JP2014092657A - マルチタッチディスプレイ用表面フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ディスプレイの視認性を損なうことなく、マルチタッチ操作での表面の触感に優れるマルチタッチディスプレイ用表面フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】マルチタッチディスプレイ用表面フィルムは、ヘーズが15〜50%であり、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した写像鮮明度が5〜50%であり、かつ表面の三次元算術平均粗さが0.15〜1μmである。また、表面の動摩擦係数は0.5〜2.5程度であってもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、マルチタッチ操作での表面の触感に優れるとともにディスプレイの視認性にも優れるマルチタッチディスプレイ用表面フィルムに関する。
マンマシンインターフェースとしての電子ディスプレイの進歩に伴い、対話型の入力システムが普及し、なかでもタッチパネル(座標入力装置)をディスプレイと一体化した装置がATM(現金自動受払機)、商品管理、アウトワーカー(外交、セールス)、案内表示、娯楽機器などで広く使用されている。特に、キーボードレスにでき、軽量化、薄型化できる点から、モバイル機器にタッチパネルを使用するケースが増えている。
タッチパネルは、指やスタイラスペンなどの入力手段で所定の位置をタッチすることにより、コンピューターなどに所定の情報を入力する装置である。近年では、タッチパネルの高機能化が進み、1箇所をタッチして情報を入力できるだけでなく、複数の箇所を同時にタッチして情報を入力できるマルチタッチディスプレイが開発され利用されている。マルチタッチディスプレイは、タップ(指で叩く動作)に加えて、フリック(指で弾く動作)、スワイプ(指で掃く動作)、ドラッグ(指を置いたまま移動する動作)、ピンチイン(二本の指の間隔を縮める動作)、ピンチアウト(二本の指の間隔を拡げる動作)などの様々なジェスチャーに対応しており、直感的な操作により情報を入力できる点で便利であるが、快適な操作のためにはディスプレイ上で指を滑らかにスライドできる必要があり、優れた触感が要求される。
ディスプレイ装置の表面フィルムとして、表面の触感を改善するため、ビーズを添加したフィルムが知られている。しかし、ビーズを添加すると、ある程度触感を向上できるものの、ヘーズが高くなりやすく、近年の高精細なタッチスクリーンには十分に適応できない。
なお、テレビディスプレイなどの表示装置に使用するフィルムとして、特開2001−281411号公報(特許文献1)には、透明支持体上に、少なくとも一層の防眩性ハードコート層と、この防眩性ハードコート層上に屈折率1.38〜1.49の低屈折率層を有しており、全ヘーズが3〜20%であり、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度が30〜70%である防眩性反射防止フィルムが開示されている。
また、特開2004−126495号公報(特許文献2)には、ポリマーと硬化性樹脂前駆体とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させ、スピノーダル分解により相分離構造を形成し、前記硬化性樹脂前駆体を硬化させることにより防眩層を形成した防眩性フィルムが開示されている。この文献には、防眩層が、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した透過像鮮明度が70〜100%程度であり、ヘーズが20〜50%程度であってもよいことが記載されている。
しかし、特許文献1及び2には、マルチタッチディスプレイの用途について何ら記載されていない。また、特許文献2に記載の防眩性フィルムは、低ヘーズであり、高鮮明性であるものの、表面の触感が十分ではない。
特開2001−281411号公報(特許請求の範囲) 特開2004−126495号公報(特許請求の範囲、段落[0011][0012])
従って、本発明の目的は、マルチタッチ操作での表面の触感に優れるとともにディスプレイの視認性にも優れるマルチタッチディスプレイ用表面フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、防眩性に優れたマルチタッチディスプレイ用表面フィルムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ギラツキや白ボケを抑制できるマルチタッチディスプレイ用表面フィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、1又は複数の熱可塑性ポリマーと硬化性樹脂と溶媒とを含む液状組成物を支持体に適用し、特定の条件で乾燥させることにより相分離構造を形成して硬化させることにより、表面の三次元算術平均粗さの大きいフィルムが得られること、このようなフィルムは、従来の発想からすると、ヘーズ及び写像鮮明度の点でディスプレイ用途として検討に値しないものであったが、意外にもディスプレイの視認性を損なうことなく、マルチタッチ操作での表面の触感を向上でき、マルチタッチディスプレイ用途に適していることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のフィルムは、マルチタッチディスプレイ用表面フィルムであり、表面に複数のポリマーの相分離構造による凹凸が形成されている。また、表面フィルムは、ヘーズが15〜50%(例えば、20〜40%)であり、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した写像鮮明度が5〜50%(例えば、5〜25%)であり、表面の三次元算術平均粗さが0.15〜1μmである。表面の動摩擦係数は0.5〜2.5程度であってもよい。本発明は、ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)とセルロース誘導体と硬化性樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3〜6官能(メタ)アクリレートなど)とを含む液相からの相分離により表面に凹凸が形成された表面フィルムを包含する。また、本発明は、上記表面フィルムを備えたマルチタッチディスプレイも包含する。
本発明では、マルチタッチ操作での表面の触感とディスプレイの視認性とを両立でき、マルチタッチディスプレイ用途に適している。また、本発明では、防眩性に優れ、ギラツキ、白ボケなどを抑制することができる。
