JP2014113905A - 外乱抑制制御システムおよび外乱表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】横風に伴う外乱に対して影響を受ける車体の流れを未然に防止するとともに、外乱が運転に与える影響を逐一報知してドライバーに十分な注意喚起を行う。
【解決手段】外乱抑制制御システム30は、風速をベクトルで検出する風速計20と、風速計20で検出されたベクトルと自車両10の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に車両10の速度変化を抑制する制御を行う外乱抑制制御装置31と、により構成される。
【選択図】図3
【解決手段】外乱抑制制御システム30は、風速をベクトルで検出する風速計20と、風速計20で検出されたベクトルと自車両10の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に車両10の速度変化を抑制する制御を行う外乱抑制制御装置31と、により構成される。
【選択図】図3
Description
本発明は、予め設定した速度を維持して走行するクルーズコントロール機能を備えた車両に用いて好適な外乱抑制制御システムおよび外乱表示装置に関する。
横風の影響により車両の挙動が変化した場合にこれを修正する技術が、例えば、特許文献1,2,3に開示されている。
特許文献1に開示された技術は、ナビゲーション装置等から横風情報を受信してドライバーに注意を喚起するものであり、また、特許文献2に開示された技術は、制御ダンパの係数を変更して横風性能を向上させるものであり、いずれもリアルタイム性に欠ける。
また、リアルタイム性を考慮するものに特許文献3に開示された技術があるが、これは、検出した横風の量に応じた制御情報を生成し、後輪を転舵する構成になっている。ところが、特許文献3に開示された技術には風の向きが考慮されておらず、したがって同じ横風検出量であっても制御補正量が異なる。すなわち、横風の量を検出するだけでは不十分であり、特に、クルーズコントロールのためには風向きに関する情報も必要である。また、横風に対するドライバーへの注意喚起が不十分であり運転に与える影響を把握することが困難であった。
図12(a)(b)(c)は、同じ横風風量の絶対値(センサにより検出された横風量)を持つ風向きが異なるベクトルを示す。横風の向きによって、自車の走行風(黒矢印)とベクトル合成を行うと発生する力により、車両が流される方向(θ)が異なっていることが容易に理解できる。したがって、横風量を検出する手法だけでは不十分であり、風向き情報(β)も必要不可欠である。
本発明の課題は、横風に伴う外乱に対して影響を受ける車体の流れを未然に防止するとともに、外乱風が運転に与える影響を逐一報知してドライバーに十分な注意喚起が可能な、外乱抑制制御システムおよび外乱表示装置を提供することにある。
上記した課題を解決するために請求項1に記載の外乱抑制制御システムは、風速をベクトルで検出する風速計と、前記検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に、前記車両の速度変化を抑制する制御を行う外乱抑制制御装置と、を備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の外乱抑制制御システムにおいて、設定された車速で定速走行を行う走行制御装置と、を備え、前記外乱抑制制御装置は、前記走行制御装置による前記車両の現在速度を維持するか、前記前後横方向の風速ベクトル成分のうち、前後方向のベクトル成分に応じた回生ブレーキにより前記車両の速度変化を抑制する制御を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の外乱抑制制御システムにおいて、車速毎に決められた特性と操舵トルクとの双方により決められる指令電流を出力する電動パワーステアリング制御装置を備え、前記電動パワーステアリング制御装置は、前記車両の前面にベクトル投影して得られる第1の投影面積の空気抵抗と前記風速との力積、および前記車両の側面にベクトル投影して得られる第2の投影面積の空気抵抗と、前記風速と、前記前後横方向の2つのベクトル成分により発生するベクトル角との力積から、前記分離した横方向のベクトル成分に対する制御量を算出して前記走行制御装置を制御することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の外乱抑制制御システムにおいて、前記電動パワーステアリング制御装置は、前記ベクトル角がゼロになるように、前記ベクトル角によって発生する前記横方向のベクトル成分を相殺する前記制御量を前記走行制御装置に出力することを特徴とする。
