以下、本発明に係る捩り振動減衰装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図14は、本発明に係る捩り振動減衰装置の第1の実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1、図2において、捩り振動減衰装置10は、第2の回転部材としてのハブプレート11と、ハブプレート11と同軸上に設けられ、ハブプレート11に対して相対回転自在に配設される第1の回転部材としてのディスクプレート12、13とを備えている。
また、捩り振動減衰装置10は、ハブプレート11とディスクプレート12、13とを円周方向に弾性的に連結するスプリングとしての4個のコイルスプリング14と、それぞれのコイルスプリング14をハブプレート11に支持するスプリングシート15、16とを備えている。
ハブプレート11は、ボス17と、ボス17から半径方向外方に突出するフランジ18とから構成されており、ボス17の内周部には図示しない駆動伝達系に含まれる変速機の入力軸19がスプライン嵌合されている。
ここで、駆動伝達系は、変速機、ディファレンシャル装置、ドライブシャフト等の捩り振動減衰装置10から駆動輪までのドライブラインを含むものである。
ディスクプレート12、13は、ハブプレート11の回転軸方向両側に配設されており、ディスクプレート12、13は、半径方向外周側の複数箇所でリベット27によって連結されている。すなわち、ハブプレート11は、ディスクプレート12、13の間に設けられている。
ハブプレート11には4つのスプリング収容孔21が形成されているとともに、ディスクプレート12、13にはスプリング収容孔21に対向してそれぞれ4つの窓部22、23が形成されており(窓部23側は図3参照)、スプリング収容孔21および窓部22、23の内部にはコイルスプリング14が収容されている。
スプリング収容孔21は、フランジ18を半径方向外方に切欠いて形成された切欠きから構成されており、本発明の切欠き部を構成している。
また、スプリングシート15およびスプリングシート16は、コイルスプリング14の円周方向端面をそれぞれスプリング収容孔21の円周方向一端部(以下、単に一端部21aという)および円周方向他端部(以下、単に他端部21bという)を支持するようになっている。本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、スプリングシート15は、第1の支持部材を構成し、スプリングシート16は、第2の支持部材を構成している。
ここで、円周方向とは、ディスクプレート12、13およびハブプレート11の回転方向と同方向であり、半径方向とは、ディスクプレート12、13およびハブプレート11の放射方向と同方向である。また、回転軸方向とは、ディスクプレート12、13の回転軸方向であり、入力軸19の回転軸と同方向である。
図1、図4〜図6に示すように、スプリングシート15、16は、内周部に座巻が形成された支持面としてのシート着座面15a、16aおよびシート着座面15a、16aから円周方向に突出する突出部15b、16bを備えている。
シート着座面15a、16aの内周部には座巻が形成されており、この座巻は、コイルスプリング14の円周方向両端部の一巻分あるいは二巻分に相当し、この座巻にコイルスプリング14の円周方向端部を着座させるようにしている。
そして、スプリングシート15の座巻にはコイルスプリング14の延在方向一端部(以下、単に一端部14aという)が係合しており、スプリングシート16の座巻にはコイルスプリング14の延在方向他端部(以下、単に、他端部14bという)が係合している。
すなわち、スプリングシート15、16のそれぞれの座巻にはコイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが係合することにより、コイルスプリング14の回転が防止されてコイルスプリング14がスプリングシート15、16に装着される。
図1、図6に示すように、スプリング収容孔21の一端部21aおよび他端部21bは、スプリングシート15、16のシート着座面15a、16aの背面15c、16cに係合するようになっている。
具体的には、スプリング収容孔21の一端部21aおよび他端部21bの形状は、スプリングシート15、16の背面15c、16cに沿った形状となっており、スプリング収容孔21の一端部21aおよび他端部21bは、スプリングシート15、16の背面15c、16cに密着して係合するようになっている。
このため、コイルスプリング14の付勢力を受けてスプリングシート15、16がスプリング収容孔21の一端部21aおよび他端部21bに付勢されることにより、スプリングシート15、16がハブプレート11のフランジ18に取付けられる。
また、図4〜図6に示すように、窓部22、23は、ディスクプレート12、13から回転軸方向外方に突出する窓枠22A、23Aを有しており、この窓枠22A、23Aには窓孔22B、23Bが形成されている。この窓孔22B、23Bの半径方向の幅は、スプリングシート15、16の半径方向長さよりも小さく形成されている。
そして、スプリングシート15、16の回転軸方向の両面は、窓枠22A、23Aに支持されている。窓部22、23の円周方向一端部(以下、単に一端部22C、23Cという)および円周方向他端部(以下、単に他端部22D、23Dという)にはスプリングシート15、16の背面15c、16cが当接する当接部22E、23E、22F、23Fが設けられている。
したがって、スプリングシート15、16は、スプリング収容孔21の一端部21aおよび他端部21bと、窓部22、23の窓枠22A、23Aとによって支持されている。
一方、図4、図6に示すように窓枠23Aの一端部23aとスプリングシート15の側面との間には隙間24が形成されており、スプリングシート15は、窓枠22Aの一端部22aに当接して窓枠23Aの一端部23aから離隔する第1の位置と、窓枠22Aの一端部22aから離隔して窓枠23Aの一端部23aに近接する第2の位置との間で隙間24の範囲で移動自在となっている。すなわち、スプリングシート15は、ディスクプレート12、13の回転軸方向に移動自在となっている。
