以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
<1.手書入力システム1の概要>
図1〜図3を参照して、本実施形態に係る手書入力システム1の概要を説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左側、右側を、手書入力システム1の前側、後側、左側、右側と定義する。図2の上側、下側、左上側、右下側、右上側、左下側を、それぞれ、読取装置2、媒体保持シート5L,5R、および紙媒体100の前側、後側、左側、右側、上側、下側と定義する。図3の上側、下側、左側、右側、手前側、奥側を、それぞれ、読取装置2、媒体保持シート5L,5R、および紙媒体100の上側、下側、左側、右側、前側、後側と定義する。図1に示す読取装置2は、読取装置2が開閉される途中の状態を示す。図2および図3に示す読取装置2は、読取装置2が開かれた状態を示す。
図1に示すように、手書入力システム1は、読取装置2、電子ペン3、一対の媒体保持シート5L,5R、紙媒体100などを含む。読取装置2は、左右方向に折り畳み(つまり、二つ折り)が可能で、且つ、ユーザが携行可能なタブレット型の手書き入力装置である。電子ペン3は、紙媒体100にインクで情報(文字、記号、図形、数字等)を記入でき、且つ、記入される情報を読取装置2に入力可能な筆記具である。一対の媒体保持シート5L,5Rは、紙媒体100を読取装置2に取り付けるための板状部材である。紙媒体100は、電子ペン3によって情報が記入される冊子状の記録媒体である。
図2および図3に示すように、手書入力システム1では、紙媒体100が媒体保持シート5L,5Rを介して、読取装置2の前面に固定される。ユーザが電子ペン3を用いて、読取装置2に固定された紙媒体100に情報を記入する。読取装置2は、紙媒体100に情報を記入する電子ペン3の軌跡を検出して、後述のストロークデータを取得する。本実施形態の読取装置2は、近傍に位置するPC9と無線通信が可能である。読取装置2で取得されたストロークデータは、例えばユーザが入力した転送指示に応じて、PC9に転送される。PC9は、読取装置2から転送されたストロークデータに基づいて、紙媒体100に記入された情報を電子化した画像ファイルを生成および表示可能である。
<2.読取装置2の構造>
図1〜図5を参照して、読取装置2の構造を説明する。図1に示すように、読取装置2では、可撓性の外装カバー4の内部に、一対の樹脂カバー7L,7Rが左右に並んで収容されている。以下では、理解を容易にするために、図2および図3に示すように読取装置2が折り曲げられていない状態(つまり、後述の外装カバー4の左側部分4Lと右側部分4Rとが左右方向に平行に並ぶ状態)を基準として、各構成の位置関係を説明する。
<2−1.外装カバー4の詳細構造>
外装カバー4の詳細構造を説明する。図1に示すように、外装カバー4は、上辺以外の三辺がシールされた、折り曲げられていない状態で左右方向に長い矩形状の袋体である。外装カバー4は、上方に開口する収容口40を有する。収容口40は、外装カバー4が折り曲げられていない状態で左右方向に延びる、前後方向の開口幅が小さいスリット状の開口部である。外装カバー4は、例えば合成皮革またはナイロン素材によって作製されているため、外力に応じて変形可能な柔軟性を有する。
一対の樹脂カバー7L,7Rは、正面視で上下方向に長い矩形状であり、且つ前後方向の厚みが小さい箱状体である。樹脂カバー7Lの内部には、後述のセンサ基板10Lおよびセンサ制御基板11(図5参照)が収容される。樹脂カバー7Rの内部には、後述のセンサ基板10R、センサ制御基板12、およびメイン基板20(図5参照)が収容される。
樹脂カバー7L,7Rは、収容口40を介して外装カバー4の内部に、互いに離間して収容される。このとき、樹脂カバー7Lは、外装カバー4の左側部分4Lに配置される。樹脂カバー7Rは、外装カバー4の右側部分4Rに配置される。樹脂カバー7Lと樹脂カバー7Rとの間に形成される隙間は、外装カバー4の左右方向の中央部分4Mに位置する。したがって、外装カバー4では、中央部分4Mを中心にして、右側部分4Rおよび左側部分4Lを開閉可能である。
言い換えると、樹脂カバー7L,7Rの可動範囲は、次のように定義できる。樹脂カバー7L,7Rは、各々の対向する辺同士(つまり、樹脂カバー7Lの右辺および樹脂カバー7Rの左辺)が平行に延びるように、外装カバー4内に並んで配置される。樹脂カバー7L,7Rの間には、各々の対向する辺同士の間を延びる軸線O(具体的には、樹脂カバー7L,7Rの間を上下方向に延びる線)に沿って隙間が生じている。そのため、樹脂カバー7L,7Rは、軸線Oを中心に回転可能であり、且つ、軸線Oを挟んで互いに近接および離間する方向に移動可能である。このような樹脂カバー7L,7Rの可動範囲は、後述のセンサ基板10L,10Rの可動範囲と同義である。
左側部分4Lの前面41Lと右側部分4Rの前面41Rとは、外装カバー4が閉じられると左右方向に対向する。前面41Lの左上部分および左下部分には、それぞれ、左右方向に長い貫通穴であるガイド穴42L,43Lが設けられている。つまり、ガイド穴42L,43Lは、前面41Lにおいて閉鎖側端部(中央部分4M)から最も離間した開放側端部の上下両側に設けられている。前面41Rの右上部分および右下部分には、左右方向に長い貫通穴であるガイド穴42R,43Rが設けられている。つまり、ガイド穴42R,43Rは、前面41Rにおいて閉鎖側端部(中央部分4M)から最も離間した開放側端部の上下両側に設けられている。前面41Rにおけるガイド穴42Rの下側には、上下方向に長い矩形状の切り欠きであるセンサ窓44が設けられている。
右側部分4Rの後面には、開閉カバー46が設けられている。開閉カバー46は、図示外の面ファスナーを介して、右側部分4Rの後面に着脱可能である。開閉カバー46は右側部分4Rの後面に接着されると、少なくともバッテリー着脱口48(図10参照)を覆う。バッテリー着脱口48は、後述のバッテリー装着部82(図10参照)を外装カバー4の外部に露出させるための開口である。開閉カバー46が右側部分4Rの後面から剥がされると、バッテリー着脱口48が外部に露出する。
<2−2.樹脂カバー7L,7Rの詳細構造>
樹脂カバー7L,7Rの詳細構造を説明する。図4に示すように、樹脂カバー7Lは、前カバー70Lおよび後カバー80Lを備える。前カバー70Lおよび後カバー80Lは、上下方向に長い略矩形状の樹脂板である。後カバー80Lの前面には、センサ基板10Lなどの電子部品が配置される基板配置部81Lが設けられている。基板配置部81Lにセンサ基板10Lなどの電子部品が配置された状態で、前カバー70Lが後カバー80Lに組み付けられる。
