JP2014104193A - インプラント用コーティング剤、インプラント及びインプラントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明は人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤;このインプラント用コーティング剤により表面を被覆されたインプラント;このインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面を被覆する工程を含むインプラントの製造方法;このインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加える工程を含むインプラントの製造方法である。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。
インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。
人工タンパク質(A)1分子中にポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記ポリペプチド鎖を1種有してもよく、2種以上有してもよい。
また、人工タンパク質(A)中にアミノ酸配列(X)が同種類のポリペプチド鎖(Y)を複数有する場合は、上記(X)の連続する個数は、(Y)ごとに同一でも異なっていてもよい。すなわち、上記a〜hが同じポリペプチド鎖(Y)を複数有してもよく、a〜hが異なるポリペプチド鎖(Y)を複数有してもいい。
ポリペプチド鎖(Y)としては、細胞との親和性及び炎症の抑制の観点から、(GVGVP)b配列(Y1)、(PGVGV)b配列(Y2)、(VPGVG)c配列(Y3)、(GVPGV)d配列(Y4)及び(VGVPG)e配列(Y5)が好ましく、さらに好ましくは(GVGVP)b配列(Y1)及び(VPGVG)c配列(Y3)である。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の全アミノ酸の個数のうち10〜80%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列。
また、アミノ酸配列(X’)において、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、アミノ酸配列(X)中の全アミノ酸の10〜60%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは20〜60%がK及び/又はRで置換されたアミノ酸配列である。
また、アミノ酸配列(X’)としては、炎症抑制の観点から、GKGVP配列(7)、GVGKP配列(8)、GKGKP配列(9)、KPGVG配列(10)、VPGKG配列(11)及びKPGKG配列(12)からなる群より選ばれる少なくとも1種の配列が好ましく、さらに好ましくはGKGVP配列(7)及びKPGVG配列(10)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中のリシン及び/又はアルギニンで置換されるアミノ酸の合計個数は、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、2〜50個が好ましく、さらに好ましくは3〜26個である。
また、ポリペプチド鎖(Y’)において、(Y)中の全アミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖であるが、炎症抑制及び(A)の溶解性(特に水への溶解性)の観点から、0.5〜5%が好ましく、さらに好ましくは1〜3%である。
(A)の疎水性度は、(A)分子の疎水性の度合いを示すものであり、(A)分子を構成するそれぞれのアミノ酸の数(Mα)、それぞれのアミノ酸の疎水性度(Nα)及び(A)1分子中のアミノ酸の総数を、下記数式に当てはめることにより算出することができる。なお、それぞれのアミノ酸の疎水性度は、非特許文献(アルバート・L.レーニンジャー、デビット・L.ネルソン、レ−ニンジャ−の新生化学 上、廣川書店、2010年9月、p.346−347)に記載されている下記の数値を用いる。
疎水性度=Σ(Mα×Nα)/(MT)
Mα:(A)1分子中のそれぞれのアミノ酸の数
Nα:各アミノ酸の疎水性度
MT:(A)1分子中のアミノ酸の総数
A(アラニン):1.8
R(アルギニン):−4.5
N(アスパラギン):−3.5
D(アスパラギン酸):−3.5
C(システイン):2.5
Q(グルタミン):−3.5
E(グルタミン酸):−3.5
G(グリシン):−0.4
H(ヒスチジン):−3.2
I(イソロイシン):4.5
L(ロイシン):3.8
K(リシン):−3.9
M(メチオニン):1.9
F(フェニルアラニン):2.8
P(プロリン):−1.6
S(セリン):−0.8
T(トレオニン):−0.7
W(トリプトファン):−0.9
Y(チロシン):−1.3
V(バリン):4.2
例えば、(A)が(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)である場合、(A)の疎水性度={16(Gの数)×(−0.4)+15(Vの数)×4.2+8(Pの数)×(−1.6)+1(Kの数)×(−3.9)}/40(アミノ酸の総数)=1.00である。
(A)は配列(X)を有する場合、細胞との親和性が高いが、疎水性度が上記範囲外となり、インプラント材表面へのコーティング効率が減少する場合がある。その場合、アミノ酸配列(X)中のアミノ酸をK及びRで10〜80%の割合で置換することにより、疎水性度を小さくすることができ、細胞との親和性とインプラント材表面へのコーティング効率とのバランスがよくなり、インプラントの炎症を抑制するインプラント用コーティング剤として有用である。
ポリペプチド鎖(S)において、GAGAGS配列(13)が連続する数は、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは2〜80個であり、次にさらに好ましくは2〜80個であり、特に好ましくは2〜60個である。
(A)において、ポリペプチド鎖(S)を有する際、(A)1分子中に(S)を1つ以上有すればよいが、コーティング効率、(A)の溶解性(特に水への溶解性)及び熱に対する安定性の観点から、2〜100個が好ましく、さらに好ましくは10〜60個である。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおける人工タンパク質(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
<ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量の測定法>
島津製作所社製ペプチドシーケンサー(プロテインシーケンサ)PPSQ−33Aを用いて、アミノ酸配列を決定する。決定したアミノ酸配列から、下記数式(1)によりポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含量(重量%)を求める。
ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)の合計含有量(重量%)=Σ(γ×β)/Σ(α×β)×100 (1)
