JP2014100730A - サーメット被覆部材の補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性および耐摩耗性が必要とされる箇所における、耐食性および耐摩耗性が向上されたサーメット被覆部材の補修方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる被覆層が形成されてなるサーメット被覆部材の補修方法であって、前記基材上の前記被覆層が形成されている部分のうち少なくとも一部について、その表面上に肉盛溶接によって、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる補修層を形成することを特徴とするサーメット被覆部材の補修方法を提供する。
【選択図】図4

Description

本発明は、金型部品や金型部品用材料などとして用いられるサーメット被覆部材の補修方法に関する。
各種原料樹脂にグラスファイバーなどのフィラーや難燃材などの添加物を混合してなる樹脂混合物を原料として、金型を用いた射出成形や押出成形により所望形状の成形品を製造する技術が知られている。このような技術においては、原料樹脂や添加物の種類によっては、成形時の加熱により、フッ素ガスや塩素ガス、硫化ガス、リン酸ガスなどの腐食性のガスが発生する場合があり、そのため、成形に用いられる金型や、コアピンなどの金型部品が腐食摩耗してしまうという課題がある。
特に、このような金型や金型部品用の部材としては、部品寿命の長期化の要求に対応するために、高硬度の焼入鋼が一般的に用いられているが、焼入鋼は耐食性が低く、そのため、腐食性のガスによる腐食の進行を抑制できないものであった。
これに対して、たとえば、特許文献1に記載されているように、鋼材表面にPVDやCVDなどによりセラミックスコーティング等の表面処理を施すことにより、耐食性の改善が試みられている。
特開平5−195199号公報
しかしながら、上述した特許文献1の方法では、形成される皮膜は、厚みが薄く、また、緻密性が低いものであるため、耐食性の改善効果が低いという課題があった。これに対し、金型部品自体をセラミックス焼結体で構成する方法や、拡散接合やロウ付けにより鋼材表面にセラミックス焼結体を接合する方法なども考えられるが、たとえば、金型部品自体をセラミックス焼結体で構成する方法では、加工時間が長く、加工中や金型部品として実際に使用した際に、割れが発生したり、折損してしまうという不具合が生じてしまう。また、拡散接合やロウ付けにより鋼材表面にセラミックス焼結体を接合する方法では、接合時の加熱による熱膨張差により、セラミックス焼結体に割れが発生してしまうという不具合が生じてしまう。
上記問題に対して、本発明者等が検討したところ、基材上に、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる被覆層を形成してなるサーメット被覆部材が、耐食性および耐摩耗性に優れること、および、このようなサーメット被覆部材について、摩耗した部分に対して、肉盛溶接により、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる補修層を形成することで、耐食性および耐摩耗性を長期間に渡って良好に保持させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、基材上に、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる被覆層が形成されてなるサーメット被覆部材の補修方法であって、前記基材上の前記被覆層が形成されている部分のうち少なくとも一部について、その表面上に肉盛溶接によって、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる補修層を形成することを特徴とするサーメット被覆部材の補修方法が提供される。
本発明においては、前記被覆層および前記補修層が、MoFeB型の複硼化物を含む硬質相と、Fe基合金からなる結合相とからなり、前記硬質相の含有割合が35〜95重量%であるサーメットからなるように構成することができる。
あるいは、本発明においては、前記被覆層および前記補修層が、MoNiB型の複硼化物を含む硬質相と、Ni基合金からなる結合相とからなり、前記硬質相の含有割合が35〜95重量%であるサーメットからなるように構成することができる。
また、本発明においては、前記補修層を、溶接速度15〜20cm/分、照射エネルギー密度8000〜9700W/cmの条件にて肉盛溶接することにより形成するように構成することができる。