請求項5記載の表示装置は、表示部と、風速を所定時間毎に取り込み、前記所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には前記表示部に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には前記表示部に第2の表示を行う表示制御部と、を備えたことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の表示装置において、前記表示制御部は、前記所定時間内における前記風速の最大値を前記第1の表示とし、前記所定時間内における前記風速の平均値を前記第2の表示としてそれぞれ前記表示部に表示することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の表示装置において、前記表示制御部は、前記第1の表示を前記第2の表示に比較して色温度を低くして前記表示部に表示することを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか1項記載の表示装置において、前記表示制御部は、前記車両の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、前記風力を小さくして前記表示部に表示することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、外乱抑制制御装置は、風速計で検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に車両の速度変化を抑制する制御を行うため、横風に伴う外乱に対して影響を受ける自車両の車体の流れを未然に防ぐことができる。また、風速を直接計測することにより、風が車体に当たって圧力になる前にその風速を遅れなく検出できるためフィードフォワード制御が可能になる。
請求項2に記載の発明によれば、外乱抑制制御装置は、走行制御装置による車両の現在速度を維持するか、前後横方向の風速ベクトル成分のうち、前後方向のベクトル成分に応じた回生ブレーキにより車両の速度変化を抑制する制御を行う。このように、前後方向のベクトル成分に対してオートクルーズと回生ブレーキとの組み合わせ制御を行うことにより、低燃費、および乗り心地の改善を図ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、電動パワーステアリング制御装置は、車両の前面にベクトル投影して得られる第1の投影面積の空気抵抗と風速との力積、および車両の側面にベクトル投影して得られる第2の投影面積の空気抵抗と、風速と、前後横方向の2つのベクトル成分により発生するベクトル角との力積から、分離した横方向のベクトル成分に対する制御量を算出して走行制御装置を制御する。この制御量により横風外乱による操舵の乱れを未然に抑制することができる。
請求項4に記載の発明によれば、電動パワーステアリング制御装置は、ベクトル角がゼロになるように、当該ベクトル角によって発生する横方向のベクトル成分を相殺する制御量を走行制御装置に出力することで、横風外乱によってハンドルがとられた場合に、電動パワーステアリング制御装置と協調した横風外乱抑制制御が可能になる。
請求項5に記載の発明によれば、表示制御部は、風速を所定時間毎に取り込み、所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には表示部に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には第2の表示を行う。したがって、吹き流し等を確認することなく風の時間的な変化をドライバーに知らしめることができるため、風の影響に対する車両挙動の乱れを予測することが可能になる。また、同じ風速であっても増加方向にあるか減少方向にあるかがわかるため、その予測精度を更に向上させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、表示制御部は、所定時間内における風速の最大値を第1の表示とし、前記所定時間内における風速の平均値を前記第2の表示としてそれぞれ表示部に表示する。このように今後車両に与える外乱風の影響にあわせて表示する値を調整することで今後の外乱風の影響に対する予測精度の向上が図れる。
請求項7に記載の発明によれば、表示制御部は、第1の表示を第2の表示に比較して色温度を低くして表示部に表示する。色温度の低い方がドライバーに与える注意喚起のインパクトの程度が高いため、外乱風の影響に応じた直感的な注意喚起が可能になる。
請求項8に記載の発明によれば、表示制御部は、車両の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、風力を小さくして表示部に表示する。前後方向の追い風や向かい風よりも横風の方が車両に対する影響が大きいためこのように表示することで合理的な注意喚起が可能になる。
以下、本発明の実施の形態(本実施形態)に係る外乱抑制制御システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態の構成)
