JP2014100047A - 高分子アクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明により、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ加熱処理による自己修復性を有する高分子アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明は、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータであって、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータに関する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータであって、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータに関する。
【選択図】なし
Description
本発明は、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ加熱処理による自己修復性を有する高分子アクチュエータに関する。
高分子材料で形成された高分子アクチュエータは、セラミックや金属などの材料で形成されたアクチュエータと比較すると、軽量であり、柔軟性に富むという特徴がある。これらの特徴により、高分子アクチュエータは、センサ、光学スイッチ、ダイヤフラム、点字ディスプレイ、波力発電や踵発電などの発電用途、産業用や介護用のロボット、医療機器などの用途に用いられる、人間が直接、肌で触れても安全に動作することができるアクチュエータとして注目されている。これまでに高分子アクチュエータとして提案されてきたものには、イオン交換膜、導電性高分子、誘電性エラストマー、高分子ゲル、ハイドロゲル、カーボンナノチューブを用いたものなど様々なものがあった。
しかしながら、イオン交換膜、導電性高分子、ハイドロゲルからなるアクチュエータは水やイオンなどの移動により駆動するものであり、空気中での駆動が困難であった。そこで、そのような溶媒の必要のない誘電性エラストマーを用いた高分子アクチュエータが提案されている。しかしながら、誘電エラストマーを用いた高分子アクチュエータは、変形のための駆動電圧が数千V程度と高いため、実用化には更なる駆動電圧の低下が求められていた。
このため、空気中で駆動可能となる新たな高分子材料として、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーに高誘電性溶媒を添加した高分子アクチュエータが提案された(特許文献1〜2)。
特許文献1には、誘電性のポリウレタン・エラストマーまたは比較的強い双極子モーメントを有する置換基を持つポリウレタン・エラストマーに、誘電性の溶媒を含ませたポリウレタンゲル状物であって、直流電場を印加することによって誘電性の分子あるいは置換基が電場方向に配向し、ゲルの構造が異方的に変化することを特徴とする高速応答ポリウレタンゲル・アクチュエータが記載されている。しかしながら、高誘電性溶媒の使用によって、柔軟性は向上し、低電界駆動は達成できるものの、上記アクチュエータに傷がついた場合にアクチュエータ素子が破損してしまうという問題があった。
特許文献2には、分子中にヘテロ原子を有するエラストマーと、分子中にヘテロ原子を有し該エラストマーと相溶な高誘電率液状化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋してなる、アクチュエータ、センサ等のトランスデューサに好適な誘電膜が記載されている。しかしながら、高誘電率液状化合物の使用によって、柔軟性は向上し、低電界駆動は達成できるものの、上記アクチュエータに傷がついた場合にアクチュエータ素子が破損してしまうという問題があった。
従って、低電界であっても駆動が可能であり、かつ傷がついた場合に容易に修復することができる、誘電性エラストマーを用いた高分子アクチュエータが求められている。
本発明は、上記のような従来の高分子アクチュエータの有する問題点を解決し、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ傷がついた場合に加熱処理によって容易に修復できる自己修復性を有する高分子アクチュエータを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータにおいて、ポリウレタンエラストマー成形品のハードセグメント濃度および未反応の活性水素基含有量を特定範囲内に規定することによって、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ傷がついた場合に加熱処理によって容易に修復できる自己修復性を有する高分子アクチュエータを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータであって、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータに関する。
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータに関する。
更に、本発明を好適に実施するためには、上記ポリウレタンエラストマー成形品が、動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)0.05〜0.3MPaを有することが望ましい。
本発明の別の態様として、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータの自己修復方法であって、
該方法が、ポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた高分子アクチュエータを、70〜150℃で0.3〜3時間の加熱処理を行う工程を含み、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータの自己修復方法がある。
該方法が、ポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた高分子アクチュエータを、70〜150℃で0.3〜3時間の加熱処理を行う工程を含み、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータの自己修復方法がある。
ポリウレタンエラストマー成形品は、一般的には、高分子ポリオールからなるソフトセグメントとポリイソシアネートからなるハードセグメントから構成される。従って、本明細書中で用いられる「ハードセグメント濃度」とは、ポリウレタンエラストマー組成物の全質量をベースとした、ポリイソシアネート成分の濃度(質量%)である。また、鎖伸長剤として、数平均分子量500以下の低分子量活性水素含有成分を使用する場合、ポリイソシアネートと上記低分子量活性水素含有成分からなるポリマー鎖がハードセグメントとなることから、上記低分子量活性水素含有成分含有量は「ハードセグメント濃度」に含まれるものとする。尚、「ハードセグメント濃度」と「ソフトセグメント濃度」との合計量は100質量%となる。