本発明によれば、耐食性および耐摩耗性が必要とされる箇所における、耐食性および耐摩耗性が向上されたサーメット被覆部材の補修方法を提供することができる。特に、本発明によれば、耐食性および耐摩耗性が向上されたサーメット被覆部材について、サーメットからなる被覆層を良好に補修することができるため、耐食性および耐摩耗性を長期間に渡って良好に保持させることができる。そのため、本発明によれば、このようなサーメット被覆部材を金型部品用途に用いた場合に、本発明の補修方法を用いて補修を行うことによって、金型部品の交換頻度を低くすることができ、これにより生産性の向上および廃棄部品の低減を図ることが可能となる。
図1は、本実施形態に係る金型部品を示す断面図である。 図2は、本実施形態に係る金型部品を示す斜視図である。 図3は、本実施形態に係る金型部品の被覆層が摩耗した状態を示す断面図である。 図4は、本実施形態に係る金型部品の補修後の状態を示す断面図である。 図5は、本発明の補修方法に用いられるプラズマ肉盛溶接装置(PTA)の一例を示す図である。 図6は、実施例における補修後の金型部品の断面写真である。
まず、本発明の補修方法について説明する前に、本発明の補修方法の補修の対象となるサーメット被覆部材について説明する。
図1は、本実施形態に係るサーメット被覆部材の一例としての金型部品を示す断面図であり、図2は、その斜視図である。以下においては、本実施形態に係るサーメット被覆部材として、図1、図2に示す金型部品を例示して説明するが、サーメット被覆部としては、基材上に、後述する特定のサーメットからなる被覆層が形成されてなるものであればよく、金型部品に特に限定されるものではない。
図1、図2に示すように、本実施形態に係る金型部品10は、凸部と、凹部とが交互に形成された凹凸パターンを備える金属母材11と、金属母材11の凸部上に形成されたサーメット被覆層12とを備えてなるものである。サーメット被覆層12(図2中においては、灰色で示した。)は、後述する特定のサーメットからなり、金属母材11に耐食性・耐摩耗性を付与するための層であり、そのため、通常、耐食性・耐摩耗性が要求される部分や、耐食性・耐摩耗性が要求される部品に形成されることとなる。そして、本実施形態に係る金型部品10は、このような耐食性・耐摩耗性に優れたサーメット被覆層12が形成された凸部により、被成形物(たとえば、樹脂)を押圧し成形するための金型用途に用いられる。
金属母材11上に形成するサーメット被覆層12としては、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなるものである。
MoFeB型の複硼化物を含むサーメットとしては、MoFeB型の複硼化物を含む硬質相を35〜95重量%の割合で含有し、残部が、Fe基合金からなる結合相で構成されるものが好ましい。硬質相の含有割合を上記範囲とすることにより、サーメット被覆層12を形成することによる、耐食性および耐摩耗性の向上効果を適切に発揮させることができる。また、MoFeB型の複硼化物を含むサーメットには、W,Cr,Ni,MnおよびSiから選択される1種または2種以上が含有されていてもよい。
あるいは、MoNiB型の複硼化物を含むサーメットとしては、MoNiB型の複硼化物を含む硬質相を35〜95重量%の割合で含有し、残部が、Ni基合金からなる結合相で構成されるものが好ましい。硬質相の含有割合を上記範囲とすることにより、サーメット被覆層12を形成することによる、耐食性および耐摩耗性の向上効果を適切に発揮させることができる。また、MoNiB型の複硼化物を含むサーメット層には、W,Cr,V,MnおよびSiから選択される1種または2種以上が含有されていてもよい。
サーメット被覆層12の具体的な組成としては、MoFeB型の複硼化物を含むものである場合には、B:4.2〜6.5重量%、Mo:35〜55重量%、Cr:0.5〜25.0重量%、Ni:0〜15重量%、Fe:残部であることが好ましい。また、これらに加えて、W、Coなど他の元素を含有していてもよい。
Fe(鉄)は、B,Moとともに、硬質相粒子となる複硼化物を形成するための元素であるとともに、結合相の主成分を構成する。Fe含有量が10重量%未満の場合は、十分な液相が出現せず緻密な焼結体が得られず、強度の低下を招く。なお、B,Mo,Cr,Ni等のFe以外の元素の合計量が90重量%を越えてしまい、Feを10重量%含有できない場合には、いうまでもなく、各元素の許容される重量%の範囲内において、その量を減じて、残部に10重量%以上のFeを確保する。一方、多すぎると、耐摩耗性および耐食性が低下するおそれがある。