図1に本実施形態に係る外乱抑制制御システム30が搭載される車両10の外観構成が示されている。ここでは、車両10のルーフの前方略中央部に風向風力測定のための風速計20が配置されている。風速計20は、ルーフアンテナ等との組み合わせにより任意の形状であってよく、また、ルーフに限らず、例えば、ボンネット等、配置場所は任意である。
図1に本実施形態に係る外乱抑制制御システム30が搭載される車両10の外観構成が示されている。ここでは、車両10のルーフの前方略中央部に風向風力測定のための風速計20が配置されている。風速計20は、ルーフアンテナ等との組み合わせにより任意の形状であってよく、また、ルーフに限らず、例えば、ボンネット等、配置場所は任意である。
風速計20は、通常、送受信機(トランスデューサ)を120度の間隔で3軸方向から斜めに備える。斜めになった3組のセンサーから得られる伝搬時間の差を演算することによって、水平方向、および上下方向の風速を測定可能な3次元風向風速計である。なお、媒体である空気は、気温により超音波の伝搬速度が変わるため、送信と受信を双方向から交互に行い、気温による差異を除外するような配慮が必要である。これに対し、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30では、風速計20として、図1に示すように2軸超音波風速計を使用した。
すなわち、風速測定用にトランスデューサ20a,20b、またはトランスデューサ20c,20dを、ともに距離L(図2参照)だけ離して対向配置し、また、風向測定用にこのトランスデューサの組を2対用意しており、X軸,Y軸の成分速度Vx,Vyをスカラー演算する構成とした。図2において、Lは上記したトランスデューサ表面同士の距離を、Cは音速を、VAは気体流速度を、t1,t2は双方向の超音波の到達時間を、Uは水平風速を、θは水平風向を、Wgは鉛直風向をそれぞれ示す。なお、N(北),S(南),W(西),E(東)は風向を示す記号である。
本実施形態に係る外乱抑制制御システム30の構成が図3に示されている。図3に示すように、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30は、図1,図2に示す風速計20と、外乱抑制制御装置31と、走行制御装置32と、表示装置33と、CAN(Controller Area Network)34に接続される不図示の各種ECU(電子制御ユニット)により構成される。
風速計20は、外部風向風力(風速)をベクトルで検出して外乱抑制制御装置31に出力する。外乱抑制制御装置31は、風速計20で検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後左右のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に、車両10の速度変化を抑制する制御を行う。外乱抑制制御装置31は、車両の現在の速度を維持するか、前後方向の風速ベクトル成分に応じた回生ブレーキにより抑制制御を行う。このため、外乱抑制制御装置31に対し、CAN34経由で各種ECUから操舵トルクや車速等のセンサー出力が供給される。
走行制御装置32は、ドライバーによるアクセルペダルの操作やブレーキペダル操作に応じてドライバーの加速意志や減速意志を検知してエンジン制御を行う。走行制御装置32は、設定された車速に基づいて車両10の定速走行制御(ACC:Auto Cruise Control)も行う。走行制御装置32は、定速走行制御を行うにあたり、例えば、インパネ周辺に設けられるACCスイッチがON,かつブレーキペダルまたはクラッチペダルが操作されていない場合に、ドライバーが車両10を定速走行させるべく設定車速をセットすることにより動作を開始する。そして、ブレーキペダルまたはクラッチペダルが操作された場合に設定車速による定速走行がキャンセルされる。また、ACCWスイッチがONの場合に外乱抑制制御装置31の制御の下で風向風力による影響を反映した定速走行制御を行う。
このため、走行制御装置32には、CAN34経由で各ECUから、舵角、車速、ヨーレート、横G、操舵トルク、更には、アクセルペダルやブレーキペダル等のセンサー出力、そして、ACCスイッチ、ACCWスイッチ等のON/OFF信号が供給される。ここで、ACCスイッチとは、ドライバーによってオートクルーズ制御の有効/無効が設定されるスイッチであり、ACCWは、外乱風を反映させたオートクルーズ制御の有効/無効が設定されるスイッチである。
なお、表示装置33は、外乱抑制制御装置31により算出される外部風速ベクトルに基づき、いずれの方向からどれくらいの強さで外乱風が流れているかを表示してドライバーに注意喚起を行う。その表示形態については図10,図11に例示されている。詳細は後述する。
