応力緩和層を形成した場合、所望の応力を持った膜が形成できないことがある。この場合は、基板を加熱しながら応力緩和層を成膜し、その後基板温度が低下してから、反射層を形成すればよい。また、基板を加熱せずに、アシスト付加を行いながら応力緩和層を形成してもよい。さらには、基板を加熱し、かつアシスト付加を行いながら応力緩和層を形成し、その後基板温度が低下してから、反射層を形成してもよい。
次に、応力緩和層上に、Al膜からなる反射層(金属膜層)を形成した。反射層を形成する際には、基板の加熱は行わなかった。
さらに、反射層上に、SiO2膜及びTiO2膜からなる増反射層を形成した。具体的にはまず、反射層のAl膜の酸化防止を目的として、酸化防止層(保護層)として薄いSiO2膜を、基板を加熱せずに成膜した。その後、基板温度が150度程度となるまで基板を加熱してから、SiO2膜及びTiO2膜を成膜した。このため、図3(B)に示すように、実施例1に係るマイクロミラーの増反射層は2層のSiO2膜を有する。酸化防止層の材料としては、酸化を防止する機能を有する材料を用いることができ、SiO2には限定されない。しかしながら、酸化防止層の材料が、増反射層内の隣接する部分の材質と同じであることは、光学的な条件を調整しやすい点で好ましい。このように酸化防止層を設けることにより、基板の加熱を行う際に反射層が酸化することを防止できる。
以上のように、各層を形成する際に基板を加熱するか否かを選択及び制御するのは、以下の理由からである。基板を加熱しながら反射層の金属膜を成膜すると、金属が酸化されやすいために、基板を加熱しない場合と比較して反射率が下がってしまう傾向にある。特に、本実施例のようにAl膜を形成する場合、基板を加熱しながら成膜を行うと、表面上に突起物などが形成されるために、反射率が減少する傾向にある。一方で、誘電体であるSiO2膜とTiO2膜は、基板を加熱せずに成膜するとポーラスな膜質となり、耐環境性が低下する傾向にある。また、基板を加熱しながら成膜する場合と比較して、再現性が低下する傾向もある。以上の理由のために、金属膜層は基板を加熱せずに成膜し、増反射層は基板を加熱しながら成膜することが好ましい。
次に、上述の積層構造の設計方法について説明する。設計にあたり、まずは各層に用いられる物質の光学定数(屈折率及び消衰係数)を測定した。次に、測定された光学定数を基に、光学特性のみをターゲットとして仮の設計を行った。さらに、仮の設計で定められた膜厚を有する場合の膜応力を、各物質について測定した。具体的には、複数の膜厚について、上述した成膜条件により得られる膜の膜応力を測定した。そして、膜厚と膜応力との近似曲線から、所定の膜厚を有する場合の膜応力を算出した。また、応力緩和層として用いるTiO2膜に関しては、反射膜の設計により所望の膜応力及びこの膜応力が得られる膜厚が大きく変わる事が予想されたため、他の材料よりも広い膜厚範囲について膜厚と膜応力との相関データを収集した。
ここで膜応力は、基板の厚さhが蒸着膜の厚さt1〜t4と比較して十分大きいという前提のもとで、式1を用いて計算した。
式1において、σは膜応力、Eは基板のヤング率、νは基板のポアソン比、hは基板の厚さ、tは薄膜の膜厚、R1は成膜前曲率半径、R2は成膜後曲率半径をそれぞれ表す。
以上の結果から、波長770〜800nmのp偏光の反射率が90%以上となるように、再度膜設計を行った。この際、上述の膜応力の値を考慮し、積層された膜全体の膜応力値が小さくなるように設計を行った。具体的には、積層された膜全体の膜応力値が、直径4インチのSiウエハ上で30MPa以下になるように設計を行った。こうして、光学特性と膜応力を同時に満足できる組み合わせを検討した。また、スキャナ用のミラーとして好適に用いられるように、0度入射から30度入射において、入射角に対する反射率の依存性が3%以下程度となるように設計を行った。
表1は、本実施例における、各層の膜厚の設計値と、膜応力の値を示す。上述のように、膜応力は、測定値に基づく近似式を用いて算出した値である。
表1に示す設計値に従って、上述のように、直径4インチのSiウエハ上に応力反射層、反射層(金属膜層)及び増反射層を形成し、以下の評価を行った。
まずは密着力を評価する為に、密着試験(JIS K5400 碁盤目テープ法)を行ったが、膜剥がれは無く、良好な結果を得る事ができた。
次に耐環境性を確認する為に、オゾン(O3)耐久試験(温度:45℃ 湿度:95% O3:1ppm 100h)を行ったが、その際の反射率の変化は図5のようになり、絶対値で0.5%以下程度の変化しかなかった。
さらに、積層した反射膜の膜応力を評価する為に、応力測定を行ったが、直径4インチウエハ全体として20〜30MPa程度の応力値となり、撓み量としては2〜3nm程度であった。
最後に、得られたマイクロミラーの光学特性を評価した。図6は得られたマイクロミラーの反射率を、図7は得られたマイクロミラーの入射角に対する反射率の依存性を示す。図6のように、775〜800nmの波長領域全域でp偏光の反射率は90%以上であった。また、図7のように、入射角を0度〜30度とした場合の反射率の変動は、1.4%以下と算出された。ここで、測定器の構造的な制約条件から、測定できる最小入射角度は5度であったため、入射角が0度〜5度である場合の反射率は、測定したデータを近似する近似曲線を用いて予測した。
