JP2014104193A - インプラント用コーティング剤、インプラント及びインプラントの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インプラント材による炎症を低減することができるインプラント用コーティング剤を提供することを目的とする。
【解決手段】人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖
【選択図】なし

Description

本発明は、インプラント用コーティング剤、インプラント及びインプラントの製造方法に関する。
従来、医科及び歯科領域において、インプラントが多用されている。このようなインプラントの素材(インプラント材)としては、金属材料{チタン、チタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス、タンタル及びバイタリウム等}(特許文献1)や高分子材料{MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー及びポリビニルアルコール等}(特許文献2)、セラミックス{ハイドロキシアパタイト等}が一般に用いられている。しかし、これらのインプラント材は、生体内へ埋め込まれた際に、体内での免疫反応により、炎症が起こる問題がある。
特許第4907643号公報 国際公開2009/081870号
本発明は、インプラント材による炎症を低減することができるインプラント用コーティング剤を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤;このインプラント用コーティング剤により表面を被覆されたインプラント;このインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面を被覆する工程を含むインプラントの製造方法;このインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加える工程を含むインプラントの製造方法である。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。
インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
本発明のインプラント用コーティング剤は、インプラント材による炎症を低減することができる。
本発明において、人工タンパク質(A)は、動物由来成分を排除するために、人工的に製造されるものであり、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって製造できる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、人工タンパク質(A)を作製できるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
本発明のインプラント用コーティング剤は、人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤である。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
本発明において、ポリペプチド鎖(Y)は、具体的には(GVGVP)a配列(Y1)、(PGVGV)b配列(Y2)、(VPGVG)c配列(Y3)、(GVPGV)d配列(Y4)、(VGVPG)e配列(Y5)、(GPP)f配列(Y6)、(GAP)g配列(Y7)及び(GAHGPAGPK)h配列(Y8)で表されるポリペプチド鎖等が挙げられる。(なお、a〜hはそれぞれアミノ酸配列(X)の連続する個数であり、2〜200の整数である。)
人工タンパク質(A)1分子中にポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記ポリペプチド鎖を1種有してもよく、2種以上有してもよい。
また、人工タンパク質(A)中にアミノ酸配列(X)が同種類のポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、上記a〜hが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、a〜hが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもいい。
ポリペプチド鎖(Y)を構成するアミノ酸配列(X)としては、細胞との親和性及び炎症の抑制の観点から、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)及びVGVPG配列(5)が好ましく、さらに好ましくはGVGVP配列(1)及びVPGVG配列(3)である。
ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞との親和性及び炎症の抑制の観点から、(GVGVP)b配列(Y1)、(PGVGV)b配列(Y2)、(VPGVG)c配列(Y3)、(GVPGV)d配列(Y4)及び(VGVPG)e配列(Y5)が好ましく、さらに好ましくは(GVGVP)b配列(Y1)及び(VPGVG)c配列(Y3)である。
本発明において、ポリペプチド鎖(Y’)は、(Y)中の全アミノ酸の個数のうち、0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖である。具体例としては、ポリペプチド鎖(Y)を構成するアミノ酸配列(X)の一部又は全部が、下記アミノ酸配列(X’)に置換され、(Y)中の全アミノ酸の0.1〜10%がリシン(K)及び/又はアルギニン(R)で置換されたものとなったポリペプチド鎖が挙げられる。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち10〜80%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列。
アミノ酸配列(X’)において、アミノ酸配列(X)中のアミノ酸の置換の数(K及び/又はRで置換された数)は、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、1〜5個が好ましく、さらに好ましくは1〜3個である。
また、アミノ酸配列(X’)において、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、アミノ酸配列(X)中の全アミノ酸の10〜60%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは20〜60%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列である。
また、アミノ酸配列(X’)としては、炎症抑制の観点から、GKGVP配列(7)、GVGKP配列(8)、GKGKP配列(9)、KPGVG配列(10)、VPGKG配列(11)及びKPGKG配列(12)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(7)及びKPGVG配列(10)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
人工タンパク質(A)はポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を有することにより、細胞との親和性が高く、生体適合性が高い。したがって、インプラント材を本発明の人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤でコーティングすることで、従来のインプラントでは起こっていた炎症を抑制することができる。
ポリペプチド鎖(Y’)であるかどうかは、人工タンパク質(A)の配列中のK及びRを、他のアミノ酸(G、A、V、P又はH)に置きかえたときに、ポリペプチド鎖(Y)となるかによって判断する。
ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中のリシン及び/又はアルギニンで置換されるアミノ酸の合計個数は、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、2〜50個が好ましく、さらに好ましくは3〜26個である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中の全アミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であるが、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、0.5〜5%が好ましく、さらに好ましくは1〜3%である。
本発明において、人工タンパク質(A)は、ポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個である人工タンパク質である。(A)が、(X)の種類及び/又は連続する個数が異なる(Y)を有している場合は、それぞれを1個として数え、(Y)の個数はその合計である。(Y’)も同様である。
人工タンパク質(A)は、(A)1分子中にポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を合計1〜100個有するものであるが、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、50〜100個が好ましく、特に好ましくは75〜100個である。
本発明において、人工タンパク質(A)の疎水性度は0.2〜1.2であるが、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、0.5〜1.2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.8であり、次にさらに好ましくは0.55〜0.75であり、特に好ましくは0.6〜0.72である。
(A)の疎水性度は、(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及び(A)1分子中のアミノ酸の総数を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(アルバート・L.レーニンジャー、デビット・L.ネルソン、レ−ニンジャ−の新生化学 上、廣川書店、2010年9月、p.346−347)に記載されている下記の数値を用いる。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(MT
Mα:(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸の数
Nα:各アミノ酸の疎水性度
T:(A)1分子中のアミノ酸の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):−4.5
N(アスパラギン):−3.5
D(アスパラギン酸):−3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):−3.5
E(グルタミン酸):−3.5
G(グリシン):−0.4
H(ヒスチジン):−3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):−3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):−1.6
S(セリン):−0.8
T(トレオニン):−0.7
W(トリプトファン):−0.9
Y(チロシン):−1.3
V(バリン):4.2
例えば、(A)が(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)である場合、(A)の疎水性度={16(Gの数)×(−0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(−1.6)+1(Kの数)×(−3.9)}/40(アミノ酸の総数)=1.00である。
本発明においては、上記ポリペプチド鎖(Y)及び/又はポリペプチド鎖(Y’)を有し、且つ(A)の疎水性度が上記範囲内であることにより、インプラント材表面への吸着性及び細胞との親和性が向上する。
(A)は配列(X)を有する場合、細胞との親和性が高いが、疎水性度が上記範囲外となり、インプラント材表面へのコーティング効率が減少する場合がある。その場合、アミノ酸配列(X)中のアミノ酸をK及びRで10〜80%の割合で置換することにより、疎水性度を小さくすることができ、細胞との親和性とインプラント材表面へのコーティング効率とのバランスがよくなり、インプラントの炎症を抑制するインプラント用コーティング剤として有用である。
本発明において、人工タンパク質(A)は、コーティング効率及び熱に対する安定性の観点から、さらにGAGAGS配列(13)を有することが好ましい。(A)がGAGAGS配列(13)を有している場合、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、GAGAGS配列(13)が2〜100個連続して結合したポリペプチド鎖(S)を有していることが好ましい。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(13)が連続する数は、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜80個であり、次にさらに好ましくは2〜80個であり、特に好ましくは2〜60個である。
(A)において、ポリペプチド鎖(S)を有する際、(A)1分子中に(S)を1つ以上有すればよいが、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは10〜60個である。
人工タンパク質(A)において、ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)及びポリペプチド鎖(S)を合計2個以上有する場合は、ポリペプチド鎖とポリペプチド鎖との間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。(Z)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、(Y)、(Y’)又は(S)では無いペプチド配列である。(Z)を構成するアミノ酸の数は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、1〜10個が好ましく、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個である。(Z)として、具体的には、VAAGY配列(16)、GAAGY配列(17)及びLGP配列等が挙げられる。
人工タンパク質(A)中の両末端の各ポリペプチド鎖(Y)、ポリペプチド鎖(Y’)及びポリペプチド鎖(S)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(T)を有していてもいい。(T)は、アミノ酸が1個又は2個以上結合したペプチド配列であって、(Y)、(Y’)又は(S)では無いペプチド配列である。(T)を構成するアミノ酸の数は、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、1〜100個が好ましく、さらに好ましくは5〜40個、特に好ましくは10〜35個である。(T)として、具体的には、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(18)等が挙げられる。
