JP2014100899A - 遮熱シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】多層構造を有する遮熱シートであって、多層のうち少なくとも1層が、無機化合物粒子をポリエステル重量対比1重量%以上含有するポリエステル繊維を含む。また、前記ポリエステル繊維が下記要件をすべて満たしていること。(1)単繊維の繊維軸に直交する断面の形状が扁平形状でくびれ部を2〜5個有する。(2)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6である。(3)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートおよびその製造方法に関する。
従来、遮熱シートとしては、リン酸化合物またはスルホン酸化合物によって表面処理されているITO粉末および/またはATO粉末を含有するポリエステル繊維を用いたものや、芯部に酸化チタンを3重量%以上含有する芯鞘型複合繊維を用いたものなどが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの遮熱シートでは、遮熱効果が十分とはいえなかった。
また、特許文献3などでは、ポリエステル織物からなる基材を被覆する塩化ビニル樹脂に赤外線を反射する特殊顔料を練り込んだ遮熱シートが提案されている。しかしながら、かかる遮熱シートでは、遮熱効果を付与するものが顔料であるため、十分な遮熱効果を得るために色が限定されるという問題があり、高い意匠性が必要されるロールカーテンや日よけテント、テント倉庫などの用途では、実用性に欠けるものであった。
特開2010−84238号公報 特開2010−116660号公報 特開2004−34383号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートおよびその製造方法を提供することである。
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、多層構造を有する遮熱シートにおいて、無機化合物粒子を含有するポリエステル繊維を含む遮熱層で、多層のうち少なくとも1層を構成することにより、優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートが得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「多層構造を有する遮熱シートであって、多層のうち少なくとも1層が、無機化合物粒子をポリエステル重量対比1重量%以上含有するポリエステル繊維を含む遮熱層であることを特徴する遮熱シート。」が提供される。
その際、多層のうち少なくとも1層が、フィルム状の樹脂層であることが好ましい。前記無機化合物粒子が、二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、およびアルミナからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記ポリエステル繊維が、繊維長が0.3〜60mmの短繊維であることが好ましい。また、前記ポリエステル繊維において、単糸繊度が0.1〜6.0dtexの範囲内であり、かつ強度が3cN/dtex以上であることが好ましい。また、前記ポリエステル繊維が下記要件をすべて満たしていることが好ましい。
(1)単繊維の繊維軸に直交する断面の形状が扁平形状でくびれ部を2〜5個有する。
(2)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6である。
(3)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下である。
また、遮熱シートが、ロールカーテン用または日よけテント用またはテント倉庫用であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の製造方法であって、前記ポリエステル繊維として、塩化ビニル樹脂および油剤成分を含む処理液を付与したものを用いる、遮熱シートの製造方法が提供される。
その際、前記処理液において、塩化ビニル樹脂および油剤成分の固形分濃度が60重量%以上であることが好ましい。また、前記ポリエステル繊維に処理液を付与する際の加工速度が100m/分以上であることが好ましい。
本発明によれば、優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートおよびその製造方法が提供される。
本発明において用いることのできる繊維の横断面形状を模式的に示す図である。 表面温度とテント内温度の測定方法を説明するための模式図である。
本発明は多層構造を有する遮熱シートであり、多層のうち少なくとも1層が、無機化合物粒子をポリエステル重量対比1重量%以上含有するポリエステル繊維(以下、「遮熱用ポリエステル繊維」ということもある。)を含む遮熱層である。