Ni(ニッケル)およびCr(クロム)は、いずれもサーメット被覆層12の耐食性および耐酸化性を向上させる効果を示す。また、NiとCrを組み合わせて使用(複合含有)することで、結合相をマルテンサイト、フェライト、オーステナイトおよびこれらの混相組織に任意に制御することにより、機械的特性および耐摩耗性を低減することなく、用途に応じた耐食性、耐熱性および非磁性化の付与が可能である。
あるいは、サーメット被覆層12が、MoNiB型の複硼化物を含むものである場合には、その組成は、B:4.2〜6.5重量%、Mo:35〜55重量%、Cr:7.5〜15重量%、V:0.1〜10重量%、Ni:残部であることが好ましい。また、これらに加えて、W、Coなど他の元素を含有していてもよい。
Niは、BおよびMo同様に、複硼化物を形成するために必要な元素である。また、結合相を構成する主な元素であり、優れた耐食性に寄与する。Ni含有量が10重量%未満の場合は、十分な液相が出現せず緻密な焼結体が得られず、強度の低下を招く。なお、B,Mo,Cr,V等のNi以外の元素の合計量が90重量%を越えてしまい、Niを10重量%含有できない場合には、いうまでもなく、各元素の許容される重量%の範囲内において、その量を減じて、残部に10重量%以上のNiを確保する。
Crは、複硼化物中のNiと置換固溶し、複硼化物の結晶構造を正方晶に安定化させる効果を有する。また添加したCrは、結合相中にも固溶し、サーメットの耐食性、耐摩耗性、高温特性、および機械的特性を大幅に向上させる。Cr含有量が多くなりすぎると、Cr5 3 などの硼化物を形成し、強度が低下する。
また、V(バナジウム)は、硬質相粒子となる複硼化物中のNiと置換固溶し、複硼化物の結晶構造を正方晶に安定化させる効果を有する。また、Vの一部は、結合相中にも固溶し、これにより耐食性、耐摩耗性、高温特性、および機械的特性を向上させる効果を有する。Vの含有量が少なすぎると、Vの添加効果が得難くなり、一方、多すぎると、VBなどの硼化物を形成してしまい、機械的強度が低下してしまう。
なお、上述したサーメット被覆層12の厚みtは、耐食性・耐摩耗性の観点より、1〜5mmであり、好ましくは3〜4mmである。サーメット被覆層12の厚みtが薄すぎると、サーメット被覆層12を形成することによる耐食性および耐摩耗性の改善効果が小さくなり、一方、5mmを超えて厚くする場合には、サーメット被覆層12を形成する際において入熱量が大きくなってしまい、金属母材11が変形してしまうという問題や、サーメット被覆層12中において硬質相が粒成長してしまい、これにより硬度低下が引き起こされ、耐摩耗性に劣るものとなってしまうという問題がある。
金属母材11としては、特に限定されないが、普通鋼、合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼などの各種鋼材を用いることができるが、金型部品用途として用いた場合に、使用中に、部材の曲がりや屈曲が発生してしまうことを防止するために、ロックウェル硬度がHRC45以上、好ましくはHRC52以上のものを用いることが好ましい。
本実施形態に係る金型部品10の製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、凹凸パターンが形成されていない金属母材11上に、上述したサーメットからなるサーメット被覆層12を形成し、次いで、ミーリング加工や、ワイヤーカット放電加工などにより切削加工を行うことで、図1、図2に示すようパターン形状を形成することにより製造することができる。凹凸パターンが形成されていない金属母材11上に、サーメットからなる被覆層を形成する方法としては、特に限定されないが、得られる金型部品10における、金属母材11とサーメット被覆層12との密着性を良好なものとすることができるという点より、溶射法または肉盛溶接法により形成する方法が好ましい。
また、本実施形態に係る金型部品10のサイズは、特に限定されないが、耐食性・耐摩耗性が要求される金型部品、たとえば、精密加工用のコアピン等の金型部品用途に用いることができるという観点より、金属母材11として、サーメット被覆層12を形成するための面における短手方向Sの長さd(図2参照)が、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmであり、凸部の幅w(図2参照)が、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmのものを用いることができる。一方、長手方向Lの長さd(図2参照)は、特に限定されず、金型部品10およびこれを用いて製造する成形品の形状に応じて適宜設定すればよい。また、金型部品10の凹部の深さ(サーメット被覆層12が形成された凸部の高さ)は、特に限定されず、被成形物の形状に応じて適宜設定すればよいが、通常、1〜20mm、好ましくは5〜10mmである。