人工タンパク質(A)は、上記(T)以外に、発現させた(A)の精製または検出を容易にするために、(A)のN及び/又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ、KT3タグ、マルトース結合タンパク質、HQタグ、Mycタグ、HAタグ及びFLAGタグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおける人工タンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
人工タンパク質(A)1分子中のポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(Y’)の合計含有量(重量%)は、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、(A)の分子量を基準として、40〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜87重量%である。
人工タンパク質(A)中のポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量は、アミノ酸配列決定によって求めることができる。具体的には、下記の測定法によって求めることができる。
<ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量の測定法>
島津製作所社製ペプチドシーケンサー(プロテインシーケンサ)PPSQ−33Aを用いて、アミノ酸配列を決定する。決定したアミノ酸配列から、下記数式(1)によりポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含量(重量%)を求める。
ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量(重量%)=Σ(γ×β)/Σ(α×β)×100 (1)
α:人工タンパク質(A)中の各アミノ酸の数
β:各アミノ酸の分子量
γ:ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)中の各アミノ酸の個数
人工タンパク質(A)1分子中のアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計含有量(重量%)は、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、(A)の分子量を基準として40〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜87重量%である。
GAGAGS配列(13)の個数とポリペプチド鎖(Y)及びポリペプチド鎖(Y’)を構成するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数とのタンパク質(A)1分子中の比率(GAGAGS配列(13)の個数:ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)を構成するアミノ酸配列(X)及びアミノ酸配列(X’)の合計個数)は、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、1:2〜1:20が好ましく、さらに好ましくは1:2〜1:10である。
本発明において、(A)がGAGAGS配列(13)を有していると、熱に対する安定性がさらに良好になる。特に、GAGAGS配列(13)とアミノ酸配列(X)及び(X’)との比が1:2〜1:20であることで、熱に対する安定性と溶解性(特に水への溶解性)のバランスがとれる。
人工タンパク質(A)の分子質量は、溶解性(特に水への溶解性)及び安定性(生体分解性)の観点から、15〜200kDaが好ましく、さらに好ましくは60〜80kDaである。この範囲であると、(A)が分解されるまでの時間が適度である。
なお、人工タンパク質(A)の分子質量は、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプルを分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法によって求められる。
好ましい人工タンパク質(A)の一部を以下に例示する。
(1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)の人工タンパク質(A1−1)
GVGVP配列(1)が連続したポリペプチド鎖(Y1)中の1個のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)を有する人工タンパク質(A1)であり、さらに好ましくは、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)4配列(14)であるポリペプチド鎖(S1−1)を有する人工タンパク質(A1−1)、ポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)2配列(15)であるポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1−2)、並びにポリペプチド鎖(Y’1-1)、ポリペプチド鎖(S1−1)及びポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1-3)である。
具体的には、GAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)(Y’1-1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K、疎水性度0.618);GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1-1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K、疎水性度0.718)等である。
GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’1-2)(S1−2)}16で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K、疎水性度0.693)等である。
GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を6個、及びGAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K、疎水性度0.607)等である。
本発明のインプラント用コーティング剤は、上記人工タンパク質(A)からなるものである。
本発明のインプラント用コーティング剤を用いれば、インプラント材をコーティングでき、体内に埋め込んでも炎症が起こりにくいインプラントを提供することができる。
本発明のコーティング剤でコーティングできるインプラント材の素材としては、金属材料{チタン、ステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、白金、金、バイタリウム及びこれらを2種以上有する複合材料等}、高分子材料{MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー及びPVA(ポリビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等}及びセラミックス{アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等}等が挙げられる。
本発明のコーティング剤でインプラント材をコーティングする方法としては、後述する本発明のインプラントの製造方法におけるインプラント用コーティング剤でコーティングする工程が挙げられる。
本発明のインプラントは、上記インプラント用コーティング剤により表面を被覆されたインプラントである。
本発明のインプラントの表面積(M)に対するインプラント用コーティング剤を固定させる面積(N)を表す被覆面積率((N)/(M))は、炎症抑制の観点から、50〜100%であることが好ましく、特に好ましくは80〜100%である。