本明細書中で用いられる「未反応の活性水素基含有量」とは、ポリウレタンエラストマー成形体を製造する際の組成物の仕込み量から計算した、ポリウレタンエラストマー成形品1g中に残存する活性水素基の当量(meq)である。
本発明によれば、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータにおいて、ポリウレタンエラストマー成形品のハードセグメント濃度および未反応の活性水素基含有量を特定範囲内に規定することによって、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ傷がついた場合に加熱処理によって容易に修復できる自己修復性を有する高分子アクチュエータを提供することを可能としたものである。
高分子アクチュエータの動作原理を、図1を参照して、以下に説明する。図1の左側に示すのが電圧を印加する前の高分子アクチュエータ1であり、フィルム状に成形されたポリウレタンエラストマー成形品3の両面に電極2が形成されている。図1の右側に示すように、上記電極2に電圧を印加すると、それぞれの電極2における正と負の電荷が引き合い、クーロン力によって、ポリウレタンエラストマー成形品3が圧縮され厚さが減少し、ポリウレタンエラストマー成形品3が面方向に伸張する。
この際に発生する力Pとして、厚さ方向の発生力Pzと面方向の発生力Pxy、伸張率Sとして、厚さ方向の伸張率Szと面方向の伸張率Sxyは以下の通りである。
ε0:真空の誘電率
εr:ポリウレタンエラストマー成形品の比誘電率
E:電界強度
E=V/d(V:電圧、d:厚さ)
ν:ポアソン比
ν=Sxy/Sz=Pxy/Pz
Y:ポリウレタンエラストマー成形品の弾性率
ε0:真空の誘電率
εr:ポリウレタンエラストマー成形品の比誘電率
E:電界強度
E=V/d(V:電圧、d:厚さ)
ν:ポアソン比
ν=Sxy/Sz=Pxy/Pz
Y:ポリウレタンエラストマー成形品の弾性率
従って、上記式から、高い伸張率Sを達成するためには、高い電界強度E(=V/d)、ポリウレタンエラストマー成形品の高い比誘電率および低い弾性率などが必要であることがわかる。本発明の課題である低電界駆動を達成するためには、駆動電圧Vを低減することが必要となる。
本発明の高分子アクチュエータは、前述のように、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物(混合液)を反応、硬化させて得られるポリウレタンエラストマー成形品から構成され、顔料、難燃剤、着色防止剤などの添加剤も使用することができる。
本発明の上記ポリウレタンエラストマー組成物に用いられるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4‐トルエンジイソシアネート、2,6‐トルエンジイソシアネート、2,2’‐ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5‐ナフタレンジイソシアネート、p‐フェニレンジイソシアネート、m‐フェニレンジイソシアネート、p‐キシリレンジイソシアネート、m‐キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4‐トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4‐シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’ ‐ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。また、前記イソシアネートは、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、およびイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。
上記ポリイソシアネート成分の市販品として、三井化学株式会社製の「コスモネート T−80」、「コスモネート T−100」、BASF IONIC ポリウレタン株式会社製の「ルプラネート T−80」などが挙げられる。
上記活性水素成分としては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール等の高分子ポリオールを好適に用いることができる。また、ポリオールは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記ポリエステル系ポリオールとしては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリオール、および、その共重合体または、ε−カプロラクトンを開環重合したカプロラクトンポリオール、カルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体が挙げられる。
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体および、ポリアクリロニトリル系粒子および、ポリスチレン粒子を含有するポリオール(POP)等が挙げられる。
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、ポリ(ヘキサンジオールカーボネート)、ポリ(ノナンジオールカーボネート)等が挙げられる。
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、ブタジエンホモポリマー、イソプレンホモポリマー、ブタジエン−スチレンコポリマー、ブタジエン−イソプレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン−2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー、ブタジエン−n−オクタデシルアクリレートコポリマー等のブタンジエン系ポリマーの末端をヒドロキシル基に変性したものが挙げられる。
上記ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油および変性ヒマシ油(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールで変性されたヒマシ油等)が挙げられる。