前カバー70Lの前面には、二つの取付部71L,72Lが設けられている。取付部71L,72Lは、それぞれ、前カバー70Lの左上隅部および左下隅部に設けられる。取付部71L,72Lは、媒体保持シート5Lを連結固定するための部材であり、本実施形態ではセンサ基板10Lに対向する後述の表紙110L(図1参照)に向けて突出する鉤状体である。取付部71L,72Lは、表紙110Lの紙面略全体がセンサ基板10Lと対向するように、表紙110Lを位置決めするが、詳細は後述する。
樹脂カバー7Rは、前カバー70Rおよび後カバー80Rを備える。前カバー70Rおよび後カバー80Rは、上下方向に長い略矩形状の樹脂板である。後カバー80Rの前面には、センサ基板10Rなどの電子部品が配置される基板配置部81Rが設けられている。基板配置部81Rにセンサ基板10Rなどの電子部品が配置された状態で、前カバー70Rが後カバー80Rに組み付けられる。
前カバー70Rの前面には、二つの取付部71R,72Rが設けられている。取付部71R,72Rは、それぞれ、前カバー70Rの右上隅部および右下隅部に設けられる。取付部71R,72Rは、媒体保持シート5Rを連結固定するための部材であり、本実施形態ではセンサ基板10Rに対向する後述の表紙110R(図1参照)に向けて突出する鉤状体である。取付部71R,72Rは、表紙110Rの紙面略全体がセンサ基板10Rと対向するように、表紙110Rを位置決めするが、詳細は後述する。
さらに、前カバー70Rには、読取窓73およびスイッチ収容部74が設けられている。読取窓73は、取付部71Rの下側に設けられ、後述のセンサ部24の前方を覆う。読取窓73は、上下方向に長い矩形状であり、センサ部24から発せられた光が透過可能な透明板である。スイッチ収容部74は、前カバー70Rの右上部分に設けられ、メイン基板20の各種スイッチ部品を収容する。後カバー80Rの中央部には、バッテリー装着部82が設けられている。ユーザはバッテリー装着部82に対して、読取装置2に電源を供給するバッテリー19(図5参照)を着脱できる。
<2−3.読取装置2の電気的構造>
読取装置2の電気的構造を、各種電子部品の配置と併せて説明する。図4および図5に示すように、読取装置2は、センサ基板10L,10R、センサ制御基板11,12、およびメイン基板20を備える。センサ基板10L,10Rは、X軸方向(具体的には、左右方向)およびY軸方向(具体的には、上下方向)の各々に細長いループコイルが多数配列された基板であって、近接する電子ペン3の位置を検出可能である。センサ基板10L,10Rは、それぞれ、樹脂カバー7L,7Rのほぼ全面に亘る大きさを有する、上下方向に長い矩形状である。本実施形態のセンサ基板10L,10Rは、それぞれ、A5サイズの表紙110L,110Rの紙面略全体に対向可能な大きさを有する。
メイン基板20は、CPU21、フラッシュROM22、無線通信部23、センサ部24などを備えている。フラッシュROM22および無線通信部23は、CPU21に電気的に接続されている。CPU21は、読取装置2の制御を行う。フラッシュROM22には、CPU21が読取装置2を制御するために実行する各種プログラムが記憶されている。さらに、紙媒体100に情報を記入する電子ペン3の軌跡を示すストロークデータが、フラッシュROM22に記憶される。ストロークデータは、センサ基板10L,10Rによって経時的に検出された電子ペン3の複数の位置情報(例えば、座標情報)によって、紙媒体100に情報を記入する電子ペン3の軌跡を特定する。
無線通信部23は、外部の電子機器(例えば、図2に示すPC9)と近距離無線通信を実行するためのコントローラである。センサ部24は、取付部71R,72Rによって表紙110Rが位置決めされた状態で、表紙110Rに設けられた画像パターンから光学的に情報を読み取り可能である。本実施形態のセンサ部24は、表紙110Rのタグ部130に設けられた後述の識別マーク140(図7参照)を読み取り可能な複数の光センサである。図4に示す例では、センサ部24は上下方向に並ぶ六つの光センサで構成されている。
メイン基板20は、センサ基板10L,10Rよりも面積が小さく、且つ左右方向に長い矩形状である。メイン基板20の上端部分には、図示外の電源スイッチ、発光素子、無線通信部23などの各種スイッチ部品が設けられている。さらに、メイン基板20の右端部分には、センサ部24が設けられている。メイン基板20は、基板配置部81Rの上側部分に配置される。センサ基板10Rは、基板配置部81Rにおいてメイン基板20の前面側に配置される。後カバー80Rに前カバー70Rが組み付けられると、メイン基板20の各種スイッチ部品は先述のスイッチ収容部74に収容され、センサ部24は読取窓73の後方に配置される。
センサ基板10Lの後面側には、ASIC11Aを備えたセンサ制御基板11が設けられている。センサ基板10Lは、センサ制御基板のASIC11Aに電気的に接続されている。センサ基板10Rの後面側には、ASIC12Aを備えたセンサ制御基板12が設けられている。センサ基板10Rは、センサ制御基板のASIC12Aに電気的に接続されている。ASIC11AとASIC12Aとは、フレキシブルケーブル13によって接続されている。
CPU21はASIC11Aを制御して、電子ペン3による記入動作がセンサ基板10Lの近傍で行われた場合に、記入動作に基づいてストロークデータを取得する。CPU21はASIC12Aを制御して、電子ペン3による記入動作がセンサ基板10Rの近傍で行われた場合に、記入動作に基づいてストロークデータを取得する。これらのストロークデータが取得される原理は、別途後述する。ASIC11A,12Aのうち、マスター側のASIC12AはCPU21に直接接続され、スレーブ側のASIC11AはASIC12Aを介してCPU21に接続されている。
先述したように、読取装置2にはバッテリー装着部82が設けられている。バッテリー19がバッテリー装着部82に装着されると、バッテリー19がメイン基板20に電気的に接続される。これにより、バッテリー19からメイン基板20に電源が供給される。
<3.電子ペン3の構造>
図2を参照して、電子ペン3の構造を説明する。電子ペン3は、芯体31、コイル32、可変容量コンデンサ33、基板34、コンデンサ35、およびインク収納部36を備える。芯体31は、電子ペン3の先端部に設けられている。芯体31は図示外の弾性部材によって、電子ペン3の先端側に付勢されている。芯体31の先端部は、電子ペン3の外部に突出している。芯体31の後端側は、インクが収納されているインク収納部36に接続されている。インク収納部36は、芯体31にインクを供給する。
