JP2014096304A - 二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 充放電サイクル特性に優れた二次電池と、その製造方法とを提供する。
【解決手段】 複数のペンダント基を有し、前記ペンダント基は、カルボキシル基またはその塩と、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基とで構成されており、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基またはパーフルオロカーボン基を有しており、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しており、かつ前記介在する基が炭化水素基を有する場合には、炭化水素基の有する炭素のうち、少なくとも、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素にはフッ素が結合している重合体、カップリング剤、活物質および溶剤を含む合剤層形成用組成物を用いて得られた正極または負極を有する二次電池である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、充放電サイクル特性に優れた二次電池と、その製造方法に関するものである。
近年、携帯電話、ノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、高エネルギー密度の非水二次電池などの二次電池の需要が急激に伸びている。現在、こうした要求に応え得る非水二次電池は、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能なリチウム含有複合酸化物を使用した正極と、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料やリチウム金属などを使用した負極と、電解質塩を有機溶媒に溶解させた電解質(非水電解質)とを用いて構成されている。
非水二次電池には、充放電を繰り返すことで正極活物質や負極活物質と電解質との間で様々な反応が起こり、これに起因して電池の容量や特性が低下するといった問題がある。
こうした問題を解消すべく、例えば、電解質や電極に少量含有させることで非水二次電池の特性改善を図る添加剤の検討が進められている。例えば、特許文献1〜3には、特定のイミド化合物を添加した負極や電解質を用いて電池を構成することで、その電解質溶媒と負極活物質との間の反応を抑制する技術が提案されている。また、特許文献4には、環状スルトン誘導体を含有する電解質を用いて電池を構成することで、その電解質溶媒と正極活物質との間の反応を抑制する技術が提案されている。
特開平10−261435号公報 特開平11−219723号公報 特開2000−182621号公報 特開2009−266392号公報
前記のような添加剤によって正極活物質や負極活物質と電解質成分との反応を抑制することで、例えば非水二次電池の充放電サイクル特性を高めることができる。
ところで、前記のような技術の中には、添加剤が正極表面や負極表面で皮膜形成をし、この皮膜が正極活物質や負極活物質と電解質との直接の接触を防止することで、これらの間での反応を抑えるタイプのものがある。ところが、こうしたタイプの技術では、正極表面や負極表面に形成される皮膜が、電池の充放電時に活物質におけるイオンの挿入、脱離を阻害する虞もある。この場合、充放電の繰り返しに伴って皮膜の厚みが徐々に増大することで、活物質におけるイオンの挿入、脱離を阻害する作用も増大して、添加剤の使用による充放電サイクル特性の向上効果を小さくしてしまう虞もある。また、添加剤の多くは電解質に溶解するため、その分添加量を増やすこととなり、皮膜形成に関与しない添加物が他の特性に悪影響したり、コストを上昇させたりするなどの問題を引き起こす虞がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電サイクル特性に優れた二次電池と、その製造方法とを提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータおよび電解質を有する二次電池であって、前記正極または前記負極は、集電体の片面または両面に、活物質、カップリング剤、下記の重合体および溶媒を少なくとも含む合剤層形成用組成物を前記集電体に塗布し、乾燥する工程を経て形成された合剤層を有することを特徴とするものである。
ここで、前記重合体は、複数のペンダント基を有しており、前記ペンダント基は、カルボキシル基またはその塩と、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基とで構成されており、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、パーフルオロカーボン基であるか、炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されており、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、前記炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しており、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、または炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている場合には、前記炭化水素基の有する炭素のうち、少なくとも、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素には、フッ素が結合している。
また、本発明の二次電池の製造方法は、正極、負極、セパレータおよび電解質を有する二次電池を製造するに当たり、集電体の片面または両面に、活物質、カップリング剤、前記の重合体および溶媒を少なくとも含む合剤層形成用組成物を前記集電体に塗布し、乾燥する工程を経て合剤層を形成して製造した前記正極または前記負極を使用することを特徴とする。