図1は実施例1のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図2は実施例2のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図3は実施例3のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図4は実施例8のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図5は実施例9のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図6は比較例1のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図7は比較例2のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。 図8は比較例4のフィルムの粗さ曲線を示すグラフ及び表面構造を示す模式図である。
本発明のフィルムは、マルチタッチディスプレイ用表面フィルムであり、表面(視認側の面)に複数のポリマーの相分離構造による凹凸が形成されている。本発明では、ビーズ(又は粒子)の添加による凹凸とは異なり、ヘーズの増大を抑制しつつ、マルチタッチ操作での表面の触感を改善できる。
相分離構造は、複数のポリマー相の間で凹凸(又は段差)が形成される限り特に制限されず、核生成及び成長による相分離構造であってもよく、スピノーダル分解(乾式又は湿式スピノーダル分解など)による相分離構造であってもよい。また、相分離構造は、共連続相構造(又は網目構造)、液滴相構造(又は海島構造)、これらの相構造が混在した構造のいずれであってもよい。
共連続相構造では、少なくとも1つの連続相が部分的又は全体的に隆起して凸部を形成しており、通常、凹凸部が連続的に形成される。凸部は略同一の幅で延びていてもよく、途中部で幅が拡がったり狭まったりしてもよい。凸部の厚み方向の断面形状は特に制限されないが、半円状又は半楕円状である場合が多い。
液滴相構造は、連続相(マトリックス)に分散相(ドメイン)が分散した形態を有しており、通常、分散相が凸状に形成される。分散相の形態(内部での形態)としては、棒状、ループ状、球状、楕円体状などが例示できる。これらの形態のうち、触感の点から、球状、楕円体状(特に球状)が好ましい。分散相の平均径は、例えば、1〜200μm(例えば、10〜150μm)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μm程度である。分散相の分散形態は、特に制限されず、ランダムであってもよいが、面全体に均一な触感を付与できる点から、規則的又は周期的であるのが好ましい。分散相の平均相間距離(又は平均凸間距離Sm)は、例えば、10〜400μm(例えば、15〜300μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜100μm、好ましくは12〜80μm(例えば、15〜50μm)程度である。
上記相分離構造のうち、実質的に等方性であり、規則的又は周期的な相構造を容易に形成でき、触感を向上できる点から、スピノーダル分解(特に湿式スピノーダル分解)による相分離構造が好ましい。また、傾斜角度の大きな凹凸構造を形成でき、表面の触感及び耐擦過性を高める点から、少なくとも液滴相構造を含む相分離構造が好ましい。なお、相分離構造は、表面フィルムを顕微鏡(レーザー顕微鏡、電子顕微鏡など)で観察することにより分析できる。
表面フィルムは、ディスプレイとして最低限必要な光学的特性を有している。すなわち、表面フィルムのヘーズは、JIS K7105に準拠して、15〜50%の範囲から選択でき、例えば、16〜48%、好ましくは18〜45%、さらに好ましくは20〜42%(例えば、20〜40%)程度である。
表面フィルムの写像鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した場合、5〜50%の範囲から選択でき、例えば、5〜45%、好ましくは5〜40%(例えば、5〜35%)、さらに好ましくは5〜30%(例えば、5〜25%)程度である。
写像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度であり、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出できる。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。写像鮮明度Cは、光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mとから次式により定義される。
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
Cの値が100%に近づくほど、フィルムによる像のボケが小さくなる[参考文献;須賀、三田村、塗装技術、1985年7月号]。
表面フィルムは、上記ヘーズ及び写像鮮明度を有する限り、ディスプレイとして十分に利用できるが、他の光学的特性を有していてもよい。例えば、表面フィルムの全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは85%以上(例えば、85〜99%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、90〜98%)であってもよい。
このように、光学的特性が必ずしも最適化されておらず、ディスプレイ用途として検討に値しなかった表面フィルムが、意外にもマルチタッチ操作での触感に優れた表面特性を有しており、マルチタッチディスプレイ用途に適している。すなわち、表面フィルムの表面の三次元算術平均粗さ(Sa)は、0.15〜1μmの範囲から選択でき、例えば、0.16〜0.5μm、好ましくは0.17〜0.3μm(例えば、0.18〜0.25μm)程度である。Saが小さすぎると表面が滑らかになりすぎて触感が低下しやすく、Saが大きすぎると表面の凹凸にざらつきを感じ触感が低下しやすい。Saは、慣用の測定機、例えば、非接触表面・層断面形状計測機(例えば、(株)菱化システム製「VertScan」など)を用いて測定できる。
表面フィルムは、上記Saを有する限り、表面の触感を十分に改善できるが、さらに他の表面特性を有していてもよい。例えば、表面フィルムの静摩擦係数(μs)は、例えば、4以下(例えば、0.5〜3)、好ましくは0.6〜2(例えば、0.7〜1.5)、さらに好ましくは0.8〜1.3(例えば、0.9〜1.2)程度である。μsが大きすぎると、指のスライドを開始する際、指に負担がかかり過ぎる。また、表面フィルムの動摩擦係数(μk)は、例えば、3以下(例えば、0.5〜2.5)、好ましくは0.5〜2(例えば、0.6〜1.5)、さらに好ましくは0.6〜1.2(例えば、0.7〜1.1)程度である。μkが大きすぎると、指が引っ掛かりやすくなり、ピンチアウトなどのスライド操作を円滑に行うことができなくなる。静摩擦係数及び動摩擦係数は、後述の実施例の方法に従って測定できる。