ここで、前記ポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの繊維形成性ポリエステルが好ましい。すなわち、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルが好ましい。また特許第4202361号公報に記載されたポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルや、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルでもよい。さらには、かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステル、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルでもよい。
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、および/またはグリコール成分の一部を他のジオール化合物で置換えたポリエステルであってもよい。
ここで、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸のごときポリカルボン酸、グリセリン、トリメチp−ルプロパン、ペンタエリスリトールのごときポリオールなどを使用することができる。
前記のポリエステル繊維には、無機化合物粒子が、繊維を構成するポリエステル重量対比1重量%以上(好ましくは1〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%)含まれる。無機化合物粒子の該含有量が、1重量%未満であると遮熱性が不十分となるおそれがあり好ましくない。逆に、該含有量が15重量%を越えると、遮熱性は向上するが、製糸時の工程安定性やおよび得られる繊維の品位が低下するおそれがある。
前記無機化合物粒子としては、優れた遮熱性を得る上で、屈折率が1.6以上(より好ましくは1.8以上、特に好ましくは2.0〜5.0)であることが好ましい。無機化合物粒子の屈折率が1.6未満の場合、赤外線の透過性が高くなり遮熱性が不十分となるおそれがある。逆に、該屈折率が5以上の粒子は工業的に使用可能なものが少ない。
また、前記無機化合物粒子の平均粒径としては、0.5〜1.5μm(より好ましくは0.8〜1.2μm)の範囲内であることが好ましい。該範囲の粒径を有する粒子を用いることにより、特に近赤外線を主体とする熱に変換されやすい光の波長領域である0.5〜1.5μmの帯域の光を効果的に反射することができる。すなわち、酸化チタンの平均粒径が0.5μm未満であると、より小さい波長領域の光を反射することとなり、遮熱性が十分に得られないおそれがある。ただし、0.5μm未満の粒子が併用されていることは、可視光領域の光を遮断するうえで好ましい。また、平均粒径が1.5μmを越えると、より高い波長領域の光を反射することとなり遮熱性が十分に得られないだけでなく、製糸時の工程安定性も低下するおそれがある。ポリエステル繊維の単糸繊度が小さくなるとその傾向がより顕著となる。
前記無機化合物粒子の種類としては、Fe(屈折率 n=2.7)、ルチル型TiO(2.72)、アナターゼ型TiO(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl(2.3)、CdO(2.2)、Sb(2.0)、WO(2.0)、SiC(2.0)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(2.0)、MgO(1.6)、CeF(1.6)、AlF(1.6)、Al(1.6)が例示され、なかでも二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウムが好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。
前記無機化合物粒子は、必要に応じて表面処理されていてもよい。その際、従来公知の表面処理方法を使用することができる。例えば、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムで粒子表面を覆うことによって、ポリエステルへの分散性を向上させたり、粒子の色相を変えたり、ポリエステルに対する粒子表面の活性を低下させ、ポリエステルの熱安定性を向上させることができる。
前記無機化合物粒子をポリエステル繊維に含ませる方法としては、ポリエステル繊維表面に無機化合物粒子を付着させてもよいが、優れた遮熱性を得る上でポリエステル繊維を形成するポリエステル中に無機化合物粒子が練り込まれていることが好ましい。その際、ポリエステル繊維への該無機化合物粒子の添加方法としては、粒子化合物を粉体状のまま添加する方法、および高濃度のマスターバッチをあらかじめ作製し、紡糸時に無添加のポリエステルとチップブレンドする方法をあげることができる。なかでも、ポリエステル融液への添加、あるいはマスターバッチでの添加による方法が無機化合物粒子のポリエステル繊維中への分散性の点で好ましく用いられる。
また、前記のポリエステル繊維は、前記必要に応じて、添加剤、例えば滑剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、固相重合促進剤、整色剤、蛍光増白剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、難燃剤、艶消剤等をも含んでいてもよい。
