JP2014098191A - 腐食環境における耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼および高強度ボルト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の高強度ボルト用鋼は、C:0.15〜0.21%、Si:1.5〜2.0%、Mn:2.0%以下(0%を含まない)、Cr:2.5〜5.0%を夫々含有する他、Ca:0.05%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.05%以下(0%を含まない)を含有し、且つCaとMgの合計含有量が0.0008%以上であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織がフェライトとパーライトの混合組織である。
【選択図】なし
Description
Cは、鋼材の強度確保のために必要な元素であるが、その含有量が増大するにつれて鋼材の耐遅れ破壊性が低下する。C含有量が0.15%未満になると、調質後のボルトの強度を安定させることが難しくなる。一方、C含有量が0.21%を超えると、延性の劣化により耐遅れ破壊性が劣化する。尚、C含有量の好ましい下限は0.16%以上(より好ましくは0.17%以上)であり、好ましい上限は0.20%以下(より好ましくは0.19%以下)である。
Siは、強度確保および焼戻し炭化物の抑制のために有効な元素であるが、その含有量が過剰になるとボルト成形性(例えば、冷間鍛造性)が低下する。こうした観点から、Si含有量は1.5%以上、2.0%以下とする必要がある。好ましい下限は、1.6%以上(より好ましくは1.7%以上)である。また好ましい上限は、1.9%以下(より好ましくは1.8%以下)である。
Mnは焼入れ性向上元素であり、高強度を達成するために有用な元素である。このような効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Mn含有量が過剰になると、鋼材の靭性が低下する。こうした観点から、Mn含有量は2.0%以下に抑える。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.1%以上(より好ましくは0.2%以上)であり、好ましい上限は1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。
Crは、鋼の耐食性を高める作用があり、腐食環境下での腐食ピットの形成を抑制するのに有用な成分である。こうした効果を十分に発揮させるには、Crを2.5%以上含有させる必要がある。一方、Cr含有量が過剰になると、鋼材の冷間鍛造性が劣化するため、5.0%以下にする必要がある。尚、Cr含有量の好ましい下限は2.8%以上(より好ましくは3.0%以上)であり、好ましい上限は4.5%以下(より好ましくは4.0%以下)である。
CaとMgは、腐食ピットの形成を抑制する上で有効な元素であり、これらの元素の1種または2種を含有させることによって、腐食環境下での耐遅れ破壊性を向上させることができる。こうした効果を発揮させるためには、CaとMgの合計含有量で0.0008%以上とする必要がある。一方、これらの含有量が過剰になると、介在物が多くなり、これが破壊の起点となって耐遅れ破壊性を劣化させるので、いずれも0.05%以下とする必要がある。尚、CaとMgの合計含有量の好ましい下限は0.001%以上(より好ましくは0.01%以上)である。Ca、Mgの好ましい上限は、いずれも0.04%以下(より好ましくは0.03%以下)である。
Ti,NbおよびVは、耐遅れ破壊性を更に向上させる上で有用な元素である。こうした作用を発揮させるには、いずれか1種以上を0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これらの含有量が過剰になると、冷間加工性が悪化するので、いずれも0.1%以下とすることが好ましい。尚、これらの元素のより好ましい下限は、0.005%以上(更に好ましくは0.01%以上)であり、好ましい上限は0.08%以下(より好ましくは0.05%以下)である。
耐食性試験では、円柱状(直径:4mm×長さ:100mm)に切削加工した試験片を用いた。塩乾湿複合サイクル試験機(「CYP−90」(商品名)スガ試験機株式会社製)を使用し、上記試験片を試験機に縦置きで設置した。そして、(1)塩水噴霧工程(35℃の5%NaCl水溶液噴霧×2時間)→(2)乾燥工程(60℃、相対湿度:20〜30%で4時間)→(3)湿潤工程(50℃、相対湿度:95%以上で2時間)を1サイクルとし、これを30サイクル繰り返す腐食試験(CCT試験)を行った。
図3に示すノッチ付き引張試験片(図中の単位はmm)を切削加工により作製して遅れ破壊試験を行った。この試験片での遅れ破壊試験結果は、実ボルトでの遅れ破壊試験結果と良い相関が得られることが知られている。遅れ破壊試験では、上記遅れ破壊試験片を塩乾湿複合サイクル試験機(「CYP−90」(商品名)スガ試験機株式会社製)を使用し、上記試験片を試験機に縦置で設置した。そして、(1)塩水噴霧工程(35℃の5%NaCl水溶液噴霧×2時間)→(2)乾燥工程(60℃、相対湿度:20〜30%で4時間)→(3)湿潤工程(50℃、相対湿度:95%以上で2時間)を1サイクルとし、これを30サイクル繰り返すCCT試験を行った。
X=σH/TS …(1)
但し、TS:CCT・SSRT試験前の材料の引張強度、σH:SSRT試験後の破断応力
Claims (4)
- C :0.15〜0.21%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、
Si:1.5〜2.0%、
Mn:2.0%以下(0%を含まない)、
Cr:2.5〜5.0%を夫々含有すると共に、
Ca:0.05%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.05%以下(0%を含まない)を含有し、且つCaとMgの合計含有量が0.0008%以上であり、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織がフェライトとパーライトの混合組織であることを特徴とする腐食環境における耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼。 - 更に、Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)およびV:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含むものである請求項1に記載の高強度ボルト用鋼。
- 請求項1または2に記載の高強度ボルト用鋼から得られるボルトであって、引張強度が1270〜1600MPaであると共に、ミクロ組織がマルテンサイト:95面積%以上、焼戻し炭化物:1.0面積%以下(0面積%を含まない)であることを特徴とする腐食環境における耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト。
- 請求項3に記載の高強度ボルトを製造するに当たり、ボルト形状に成形した後、焼入れ後の焼戻し処理を、150〜250℃の温度範囲で、60秒以上、3000秒以下で行うことを特徴とする高強度ボルトの製造方法。
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