本発明によれば、充放電サイクル特性に優れた二次電池と、その製造方法とを提供することができる。
本発明の二次電池(リチウムイオン二次電池)の一例を模式的に表す平面図である。 図1のA−A線断面図である。 実施例1および比較例1、2の非水二次電池の充放電サイクル特性の評価結果を表すグラフである。
本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータおよび電解質を有しており、正極または負極が、集電体の片面または両面に、活物質、カップリング剤、特定の重合体および溶媒を少なくとも含む合剤層形成用組成物を集電体に塗布し、乾燥する工程を経て形成された合剤層を有している。
前記の工程を経て形成される合剤層においては、前記特定の重合体が活物質表面に存在して、活物質の保護剤として作用する。すなわち、前記特定の重合体が活物質表面に存在することで、活物質と二次電池の電解質との接触を抑制して、電解質成分の分解反応を抑制する。
前記特定の重合体は、詳しくは後述するようにイオン解離性が高いため、活物質の表面に存在してもイオンの挿入、脱離を阻害しない一方で、電子は透過しないと考えられる。そのため、前記特定の重合体が活物質表面に存在することで、二次電池の電解質成分の分解を抑制できると推測される。
しかも、前記特定の重合体は、前記の工程を経て形成される合剤層においては、カップリング剤由来の鎖を介して活物質と化学的に結合できる。そのため、二次電池内での前記特定の重合体の活物質表面からの脱離が抑えられることから、この重合体による電解質成分の分解抑制作用を良好に発揮させることが可能となる。
本発明の二次電池においては、これらの作用によって、充放電に伴う電解質成分の分解による特性低下が良好に抑制できることから、良好な充放電サイクル特性を確保することができる。
本発明の二次電池は、アルカリ電解液を有するアルカリ電解液二次電池、非水電解液を有する非水二次電池(リチウムイオン二次電池)、固体電解質を有する固体二次電池(ポリマー二次電池)などの形態を取り得るが、以下には、本発明の二次電池のうち、特に主要な非水二次電池の構成を中心に説明する。
非水二次電池の正極には、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される。
正極活物質には、例えばLi1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMnなどのリチウムマンガン酸化物;LiMnのMnの一部を他元素で置換したLiMn(1−x);オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5;Li(1+a)MnNiCo(1−x−y)(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを用いることができる。
正極合剤層に係るバインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが好適に用いられる。また、正極合剤層に係る導電助剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛(黒鉛質炭素材料);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカ−ボンブラック;炭素繊維;などの炭素材料などが挙げられる。
正極の集電体は、従来から知られている非水二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
正極は、例えば、正極活物質、バインダおよび導電助剤などを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤層形成用組成物を調製し(ただし、バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、正極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
また、正極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
正極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質の量が60〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜15質量%であることが好ましく、導電助剤の量が3〜20質量%であることが好ましい。
非水二次電池の負極には、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を含有する負極合剤からなる負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものや、負極活物質からなる箔で構成されたものなどが使用される。
負極活物質には、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金、更にはLiTi12で表されるようなTi酸化物も負極活物質として用いることができる。
また、負極のバインダおよび導電助剤には、正極に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
負極に集電体を使用する場合、その集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて使用される導電助剤を、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤層形成用組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。また、負極活物質が前記の各種合金やリチウム金属など場合には、それらの箔を単独、もしくは集電体上に負極剤層として積層して、負極とすることもできる。ただし、負極は、これらの製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