コイル32は、インク収納部36の周囲に巻回された状態で、芯体31と可変容量コンデンサ33との間に保持されている。可変容量コンデンサ33は、基板34によって電子ペン3の内部に固定されている。基板34には、コンデンサ35が搭載されている。コンデンサ35および可変容量コンデンサ33はコイル32に並列に接続され、周知の共振(同調)回路を構成する。ユーザが電子ペン3を用いて紙媒体100に記入すると、インクによって紙媒体100に情報が形成され、且つ、記入される情報が公知の電磁誘導式で読取装置2に入力される。
<4.媒体保持シート5L,5Rの構造>
図6を参照して、媒体保持シート5L,5Rの構造を説明する。媒体保持シート5L,5Rは、紙媒体100の用紙サイズ毎に用意されている。本実施形態の媒体保持シート5L,5Rは、A5サイズの紙媒体100専用である。
媒体保持シート5Lは、表紙110Lを読取装置2の前面41Lに固定するための樹脂板である。本実施形態では、媒体保持シート5Lの前面50Lは、A5サイズの表紙110Lの略全体を貼り付け可能な大きさを有する。媒体保持シート5Lでは、表紙110Lが前面50Lに面接触して固定可能である。
媒体保持シート5Lには、略Lの字型の板状体である位置決め部51L,52Lと、前後方向に貫通する二つの連結穴53L,54Lとが設けられている。連結穴53Lは、媒体保持シート5Lの左上隅部に設けられる。連結穴54Lは、媒体保持シート5Lの左下隅部に設けられる。連結穴53L,54Lは、正面視で略Hの字型に切り欠かれており、それぞれ先述の取付部71L,72Lが連結固定される。
位置決め部51L,52Lは、それぞれ、前面50Lにおける連結穴53L,54Lの右側に設けられる。位置決め部51Lは、表紙110Lの左上隅部を位置決めするための部材である。位置決め部52Lは、表紙110Lの左下隅部を位置決めするための部材である。本実施形態では、位置決め部51L,52LがA5サイズの表紙110Lの左上隅部および左下隅部に対応する位置に設けられている。表紙110Lは、位置決め部51L,52Lよりも右側の領域に位置決めされた状態で、前面50Lに貼り付けられる。
先述の連結穴53L,54Lは、位置決め部51L,52Lよりも左側の領域に設けられている。つまり、連結穴53L,54Lは、前面50Lと直交する方向(本実施形態では前後方向)において、位置決め部51L,52Lによって位置決めされた表紙110Lと重複しない位置に形成されている。したがって、取付部71L,72Lが連結穴53L,54Lに連結固定された場合、取付部71L,72Lは前面50Lに貼り付けられた表紙110Lと干渉しない。
媒体保持シート5Rは、表紙110Rを読取装置2の前面41Rに固定するための樹脂板である。本実施形態では媒体保持シート5Rの前面50Rは、A5サイズの表紙110Rの略全体を貼り付け可能な大きさを有する。媒体保持シート5Rでは、表紙110Rが前面50Rに面接触して固定可能である。
媒体保持シート5Rには、略Lの字型の板状体である位置決め部51R,52Rと、前後方向に貫通する二つの連結穴53R,54Rとが設けられている。連結穴53Rは、媒体保持シート5Rの右上隅部に設けられる。連結穴54Rは、媒体保持シート5Rの右下隅部に設けられる。連結穴53R,54Rは、正面視で略Hの字型に切り欠かれており、それぞれ先述の取付部71R,72Rが連結固定される。
位置決め部51R,52Rは、それぞれ、前面50Rにおける連結穴53R,54Rの左側に設けられる。位置決め部51Rは、表紙110Rの右上隅部を位置決めするための部材である。位置決め部52Rは、表紙110Rの右下隅部を位置決めするための部材である。本実施形態では、位置決め部51R,52RがA5サイズの表紙110Rの右上隅部および右下隅部に対応する位置に設けられている。表紙110Rは、位置決め部51R,52Rよりも左側の領域に位置決めされた状態で、前面50Rに貼り付けられる。
先述の連結穴53R,54Rは、位置決め部51R,52Rよりも右側の領域に設けられている。つまり、連結穴53R,54Rは、前面50Rと直交する方向(本実施形態では前後方向)において、位置決め部51R,52Rによって位置決めされた表紙110Rと重複しない位置に形成されている。したがって、取付部71R,72Rが連結穴53R,54Rに連結固定された場合、取付部71R,72Rは前面50Rに貼り付けられた表紙110Rと干渉しない。
さらに、媒体保持シート5Rには、センサ穴58およびシール部材56が設けられている。センサ穴58は、連結穴53Rの下側に設けられた、上下方向に並ぶ六つの正方形状の貫通穴を有する。センサ穴58が有する六つの貫通穴は、それぞれセンサ部24(図4参照)が有する六つの光センサに対応している。
シール部材56は、前面50Rの一部を覆う非透光性の板状体であり、正面視で少なくともセンサ穴58を塞ぐ。シール部材56は、上下方向に長い矩形状であり、且つ、左辺を除く三辺で前面50Rに固定されている。したがって、シール部材56の左辺部は、前面50Rに対して隙間を形成可能である。なお、本実施形態では部品数低減のため、位置決め部51Rとシール部材56とが、連結された一部品の板部57を構成する。
前面50Rのうちでシール部材56によって被覆される部分が、被覆部59である。シール部材56と被覆部59とで囲まれる袋状の部位が、タグ収容部55である(図2参照)。タグ収容部55は、シール部材56の左辺部から前面50Rに沿って後述のタグ部130(図1参照)を挿入可能である。被覆部59の少なくとも一部は透光性を有するため、媒体保持シート5Rの後方からタグ収容部55内に光照射が可能である。本実施形態では、被覆部59に形成されているセンサ穴58を介して、媒体保持シート5Rの後方からタグ収容部55内に光照射が可能である。
<5.紙媒体100の構造>
図7および図8を参照して、紙媒体100の構造を説明する。図7に示す紙媒体100は、タグ部130が折り返される前の状態である。図8に示す紙媒体100は、タグ部130が折り返された後の状態であり、且つ剥離部163L,163Rが開かれた後の状態である。
紙媒体100は、表紙110Lと表紙110Rとの間に複数の用紙120が綴じられた、左右方向に見開き可能な冊子状である。紙媒体100は、一対の表紙110L,110Rと複数の用紙120とを、各々の縁部の一部で綴じる綴じ部105を備える。より詳細には、綴じ部105は紙媒体100の閉鎖側端部に設けられて、表紙110L,110Rおよび複数の用紙120が各々有する略同一長さの一辺を綴じる。一例として、本実施形態の紙媒体100はA5サイズのノートであり、用紙120は例えば複数の罫線が引かれた文書用フォーマットを有する。
図7に示すように、表紙110Rの開放側近傍には、表紙110Rを前後方向に貫通する切り込み部131が形成されている。切り込み部131は、正面視で、表紙110Rの開放側から閉鎖側に向かって突出する形状を有する。切り込み部131の両端部を結ぶように、型押し部132が形成されている。本実施形態では、切り込み部131は表紙110Rの右上部分に設けられている。切り込み部131は、左右方向に延びる上下一対の横切り込み131A,131Bと、各横切り込み131A,131Bの左端部を結ぶように上下方向に延びる縦切り込み131Cとから構成される。型押し部132は、各横切り込み131A,131Bの右端部の間を上下方向に延びる、溝状に加工された凹部である。
