JP2011242522A - マイクロミラー装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、前記ミラー基板101は、少なくとも応力制御の機能を有する応力制御層102と、反射層103と、増反射機能を有する増反射膜104を備え、前記応力制御層102は、引っ張り応力を有する層102-aと圧縮応力を有する層102-bとを交互に積層した多層構造であることを特徴とするので、質量の増加を最低限に抑えつつ剛性を高めることができ、ミラーの平坦性の確保や往復振動時の変形を効果的に抑えることができる。
【選択図】図1
Description
このような慣性力による動的な変形を低減させる方法として、ミラーとなる部分の厚さを厚くしてミラー部の剛性を向上させるという方法がある。しかしながら、このような手法では、ミラー部の慣性モーメントが増加することになり、ミラーの振れ角が小さくなるか、または同じ振れ角を達成しようとした場合には、駆動エネルギーの増加が必要不可欠となるという新たな問題が生じる。
また、特許文献2(特開2006−317603号公報)には、ミラー膜として、銀膜の上にアルミニウム膜を1nm〜5nmの厚みとした上で、その上に増反射膜を設けることが記載されており、増反射膜は、SiO2、Al2O3、ZrO2、SnO2、SixNy、SiOxCyNxの中から選ばれる低屈折率膜と、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、ZnO、Si3N4、SiOxCyNzの中から選ばれる高屈折率膜とを交互に2〜5層積層したものであることを特徴としている。
また、特許文献4(特開2009−116263号公報)には、レーザー光用光学ミラーにおいて、Au膜、Ag膜、さらにこれらの膜の上に増反射膜や表面保護膜を形成することによって生じる凹面形状もしくは凸面形状に変形することを防止するために、応力調整膜を形成することが記載されている。
しかし、この従来技術による可動ミラーは、反射層として高屈折材料及び低屈折材料を交互に重ねた構造を有しているのみで、応力の制御や、応力に起因するミラー部の反りに関しては全く言及されていない。
すなわち、この従来技術では、あくまでも反射層として積層構造を利用するために、高屈折材料及び低屈折材料を交互に重ねた構造を用いているのみであって、単に光学特性の見地から設計しているものに過ぎない。つまり応力の制御や、応力に起因するミラー部の反りに関しては全く言及していないという点で後述する本発明とは明らかに異なる技術である。
すなわち、この従来技術は、増反射膜としての条件として屈折率のみに注目しているものであり、後述する本発明のごとく屈折率と応力の二つの特性を同時に制御することによって初めて発揮される機能については全く言及されていない。
また、この従来技術は、応力を制御する層を設けるという点では本発明に類似の技術に思えるが、その設計思想や効果が全く異なるものである。つまり、この従来技術は、応力調整膜により反りを矯正するものである。つまり、発生した応力をちょうど打ち消すような応力調整膜を形成するという技術である。この技術によれば確かに、応力の補償を行なうことで静的な状態での反りは矯正、低減できる可能性はあるかもしれない。しかし、それは、単に応力のバランスを取って反りを矯正しているのみであって、ミラー部の剛性を高めているわけでは決してない。この点が本発明と根本的に異なる点である。
[1]:対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、前記ミラー基板は、少なくとも応力制御の機能を有する応力制御層と、反射層と、増反射機能を有する増反射膜を備え、前記応力制御層は、引っ張り応力を有する層と圧縮応力を有する層とを交互に積層した多層構造であることを特徴とする(請求項1)。
ここで、上記において、相対的に屈折率が高い、低いとは、或る数値以上、以下ということではなく、交互に積層する2種類の層において、相対的に比較した場合に、一方が屈折率が高く、他方の屈折率が低いということである。
[6]:[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のマイクロミラー装置において、前記反射層は少なくとも3層からなり、密着層、ブロッキング層、反射層を有する構造であることを特徴とする(請求項6)。
[7]:[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のマイクロミラー装置において、前記反射層がすべて無機材料からなる誘電体多層膜で形成されていることを特徴とする(請求項7)。
本発明の基本的な構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明によるマイクロミラー装置のミラー部の構成の一例について断面図を用いて模式的に示したものである。図1においては、ミラー母材101 上に、応力制御層102 が形成されており、その上に反射層103 、さらに増反射膜104 が形成されている様子を示している。ここで、応力制御層102 は引張り応力を有する層102-a と圧縮応力を有する層102-b が交互に積層されて形成されているものであって、その膜厚はナノメートルのオーダーで制御されているものである。反射層103 は金(Au)やアルミニウム(Al)といった高反射金属膜で形成されているものである。そして、増反射膜104 としては、屈折率が制御された誘電体膜などが利用される。