また、スプリングシート16の両側面は、窓枠22Aの他端部22bおよび窓枠23Aの他端部23bに当接しており、スプリングシート16は、ディスクプレート12、13の回転軸方向に移動しないようになっている。
また、窓枠23Aの一端部23aとスプリングシート15の側面との間の隙間24には付勢部材としての板ばね25が介装されており、板ばね25は、スプリングシート15をディスクプレート12に向かって付勢している。
この板ばね25は、V字状に形成されており、一方の部材25aが窓枠23Aの一端部23aに固定され、他方の部材25bがスプリングシート15の側面に当接し、一方の部材25aと他方の部材25bとの連接部25cがスプリングシート16に対向している。
このため、連接部25cと反対側の一方の部材25aと他方の部材25bとの先端は、当接部23Eに対向している。
ここで、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、窓枠23Aの一端部23aおよび当接部23Eが窓部23の延在方向一端部を構成している。
図6に示すようにスプリングシート16のシート着座面16aに設けられた突出部16bは、突出部16bの中心軸O1がスプリングシート15、16の中心軸Oと一致するようにスプリングシート16に設けられている。
また、スプリングシート15のシート着座面15aに設けられた突出部15bは、突出部15bの中心軸O2がスプリングシート15、16の中心軸Oに対してディスクプレート13側にずれるようにしてスプリングシート15に設けられている。
このため、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bは、回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられている。ここで、突出部15b、16bは、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bを回転軸方向にずれるようにして保持する保持部を構成している。
図1、図2に示すように、ディスクプレート12の外周部には環状のクッショニングプレート26の内周部が連結されており、ディスクプレート12とクッショニングプレート26は、ディスクプレート12、13を連結するリベット27によって連結されている。
クッショニングプレート26の回転軸方向両側には、リベット28により環状の摩擦材29a、29bが固定されており、この摩擦材29a、29bは、駆動源としての図示しない内燃機関のクランクシャフトに固定された図示しないフライホイールとフライホイールにボルト固定されたクラッチカバーのプレッシャプレートとの間に位置している。
そして、摩擦材29a、29bがプレッシャプレートに押圧されてフライホイールとプレッシャプレートに摩擦接触することで、内燃機関の回転トルクがディスクプレート12、13に入力される。
また、図示しないクラッチペダルが踏み込まれると、プレッシャプレートが摩擦材29a、29bを押圧するのを解除し、摩擦材29a、29bがフライホイールから離隔することで、内燃機関の回転トルクがディスクプレート12、13に入力されない。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側(図1のR2方向)および正側と反対方向の負側(図1のR1方向)に相対回転したときには、コイルスプリング14が弾性変形、すなわち、圧縮されてスプリングシート15またはスプリングシート16が窓部22、23に沿って移動するようになっている。
以下の説明では、ディスクプレート12、13とハブプレート11とが相対回転することを、ディスクプレート12、13とハブプレート11とが捩れると表現する。
このコイルスプリング14は、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れた場合およびディスクプレート12、13に対してハブプレート11が負側に捩れた場合に圧縮することにより、ハブプレート11とディスクプレート12、13との間で振動を吸収しつつ回転トルクを伝達するようになっている。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れるのは、車両の加速時であり、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が負側に捩れるのは、エンジンブレーキが発生する減速時である。
図2に示すように、ディスクプレート12、13とボス17の間には環状のガイド部材30が設けられており、このガイド部材30は、ディスクプレート12、13の回転中心軸がハブプレート11の回転中心軸と一致するようにディスクプレート12、13をハブプレート11に位置決めしている。
また、ボス17の外周部であって、フランジ18とディスクプレート13との間には環状のガイド部材33が設けられており、このガイド部材33は、例えば、回転軸方向に弾性変形自在な弾性部材から構成されている。
ガイド部材33は、ガイド部材33の回転軸方向の両面がフランジ18とディスクプレート13とに当接しており、ガイド部材33の回転軸方向の両面にはフランジ18とディスクプレート13との相対回転によりガイド部材33の磨耗を抑制するためのコーティング処理が施されている。
また、フランジ18とディスクプレート12との間には環状の摩擦材31および環状の皿ばね32が設けられている。
摩擦材31は、フランジ18に所定の摩擦力で摩擦接触しているとともに、皿ばね32は、摩擦材31をフランジ18に付勢している。この摩擦材31および皿ばね32は、ハブプレート11およびディスクプレート12、13が捩れたときに、ハブプレート11およびディスクプレート12、13との間にヒステリシストルクを発生させるようになっている。本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、摩擦材31および皿ばね32がヒステリシス機構を構成している。
ここで、摩擦材31に対向するフランジ18の対向面には摩擦材31に接触する摩擦材が設けられている。また、摩擦材31に接触する摩擦材の代わりにフランジ18の対向面に摩擦力が高いコーティング処理を施してもよい。
次に、作用を説明する。
