JP2014100806A - ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】可撓性、機械的強度とバリア性能を有し、太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れるガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】基材2と、前記基材の片面または両面に形成されてなるバリア層3とを含むガスバリア性フィルム1であって、前記バリア層3が、珪素、酸素、炭素を含有しており、かつ、前記バリア層3の膜厚方向における該バリア層3の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いたフレキシブル照明、有機薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ、医薬品の包装容器等に好適に用いることができるガスバリア性フィルムに関する。
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤といった物品の充填包装に適する包装用容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムといった無機酸化物の薄膜を成膜してなるガスバリア性フィルムが提案されている。
このように無機酸化物の薄膜をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られているが、可撓性、ロールツーロールでの搬送時の耐久性とバリア性能を両立が課題であり、鋭意検討が行われきた。
これに対する解の1つとして、特許文献1、2、3に示すような、バリア層中の構成元素濃度を周期的に変化させた、ガスバリア性フィルムが提案されている。
特開平7−17860号公報 国際公開第2006/033233号パンフレット 国際公開第2010/117046号パンフレット
しかしながら、このような特許文献1、2、3に記載の方法(手段)において、屈曲性、ロールツーロールでの搬送時の耐久性は改善されているが、太陽電池、あるいは電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に課題がありその改良が望まれていた。
そこで本発明は、可撓性(屈曲性)、機械的強度とバリア性能を有し、太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1) 基材の片面または両面にバリア層を含むガスバリア性フィルムであり、
該バリア層が、珪素、酸素、炭素を含有しており、かつ、該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
(2) 前記隣あった極値間の距離の変動値が、0.40以上、0.70以下であることを特徴とする上記(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3) 前記バリア層が、プラズマCVD法により形成されてなる層であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルム
(4) 前記バリア層が、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法により形成されてなる層であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
本発明によれば、可撓性(屈曲性)、機械的強度(例えば、ロールツーロールでの搬送時の耐久性など)とバリア性能を有し、太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れるガスバリア性フィルム及びその製造方法を提供することが可能となる。
本発明のガスバリア性フィルムの基本構成を表す断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムの製造方法に用いることのできるCVD装置の一実施形態を模式的に表した概略図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するのに好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するのに特に好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。 実施例1で得られた試料No.101のガスバリア性フィルム(比較例)において、バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線(以下、単に炭素分布曲線という)と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値とをまとめた図面である。 実施例1で得られた試料No.102のガスバリア性フィルム(比較例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値とをまとめた図面である。 実施例1で得られた試料No.103のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値とをまとめた図面である。 実施例1で得られた試料No.104のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.201のガスバリア性フィルム(比較例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.202のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.203のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.204のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.205のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.206のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.207のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.208のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。 実施例2で得られた試料No.209のガスバリア性フィルム(本発明例)において、炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値とをまとめた図面である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(ガスバリア性フィルム;第1実施形態)
本発明に係るガスバリア性フィルム(第1実施形態)は、基材の片面または両面にバリア層を含むものであって、
該バリア層が、珪素、酸素、炭素を含有しており、かつ、該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることを特徴とするものである。かかる構成とすることで、可撓性(屈曲性)、機械的強度(例えば、ロールツーロールでの搬送時の耐久性など)とバリア性能に優れ、更に太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れるガスバリア性フィルムを提供することができる。
以下、本発明のガスバリア性フィルムにつき、説明する。
本発明のガスバリア性フィルムは、基材の片面または両面にバリア層を含むものである。図1は、本発明のガスバリア性フィルムの基本構成を表す断面図である。図1Aに示すガスバリア性フィルム1は、基材2の片面にバリア層3を有する構成である。また、バリア層3上には、バリア層3の保護、平滑化、接着性の改良等を目的にオーバーコート層(図示せず)を設けてもよい。図1Bに示すガスバリア性フィルム1’は、基材2の両面にバリア層3a、3bを有する構成である。また、バリア層3a、3bの少なくとも一方の層上、好ましくは両方の層上には、バリア層3a、3bの保護、平滑化、接着性の改良等を目的にオーバーコート層(図示せず)を設けてもよい。さらに、ガスバリア性フィルム1、1’には、上記した構成以外にも、必要に応じて、従来公知の各種の層を設けてもよく、例えば、基材2とバリア層3(3a、3b)との間に、アンカーコート層、平滑層、ブリードアウト防止層(いずれも図示せず)などが例示できるが、これらに制限されるものではない。以下、各構成要件ごとに説明する。
1.基材
本発明に用いられる基材2としては、特に制限されるものではないが、可撓性(屈曲性)、機械的強度(例えば、ロールツーロールでの搬送時の耐久性など)、更には太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性を有する樹脂からなるフィルム又はシートが好ましく、より好ましくは、上記特性を有する無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートである。このような基材2に用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高く、製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記基材2の厚みは、本発明のガスバリア性フィルム1(1’)を製造する際の安定性、機械的強度(例えば、ロールツーロールでの搬送時の耐久性など)を考慮して適宜に設定することができる。前記基材2の厚みとしては、可撓性(屈曲性)、製造時の安定性や機械的強度(例えば、真空中においてもフィルムのロールツーロールでの搬送が可能である)という観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましい。さらに、プラズマCVD法により本発明にかかるバリア層3(3a、3b)を形成する場合には、前記基材2を通して放電しつつ本発明にかかるバリア層3(3a、3b)を形成することから、前記基材2の厚みが50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
また、前記基材2には、後述するバリア層3(3a、3b)との密着性の観点から、基材の表面を清浄するための表面活性処理を施すことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
2.バリア層
本発明にかかるバリア層3(3a、3b)は、前記基材2の片面または両面に(少なくとも片面)に形成される層である。そして、本発明のガスバリア性フィルム1(1’)においては、前記バリア層3(3a、3b)は、珪素、酸素及び炭素を含有する層である。また、前記バリア層3(3a、3b)は、窒素、アルミニウムを更に含有していてもよい。
前記バリア層3(3a、3b)中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率としては、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であればよく、20〜50at%、好ましくは25〜45at%、より好ましくは30〜40at%の範囲である。珪素原子の含有量の原子比率が20at%以上、好ましくは25%以上であれば、経時での性能変動が少ないほか、珪素の持つ高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。珪素原子の含有量の原子比率が40%以下、好ましくは45at%以下であれば、耐湿性に優れるほか、屈曲性や柔軟性を損なうことなく高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。
前記バリア層3(3a、3b)中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率としては、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であればよく、30〜70at%、好ましくは33〜67at%、より好ましくは40〜67at%の範囲である。酸素原子の含有量の原子比率が30at%以上であれば、透明性に優れるほか、フィルムを屈曲させた場合や太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリアフィルムを提供することができるなど、屈曲性や柔軟性や温度変化による耐久性等を損なうことなく高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。酸素原子の含有量の原子比率が70at%以下であれば、経時での性能変動が少ないほか、フィルムを屈曲させた場合や太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリアフィルムを提供することができるなど、屈曲性や柔軟性や温度変化による耐久性等を損なうことなく高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。
前記バリア層3(3a、3b)中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率としては、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であればよく、0.5〜40at%、好ましくは3〜33at%、より好ましくは5〜30at%の範囲である。炭素原子の含有量の原子比率が0.5at%以上であれば、柔軟性に優れるほか、フィルムを屈曲させた場合や太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリアフィルムを提供することができるなど、屈曲性や柔軟性や温度変化による耐久性等を損なうことなく高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。炭素原子の含有量の原子比率が40at%以下であれば、透明性に優れるほか、フィルム欠陥の増加を抑えることができ、屈曲性や柔軟性、更には温度変化による耐久性等を損なうことなく高いバリア性能を有効に発現することができる点で好ましい。
また、本発明においては、前記珪素、酸素及び炭素を含有するバリア層3(3a、3b)が、該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることを特徴とするものである。
即ち、前記バリア層3(3a、3b)は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つ以上の極値を有し、隣り合った極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることが必要である。
本発明において極値とは、バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離に対する元素の原子比の極大値又は極小値のことをいう。また、本発明において極大値とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が増加から減少に変わる点であって且つその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。さらに、本発明において極小値とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。
隣合った極値間の距離は、上記極値の隣あった極大、極小間の膜厚方向における距離を表す。
また極値間の距離の変動値(CV)は、以下の式により定義される。
本発明において、前記炭素分布曲線が、5〜20の極値を有することがより好ましい。前記隣あった極値間の距離の変動値は、0.37以上が好ましく、0.40以上がより好ましく、0.45以上がさらに好ましい。また前記隣あった極値間の距離の変動値は、0.85以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.65以下がさらに好ましい。
前記隣あった極値間の距離の変動値が大きい方が、温度変化に対する耐性が改善される理由は、明確ではないが、膜厚方向に濃度分布が存在するバリア層に、温度変化がおきると濃度分布によって異なる、膨張・収縮による応力がかかるが、濃度分布が均一でない(即ち、濃度分布の周期が規則的でなく変動値が大きい)方が、応力が分散し、耐久性が向上すると推定している。言い換えれば、前記隣あった極値間の距離の変動値が0.35未満の場合には、太陽電池、あるいは電子部品のように温度変化がおきると濃度分布によって異なる、膨張・収縮による応力がかかるが、濃度分布が均一である(即ち、濃度分布の周期が規則的で変動値が小さい)と応力が分散しにくく、十分な耐久性が得られないため、好ましくない。また、前記隣あった極値間の距離の変動値の上限に関して、1.0を超える場合には、バリア層の強度が低下するなど、所望の効果が得られないほか、生産性が低下し、実施上、本発明の構成を有するバリア層を形成するのが困難であるため、好ましくない。