表面フィルムの平均傾斜角度θaは、例えば、1.5〜4.5°、好ましくは2〜4°、さらに好ましくは2.5〜3.5°程度である。θaが小さすぎると防眩性が低下しやすく、θaが大きすぎると、表面のざらつきを感じて触感が低下しやすい。θaは、Saと同様、非接触表面・層断面形状計測機などを用いて測定できる。
表面フィルムの層構造は、特に制限されず、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。すなわち、表面フィルムは、特定のヘーズ、特定の写像鮮明度及び特定のSaを有する層(防眩層又は表面層)を含んでいればよく、これらの特性を損なわない限り、上記層[特に裏面(視認側の面とは反対の面)]には、任意の層[例えば、透明基材層、透明粘着層、透明導電層、ハードコート層、低屈折率層、アンチニュートンリング層、帯電防止層、衝撃吸収層(クッション層)など]を積層してもよい。
代表的な表面フィルムは、透明基材フィルムと、この透明基材フィルム上に形成した表面層とを備えている。透明基材フィルムの構成材料としては、ガラスなどの無機材料であってもよいが、成形性の点から、有機材料であってもよい。有機材料としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン(ポリプロピレン、環状ポリオレフィンを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレートなど)、ポリカーボネート、ポリイミド、セルロースエステル(セルローストリアセテートなど)などが例示できる。なお、有機材料で構成された透明基材フィルムは、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよい。また、透明基材フィルムは、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、耐熱安定剤など)、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
透明基材フィルムの厚みは、10μm〜1mm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度である。
表面フィルムの平均厚み(表面フィルムが積層形態の場合、防眩層又は表面層の平均厚み)は、例えば、1〜20μm、好ましくは2〜18μm、さらに好ましくは3〜15μm(例えば、5〜15μm)程度である。
表面フィルムの製造方法は、上記の相分離構造、光学的特性及び表面特性が得られる限り特に制限されず、例えば、1又は複数の熱可塑性ポリマーと硬化性樹脂(モノマー又はオリゴマー)とを相分離する工程と、硬化性樹脂を硬化して相分離構造を固定化する工程とを含んでいる。
相分離工程において、核生成及び成長を利用して相分離してもよいが、簡便に規則的又は周期的な相構造を形成でき、かつ表面に比較的大きな凹凸形状を形成できる点から、スピノーダル分解、特に湿式スピノーダル分解により相分離するのが好ましい。具体的には、1又は複数の熱可塑性ポリマーと硬化性樹脂と溶媒とを含む液状組成物を支持体(前記透明基材フィルム、剥離性支持体など)に塗布又は流延し、液状組成物中の溶媒を乾燥してもよい。
熱可塑性ポリマーとしては、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルエーテル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン(脂環式ポリオレフィンを含む)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、セルロース誘導体、シリコーン樹脂などが例示できる。なお、熱可塑性ポリマーは、軟質ポリマー(又はエラストマー)であってもよい。
熱可塑性ポリマーは単独で使用してもよいが、二種以上組み合わせて使用するのが好ましい。特に、防眩性の点から、互いに相分離可能な複数の熱可塑性ポリマーを使用するのが好ましい。複数の熱可塑性ポリマーは、半合成高分子である点で他の熱可塑性ポリマーや硬化性樹脂と溶解挙動が異なり、高い相分離性を有する点から、セルロース誘導体(以下、「第1のポリマー」と称する場合がある)を含んでいるのが好ましい。
セルロース誘導体としては、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機酸エステル;リン酸セルロース、硫酸セルロースなどの無機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混酸エステルなど)、セルロースカーバメート(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩など)などが例示できる。これらのセルロース誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロース誘導体のうち、セルロースエステル、特に、少なくともアセチル基を有するセルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3−4アシレートが好ましい。
セルロース誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、10,000〜100,000程度の範囲から選択でき、例えば、10,000〜50,000、好ましくは15,000〜40,000、さらに好ましくは20,000〜30,000程度であってもよい。
セルロース誘導体と併用する熱可塑性ポリマー(以下、「第2のポリマー」と称する場合がある)は、重合性基を有しない軟質ポリマーであってもよく、重合性基を末端又は側鎖に有するポリマーであってもよい。
重合性基を有しない軟質ポリマーは、適度な柔軟性を付与し表面の触感を向上できる。軟質ポリマー(又はエラストマー)としては、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)、シリコーン樹脂などが例示できる。これらの軟質ポリマーのうち、可撓性などの点から、ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)が好ましい。ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)は、ポリイソシアネート類と、ポリオール類と、必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。