捩り振動減衰装置10にコイルスプリング14を収縮させるだけの回転トルクが加わらないときには、ハブプレート11とディスクプレート12、13との捩れ角が略0となっている。
摩擦材29a、29bがプレッシャプレートに押圧されてフライホイールとプレッシャプレートに摩擦接触すると、内燃機関の回転トルクがディスクプレート12、13に入力され、クッショニングプレート26を介してディスクプレート12、13に回転トルクが伝達される。
このとき、捩り振動減衰装置10に加わる内燃機関のトルク変動による回転変動は、コイルスプリング14の収縮によってディスクプレート12、13とハブプレート11との間で緩衝されながら変速機の入力軸19に伝達される。
次に、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れる場合の動作と、負側に捩れる場合の動作を説明する。但し、内燃機関からの回転トルクが伝達されたときのディスクプレート12、13の回転方向をR1方向とする。
車両の加速時に内燃機関の回転変動が大きくなると、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなり、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れることにより、コイルスプリング14が圧縮してディスクプレート12、13からハブプレート11に回転トルクを伝達する。
ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角が大きくなると、ディスクプレート12、13がR1方向に回転するのに伴って、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR2方向(正側)に捩れることになる。
このときのディスクプレート12、13とハブプレート11の動作を図7〜図11に基づいて説明する。なお、図8、図11では、ディスクプレート12を図示していないが、ディスクプレート12は、ディスクプレート13と平行移動するので、ディスクプレート13と同じ動作をする。
図7〜図9において、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が小さい場合には、ディスクプレート12、13の窓部22、23の当接部22E、23Eがスプリングシート15をスプリングシート16に向かって押圧する。このとき、スプリングシート16がハブプレート11のスプリング収容孔21の一端部21aから離隔する。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR2方向(正側)に捩れるのに伴ってハブプレート11のスプリング収容孔21の他端部21bがスプリングシート16をスプリングシート15に向かって押圧する。このとき、スプリングシート15は、窓部22、23の当接部22F、23Fから離隔する。
また、図9(a)に示すように、スプリングシート15が板ばね25の付勢力に抗して第1の位置からディスクプレート13側に移動する。捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられているので、コイルスプリング14は、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対して分力F1が発生する(図9(b)参照)。
ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角がさらに大きくなると、図10(a)に示すように、スプリングシート15が板ばね25の付勢力に抗してディスクプレート13側にさらに移動し、第2の位置まで移動する。
このとき、コイルスプリング14は、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対して、さらに大きい分力F1が発生する(図10(b)参照)。この結果、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなる程、トルク伝達方向のコイルスプリング14のばね剛性を小さくすることができる。
一方、ディスクプレート12とハブプレート11との間に摩擦材31および皿ばね32が介装されるため、ディスクプレート12に対してハブプレート11がR2方向に捩れるときに、皿ばね32の弾性力によってディスクプレート12とハブプレート11との間にヒステリシストルクが発生する。
本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられているので、コイルスプリング14が圧縮したときに回転軸方向にF2で示すコイルスプリング14のばね剛性が作用し、このばね剛性は、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれて大きくなる。
すなわち、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてコイルスプリング14のばね剛性F2によりディスクプレート13が回転軸方向外方(図2、図9、図10中、右方)に付勢される付勢力が大きくなる。
ディスクプレート12、13は、一体的に設けられているため、ディスクプレート12、13がコイルスプリング14によって右方に付勢されると、ディスクプレート12、13がハブプレート11に対して図2、図9、図10中、右方に移動する。
ディスクプレート12とフランジ18との間には摩擦材31および皿ばね32が介装されているため、ディスクプレート12、13がハブプレート11に対して右方に移動すると、ディスクプレート12とフランジ18との間の隙間が小さくなり、皿ばね32の圧縮量が多くなる。このため、ディスクプレート12とハブプレート11との間に発生するヒステリシストルクが大きくなる。
一方、車両の減速時には、内燃機関の回転トルクが小さくなり、エンジンブレーキが発生するため、変速機の入力軸19からハブプレート11に回転トルクが入力される。
減速時に内燃機関の回転変動が大きくなると、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなり、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が負側(R1側)に捩れることにより、コイルスプリング14が圧縮してハブプレート11からディスクプレート12、13に回転トルクを伝達する。
ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角が大きくなると、ハブプレート11がR1方向に回転するのに伴って、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が中立位置からR1方向(負側)に捩れることになる。
このときのディスクプレート12、13とハブプレート11の動作を図11、図12に基づいて説明する。なお、図11では、ディスクプレート12を図示していないが、ディスクプレート12は、ディスクプレート13と平行移動するので、ディスクプレート13と同じ動作をする。
図11において、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR1方向(負側)に捩れると、ディスクプレート12、13の窓部22、23の当接部22F、23Fがスプリングシート16をスプリングシート15に向かって押圧する。このとき、スプリングシート16からハブプレート11のスプリング収容孔21の他端部21bが離隔する。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR1方向(負側)に捩れるのに伴ってハブプレート11のスプリング収容孔21の一端部21aがスプリングシート15をスプリングシート16に向かって押圧する。このとき、スプリングシート16は、窓部22、23の当接部22E、23Eから離隔する。
図12(a)に示すように、スプリングシート16は、回転軸方向に移動しないため、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対するコイルスプリング14の分力F1は、加速側の同一の捩れ角に比べて小さいものとなる。
ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角がさらに大きくなると、スプリングシート16が窓部22、23の当接部22E、23Eからさらに離隔する。このときにも図12(b)に示すように、スプリングシート16は、回転軸方向に移動しないため、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対するコイルスプリング14の分力は、負側の捩れ角が小さい状態と同じであり、変化しない。したがって、トルク伝達方向のコイルスプリング14のばね剛性は、正側に比べて大きくなる。
一方、ディスクプレート12とハブプレート11との間に摩擦材31および皿ばね32が介装されるため、ディスクプレート12に対してハブプレート11がR2方向に捩れるときに、皿ばね32の弾性力によってディスクプレート12とハブプレート11との間にヒステリシストルクが発生する。
本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、捩れ特性の負側において、コイルスプリング14が圧縮したときに回転軸方向にコイルスプリング14のばね剛性が作用するが、このばね剛性は、正側に比べて小さく、ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角が大きくなっても変化しない。
このため、ディスクプレート12がコイルスプリング14によって回転軸方向に付勢されても皿ばね32の圧縮量の変化は加速側に比べて小さく、ディスクプレート12とハブプレート11との間に発生するヒステリシストルクは、ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角の変化に応じて一定となる。
ここで、本実施の形態の板ばね25は、一方の部材25aと他方の部材25bとの連接部25cがスプリングシート16に対向している。このため、ディスクプレート12、13とハブプレート11とが中立位置(捩れ角が略0)に復帰するときに、スプリングシート15を一方の部材25bに接触させることができる。
したがって、スプリングシート15が当接部22E、23Eに当接する位置まで板ばね25に遮られるのを防止することができ、スプリングシート15を円滑に当接部22E、23Eに移動させることができる。
このように本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bをディスクプレート12、13の回転軸方向にずれるようにして、ディスクプレート12、13およびハブプレート11に設置した。
このため、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれて、ディスクプレート12、13およびハブプレート11の回転方向であるトルク伝達方向に対して傾斜する方向にコイルスプリング14を圧縮させることができる。
これに加えて、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側(加速側)捩れるのに伴い、コイルスプリング14の一端部14aを回転軸方向に移動させるようにしたので、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなる程、コイルスプリング14のトルク伝達方向に対する分力F2を大きくすることができる。
この結果、高トルク域において、捩り振動減衰装置10のトルク伝達方向のコイルスプリング14のばね剛性を、傾斜していない従来のコイルスプリングのばね剛性よりも小さくすることができ、加速側の捩り振動の減衰性能を向上させることができる。
このため、内燃機関のトルク変動による回転変動を起振源とした捩り振動によって発生するジャラ音を発生することができる。
ここで、ジャラ音とは、内燃機関のトルク変動による回転変動を起振源とした捩り振動によって変速歯車組の空転歯車対が衝突して生じるジャラジャラという異音のことである。
特に、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、内燃機関の高トルク域でコイルスプリング14のばね剛性を低減することができることから、内燃機関の高トルク域でドライバビリティが悪化し易い小気筒の内燃機関に適用した場合に好ましいものとなる。