前記炭素分布曲線が極値が2つ以下の場合(極値を有さない場合を含む)には、ガスバリア性フィルム1(1’)を屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となるなど、所望の効果が得られない。また前記炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されるものではないが、極値が20以下であれば、ガスバリア性フィルム1(1’)が所望の効果を十分に発現することができる点で優れている。
また、前記炭素分布曲線が少なくとも3つ以上の極値を有する場合において、前記炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。200nm以下であれば、欠陥の少ない層になるので、高いバリア性を維持することができる点で優れている。また、生産性の観点から、前記炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも10nm以上であることが好ましい。
また、濃度分布に関して、変動係数(極値間の変動値;CV)が一定以上(詳しくは、0.35以上)であることにより、温度変化に対する耐久性が向上するが、濃度分布の形状により、異なる効果が得られている。具体的には、前記炭素分布曲線における炭素元素の濃度分布(の変動)が急激なブロックが、バリア層表面から中間部分に存在する場合は、屈曲に対する耐久性が良好であり(実施例2の試料No.204参照)、基材側ブロックの炭素元素の濃度分布(の変動)が急激な場合は、バリア性能の耐久性が良好であり(実施例2の試料No.206、207参照)、中間のブロックの炭素元素の濃度分布(の変動)が急激な場合は、温度依存性に対する耐久性が特に優れている(実施例2の試料No.205参照)ことを見出した。
これらのメカニズムは、詳細には不明であるが、屈曲時に伸縮の応力がかかりやすいため、濃度変動による屈曲性の向上効果が大きくでているものと見ている。また基材側に近い方が、外部から浸透する水分、酸素の遮断効果が大きく、バリア性能の耐久性が向上していると推定している。また内部の濃度変動が大きくその両側に濃度変動が小さい構造の場合、温度変化による応力の分散効果が大きく温度変動に対する耐久性が特に優れていると推定している。
具体的には、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値を3つのブロック毎に求め、バリア層全体の極値間距離の平均値の95%以下であるブロックを濃度分布(の変動)が急激なブロックと定義した。なお、バリア層の膜厚方向に3等分としたのは、図4に示すような3連対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いたガスバリア性フィルムの特性を考慮したものといえる。但し、1対または2連、或いは4連以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いた場合でも、3等分して、炭素元素の濃度分布(の変動)が急激なブロックがどの領域(バリア層表面側、中間部分、基材側)にあるかを特定できれば、そのガスバリア性フィルムが上記した各領域(バリア層表面側、中間部分、基材側)に特有の特性を備えていることがわかる。また、バリア層全体の極値間距離の平均値の95%以下としたのは、平均値の95%以下であれば、上記した各領域(バリア層表面側、中間部分、基材側)に特有の特性を有効に発現することができるためである(実施例2の図9〜図17参照)。
即ち、前記炭素分布曲線における炭素元素の濃度分布(の変動)が急激なブロックが、バリア層表面から中間部分に存在する場合とは、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、バリア層表面側の領域に存在する極値間の平均値がバリア層全体の極値の平均値の95%以下であるガスバリア性フィルムといえる。この場合には、屈曲に対する耐久性が良好である(表2の試料No.204と他の試料Noの結果を対比参照のこと)。
また、中間のブロックの炭素元素の濃度分布(の変動)が急激な場合とは、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、バリア層の中間領域に存在する極値間の平均値がバリア層全体の極値の平均値の95%以下であるガスバリア性フィルムといえる。この場合には、温度依存性に対する耐久性が特に優れている(表2の試料No.205と他の試料Noの結果を対比参照のこと)。
さらに、基材側ブロックの炭素元素の濃度分布(の変動)が急激な場合とは、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、バリア層表面の反対の領域に存在する極値間の平均値がバリア層全体の極値の平均値の95%以下であるガスバリア性フィルムといえる。この場合には、バリア性能の耐久性が良好である(表2の試料No.206、207と他の試料Noの結果を対比参照のこと)。
前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整する方法としては、特に制限されるものではなく、各種の製造パラメータを調整することにより実験可能である。まず、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにするには、例えば、プラズマCVD法において、後述する図2のようなプラズマCVD装置の場合には、プラズマ発生電源の電力量を周期的に変化させることで実現することができる。また、図3、4のような磁場発生装置を有するプラズマCVD装置においては、磁場発生装置により形成される磁場により、磁場の強い部分で原料ガスが分解されやすい(=基材への堆積量(膜厚)が増える)ことから、当該装置を用いることで前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにすることができる。また、図3、4のような磁場発生装置を有するプラズマCVD装置においては、磁場発生装置による磁場の大きさを変えることで、炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値の大きさ(=隣あった極値である最大値と最小値の振幅;山と谷の深さ)を変えることができる。図2のようなプラズマCVD装置の場合には、供給する原料ガスの種類(炭素含有量)を変えるなどして、隣あった極値である最大値と最小値の振幅を変えることができる。
次に、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整するには、バリア層(膜)が成長する速度(スピード)を変えることにより、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を変える(広くしたり狭くする)ことができる。
例えば、最も典型的な手法としては、(1)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を増やすと、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。逆にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすと、基材に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、原料ガスの供給量(ガス流量)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(2)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を高めると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が増加し、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。一方、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマプラズマ印加電圧)を下げると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が減少し、基材上に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
更に(3)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にロールツーロール方式で搬送する場合には、基材の搬送速度(プラズマ放電領域=成膜ゾーンを通す時間)を高めると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができ、基材の搬送速度を低くすると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。即ち、製造過程において、基材の搬送速度が(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(4)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に2連以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いる場合には、各対向ロール電極毎の真空チャンバ内の圧力を変化させてもよい。この場合、真空チャンバ内の圧力を低くする=高真空化する=原料ガス濃度が低くなる=原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすことになり、上記(1)と同じになるため、ここでの説明は省略する。
更に(5)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に2連以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いる場合には、各対向ロール電極毎の成膜ローラーの直径を変化させてもよい。成膜ローラーの直径を大きくすると、プラズマ放電領域に長期間されされることになる=基材の搬送速度(プラズマ放電領域=成膜ゾーンを通す時間)を高めることになり、上記(3)と同じになるため、ここでの説明は省略する。
また、このようなバリア層は、前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが望ましい。また、このようなバリア層においては、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルム1のフィルムを屈曲させた場合におけるバリア性能と耐久性の両方を十分に発現することができる点で優れている。バリア層において、前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値の上限値は、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されるものではないが、30at%以下、好ましくは20at%以下であれば、炭素が多くなることによるバリア性の低下を招くことなく、柔軟性(フレキシブル性)、可撓性、屈曲性を向上させることができる点で優れている。
本発明においては、前記バリア層の酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することが特に好ましく、とりわけ5〜20の極値を有することが好ましい。前記酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有する場合には、得られるガスバリア性フィルムのフィルムを屈曲させた場合における高いバリア性能を保持することができる点で優れている。また、極値の上限は、特に制限されるものではないが、極値が20以下であれば、ガスバリア性フィルム1(1’)が所望の効果を十分に発現することができる点で優れている。ここで、前記酸素分布曲線とは、前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する酸素原子の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線をいう。
また、このように前記酸素分布曲線が少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。200nm以下であれば、欠陥の少ない層になるので、高いバリア性を維持することができる。また、生産性の観点から、前記酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも10nm以上であることが好ましい。
また、本発明においては、前記バリア層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルムのフィルムを屈曲させた場合における高いバリア性能を保持することができる点で優れている。バリア層において、前記酸素炭素分布曲線における酸素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値の上限値は、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されるものではないが、30at%以下、好ましくは20at%以下であれば、バリア性の低下を招くことなく、柔軟性(フレキシブル性)、可撓性、屈曲性を向上させることができる点で優れている。
本発明においては、前記バリア層の珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムが高いバリア性能を保持することができる点で優れている。ここで、前記珪素分布曲線とは、前記該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する珪素原子の比率(珪素の原子比)との関係を示す珪素分布曲線をいう。
また、本発明においては、前記バリア層3の膜厚方向における該バリア層3の表面からの距離と珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子比の合計の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムが高いバリア性能を保持することができる点で優れている。
前記珪素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離に概ね相関することから、「バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるバリア層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
また、本発明においては、膜面全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有するバリア層3を形成するという観点から、前記バリア層3が膜面方向(バリア層3の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。バリア層3が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりバリア層3の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記バリア層3の膜厚方向における該バリア層3の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、(dC/dx)≦0.5で表される条件を満たすことをいう。
本発明のガスバリア性フィルム1は、基材2の片面または両面にバリア層3(3a、3b)を含むものであればよく、ガスバリア性を必ずしも有しない層をさらに含んでいてもよい。
前記バリア層3(3a、3b)の厚みは、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。バリア層の厚みが5nm以上であれば、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が十分に発現することができ、更に可撓性(屈曲性)、機械的強度とバリア性能を有し、太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れる。またバリア層の厚みが3000nm以下であれば、屈曲によりガスバリア性が低下することなく、太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れる。
本発明のガスバリア性フィルムは、前記基材及び前記バリア層を備えるものであるが、必要に応じて、更にプライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層等を備えていてもよい。このようなプライマーコート層は、前記基材及び前記バリア層との接着性を向上させることが可能な公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、このようなヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。さらに、このような接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により複数のガスバリア性フィルム同士を接着させてもよい。