結合量としては、炎症抑制観点から、1〜1,000ng/mm2であることが好ましく、特に好ましくは、5〜1,000ng/mm2である。
本発明のインプラントにおけるインプラント用コーティング剤の結合量は、下記測定法によって測定した値である。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成する。インプラント中のインプラント用コーティング剤の結合量を測定したい部分の表面積に対して312.5μL/cm2で混合液(C)を加え、測定したい部分の表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置する。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定する。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得る。
本発明のインプラントは、生体に埋め込んだ際に、炎症が起こりにくいので、様々な生体内に埋め込まれるインプラントとして用いることができ、炎症抑制の観点から好ましくは生体埋め込み用の医療用器具であるインプラント、骨固定剤、骨ケージ、カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、人工血管及び人工関節に用いることができる。
本発明のインプラントの製造方法は、上記インプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面を被覆する工程を含むインプラントの製造方法である。
インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。
溶液(B1)中のインプラント用コーティング剤の濃度は、炎症抑制の観点から、5〜50μg/mlが好ましい。
溶液(B1)の溶媒としては、インプラント用コーティング剤を5μg/ml以上溶解できるものであれば限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール及びジメチルスルホオキシド等が挙げられる。(A)の溶解性の観点から、水が好ましい。
インプラント材(C1)において、高分子材料としては、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
また、セラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等が挙げられる。
インプラント材(C1)の形状は、特に制限が無く、例えば、人工股関節の形状、人工膝関節の形状、人工歯根の形状、及び骨補・材料の形状など「移植と人工臓器(岩波講座 現代医学の基礎14)、株式会社岩波書店発行」に記載の形状等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、インプラント用コーティング剤を含む溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面に存在させることにより、溶液(B1)中のインプラント用コーティング剤がインプラント材(C1)に化学結合{共有結合、イオン結合及び/若しくは水素結合等}又は物理吸着{ファンデルワールス力による吸着等}により結合し、インプラント材の表面をコーティングすることができる。
本発明のインプラントの製造方法は、上記インプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加える工程を含むインプラントの製造方法である。
インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
溶液(B2)中のインプラント用コーティング剤の濃度は、炎症抑制の観点から、5〜50μg/mlが好ましい。
溶液(B2)の溶媒としては、インプラント用コーティング剤を5μg/ml以上溶解できるものであれば限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール及びジメチルスルホオキシドが挙げられる。溶解性の観点から、水が好ましい。
溶媒には、無機電解質を溶解しておくことが好ましい。溶解する無機電解質としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物を用いることができ、具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウム等が挙げられる。無機電解質を溶解しておくことにより、溶液が電気伝導性を有し、インプラント材(C2)に向かってインプラント用コーティング剤が移動することができる。無機電解質の濃度は、溶液(B2)の重量に対し、1〜5重量%であることが好ましく、2〜4重量%であることがより好ましい。無機電解質の濃度が1重量%以上であると、(B2)の電気伝導性が向上するため好ましい。無機電解質の濃度が5重量%以下であると、無機電解質中のイオンがインプラント材表面に吸着することを抑制できるため好ましい。
インプラント材(C2)において、金属材料としては、チタン、ステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、白金、金、バイタリウム等及びこれらの2種以上からなる複合材料等が挙げられる(移植と人工臓器、岩波講座 現代医学の基礎14、株式会社岩波書店発行及び特開平7−88174号公報等)。複合材料としては、チタン合金(Ti−6Al−4V及びTi−6Al−2Nb−1Ta等)及びコバルトクロム合金等が挙げられる。
また、イオン結合性セラミックスとしては、具体的には、アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等が挙げられる。(C2)としては、生体適合性の観点から、チタン及びチタン合金が好ましい。
インプラント材(C2)の形状は、特に制限が無く、例えば、人工股関節の形状、人工膝関節の形状、人工歯根の形状、及び骨補・材料の形状など「移植と人工臓器(岩波講座 現代医学の基礎14)、株式会社岩波書店発行」に記載の形状等が挙げられる。
本発明の製造方法では、インプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加えることにより、インプラント用コーティング剤をインプラント材(C2)の表面に電気化学反応により固定することができる。
電気化学反応とは、電気化学系において電気化学ポテンシャルが他動的要因によって変化する反応であり、物質の電極面へ向かっての移動、電極面への吸着、電極面での解離、電子の授受などの過程を経過する反応である。
インプラント用コーティング剤が有するプロリン(P)等の側鎖のアミノ基にプロトンが付加して第四級アンモニウム陽イオンとなり、陰極に向かって移動する。第四級アンモニウム陽イオンは、陰極面に吸着され、陰極面において、アミノ基とプロトンに解離する。プロトンに陰極から電子が与えられ、水素ガスが発生する。アミノ基の孤立電子対の電子は、陰極である金属の自由電子と共有されるので、インプラント用コーティング剤のアミノ基と陰極であるインプラント用コーティング剤の間には強い結合が形成され、通電を停止した後もこの強い結合が保持される。
本発明のインプラントの製造方法としては、例えば、溶液(B2)にインプラント材(C2)と電極とを浸漬し、インプラント材(C2)を陰極とし、電極を陽極とし、両極間に電圧を加えることにより、インプラント用コーティング剤をインプラント材(C2)の表面に電気化学反応により固定する方法が挙げられる。
本発明の製造方法において、陰極と陽極の間に与える電圧は、0.1〜10Vであることが好ましく、1〜7Vであることがより好ましい。電圧が0.1V以上であると、陰極表面へのインプラント用コーティング剤の固定による被覆の形成に必要な時間を短くできる。電庄が10V以下であると、金属表面での気泡の発生を抑制でき、均一な被膜が形成されるため好ましい。