一方、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、加速側においてディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてヒステリシストルクを大きくすることができるため、車両のこもり音等が発生するのを抑制することができる。
具体的には、内燃機関の回転数が高くなると、内燃機関の回転数が捩り共振点に相当する回転数(例えば、任意の定常回転)を通過することになる。従来では、内燃機関の回転数が捩り共振点を通過する際に、共振点付近において、図13に破線で示すように、駆動伝達系の捩り共振により捩り振動が増大してしまい、こもり音として車室内に異音が発生してしまう。
これに対して、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、加速側において、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてヒステリシストルクを大きくすることができる。このため、図13の破線を実線で示す位置まで低減させて駆動伝達系の捩り共振を抑制することができ、こもり音が発生するのを抑制することができる。
図14に示すように、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、捩れ特性の正側において、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなる高トルク領域において、コイルスプリング14のばね剛性を従来(一点鎖線で示す)のコイルスプリングを用いた場合よりも小さく、かつ、ヒステリシストルクを大きくすることができる。この結果、振動の減衰性能を向上させてジャラ音およびこもり音が発生するのを抑制することができる。
また、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が小さい低トルク域および中トルク領域では、コイルスプリング14のばね剛性が低いと、ドライバビリティが悪化してしまうおそれがある。
本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が小さい場合には、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きい場合に比べてコイルスプリング14の回転軸方向の傾きを小さくすることができる。
このため、低トルク域および中トルク領域において、コイルスプリング14のばね剛性を従来のコイルスプリングと同等の高いばね剛性に維持することができるため、ドライバビリティを向上させることができる。
また、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、スプリングシート15とディスクプレート13の窓枠23Aの一端部23aとの間に、スプリングシート15が回転軸方向に移動自在な隙間24を形成した。このため、加速側においてディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるのに伴ってコイルスプリング14の一端部14aを回転軸方向に移動させることができる。このため、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなる程、コイルスプリング14のトルク伝達方向に対する分力F1を大きくすることができる。
また、本実施の形態の捩れ捩り振動減衰装置10は、スプリングシート15とディスクプレート13の窓枠23Aの一端部23aとの間に、スプリングシート15を回転軸方向に付勢する板ばね25を介装した。
このため、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れるのに伴い、コイルスプリング14の一端部14aを板ばね25の付勢力に抗して回転軸方向に移動させることができる。
したがって、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてコイルスプリング14が急激に圧縮してコイルスプリング14の剛性が急激に大きくなるのを防止して、コイルスプリング14を徐々に大きく圧縮させることができる。この結果、コイルスプリング14のばね剛性を徐々に大きくすることができ、安定した捩れ特性を得ることができる。
また、本実施の形態の捩れ捩り振動減衰装置10は、スプリングシート15のシート着座面15aに設けられた突出部15bの中心軸O2と、スプリングシート16のシート着座面16aに設けられた突出部16bの中心軸O1とを中心軸Oに対して回転軸方向にずらすことにより、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが回転軸方向にずれるようにした。
このため、コイルスプリング14をトルク伝達方向に対して傾斜する方向に容易に設置することができる。
また、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14が圧縮したときに、F2で示すコイルスプリング14のばね剛性が作用するディスクプレート13とフランジ18との間に摩擦材31および皿ばね32を介装した。
このため、加速側においてディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてヒステリシストルクを大きくすることができ、駆動伝達系の捩り共振を抑制することができる。
また、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、付勢部材を板ばね25から構成しているが、板ばね25に限定されるものではない。
(第2の実施の形態)
図15〜図21は、本発明に係る捩り振動減衰装置の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図15〜図17において、ディスクプレート12、13にはスプリング収容孔21に対向してそれぞれ4つの窓部41、42が形成されており、スプリング収容孔21および窓部41、42の内部にはコイルスプリング14が収容されている。このコイルスプリング14の一端部14aは、第1の支持部材としてのスプリングシート43に支持されており、コイルスプリング14の他端部14bは、第2の支持部材としてのスプリングシート44に支持されている。