α:人工タンパク質(A)中の各アミノ酸の数
β:各アミノ酸の分子量
γ:ポリペプチド鎖(Y)及び(Y’)中の各アミノ酸の個数
なお、人工タンパク質(A)の分子質量は、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプルを分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法によって求められる。
(1)アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)の人工タンパク質(A1−1)
GVGVP配列(1)が連続したポリペプチド鎖(Y1)中の1個のアミノ酸がK(リシン)で置換されたポリペプチド鎖(Y’1)を有する人工タンパク質(A1)であり、さらに好ましくは、(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)4配列(14)であるポリペプチド鎖(S1−1)を有する人工タンパク質(A1−1)、ポリペプチド鎖(Y’1−1)及び(GAGAGS)2配列(15)であるポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1−2)、並びにポリペプチド鎖(Y’1-1)、ポリペプチド鎖(S1−1)及びポリペプチド鎖(S1−2)を有する人工タンパク質(A1-3)である。
具体的には、GAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)(Y’1-1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K、疎水性度0.618);GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1-1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K、疎水性度0.718)等である。
GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’1-2)(S1−2)}16で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K、疎水性度0.693)等である。
GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を6個、及びGAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K、疎水性度0.607)等である。
本発明のインプラント用コーティング剤を用いれば、インプラント材をコーティングでき、体内に埋め込んでも炎症が起こりにくいインプラントを提供することができる。
本発明のコーティング剤でコーティングできるインプラント材の素材としては、金属材料{チタン、ステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、白金、金、バイタリウム及びこれらを2種以上有する複合材料等}、高分子材料{MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー及びPVA(ポリビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等}及びセラミックス{アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等}等が挙げられる。
結合量としては、炎症抑制観点から、1〜1,000ng/mm2であることが好ましく、特に好ましくは、5〜1,000ng/mm2である。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成する。インプラント中のインプラント用コーティング剤の結合量を測定したい部分の表面積に対して312.5μL/cm2で混合液(C)を加え、測定したい部分の表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置する。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定する。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得る。
インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。
また、セラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等が挙げられる。
インプラント材(C1)の形状は、特に制限が無く、例えば、人工股関節の形状、人工膝関節の形状、人工歯根の形状、及び骨補・材料の形状など「移植と人工臓器(岩波講座 現代医学の基礎14)、株式会社岩波書店発行」に記載の形状等が挙げられる。
インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
溶媒には、無機電解質を溶解しておくことが好ましい。溶解する無機電解質としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物を用いることができ、具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウム等が挙げられる。無機電解質を溶解しておくことにより、溶液が電気伝導性を有し、インプラント材(C2)に向かってインプラント用コーティング剤が移動することができる。無機電解質の濃度は、溶液(B2)の重量に対し、1〜5重量%であることが好ましく、2〜4重量%であることがより好ましい。無機電解質の濃度が1重量%以上であると、(B2)の電気伝導性が向上するため好ましい。無機電解質の濃度が5重量%以下であると、無機電解質中のイオンがインプラント材表面に吸着することを抑制できるため好ましい。
また、イオン結合性セラミックスとしては、具体的には、アルミナ、ジルコニア、アナターゼ、ルチル及びハイドロキシアパタイト等が挙げられる。(C2)としては、生体適合性の観点から、チタン及びチタン合金が好ましい。
インプラント材(C2)の形状は、特に制限が無く、例えば、人工股関節の形状、人工膝関節の形状、人工歯根の形状、及び骨補・材料の形状など「移植と人工臓器(岩波講座 現代医学の基礎14)、株式会社岩波書店発行」に記載の形状等が挙げられる。
電気化学反応とは、電気化学系において電気化学ポテンシャルが他動的要因によって変化する反応であり、物質の電極面へ向かっての移動、電極面への吸着、電極面での解離、電子の授受などの過程を経過する反応である。
インプラント用コーティング剤が有するプロリン(P)等の側鎖のアミノ基にプロトンが付加して第四級アンモニウム陽イオンとなり、陰極に向かって移動する。第四級アンモニウム陽イオンは、陰極面に吸着され、陰極面において、アミノ基とプロトンに解離する。プロトンに陰極から電子が与えられ、水素ガスが発生する。アミノ基の孤立電子対の電子は、陰極である金属の自由電子と共有されるので、インプラント用コーティング剤のアミノ基と陰極であるインプラント用コーティング剤の間には強い結合が形成され、通電を停止した後もこの強い結合が保持される。