また、負極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
負極合剤層を有する負極の場合、負極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質を80.0〜99.8質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。更に、負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、負極合剤層における導電助剤の量を0.1〜10質量%とすることが好ましい。
本発明の二次電池において、正極または負極に使用される前記特定の重合体は、複数のペンダント基が主鎖に結合した構造を有しており、前記ペンダント基は、カルボキシル基またはその塩と、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基(構造部分)とで構成されており、耐酸化性およびイオン解離性が良好であり好ましい。また前記ペンダント基は、カルボキシル基に代えてスルホン酸基(-SOM)を用いて、スルホン酸基またはその塩と、前記スルホン酸基またはその塩と主鎖との間に介在する基(構造部分)とで構成されても良い。
前記ペンダント基に係るカルボキシル基の塩としては、例えば、カルボキシル基の金属塩、カルボキシル基のアンモニウム塩などが挙げられる。カルボキシル基の金属塩の場合、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩(1価の金属塩)でもよく、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などの2価以上の金属塩であってもよい。なお、前記ペンダント基に係るカルボキシル基の塩が2価以上の金属塩の場合には、前記重合体の分子内で複数のペンダント基を含む環構造が形成されたり、前記重合体の分子間で複数のペンダント基による架橋構造が形成されたりする。
前記ペンダント基に係るカルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基は、炭化水素基(炭化水素鎖)で構成されているか、パーフルオロカーボン基(炭化水素基における水素の全てがフッ素で置換された基)で構成されているか、炭化水素基(炭化水素鎖)と、エステル基(エステル結合)およびカーボネート基(カーボネート結合)のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基と、エステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている。これらの基は、エーテル基(エーテル結合)などと比べて酸化分解し難いことから、前記重合体の耐酸化性が良好となる。
前記ペンダント基に係るカルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基と、エステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方の場合の、より具体的な構造としては、例えば、カルボキシル基またはその塩が炭化水素基と結合しており、この炭化水素基が、エステル基またはカーボネート基を介して主鎖と結合している構造が挙げられる。また、前記ペンダント基に係るカルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、パーフルオロカーボン基と、エステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方の場合の、より具体的な構造としては、例えば、カルボキシル基またはその塩がパーフルオロカーボン基と結合しており、このパーフルオロカーボン基が、エステル基またはカーボネート基を介して主鎖と結合している構造が挙げられる。
前記ペンダント基に係るカルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐状のアルキレン基(アルキレン鎖)が挙げられる。なお、後述するように、前記の炭化水素基(例えば、直鎖状または分岐状のアルキレン基)は、その水素の少なくとも一部がフッ素で置換されている必要がある。炭化水素基における炭素数は、例えば、1〜20であることが好ましい。
また、前記ペンダント基に係るカルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、前記ペンダント基中の炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合している。そして、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、または炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている場合には、前記炭化水素基の有する炭素のうち、少なくとも、カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素には、フッ素が結合している(すなわち、カルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素においては、それと結合し得る水素の少なくとも一部がフッ素で置換されている)。
また、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、パーフルオロカーボン基であるか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている場合には、前記の通り、カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素が、前記パーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しているため、少なくとも、カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位に位置する炭素には、フッ素が結合していることになる。