上記ポリオール成分の市販品として、旭硝子株式会社製の「エクセノール1020」、「エクセノール2020」、「エクセノール3020」、「エクセノール3030」、「プレミノール 7001」、「プレミノール 7012」、株式会社クラレ製のクラレポリオール「P−1010」、「P−2010」、「P−3010」、「F−1010」、「F−2010」、「F−3010」、株式会社ダイセル製の「プラクセル210」「プラクセル220」「プラクセル230」「プラクセル312」「プラクセルL320AL」などが挙げられる。
活性水素含有成分として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、およびトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、およびp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。
また、上記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO基)と上記活性水素含有成分の活性水素基(例えば、OH基)の当量比(NCO基/OH基)は、0.5〜0.9、好ましくは0.6〜0.8であることが望ましい。上記当量比(NCO基/OH基)が0.5未満では成形体を作製することが困難な傾向にあり、0.9を超えると、残存する極性基量が少なくなり、自己修復性が得られにくくなるとともに、成形体の弾性率が高くなり、アクチュエータの低電界駆動が達成しにくくなる。
上記ポリウレタン組成物に用いられる触媒としては、公知の触媒を限定なく使用することができるが、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン、オクチル酸錫、ジラウリン酸ジ‐n‐ブチル錫、オクチル酸鉛等の金属触媒を使用することができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記触媒の市販品として、東栄化工株式会社から商品名「ヘキソエート鉛24%」で市販されているオクチル酸鉛、東ソー株式会社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王株式会社製の「カオーライザー NO.1」、「エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、東栄化工株式会社製の「BTT−24」などが挙げられる。
本発明のポリウレタンエラストマー成形品の製造方法は、成形型を用いる方法や、厚さの小さいものではスペーサーを有する離型処理したフィルム間にポリウレタンエラストマー組成物を挟んで所望の厚さに間隙を制御したニップロールを通す方法を用いることができる。上記成形品のキュア条件としては、温度70〜150℃、好ましくは80〜130℃で1〜24時間が望ましい。上記成形品のキュア温度が70℃未満では、ポリウレタンエラストマー成形品の硬化性が不十分であり、150℃を超えると多量の副生成物が生成してしまう。また、上記成形品のキュア時間が1時間未満では、ポリウレタンエラストマー成形品の硬化性が不十分であり、24時間を超えると、ポリウレタンエラストマー成形品が劣化する場合がある。
得られるポリウレタンエラストマー成形品は、所望の形状に作製できるが、薄膜、フィルム、シートであってよく、厚さは0.01〜1.2mm、好ましくは0.05〜1.0mmであることが望ましい。上記成形品の厚さが0.01mm未満ではフィルム内の欠陥を通じて絶縁破壊が起こりやすく、1.2mmを超えると印加される電界強度が低くなり、アクチュエータが駆動しにくくなる。
本発明の上記ポリウレタンエラストマー成形品は、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを要件とするが、上記ハードセグメント濃度は好ましくは3.0〜7.0質量%であり、上記未反応の活性水素基含有量は0.07〜0.20meq/gであることが望ましい。上記ハードセグメント濃度が上記範囲内であれば、上記ハードセグメントの含有量が低いため、非常に柔軟性および伸張性に優れ、低電界駆動が可能である。上記ポリウレタンエラストマー成形品のハードセグメント濃度が2質量%未満ではフィルムを製造することができず、10質量%を超えると成形品が硬くなり柔軟性および伸張性が低下し、低電界駆動が困難となる。
上記未反応の活性水素基含有量が上記範囲内であり、かつ上記ハードセグメント濃度が上記範囲内であれば、高分子アクチュエータのポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた場合に加熱処理によって容易に修復することができる自己修復性を有するものとなる。上記ポリウレタンエラストマー成形品の未反応の活性水素基含有量が0.05meq/g未満では残存する極性基の量が少なく、十分な自己修復性が見られず、0.30meq/gを超えると粘着性が向上し、フィルムを作製しにくい傾向にある。
また、本発明の高分子アクチュエータにおいては、上記未反応の活性水素基含有量が上記範囲内であり未反応の水酸基を残存しており、かつ上記ハードセグメント濃度が上記のような低い範囲内であれば、弾性率が低くなり、また、柔軟性や伸縮率が向上し、残存した極性基に起因して、誘電率が向上して、前述の式で説明したように、更に伸張率Sが大きくなるという効果もある。
上記ポリウレタンエラストマー成形品は、動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)0.05〜0.3MPa、好ましくは0.06〜0.2MPaを有することが望ましい。上記ポリウレタンエラストマー成形品の上記貯蔵弾性率(E’)が0.05MPa未満では極めて粘着性が高くてハンドリング性に劣り、0.3MPaを超えると弾性率が高いがゆえに、低電界駆動には適さない。本発明において、ポリウレタンエラストマー成形品の貯蔵弾性率(E’)とは、動的粘弾性測定装置(メトラー・トレド社製、DMA861e)を用いて、以下の条件:
周波数:1Hz
昇温速度:2.5℃/分
測定温度範囲:−100〜50℃
測定モード:引張モード
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み1mm
にて測定した貯蔵弾性率(E’)をいう。
周波数:1Hz
昇温速度:2.5℃/分
測定温度範囲:−100〜50℃
測定モード:引張モード
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み1mm
にて測定した貯蔵弾性率(E’)をいう。
上記成形品の両面に、電極を形成することにより、高分子アクチュエータを作製することができる。上記電極の材質としては、例えば、金、白金、アルミニウム、銀、銅などの金属、カーボン、カーボンナノチューブまたは、それらを樹脂に分散した導電性樹脂や導電性エラストマーも用いることができる。電極を形成する方法としては、例えば、プラズマCVD法、イオンスパッタ被覆法、真空蒸着法、スクリーン印刷などを使用することができる。