表紙110Rのうちで切り込み部131と型押し部132とに囲まれた部分が、タグ部130である。タグ部130は、型押し部132に沿って前後方向に折り返し可能である。図8に示すように、タグ部130が型押し部132に沿って折り返されると、タグ部130の一部が背面視で表紙110Rの輪郭よりも外側に突出する。この突出する部分を、突出部133という。タグ部130が折り返された状態では、突出部133が表紙110Rの右上部分から右方向に突出する。突出部133は、上下方向に長い矩形状であり、各種情報(例えば、タイトル、索引、巻数など)を記入可能である。
突出部133には、ノート種類を示す識別マーク140が印刷されている。ノート種類は、紙媒体100に関する情報であり、本実施形態では用紙120のフォーマットを示す。識別マーク140は、上下方向にならぶ六つの識別領域141〜146を有する。六つの識別領域141〜146は、センサ穴58(図6参照)が有する六つの貫通穴にそれぞれ対応している。各識別領域141〜146は、いずれも矩形状であり、未着色(白)または黒で色分けされている。六つの識別領域141〜146の組合せパターン(つまり、識別マーク140のバーパターン)によって、用紙120のフォーマットに対応するコード情報が示される。
図7に示すように、表紙110L,110Rの前面は、紙媒体100が閉じられた場合に用紙120と対向する内面である。識別マーク140は、表紙110Rの前面のうちで、突出部133の前面に設けられている。タグ部130が折り返されていない状態で紙媒体100が閉じられると、識別マーク140は紙媒体100の内側に配置される。図8に示すようにタグ部130が折り返されると、識別マーク140は表紙110Rの輪郭よりも外側に配置され、且つ用紙120とは反対側を向く。つまり、識別マーク140が、紙媒体100の外側に露出されて、表紙110Rの後方に向けて表示される。
タグ部130が設けられた表紙110Rと、表紙110Rと隣り合う用紙120との間には、内表紙115が綴じられている。内表紙115は、用紙120よりも厚みが大きく、且つ用紙120の紙面略全体と対向可能な形状および大きさを有する。本実施形態では、表紙110L,110R、用紙120、および内表紙115は、いずれも同一サイズの矩形状である。
図8に示すように、表紙110L,110Rの後面は、紙媒体100が閉じられた場合に用紙120とは反対側を向く外面である。表紙110Lの後面には、表紙110Lを外部物品に着脱するための媒体着脱部160Lが設けられている。表紙110Rの後面には、表紙110Rを外部物品に着脱するための媒体着脱部160Rが設けられている。媒体着脱部160L,160Rは、綴じ部105を挟んで左右対称に設けられる。
媒体着脱部160Lは、接着部161L、型押し部162L、剥離部163L、切り込み部164Lを有する。接着部161Lは、両面に接着性を有するシート(例えば、両面テープ)である。接着部161Lは、表紙110Lの後面において綴じ部105の近傍に設けられ、綴じ部105に沿って上下方向に延びる矩形状である。接着部161Lの一面は、表紙110Lの後面に接着されている。接着部161Lの他面には、シート状の剥離部163Lが接着されている。剥離部163Lは、接着部161Lに対して着脱自在な剥離紙である。
剥離部163Lは、接着部161Lに対応する矩形状であり、切り込み部164Lに沿って接着部161Lから剥離可能である。切り込み部164Lは、表紙110Lの後面に対して溝状に切り込まれた部位である。切り込み部164Lは、接着部161Lの開放側辺部(本実施形態では、接着部161Lの左辺)を除く三辺に沿って形成されている。つまり切り込み部164Lは、背面視で表紙110Lの開放側から閉鎖側に向かって突出する形状を有する。切り込み部164Lの両端部を結ぶように、溝状に加工された凹部である型押し部162Lが上下方向に形成されている。剥離部163Lは、型押し部162Lに沿って折り返し可能である。
剥離部163Lが折り返されていない状態では、接着部161Lは剥離部163Lによって被覆される。剥離部163Lが折り返された状態では、接着部161Lは表紙110Lの後方に露出する。つまり、剥離部163Lを綴じ部105から離間する方向(言い換えると、綴じ部105の反対側)に折り返すことで、接着部161Lは後方から外部物品を着脱可能な状態になる。このように、剥離部163Lは折り返しによって、接着部161Lを露出させる位置と、接着部161Lを被覆する位置とに変位可能である。
同様に、媒体着脱部160Rは、接着部161R、型押し部162R、剥離部163R、切り込み部164Rを有する。切り込み部164Rは、切り込み部164Lと左右対称に設けられており、接着部161Rの開放側辺部(本実施形態では、接着部161Rの右辺)を除く三辺に沿って形成されている。つまり切り込み部164Rは、背面視で表紙110Rの開放側から閉鎖側に向かって突出する形状を有する。
剥離部163Rが折り返されていない状態では、接着部161Rは剥離部163Rによって被覆される。剥離部163Rが折り返された状態では、接着部161Rは表紙110Rの後方に露出する。つまり、剥離部163Rを綴じ部105から離間する方向(言い換えると、綴じ部105の反対側)に折り返すことで、接着部161Rは後方から外部物品を着脱可能な状態になる。このように、剥離部163Rは折り返しによって、接着部161Rを露出させる位置と、接着部161Rを被覆する位置とに変位可能である。
<6.手書入力システム1の使用態様>
図7〜図11を参照して、ユーザが手書入力システム1を使用する態様を説明する。図9では、理解を容易にするために、外装カバー4を省略している。図10では、開放された開閉カバー46を、二点鎖線で示している。
図7に示すように、まずユーザは情報を記入する紙媒体100(例えば、未使用の紙媒体100)を用意する。未使用の紙媒体100は、タグ部130が折り返されていない状態で閉じられている。この状態では、識別マーク140は紙媒体100の内側に配置されるため、識別マーク140が外部から保護される。したがって、未使用の紙媒体100では、識別マーク140の損傷または変形が抑制される。