このように本発明では、応力制御層102 と反射層103 と増反射膜104から成るために、それぞれの層が所望の特性を発揮するように、独立に設計することができる点が大きな特徴である。
ここで、上記において、相対的に屈折率が高い、低いとは、或る数値以上、以下ということではなく、交互に積層する2種類の層において、相対的に比較した場合に、一方が屈折率が高く、他方の屈折率が低いということである。
一方、応力制御増反射膜205 は図1で示した構成と同様に、引張り応力を有する層205-a と圧縮応力を有する層205-b が交互に積層されて形成されているものであって、その膜厚はナノメートルのオーダーで制御されているものである。
図3に示す構成例では、ミラー母材301 の上に、引張り応力層302-a と圧縮応力層302-b
を交互に積層した多層構造の応力制御層302 が形成され、の応力制御層302 の上に、密着層303-a 、ブロッキング層303-b 、ミラー層(反射層)303-c からなる反射層303 が形成され、さらにその上に増反射膜304 が設けられている。
図4に示す構成例では、ミラー母材401 の上に、引張り応力層402-a と圧縮応力層402-b を交互に積層した多層構造の応力制御層402 が形成され、の応力制御層402 の上に、誘電体多層膜からなる反射層403 が形成され、さらにその上に増反射膜404 が設けられている。
また、図5の構成においても、金属を反射層として用いる場合は、金属材料を単層の構成として用いてもよいが、図3と同様に、下地基板との密着性を向上させるための密着層、さらには、反射材料と密着層の相互拡散や反応を防止するためのブロッキング層を適宜選択し設けてもよい。また、反射層503 としては、図4と同様に、誘電体多層膜を用いることもできる。
図6に示すマイクロミラー装置のミラー部は、例えば図1に示した構成例のような積層構造を有しており、ミラー母材601 上に応力制御層604 と反射層+増反射膜605 を積層形成した後、公知のマイクロマシン技術を用いて加工され、捻り梁602 とフレーム603 が形成される。
なお、ミラー部の構成についてはこれに限るものではなく、図1〜5のいずれかに示した積層構造であればよい。
また、本発明は、駆動方式にとらわれることなく効果が発揮できるものであるので、一般的な駆動方式である圧電素子駆動方式、静電駆動方式、電磁駆動方式の、いずれの駆動方式であってもよい。
本発明の第1の実施例について図1を参照しながら説明する。
本実施例では、応力制御層102 として、引張り応力を有する層であるSiN膜102-a と、圧縮応力を有する層であるSiO2膜102-b を交互に積層した積層構造を形成し、その上に反射層103 としてAl膜を形成し、さらに増反射膜104 として、反射層103 の上に、低屈折率層としてのSiO2膜と、高屈折率層としてのTiO2膜を形成する例について説明する。
このようにして得られたマイクロミラー装置を、450℃、85%の環境試験を行なったところ、反射率の低下はわずか1%と非常に耐熱性に優れたマイクロミラー装置であることが確認できた。
本発明の第2の実施例について図2を参照しながら説明する。
本実施例では、反射層203 としては、実施例1と同様にAl膜を用いた。この反射層203 の上に形成する応力制御増反射膜205 として、低屈折率で引張り応力を有するMgF2膜から成る引張り応力層205-a と、高屈折率で圧縮応力を有するSiO2膜から成る圧縮応力層205-b の積層構造を形成した例について説明する。
ミラー母材201 となる基板材料としては、実施例1と同様にSOI(Silicon On Insulator)ウェハを用いた。このSOIウェハは、絶縁層としてのシリコン酸化膜の厚さが1μm、それをはさむ形で応力制御反射層203 が形成される表面側のシリコン層が100μm、裏面側のシリコン層が300μm形成されたものである。このSOIウェハに対して、一般的なマイクロマシン技術を用いてマイクロミラー装置を形成した。
このようにして応力制御増反射膜205 を形成後、公知のマイクロマシン技術を用いて加工し、図6に示すようなガルバノミラー型マイクロミラー装置を完成させた。反射率は、780nmのレーザー光に対して99.2%を示し、周波数5kHzで駆動させた場合の撓みによる変形量も、殆ど無視できる量に抑えることができた。
このようにして得られたマイクロミラー装置について、450℃、85%の環境試験を行なったところ、反射率の低下はわずかに0.8%であり、非常に耐熱性に優れたマイクロミラー装置であることが確認できた。
本発明の第3の実施例について図3を参照しながら説明する。
本実施例では、これまでの実施例とは異なり、反射層303 として密着層303-a 、ブロッキング層303-b 、ミラー層303-c の三層構造を用いた例について説明する。応力制御層302 は実施例1に記載したものと同じで、引張り応力を有するSiN膜302-a と圧縮応力を有するSiO2膜302-b の積層構造を採用した。この上にさらに金属を用いて反射層303 を形成した。その内容について説明する。波長780nmのレーザー光源に対する反射層303 として機能することを想定し、表層のミラー層303-c は金(Au)を採用することとした。しかし、前述の引張り応力を有するSiN膜302-a と圧縮応力を有するSiO2膜302-b の積層構造に直接、金を形成すると密着性に問題があるために、密着層303-a としてチタン(Ti)を用い、また、チタン(Ti)と金(Au)の相互拡散を防止する目的でブロッキング層303-b として白金(Pt)を用いた。これらの金属層はすべて、電子ビーム蒸着法により形成し、それぞれの膜厚は、チタン(Ti):50nm、白金(Pt):50nm、金(Au):100nmとした。これらの膜厚は、電子ビーム蒸着装置に付属の水晶発振式膜厚モニターの信号をもとに制御して形成した。