また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、前記バリア層がプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により形成される層であることが好ましいく、より好ましくは前記バリア層が、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法により形成されてなる層であり、さらに好ましくは2対以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置で連続的に形成されてなる層である。即ち、プラズマCVD法により形成されるバリア層としては、前記基材を前記一対の成膜ロール上に配置し、前記一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法により形成される層であることがより好ましい。また、このようにして一対の成膜ロール間に放電する際には、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては有機珪素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、前記バリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。なお、このようなプラズマCVD法を利用してバリア層を形成する方法は、後述の本発明のガスバリア性フィルムを製造する方法において説明する。
(ガスバリア性フィルムの製造方法;第2実施形態)
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法(第2実施形態)は、上記した第1実施形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法であって、基材の片面または両面にプラズマCVD法によってバリア層を形成することを特徴とするものである。かかる製法により、上記した第1実施形態のガスバリア性フィルムを、既存のプラズマCVD装置を利用して、複雑な操作を行うことなく、極めて効率よく製造することができる。特にロールツーロール方式で量産する場合にも、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性とバリア性能を両立することができる。更に太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性にも優れるガスバリア性フィルムを量産することができる。
本実施形態の一態様としては、図2に示すようなプラズマCVD装置(ロールツーロール方式ではなく、基材を固定する方式)を用いて、基材の片面または両面(主に片面)にプラズマCVD法によってバリア層を成膜(形成)するものである。図2は、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法に用いることのできるプラズマCVD装置の一実施形態を模式的に表した概略図である。
図2に示すプラズマCVD装置11の構成としては、プラズマCVD放電により成膜を形成するための製膜用チャンバ12が設置されている。このチャンバ12内には、上部電極13と下部電極14が対向する位置に設置されている。また、下部電極14には所定の周波数(例えば、90kHz)を有する所定の電力(例えば、投入電力:300W)を印加するための電源装置15に接続されている。電源装置15による電力印加により、上部電極13と下部電極14の間の空間にプラズマ放電を発生させることができる。なお、図1に示すように、チャンバ12と、上部電極13と、電源装置15は、いずれもアース(接地)されている。
また、プラズマCVD装置11には、各成膜ガス貯蔵部16a、16b、16cが設けられている。さらに、これら各成膜ガス貯蔵部16a〜16cは、配管17によりの電極近傍に設けられたガス導入口18と連結されている。かかる構成により、各成膜ガス貯蔵部16a、16b、16cから配管17を通じて、ガス導入口18から各成膜ガスを所望の組成(成分濃度)に調整した混合ガスをチャンバ12内の上部電極13と下部電極14との間の空間に供給し、プラズマ放電領域19を形成することができる。この際、基材2を下部電極14側に装着することで、基材2上に蒸着膜として所望のバリア層3(炭素含有の酸化珪素膜)の成膜を行うことでガスバリアフィルム1を形成することができる。
さらに各成膜ガス貯蔵部16a〜16cからガス導入口18までの配管17上には、各成膜ガスの供給・停止のために開閉機構及び各成膜ガスの流量(流速)を調整するための調節機構を有するバルブ10a、10b、10cが設けられている。
また、成膜ガス(例えば、HMDSOガスなどの有機珪素化合物ガス(原料ガス)と、酸素ガスなどの反応ガスと、ヘリウムガスなどのキャリアガス)を供給しつつ、チャンバ12内をプラズマCVDを行うのに必要なレベルの減圧(真空)状態を保持するための真空ポンプ(例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等)11が設けられている。この真空ポンプ11とチャンバ12との間には、バルブ12が設けられている。このバルブ12の開閉度、更にはバルブ20a、20b、20cの開閉度、電源装置15による電力印加度を制御することにより、チャンバ12内の圧力(真空度)、ガス組成(有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量または流量比)、プラズマ放電量(有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ)を所定の範囲内で調整することで、基材2上に蒸着膜として所望のバリア層3(炭素含有の酸化珪素膜)の成膜を行うことでガスバリアフィルム1を形成することができる。
上記した図2に示すプラズマCVD装置11を用いて基材の片面(または両面)にプラズマCVD法によってバリア層を形成するには、まず、基材2として、所定の大きさ及び厚さのシート状またはフィルム状の基材(好ましくは無色透明な樹脂基材)を準備し、プラズマCVD装置11のチャンバ12内の下部電極14側に装着する。次に、CVD装置11のチャンバ12内を、真空ポンプ21(例えば、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプ)により、到達真空度(例えば、4.0×10−3Pa程度)まで減圧する。また、原料ガスとして有機珪素化合物ガス(例えば、HMDSOガス)、反応ガスとして酸素ガス、キャリアガスとして、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を成膜ガス貯蔵部16a、16b、16cにそれぞれ充填し、準備する。
次に、下部電極14に所定(例えば、90kHz)の周波数を有する電力(投入電力として、例えば、300W程度)を電源装置15により印加する。そして、チャンバ12内の電極近傍に設けられたガス導入口18から、有機珪素化合物ガス(例えば、HMDSOガス)を所定流量(例えば、1.5sccm標準条件)、酸素ガスを所定流量(例えば、10sccm標準条件)、ヘリウムガスを所定流量(例えば、30sccm標準条件)として導入し、有機珪素化合物ガス(HMDSO)流量、酸素ガス流量、投入電力量を調整し、炭素濃度比率を調節する。
また真空ポンプ21とチャンバ12との間にあるバルブ22の開閉度を制御することにより、成膜用チャンバ12内の圧力を所定圧力(例えば、0.25Torr=33.325Pa程度)に保ち、シート状またはフィルム状の基材2上に蒸着膜として所望のバリア層3(炭素含有の酸化珪素膜)の成膜を行うことでガスバリアフィルム1を形成する。蒸着膜であるバリア層3の膜厚が所定の膜厚(例えば、100nm程度)になるまで成膜を行うことで、第1実施形態の特性を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
なお、図2に示すプラズマCVD装置11を用いて基材の片面(または両面)にプラズマCVD法によってバリア層を形成する場合には、当該プラズマCVD装置11に基材2を1回だけ通して所望のバリア層を形成してもよいが、必要に応じて、当該プラズマCVD装置11に基材2を2回以上通して所望のバリア層を形成するようにしてもよい。こうした場合には、後述するプラズマCVD装置31を用いて連続的に生産するのが、生産効率等の点で優れている。
特に本発明の特徴的な構成部分である、珪素、酸素、炭素の濃度分布、とりわけ炭素の濃度分布は、図2に示すような製造装置11を用いたプラズマCVD法において、上記したように、原料ガスの種類、原料ガスである有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量(または流量比)、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ(プラズマ発生装置の電極ドラムの電力)、真空チャンバ内の圧力等を調節して、基材2上に成膜されるバリア層3における前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように上記制御を行うことができる。
即ち、図2に示す製造装置(プラズマCVD装置)11を用いたプラズマCVD法において、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整する方法としては、特に制限されるものではない。図2に示すプラズマCVD装置では、プラズマ発生電源の電力量を周期的に変化させることで実現することができる。
次に、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整するには、バリア層(膜)が成長する速度(スピード)を変えることにより、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を変える(広くしたり狭くする)ことができる。
例えば、最も典型的な手法としては、(1)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を増やすと、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。逆にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすと、基材に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、原料ガスの供給量(ガス流量)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(2)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を高めると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が増加し、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。一方、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマプラズマ印加電圧)を下げると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が減少し、基材上に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
ここで、前記電源装置15としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このような電源装置15は、これに接続された下部電極14に電力を供給して、上部電極13と下部電極14の間の空間にプラズマ放電を発生させることができる。このような電源装置15としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、交流電源などを利用することが好ましい。また、このような電源装置15としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。
また、プラズマ放電中のチャンバ12内の圧力を0.1Pa以上、好ましくは0.5Pa以上であり、50Pa以下、好ましくは10Pa以下とすることが好ましい。これにより、上部電極13と下部電極14の間の空間にプラズマ放電を効率よく発生させることができ、優れた成膜性が得られる点で優れている。
前記基材2としては、上記したように、プラスチックのフィルムやシートなど、ロール状に巻き取り可能な材料であればいずれのものも用いることができる。プラスチックフィルムないしシートとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)等のスーパーエンジニアリングプラスチック、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。基材2の厚みとしては真空中での搬送が可能な5〜500μmの範囲が好ましい。
前記ガス導入口18から供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスを単独又は混合して用いられる。バリア層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、珪素を含有する有機珪素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)などを例示することができる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機珪素化合物ガスや有機化合物ガスは、バリア層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるバリア層において、優れたバリア性や耐屈曲性を有効に発現することができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機珪素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
(第2実施形態の好適な態様;図3)
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、前記バリア層3を、図3に示す製造装置として対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜することを特徴とするものである。これは、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合にも、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性とバリア性能を両立することができるためである。また、この際にも太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリア性フィルムを量産することができる点で優れている。
特に本発明の特徴的な構成部分である、珪素、酸素、炭素の濃度分布、とりわけ炭素の濃度分布は、図3に示すような製造装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法において、上記したように、原料ガスの種類、原料ガスである有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量(または流量比)、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ(プラズマ発生装置の電極ドラムの電力)、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、ロール基材2の搬送速度等を調節して、基材2上に成膜されるバリア層3における前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように上記制御を行うことができる。
即ち、図3に示す製造装置31を用いたプラズマCVD法において、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整する方法としては、特に制限されるものではない。図3に示すプラズマCVD装置では、磁場発生装置により形成される磁場により、磁場の強い部分で原料ガスが分解されやすい(=基材への堆積量(膜厚)が増える)ことから、当該装置を用いることで前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにすることができる。
次に、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整するには、バリア層(膜)が成長する速度(スピード)を変えることにより、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を変える(広くしたり狭くする)ことができる。