次いで、本実施形態に係る補修方法について、説明する。図3は、本実施形態に係る金型部品10のサーメット被覆層12が摩耗した状態を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態に係る金型部品10は、射出成形や押出成形により所望形状の成形品を製造するために用いられるが、成形の対象となる被成形物の種類によっては、連続使用により、図3に示すようにサーメット被覆層12が摩耗してしまい、その厚みが、当初の厚みtよりも薄いものとなってしまう場合がある。これに対し、本実施形態においては、サーメット被覆層12が摩耗した金型部品10に対して、図4に示すように、肉盛溶接により、凸部に形成されたサーメット被覆層12上に、特定のサーメットからなるサーメット補修層13を形成するものである。
本実施形態においては、サーメット補修層13としては、得られる補修後の補修金型部品10aを、耐食性・耐摩耗性が要求される用途に引き続き用いることが可能なものとするという観点より、サーメット被覆層12と同様に、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットで構成することとする。また、サーメット補修層13を構成する、MoFeB型の複硼化物を含むサーメット、およびMoNiB型の複硼化物を含むサーメットの具体的な組成等は、上述したサーメット被覆層12と同様とすることができる。
なお、サーメット補修層13としては、サーメット被覆層12と同様の組成で構成してもよいし、あるいは、異なる組成で構成してよいが、サーメット被覆層12とサーメット補修層13との界面における密着強度をより高くできるという点より、少なくとも、同様の組成の複硼化物で構成することが好ましく、特に、実質的に同様と判断できるような組成比とすることがより好ましい。すなわち、たとえば、サーメット被覆層12を、MoFeB型の複硼化物を含むサーメットとした場合には、サーメット補修層13も、MoFeB型の複硼化物を含むサーメットとすることが好ましく、とりわけ、MoFeB型の複硼化物を含み、かつ、実質的にサーメット被覆層12と同様と判断できるような組成比を有するものとすることがより好ましい。また、同様に、サーメット被覆層12を、MoNiB型の複硼化物を含むサーメットとした場合には、サーメット補修層13も、MoNiB型の複硼化物を含むサーメットとすることが好ましく、とりわけ、MoNiB型の複硼化物を含み、かつ、実質的にサーメット被覆層12と同様と判断できるような組成比を有するものとすることがより好ましい。
以下、具体的な補修方法について、詳細に説明する。ここで、図5は、摩耗したサーメット被覆層12(図3参照)上に、サーメット補修層13(図4参照)を形成する際に用いるプラズマ肉盛溶接装置(PTA)の一例を示す概略断面図である。
図5に示すプラズマ肉盛溶接装置は、トーチ20と、パイロットアーク電源30と、プラズマアーク電源40とを備えている。トーチ20は、タングステン電極21と、第1ノズル22と、第2ノズル23とを備えており、トーチ20は、図示しない駆動手段により移動可能となっている。なお、トーチ20に備えられている第1ノズル22は、プラズマアーク収束用および粉体送給用のノズルであり、また、第2ノズル23はシールドガス用のノズルである。
タングステン電極21と第1ノズル22との間には、プラズマ用ガス通路24が形成されており、このプラズマ用ガス通路24から、プラズマ用ガスとしてのアルゴンガスが供給されるようになっている。また、第1ノズル22内には、粉体供給用ガス通路25が形成されており、この粉体供給用ガス通路25から、キャリアガスと共に、サーメット補修層13を形成するためのサーメット粉体を供給できようになっている。なお、サーメット粉体としては、サーメット補修層13を形成するためのサーメット焼結体を粒径53〜150μmの粉末状としたものなどを用いることができる。
パイロットアーク電源30は、タングステン電極21と金属母材11との間に電圧を発生させるための電力を供給するための電源である。また、プラズマアーク電源40は、タングステン電極21と金属母材11との間に発生させた電圧を安定させるために制御するための電源である。
そして、金型部品10の補修は、このようなプラズマ肉盛溶接装置を用いて、以下に説明する方法によって行われる。