陰極の表面積に対する電流密度は、5×10-8〜5×10-5A/dm2であることが好ましく、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5A/dm2である。電流密度が5×10-8A/dm2以上であると、陰極表面へのインプラント用コーティング剤の固定による被覆の形成に必要な時間を短くできる。電流密度が5×10-5A/dm2以下であると、金属表面での気泡の発生を抑制でき、均一な被膜が形成されるため好ましい。
結合量としては、炎症抑制観点から、1〜1000ng/mm2であることが好ましく、特に好ましくは、5〜1000ng/mm2である。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成する。インプラント中のインプラント用コーティング剤の結合量を測定したい部分の表面積に対して312.5μL/cm2で混合液(C)を加え、測定したい部分の表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置する。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定する。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得る。
○人工タンパク質(A1)コーティングポリスチレンフィルム(PS1)の作製
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、遺伝子組換え大腸菌により製造し、カラムクロマトグラフィーにて精製した、GAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を12個及びGVGVP配列(1)が8個連続したポリペプチド鎖(Y1-1)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)(Y’1-1)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるものに、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)1個が化学結合した構造を有する分子質量が約70kDaの配列(21)の人工タンパク質(SELP8K)(A1)を得た。この人工タンパク質(A1)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A1)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A1)溶解液を作製した。人工タンパク質(A1)溶解液に、ポリスチレンフィルム(BIO−BIK社製、品名「バランスディッシュ」、0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A1)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS1)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A2)コーティングポリスチレンフィルム(PS2)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)のポリペプチド鎖(Y’1-1)をそれぞれ17個有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有する分子質量が約77kDaの配列(22)の人工タンパク質(SELP0K)(A2)を作製した。この人工タンパク質(A2)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A2)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A2)溶解液を作製した。人工タンパク質(A2)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A2)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS2)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A3)コーティングポリスチレンフィルム(PS3)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を16個、及びGVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’1-2)を8個有し、これらが{(S1−2)(Y’12)(S1−2)}16で化学結合してなる分子質量が約71kDaの配列(23)の人工タンパク質(SELP415K)(A3)を作製した。この人工タンパク質(A3)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A3)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A3)溶解液を作製した。人工タンパク質(A3)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A3)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS3)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A4)コーティングポリスチレンフィルム(PS4)の作製
実施例1と同様にして、GAGAGS配列(13)が2個連続した(GAGAGS)2配列(15)のポリペプチド鎖(S1−2)を6個、GVGVP配列(1)が16個連続したポリペプチド鎖(Y11)中のV(バリン)のうち1個がK(リシン)に置換された(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)11配列(20)(Y’12)を6個、及びGAGAGS配列(13)が4個連続した(GAGAGS)4配列(14)のポリペプチド鎖(S1−1)を6個有し、これらが交互に化学結合してなる分子質量が約65kDaの配列(24)の人工タンパク質(SELP815K)(A4)を作製した。この人工タンパク質(A4)をインプラント用コーティング剤として用いた。
人工タンパク質(A4)を10μg/mLの濃度で脱イオン水に溶解し人工タンパク質(A4)溶解液を作製した。人工タンパク質(A4)溶解液に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を完全に浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質(A4)でコーティングしたポリスチレンフィルム(PS4)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
脱イオン水に、ポリスチレンフィルム(0.5cm×0.5cm)を浸漬し、37℃、5容量%CO2条件下で2時間静置した。
2時間静置後、脱イオン水に3回浸漬し、人工タンパク質でコーティングしていない比較用のポリスチレンフィルム(PS5)を得た。
○人工タンパク質(A1)コーティングチタンプレート(PT1)の作製