図8に示すように、ユーザは用意した未使用の紙媒体100を開いてタグ部130を押圧し、押圧したタグ部130を型押し部132に沿って折り返す。これにより突出部133が、背面視で表紙110Rの輪郭よりも外側に突出する。さらにユーザは、切り込み部164Lに沿って接着部161Lから剥離部163Lを引き剥がし、引き剥がした剥離部163Lを型押し部162Lに沿って折り返す。同様にユーザは、切り込み部164Rに沿って接着部161Rから剥離部163Rを引き剥がし、引き剥がした剥離部163Rを型押し部162Rに沿って折り返す。これにより一対の剥離部163L,163Rは、互いに異なる方向(具体的には、綴じ部105から離間する方向)に開く。接着部161L,161Rは、紙媒体100の後方に露出する。
図9に示すように、ユーザは紙媒体100に媒体保持シート5L,5Rを取り付ける。詳細には、ユーザは媒体保持シート5Lの前面50L上で、表紙110Lの開放側上端部(本実施形態では左上隅部)を位置決め部51Lに位置決めし、且つ、表紙110Lの開放側下端部(本実施形態では左下隅部)を位置決め部52Lに位置決めする。このように表紙110Lが位置決めされた状態で、ユーザは媒体保持シート5Lを接着部161Lに貼り付ける。これにより、表紙110Lが媒体保持シート5Lに保持される。
同様に、ユーザは媒体保持シート5Rの前面50R上で、表紙110Rの開放側上端部(本実施形態では右上隅部)を位置決め部51Rに位置決めし、且つ、表紙110Rの開放側下端部(本実施形態では右下隅部)を位置決め部52Rに位置決めする。このとき、ユーザはタグ部130を前面50Rに沿って右方向に移動させ、突出部133をタグ収容部55内に挿入する。このように表紙110Rが位置決めされた状態で、ユーザは媒体保持シート5Rを接着部161Rに貼り付ける。これにより、表紙110Rが媒体保持シート5Rに保持される。
先述したように、一対の剥離部163L,163Rが互いに異なる方向に開くため、開かれた剥離部163L,163Rが相互に干渉しない。つまり、ユーザが接着部161Lに媒体保持シート5Lを貼り付ける際に、剥離部163Rが干渉しにくい。ユーザが接着部161Rに媒体保持シート5Rを貼り付ける際に、剥離部163Lが干渉しにくい。したがって、ユーザは紙媒体100に媒体保持シート5L,5Rを取り付けやすい。
次にユーザは、媒体保持シート5L,5Rを読取装置2に取り付ける。詳細には、ユーザは媒体保持シート5L,5Rを、それぞれ、読取装置2の前面41L,41Rに対向して配置する。ユーザは、前面41Lから前方に突出する取付部71L,72Lを、それぞれ連結穴53L,54Lに挿入する。これにより、取付部71L,72Lがそれぞれ連結穴53L,54Lに係止されて、媒体保持シート5Lが樹脂カバー7Lに連結される。同様に、ユーザは前面41Rから前方に突出する取付部71R,72Rを、それぞれ連結穴53R,54Rに挿入する。これにより、取付部71R,72Rがそれぞれ連結穴53R,54Rに係止されて、媒体保持シート5Rが樹脂カバー7Rに連結される。
以上の手順によって、紙媒体100が媒体保持シート5L,5Rを介して読取装置2に取り付けられる。図10に示すように、読取装置2が開かれた状態では、表紙110Lの紙面略全体がセンサ基板10Lと平行に対向するように、表紙110Lが前面41Lで位置決めされている。表紙110Lと重なっている用紙120も、紙面略全体がセンサ基板10Lと平行に対向している。この状態では、表紙110Lと重なっている用紙120に情報を記入する電子ペン3を、センサ基板10Lが正確に検出できる。
同様に、表紙110Rの紙面略全体がセンサ基板10Rと平行に対向するように、表紙110Rが前面41Rで位置決めされている。表紙110Rと重なっている用紙120も、紙面略全体がセンサ基板10Rと平行に対向している。この状態では、表紙110Rと重なっている用紙120に情報を記入する電子ペン3を、センサ基板10Rが正確に検出できる。
例えば、読取装置2に傾斜または振動が生じると、紙媒体100を前後左右方向に移動させる外力が付与されることがある。しかしながら、外装カバー4のガイド穴42L,43Lによって、取付部71L,72Lの前後左右方向の移動範囲が規制されている。同様に、外装カバー4のガイド穴42R,43Rによって、取付部71R,72Rの前後左右方向の移動範囲が規制されている。そのため、紙媒体100を前後左右方向に移動させる外力が付与されても、取付部71L,72Lが媒体保持シート5Lを介して表紙110Lの移動範囲を規制し、且つ、取付部71R,72Rが媒体保持シート5Rを介して表紙110Rの移動範囲を規制する。
つまり、読取装置2に取り付けられた紙媒体100は、外力によって大幅に移動することが抑制されている。紙媒体100とセンサ基板10L,10Rとの位置関係は変化しにくいため、紙媒体100がセンサ基板10L,10Rと対向した状態が維持される。つまり、用紙120に情報を記入する電子ペン3を、センサ基板10L,10Rで正確に検出される状態が維持される。
さらに、紙媒体100の挙動に連動して、取付部71L,72Lがガイド穴42L,43Lで規制される範囲内で移動することがある。この場合、取付部71L,72Lを介して、紙媒体100と同じ移動方向および移動量で、樹脂カバー7L(つまり、センサ基板10L)が前後左右方向に移動する。同様に、紙媒体100の挙動に連動して、取付部71R,72Rを介して、紙媒体100と同じ移動方向および移動量で、樹脂カバー7R(つまり、センサ基板10R)が前後左右方向に移動する。したがって、紙媒体100とセンサ基板10L,10Rとの位置関係は変化しにくいため、センサ基板10L,10Rで正確に検出される状態が維持される。
図10に示す読取装置2が開かれた状態では、面一に連続する前面41L,41Rに対向して紙媒体100も開かれた状態となる。このとき、取付部71L,72Lは、それぞれガイド穴42L,43L内で閉鎖側端部(本実施形態では、ガイド穴42L,43Lの右端位置)まで移動している。取付部71R,72Rは、それぞれガイド穴42R,43R内で閉鎖側端部(本実施形態では、ガイド穴42R,43Rの左端位置)まで移動している。つまり、外装カバー4の内部では、樹脂カバー7Lと樹脂カバー7Rとの離間距離が最も小さくなる。
一方、読取装置2が閉じられるのに伴って、紙媒体100も閉じられる。このとき、外装カバー4の内部では、樹脂カバー7Lが表紙110Lの挙動に追従して、軸線O(図1参照)を中心に前方に回転する。同時に、樹脂カバー7Rが表紙110Rの挙動に追従して、軸線Oを中心に前方に回転する。このとき、センサ基板10Lと媒体保持シート5Lの平行状態を維持しつつ、取付部71L,72Lはそれぞれガイド穴42L,43L内で開放側(本実施形態では左側)に移動する。同時に、センサ基板10Rと媒体保持シート5Rの平行状態を維持しつつ、取付部71R,72Rはそれぞれガイド穴42R,43R内で開放側(本実施形態では右側)に移動する。つまり、樹脂カバー7L,7Rの回転に伴って、樹脂カバー7Lと樹脂カバー7Rとの離間距離が徐々に大きくなる。