前記ペンダント基において、カルボキシル基またはその塩のカルボニル炭素のα位またはβ位の炭素に、電子吸引性の強いフッ素が結合していることで、カルボキシル基またはその塩の有する酸素上の電子密度が低くなるため、水素(カルボキシル基の場合)や対イオン(カルボキシル基の塩の場合)が解離しやすくなる。よって、前記重合体は、有機溶媒中においても、良好なイオン解離性を示すものとなる。
前記ペンダント基としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造部分を有するものであることが好ましい。
Figure 2014096304
前記一般式(1)中、nは1〜20の整数であり、Mは水素、金属またはアンモニウムである。また、金属である場合のMとしては、前記の通り、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属(1価の金属);マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの2価以上の金属;が挙げられる。
前記ペンダント基が前記一般式(1)で表される構造部分を有する場合、前記一般式(1)で表される構造部分のみで構成されていてもよく、前記一般式(1)で表される構造部分と、エステル基やカーボネート基とで構成されていたり、前記一般式(1)で表される構造部分と、炭化水素基やパーフルオロカーボン基(フッ素置換されていてもよいアルキレン基など)とが、エステル基やカーボネート基を介して結合して構成されていたりしてもよい。
また、1つのペンダント基が、前記一般式(1)で表される構造部分を複数含有していてもよい。具体的は、例えば、前記一般式(1)で表される構造部分とは別に炭化水素基(例えばアルキレン基)を有し、この炭化水素基に前記一般式(1)で表される構造部分が複数結合して構成されていてもよい。
前記重合体は、カルボキシル基を有するペンダント基のみを含有していてもよく、カルボキシル基の塩を有するペンダント基のみを含有してもよく、カルボキシル基を有するペンダント基と、カルボキシル基の塩を有するペンダント基とを含有していてもよい。また、1つのペンダント基が複数のカルボキシル基またはその塩を含有している場合〔例えば、前記一般式(1)で表される構造部分を複数含有している場合〕、カルボキシル基のみを含有していてもよく、カルボキシル基の塩のみを含有していてもよく、カルボキシル基とカルボキシル基の塩とを含有していてもよい。
前記重合体の主鎖は、前記重合体の耐酸化性を高める観点から、炭化水素基のみで構成されているか、パーフルオロカーボン基のみで構成されているか、炭化水素基と、エーテル基およびエステル基のうちの少なくとも1方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基と、エーテル基およびエステル基のうちの少なくとも1方とで構成されていることが好ましい。主鎖を構成する炭化水素基としては、例えば、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(アルキレン基の有する水素の一部が、フッ素で置換されていてもよい)または直鎖状もしくは分岐状のパーフルオロアルキレン基(アルキレン基の有する水素のうち、前記ペンダント基で置換されている部分を除く全部がフッ素で置換された基)が好ましく、前記重合体のコスト低減や、正極活物質のへの吸着性向上の観点からは、フッ素で置換されていない炭化水素基(特に、直鎖状または分岐状のアルキレン基)であることが更に好ましい。
また、前記重合体には、種々の特性を付与するために、前記ペンダント基以外の基を含有させることもできる。例えば、溶媒への溶解性、他の重合体との相溶性、他の物質などへの吸着性、電解質(例えば二次電池に使用される電解質)中での耐分解性、ガス発生特性などを改善し得る基を含有させてもよい。
前記重合体の分子量は、500以上であることが好ましく、また、500万以下であることが好ましく、1万以上であることがより好ましく、3万以上であることが更に好ましい。
本明細書でいう前記重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される数平均分子量(ポリスチレン換算値)である。
前記重合体に導入するペンダント基の量は、主鎖を構成する単量体に対して5モル%以上であることが好ましく、また、10モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。前記重合体におけるペンダント基の導入量の上限については特に制限はなく、用いる溶媒への溶解性、合成の容易さや立体障害などによる制約、コストなどに応じて選択すればよい。なお、通常の単量体1個あたりにペンダント基1個が導入可能な場合には、主鎖を構成する単量体に対してペンダント基100モル%が上限であるが、単量体の分子構造によっては単量体1個あたりにペンダント基複数個が導入可能な場合があり、その場合は主鎖を構成する単量体に対するペンダント基導入量の上限値は100モル%以上となる。
本明細書でいう前記重合体へのペンダント基の導入量は、プロトンおよびフッ素19核磁気共鳴分光法(NMR)測定から得られる各元素の比率から求められる、主鎖を構成する単量体に対するペンダント基のモル比である。