図17に示すように、スプリングシート43およびスプリングシート44は、コイルスプリング14の円周方向端面をそれぞれスプリング収容孔21の一端部21cおよび他端部21dに支持するようになっている。
また、スプリングシート43、44のシート着座面43a、44aにはシート着座面43a、44aから円周方向に突出する突出部43b、44bが設けられている。
窓部41、42は、ディスクプレート12、13から回転軸方向外方に突出する窓枠41A、42Aを有しており、この窓枠41A、42Aには窓孔41B、42Bが形成されている。この窓孔41B、42Bの半径方向の幅は、スプリングシート43、44の半径方向長さよりも小さく形成されている。
そして、スプリングシート43、44の回転軸方向の両面は、窓枠41A、42Aに支持されている。窓部41、42の円周方向一端部(以下、単に一端部41C、42Cという)および円周方向他端部(以下、単に他端部41D、42Dという)にはスプリングシート43、44の背面43c、44cが当接する当接部41E、42E、41F、42Fが設けられている。
したがって、スプリングシート43、44は、スプリング収容孔21の一端部21cおよび他端部21dと、窓部41、42の窓枠41A、42Aとによって支持されている。
一方、窓枠42Aの一端部42aとスプリングシート43の側面との間には隙間45が形成されており、スプリングシート43は、窓枠41Aの一端部41aに当接して窓枠42Aの一端部42aから離隔する第1の位置と、窓枠41Aの一端部41aから離隔して窓枠42Aの一端部42aに近接する第2の位置との間で隙間45の範囲で移動自在となっている。すなわち、スプリングシート43は、ディスクプレート12、13の回転軸方向に移動自在となっている。
また、スプリングシート44の両側面は、窓枠41Aの他端部41bおよび窓枠42Aの他端部42bに当接しており、スプリングシート44は、ディスクプレート12、13の回転軸方向に移動しないようになっている。
また、窓枠42Aの一端部42aとスプリングシート43の側面との間の隙間45には付勢部材としての板ばね46が介装されており、板ばね46は、スプリングシート43をディスクプレート12に向かって付勢している。
この板ばね46は、V字状に形成されており、一方の部材46aが窓枠42Aの一端部42aに固定され、他方の部材46bがスプリングシート43の側面に当接し、一方の部材46aと他方の部材46bとの連接部46cがスプリングシート44に対向している。
このため、連接部46cと反対側の一方の部材46aと他方の部材46bとの先端は、当接部42Eに対向している。
ここで、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、窓枠42Aの一端部42aおよび当接部42Eが窓部42の延在方向一端部を構成している。
また、スプリングシート44のシート着座面44aに設けられた突出部44bは、突出部44bの中心軸O1がスプリングシート43、44の中心軸Oと一致するようにスプリングシート44に設けられている。
また、スプリングシート43のシート着座面43aに設けられた突出部44bは、突出部43bの中心軸O2がスプリングシート43、44の中心軸Oに対してディスクプレート13側にずれるようにしてスプリングシート43に設けられている。
このため、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bは、回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられている。ここで、突出部43b、44bは、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bを回転軸方向にずれるようにして保持する保持部を構成している。
図16に示すように、ボス17の外周部であって、フランジ18とディスクプレート12との間には環状のガイド部材47が設けられており、このガイド部材47は、例えば、回転軸方向に弾性変形自在な弾性部材から構成されている。
ガイド部材47は、ガイド部材47の回転軸方向の両面がフランジ18とディスクプレート12とに当接しており、ガイド部材47の回転軸方向の両面にはフランジ18とディスクプレート12との相対回転によりガイド部材47の磨耗を抑制するためのコーティング処理が施されている。
また、フランジ18とディスクプレート13との間には環状の摩擦材48および環状の皿ばね49が設けられている。
摩擦材48は、フランジ18に所定の摩擦力で摩擦接触しているとともに、皿ばね49は、摩擦材48をフランジ18に付勢している。この摩擦材48および皿ばね49は、ハブプレート11およびディスクプレート12、13が捩れたときに、ハブプレート11およびディスクプレート12、13との間にヒステリシストルクを発生させるようになっている。本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、摩擦材48および皿ばね49がヒステリシス機構を構成している。
次に、作用を説明する。
ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れる場合の動作と、負側に捩れる場合の動作を説明する。但し、内燃機関からの回転トルクが伝達されたときのディスクプレート12、13の回転方向をR1方向とする。
車両の加速時に内燃機関の回転変動が大きくなると、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなり、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が正側に捩れることにより、コイルスプリング14が圧縮してディスクプレート12、13からハブプレート11に回転トルクを伝達する。
ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角が大きくなると、ディスクプレート12、13がR1方向に回転するのに伴って、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR2方向(正側)に捩れることになる。
ディスクプレート12、13がR1方向に回転すると、ディスクプレート12、13の窓部41、42の当接部41F、42Fがスプリングシート44をスプリングシート43に向かって押圧する。このとき、スプリングシート44からハブプレート11のスプリング収容孔21の他端部21dが離隔する。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR2方向(正側)に捩れるのに伴ってハブプレート11のスプリング収容孔21の一端部21cがスプリングシート43をスプリングシート44に向かって押圧する。このとき、スプリングシート43は、窓部41、42の当接部41E、42Eから離隔する。
このとき、図18(a)に示すように、スプリングシート44は、回転軸方向に移動しないため、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対するコイルスプリング14の分力は、負側に比べて小さい。
ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角がさらに大きくなると、スプリングシート44が窓部41、42の当接部41E、42Eからさらに離隔する。このとき、図18(b)に示すように、スプリングシート44が回転軸方向に移動しないため、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対するコイルスプリング14の分力は、変化しない。
また、ディスクプレート13とハブプレート11との間に摩擦材48および皿ばね49が介装されるため、ディスクプレート13に対してハブプレート11がR2方向に捩れるときに、皿ばね49の弾性力によってディスクプレート13とハブプレート11との間にヒステリシストルクが発生する。
一方、車両の減速時には、内燃機関の回転トルクが小さくなり、エンジンブレーキが発生するため、変速機の入力軸19からハブプレート11に回転トルクが入力される。
減速時に内燃機関の回転変動が大きくなると、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなり、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が負側に捩れることにより、コイルスプリング14が圧縮してハブプレート11からディスクプレート12、13に回転トルクを伝達する。
ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR1方向(負側)に捩れると、ディスクプレート12、13の窓部41、42の当接部41E、42Eがスプリングシート43をスプリングシート44に向かって押圧する。このとき、スプリングシート43からハブプレート11のスプリング収容孔21の一端部21cが離隔する。
また、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11がR1方向(負側)に捩れるのに伴ってハブプレート11のスプリング収容孔21の他端部21dがスプリングシート44をスプリングシート43に向かって押圧する。
このとき、スプリングシート44は、窓部41、42の当接部41F、42Fから離隔する。
また、図19(a)に示すように、スプリングシート43が板ばね46の付勢力に抗して第1の位置からディスクプレート13側に移動する。捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられているので、コイルスプリング14は、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対して分力F1が発生する(図19(b)参照)。
ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角がさらに大きくなると、図20(a)に示すように、スプリングシート15が板ばね25の付勢力に抗してディスクプレート13側にさらに移動し、第2の位置まで移動する。
このとき、コイルスプリング14は、トルク伝達方向であるディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ方向に対して、さらに大きい分力F1が発生する(図20(b)参照)。この結果、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなる程、トルク伝達方向のコイルスプリング14のばね剛性を小さくすることができる。
一方、ディスクプレート13とハブプレート11との間に摩擦材48および皿ばね49が介装されるため、ディスクプレート12に対してハブプレート11がR2方向に捩れるときに、皿ばね49の弾性力によってディスクプレート12とハブプレート11との間にヒステリシストルクが発生する。
本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bが回転軸方向にずれるようにしてディスクプレート12、13に取付けられているので、コイルスプリング14が圧縮したときに回転軸方向にもF2で示すコイルスプリング14のばね剛性が作用し、このばね剛性は、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれて大きくなる。
すなわち、ディスクプレート12とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてコイルスプリング14のばね剛性F2によりディスクプレート13が回転軸方向外方(図16、図19、図20中、左方)に付勢される付勢力が大きくなる。
ディスクプレート12とフランジ18の間に介装されるガイド部材47は、弾性部材から構成されているため、ディスクプレート12、13がハブプレート11に対して左方に移動すると、ガイド部材47が回転軸方向に圧縮する。このとき、フランジ18とディスクプレート13との距離が大きくなり、皿ばね49の圧縮量が小さくなる。このため、ディスクプレート13とハブプレート11との間に発生するヒステリシストルクが小さくなる。