図11に示すように読取装置2が閉じられた状態では、対向する前面41L,41Rの間で、媒体保持シート5L,5Rが取り付けられた紙媒体100も閉じられる。このとき、取付部71L,72Lは、それぞれガイド穴42L,43L内で開放側端部(本実施形態では、ガイド穴42L,43Lの左端位置)まで移動している。取付部71R,72Rは、それぞれガイド穴42R,43R内で開放側端部(本実施形態では、ガイド穴42R,43Rの右端位置)まで移動している。つまり、外装カバー4の内部では、樹脂カバー7Lと樹脂カバー7Rとの離間距離が最も大きくなる。
このように、紙媒体100の開閉に連動して、センサ基板10L,10Rは紙媒体100と平行に対向した状態を維持したまま、軸線Oを中心に前方に回転する。このとき、取付部71L,72Lがそれぞれガイド穴42L,43Lを移動し、且つ取付部71R,72Rがそれぞれガイド穴42R,43Rを移動することで、樹脂カバー7L,7Rの離間距離の変化が吸収される。したがって、紙媒体100とセンサ基板10L,10Rとの位置関係は変化しにくいため、センサ基板10L,10Rで正確に検出される状態が維持される。
タグ収容部55内では、識別マーク140が表紙110Rの後方に向けて表示される。したがってセンサ部24(図4参照)は、表紙110Rの外側後方からセンサ光を照射することで、識別マーク140からノート種類を読み取ることができる。さらに、上記のように表紙110Rが媒体保持シート5Rに正確に位置決めされることにより、タグ収容部55内に収容される突出部133とセンサ部24との位置関係も変化しにくい。そのため、読取装置2に傾斜または振動が生じたり、読取装置2が開閉されたりしても、センサ部24で突出部133から識別マーク140を正確に読み取れる状態が維持される。
紙媒体100が媒体保持シート5L,5Rを介して読取装置2に取り付けられたのち、ユーザは電子ペン3を用いて用紙120に情報を記入する。紙媒体100は、一対の接着部161L,161Rによって、読取装置2に連結固定されている媒体保持シート5L,5Rに接着固定されている。ユーザが用紙120に情報を記入しているときに、紙媒体100の位置ずれが生じにくい。さらに、一対の接着部161L,161Rは、表紙110L,110Rで対称をなすように設けられている。これにより、紙媒体100は、媒体保持シート5L,5Rを介して読取装置2に対して安定的に接着固定される。ユーザは紙媒体100の用紙120に対して情報を正確に記入できる。
表紙110Rと用紙120との間に内表紙115が介在するため、タグ部130は用紙120と直接的に接触しない。内表紙115は情報が記入される用紙120の下敷きとなるため、タグ部130の前側に配置された用紙120に、タグ部130に起因する凹凸が生じにくい。ユーザは、タグ部130の前側に配置された用紙120(つまり、内表紙115と重なる用紙120)に情報を記入しやすい。
紙媒体100への情報記入が終了したのち、ユーザは媒体保持シート5L,5Rを読取装置2から取り外し、さらに使用済みの紙媒体100から媒体保持シート5L,5Rを取り外す。ユーザはタグ部130を折り返して、切り込み部131内に収容する。タグ部130が表紙110Rの外側に突出しないため、タグ部130および識別マーク140の破損または変形を抑制できる。さらに、ユーザは剥離部163L,163Rを閉じて、接着部161L,161Rを被覆する。接着部161L,161Rが他の物品に接着することが防止されるため、ユーザは使用済みの紙媒体100を容易に携行および保管することができる。
本実施形態では、綴じ部105の近傍に接着部161L,161Rが設けられているため、使用済みの紙媒体100を壁掛け状に保管可能である。例えば、表紙110Lがタイトルおよびノート種類等が表記された表表紙である紙媒体100を保管する場合、ユーザは裏表紙である表紙110Rの剥離部163Rを開く。ユーザは接着部161Rを介して、閉じ部105が上向きとなるように表紙110Rを壁に貼り付ける。
これにより、ユーザが表紙110Lに表記されたタイトル等を目視可能な状態で、紙媒体100が壁掛け状に保管される。綴じ部105の近傍に設けられている接着部161Rによって、紙媒体100の自然開放および重力落下を抑制できる。さらに、接着部161Rは綴じ部105に沿って延びる形状を有するため、紙媒体100が壁に貼り付けられた状態をより安定的に保持できる。
図10に示すように、ユーザが開閉カバー46を開くと、バッテリー着脱口48を介してバッテリー装着部82が外部に露出する。これにより、ユーザはバッテリー装着部82に装着するバッテリー19を交換できる。
<7.読取装置2のデータ取得原理>
上述のように紙媒体100が読取装置2に装着された状態で、ユーザは電子ペン3を用いて用紙120に情報を記入する。用紙120に対向するセンサ基板10L,10Rのいずれかによって、用紙120に情報を記入する電子ペン3の位置情報が検出される。読取装置2は、検出される電子ペン3の位置情報に基づいて、先述のストロークデータを取得する。
図5を参照して、読取装置2によってストロークデータが取得される原理を、概略的に説明する。CPU21はASIC11A,12Aを制御して、センサ基板10L,10Rの各々のループコイルに、一本ずつ特定の周波数の電流(励磁用送信電流)を流す。これにより、センサ基板10L,10Rの各々のループコイルから磁界が発生する。この状態で、例えばユーザが電子ペン3を用いて読取装置2に固定された紙媒体100の用紙120に情報を記入すると、電子ペン3がセンサ基板10L,10Rに近接する。そのため、電子ペン3の共振回路は電磁誘導によって共振し、誘導磁界を生じる。
次に、CPU21はASIC11A,12Aを制御して、センサ基板10L,10Rの各々のループコイルからの磁界の発生を停止させる。さらに、電子ペン3の共振回路から発せられる誘導磁界を、センサ基板10L,10Rの各々のループコイルで受信する。CPU21はASIC11A,12Aを制御して、センサ基板10L,10Rの各々のループコイルに流れる信号電流(受信電流)を検出させる。ASIC11A,12Aがこの動作を全てのループコイルについて一本ずつに実行することで、受信電流に基づいて電子ペン3の位置が検出される。
さらに、電子ペン3を用いて用紙120に情報が記入されている状態では、芯体31に筆圧が付与される。芯体31に付与される筆圧に応じて、コイル32のインダクタンスが変化する。これにより、電子ペン3の共振回路の共振周波数が変化する。CPU21はこの共振周波数の変化(位相変化)を検出して、電子ペン3に付与された筆圧を特定する。つまりCPU21は、電子ペン3から特定した筆圧によって、用紙120に情報が記入されているか否かを判断できる。