前記重合体の製造方法については特に制限はなく、いずれの方法を採用してもよい。代表的な製造方法としては、ポリビニルアルコールの水酸基にフッ素化二カルボン酸無水物を反応させる方法;ポリ酢酸ビニルのアセチル基とフッ素化二カルボン酸とでエステル交換する方法;ポリエチレンイミンのアミノ基にフッ素化二カルボン酸無水物を反応させる方法;などが挙げられる。また、このような方法で主鎖に導入したペンダント基のカルボキシル基に、対イオンとなる金属やアンモニウムを含む水酸化物や炭酸塩などの弱酸の塩などを反応させることで、カルボキシル基の塩を含有するペンダント基を有する重合体を得ることができる。また、予めフッ素化カルボン酸やその塩を含有するペンダント基を有するモノマーを用意し、これを重合することで前記重合体を製造することもできる。
本発明の二次電池において、正極または負極に使用されるカップリング剤は、正極活物質や負極活物質の表面に、前記重合体を固定する機能を有する物質である。カップリング剤の具体例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられるが、これらと同様の機能を有する物質であれば、本発明に係るカップリング剤に含まれる。
例えば、カップリング剤としてシランカップリング剤を使用した場合、このシランカップリング剤、前記重合体および活物質などを含み、これらが溶媒に分散または溶解しているスラリー状やペースト状の合剤層形成用組成物を、集電体に塗布し、乾燥するなどして合剤層を形成する過程で、シランカップリング剤の有するアルコキシ基が外れてシラノール基が活物質表面へ吸着して結合を形成し、また、シランカップリング剤の有するシラノール基同士の結合による架橋形成も生じるなどして、シランカップリング剤が活物質表面に固定される。
また、カップリング剤はアルコキシ基とは別に反応性の官能基を有しており、合剤層形成用組成物の集電体への塗布、乾燥するなどして合剤層を形成する過程で、前記重合体の有する官能基と反応することによって結合を形成できる。これにより、前記重合体が、カップリング剤由来の鎖を介して活物質表面に固定されるため、前記重合体による電解質成分の分解反応抑制作用が良好に発揮される。
カップリング剤に含まれる反応性の官能基としては、前記重合体の何れかの部位と反応し得るものであればよく、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、酸無水物基などが好ましい。特に、正極においては、耐酸化性が要求されるため、前記例示の反応性の官能基の中でも、前記重合体との反応によって耐酸化性が良好なエステル基(エステル結合)が形成されることから、エポキシ基や酸無水物基がより好ましい。
カップリング剤の使用量の好適な上限値は、カップリング剤由来の皮膜が活物質表面に均一に形成されたと仮定した場合に得られる前記皮膜の厚みを基準として判断することができる。すなわち、前記の仮定の下では、カップリング剤の使用量(g)は、「活物質量(g)×{カップリング剤由来の皮膜の厚み(nm)×10−7}×{活物質の比表面積(m/g)×10]}×カップリング剤の密度(g/cm)」を計算することで求められるが、具体的な使用量は、前記式における「カップリング剤由来の皮膜の厚み」が50nm以下となる量であることが好ましく、30nm以下となる量であることがより好ましく、10nm以下となる量であることが更に好ましい。これより膜厚が大きくなる量でカップリング剤を使用すると、活物質表面の前記重合体の量が多くなりすぎ、それが抵抗成分となって電池特性の低下を引き起こす虞がある。
また、カップリング剤の使用量の好適な下限値は、カップリング剤由来の単分子層が活物質表面に均一に形成されたと仮定した場合のカップリング剤の必要量を基準として判断することができる。すなわち、前記仮定の下では、単分子層形成に必要なカップリング剤の量(g)は、「活物質量(g)×{活物質の比表面積(m/g)×10}÷カップリング剤の最小被覆面積(m/g)」を計算することで求められるが、具体的な使用量は、前記式で求められるカップリング剤の必要量の、1/100以上であることが好まし1/30以上であることがより好ましく、1/10以上であることが更に好ましい。これより少ない量でカップリング剤を使用すると、前記重合体を活物質表面に固定する作用が小さくなる虞がある。
なお、カップリング剤の最小被覆面積は、カップリング剤のメーカーから提示されており、前記の使用量の検討に際しては、これらの値を用いればよい。
本発明の二次電池に係る正極に前記重合体およびカップリング剤を使用する場合には、正極合剤層を形成するための前記正極合剤層形成用組成物に、前記重合体およびカップリング剤も含有させ、前記の手法によって正極合剤層を形成すればよい。
また、本発明の二次電池に係る負極に前記重合体およびカップリング剤を使用する場合には、負極合剤層を形成するための前記負極合剤層形成用組成物に、前記重合体およびカップリング剤も含有させ、前記の手法によって負極合剤層を形成すればよい。
なお、カップリング剤の前記作用をより有効に発揮させる観点からは、あらかじめ活物質(正極活物質または負極活物質)とカップリング剤とを混合するなどして、活物質の表面をカップリング剤で処理しておき、これを用いて合剤層形成用組成物(正極合剤層形成用組成物または負極合剤層形成用組成物)を調製することが好ましい。
一方、活物質の劣化を抑制したり、二次電池の生産性を高めたりする観点からは、合剤層形成用組成物の調製時にカップリング剤を添加することが好ましい。合剤層形成用組成物の調製時にカップリング剤を添加する場合には、そのいずれの段階で添加してもよいが、カップリング剤を添加した後に前記重合体を添加するようにすることがより好ましい。
なお、前記重合体およびカップリング剤も含有する合剤層形成用組成物を集電体に塗布した後の乾燥時には、その乾燥温度を50℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましく、90℃以上とすることが更に好ましい。これにより、カップリング剤と前記重合体や活物質との反応を促すことができる。
また、前記重合体およびカップリング剤を使用して形成した合剤層を有する正極または負極においては、合剤層の形成後(例えば、カレンダー処理後)に熱処理工程を設けてカップリング剤と前記重合体や活物質との反応を促してもよい。この熱処理工程での熱処理温度は、50℃以上とすることが好ましく、70℃以上とすることがより好ましく、90℃以上とすることが更に好ましい。