例えば、最も典型的な手法としては、(1)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を増やすと、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。逆にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすと、基材に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、原料ガスの供給量(ガス流量)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(2)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を高めると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が増加し、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。一方、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマプラズマ印加電圧)を下げると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が減少し、基材上に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
更に(3)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にロールツーロール方式で搬送する場合には、基材の搬送速度(プラズマ放電領域=成膜ゾーンを通す時間)を高めると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができ、基材の搬送速度を低くすると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。即ち、製造過程において、基材の搬送速度が(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
特に本発明の特徴的な構成部分である、珪素、酸素、炭素の濃度分布、とりわけ炭素の濃度分布は、図2に示すようなプラズマCVD装置(ロールツーロール方式ではなく、基材を固定する方式)を用いたプラズマCVD法において、原料ガスである有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量(または流量比)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記制御を行うことができる。特に、蒸着膜であるバリア層3中の炭素(C)の量(濃度分布)を炭素分布曲線が少なくとも3つ以上の極値を有し、隣り合った極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように制御すればよい。
また、本実施形態のより好ましい態様としては、前記プラズマCVD法(化学気相成長法)においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに前記基材2を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記した第1実施形態の特性を全て満たすバリア層3(3a、3b)を形成することが可能となる。また、本発明のガスバリア性フィルム1は、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材2の表面上に前記バリア層3を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法によりガスバリア性フィルム1を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラスマ電源とを備え且つ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図3に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。図3は、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法に用いることのできる対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)の一実施形態を模式的に表した概略図である。
以下、図3を参照しながら、本発明のガスバリアーフィルムを製造する方法についてより詳細に説明する。なお、図3は、本発明のガスバリア性フィルムをロールツーロール方式で製造(量産)するのに好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。
図3に示す製造装置(対向ロール電極を持つプラズマCVD装置)31の構成としては、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、一対の成膜ローラー39、40と、ガス供給口41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39及び40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置31においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給口41と、プラズマ発生用電源42と、永久磁石からなる磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。更に、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置31においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このような製造装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域)に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40を電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置31においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置31によれば、CVD法により基材2の表面上にバリア層3を形成することが可能であり、成膜ローラー39上において基材2の表面上にバリア層3を堆積させつつ、更に成膜ローラー40上においても基材2の表面上にバリア層3を堆積させることができるため、基材2の表面上にバリア層3を効率よく形成することができる。
また、成膜ローラー39及び成膜ローラー40の内部には、これらの成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43及び44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39及び成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、ぞれぞれの磁場発生装置43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、各成膜ローラー39、40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39及び成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43、44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるバリア層3を形成することができる点で優れている。
さらに、成膜ローラー39及び成膜ローラー40としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39及び40としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39及び40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材(フィルム)2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
また、このような製造装置31においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置31によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて基材2の表面上にバリア層3を堆積させ、更に成膜ローラー40上にてバリア層3を堆積させることができるため、基材2の表面上に前記バリア層3を効率よく形成することが可能となる。
また、このような製造装置31に用いる送り出しローラー32及び搬送ローラー33、34、35、36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、(樹脂)基材2上にバリア層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
ガス供給口41及び真空ポンプとしては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給口41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給口41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置43、44としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
また、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の圧力を0.1Pa以上、好ましくは0.5Pa以上であり、50Pa以下、好ましくは10Pa以下とすることが好ましい。これにより、磁場が存在する成膜ローラー39と成膜ローラー40の表面付近の領域を中心にプラズマ放電を効率よく発生させることができ、優れた成膜性が得られる点で優れている。
以下の好適な製造装置31とこれを用いた製造方法に関しては、後述する製造装置31’とこれを用いた製造方法にも適用し得るものである。すなわち、後述する製造装置31’とこれを用いた製造方法においても、以下の好適な製造装置31とこれを用いた製造方法と同様の説明を行い得るが、重複記載を避けるため、これらの説明については省略している。
即ち、好適な製造装置31としては、真空チャンバ(図示せず)内で基材2を連続的に搬送しながら当該基材2の表面に蒸着膜であるバリア層3を形成するものであって、巻き掛けられた基材2が対向するように平行ないしほぼ平行に対向して配置された一対の成膜ローラー39、40と、前記各成膜ローラー39、40の内部に設けられ、前ローラー39、40の間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)に面した成膜ローラー表面付近に膨らんだ磁場を発生させる磁場発生装置43、44と、一方の電極と他方の電極とが交互に極性が反転するプラズマ発生用電源42と、前記対向空間に成膜ガス(原料ガス)を供給するガス供給手段であるガス供給口41及び前記対向空間を真空排気する真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)を有し、前記プラズマ発生用電源42は、その一方の電極が一方の成膜ローラー39に接続され、他方の電極が他方の成膜ローラー40に接続された構成とするのが望ましいものである。
上記した好適な構成の製造装置31を用いることで、特に成膜ローラー39、40の間の対向空間に面した成膜ローラー表面付近に膨らんだ磁場を発生させる磁場発生装置43、44と、極性が交互に反転するプラズマ発生用電源42を設けたので、一対の成膜ローラー39、40の間の対向空間に放電を発生させ、これによって生じたプラズマを前記対向空間のそれぞれの成膜ローラー表面付近に収束させることができる。このため、ガス供給手段であるガス供給口41から成膜ガス(原料ガス)を前記対向空間に供給することにより、成膜ガス(原料ガス)はプラズマによって分解して活性化し、分解したガスが成膜ローラーに巻き掛けられ、前記対向空間に面した基材2の表面に堆積し、効率よく皮膜(バリア層3)を形成することができる。
即ち、上記した好適な構成の図3に示す製造装置31を用いた製造方法では、減圧下において、対向して配置した成膜ローラー39、40に交流あるいは極性反転を伴うパルス電圧を印加し、対向配置された成膜ローラー39、40の間の対向空間(成膜ゾーン)に放電を発生させ、成膜ローラー39、40の対向空間に面して巻き掛けた帯状の基材2にプラズマCVD法により成膜を行うものである。
図3は、上記した好適な構成の製造装置31の全体構成を示しており、真空チャンバ(図示せず)と、前記真空チャンバ内でロール軸が平行となるように対向して配置された一対の成膜ローラー39、40と、ロール状に巻かれた帯状の基材2を保持すると共に送り出す送り出しローラー32と、前記送り出しローラー32から送り出された基材2を一方及び他方の成膜ローラー39、40の間の対向空間(成膜ゾーン)に面するように前記成膜成膜ローラー39、40に巻き掛けるように搬送する複数の搬送ローラー33、34、35、36と、成膜後の基材2上にバリア層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取る巻取りローラー45と、ガス供給装置(図示省略)に接続され、前記対向空間の真上にロール軸と平行に配置されたガス供給口41と、前記真空チャンバの底壁に開口した真空排気口(図示せず)及びこれに連通接続された真空ポンプ(図示せず)を備えている。前記ガス供給口41は、対向空間に指向する複数のガス噴出ノズルが長さ方向に設けられており、前記真空排気口は前記対向空間の真下に配置されている。また、前記それぞれの成膜ローラー39、40の内部には磁場発生装置43、44が設けられ、また前記ローラー39、40にプラズマ電力を供給するプラズマ発生用電源42が設けられている。なお、前記ガス供給装置及びガス供給口41はガス供給手段を、また真空排気口及び真空ポンプは真空排気手段を構成する。
前記対向空間は、その下方に設けられた真空ポンプによって排気されており、前記ガス供給口41から供給される成膜ガス(原料ガス)の供給に合わせて適切な圧力に制御されている。
前記成膜ローラー39、40は、真空チャンバから電気的に絶縁され、また相互に電気的に絶縁されている。そして、プラズマ発生用電源42の一方の電極が一方の成膜ローラー39に、他方の電極が他方の成膜ローラー40に接続されている。前記プラズマ発生用電源42は、極性が交互に反転する電圧を出力し、電圧波形としては、サイン波の交流、方形波のパルス状電圧を例示することができるが、実際の動作中には放電の発生により若干歪んだ形状となる(図9〜図17参照)。電圧波形は、放電の発生が可能であればよく、他の波形でもよい。
前記成膜ローラー39、40には、ローラーが回転しても対向空間に対して一定の位置関係を保つように磁場発生装置43、44が設けられている。この磁場発生装置43、44は、ローラー軸方向に長い中央磁石と、レーストラック状の外周磁石と、これらをロール内側で接続する磁界短絡部材とを備えている。それぞれの成膜ローラー39、40に備えられた磁場発生装置43、44は同じ極性の磁極が対向するように配置されている。前記磁場発生装置43、44によって中央磁石の磁極から出た磁力線が効率的に外周磁石の磁極に導かれて、それぞれの成膜ローラー39、40においてローラー表面から対向空間側に膨らんだ、断面が二つの山形をしたマグネトロン放電用のレーストラック状磁場を発生させる。一方の成膜ローラー39に備えられた磁場発生装置43によって形成される磁力線は、対向する成膜ローラー40に備えられた磁場発生装置44の磁極とは磁力線がまたがることなく、それぞれほぼ閉じた磁気回路を形成している。
上記のように前記磁場発生装置43、44によって、成膜ローラー39、40の間の対向空間に面したローラー表面付近に、断面が二山形で、ローラー軸方向に伸びたレーストラック状の磁場が形成される。この磁場の形態は、例えばプレーナーマグネトロンスパッタカソードで形成される磁場と同様のものである。前記磁場は、プラズマの発生が磁場の存在箇所に優先的に起こるようすると共に、プラズマのドリフト等によりプラズマをロールの長手方向に均一化する役割を有する。すなわち、前記レーストラック状の磁場により、放電により生じたプラズマは磁力線の膨出部に収束して形成されるようになり、成膜ローラー39、40の対向空間に面した表面付近にレーストラック状のプラズマが形成される。
前記磁場の下で成膜ガス(原料ガス)を成膜ローラー39、40の間の対向空間に供給すると共に成膜ゾーンを構成する対向空間を適切な圧力に調整、維持し、プラズマ発生用電源42から成膜ローラー39、40に高周波の交流またはパルス状の電圧を印加すると、対向空間及び成膜ローラー39、40の表面に巻き掛けた基材2を介して成膜ローラー39、40の間で放電が発生し、プラズマが形成される。このため、対向空間に成膜ガス(原料ガス)が供給されていれば、そこで原料ガスがプラズマによって分解され、基材2上にバリア層3(皮膜)がプラズマCVDプロセスにより形成される。