人工タンパク質(A1)が5μg/mlの濃度となるように0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に溶解し、高さ200mm、底面の内径135mmのガラス製電解槽に入れた。そして、白金電極を陽極とし、チタンプレート(0.5cm×0.5cm×0.1mm)((株)ニラコ社製、品名「チタン/板」)を陰極とし、チタンプレートが完全に液に浸かるようにして、マグネチックスターラーで撹拌子を回転して液を撹拌しながら、両極間に3.0Vの電圧を加えて10分間通電し、電気化学反応を行った。通電を停止したのち、脱イオン水5mLに浸漬し直ぐに取り出す洗浄操作を3回行い、次いで、60℃の順風乾燥機の中で2時間乾燥し、チタン表面を人工タンパク質(A1)でコーティングしたチタンプレート(PT1)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A2)コーティングチタンプレート(PT2)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A2)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT2)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A3)コーティングチタンプレート(PT3)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A3)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT3)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
○人工タンパク質(A4)コーティングチタンプレート(PT4)の作製
人工タンパク質(A1)を人工タンパク質(A4)に変更した以外は、実施例5と同様にしてチタンプレート(PT4)を得た。なお、被覆面積率は100%であった。
人工タンパク質(A1)を用いず、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液のみ用いた以外は、実施例5と同様にして比較用のチタンプレート(PT5)を得た。
<結合量の測定>
Micro BCATM protein assay kit(THERMO Fisher Scientific社製)付属のReagentA溶液:ReagentB溶液:ReagentC溶液=25:24:1の混合液(C)を作成した。ポリスチレンフィルム(PS1)〜(PS5)に対してそれぞれ156.3μL、チタンプレート(PT1)〜(PT5)に対してそれぞれ218.8μLの混合液(C)を表面にまんべんなく付着させて、37℃で2時間静置した。
静置2時間後に、ビシンコニン酸(BCA)とCu+のキレート生成量を、450nm(対照波長630nm)の吸光度でプレートリーダー(コロナ電気株式会社製MTP−32)を用いて室温で測定した。さらに、あらかじめウシ血清アルブミンにより作成した検量線から結合量を得た。
ラット背部皮内にポリスチレンフィルム(PS1)〜(PS5)及びチタンプレート(PT1)〜(PT5)をそれぞれ埋植した。なお、1種類のフィルム又はプレートに対して、それぞれ3つの試験体を作成した。それぞれの試験体について、炎症の発生状況を観察した。観察項目としては、試験試料周囲組織における出血、被包形成、新生骨形成、変色の有無とその程度(広がり、厚さなど)を肉眼により観察した。結果を表1及び表2に示す。なお、表中、炎症反応については、あるものを+、ないものを−で表し、括弧内には3つの試験体のそれぞれの結果を示す。また、2つ以上の試験体について炎症反応があるものの総合評価を+とした。また、観察項目の少なくとも1つの項目に該当する場合は、炎症があると判断した。さらに、肉眼観察結果については、少なくとも1つの試験体について、症状がみられた項目を記載した。
Claims (9)
- 人工タンパク質(A)からなるインプラント用コーティング剤であって、
(A)が、GVGVP配列(1)、PGVGV配列(2)、VPGVG配列(3)、GVPGV配列(4)、VGVPG配列(5)、GPP配列、GAP配列及びGAHGPAGPK配列(6)のうちいずれか1種のアミノ酸配列(X)が2〜200個連続したポリペプチド鎖(Y)並びに/又は下記ポリペプチド鎖(Y’)を有し、
(A)中の(Y)と(Y’)との合計個数が1〜100個であり、
(A)の疎水性度が0.2〜1.2であるインプラント用コーティング剤。
ポリペプチド鎖(Y’):(Y)中のアミノ酸の個数のうち0.1〜10%がリシン及び/又はアルギニンで置換されたポリペプチド鎖。 - 人工タンパク質(A)が、GAGAGS配列(13)が2〜50個連続して結合したポリペプチド鎖(S)をさらに有する請求項1に記載のインプラント用コーティング剤。
- 人工タンパク質(A)がGAGAGS配列(13)を有し、GAGAGS配列(13)の数とアミノ酸配列(X)及び下記アミノ酸配列(X’)の合計の数との人工タンパク質(A)1分子中の比率(配列(13):アミノ酸配列(X)及び(X’)の合計)が、1:2〜1:20である請求項1又は2に記載のインプラント用コーティング剤。
アミノ酸配列(X’):アミノ酸配列(X)の1〜5個のアミノ酸がリシン及び/又はアルギニンで置換されているアミノ酸配列。 - 人工タンパク質(A)のSDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法による分子量が15〜200kDaである請求項1〜3のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
- 人工タンパク質(A)が、アミノ酸配列(X)がGVGVP配列(1)であるポリペプチド鎖(Y1)中の1個のアミノ酸がリシンで置換されたポリペプチド鎖(Y’1)を有する人工タンパク質(A1)である請求項1〜4のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
- 人工タンパク質(A)が、(GAGAGS)4配列(14)であるポリペプチド鎖(S1−1)及び(GVGVP)4GKGVP(GVGVP)3配列(19)であるポリペプチド鎖(Y’1−1)を有する人工タンパク質(A1−1)である請求項1〜5のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤により表面を被覆されたインプラント。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B1)をインプラント材(C1)の表面に噴霧、浸漬及び塗布からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法によりインプラント材(C1)の表面を被覆する工程を含むインプラントの製造方法。
インプラント材(C1):高分子材料及び/又はセラミックス材料からなるインプラント材。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のインプラント用コーティング剤の濃度が5〜100μg/mlである溶液(B2)中でインプラント材(C2)と電極との間に電圧を加える工程を含むインプラントの製造方法。
インプラント材(C2):金属材料及び/又はイオン結合性セラミックス材料からなるインプラント材。
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