正極または負極における前記重合体の使用量は、前記重合体による活物質の保護作用をより良好に確保する観点から、活物質100質量部に対して、0.01質量部以上とすることが好ましく、0.05質量部以上とすることがより好ましい。ただし、二次電池内の前記重合体の量が多すぎると、コストを増大させて電池の生産性低下を引き起こしたり、イオン伝導度の低下や内部抵抗の増大を引き起こして電池特性を低下させたりする虞がある。よって、正極または負極における前記重合体の使用量は、活物質100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、5質量部以下とすることがより好ましい。
本発明の二次電池は、正極および負極のいずれか一方に前記重合体およびカップリング剤が使用されていればよく、正極および負極の両者に使用されていてもよいが、前記重合体は耐酸化性に優れていることから、正極に使用した場合に、その効果がより顕著に発現する。
なお、前記の通り、本発明の二次電池に係る負極には、負極合剤層を有しないものも使用可能であるが、その場合には、正極に、前記重合体およびカップリング剤が使用されていればよい。
本発明の二次電池に係るセパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレンとポリプロピレンとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが好ましい。ポリエチレンとポリプロピレンなどのポリエチレンより融点の高い樹脂を混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてポリエチレンが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られている非水二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
前記の正極と前記の負極とは、前記のセパレータを介して重ね合せて構成した積層体(積層電極体)や、更にこの積層体を渦巻状に巻回した巻回電極体として、二次電池に使用される。
本発明の二次電池が非水二次電池の場合の非水電解液には、電解質塩を有機溶媒に溶解させた溶液を使用することができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。また、アミンイミド系有機溶媒や、含イオウまたは含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。
非水電解液に係る電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩などの含フッ素化合物の塩、またはイミド塩などが好適に用いられる。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO)3、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。これらの中でも、LiPFやLiBFなどが、充放電特性が良好なことからより好ましい。これらの含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので前記溶媒に溶解しやすいからである。非水電解液中における電解質塩の濃度は特に限定されないが、通常0.5〜1.7mol/Lである。
また、電池の安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を、非水電解液に適宜加えることもできる。
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
また、前記重合体は、二次電池の電解質(非水電解液)に添加してもよい。これによっても、正極または負極表面に前記重合体が付着して保護作用が発揮される他、非水電解液のイオン伝導度の向上も図ることができる。
非水二次電池の非水電解液に前記重合体を溶解させる場合には、前記の作用をより良好に発揮させる観点から、非水電解液における前記重合体の濃度を、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.1質量%以上とすることがより好ましい。ただし、非水電解液中の前記重合体の量が多すぎると、非水電解液の粘度が上昇してイオン伝導性が低下する虞がある。よって、非水電解液における前記重合体の濃度は、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、5質量%以下とすることが更に好ましい。
また、本発明の二次電池内部の電解質と接触し得る箇所(例えば、外装体の内壁)に、前記重合体を溶媒に溶解して調製した塗液を塗布し、乾燥するなどして、前記重合体の皮膜を形成しておいてもよい。この場合、前記皮膜が電解質(非水電解液)中に溶出して、電解質のイオン伝導度向上成分として作用したり、更に正極活物質表面に吸着して保護剤として作用したりする。
本発明の二次電池は、従来から知られている二次電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
磁性攪拌器、加熱油浴、滴下装置、冷却管および窒素導入口を備えた100mlの三つ口反応フラスコに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA203」)0.39g、およびジメチルアセトアミド(和光純薬工業社製)20mlを入れ、攪拌しながら油浴を100℃に加熱してポリビニルアルコールを溶解した。油浴を外して室温まで放冷した三つ口反応フラスコ内に、ピリジン4mlにヘキサフルオログルタル酸無水物3.1gを混合した溶液を滴下し、滴下終了後1時間撹拌を継続した。その後、三つ口反応フラスコ内に水70μlを加えて20分攪拌し、更に水酸化リチウム1水和物0.76gを加えて溶解した後、1N水酸化リチウム水溶液を当量まで加えた。