すなわち、プラズマ用ガス通路24から、アルゴンガスを供給しつつ、粉体供給用ガス通路25から、キャリアガスと共に、サーメット補修層13を形成するためのサーメット粉体を供給し、タングステン電極21と金属母材11との間でプラズマアーク50を発生させ、トーチ20を摩耗したサーメット被覆層12上を移動させることにより、肉盛溶接によって、摩耗したサーメット被覆層12上に、サーメットからなるサーメット補修層13をスポット的に形成することができる。なお、図5中においては、粉体供給用ガス通路25から供給されるサーメット粉体を破線で示した。また、この際において、摩耗したサーメット被覆層12における溶接部分は、第1ノズル22と第2ノズル23の間に形成されたシールドガス用通路26から供給されるシールドガスにより、シールドされた状態とされ、シールドされた状態にて肉盛溶接が行なわれることとなる。
なお、本実施形態の補修方法においては、具体的な肉盛溶接条件を以下のように設定することが好ましい。肉盛溶接の溶接速度、すなわち、肉盛溶接を行なう際の摩耗したサーメット被覆層12上におけるトーチ20の移動速度は、好ましくは15〜20cm/分、より好ましくは18〜20cm/分とする。溶接速度を15cm/分未満とすると、サーメット被覆層12と金属母材11に熱変形が起こり、補修後の寸法精度が低下するおそれがある。一方、溶接速度を20cm/分超とするとサーメット被覆層12の厚みが薄くなってしまうおそれがある。
また、肉盛溶接を行なう際におけるプラズマアーク50の照射エネルギー密度は、好ましくは8000〜9700W/cm、より好ましくは8500〜9000W/cmの範囲とする。照射エネルギー密度が8000W/cm未満であると、サーメット粉体が十分に溶融しないためにサーメットのサーメット被覆層12への溶着量が減少し、得られるサーメット補修層13の厚みが薄くなりすぎてしまい、所望の厚みとすることができなくなるおそれがある。一方、照射エネルギー密度が9700W/cmを超えると、サーメット被覆層12と金属母材11に熱変形が起こり、補修後の寸法精度が低下するおそれがある。なお、肉盛溶接を行なう際におけるプラズマアーク50の照射エネルギー密度は、パイロットアーク電源30により供給する電流および電圧を調整することにより、制御することができる。
また、肉盛溶接を行なう際におけるプラズマアーク50の、摩耗したサーメット被覆層12上におけるアーク径(ビード径)を、肉盛溶接を行なう金属母材11および摩耗したサーメット被覆層12の短手方向の長さd以下および凸部の幅w以下(図2参照)とすることが好ましい。特に、金型部品10として、上述したように、短手方向Sの長さdが、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmであり、凸部の幅wが、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmと微細なものを用いる場合には、サーメット補修層13を形成する際のアーク径(ビード径)も、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmと微細なものとすることが好ましい。
なお、プラズマアーク50の金属母材11上におけるアーク径(ビード径)を、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmと微細なものとする方法としては、タングステン電極21の先端の角度を好ましくは60〜90°の範囲、より好ましくは60〜75°の範囲に設定する方法が挙げられる。タングステン電極21の先端の角度を上記範囲とすることにより、アーク径(ビード径)を上記したように微細なものとすることができ、これにより、肉盛溶接により形成されるサーメット補修層13の幅を、サーメット被覆層12の幅と同様に、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmと微細なものとすることができる。タングステン電極21の先端の角度が小さ過ぎると、アーク径が拡散してしまい、補修が必要な部分以外にもサーメット層が形成されてしまい、補修後の補修金型部品10の形状精度が低下するおそれがある。一方、タングステン電極21の先端の角度が大き過ぎると、アーク径が収束してしまい、サーメット被覆層12に与えられる熱量が大きくなってしまい、熱変形により、補修後の寸法精度が低下するおそれがある。なお、タングステン電極21の先端の角度は、タングステン電極21の先端部分(プラズマアークが発生する部分)を、投影した場合における先端部分の角度と定義することができる。なお、タングステン電極21の直径(先端部分以外の部分の直径)は、特に限定されないが、好ましくは2〜5mm、より好ましくは3〜4mmである。