図4に外乱抑制制御装置31の内部構成が示されている。図4によれば、外乱抑制制御装置31は、外乱抑制制御演算部310と、外乱判定部311と、EPS制御演算部312(電動パワーステアリング装置)と、合成部313とを含み構成される。
外乱判定部311は、2軸超音波風速計20から風速をベクトルで検出し、自車両10の走行速度から演算される外部風速ベクトルを算出して外乱抑制制御演算部310に出力する。外乱抑制制御演算部310は、その外部風速ベクトルを、前後方向ベクトルと横方向ベクトルに分配する。そして、前後方向ベクトルについては、閾値を超える場合、オートクルーズ制御、または回生ブレーキにより、車速の急激な変化を緩和させる制御を行う(指令電流1)。横方向ベクトルについては、外乱抑制制御演算部310による指令の下でEPS制御演算部312が制御する。
EPS演算制御部312は、ステアリングハンドルへのドライバーの操作によって生じる操舵系での操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させるものであり、車速毎に決められた曲線又は特性(制御マップ)と操舵トルクとの双方によって決められる指令電流2を合成部313に出力する。EPS制御演算部312は、例えば、ベクトルを投影し、力積から得られる情報により制御量を求めることとする。すなわち、EPS制御演算部312は、例えば、図6に示すように、内蔵する制御マップに前面投影面積A以外に横方向の側面面積(Aside)を係数として有し、横風の影響をベクトル演算できるように、前面と側面の空気抵抗DおよびDsideの両方の力積(風速×空気抵抗)から制御量(指令電流2)を求める。なお、Dsideは2つのベクトルがなす角cosβも考慮するものとする。ここで、空気抵抗Dは、0.5A×CD×ρ×V2)により算出される。但し、Aは前面投影面積、ρは空気密度、Vは速度、CDは抗力係数(CD:Coefficient)である。
合成部313には、EPS制御演算部312から指令電流2が入力される他に外乱抑制制御演算部310からも指令電流1が入力されており、指令電流1と指令電流2とを合成することにより、風外乱の影響を受ける車両10の車体流れを未然に防ぐ指令電流を生成して走行制御装置32に出力する。
図5に表示装置33の内部構成が示されている。図5によれば、表示装置33は、表示制御部330と、VRAM(Video Random Access Memory)331と、表示モニタ332とを含み構成される。
表示制御部330は、外乱抑制制御装置31と表示モニタ332とのインタフェースを司る。すなわち、外乱抑制制御装置31から出力される風向風力(風速)に関する情報を表示用に加工してVRAM331に書き込むと共に、このVRAM331に書き込まれた内容を表示モニタ332の表示タイミングに同期して読み出して表示モニタ332に出力する。VRAM331は、表示モニタ332が有する少なくとも1画面分の記憶容量を有するSRAM(Static RAM)またはDRAM(Dynamic RAM)が実装されたメモリである。表示モニタ332は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を表示デバイスとして持つ表示部である。
なお、表示制御部330は、風速に関する情報を加工するにあたり、風速を所定時間毎に取り込み、所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には表示モニタ332に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には表示モニタ332に第2の表示を行う。例えば、所定時間内における風速の最大値を第1の表示とし、所定時間内における風速の平均値を第2の表示とする。また、表示制御部330は、第1の表示を第2の表示に比較して色温度を低くして表示モニタ332に表示してもよい。また、表示制御部330は、車両10の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、風力を小さくして表示モニタ332に表示してもよい。
(実施形態の動作)
以下、図7〜図9のフローチャートを参照しながら本実施形態に係る外乱抑制制御システムの動作について詳細に説明する。
以下、図7〜図9のフローチャートを参照しながら本実施形態に係る外乱抑制制御システムの動作について詳細に説明する。
まず、図7のフローチャートを使用して本実施形態に係る外乱抑制制御システム30の基本動作から説明する。外乱抑制制御装置31は、風速計20による測定結果から外部風向風力(風速)をベクトルで検出する(ステップS10)。そして、CAN34経由で取得される車両10の車速を除外した外部風速ベクトルを算出する(ステップS11)。続いて外乱抑制制御装置31は、外部風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に、車両の速度変化を抑制する制御を行う外乱抑制制御を行う(ステップS12)。このとき、外乱抑制制御装置31は、走行制御装置32によるオートクルーズ制御により車両10の現在速度を維持するか、前後横方向の風速ベクトル成分のうち、前後方向のベクトル成分に応じた回生ブレーキにより車両10の速度変化を抑制する制御を行う。