基材2は樹脂(絶縁性)材料であるため、直流電圧の印加ではプラズマ電流を流すことができないが、適切な周波数(およそ1kHz以上、好ましくは10kHz以上)であれば樹脂(絶縁性)基材2を通して電流の伝播が可能である。また、プラズマ発生用電源42から供給する放電電圧は、波高値としては数百V〜2千V程度の範囲が好ましい。成膜ローラー39、40は、高周波の交流又はパルス状の電圧を出力するプラズマ発生用電源42の両極にそれぞれ接続されており、一方の成膜ローラー39に負の電圧が印加されると、他方の成膜ローラー40には正の電圧が印加されるので、電流は他方のローラー40から一方の成膜ローラー39に流れ、これが高周波で逆転しながら継続する。
また、プラズマ発生用電源42から印加される電圧は、成膜ローラー39、40の表面全体に印加されるが、放電を容易にする磁場は、対向空間に面したローラー表面側にのみ存在するので、周囲の圧力が0.1Pa以上、好ましくは0.5Pa以上であり、50Pa以下、好ましくは10Pa以下の範囲にあれば、放電は磁場の存在する領域を中心に発生させることができる。このため、対向空間を囲うような放電室を設ける必要は無い。圧力が0.1Pa以上であれば、磁場の存在する領域において、十分な放電を発生させることができ、一方、50Pa以下であれば、磁場領域以外での放電の発生を抑制することができ、成膜ローラー39、40の基材2が巻き掛けられていない部分においてはバリア層3(成膜)の形成がなされない点で優れている。
上記した好適な構成の製造装置31を用いた製造方法では、基材2を2本の成膜ローラー39、40に掛け渡して搬送しながら、成膜ローラー39、40の間の対向空間に面したローラー表面に担持した基材2の上にバリア層3(皮膜)が形成される。基材2へのバリア層3(皮膜)の形成は、磁場発生装置43、44によりローラー表面付近に形成されたレーストラック状の磁場及びプラズマ発生用電源42のそれぞれの電極にそれぞれ接続された成膜ローラー39、40の間の対向空間に発生した放電により形成されたレーストラック状のプラズマによって、前記対向空間に供給された成膜ガス(原料ガス)を分解し、分解されたガスを前記対向空間に面した成膜ローラー39、40の表面に担持された基材2の上に堆積させることにより、連続的に搬送される基材2の表面にバリア層3(皮膜)が形成される。
前記放電は、それぞれの成膜ローラー39、40の表面付近の磁場存在領域でのみ発生し、成膜ローラー39、40の他にプラズマの発生に関与する電極は不要で、また対向空間を囲う放電室のような遮蔽部材も必要がないため、プラズマCVD法によるバリア層3(成膜)の形成は、実質的に成膜ローラー39、40の表面にある基材2上でのみ生じる。成膜対象物である基材2は、成膜ローラー39、40に巻き掛けられて、常に搬送されているため、本装置31では、プラズマ発生に関与する場所で厚いバリア層3(成膜)が生成されることなく、長時間に渡る安定的な放電が可能である。また、成膜ローラー39、40のみでプラズマ発生機構を構成することができる。
また、対向配置された成膜ローラー39、40に設けた磁場発生装置43、44は、同じ極性の磁極が対向するように磁極が配置されており、それぞれの成膜ローラー39、40においてローラー表面から対向空間側に膨らんだ、断面が二つの山形をしたマグネトロン放電用のレーストラック状磁場を発生させるようするのが望ましい。
さらに、成膜ローラー39、40を水平方向に並置し、ガス供給手段(ガス供給口41)を対向空間の上方に、真空排気手段(真空ポンプ)を下方に配置したが、成膜ローラー等の配置は必ずしもこれに限定されない。例えば、成膜ローラーを垂直に配置してもよく、この場合、対向空間の側方の一方にガス供給手段を、他方に真空排気手段を設ければよい。要は、対向空間の一方からガスを供給し、他方から排気すればよいが、これらを上下に配置することが最も好ましい(図3参照)。
このような図3に示す製造装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、樹脂基材の搬送速度を適宜調整することにより、本発明のガスバリア性フィルム1を製造することができる。すなわち、図3に示す製造装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39及び40)間にプラズマ放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の樹脂基材2の表面上並びに成膜ローラー40上の樹脂基材2の表面上に、前記バリア層3がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材2が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより樹脂基材2の表面上に前記バリア層3が形成される。
ここで、前記基材2としては、上記したように、プラスチックのフィルムやシートなど、ロール状に巻き取り可能な材料であればいずれのものも用いることができる。プラスチックフィルムないしシートとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)等のスーパーエンジニアリングプラスチック、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。基材2の厚みとしては真空中での搬送が可能な5〜500μmの範囲が好ましい。
前記ガス供給口41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスを単独又は混合して用いられる。バリア層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、珪素を含有する有機珪素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)などを例示することができる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機珪素化合物ガスや有機化合物ガスは、バリア層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるバリア層において、優れたバリア性や耐屈曲性を有効に発現することができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機珪素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機珪素化合物、HMDSO、(CHSiO)と反応ガスとしての酸素(O)を含有するものを用い、珪素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスの好適な比率等についてより詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させて珪素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1):
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO (1)
に記載のような反応が起こり、二酸化珪素が製造される。このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。本発明において、バリア層を形成する際には、上記(1)式の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくするのが望ましい。なお、実際のプラズマCVD装置のチャンバ内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化珪素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がバリア層中に取り込まれる。その結果、得られるガスバリア性フィルムに優れたバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
また、真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.1Pa以上、好ましくは0.5Pa以上であり、50Pa以下、好ましくは10Pa以下とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39及び40間に放電するために、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ローラー39及び40に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、100W〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルが発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
基材の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、バリア層として十分な厚みを確保することができる点で優れている。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、前記バリア層3を、図3に示す製造装置として対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜することを特徴とするものである。これは、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合にも、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性とバリア性能を両立することができるためである。また、この際にも太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリア性フィルムを量産することができる点で優れている。
特に本発明の特徴的な構成部分である、珪素、酸素、炭素の濃度分布、とりわけ炭素の濃度分布は、図3に示すような製造装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法において、上記したように、原料ガスの種類、原料ガスである有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量(または流量比)、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ(プラズマ発生装置の電極ドラムの電力)、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、ロール基材2の搬送速度等を調節して、基材2上に成膜されるバリア層3における前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように上記制御を行うことができる。
(第2実施形態のより好適な態様;図4)
また生産性能の観点から、対向ロール対(成膜ローラー39及び40)が2つ以上であることが好ましく、さらに好ましくは、図4に示すように3対以上が好ましい。また、装置コスト、設置面積の観点から10対以下が好ましい。図4は、本発明のガスバリア性フィルムを製造するのに特に好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。
図4に示す製造装置(対向ロール電極を持つプラズマCVD装置)31’の構成としては、搬送ローラー37、38を増設することで、図3に示す製造装置を3つ直列に連結したものであり、対向ロール電極として、3対の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cを設けたものである。即ち、図4に示す製造装置31’の構成としては、送り出しローラー32と、第1〜3の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置部と、巻取りローラー45とを備えている。第1の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置部は、第1の搬送ローラー33a、34a、35a、36a,37aと、第1の成膜ローラー39a、40aと、第1のガス供給口41aと、第1のプラズマ発生用電源42aと、第1の成膜ローラー39a及び40aの内部に設置された第1の磁場発生装置43a、44aと、を備えている。同様に、第2の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置部は、第2の搬送ローラー38b、33b、34b、35b、36b,37bと、第2の成膜ローラー39b、40bと、第2のガス供給口41bと、第2のプラズマ発生用電源42bと、第2の成膜ローラー39b及び40bの内部に設置された第2の磁場発生装置43b、44bと、を備えている。第3の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置部は、第3の搬送ローラー38c、33c、34c、35c、36cと、第3の成膜ローラー39c、40cと、第3のガス供給口41cと、第3のプラズマ発生用電源42cと、第3の成膜ローラー39c及び40cの内部に設置された第3の磁場発生装置43c、44cと、を備えている。また、このような製造装置31’においては、少なくとも第1の成膜ローラー39a、40aと、第1のガス供給口41aと、第1のプラズマ発生用電源42aと、永久磁石からなる第1の磁場発生装置43a、44bとが図示を省略した第1の真空チャンバー内に配置されている。同様に、少なくとも第2の成膜ローラー39b、40bと、第2のガス供給口41bと、第2のプラズマ発生用電源42bと、永久磁石からなる第2の磁場発生装置43b、44bとが図示を省略した第2の真空チャンバー内に配置されている。更に、少なくとも第3の成膜ローラー39c、40cと、第3のガス供給口41cと、第3のプラズマ発生用電源42cと、永久磁石からなる第3の磁場発生装置43c、44cとが図示を省略した第3の真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置31’において前記第1〜第3の真空チャンバーは図示を省略した第1〜第3の真空ポンプにそれぞれ接続されており、かかる第1〜第3の真空ポンプにより第1〜第3の真空チャンバー内の圧力をそれぞれ独立して適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置31’においては、3対の成膜ローラーとして、まず、第1の成膜ローラー39aと成膜ローラー40aを一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれ第1のプラズマ発生用電源42aに接続されている。同様に、第2の成膜ローラー39bと成膜ローラー40bを一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれ第2のプラズマ発生用電源42bに接続されている。更に、第3の成膜ローラー39cと成膜ローラー40cを一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれ第3のプラズマ発生用電源42cに接続されている。そのため、このような製造装置31’においては、第1〜第3のプラズマ発生用電源42a〜42cによりそれぞれ電力を供給することにより、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cとの間の各空間に放電することが可能であり、これにより第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cとの間の各空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置31’においては、3対の成膜ローラーとして、まず、第1の成膜ローラー39a及び40aは、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。同様に、第2の成膜ローラー39b及び40bは、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましく、第3の成膜ローラー39c及び40cも、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。更には、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cは、それぞれ中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが特に好ましい(図4参照)。このようにして、3対の成膜ローラー(第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40c)をそれぞれ配置することにより、成膜レートを6倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも6倍増加させることが可能となる。