同様の設計及び手順に従って複数回マイクロミラーを試作し、評価を行ったところ、多少のバラツキはあるものの、前述した評価結果とほぼ同等の値が得られた。
以上のように、本実施例によれば、反射層と基板との間に応力緩和層を挿入することで、光学特性を損なうことなく、膜応力に起因したデバイスの湾曲などが低減された平坦なミラーデバイスを作製することができる。
[実施例2]
実施例2においては、膜質を制御しながら各層を成膜する。具体的には本実施例においては、応力緩和層を構成する膜と、増反射層を構成する膜のうちの1つとは、同じ材料で作製されるが、異なる膜密度を有する。
実施例2においては、膜質を制御しながら各層を成膜する。具体的には本実施例においては、応力緩和層を構成する膜と、増反射層を構成する膜のうちの1つとは、同じ材料で作製されるが、異なる膜密度を有する。
本実施例においても、実施例1と同様に、厚さ400μmのSiウエハ上に、順次物理蒸着薄膜を真空蒸着法により形成した。具体的にはまず、基板の加熱を行わずに、Siウエハ上にTiO2膜からなる応力緩和層を形成した。次に、基板の加熱を行わずに、Al膜からなる反射層(金属膜層)を形成した。次に、基板の加熱を行わずに、反射層であるAl膜の酸化防止を目的として、極薄のSiO2層を形成した。さらに、基板を加熱して150℃程度まで基板温度を上昇させた後、増反射層として、SiO2膜及びTiO2膜を順次成膜した。ここで、増反射層のTiO2膜を蒸着する際には、イオンプレーティングによるアシスト成膜を行った。その他の膜に関しては、アシストの付加は行わず、EB蒸着により成膜を行った。
表2は、本実施例における、各層の膜厚の設計値と、膜応力の値を示す。膜応力は、実施例1と同様に算出した。設計も、実施例1と同様に行った。
以上の設計及び手順に従ってマイクロミラーを複数試作し、応力測定を行った。全てのミラーについて、直径4インチウエハ全体として応力値は20MPa以下であり、撓み量は1〜2nm程度であった。
1 トーションバー
2 対向電極
3 可動ミラー
4 回転軸
5 フレーム
6 固定コイル
7 可動磁石
8 ジンバル
9 反射膜
10 スペーサー
11 共通基板
12 トーションバー
300 マイクロミラーデバイス
310 基板
320 応力緩和層
330 反射層
340 増反射層
410 密着層
2 対向電極
3 可動ミラー
4 回転軸
5 フレーム
6 固定コイル
7 可動磁石
8 ジンバル
9 反射膜
10 スペーサー
11 共通基板
12 トーションバー
300 マイクロミラーデバイス
310 基板
320 応力緩和層
330 反射層
340 増反射層
410 密着層
Claims (10)
- 基板上に反射層を含む1以上の層が形成されてなるマイクロデバイスであって、
前記基板と前記反射層との間に、前記1以上の層が前記基板に与える応力を緩和する、金属化合物若しくは半金属化合物で形成された応力緩和層をさらに備える
ことを特徴とするマイクロデバイス。 - 前記基板はSi基板であり、前記反射層は物理蒸着により形成された薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロデバイス。
- 前記応力緩和層は物理蒸着により形成された薄膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロデバイス。
- 前記金属化合物若しくは半金属化合物は、酸化物、窒化物、及びフッ化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のマイクロデバイス。
- 前記応力緩和層は、SiOx、SiOxNy、SiNx、TiOx、TiNx、AlOx、MgOx、及びMgFxのうちの少なくとも1つにより形成されることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロデバイス。
- 前記反射層上に積層された増反射層をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のマイクロデバイス。
- 前記反射層と前記増反射層との間には、前記反射層の酸化を防止する酸化防止層をさらに形成されることを特徴とする、請求項6に記載のマイクロデバイス。
- 前記酸化防止層と、前記増反射層のうち前記酸化防止層に隣接する部分とが、同じ材料で形成されることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロデバイス。
- 請求項1乃至8の何れか1項に記載のマイクロデバイスを備える光偏向器。
- 請求項1乃至8の何れか1項に記載のマイクロデバイスを備える光学デバイス。
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- 2012-12-17 JP JP2012275075A patent/JP2014119616A/ja active Pending
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