このようにして得られた三つ口反応フラスコ内の溶液をテトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)300mlに滴下して沈殿させ、回収した沈殿をテトラヒドロフランで洗浄後エタノール10mlを加えて溶解し、沈殿化を繰り返した。最終的に得られた沈殿を水に溶解した後凍結乾燥して重合体を得た。収率は40%であった。
得られた重合体は、主鎖がポリビニルアルコールの主鎖由来のものであり、また、前記一般式(1)で表されnが3でMがLiである構造部分と、前記構造部分と主鎖との間にエステル基とを含有するペンダント基を有するものである。更に、重合体に導入されたペンダント基の量は、主鎖を構成するビニルアルコール単位に対して約55モル%であった。また、前記重合体の数平均分子量は、約5万であった。
正極活物質であるコバルト酸リチウム系正極材料(比表面積0.2m/g):47質量部、導電助剤であるカーボン:1質量部、バインダであるPVDF:2質量部、エポキシシランカップリング剤(信越シリコーン社製「KBM−303」、最小被覆面積317m/g)0.03質量部、および前記重合体:0.1質量部を、NMPを溶媒として混合して正極合剤層形成用組成物を調製した。この正極合剤層形成用組成物を、厚みが15μmのアルミニウム箔の片面に、アルミニウム箔の露出部が一部に残るように塗布し、乾燥およびカレンダー処理を行い、更に120℃で一晩の真空加熱処理を行って、厚みが20〜25μmの正極合剤層を有する正極を得た。この正極を、所定のサイズに切断した後に、正極合剤層の一部をNMPにより除去して集電体の露出部を形成して、正極合剤層が存在する部分のサイズを25×40mmとし、更にその露出部にタブを取り付けた。
前記の正極と、黒鉛およびバインダ(SBRおよびCMC)を含有する負極合剤層を、集電体である銅箔の片面に有する負極(負極合剤層のサイズが27×42mm)とを、セパレータ(厚みが18μmのPE製多孔質膜)を介して重ねて積層電極体とした。そして、前記の積層電極体を2枚のラミネートフィルムで挟んで、両ラミネートフィルムの3辺を熱封止し、両ラミネートフィルムの残りの1辺から非水電解液(エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に、LiPFを溶解させた溶液)を注入した。その後、両ラミネートフィルムの前記残りの1辺を真空熱封止して、図1に示す外観で、図2に示す断面構造の非水二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
ここで、図1および図2について説明すると、図1は非水二次電池を模式的に表す平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。非水二次電池1は、2枚のラミネートフィルムで構成したラミネートフィルム外装体2内に、正極5と負極6とをセパレータ7を介して積層して構成した積層電極体と、非水電解液(図示しない)とを収容しており、ラミネートフィルム外装体2は、その外周部において、上下のラミネートフィルムを熱融着することにより封止されている。なお、図2では、図面が煩雑になることを避けるために、ラミネートフィルム外装体2を構成している各層、並びに正極5および負極6の各層を区別して示していない。
正極5は、電池1内でリード体を介して正極外部端子3と接続しており、また、図示していないが、負極6も、電池1内でリード体を介して負極外部端子4と接続している。そして、正極外部端子3および負極外部端子4は、外部の機器などと接続可能なように、片端側がラミネートフィルム外装体2の外側に引き出されている。
比較例1
前記重合体およびシランカップリング剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして調製した正極合剤層形成用組成物を使用し、実施例1と同様にして正極を作製した。そして、この正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
比較例2
前記シランカップリング剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして調製した正極合剤層形成用組成物を使用し、実施例1と同様にして正極を作製した。そして、この正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
実施例1および比較例1、2の非水二次電池について、以下の方法で充放電サイクル特性を評価した。各電池を15mAの電流値で4.4Vまで充電し、更に4.4Vの定電圧で充電する定電流−定電圧充電(総充電時間1時間)を行い、その後15mAの電流値で3.0Vまで放電する一連の操作を1サイクルとして、これらを400サイクル繰り返し、各サイクルでの放電容量を1サイクル目の放電容量で除した値を百分率で表して、各サイクルでの容量維持率を算出した。これらの結果を図3に示す。
図3から明らかなように、前記重合体およびカップリング剤を含有する正極合剤層形成用組成物を用いて形成した正極合剤層を有する正極を備えた実施例1の非水二次電池は、前記重合体を用いていない比較例1の電池に比べて、充放電約100サイクル以降の容量維持率が高く、容量劣化が小さい。これは、非水電解液溶媒(有機溶媒)中でのイオン解離性に優れ、かつ耐酸化性に優れる前記重合体がカップリング剤由来の鎖を介して活物質表面に安定に固定され、イオンの挿入、脱離を阻害することなく正極活物質を保護することで、正極と非水電解液との反応による非水電解液成分の分解、劣化が、サイクルを重ねても良好に抑制されたためであると推測される。また、実施例1の非水二次電池は、比較例2の電池に比べても約50サイクル以降の容量劣化が小さくなっている。このことから、カップリング剤の使用によって、これを使用しなかった場合よりも、より安定に活物質表面に重合体が固定され、その作用がより良好に発揮されたものと推測される。
1 二次電池(リチウムイオン二次電池)
2 ラミネートフィルム外装体
5 正極
6 負極