本発明の別の態様として、上記のようなポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータの自己修復方法があり、上記方法には、ポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた高分子アクチュエータを、70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、0.3〜3時間、好ましくは0.5〜2時間の加熱処理を行う工程を含むことを特徴とする。上記のように本発明の高分子アクチュエータにおいては、ハードセグメント濃度を低い特定範囲内に規定することによって柔軟性が高く、更に特定範囲内に規定された未反応の残存水酸基を有することの相互作用によって、高分子アクチュエータのポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた場合に、上記のような加熱処理によって容易に修復できる自己修復性を有するのである。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
反応容器に、ポリエーテルポリオールとしてポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001、数平均分子量6000、官能基数3)36.4質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3020、数平均分子量3000、官能基数2)54.5質量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。そして、反応容器にトリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−80、2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)9.1質量部を添加して、反応容器内の温度を90℃に保持しながら6時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーを合成した。
反応容器に、ポリエーテルポリオールとしてポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001、数平均分子量6000、官能基数3)36.4質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3020、数平均分子量3000、官能基数2)54.5質量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。そして、反応容器にトリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−80、2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)9.1質量部を添加して、反応容器内の温度を90℃に保持しながら6時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーを合成した。
次に、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001)74.6質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1020、数平均分子量1000)18.7質量部およびオクチル酸鉛(東栄化工株式会社製、ヘキソエート鉛24%)0.8質量部の混合液を調製、減圧脱泡した。続いて、前記混合液に前記プレポリマー100重量を添加し、ハイブリッドミキサー(株式会社キーエンス製)にて混合および脱泡した。この反応液を0.4mmのスペーサーを有する離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に滴下し、その上に離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、ニップロールにて厚みを0.4mmに調整した。その後、80℃で1時間キュアを行って、ハードセグメント濃度4.7質量%、残存OH基量0.12meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムを得た。
作製したフィルムに200%の二軸延伸処理を施し、ポリプロピレン製の直径60mmの枠に固定した。固定されたフィルムに直径15mmとなるようにカーボングリースを塗布し、アクチュエータ素子を製造した。
(実施例2)
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001、数平均分子量6000)149.2質量部およびオクチル酸鉛1.0質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度3.6質量%、残存OH基量0.09meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001、数平均分子量6000)149.2質量部およびオクチル酸鉛1.0質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度3.6質量%、残存OH基量0.09meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(実施例3)
イソシアネート末端プレポリマー作製時のイソシアネートをトリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100、2,4−体=100%)とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.7質量%、残存OH基量0.12meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
イソシアネート末端プレポリマー作製時のイソシアネートをトリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100、2,4−体=100%)とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.7質量%、残存OH基量0.12meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(実施例4)