続いて、表示装置33は、風速を所定時間毎に取り込み、所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には内蔵する表示モニタ332に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には表示モニタ332に第2の表示を行ない、上記した一連の横風による外乱抑制制御を終了する(ステップS13)。ここでいう第1の表示とは、所定時間内における風速の最大値をいい、第2の表示とは、所定時間内における風速の平均値をいう。このとき、第1の表示を第2の表示に比較して色温度を低くして表示モニタ332に表示してもよい。また、車両10の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して風力を小さくして表示モニタ332に表示してもよい。
図8に外乱抑制制御(ステップS12)の詳細手順が示されている。以下、図8のフローチャートを参照して図4に示す外乱抑制制御装置31の動作について詳細に説明する。
外乱抑制制御演算部310は、CAN34経由で取得されるACCWスイッチがON状態(“1”)にある場合(ステップS121“Yes”)、同じくCAN34経由で取得されるアクセルスロットと操舵角により、アクセルとハンドル操作が一定値以下で安定走行状態が継続しているか否かを判定する(ステップS122)。ステップS22で、車両10が安定走行状態にあると判定されると(ステップS122“Yes”)、外乱抑制制御装置31は、オートクルーズ制御のために設定された車速に基づき走行制御装置32により演算される目標車速の値を捕捉する(ステップS123)。
続いて、外乱抑制制御演算部310は、先に取得した風速が閾値VTH1を超えるか否かを判定する(ステップS124)。風速が閾値VTH1を超えない場合(ステップS124“NO”)、外乱抑制制御演算部310は、CAN34経由で取得されるACCWスイッチの状態を判定する(ステップS125)。ACCスイッチがON状態(“1”)になっていれば(ステップS125“YES”)、外乱抑制制御演算部310は、走行制御装置32に対して現状速度維持を解除する指令を発行する(ステップS126)。すなわち、風による影響が少なく減速感がないため抑制制御を解除する。
次に、外乱抑制制御演算部310は、依然として安定走行状態が継続しているか否かについて、風速と、閾値VTH1より小さい閾値VTH2と比較することにより判定する(ステップS127)。ここで、風速が閾値VTH2以下であれば(ステップS127“YES”)、風による影響を好まない操作下手な人に対する走行支援を行うために、外乱抑制制御演算部310が内蔵する前後方向の制御フラグをONし(ステップS128)、風速が閾値以上であれば(ステップS127“NO”)、操作上手なドライバーのために前後方向の制御フラグをOFFして外乱の抑制制御を無効にする(ステップS129)。
一方、ステップS124の風速判定処理で風速が閾値VTH1を超える場合(ステップS124“YES”)、または、ステップS125のスイッチ状態判定処理でACCスイッチがONしていた場合(ステップS125“YES”)、外乱抑制制御演算部310は、風速を前後方向Yと横方向Xのベクトルに分離する演算を実行する(ステップS130)。続いて、外乱抑制制御演算部310は、前後方向コントロールを有効/無効に設定するフラグのON/OFFを判定する(ステップS131)。ここで、フラグがONしていれば(ステップS131“YES”)、横風外乱を反映したオートクルーズ制御を開始すべく走行制御装置32に指令を発行し(ステップS132)、フラグがOFFしていれば(ステップS131“NO”)、上記した一連の横風による外乱抑制制御を終了する。
オートクルーズ制御が開始されると、外乱抑制制御演算部310は、先に前後方向に分離したベクトル成分Yから向かい風か否かを判定する(ステップS133)。ここで、向かい風と判定された場合(ステップS133“YES”)、現状の速度を維持するように走行制御装置32に対して指示し(ステップS134)、向かい風でなかった場合は(ステップS133“NO”)、走行制御装置32に対してエンジンブレーキまたは回生ブレーキ(以下、総称して回生ブレーキという)による速度変化を抑制する制御を行なう(ステップS135)。そして、先に横方向に分離したX成分に基づき発生するベクトル角θがゼロになるようにEPS制御演算部35に指令を発する。これを受けたEPS制御演算部35は、ベクトル角θを相殺させるための目標電流を流す(ステップS136)。