前記のポリエステル繊維において、単糸繊度は、0.001〜6.0dtex(より好ましくは0.1〜6.0dtex、特に好ましくは0.5〜5.5dtex)であることが好ましい。該単糸繊度が0.001dtex未満となると製糸安定性が低下するおそれがある。逆に、該単糸繊度が6.0dtexを越えると織編物や不織布とした場合に繊維間の空隙が大きくなり遮熱性が低下するおそれがある。総繊度、フィラメント数としては、繊維の表面積を大きくして優れた遮熱性を得る上で、総繊度10〜1000dtex、フィラメント数30〜50000本(より好ましくは30〜200本、特に好ましくは45〜200本)であることが好ましい。
前記のポリエステル繊維において、強度(引張り強度)が3cN/dtex以上(より好ましくは3〜10cN/dtex)であることが好ましい。該強度が3cN/dtex未満であると耐久性に劣るものとなるおそれがある。
本発明のポリエステル繊維の製糸方法は、特に制限はなく、従来公知の方法が採用される。すなわち、例えば、無機化合物粒子をポリエステル重量対比1重量%以上含むポリエステルを乾燥後、溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も充分なものであるとともに、安定して捲取りを行うこともできる。さらには、上述の方法で得られた未延伸糸もしくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。もちろん、紡糸後に一旦捲き取ることなく、連続して延伸してもよい。
前記ポリエステル繊維において、単繊維横断面形状は通常の丸断面でもよいが、優れた遮熱性および柔軟性を得る上で、図1に示すように、単繊維の繊維軸に直行する断面の形状が扁平形状で、くびれ部を2〜5個有することが好ましい。丸断面単糸が直線的に連結した、全体として扁平の断面形状により、該丸断面単糸が単独で存在する場合と比較して単糸間の空間が少なく、光の透過を低減する効果を発現することが可能となり、繊維の曲げ特性が向上し、布帛とした場合に柔軟性に富むものとなる。また、織編物や不織布の繊維密度を低くしても扁平型断面による遮蔽性効果が優れる為、より軽量化することが可能となる。さらに単なる扁平形状ではなくくびれ部を有することによって、無機化合物粒子の反射に加え、繊維表面での乱反射や光の屈折効果をより高め、効果的に熱線を遮蔽することが可能となる。くびれ部の数が2個未満となると上記効果が得られ難く、逆にくびれ部の数が5個を越えると工程安定性が低下するおそれがある。
その際、扁平断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比(扁平率)が2〜6(より好ましくは3〜5)であることが好ましい。該扁平率が2未満であると扁平断面の効果が得られ難く、織編物や不織布などの布帛とした場合に長軸が布帛表面に平行に配列し難くなり遮熱性が低下する。一方該扁平率が6を越えると製糸安定性が低下する。好ましい範囲は3〜5である。
さらに該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比(B1/B2)は1.05〜1.60(より好ましくは1.10〜1.40)であることが好ましい。B1/B2が1.05未満となると上述の丸断面が連結した効果が低下し遮熱性が低下する。また、B1/B2が1.60を超えると、連結部の厚みが薄くなり熱線の透過が大きくなり遮熱性が低下するおそれがある。
前記ポリエステル繊維の形態は特に限定されない。長繊維(マルチフィラメント糸)であってもよいが、遮蔽層の表面積を大きくして優れた熱線遮蔽性を得る上で短繊維(不織布およびカットファイバー)であることが好ましい。その際、短繊維の繊維長は0.3〜60mm(より好ましくは1〜50mm)であることが好ましい。繊維長が0.3mm未満となると繊維間の空隙から熱線を透過しやすくなり、十分な遮熱性が得られないおそれがある。逆に繊維長が60mmを越えると繊維の凝集が起こりやすくなり、均一な性能を有する遮熱層を形成し難くなるおそれがある。
ここで、前記ポリエステル繊維として、塩化ビニル樹脂および油剤成分を含む処理液を付与したものを用いることが好ましい。前記ポリエステル繊維にかかる処理液を付与することにより、塩化ビニル樹脂との接着性が向上する。なお、処理液に付与する塩化ビニル樹脂としては特に限定されないが、液状のものが好ましく、市販されているものでは、日信化学社製ビニブラン680Sなどが例示される。
前記ポリエステル繊維に、塩化ビニル樹脂を含む処理液を付与する方法としては、ポリエステルポリマーを溶融し紡糸口金から吐出して得られた、走行するポリエステル繊維に、塩化ビニル樹脂を含む処理液を付与する方法が好ましい。付与する工程は、延伸工程で延伸直後であってもよいが、その後のポリエステル繊維を巻き返す工程にて、走行するポリエステル繊維に処理液を付与すると、付与後にすぐに乾燥処理を行えるため工程通過性により優れたものとなり好ましい。
前記油剤成分としては、通常のポリエステル繊維の製造工程で使用されているものを使用できる。例えば、平滑剤としてはナタネ油、鉱物油、脂肪酸エステル類などを用いることができ、乳化剤としては高級アルコール類またはエチレンオキサイド(EO)付加物などを用いることができ、帯電防止剤としてはアニオン系、カチオン系の様々な界面活性剤などを用いることができる。