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7012、数平均分子量10000)93.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセノール1020、数平均分子量1000)23.3質量部およびオクチル酸鉛0.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.2質量%、残存OH基量0.10meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7012、数平均分子量10000)93.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセノール1020、数平均分子量1000)23.3質量部およびオクチル酸鉛0.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.2質量%、残存OH基量0.10meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(実施例5)
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030)142.1質量部およびオクチル酸鉛1.0質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度6.1質量%、残存OH基量0.23meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030)142.1質量部およびオクチル酸鉛1.0質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度6.1質量%、残存OH基量0.23meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(実施例6)
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7012、数平均分子量10000)248.3質量部およびオクチル酸鉛1.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度2.6質量%、残存OH基量0.06meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7012、数平均分子量10000)248.3質量部およびオクチル酸鉛1.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度2.6質量%、残存OH基量0.06meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(実施例7)
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセノール1020、数平均分子量1000)47.4質量部およびオクチル酸鉛0.6質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度10.0質量%、残存OH基量0.06meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子社製、エクセノール1020、数平均分子量1000)47.4質量部およびオクチル酸鉛0.6質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度10.0質量%、残存OH基量0.06meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(比較例1)
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001)52.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1020)13.1質量部、フタル酸ジオクチル(三協化学株式会社製、DOP)385.7質量部およびオクチル酸鉛0.7質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度1.6質量%、残存OH基0.00meq/gのポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001)52.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1020)13.1質量部、フタル酸ジオクチル(三協化学株式会社製、DOP)385.7質量部およびオクチル酸鉛0.7質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度1.6質量%、残存OH基0.00meq/gのポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(比較例2)
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001)52.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1020)13.1質量部、フタル酸ジオクチル(三協化学株式会社製)29.2質量部およびオクチル酸鉛0.8質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.7質量%、残存OH基0.00meq/gのポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
ポリウレタンエラストマーフィルム作製時の混合液をポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、プレミノール7001)52.2質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1020)13.1質量部、フタル酸ジオクチル(三協化学株式会社製)29.2質量部およびオクチル酸鉛0.8質量部とした以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度4.7質量%、残存OH基0.00meq/gのポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(比較例3)
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020)89.7質量部およびオクチル酸鉛0.8質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度7.8質量%、残存OH基量0.02meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020)89.7質量部およびオクチル酸鉛0.8質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度7.8質量%、残存OH基量0.02meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(比較例4)