なお、EPS制御演算部35は、ベクトル角θを相殺させる目標電流を生成するために、横方向のベクトル成分を投影し、前面と側面の空気抵抗D(=0.5A×CD×ρ×V2)、およびDsideの両方向の力積から制御量を求めるものとする。このことは、図6を用いて説明したとおりである。
通常は、受けた横風で車体がロールしてサスペンション・ジオメトリーが操舵したような作用が相乗して車両10が流されるが、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、風速計20により直接風を計測することで、車体に圧力がかかる前に検出が可能になるためフィードフォワード制御が可能になり、横風のような外乱風に対して影響を受ける車両10の車体流れを未然に防ぐことができる。また、回生ブレーキ又はエンジンブレーキ、およびオートクルーズとの前後方向の制御の組み合わせを用いることで、燃料節約および乗り心地の向上がはかれる。
ところで、突然の横風は、急に強くなるわけではなく、強弱の山谷があるものの徐々に強くなり、やがてピークを迎えて徐々に弱くなり、やがて消滅していく大きな流れがある。ドライバーは、車両運転中、この風の変化を捉えることは困難であり、事象としてハンドルをとられることにより突然風を意識させられ、また、進行方向の左右の風の方向を認識することになる。天気予報等でその情報を事前に知り得ても移動中の車中では必要十分な情報が得られない。このため、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30は、横風による操舵の乱れを未然に抑制できる様に、いずれの方向から外乱風が流れているかを向きと強さで注意喚起を促す表示を行なうこととした。
説明を図7に戻す。本実施形態に係る外乱抑制制御システム30は、風速を所定時間毎に取り込み、所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には表示部に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には表示部に第2の表示を行う表示処理を実行する。図9にこの表示処理(ステップS13)の詳細手順が示されている。以下、図9のフローチャートを参照して図5に示す表示装置33の動作について詳細に説明する。
表示制御部330は、サンプリング周期が到来する毎に(ステップS140“YES”)、外乱抑制制御装置31から外部風向風速を取り込んで(ステップS141)、風力比較を行う(ステップS142)。そして、風力比較の結果に応じて風向を反映させた表示データを生成してVRAM331へ書き込み、表示モニタ332に所定の表示を行う(ステップS144,S146)。すなわち、表示制御部330は、現在と過去の風力の比較を行い、現在の風力が過去の風力を超えた場合(ステップS143“YES”)、表示モニタ332に所定時間内における風速の最大値(MAX)を表示する(ステップS145)。一方、現在の風力が過去の風力を超えない場合(ステップS143“NO”)、所定時間内における風速の平均値(AVE)を表示モニタ332に表示する(ステップS147)。
本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、風向風力を反映させた表示により、風の時間的な変化をドライバーに知らせることができ、したがってドライバーは横風の影響に対する車両挙動の乱れを予測でき、また、同じ風の強さでも増加傾向にあるか減少傾向にあるかがわかるため、その予測精度を更に向上させることができる。また、単位時間あたりの風の量が同じでも増加傾向にあるか減少傾向にあるかで今後車両に与える風の影響度合いにあわせて風速の大きさを調整(最大値と平均値)することで、今後の風の影響に対する予測精度を向上させることができる。
図10に、風向風力を反映させた表示内容の一例が示されている。ここでは、インパネの速度計内部に表示装置33を実装して横風表示を行なうこととした。具体的には、車両のオブジェクト100を覆うレベル数に相当する円に対してそれぞれ付与される色でレベル分けした風力を表現し、また、色で塗り潰した外枠の太矢印で風向を表現するものとした。なお、レベル0は、風力が一定値以下であり、特に注意喚起は不要なレベルである。レベル1は、風力が一定値以上であるがハンドルがとられないレベルであることを、車両のオブジェクトの最近傍に位置する円に青みがかった色を付与することで表現する。また、レベル2以上は徐々に天候が悪化して風が運転に与える影響が強まるレベルであり、表示制御部330は、レベルが高くなるにつれ、次に近くに位置する円に対して色温度が徐々に低くなる色(図中徐々に濃い黒色で示してあり、実際には暗いオレンジ色に向かう)を付与する処理を実行してVRAM331に書き込む。