本発明の第4の実施例について図4を参照しながら説明する。
本実施例では、これまでの実施例とは異なり、反射層に誘電体多層膜を用いた例について説明する。応力制御層402 は実施例1と同様の構成を用いた。その上に反射層403 を形成するために、低屈折率層としてSiO2膜、高屈折率層としてTiO2膜をRFマグネトロンスパッタリング法により形成した。形成条件を以下の表5に示す。
さらにその上に、増反射膜として機能するための構成として、低屈折率膜であるAl2O3膜、高屈折率膜であるTa2O5膜を積層して形成した。
本実施例では、応力制御層402 、誘電体多層膜反射層403 、増反射膜404 のすべてが無機材料で形成されているために、O2プラズマアッシングを1時間、さらに真空中での400度の熱処理を1時間行っても、初期の反射特性を維持していた。
本発明の第5の実施例について図5を参照しながら説明する。
本実施例では、これまで説明してきたような応力制御層、反射層及び増反射膜が膜厚方向で同じ面に積層した構造ではなく、ミラー母材501 を挟んで、応力制御層502 と、反射層503 及び増反射膜504b が、対向する面上に形成された構造についての実施例である。
すなわち、本実施例では、ミラー母材501 となる基板(例えばSOIウェハ)の一方の面に応力制御層502 を形成し、その反対側の面に反射層503及び増反射膜504 を形成したものである。このような構造とすることで、応力制御層502 、反射層503 及び増反射膜504 のそれぞれが、お互いに制約を受けずに最適な構成、条件で形成することができるという利点が得られる。
102、302、402、502、604:応力制御層
102-a、302-a、402-a、502-a:引張り応力層
102-b、302-b、402-b、502-b:圧縮応力層
103、203、303、503:反射層
104、304、404、504:増反射膜
205:応力制御増反射膜
205-a:引張り応力/低屈折率層
205-b:圧縮応力/高屈折率層
303-a:密着層
303-b:ブロッキング層
303-c:ミラー層
403:誘電体多層膜反射層
602:捻り梁
603:フレーム
605:反射層+増反射膜
Claims (7)
- 対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、
前記ミラー基板は、少なくとも応力制御の機能を有する応力制御層と、反射層と、増反射機能を有する増反射膜を備え、
前記応力制御層は、引っ張り応力を有する層と圧縮応力を有する層とを交互に積層した多層構造であることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、
前記ミラー基板は、応力制御の機能を有する応力制御層と、反射層と、増反射機能を有する増反射膜を備え、
ミラー母材上に順に前記応力制御層、前記反射層、前記増反射膜が形成されて成る構成であり、
前記応力制御層は引っ張り応力を有する層と圧縮応力を有する層とを交互に積層した多層構造であることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、
前記ミラー基板は、応力制御の機能と増反射機能とを有する応力制御増反射膜と、反射層を備え、ミラー母材上に順に前記反射層、前記応力制御増反射膜が形成されて成る構成であり、
前記応力制御増反射膜は、引張り応力を有し相対的に屈折率が低い材料からなる層と圧縮応力を有し相対的に屈折率が高い材料からなる層とを交互に積層した積層構造であるか、若しくは、引張り応力を有し相対的に屈折率が高い材料からなる層と圧縮応力を有し相対的に屈折率が低い材料からなる層とを交互に積層した積層構造から成る応力制御増反射膜であることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 対向する一対の捻り梁によって往復振動可能な状態でフレーム部材に連結されたミラー基板と、該ミラー基板に対して前記捻り梁を回転中心として往復振動させるための駆動手段を有するマイクロミラー装置において、
前記ミラー基板は、応力制御の機能を有する応力制御層と、反射層と、増反射機能を有する増反射膜を備え、
ミラー母材上に少なくとも順に前記反射層、前記増反射膜が形成され、前記反射層及び前記増反射膜が形成された面とは反対側の面に、前記応力制御層が形成されて成る構成であり、
前記応力制御層は引っ張り応力を有する層と圧縮応力を有する層とを交互に積層した多層構造であることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一つに記載のマイクロミラー装置において、
前記反射層が金属材料からなることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一つに記載のマイクロミラー装置において、
前記反射層は少なくとも3層からなり、密着層、ブロッキング層、反射層を有する構造であることを特徴とするマイクロミラー装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一つに記載のマイクロミラー装置において、
前記反射層がすべて無機材料からなる誘電体多層膜で形成されていることを特徴とするマイクロミラー装置。
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