CPU21は、用紙120に情報が記入されていると判断した場合、電子ペン3の軌跡を示すストロークデータを取得する。つまり、CPU21は、センサ基板10Lによって検出された電子ペン3の位置に基づいて、読取装置2に位置決めされた表紙110Lと重なり合う用紙120に記入されたストロークデータが取得する。CPU21は、センサ基板10Rによって検出された電子ペン3の位置に基づいて、読取装置2に位置決めされた表紙110Rと重なり合う用紙120に記入されたストロークデータを取得する。取得されたストロークデータは、フラッシュROM22に保存される。
<8.読取装置2のフォーマット設定処理>
図12を参照して、本実施形態の手書入力システム1において、読取装置2で実行されるメイン処理を説明する。読取装置2の電源がONされると、CPU21はフラッシュROM22に記憶されているプログラムに基づいて、図12に示すフォーマット設定処理を実行する。
図12に示すように、読取装置2のフォーマット設定処理では、まず識別マーク140の読み取りが実行される(S1)。先述したように、紙媒体100が読取装置2に装着されている場合、タグ部130の突出部133がタグ収容部55に挿入されている。ステップS1では、センサ部24が有する六つの光センサの各々から前方に計測光が発せられる。六本の計測光は読取窓73を介して、媒体保持シート5Rの被覆部59に後方から照射される。このとき、六本の計測光は、センサ穴58の対応する貫通穴を経由して、突出部133に印刷された識別マーク140に照射される。識別マーク140で反射された六本の反射光が、センサ部24によって検出される。センサ部24は、検出された各反射光に基づいて、識別マーク140のバーパターンを読み取る。
次いで、コード情報を検出できたか否かが判断される(S3)。例えば突出部133がタグ収容部55に挿入されていない場合、センサ部24によって適正にバーパターンが読み取れない。このように適正にバーパターンが読み取れなかった場合、コード情報を検出できなかったと判断される(S3:NO)。この場合、汎用ノート(例えば、A5サイズの白紙ノート)のフォーマット情報が、読取装置2に装着されている紙媒体100が有する用紙120のフォーマットとして、フラッシュROM22に設定される(S5)。
一方、センサ部24によって適正にバーパターンが読み取れた場合、コード情報を検出できたと判断される(S3:YES)。この場合、検出したコード情報に対応するフォーマット情報が、読取装置2に装着されている紙媒体100が有する用紙120のフォーマットとして、フラッシュROM22に設定される(S7)。例えば、図7および図8に示す識別マーク140の例では、識別領域141、144、146が黒、識別領域142、143、145が白となるバーパターンが読み取られる。このバーパターンが示すコード情報に基づいて、例えば罫線が20本引かれたA5サイズの文書用フォーマットが、フラッシュROM22に設定される。ステップS5またはステップS7の実行後、フォーマット設定処理(図12参照)が終了される。
読取装置2では、フォーマット設定処理(図12参照)の終了後、先述したように電子ペン3の軌跡を示すストロークデータが、フラッシュROM22に経時的に保存される。読取装置2でストロークデータの取得が終了したのち、ユーザの転送指示に応じて、フラッシュROM22に保存されたストロークデータがPC9(図2参照)に転送される。このとき、ステップS5またはステップS7で設定されたフォーマット情報も、PC9に転送される。
PC9では、読取装置2から転送されたストロークデータに基づいて、用紙120に記入された情報を再現可能な画像ファイルが生成される。さらに、読取装置2からステップS7で設定されたフォーマット情報が転送された場合、読取装置2に装着されている紙媒体100が有する用紙120のフォーマットと、そのフォーマット上に記入された情報とを忠実に再現できる。なお、読取装置2からステップS5で設定されたフォーマット情報が転送された場合、例えば白紙ノートに記入された情報を再現できる。
<9.本実施形態の作用効果の例示>
紙媒体100は、一対の表紙110L,110Rと複数枚の用紙120とが綴じられた冊子状である。表紙110L,110Rには、接着部161L,161Rが設けられる。剥離部163Lは、切り込み部164Lの両端部を結ぶ線(型押し部162L)に沿って折り返されることで、接着部161Lを露出させる開位置と接着部161Lを被覆する閉位置とに変位可能である。剥離部163Rは、切り込み部164Rの両端部を結ぶ線(型押し部162R)に沿って折り返されることで、接着部161Rを露出させる開位置と接着部161Rを被覆する閉位置とに変位可能である。
これによれば、剥離部163L,163Rを開位置に変位させることで、紙媒体100を接着部161L,161Rで設置台(例えば、媒体保持シート5L,5Rまたは読取装置2)に固定して、用紙120への記入中に紙媒体100の位置ずれが生じることを抑制できる。用紙120への記入後は、剥離部163L,163Rを閉位置に変位させることで、接着部161L,161Rを剥離部163L,163Rで被覆して、紙媒体100を簡易に保管できる。
接着部161Lと接着部161Rとは綴じ部105を挟んで対称に設けられるため、紙媒体100を設置台により安定して固定できる。接着部161L,161Rは綴じ部105の近傍に設けられるため、例えば紙媒体100を壁に貼り付けて保管できる。接着部161L,161Rが綴じ部105に沿って延びる形状を有するため、例えば紙媒体100を壁に貼り付けて保管する場合、より安定して保管できる。
剥離部163Lと剥離部163Rとは、綴じ部105とは反対側に折り返し可能である。一対の剥離部163L,163Rが異なる方向に開くため、開位置にある剥離部163L,163Rが相互に干渉することを抑制できる。その結果、ユーザは紙媒体100に例えば媒体保持シート5L,5Rを取り付けやすい。
上記実施形態において、紙媒体100が本発明の「記録媒体」に相当する。表紙110Lが、本発明の「第一表紙」に相当する。表紙110Rが、本発明の「第二表紙」に相当する。接着部161Lが、本発明の「第一接着部」に相当する。接着部161Rが、本発明の「第二接着部」に相当する。剥離部163Lが、本発明の「第一剥離部」に相当する。剥離部163Rが、本発明の「第二剥離部」に相当する。
<10.変形例の例示>
(1)本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。例えば、紙媒体100は、媒体保持シート5L,5Rを用いることなく、読取装置2に直接取り付けられてもよい。この変形例を、図13〜図15を参照して説明する。本変形例の読取装置2は、外装カバー4を備えていない。ユーザは樹脂カバー7L,7Rに直接触れて、読取装置2を開閉可能である。