陰極の表面積に対する電流密度は、5×10-8〜5×10-5A/dm2であることが好ましく、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5A/dm2である。電流密度が5×10-8A/dm2以上であると、陰極表面へのインプラント用コーティング剤の固定による被覆の形成に必要な時間を短くできる。電流密度が5×10-5A/dm2以下であると、金属表面での気泡の発生を抑制でき、均一な被膜が形成されるため好ましい。
本発明において、インプラント用コーティング剤をインプラント材(C1)又は(C2)の表面に固定する場合、生体組織と接着する表面積(M)に対するインプラント用コーティング剤を固定させる面積(N)を表す被覆面積率((N)/(M))は、炎症抑制の観点から、50〜100%であることが好ましく、特に好ましくは80〜100%である。
結合量としては、炎症抑制観点から、1〜1000ng/mm2であることが好ましく、特に好ましくは、5〜1000ng/mm2である。
本発明の製造方法により得られたインプラントにおけるインプラント用コーティング剤の結合量は、下記測定法によって測定した値である。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成する。インプラント中のインプラント用コーティング剤の結合量を測定したい部分の表面積に対して312.5μL/cm2で混合液(C)を加え、測定したい部分の表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置する。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定する。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得る。
本発明の製造方法で得たインプラントは、生体に埋め込んだ際に、炎症が起こりにくいので、様々な生体内に埋め込まれるインプラントとして用いることができ、炎症抑制の観点から好ましくは生体埋め込み用の医療用器具であるインプラント、骨固定剤、骨ケージ、カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、人工血管及び人工関節に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
<実施例1>
○人工タンパク質(A1)コーティングポリスチレンフィルム(PS1)の作製
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、遺伝子組換え大腸菌により製造し、カラムクロマトグラフィーにて精製した、GAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)(Y’1-1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K)(A1)を得た。この人工タンパク質(A1)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A1)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A1)溶解液を作製した。人工タンパク質(A1)溶解液に、ポリスチレンフィルム(BIO−BIK社製、品名「バランスディッシュ」、0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A1)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS1)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例2>
○人工タンパク質(A2)コーティングポリスチレンフィルム(PS2)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1-1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K)(A2)を作製した。この人工タンパク質(A2)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A2)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A2)溶解液を作製した。人工タンパク質(A2)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A2)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS2)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例3>
○人工タンパク質(A3)コーティングポリスチレンフィルム(PS3)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’12)(S1−2)}16で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K)(A3)を作製した。この人工タンパク質(A3)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A3)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A3)溶解液を作製した。人工タンパク質(A3)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A3)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS3)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例4>
○人工タンパク質(A4)コーティングポリスチレンフィルム(PS4)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’12)を6個、及びGAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K)(A4)を作製した。この人工タンパク質(A4)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A4)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A4)溶解液を作製した。人工タンパク質(A4)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A4)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS4)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<比較例1>
脱イオン水に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質でコーティングしていない比較用のポリスチレンフィルム(PS5)を得た。
<実施例5>
○人工タンパク質(A1)コーティングチタンプレート(PT1)の作製
人工タンパク質(A1)が5μg/mlの濃度となるように0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に溶解し、高さ200mm、底面の内径135mmのガラス製電解槽に入れた。そして、白金電極を陽極とし、チタンプレート(0.5cm×0.5cm×0.1mm)((株)ニラコ社製、品名「チタン/板」)を陰極とし、チタンプレートが完全に液に浸かるようにして、マグネチックスターラーで撹拌子を回転して液を撹拌しながら、両極間に3.0Vの電圧を加えて10分間通電し、電気化学反応を行った。通電を停止したのち、脱イオン水5mLに浸漬し直ぐに取り出す洗浄操作を3回行い、次いで、60℃の順風乾燥機の中で2時間乾燥し、チタン表面を人工タンパク質(A1)でコーティングしたチタンプレート(PT1)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例6>