ここで、前記処理液が、固形分濃度60重量%以上(より好ましくは70〜90重量%)の高濃度の処理液であると、処理液に含まれる塩化ビニル樹脂のポリエステル繊維に対する付着量を高めることができ好ましい。
処理液を付与する加工速度としては、100m/分以上の速度で付与を行うことが好ましい。その際、処理液の濃度を調整することや、加工速度やポリエステル繊維への剤付着量を調整することは好ましいことである。さらには、加工速度としては、100〜4000m/分が好ましく、さらに詳細には、巻返し工程などでは100〜500m/分、延伸工程前では400〜5000m/分、延伸後では100〜6000m/分であることが好ましい。固形分濃度60重量%以上の高濃度処理液を用いることにより、100m/分以上の速い加工速度でも有効な処理を行うことが可能になったのである。一方、加工速度が速くなりすぎるとポリエステル繊維への剤付着量が不足し、塩化ビニル樹脂の付着量が減るために十分な塩化ビニル樹脂との接着性が得られにくい傾向にあり、またその他の油剤成分の付着量が減ることで製糸性が損なわれる場合もある。逆に100m/分未満の速度では生産効率が低下するのみならず、繊維への処理剤の付着量が多くなりすぎ、加工性、特に製糸性や製織などの後加工の工程通過性が悪化する。
処理液の付着量としては、繊維重量に対し40〜60重量%(Wet)の範囲であることが好ましい。また固形分付着量としては、25〜45重量%(Dry)であることが好ましく、さらには30〜40重量%(Dry)の範囲であることが最適である。付着量が少なすぎると効果が減少し、多すぎても繊維の乾燥が困難となりべとつきの原因となる傾向にある。
さらに各成分の好ましい付着量としては、繊維重量に対し塩化ビニル樹脂が5〜20重量%(より好ましくは10〜15重量%)、油剤成分が5〜35重量%(より好ましくは15〜30重量%)の付着量であることが好ましい。
本発明の遮熱シートは多層構造を有し、前記ポリエステル繊維を含む層が遮熱層として含まれる。その際、遮熱層の構造としては、前記ポリエステル繊維からなる長繊維(マルチフィラメント糸)の織編物、前記ポリエステル繊維からなる短繊維からなる不織布、前記ポリエステル繊維からなる短繊維をマトリックス樹脂内に分散させた構造などが例示される。
本発明の遮熱シートにおいて、前記遮熱層以外の層としては、基材層、フィルム状の樹脂層などが例示される。その際、層の数は特に限定されず、例えば、基材層に前記遮熱層を積層した2層、基材層と前記遮熱層との間にフィルム状の樹脂層をはさみこんだ3層、さらに表面にフィルム状の樹脂層を積層した4層または5層などが好適に例示される。
ここで、基材層を構成する繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン等の合成繊維や木綿、麻などの天然繊維を単独で、あるいは混合して製編織した織編物であり、これら繊維は長繊維であっても短繊維であってもよい。なかでも、遮熱シートの引張り強度や引裂き強度を向上させる上で、前記のようなポリエステル繊維(ただし、無機化合物粒子を含有していてもよいし含有していなくてもよい。)からなる長繊維が好ましい。
基材層を構成する繊維には、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂の熱可塑性樹脂により被覆加工(コーティングやディッピングなど)が施されていてもよい。
前記基材層の組織としては、遮熱シートの引張り強度や引裂き強度を向上させる上で織物であることが好ましい。
また、前記フィルム状の樹脂層を構成する樹脂としては、耐候性の点で、その主成分に、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン変性ポリエステル樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、及びフッ素系樹脂等を用いたものをあげることができる。中でも、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂が好適である。また必要に応じ、各種イソシアネート、メラミン樹脂等の硬化剤や、通常用いられる種々の添加剤を含有することができる。具体的には、色分かれ防止剤、沈殿防止剤、表面調整剤、潤滑剤、可塑剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、硬化剤、顔料分散剤、乳化剤、乾燥剤、紫外線吸収剤、防かび剤、抗菌剤、粘度低下剤等があげられる。
本発明の遮熱シートは例えば、以下の製造方法により製造することができる。すなわち、例えば、前記遮熱層、基材層、必要に応じてフィルム状の樹脂層などを積層し、熱圧着する方法が好ましい。その際、温度としては160〜200℃、圧力としては、10〜30kgf/cm(98〜294N/cm)の範囲内であることが好ましい。