すなわち、レベル2は、風によりハンドルが取られる可能性がでてきたレベル、レベル3は、風によってハンドルが弱くとられるレベル、レベル4は、ハンドルが強く採られるレベル、レベル5は、安全のために減速を促すレベルであり、この場合、方向を示す矢印と風力を示す色付けされた円を交互に点灯させて強く注意喚起を促す配慮が必要である。この表示により、ドライバーに対し必要十分な注意喚起が可能であり、ドライバーは風向風力を共にシートに座りながら把握でき、天候の悪化や好転等の傾向についても予測可能である。
なお、表示制御部330が表示データをVRAMに描画する際に車両のオブジェクト100を覆う複数の円に対して付与する色は、現時点での風速が大きい場合の表示を現時点での風速が小さい場合に比較して色温度を低く設定する。具体的には、レベルが高くなるにつれ、青みがかった白から暗いオレンジの色に変化するように順次割り当てて表示する。色温度の低い方がドライバーに与える注意喚起のインパクトが高いため有効である。また、表示制御部330は、車両10の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、風力を小さくして表示モニタ332に表示してもよい。追風や向風より横風のほうが車体に与える影響が大きいため有効である。
図11に横風表示の他の例が示されている。ここでは、ナビゲーションシステムの表示装置に表示する場合を想定している。図11によれば、区間平均(Σ1〜Σ9)を、縦軸に、風速ベクトルを目盛ることで、区間平均値●と区間ピーク値○をグラフで表記したものである。突然の横風は急に強くなるわけではなく、強弱の山谷があるものの徐々に強くなり、やがてピークを迎えて徐々に弱りなり、やがて消滅していく大きな流れがあり、ここでは、平均値トレースにより横風が増加傾向にあり、ピークトレースにより横風が減少傾向にあることを示す。また、点線で図10に示したレベルとの対応も示されている。このように、移動時間積分をとることで外乱風が徐々に悪化してきているのか徐々に改善されてきているのかの情報を得ることができ、天候予測が可能になる。図10に示す表示形態同様、単位時間あたりの風の量が同じでも増加傾向にあるか減少傾向にあるかで今後車両に与える風の影響度合いにあわせて風速の大きさを最大値と平均値で示すことで、今後の風の影響に対する予測精度を向上させることができる。
上記したように、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、図10,図11に示す表示例のように、徐々に変化していく横風の大きな流れを検出することができると共に、進行方向の左右方向だけでなく、自車に対していずれの方向から風が発生しているかが分かるため、進行方向が変化してもそこから引き継がれる注意喚起を引継ぎ、安全に走行を続けることや、場合によっては強い風の影響が客観的に分かるため、一時的に運転を見合わせる等の判断に十分な情報を得ることができ、安全運転に寄与することができる。
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、風速計20で直接検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に車両の速度変化を抑制する制御を行うため、外乱風に対して影響を受ける自車両の車体の流れを未然に防ぐことができる。また、風速を直接計測することにより、風が車体に当たって圧力になる前にその風速を遅れなく検出できるためフィードフォワード制御が可能になる。また、前後方向のベクトル成分に対してオートクルーズと回生ブレーキとの組み合わせ制御を行うことにより、低燃費、および乗り心地の改善を図ることができる。
以上説明のように本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、風速計20で直接検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に車両の速度変化を抑制する制御を行うため、外乱風に対して影響を受ける自車両の車体の流れを未然に防ぐことができる。また、風速を直接計測することにより、風が車体に当たって圧力になる前にその風速を遅れなく検出できるためフィードフォワード制御が可能になる。また、前後方向のベクトル成分に対してオートクルーズと回生ブレーキとの組み合わせ制御を行うことにより、低燃費、および乗り心地の改善を図ることができる。
また、車両の前面にベクトル投影して得られる第1の投影面積の空気抵抗と風速との力積、および車両の側面にベクトル投影して得られる第2の投影面積の空気抵抗と、風速と、前後横方向の2つのベクトル成分により発生するベクトル角との力積から、分離した横方向のベクトル成分に対する制御量を算出して走行制御装置を制御するため、横風外乱による操舵の乱れを未然に抑制することができる。更に、ベクトル角がゼロになるように、当該ベクトル角によって発生する横方向のベクトル成分を相殺する制御量を出力することで、横風外乱によってハンドルがとられた場合に、EPSと協調した横風外乱抑制制御が可能になる。