○人工タンパク質(A2)コーティングチタンプレート(PT2)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A2)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT2)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例7>
○人工タンパク質(A3)コーティングチタンプレート(PT3)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A3)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT3)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<実施例8>
○人工タンパク質(A4)コーティングチタンプレート(PT4)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A4)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT4)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
<比較例2>
人工タンパク質(A1)を用いず、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液のみ用いた以外は、実施例5と同様にして比較用のチタンプレート(PT5)を得た。
ポリスチレンフィルム(PS1)〜(PS5)及びチタンプレート(PT1)〜(PT5)におけるインプラント用コーティング剤の結合量を下記測定により求めた。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成した。ポリスチレンフィルム(PS1)〜(PS5)に対してそれぞれ156.3μL、チタンプレート(PT1)〜(PT5)に対してそれぞれ218.8μLの混合液(C)を表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置した。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定した。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得た。
<評価:炎症反応の測定>
ラット背部皮内にポリスチレンフィルム(PS1)〜(PS5)及びチタンプレート(PT1)〜(PT5)をそれぞれ埋植した。なお、1種類のフィルム又はプレートに対して、それぞれ3つの試験体を作成した。それぞれの試験体について、炎症の発生状況を観察した。観察項目としては、試験試料周囲組織における出血、被包形成、新生骨形成、変色の有無とその程度(広がり、厚さなど)を肉眼により観察した。結果を表1及び表2に示す。なお、表中、炎症反応については、あるものを+、ないものを−で表し、括弧内には3つの試験体のそれぞれの結果を示す。また、2つ以上の試験体について炎症反応があるものの総合評価を+とした。また、観察項目の少なくとも1つの項目に該当する場合は、炎症があると判断した。さらに、肉眼観察結果については、少なくとも1つの試験体について、症状がみられた項目を記載した。
Figure 2014104193
Figure 2014104193
表1及び2の結果から、本発明のインプラント用コーティング剤でインプラント材をコーティングすることにより、炎症を低減できることが分かる。また、炎症が起こったとしても、早期に炎症が治癒することが分かる。
本発明のインプラント用コーティング剤は、インプラントによる炎症を低減することができるので、医科及び歯科で用いられるインプラント材{金属材料、高分子材料及びセラミックス等}をコーティングするコーティング剤としてだけでなく、コンタクトレンズのコーティング剤としても有用である。また、本発明のインプラントの製造方法によれば、インプラント材による炎症が少ないインプラントを製造することができ、製造したインプラントは、医科及び歯科で用いられるインプラントとして有用である。

Claims (9)

  1. 人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、
    (A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、
    (A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、
    (A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤。
    ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
  2. 人工タンパク質(A)が、GAGAGS配列(13)が2〜50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)をさらに有する請求項1に記載のインプラント用コーティング剤。
  3. 人工タンパク質(A)がGAGAGS配列(13)を有し、GAGAGS配列(13)の数とアミノ酸配列(X)及び下記アミノ酸配列(X’)の合計の数との人工タンパク質(A)1分子中の比率(配列(13):アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計)が、1:2〜1:20である請求項1又は2に記載のインプラント用コーティング剤。
    アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜5個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されているアミノ酸配列。
  4. 人工タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子量が15〜200kDaである請求項1〜3のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
  5. 人工タンパク質(A)が、アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)であるポリペプチド鎖(Y1)中の1個のアミノ酸がリシンで置換されたポリペプチド鎖(Y’1)を有する人工タンパク質(A1)である請求項1〜4のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
  6. 人工タンパク質(A)が、(GAGAGS)4配列(14)であるポリペプチド鎖(S1−1)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)を有する人工タンパク質(A1−1)である請求項1〜5のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤により表面を被覆されたインプラント。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面を被覆する工程を含むインプラントの製造方法。
    インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加える工程を含むインプラントの製造方法。
    インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
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