このように、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14の一端部14aおよび他端部14bをディスクプレート12、13の回転軸方向にずれるようにして、ディスクプレート12、13およびハブプレート11に設置した。
このため、減速側でディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれて、ディスクプレート12、13およびハブプレート11の回転方向であるトルク伝達方向に対して傾斜する方向にコイルスプリング14を圧縮させることができる。
これに加えて、ディスクプレート12、13に対してハブプレート11が負側に捩れるのに伴い、コイルスプリング14の一端部14aを回転軸方向に移動させるようにしたので、ディスクプレート12、13とハブプレート11の捩れ角が大きくなる程、コイルスプリング14のトルク伝達方向に対する分力F2を大きくすることができる。
この結果、捩り振動減衰装置10のトルク伝達方向のコイルスプリング14のばね剛性を、傾斜していない従来のコイルスプリングのばね剛性よりも小さくすることができ、減速側の捩り振動の減衰性能を向上させることができる。
このため、内燃機関のトルク変動による回転変動を起振源とした捩り振動によって発生するジャラ音を発生することができる。
具体的には、加速時の内燃機関の回転変動は、内燃機関の低速回転領域で大きく、減速時の内燃機関の回転変動は、内燃機関の高速回転領域で大きくなる特性を有している。
このため、加速時には捩り共振点付近で捩り振動減衰装置10のヒステリシストルクを大きくすることにより、低回転領域の駆動伝達系の捩り共振を抑制し、減速時には内燃機関の回転変動が大きい高回転領域で捩り振動減衰装置10のヒステリシストルクを小さくすることにより、減衰力を大きくして捩り振動を抑制する必要がある。
本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、図21に示すように、捩れ特性の正側において、ディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなる高トルク領域において、コイルスプリング14のばね剛性を従来(一点鎖線で示す)のコイルスプリングを用いた場合よりも小さく、かつ、ヒステリシストルクを小さくすることができる。このため、減速時の駆動伝達系の減衰力を大きくして捩り振動を抑制することができる。
すなわち、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、コイルスプリング14が圧縮したときに、F2で示すコイルスプリング14のばね剛性が作用するディスクプレート12と反対側のディスクプレート13とフランジ18との間に摩擦材48および皿ばね49を介装した。
このため、減速側においてディスクプレート12、13とハブプレート11との捩れ角が大きくなるにつれてヒステリシストルクを小さくすることができ、捩り振動を減衰することができる。
また、加速時には減速時よりもコイルスプリング14のばね剛性およびヒステリシストルクを大きくすることができる。このため、加速時には捩り共振点付近で捩り振動減衰装置10のヒステリシストルクを大きくすることができ、低回転領域の駆動伝達系の捩り共振を抑制することができる。
なお、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、全てのコイルスプリング14をトルク伝達方向に対して傾斜させているが、これに限定されるものではない。例えば、図15の上下に位置するコイルスプリング14を本実施の形態のコイルスプリング14と同様に傾斜させ、左右に位置するコイルスプリング14を傾斜させないようにしてもよい。すなわち、コイルスプリング14の一部を傾斜させるようにしてもよい。
このように構成しても減速時のコイルスプリング14のばね剛性を従来よりも小さくすることができるとともに、ヒステリシストルクを従来よりも小さくすることができる。
また、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、内燃機関からの回転トルクが伝達されたときのディスクプレート12、13の回転方向をR1方向としているが、回転方向は、これに限定されるものではない。
ここで、上記各実施の形態の捩り振動減衰装置10は、ボス17の外周部とフランジ18の内周部とをスプライン嵌合し、ボス17のスプラインの一部とフランジ18のスプラインの一部との間に小スプリングを介装するようにしてもよい。
このようにすれば、小スプリングによってボス17とフランジ18との間で発生する微小な捩り振動を吸収することができる。このため、アイドル状態でニュートラルに変速したとき等のように内燃機関の変動トルクが小さい領域、すなわち、ハブプレート11とディスクプレート12、13との捩れ角が小さい場合に、無負荷状態にある変速機の歯車対からガラガラという歯打ち音、所謂、ガラ音が発生するのを抑制することができる。
また、本実施の形態の捩り振動減衰装置10は、車両の内燃機関と変速機を有する駆動伝達系との間に介装されているが、これに限らず、車両等の駆動伝達系に設けられる捩り振動減衰装置であれば何でもよい。
例えば、ハイブリッド車両にあっては、内燃機関の出力軸と、電動機と車輪側出力軸とに動力を分割する動力分割機構との間に介装されるハイブリッドダンパ等の捩り振動減衰装置に適用してもよい。
また、トルクコンバータのロックアップクラッチ装置と変速歯車組の間に介装されるロックアップダンパ等の捩り振動減衰装置に適用してもよい。また、ディファレンシャルケースとディファレンシャルケースの外周部に設けられたリングギヤとの間に捩り振動減衰装置を設けてもよい。
以上のように、本発明に係る捩り振動減衰装置は、捩れ角が大きい高トルク域の弾性部材のばね剛性を低減することができ、捩り振動の減衰性能を向上させることができるという効果を有し、車両等に搭載され、第1の回転部材と第2の回転部材との間で回転トルクが伝達されるように第1の回転部材と第2の回転部材とを弾性部材を介して相対回転自在に連結した捩り振動減衰装置等として有用である。