また、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cの内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された第1〜第3の磁場発生装置43a及び44a、43b及び44b、43c及び44cがそれぞれ設けられている。
さらに、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cとしては適宜公知のローラーを用いることができる。このような第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cとしては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cの直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
また、このような図4に示す製造装置31’に用いる送り出しローラー32及び第1〜第3の搬送ローラー33a〜33c、34a〜34c、35a〜35c、36a〜36c、37a〜b、38b〜38cとしては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、樹脂基材2上にバリア層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
第1〜第3のガス供給口41a〜41cとしては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給口41a〜41cは、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cの間の各対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記各対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給口41a〜41cと、真空排気手段である各真空ポンプを配置することにより、第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cとの間の各対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、第1〜第3のプラズマ発生用電源42a〜42cとしては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このような第1〜第3のプラズマ発生用電源42a〜42cは、これに接続された第1〜第3の成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cに、それぞれ独立に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このような第1〜第3のプラズマ発生用電源42a〜42cとしては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラー39aと40a、39bと40b、39cと40cの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい(図4参照)。また、このような第1〜第3のプラズマ発生用電源42a〜42cとしては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、いずれも印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、第1〜第3の磁場発生装置34a及び44a、43b及び44b、43c及び44cとしては、いずれも適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
また、第1〜第3の磁場発生装置34a及び44a、43b及び44b、43c及び44cとの間の各対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の圧力は、いずれも0.1〜10Paとすることが好ましい。これにより、磁場が存在する第1〜第3の磁場発生装置34a及び44a、43b及び44b、43c及び44cの各表面付近の領域を中心にプラズマ放電を効率よく発生させることができ、優れた成膜性が得られる点で優れている。
このような図4に示す製造装置31’を用いて、例えば、第1〜第3のガス供給口41a〜41cへの原料ガスの種類、第1〜第3のプラズマ発生装置(プラズマ発生用電源42a〜42c)の電極ドラムの電力、第1〜第3の真空チャンバー内の圧力、第1〜第3の成膜ローラー(39a〜39c、40a〜40c)の直径、並びに、樹脂基材2の搬送速度を適宜調整することにより、本発明のガスバリア性フィルム1を製造することができる。すなわち、図4に示す製造装置31’を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を第1〜第3の真空チャンバー内にぞれぞれ独立に供給しつつ、第1〜第3の3対の成膜ローラー(成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40c)間の各空間にそれぞれプラズマ放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、第1〜第3の成膜ローラー39a〜39c上の樹脂基材2の表面上並びに第1〜第3の成膜ローラー40a〜40c上の樹脂基材2の表面上に、前記バリア層3がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材2が送り出しローラー32や第1〜第3の成膜ローラー39a〜39c、40a〜40c等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより樹脂基材2の表面上に前記バリア層3が形成される。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、前記バリア層3を、図4に示す製造装置として、2対以上、好ましくは3対以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって連続的に生産(成膜)することを特徴ととするものである。これは、2対以上、好ましくは3対以上の対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合には、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性とバリア性能を両立することができるためである。また、この際にも太陽電池や電子部品のように温度変化が生じる場合の耐久性に優れるガスバリア性フィルムを量産することができる点で優れている。
特に本発明の特徴的な構成部分である、珪素、酸素、炭素の濃度分布、とりわけ炭素の濃度分布は、図4に示すような製造装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法において、上記したように、第1〜第3のガス供給口41a〜41cへの原料ガスの種類、原料ガスである有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比、第1〜第3のガス供給口41a〜41cへの有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ(第1〜第3のプラズマ発生装置(プラズマ発生用電源42a〜42c)の電極ドラムの電力)、第1〜第3の真空チャンバー内の圧力、第1〜第3の成膜ローラー(39a〜39c、40a〜40c)の直径、並びに、ロール基材2の搬送速度等を調節して、基材2上に成膜されるバリア層3における前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように上記制御を行うことができる。
即ち、図4に示す製造装置31’を用いたプラズマCVD法において、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整する方法としては、特に制限されるものではない。図4に示すプラズマCVD装置でも、図3と同様に、磁場発生装置により形成される磁場により、磁場の強い部分で原料ガスが分解されやすい(=基材への堆積量(膜厚)が増える)ことから、当該装置を用いることで前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにすることができる。
次に、前記炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下となるように調整するには、バリア層(膜)が成長する速度(スピード)を変えることにより、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を変える(広くしたり狭くする)ことができる。
例えば、最も典型的な手法としては、(1)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を増やすと、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。逆にプラズマ放電領域への原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすと、基材に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、原料ガスの供給量(ガス流量)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(2)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を高めると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が増加し、基材上に堆積される膜厚が増えるため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。一方、プラズマ発生用電源(装置)により電極間に投入する電力量(プラズマプラズマ印加電圧)を下げると、原料ガスがプラズマ放電領域内で分解されイオン化する量が減少し、基材上に堆積される膜厚が減少するため前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができる。即ち、製造過程において、電極間に投入する電力量(プラズマ印加電圧)を(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
更に(3)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更にロールツーロール方式で搬送する場合には、基材の搬送速度(プラズマ放電領域=成膜ゾーンを通す時間)を高めると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を狭くする(密にする)ことができ、基材の搬送速度を低くすると、前記炭素分布曲線の隣あった極値間の距離を広くする(疎にする)ことができる。即ち、製造過程において、基材の搬送速度が(好ましくは周期的に)増減するように調節することにより、隣あった極値間の距離の変動値が上記範囲内となるように調整することができる。
また(4)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に図4の3連対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いる場合には、各対向ロール電極毎の真空チャンバ内の圧力を変化させてもよい。この場合、真空チャンバ内の圧力を低くする=高真空化する=原料ガス濃度が低くなる=原料ガスの供給量(ガス流量)を減らすことになり、上記(1)と同じになるため、ここでの説明は省略する。
更に(5)プラズマCVD法において、少なくとも3つ以上の極値を持つ(濃度分布が周期的に変動する)ようにした上で、更に図4の3連対向ロール電極を持つプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いる場合には、各対向ロール電極毎の成膜ローラーの直径を変化させてもよい。成膜ローラーの直径を大きくすると、プラズマ放電領域に長期間されされることになる=基材の搬送速度(プラズマ放電領域=成膜ゾーンを通す時間)を高めることになり、上記(3)と同じになるため、ここでの説明は省略する。
図4に示すように製造装置31’に複数の対向ロール対(図4では3対の対向ロール対である成膜ローラー39a及び40a、39b及び40b、39c及び40cを設けた例を示している)を設ける場合には、対向ロール毎の有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等は、それぞれ独立制御できることが好ましい。
なお、第2実施形態のより好適な態様である図4に示す製造装置31’及びこれを用いた製法は、同実施形態の好適な態様である図3に示す製造装置31を3つ連結した構成及びこれを用いた製法であり、基本的には図3に示す製造装置31及びこれを用いた製法と同様である。そのため、図3に示す製造装置31及びこれを用いた製法で説明した各種要件のうち、上記した図4に示す製造装置31’及びこれを用いた製法に記載のない要件については、図3に示す製造装置31及びこれを用いた製法で説明した要件(内容)と同様である。
3.オーバーコート層(保護層)
本発明に係るガスバリア層3、3a、3b上には、バリア層3、3a、3bの保護、平滑化、接着性の改良等を目的にオーバーコート層を設けてもよい。
(オーバーコート層に用いられる素材)
オーバーコート層に用いる素材は、目的により有機、無機の各種素材が用いられる。
有機物(有機素材)としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシラザン、シルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂もしくは有機無機複合樹脂は重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂もしくは有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。ここで「架橋性基」とは、光照射処理や熱処理で起こる化学反応によりバインダーポリマーを架橋することができる基のことである。このような機能を有する基であれば特にその化学構造は限定されないが、例えば、付加重合し得る官能基としてエチレン性不飽和基、エポキシ基/オキセタニル基等の環状エーテル基が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン原子、オニウム塩構造等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基が好ましく、特開2007−17948号公報の段落0130〜0139に記載された官能基が含まれる。
有機無機複合樹脂としては、例えば米国特許6503634号公報に「ORMOCER」として記載されている有機無機複合樹脂も好ましく用いることができる。
有機樹脂の構造や重合性基の密度、架橋性基の密度、架橋剤の比率、及び硬化条件等を適宜調整することで、オーバーコート層の弾性率を所望の値に調整することができる。
具体的な有機樹脂組成物としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
当該光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種又は2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
上記感光性樹脂の組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
オーバーコート層には、無機素材を含有させることができる。無機素材を含有させることは一般的にオーバーコート層の弾性率増加につながる。無機素材の含有比率を適宜調整することでもオーバーコート層の弾性率を所望の値に調整することができる。
無機素材としては、数平均粒径が1〜200nmの無機微粒子が好ましく、数平均粒径が3〜100nmの無機微粒子がより好ましい。無機微粒子としては、透明性の観点より金属酸化物が好ましい。
金属酸化物として特に制約はないが、SiO、Al、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、BaO、SrO、CaO、MgO、VO、V、CrO、MoO、MoO、MnO、Mn、WO、LiMn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnIn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnInなどが挙げられる。これらは、単体の使用でも二種類以上の併用でも良い。