図13および図15に示すように、変形例の紙媒体100は、表紙110L,110Rが用紙120よりもページ幅(本実施形態では、左右方向の長さ)が大きい。表紙110Lのうちで、表紙110Lに重なる用紙120よりも開放側(本実施形態では左側)に延びる部分を、延長部150Lという。表紙110Rのうちで、表紙110Rに重なる用紙120よりも開放側(本実施形態では右側)に延びる部分を、延長部150Rという。
延長部150Lの開放側の上隅部および下隅部に、それぞれ、ページ幅方向に長い貫通穴である連結穴151L,152Lが設けられている。延長部150Rの開放側の上隅部および下隅部に、それぞれ、ページ幅方向に長い貫通穴である連結穴151R,152Rが設けられている。さらに、上記実施形態と同様の識別マーク140が、延長部150Rにおける連結穴151Rの下側に設けられている。
一方、変形例の読取装置2では、取付部71L,72L,71R,72Rが、上記実施形態と異なる。取付部71Lは、挿入ピン171Lおよび挟持板173Lを備える。挿入ピン171Lは、前カバー70Lの開放側(本実施形態では左側)の上隅部から前方に突出するピンである。挟持板173Lは、挿入ピン171Lに対して開放側に隣接して設けられた、上方に突出する板状部材である。同様に、取付部72Lは、前カバー70Lの開放側の下隅部から突出する挿入ピン172Lと、挿入ピン172Lに対して開放側に隣接する挟持板174Lを備える。
取付部71Rは、前カバー70Rの開放側(本実施形態では右側)の上隅部から突出する挿入ピン171Rと、挿入ピン171Rに対して開放側に隣接する挟持板173Rを備える。取付部72Rは、前カバー70Rの開放側の下隅部から突出する挿入ピン172Rと、挿入ピン172Rに対して開放側に隣接する挟持板174Rを備える。
図13および図15に示すように、ユーザが紙媒体100を読取装置2に取り付ける場合、連結穴151L,152Lにそれぞれ挿入ピン171L,172Lを挿入する。これにより、延長部150Lのうちで連結穴151Lよりも開放側の部分が、挿入ピン171Lおよび挟持板173Lによって挟持される。延長部150Lのうちで連結穴152Lよりも開放側の部分が、挿入ピン172Lおよび挟持板174Lによって挟持される。したがって、表紙110Lが、樹脂カバー7Lに連結されて、センサ基板10Lに対して位置決めされる。
さらにユーザは、連結穴151R,152Rにそれぞれ挿入ピン171R,172Rを挿入する。これにより、延長部150Rのうちで連結穴151Rよりも開放側の部分が、挿入ピン171Rおよび挟持板173Rによって挟持される。延長部150Rのうちで連結穴152Rよりも開放側の部分が、挿入ピン172Rおよび挟持板174Rによって挟持される。したがって、表紙110Rが樹脂カバー7Rに固定されて、センサ基板10Rに対して位置決めされる。
本変形例では、センサ部24が読取窓73を介して、延長部150Rに設けられた識別マーク140に計測光を照射する。これにより、CPU21は、上記実施形態と同様に、識別マーク140からコード情報を読み取って、用紙120のフォーマット情報を設定できる。
(2)紙媒体100または媒体保持シート5L,5Rを読取装置2に取り付ける手法は、上記実施形態および変形例に限定されない。以下では、媒体保持シート5Lを読取装置2に取り付ける変形例を例示するが、紙媒体100および媒体保持シート5Rを読取装置2に取り付ける場合も、下記と同様に変形可能であることは言うまでもない。
例えば、読取装置2の取付部71L,72Lは、雌型ホックでもよい。この場合、媒体保持シート5Lの連結穴53L,54Lに代えて、それぞれ雄型ホックを設ける。ユーザは媒体保持シート5Lの雄型ホックを、雌型ホックである取付部71L,72Lに嵌めることで、媒体保持シート5Lを樹脂カバー7Lに固定できる。
読取装置2の取付部71L,72Lは、雌型のネジ穴でもよい。この場合、ユーザは媒体保持シート5Lの連結穴53L,54Lを介して、取付部71L,72Lに図示外のネジを螺合することで、媒体保持シート5Lを樹脂カバー7Lに固定できる。
読取装置2の取付部71L,72Lは、先端に回転体が設けられた回転止め具でもよい。この場合、ユーザは連結穴53L,54Lに取付部71L,72Lを挿入し、さらに取付部71L,72Lの回転体を回転させる。これにより、連結穴53L,54Lから取付部71L,72Lが抜けることが抑制されて、媒体保持シート5Lを樹脂カバー7Lに固定できる。
読取装置2の取付部71L,72Lは、可動体によってスライド固定する機構でもよい。例えば、ユーザは連結穴53L,54Lに取付部71L,72Lを挿入し、さらに取付部71L,72Lの可動体を移動させる。これにより、連結穴53L,54Lから取付部71L,72Lが抜けることが抑制されて、媒体保持シート5Lを樹脂カバー7Lに固定できる。
(3)読取装置2は他の方法で電子ペン3の位置を検出してもよい。例えば読取装置2はタッチパネルを備えてもよい。タッチパネルの駆動方式は、抵抗膜方式であることが好ましい。タッチパネル上に紙媒体100が置かれてもよい。CPU21は、電子ペン3によって紙媒体100の用紙120に情報を記入する動作が行われた場合、タッチパネルを介して筆圧が加えられた位置を検出してもよい。
(4)紙媒体100のサイズ、フォーマット、材質などは、上記実施形態に限定されない。媒体保持シート5L,5Rは、少なくとも紙媒体100を取り付け可能なサイズであればよい。読取装置2は、紙媒体100に貼り付けられた媒体保持シート5L,5Rを取り付け可能なサイズ、または、少なくとも紙媒体100を取り付け可能なサイズであればよい。
タグ部130は、一対の表紙110L,110Rの少なくとも一方に設けてもよい。媒体着脱部160L,160Rは、一対の表紙110L,110Rの少なくとも一方に設けてもよい。識別マーク140は、ノート種類として、用紙120のフォーマット以外の情報(例えば、紙媒体100の製造番号、使用履歴、キーワードなど)を光学的に読み取り可能な画像でもよい。
タグ部130および媒体着脱部160L,160Rの位置、形状および大きさは、上記実施形態および変形例に限定されない。例えば、図16に示す変形例の紙媒体100では、タグ部130の折り返した状態を保持する爪部139が設けられている。爪部139は、型押し部132と識別マーク140との間に設けられた、タグ部130を前後方向に貫通する切り込み部である。爪部139は、正面視で識別マーク140から型押し部132に向かう方向に突出する形状を有する。
ユーザはタグ部130が折り返したときに、表紙110Rの開放側端部を爪部139に差し込む。これにより、タグ部130が表紙110Rの開放側端部に係止されるため、識別マーク140の位置ずれを抑制できる。紙媒体100は読取装置2に識別マーク140を正確に読み取らせることができる。