かくして得られた遮熱シートにおいて、遮蔽層に含まれる前記ポリエステル繊維(遮熱用ポリエステル繊維)の含有量は遮熱シート全重量に対して3〜20重量%(より好ましくは5〜15重量%)であることが好ましい。前記ポリエステル繊維(遮熱用ポリエステル繊維)の含有量が3重量%未満になると十分に熱線を遮蔽することができないおそれがある。一方、前記ポリエステル繊維(遮熱用ポリエステル繊維)の含有量が20重量%を越えると、遮熱シートの重量が大きくなりすぎ取扱い性が悪化するおそれがある。
また、遮熱シートの目付けとしては、軽量性の点で800g/m以下(より好ましくは300〜750g/m)であることが好ましい。
かかる遮熱シートは、優れた遮熱性だけでなく、顔料を用いた従来の遮熱シートに比べて優れた意匠性をも有するので、ロールカーテン用、日よけテント用、テント倉庫用などとして好適に使用することができる。
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
(1)平均粒径
粒子化合物を含有するポリエステル樹脂または、その成形品をエッチング処理した後、日立社製SEM(S3500−N)で粒子のサイズを観察した。観察した1粒の粒子について、最大となる長さ(Dmax)および最小となる長さ(Dmin)を測定し、平均値(Dave)を測定した。その後、同様の操作を繰り返し、100粒の粒子の平均値(Dave)をそれぞれ求め、この100粒あたりの平均値を平均1次粒径(D)と定義した。
(2)繊維断面形状
500倍の繊維の透過型電子顕微鏡による断面写真から、20本の単糸につきA、B1、B2の値を測定し、その平均値から、扁平率(=A/B1)、B1/B2の値を算出した。
(3)繊維の引張強度
JIS L1070記載の方法により測定を行った。
(4)製糸安定性
紡糸、延伸工程において、1日当りの断糸、単糸巻き付き回数が0〜4回を○、5回以上を×とした。
(5)遮蔽用ポリエステル繊維の含有量
遮蔽層に含有される遮熱用ポリエステル繊維重量/遮熱シート全重量×100の値を算出した。
(6)遮熱シートの遮熱性
図2に模式図を示すように、上面を12cmの正方形に切り取った15cm四方の発泡スチロールの上面を膜材で覆い、上方2mから10万lxのUVランプを照射した。照射開始より90分後の箱内部温度を測定した。
(7)目付け
JIS L1096記載の方法により測定を行った。
(8)意匠性
遮熱シートの外観を目視により「良」「悪」で評価した。
[実施例1]
(二酸化チタンの20重量%エチレングリコールスラリーの調製)
エチレングリコール79.5重量%に対して、20.5重量%のルチル型二酸化チタン(屈折率2.72)を添加して、ガラスビーズを加え、サンドグラインダーで1時間攪拌処理を実施し、得られたスラリーをフィルターに通し、ガラスビーズを除去した。さらにスラリーを10μmのポールフィルターに通じ、粗大な粒子を除去した。
得られた二酸化チタンスラリーを秤量し、120℃の乾燥機で48時間乾燥させ、エチレングリコールを除去し、除去後の残渣物を秤量した。その結果、二酸化チタンの濃度(=[残渣物の質量]/[二酸化チタンスラリー質量])は20重量%であった。
(遮熱用ポリエステルチップの製造)
テレフタル酸ジメチル(DMT)194.2重量部とエチレングリコール124.2重量部(DMT対比200mol%)との混合物に、酢酸マグネシウム・4水和物0.086重量部(DMT対比20mmol%)をSUS製容器に仕込んだ。常圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、リン酸トリメチル0.042重量部(DMT対比30mmol%)になるよう添加し、5分後、二酸化チタンの20重量%エチレングリコールスラリーを、全樹脂組成物に対して、酸化チタンが5重量%となる様添加して、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に三酸化二アンチモン0.087重量部(DMT対比30mmol%)、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/g(35℃、オルトクロロフェノール中)であるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。
(遮熱用ポリエステル繊維の製造)
上記ポリエステル組成物チップを窒素気流下160℃で6時間乾燥後、285℃でエクストルーダーで溶融し、丸断面形状となる吐出孔を48ホール有する口金から290℃の温度条件で吐出し、紡糸速度2500m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度90℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.62の条件で延伸し、4000m/分の底独活で巻き取り、総繊度170dtex/48filの遮熱用ポリエステル繊維を得た。繊維の単糸繊度、強度を表1に示す。
(遮熱シートの製造)
上記で得られた遮熱用ポリエステル繊維を用いて繊維長3mmのカットファイバーを調製し、湿式不織布(遮熱層)を得た。不織布の目付けは50g/mとなるように調整した。一方で、上記とは別の一般的なポリエチレンテレフタレート繊維(総繊度560dtex/96fil)を用いて織物を準備した。この織物の織密度は経24/2.54cm×緯24本/2.54cmであり、目付けは100g/mであった。