また、本実施形態に係る外乱抑制制御システム30によれば、風速を所定時間毎に取り込み、所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には表示モニタ332に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には第2の表示を行うことにより、吹き流し等を確認することなく風の時間的な変化をドライバーに知らしめることができるため、風の影響に対する車両挙動の乱れを予測することが可能になる。また、同じ風速であっても増加方向にあるか減少方向にあるかがわかるため、その予測精度を更に向上させることができる。
また、所定時間内における風速の最大値を第1の表示とし、前記所定時間内における風速の平均値を第2の表示としてそれぞれ表示モニタ332に表示することで、今後車両に与える外乱風の影響にあわせて表示する値を調整することにより今後の外乱風の影響に対する予測精度の向上が図れる。また、第1の表示を第2の表示に比較して色温度を低くして表示モニタ332に表示することで、色温度の低い方がドライバーに与える注意喚起のインパクトが高いため、外乱風の影響に応じた直感的な注意喚起が可能になる。なお、車両の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、風力を小さくして表示部に表示することで、前後方向の追い風や向かい風よりも横風の方が車両に対する影響が大きいため合理的な注意喚起が可能になる。
このように、外乱に対して影響を受ける車体の流れを未然に防止するとともに、外乱が運転に与える影響を逐一報知してドライバーに十分な注意喚起が可能になる。以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10…車両、20…風速計、30…外乱抑制制御システム、31…外乱抑制制御装置、32…走行制御装置、33…表示装置、34…CAN、310…外乱抑制制御演算部、311…外乱判定部、312…EPS制御演算部、313…合成部、330…表示制御部、331…VRAM、332…表示モニタ。
Claims (8)
- 風速をベクトルで検出する風速計と、
前記検出されたベクトルと自車両の走行速度とから計算される風速ベクトルを前後横方向のベクトル成分に分離し、当該分離した前後方向の風速ベクトル成分が所定値を超えた場合に、前記車両の速度変化を抑制する制御を行う外乱抑制制御装置と、
を備えたことを特徴とする外乱抑制制御システム。 - 設定された車速で定速走行を行う走行制御装置と、を備え、
前記外乱抑制制御装置は、
前記走行制御装置による前記車両の現在速度を維持するか、前記前後横方向の風速ベクトル成分のうち、前後方向のベクトル成分に応じた回生ブレーキにより前記車両の速度変化を抑制する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の外乱抑制制御システム。 - 車速毎に決められた特性と操舵トルクとの双方により決められる指令電流を出力する電動パワーステアリング制御装置を備え、
電動パワーステアリング制御装置は、
前記車両の前面にベクトル投影して得られる第1の投影面積の空気抵抗と前記風速との力積、および前記車両の側面にベクトル投影して得られる第2の投影面積の空気抵抗と、前記風速と、前記前後横方向の2つのベクトル成分により発生するベクトル角との力積から、前記分離した横方向のベクトル成分に対する制御量を算出して前記走行制御装置を制御することを特徴とする請求項1記載の外乱抑制制御システム。 - 前記電動パワーステアリング制御装置は、
前記ベクトル角がゼロになるように、前記ベクトル角によって発生する前記横方向のベクトル成分を相殺する前記制御量を前記走行制御装置に出力することを特徴とする請求項3記載の外乱抑制制御システム。 - 表示部と、
風速を所定時間毎に取り込み、前記所定時間以前の風速と現時点での風速とを比較し、現時点での風速が大きい場合には前記表示部に第1の表示を行い、現時点での風速が小さい場合には前記表示部に第2の表示を行う表示制御部と、
を備えたことを特徴とする外乱表示装置。 - 前記表示制御部は、
前記所定時間内における前記風速の最大値を前記第1の表示とし、前記所定時間内における前記風速の平均値を前記第2の表示としてそれぞれ前記表示部に表示することを特徴とする請求項5記載の外乱表示装置。 - 前記表示制御部は、
前記第1の表示を前記第2の表示に比較して色温度を低くして前記表示部に表示することを特徴とする請求項5または6記載の外乱表示装置。 - 前記表示制御部は、
前記車両の進行方向軸に対して同軸方向の向きの風が吹いている場合には、軸直方向の向きの風が吹いている場合に比較して、前記風力を小さくして前記表示部に表示することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項記載の外乱表示装置。
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