また、肉盛溶接を行なう際における、プラズマガスの流量は、好ましくは1.0〜2.0L/分であり、キャリアガス流量は、好ましくは1.5〜4.0L/分であり、シールドガスの流量は、好ましくは12〜18L/分である。
さらに、肉盛溶接を行なう際には、金属母材11およびサーメット被覆層12の過熱を防止するために、金属母材11を水冷式の銅板で固定し、冷却しながら、肉盛溶接を行なうことが好ましい。
以上のようにして、肉盛溶接により、摩耗したサーメット被覆層12(図3参照)の上に、サーメット補修層13(図4参照)を形成することにより、金型部品10の補修が行われる。
本実施形態によれば、肉盛溶接により、摩耗したサーメット被覆層12の上に、サーメット補修層13を形成することにより、図3に示すように、サーメットからなるサーメット被覆層12が摩耗した場合でも、図4に示すように、肉盛溶接により、サーメットからなるサーメット補修層13を形成することで、耐食性および耐摩耗性を有する凸部を、所望の厚みtにて再生することができる。そして、これにより、金型部品10に対して、耐食性および耐摩耗性を長期間に渡って良好に保持させることができ、結果として、金型部品10の交換頻度を低くすることができ、生産性の向上および廃棄部品の低減を図ることが可能となる。
また、本実施形態によれば、摩耗したサーメット被覆層12の上に、サーメット補修層13を形成する際に、肉盛溶接を用いるため、肉盛溶接を行う際の照射エネルギーにより、摩耗したサーメット被覆層12の表面を良好に溶解させながら、サーメット補修層13を形成することができ、これにより、補修後の補修金型部品10aを、摩耗したサーメット被覆層12と、サーメット補修層13との間の密着性に優れたものとすることができる。そして、補修後の補修金型部品10aは、摩耗したサーメット被覆層12と、サーメット補修層13との間の密着性に優れることから、補修金型部品10aにおいても、補修前と同様に、耐食性および耐摩耗性を良好に維持することが可能となる。
加えて、本実施形態によれば、摩耗したサーメット被覆層12の上に、サーメット補修層13を形成する際に、肉盛溶接を用いることにより、肉盛溶接条件を上記のように調整することで、精密加工用のコアピン等の金型部品用途に用いられるような微細な金型部品10に対してもスポット的に補修を行うことができる。ただし、本実施形態に係る補修方法としては、このような微細な金型部品10に限定されるものではなく、基材上に、サーメットからなる被覆層が形成されているものであれば何でもよく、そのサイズももちろん限定されない。特に、補修の対象となるサーメット被覆材料が、金型部品10のような微細なサイズを有するもの以外である場合においては、サーメット補修層13を形成する際の肉盛溶接条件は、上述した条件に特に限定されるものではなく、一般的な肉盛溶接条件を採用すればよい。
なお、上記説明においては、図5に示すプラズマ肉盛溶接装置(PTA)を用いて肉盛溶接を行なう場合を例示して説明したが、プラズマ肉盛溶接装置を用いる方法の他、TIG溶接を行う装置を用いた場合でも、同様とすることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
配合組成が、B:5重量%、Mo:44.4重量%、Cr:5重量%、Ni:2.8重量%、Fe:残部となるように、原料粉末を配合し、原料粉末をボールミルにより湿式粉砕した。次いで、湿式粉砕した粉末を撹拌造粒法によって造粒し、得られた造粒粉体を1100℃で0.5時間保持した後、分級することにより、MoFeB型の複硼化物を含む硬質相の含有割合が62.3重量%であり、残部がFe基合金である肉盛溶接用のサーメット粉体を得た。
次いで、得られたサーメット粉体を用いて、凹凸パターンが形成されていない金属母材11(長手方向Lの長さd=5cm、短手方向Sの長さd=3mm、鋼材SKD11(HRC56)を用いて、図5に示すプラズマ肉盛溶接装置を用いて、肉盛溶接により、幅3mm、厚み1.5mmのサーメット被覆層12を、長さd=5cmに渡って形成することで、サーメット被覆部材のサンプルを得た。なお、図5に示すプラズマ肉盛溶接装置を用いた際における各種条件は、以下のとおりとした。
タングステン電極21の先端の角度:60°
タングステン電極21の直径:4mm
溶接速度(トーチ20の移動速度):20cm/分
パイロットアーク電源30の電流:20A
パイロットアーク電源30の電圧:24.2V
パイロットアーク電源30の電力:484W
金属母材11上におけるプラズマアーク径:2.7mm
金属母材11上におけるプラズマアーク面積:0.057cm
プラズマアークの照射エネルギー密度:8491W/cm
シールドガス流量:18L/分
キャリアガス流量:3L/分