無機微粒子の分散物を得るには、近年の学術論文に倣って調整しても良いが、市販の無機微粒子分散物も好ましく用いることができる。
具体的には、日産化学社製のスノーテックスシリーズやオルガノシリカゾル、ビックケミー・ジャパン社製のNANOBYKシリーズ、Nanophase Technologies社製のNanoDurなどの各種金属酸化物の分散物を挙げることができる。
これら無機微粒子は表面処理を行って用いることもできる。
無機素材としては、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどの平板状微粒子を用いることもできる。
具体的には、上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSiO10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
オーバーコート層中の無機素材の比率としては、オーバーコート層全体に対して、10〜95質量%の範囲であることが好ましく、20〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
オーバーコート層には、いわゆるカップリング剤を単独でもしくは他素材と混合して用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等、特に制限はないが、塗布液の安定性の観点からシランカップリング剤が好ましい。
具体的なシランカップリング剤としては、例えば、ハロゲン含有シランカップリング剤(2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オーバーコート層は、前記有機樹脂や無機素材、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することが好ましい。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する。又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
また、オーバーコート層は上述のエキシマランプによる照射で硬化させることもできる。バリア層3(3a、3b)とオーバーコート層とを同一ラインで塗布形成する場合には、オーバーコート層の硬化もエキシマランプによる照射で行うことが好ましい。特にシラザン、シロキサンを含有するポリマーにエキシマー照射を行ったものが好ましく用いられる。
実施例1
図2に示すように、基材2として、シート状(30cm×21cm)の厚さ125μmの二軸延伸PETを準備し、プラズマCVD装置11のチャンバ12内の下部電極14側に装着した。次に、プラズマCVD装置11のチャンバ12内を、真空ポンプ21(油回転ポンプおよびターボ分子ポンプ)により、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。また、原料ガスとして、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガスおよび酸素ガス(純度99.9999%以上)を原料ガス貯蔵部16a、16bにそれぞれ充填し、準備した。また、随伴ガスとして、ヘリウムガスを随伴ガス貯蔵部16cに充填し、準備した。
次に、下部電極14に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:300W)を電源装置15により印加した。そして、チャンバ12内の電極近傍に設けられたガス導入口18から、HMDSOガスを1.5sccm、酸素ガスを10sccm、ヘリウムガスを30sccm標準条件として導入し、ヘキサメチルジシロキサンと酸素のガス流量(供給量)、投入電力量を調整し、3つ(以上)の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が本発明例では0.35以上1.0以下、比較例では0.35未満となるように、炭素濃度比率を調節した。ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。
また真空ポンプ21とチャンバ12との間にあるバルブ22の開閉度を制御することにより、成膜用チャンバ12内の圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、シート状の基材2上に蒸着膜として所望のバリア層3(炭素含有の酸化珪素膜)の成膜を行うことでガスバリア性フィルム1を形成した。蒸着膜であるバリア層3の膜厚が100nmになるまで成膜を行い、試料No.101〜104のガスバリア性フィルムを得た。
《ガスバリア性フィルムの組成の測定》
上記作製した試料No.101〜104のガスバリア性フィルム1について、バリア層3の厚さ方向の組成分布を、XPS分析を用いた方法で測定して求めた。その際、上述のような厚さ方向の補正を行った。即ち、上述したように、エッチング時間は膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離に概ね相関することから、横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線から「バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離」とする元素の分布曲線にする補正を行った。
(XPS分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:1分間スパッタ後、測定を繰り返す
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
試料No.101〜104のガスバリア性フィルム1について、バリア層3の厚さ方向の組成分布の測定結果から、バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値を求めた結果を、それぞれ図5〜図8に示す。
また、バリア層3の厚さ方向の組成分布の測定結果から、試料No.101〜104のバリア層全体に占める珪素、酸素、炭素の含有量を求めた結果を以下に示す。ここで、各元素ごとの含有量は、バリア層3の厚さ方向の組成分布は一定ではないため、各元素ごとの厚さ方向の測定結果(複数の測定箇所)から、各元素ごとの含有量の平均値を求めた結果を表すものである。
試料No.101のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は14at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも33nm以下であった。
試料No.102のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は14at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも41nm以下であった。
試料No.103のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は14at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも42nm以下であった。
試料No.104のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は14at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも43nm以下であった。
《水蒸気バリア性の評価》
上記作製した試料No.101〜104のガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過装置(株式会社日本エイピーアイ社製、API−BA90)を使用し、60℃、90%RHにおける水蒸気透過率を求めた。
《評価2:フレキシブル性の評価》
試料No.101〜104の各ガスバリア性フィルムについて、20mmΦ(直径20mm)相当の往復曲げを100回繰り返した。この際、試料No.101〜104のガスバリア性フィルム1のバリア層3の表面には部材が接触しないように保持した。次いで、上記評価1の水蒸気バリア性の評価と同様にして、水蒸気バリア性評価を行った。
《評価3:温度変動依存性の評価》
試料No.101〜104の各ガスバリア性フィルムについて、温度調整可能なサーモ機を使用し、室温から60℃/hrの昇温スピードで昇温、30分90℃保持の後、60℃/hrの降温スピードで−40℃まで降温、−40℃で30min保持の後90℃まで60℃/hrで昇温した。このサイクルを200サイクル実施し、評価1の方法で水蒸気バリア性を測定した。
表1の「変動係数」は、試料No.101〜104の各ガスバリア性フィルムについて、上記「ガスバリア性フィルムの組成の測定」によりバリア層3の厚さ方向の組成分布から得られた、該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、隣あった極値間の距離の変動値をいう。
表1及び図5〜8の結果から、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が、0.35以上、1.0以下である試料No.103〜104のガスバリア性フィルムでは、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が、0.35以上、1.0以下の範囲から外れる試料No.101〜102のガスバリア性フィルムに比して、屈曲性(屈曲試験後水蒸気透過率、特に温度変動依存性(温度試験実施後の水蒸気透過率)が格段に優れる(大幅に改善できる)ことが確認できた。
実施例2
前述の図4(3連対向ローラー)に示す製造装置31’を用いてガスバリア性フィルムを製造した。すなわち、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を基材(フィルム)2として用い、これを送り出しローラー32に装着した。そして、第1〜第3の成膜ローラー39aと40a、39bと40b、39cと40cとの間にそれぞれ独立に磁場を印加すると共に、第1〜第3の成膜ローラー39aと40a、39bと40b、39cと40cにそれぞれ独立に電力を供給して、第1〜第3の成膜ローラー39aと40a、39bと40b、39cと40cとの間の各空間に放電してプラズマを発生させ、このような放電領域に、第1〜第3のガス供給口41a〜41cから成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガス)を供給して、下記条件にてプラズマCVD法により、基材(フィルム)2上に蒸着膜であるバリア層3の薄膜形成を行ってガスバリア性フィルム1を形成し、巻取りローラー45に巻き取った。
〈成膜条件〉
成膜基準条件を以下で設定した。
原料ガスの供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガスの供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
上記成膜基準条件に対して、原料ガス(HMDSO)の供給量、反応ガス(酸素ガス)の供給量、プラズマ印加電圧を変え、対向ローラ毎の成膜条件を変化させ(詳しくは、13の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が本発明例では0.35以上1.0以下、比較例では0.35未満となるように、炭素濃度比率を変化させ)、バリア(膜)層3の厚みが300nmになるように調整し、試料No.201〜209のガスバリア性フィルム1を作製した。
以下、試料No.201〜209のガスバリア性フィルム1のバリア層3の濃度プロファイルおよび極値間の変動係数を示す。評価については、実施例1と同様に評価した。
試料No.201〜209のガスバリア性フィルム1について、バリア層3の厚さ方向の組成分布の測定結果から、バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線と、該炭素分布曲線から求めた極値と、炭素の原子比(炭素比率)と、隣あった極値間の距離と、隣あった極値間の距離の変動値と、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、それぞれのブロックに存在する極値における極値間の距離の平均値を求めた結果とを、それぞれ図9〜図17に示す。
また、バリア層3の厚さ方向の組成分布の測定結果から、試料No.201〜209のバリア層全体に占める珪素、酸素、炭素の含有量を求めた結果を以下に示す。ここで、各元素ごとの含有量は、バリア層3の厚さ方向の組成分布は一定ではないため、各元素ごとの厚さ方向の測定結果(複数の測定箇所)から、各元素ごとの含有量の平均値を求めた結果を表すものである。
試料No.201のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも33nm以下であった。
試料No.202のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも37nm以下であった。
試料No.203のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも40nm以下であった。
試料No.204のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも47nm以下であった。
試料No.205のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも40nm以下であった。
試料No.206のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも47nm以下であった。
試料No.207のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、58at%であり、炭素の含有量の原子比率は、9at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は22at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも47nm以下であった。
試料No.208のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも59nm以下であった。
試料No.209のバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、33at%であり、酸素の含有量の原子比率は、59at%であり、炭素の含有量の原子比率は、8at%であった。更に、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値は13at%であった。炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも70nm以下であった。
表2の「変動係数」は、表1と同様に、試料No.201〜209の各ガスバリア性フィルムについて、実施例1の「ガスバリア性フィルムの組成の測定」によりバリア層3の厚さ方向の組成分布から得られた、該バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、隣あった極値間の距離の変動値をいう。
得られた試料No.201〜209のガスバリア性フィルムにおけるバリア層3の厚みはいずれも0.3μmであった。表2及び図9〜17の結果から明らかなように、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が0.35以上、1.0以下である試料No.202〜209のガスバリア性フィルムの場合、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が、0.35以上、1.0以下の範囲から外れる試料No.201のガスバリア性フィルムに比して、屈曲性(屈曲試験後水蒸気透過率、特に温度変動依存性(温度試験実施後の水蒸気透過率)が格段に優れる(大幅に改善できる)ことが確認できた。
また、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が0.35以上、1.0以下である試料No.202〜209のガスバリア性フィルムのなかでも、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が0.40以上、0.70以下である試料No.203〜208のガスバリア性フィルムがより優れた温度変動依存性(温度試験実施後の水蒸気透過率)を示すことがわかった。更に隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が0.45以上、0.65以下である試料No.204〜207のガスバリア性フィルムがさらに優れた水蒸気透過率及び温度変動依存性(温度試験実施後の水蒸気透過率)を示すことがわかった。