7 セパレータ

Claims (12)

  1. 正極、負極、セパレータおよび電解質を有する二次電池であって、
    前記正極または前記負極は、集電体の片面または両面に、活物質、カップリング剤、下記の重合体および溶媒を少なくとも含む合剤層形成用組成物を前記集電体に塗布し、乾燥する工程を経て形成された合剤層を有することを特徴とする二次電池。
    前記重合体は、複数のペンダント基を有しており、
    前記ペンダント基は、カルボキシル基またはその塩と、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基とで構成されており、
    前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、パーフルオロカーボン基であるか、炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されており、
    前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、前記炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しており、
    前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、または炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている場合には、前記炭化水素基の有する炭素のうち、少なくとも、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素には、フッ素が結合している。
  2. 重合体の有するペンダント基が、下記一般式(1)で表される構造部分を含有している請求項1に記載の二次電池。
    Figure 2014096304
    〔前記一般式(1)中、nは1〜20の整数であり、Mは水素、金属またはアンモニウムである。〕
  3. 重合体の主鎖が、炭化水素基で構成されているか、パーフルオロカーボン基で構成されているか、炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている請求項1または2に記載の二次電池。
  4. カップリング剤がシランカップリング剤である請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池。
  5. カップリング剤が、エポキシ基または酸無水物基を含有している請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池。
  6. 電解質が非水電解質である請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池。
  7. 正極、負極、セパレータおよび電解質を有する二次電池を製造する方法であって、
    集電体の片面または両面に、活物質、カップリング剤、下記の重合体および溶媒を少なくとも含む合剤層形成用組成物を前記集電体に塗布し、乾燥する工程を経て合剤層を形成して製造した前記正極または前記負極を使用することを特徴とする二次電池の製造方法。
    前記重合体は、複数のペンダント基を有しており、
    前記ペンダント基は、カルボキシル基またはその塩と、前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基とで構成されており、
    前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、パーフルオロカーボン基であるか、炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されており、
    前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素は、前記炭化水素基またはパーフルオロカーボン基の有する炭素と直接結合しており、
    前記カルボキシル基またはその塩と主鎖との間に介在する基が、炭化水素基であるか、または炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている場合には、前記炭化水素基の有する炭素のうち、少なくとも、前記カルボキシル基またはその塩の有するカルボニル炭素のα位またはβ位に位置する炭素には、フッ素が結合している。
  8. あらかじめカップリング剤で処理した活物質と、重合体とを用いて調製した合剤層形成用組成物を使用する請求項7に記載の二次電池の製造方法。
  9. 重合体の有するペンダント基が、下記一般式(1)で表される構造部分を含有している請求項7または8に記載の二次電池の製造方法。
    Figure 2014096304
    〔前記一般式(1)中、nは1〜20の整数であり、Mは水素、金属またはアンモニウムである。〕
  10. 重合体の主鎖が、炭化水素基で構成されているか、パーフルオロカーボン基で構成されているか、炭化水素基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されているか、またはパーフルオロカーボン基とエステル基およびカーボネート基のうちの少なくとも一方とで構成されている請求項7〜9のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
  11. カップリング剤がシランカップリング剤である請求項7〜10のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
  12. カップリング剤が、エポキシ基または酸無水物基を含有している請求項7〜11のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
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