次いで、厚さ100μmの塩化ビニルフィルムを準備し、下から塩化ビニルフィルム、前記ポリエチレンテレフタレート繊維織物、塩化ビニルフィルム、前記遮熱用ポリエステル不織布、塩化ビニルフィルムの順に積層したものを温度180℃×圧力20kg/cm(196N/cm)で熱ラミネートし、遮熱シートを得た。得られた遮熱シートの遮熱性を表1に示す。意匠性は「良」であった。なお、遮熱性については遮蔽層を設けなかった比較例1との温度差を示している。
[実施例2]
実施例1において、繊維の断面形状を図1に示す断面形状となる吐出孔を36ホール有する口金を使用し、延伸倍率を微調整することで総繊度44dtex/36filの遮熱用ポリエステル繊維を得たこと以外は実施例1と同様に実施し、遮熱シートを得た。得られた繊維の単糸繊度、強度、遮熱シートの遮熱性を表1に示す。意匠性は「良」であった。
[実施例3]
実施例1において、得られた遮熱用ポリエステル繊維を200m/分の速度で巻返した。巻返し工程では200℃の非接触ヒーターにてポリエステル繊維を予熱し、ついで塩化ビニル樹脂20重量%、油剤60重量%の固形分濃度の処理液を付与した。処理液中の塩化ビニル樹脂は日信化学製 ビニブラン680Sを用い、油剤成分は平滑剤、帯電防止剤、乳化剤からなるpH7.2の水溶液であった。引き続き180℃の引取りローラー上で処理時間2秒の乾燥を行い、塩化ビニル樹脂が10重量%、油剤成分が29重量%付与されたポリエステル繊維を得た。この繊維を用いて実施例1と同様の不織布を作製した後、精練加工を行い、塩化ビニル樹脂が5重量%付与されたポリエステル繊維不織布を得た。この不織布を用いた実施例1と同様の遮熱性シートの遮熱性を表1に示す。意匠性は「良」であった。
[比較例1]
実施例1において、遮熱層を設けず、それ以外は実施例1と同様にした。得られたシートを遮熱性の基準(Std.)とした。
[実施例4〜10、比較例2]
実施例1において、遮熱用ポリエステル繊維製造時の酸化チタン粒径や量、遮熱シート製造時の繊維長、遮蔽層繊維含有量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた繊維の物性、遮熱性シートの遮熱性を表1に示す。意匠性はいずれも「良」であった。
Figure 2014100899
本発明によれば、優れた遮熱性だけでなく優れた意匠性をも有する遮熱シートおよびその製造方法が得られ、その工業的価値は極めて大である。
A:扁平断面の長軸の幅
B1:扁平形状断面の短軸の最大幅
B2:くびれ部に相当する短軸の最小幅

Claims (10)

  1. 多層構造を有する遮熱シートであって、
    多層のうち少なくとも1層が、無機化合物粒子をポリエステル重量対比1重量%以上含有するポリエステル繊維を含む遮熱層であることを特徴する遮熱シート。
  2. 多層のうち少なくとも1層が、フィルム状の樹脂層である、請求項1に記載の遮熱シート。
  3. 前記無機化合物粒子が、二酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸鉛、酸化鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、およびアルミナからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の遮熱シート。
  4. 前記ポリエステル繊維が、繊維長が0.3〜60mmの短繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の遮熱シート。
  5. 前記ポリエステル繊維において、単糸繊度が0.1〜6.0dtexの範囲内であり、かつ強度が3cN/dtex以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の遮熱シート。
  6. 前記ポリエステル繊維が下記要件をすべて満たしている、請求項1〜5のいずれかに記載の遮熱シート。
    (1)単繊維の繊維軸に直交する断面の形状が扁平形状でくびれ部を2〜5個有する。
    (2)該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比が2〜6である。
    (3)該扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比が1.05以上1.6以下である。
  7. 遮熱シートが、ロールカーテン用または日よけテント用またはテント倉庫用である、請求項1〜6のいずれかに記載の遮熱シート。
  8. 請求項1に記載の遮熱シートの製造方法であって、前記ポリエステル繊維として、塩化ビニル樹脂および油剤成分を含む処理液を付与したものを用いる、遮熱シートの製造方法。
  9. 前記処理液において、塩化ビニル樹脂および油剤成分の固形分濃度が60重量%以上である、請求項8に記載の遮熱シートの製造方法。
  10. 前記ポリエステル繊維に処理液を付与する際の加工速度が100m/分以上である、請求項8または請求項9に記載の遮熱シートの製造方法。
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