更に、隣あった極値間の距離の変動値(変動係数)が0.40以上、0.70以下である試料No.203〜208のガスバリア性フィルムのなかでも、バリア層表面から、バリア層全体を厚み方向に3等分し、バリア層の中間領域に存在する極値間の平均値がバリア層全体の極値の平均値の95%以下である試料No.205のガスバリア性フィルムが最も優れた温度変動依存性(温度試験実施後の水蒸気透過率)を示すことがわかった。
実施例3(OLED素子)
《電子デバイスの作製》
試料No.201のガスバリア性フィルムを基材として用いて、以下の手順で、有機薄膜電子デバイスである有機EL素子を作製した。
〔有機EL素子の作製〕
(第1電極層の形成)
試料No.201のガスバリア性フィルムのバリア層上に、厚さ150nmのITO(酸化インジウムスズ)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。
(正孔輸送層の形成)
上記で形成した第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を、乾燥後の厚みが50nmとなるように押出し塗布機で塗布した後乾燥し、正孔輸送層を形成した。
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリア性フィルムの洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
〈塗布条件〉
正孔輸送層形成用塗布液の塗布工程は、大気中、25℃、相対湿度50%RHの環境で行った。
〈正孔輸送層形成用塗布液の準備〉
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Heraeus社製 Clevios(登録商標)P AI 4083)を純水65質量%、およびメタノール35質量%の混合溶液で2倍に希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
〈乾燥および加熱処理条件〉
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で温風を当て溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い、温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
(発光層の形成)
引き続き、上記で形成した正孔輸送層の上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を乾燥後の厚みが40nmになるように押出し塗布機で塗布した後乾燥し、発光層を形成した。
〈白色発光層形成用塗布液〉
ホスト材H−A 1.0g、ドーパント材D−A 100mg、ドーパント材D−B 0.2mg、およびドーパント材D−C 0.2mgを、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。ホスト材H−A、ドーパント材D−A、ドーパント材D−B、およびドーパント材D−Cの化学構造は、下記化学式に示す通りである。
〈塗布条件〉
塗布工程は、窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、白色発光層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
〈乾燥および加熱処理条件〉
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で温風を当て溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
(電子輸送層の形成)
引き続き、上記で形成した発光層の上に、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を、乾燥後の厚みが30nmになるように押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。
〈塗布条件〉
塗布工程は、窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
〈電子輸送層形成用塗布液〉
電子輸送層は、E−A(下記化学式参照)を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし、電子輸送層形成用塗布液とした。
〈乾燥および加熱処理条件〉
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で温風を当て、溶媒を除去した後、引き続き加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
引き続き、上記で形成した電子輸送層の上に電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
(第2電極の形成)
引き続き、上記で形成した電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、マスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
(保護層の形成)
続いて、第1電極および第2電極の取り出し部になる部分を除き、CVD法にてSiNxを200nmの厚さで積層し、第2電極層上に保護層を形成した。
このようにして、電子素子本体を作製した。
〔封止〕
封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)を、ドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いドライラミネートしたもの(接着剤層の厚み1.5μm)を使用し、スリーボンド株式会社製シート状封止剤TB1655を使用し封止を行いサンプルNo.301の有機EL素子を作製した。
また、試料No.201のガスバリア性フィルムに代えて、試料No.207のカスバリア性フィルムを使用した以外は、上記サンプルNo.301の有機EL素子の製法と同様にしてサンプルNo.302をの有機EL素子を作製した。
また、試料No.207のガスバリア性フィルム上に、無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NN120−20)と、アミン触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンを1質量%、パーヒドロポリシラザンを19質量%と含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NAX120−20)とを4:1の比率(質量比)で混合し、固形分が5質量%になるように、ジブチルエーテルで希釈した塗布液を塗布膜厚5μmになるように塗布を行い、80℃で1分間乾燥後、窒素化で、172nmのエキシマーランプを使用し、3J/cmの照射を行いオーバーコート層(保護層)を設置した試料No.217のガスバリア性フィルムを作製した。試料No.217のガスバリア性フィルムの断面をTEMで観察したところ、オーバーコート層(保護層)の膜厚は150nmであった。試料No.217のガスバリア性フィルムを使用し、サンプルNo301の有機EL素子と同様にしてサンプルNo.303の有機EL素子を作製した。
これらサンプルNo.301〜303の有機EL素子を前記90℃〜−40℃のサイクルサーモ処理(実施例1の評価3の温度変動依存性の評価試験と同様の処理)を行い、その後、60℃、90%RHで500hrの耐湿処理を行った後、サンプルNo.301〜303の有機EL素子に対し、それぞれ1mA/cmの電流を印加し、24時間連続発光させた後、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でパネルの一部分を拡大し、黒点を観察した。サンプルNo.301の有機EL素子では、黒点が全面に発生し、黒点面積が、面積比率5%以上であったが、サンプルNo.302の有機EL素子は、黒点の発生は少なく、面積比率0.5%であった。サンプルNo.303の有機EL素子は、黒点の発生がさらに少ない面積比率0.2%であった。
実施例4 (OPV評価)
試料No.201のガスバリア性フィルムのバリア層上に、第一の電極(陽極)としてインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を厚さ150nmで堆積したもの(シート抵抗12Ω/square)を、通常のフォトリソグラフィー法と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第一の電極を形成した。パターン形成した第一の電極を、界面活性剤と超純水とによる超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
次いで、正孔輸送層として、導電性高分子およびポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率:1×10−3S/cm)を2.0質量%で含むイソプロパノール溶液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるように、基板を65℃に調温したブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、120℃の温風で20秒間加熱処理して、正孔輸送層を上記第一の電極上に製膜した。これ以降は、グローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
まず、窒素雰囲気下で、上記正孔輸送層まで形成した素子を120℃で3分間加熱処理した。
次いで、o−ジクロロベンゼンに、p型有機半導体材料として下記化合物Aを0.8質量%、およびn型有機半導体材料であるPC60BM(フロンティアカーボン株式会社製、nanom(登録商標)spectra E100H)を1.6質量%混合した有機光電変換材料組成物溶液を調製した(p型有機半導体材料:n型有機半導体材料=33:67(質量比))。ホットプレートで100℃に加熱しながら攪拌(60分間)して完全に溶解した後、乾燥膜厚が約170nmになるように、基板を40℃に調温したブレードコーターを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥して、光電変換層を上記正孔輸送層上に製膜した。
続いて、上記化合物Bを、0.02質量%の濃度になるように、1−ブタノール:ヘキサフルオロイソプロパノール=1:1(質量比)の混合溶媒に溶解して溶液を調製した。この溶液を、乾燥膜厚が約5nmになるように、基板を65℃に調温したブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、100℃の温風で2分間加熱処理して、電子輸送層を上記光電変換層上に製膜した。
次に、上記電子輸送層を製膜した素子を、真空蒸着装置内に設置した。そして、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度2nm/秒で銀を100nm蒸着して、第二の電極(陰極)を上記電子輸送層上に形成した。
封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)を、ドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いドライラミネートしたもの(接着剤層の厚み1.5μm)を用い、スリーボンド株式会社製シート状封止剤TB1655を使用し封止を行いサンプルNo.401の有機光電変換素子を作製した。
また、試料No.201のガスバリア性フィルムに代えて、試料No.205のカスバリア性フィルムを使用した以外は、上記サンプルNo.401の有機光電変換素子の製法と同様にしてサンプルNo.402をの有機光電変換素子を作製した。
また、試料No.207のガスバリア性フィルム上に、無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NN120−20)と、アミン触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンを1質量%、パーヒドロポリシラザンを19質量%と含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製NAX120−20)とを4:1の比率(質量比)で混合し、固形分が5質量%になるように、ジブチルエーテルで希釈した混合液100mlに窒素下でトリイソプロキシアルミニウム500mgを添加し、80℃で3hr撹拌し、室温に冷却し塗布液を作製した。この塗布液を塗布膜厚5μmになるように塗布を行い、80℃で1分間乾燥後、窒素化で、172nmのエキシマーランプを使用し、3J/cmの照射を行いオーバーコート層(保護層)を設置した試料No.225のガスバリア性フィルムを作製した。試料No.225のガスバリア性フィルムの断面をTEMで観察したところ、オーバーコート層(保護層)の膜厚は150nmであった。試料No.225のガスバリア性フィルムを使用し、サンプルNo401の有機光電変換素子と同様にしてサンプルNo.403の有機光電変換素子を作製した。
〈光電変換効率の測定〉
作製したサンプルNo.401〜403の有機光電変換素子を、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)を用いて100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、光電変換効率を求めた。
この後、前記90℃〜−40℃のサイクルサーモ処理(実施例1の評価3の温度変動依存性の評価試験と同様の処理)を行った後の、上記方法で光電変換効率を求めた。サイクルサーモ処理前後での光電変換効率の劣化率を求めた。
サンプルNo.401の有機光電変換素子では、サイクルサーモ処理後の発電効率が、処理前の40%まで低下していたのに対して、サンプルNo.402の有機光電変換素子では、サイクルサーモ処理後の発電効率が、処理前の95%で、本発明のガスバリア性フィルム(試料No.205)を使うことで、温度変動に対する耐性(耐久性)が向上していることがわかった。サンプルNo.403の有機光電変換素子では、サイクルサーモ処理後の発電効率が、処理前の98%で、本発明のガスバリア性フィルム(試料No.225)を使うことで、温度変動に対する耐性(耐久性)が向上していることがわかった。
1、1’ ガスバリア性フィルム、
2 基材、
3,3a、3b バリア層、
11 プラズマCVD装置、
12 チャンバ、
13 上部電極、
14 下部電極、
15 電源装置、
16a、16b 原料ガス貯蔵部、
16c 随伴ガス貯蔵部、
17 配管、
18 ガス導入口、
19 プラズマ放電領域、
20a、20b、20c、22 バルブ、
21 真空ポンプ、
31、31’ 製造装置、
32 送り出しローラー、
33、34、35、36 搬送ローラー、
33a、34a、35a、36a、37a 第1の搬送ローラー、
33b、34b、35b、36b、37b、38b 第2の搬送ローラー、
33c、34c、35c、36c、38c 第3の搬送ローラー、
39、40 成膜ローラー、
39a、40a 第1の成膜ローラー、
39b、40b 第2の成膜ローラー、
39c、40c 第3の成膜ローラー、
41 ガス供給口、
41a 第1のガス供給口、
41b 第2のガス供給口、
41c 第3のガス供給口、
42 プラズマ発生用電源、
42a 第1のプラズマ発生用電源、
42b 第2のプラズマ発生用電源、
42c 第3のプラズマ発生用電源、
43、44 磁場発生装置、
43a、44a 第1の磁場発生装置、
43b、44b 第2の磁場発生装置、
43c、44c 第3の磁場発生装置、
45 巻取りローラー。

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材の片面または両面に形成されてなるバリア層とを含むガスバリア性フィルムであって、
    前記バリア層が、珪素、酸素、炭素を含有しており、かつ、
    前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計量に対する炭素原子の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線が、少なくとも3つ以上の極値を持ち、隣あった極値間の距離の変動値が、0.35以上、1.0以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記隣あった極値間の距離の変動値が、0.40以上、0.70以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記バリア層が、プラズマCVD法により形成されてなる層であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記バリア層が、対向ロール電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法により形成されてなる層であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
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