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1030、数平均分子量1000、官能基数3)31.6質量部およびオクチル酸鉛0.6質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度11.2質量%、残存OH基量0.07meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール1030、数平均分子量1000、官能基数3)31.6質量部およびオクチル酸鉛0.6質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度11.2質量%、残存OH基量0.07meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
(比較例5)
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)189.4質量部およびオクチル酸鉛1.1質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度5.1質量%、残存OH基量0.36meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
トリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、T−100)14.8質量部、ポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)42.6質量部、およびポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール2020、数平均分子量2000、官能基数2)42.6質量部を用いてイソシアネート末端プレポリマーを作製し、このプレポリマー100質量部にポリプロピレングリコール(旭硝子株式会社製、エクセノール3030、数平均分子量3000、官能基数3)189.4質量部およびオクチル酸鉛1.1質量部の混合物を加えた以外は実施例1と同様にして、ハードセグメント濃度5.1質量%、残存OH基量0.36meq/gを有するポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータを作製した。
表1に実施例1〜4のプレポリマー配合、表2に実施例5〜7のプレポリマー配合および表3に比較例1〜5のプレポリマー配合を、表4に実施例1〜4のエラストマー配合、表5に実施例5〜7のエラストマー配合および表6に比較例1〜5のエラストマー配合を質量部単位でまとめて示した。上記のように得られたポリウレタンエラストマーフィルムアクチュエータの自己修復性、貯蔵弾性率(E’)および伸張率を評価または測定し、その結果を表4〜6に示す。伸張率に関しては図2にも結果を示す。試験方法は以下の通りである。
(試験方法)
(1)自己修復性
厚さ1mmに作製したフィルムを50mm角に切り出し、面積を2等分する直線の位置に、カッターにて深さ0.5mmの切れ目を入れ、80℃で2時間、100℃で1時間、120℃で1時間加熱し、その自己修復性を目視および動的弾性率の測定により確認した。
(a)目視
評価基準
○:切れ目がなく、自己修復している。
△:切れ目がわずかに残存するが、ほとんど自己修復している。
×:切れ目がそのまま残存し、自己修復していない。
(b)動的粘弾性測定
動的粘弾性測定装置(メトラー・トレド社製、DMA861e)を用いて、以下の条件にて貯蔵弾性率(E’)を測定した。
周波数:1Hz
昇温速度:2.5℃/分
測定温度範囲:−100〜50℃
測定モード:引張モード
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み0.4mm
表4〜6には20℃での貯蔵弾性率(E’)の値を示す。
(1)自己修復性
厚さ1mmに作製したフィルムを50mm角に切り出し、面積を2等分する直線の位置に、カッターにて深さ0.5mmの切れ目を入れ、80℃で2時間、100℃で1時間、120℃で1時間加熱し、その自己修復性を目視および動的弾性率の測定により確認した。
(a)目視
評価基準
○:切れ目がなく、自己修復している。
△:切れ目がわずかに残存するが、ほとんど自己修復している。
×:切れ目がそのまま残存し、自己修復していない。
(b)動的粘弾性測定
動的粘弾性測定装置(メトラー・トレド社製、DMA861e)を用いて、以下の条件にて貯蔵弾性率(E’)を測定した。
周波数:1Hz
昇温速度:2.5℃/分
測定温度範囲:−100〜50℃
測定モード:引張モード
サンプル形状:長さ19.5mm、幅3.0mm、厚み0.4mm
表4〜6には20℃での貯蔵弾性率(E’)の値を示す。
(2)伸張率
製造したアクチュエータ素子を、銅箔を介して直流高圧電源(松定プレシジョン株式会社製、HJPM−5R0.6−SP)に繋ぎ、印加電圧に対する伸張率の変化を測定した。表には、10MV/mの値を示す。なお、伸張率は以下の式より求めた。
伸張率(%)=[√(S2/S1−1)]×100
S1:伸張前のフィルム面積
S2:電圧印加後のフィルム面積
製造したアクチュエータ素子を、銅箔を介して直流高圧電源(松定プレシジョン株式会社製、HJPM−5R0.6−SP)に繋ぎ、印加電圧に対する伸張率の変化を測定した。表には、10MV/mの値を示す。なお、伸張率は以下の式より求めた。
伸張率(%)=[√(S2/S1−1)]×100
S1:伸張前のフィルム面積
S2:電圧印加後のフィルム面積
(注1)三井化学株式会社から商品名「コスモネート T−80」で市販の2,4−体/2,6−体の比=80/20のトリレンジイソシアネート
(注2)三井化学株式会社から商品名「コスモネート T−100」で市販の2,4-トリレンジイソシアネート
(注3)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール1020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)1000
(注4)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール2020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)2000
(注5)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール3020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)3000