プラズマガス流量:1.2L/分
なお、プラズマアーク径はビード径を測定しプラズマアーク径とみなした。プラズマアーク面積はビード面積を測定しプラズマアーク面積とみなした。
次いで、上記にてサーメット被覆層12を形成した金属母材11の、サーメット被覆層12の形成面上に、同じサーメット粉体を用い、図5に示すプラズマ肉盛溶接装置により、幅3mm、厚み1.5mmのサーメット補修層13を形成することで、サーメット補修部材のサンプルを得た。なお、図5に示すプラズマ肉盛溶接装置を用いた際における各種条件は、サーメット被覆層12の形成条件と同様とした。
そして、得られたサーメット補修部材について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、サーメット被覆層12とサーメット補修層13との溶接界面付近の断面の観察を行った。走査型電子顕微鏡による観察によって得られたSEM写真を、図6(A)および図6(B)に示す。なお、図6(A)および図6(B)に示すSEM写真は、本実施例により得られたサーメット補修部材について、異なる撮影倍率で撮影したSEM写真である。図6(A)、図6(B)に示すように、本実施例により得られたサーメット補修部材は、サーメット被覆層12とサーメット補修層13との溶接界面に空隙や欠陥が確認されず、密着性に優れた界面状態を有するものであることが確認できた。
また、本実施例により得られたサーメット補修部材について、耐食性試験および耐摩耗試験を行ったところ、いずれも良好な結果であった。
なお、耐食性試験は、本実施例により得られたサーメット補修部材について、サーメット補修層13の表面のみを、10%リン酸水溶液(温度40℃、10時間)、10%塩酸水溶液(温度40℃、10時間)および50%硫酸水溶液(温度50℃、10時間)に浸した場合における、サーメット補修層13の腐食減量(単位は、mg/(mm・h)を測定することにより評価を行った。その結果、本実施例により得られたサーメット補修部材は、いずれの水溶液を用いた場合でも、サーメット補修層13の腐食減量が、0.1mg/(mm・h)以下であり、良好であった。
さらに、耐摩耗性試験は、本実施例により得られたサーメット補修部材について、大越式摩耗試験機によって、最終荷重:19.8kgf、すべり距離20m、すべり速度:0.2m/s、0.45m/s、0.9m/s、2.28m/sおよび4.21m/sの条件で、すべり摩耗試験を行い、摩耗量を測定することにより行なった。その結果、本実施例により得られたサーメット補修部材は、いずれの条件でも、摩耗体積が0.3mm以下であり、良好であった。
以上、本実施例によれば、肉盛溶接により、サーメット被覆層12上に、サーメット補修層13を良好に形成することが確認でき、この結果より、本発明の補修方法によれば、耐食性および耐摩耗性に優れた被覆層を適切に補修することが可能であるといえる。
10…金型部品
10a…補修金型部品
11…金属母材
12…サーメット被覆層
13…サーメット補修層
20…トーチ
21…タングステン電極
22…第1ノズル
23…第2ノズル
30…パイロットアーク電源
40…プラズマアーク電源
50…プラズマアーク

Claims (4)

  1. 基材上に、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる被覆層が形成されてなるサーメット被覆部材の補修方法であって、
    前記基材上の前記被覆層が形成されている部分のうち少なくとも一部について、その表面上に肉盛溶接によって、MoFeB型またはMoNiB型の複硼化物を含むサーメットからなる補修層を形成することを特徴とするサーメット被覆部材の補修方法。
  2. 前記被覆層および前記補修層が、MoFeB型の複硼化物を含む硬質相と、Fe基合金からなる結合相とからなり、前記硬質相の含有割合が35〜95重量%であるサーメットからなることを特徴とする請求項1に記載のサーメット被覆部材の補修方法。
  3. 前記被覆層および前記補修層が、MoNiB型の複硼化物を含む硬質相と、Ni基合金からなる結合相とからなり、前記硬質相の含有割合が35〜95重量%であるサーメットからなることを特徴とする請求項1に記載のサーメット被覆部材の補修方法。
  4. 前記補修層を、溶接速度15〜20cm/分、照射エネルギー密度8000〜9700W/cmの条件にて肉盛溶接することにより形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーメット被覆部材の補修方法。
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