(注6)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール1030」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)1000
(注7)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール3030」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)3000
(注8)旭硝子株式会社から商品名「プレミノール 7001」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)6000
(注9)旭硝子株式会社から商品名「プレミノール 7012」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)10000
(注10)東栄化工株式会社から商品名「ヘキソエート鉛24%」で市販されているオクチル酸鉛
(注11)三協化学株式会社から商品名「DOP」で市販されているフタル酸ジオクチル
(注12)NCO index:(NCO基の当量)/(活性水素基の当量)
*:切れ目が修復されていないため、試料片が作製できず測定不可。
**:軟らかくなり過ぎたため、試料片が作製できず測定不可。
(注2)三井化学株式会社から商品名「コスモネート T−100」で市販の2,4-トリレンジイソシアネート
(注3)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール1020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)1000
(注4)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール2020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)2000
(注5)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール3020」で市販されている2官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)3000
(注6)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール1030」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)1000
(注7)旭硝子株式会社から商品名「エクセノール3030」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)3000
(注8)旭硝子株式会社から商品名「プレミノール 7001」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)6000
(注9)旭硝子株式会社から商品名「プレミノール 7012」で市販されている3官能性ポリエーテルポリオール;数平均分子量(Mn)10000
(注10)東栄化工株式会社から商品名「ヘキソエート鉛24%」で市販されているオクチル酸鉛
(注11)三協化学株式会社から商品名「DOP」で市販されているフタル酸ジオクチル
(注12)NCO index:(NCO基の当量)/(活性水素基の当量)
*:切れ目が修復されていないため、試料片が作製できず測定不可。
**:軟らかくなり過ぎたため、試料片が作製できず測定不可。
表4〜6に示した結果から明らかなように、実施例1〜7の本発明の高分子アクチュエータは、比較例1〜5の従来の高分子アクチュエータに比べて、貯蔵弾性率(E’)は加熱後もあまり低下せず、伸張率が非常に高いものであった。また、実施例1〜7の本発明の高分子アクチュエータは、比較例1〜5の従来の高分子アクチュエータに比べて、試料片の面積を2等分する直線の位置に厚さの半分の切り目を入れた後に加熱処理して評価した自己修復性においても非常に優れるものであった。
これに対して、比較例1の高分子アクチュエータは、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルのような低分子成分を多量に使用しているためハードセグメント濃度が非常に低くなり、残存OH基がなく自己修復性も非常に悪いものであった。比較例2の高分子アクチュエータは、残存OH基がなく自己修復性も非常に悪いものであった。比較例3の高分子アクチュエータは、残存OH基が少なく自己修復性も非常に悪いものであった。
比較例4の高分子アクチュエータは、ハードセグメント濃度が高くなり過ぎて成形品の弾性率が高く、伸張率が非常に低いものとなった。比較例5の高分子アクチュエータは、残存OH基が非常に多く、NCO indexが非常に低くて、軟らかくなり過ぎてフィルムを製造することができず、特性の評価はできなかった。
本発明の高分子アクチュエータは、柔軟性および伸張率に優れ、低電界であっても駆動が可能であり、かつ傷がついた場合に加熱処理によって容易に修復できるため、センサ、光学スイッチ、ダイヤフラム、点字ディスプレイ、波力発電や踵発電などの発電用途、産業用や介護用のロボット、医療機器などの用途に用いることができる。
1 … 高分子アクチュエータ
2 … 電極
3 … ポリウレタンエラストマー成形品
2 … 電極
3 … ポリウレタンエラストマー成形品
Claims (3)
- ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータであって、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータ。 - 前記ポリウレタンエラストマー成形品が、動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)0.05〜0.3MPaを有する、請求項1記載の高分子アクチュエータ。
- ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタンエラストマー組成物から形成されるポリウレタンエラストマー成形品から構成される高分子アクチュエータの自己修復方法であって、
該方法が、ポリウレタンエラストマー成形品に傷がついた高分子アクチュエータを、70〜150℃で0.3〜3時間の加熱処理を行う工程を含み、
該ポリウレタンエラストマー成形品が、ハードセグメント濃度2〜10質量%および未反応の活性水素基含有量0.05〜0.30meq/gを有することを特徴とする高分子アクチュエータの自己修復方法。
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