ポリイソシアネート類としては、脂肪族ポリイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなど]、脂環族ポリイソシアネート[例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)など]、芳香族ポリイソシアネート[例えば、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなど]、これらのポリイソシアネートの誘導体(例えば、ダイマー、トリマーなどの多量体、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオンなど)などが例示できる。これらのポリイソシアネート類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネート類のうち、耐熱性や耐久性などの点から、無黄変性ジイソシアネート(例えば、HDIなどの脂肪族ジイソシアネート、IPDI、水添XDIなどの脂環族ジイソシアネートなど)又はその誘導体、特に、脂肪族ジイソシアネートのトリマー(イソシアヌレート環を有するトリマーなど)が好ましい。
ポリオール類は、低分子量ポリオール類とポリマーポリオール類とに分類できる。低分子量ポリオール類としては、脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのC2−12アルカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなど)、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類など)、芳香族ジオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノールAなどのビスフェノール類など)などが例示できる。
ポリオール類は、通常、柔軟性の点から、少なくともポリマーポリオール類を含んでいる。ポリマーポリオール類としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが例示できる。
ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカルボン酸(又はそのジアルキルエステル又はその無水物)とポリオールとの反応生成物、開始剤に対してラクトン類を開環付加重合させた反応生成物などであってもよい。
ポリカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)であってもよいが、安定性の点から、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6−20アルカンジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカンジカルボン酸など)が好ましい。ポリオールは、前記低分子量ポリオール類で例示した芳香族ジオール(又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)であってもよいが、安定性の点から、前記低分子量ポリオール類で例示した脂肪族ジオール(C2−12アルカンジオールなど)や脂環族ジオール(又はそのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)が好ましい。
ラクトン類としては、バレロラクトン、カプロラクトンなどのC3−10ラクトン(好ましくはC4−8ラクトン)などが例示できる。これらのラクトン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ラクトン類に対する開始剤としては、例えば、水、オキシラン化合物の開環重合体又は共重合体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2−4アルキレングリコール)、前記低分子量ポリオール類で例示したジオール、ジアミン(例えば、ヒドラジン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなど)などが例示できる。これらの開始剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリエーテルポリオールとしては、前記オキシラン化合物の開環重合体又は共重合体(ポリC2−4アルキレングリコールなど)、(水添)ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体、これらの組み合わせなどが例示できる。ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、前記ポリカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸など)と前記ポリエーテルポリオールとの反応生成物などが例示できる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコール(前記低分子量ポリオール類で例示した脂肪族ジオール、脂環族ジオール(又はそのアルキレンオキシド付加体)、芳香族ジオール(又はそのアルキレンオキシド付加体);ジエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなど)とカーボネート(ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなど)又はホスゲンとの反応生成物などが例示できる。
これらのポリマーポリオールのうち、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが汎用され、耐久性や柔軟性の点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが特に好ましい。
鎖伸長剤としては、前記ポリエステルポリオールの原料ポリオール(前記脂肪族ジオールなど)、前記ポリエステルポリオールの原料ラクトン類に対する開始剤で例示したジアミン(前記脂肪族ジアミンなど)、アルカノールアミン(ジエタノールアミンなど)などが例示できる。これらの鎖伸長剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖伸長剤のうち、アルカンジオール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのC2−6アルカンジオールなど)、アルカンジアミン(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2−6アルカンジアミン)などが汎用される。
ポリウレタンエラストマーは、通常、低分子量ポリオール類とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むハードセグメント(ハードブロック)と、ポリマーポリオール類(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなど)とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むソフトセグメント(ソフトブロック)とで構成されている。
ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)は、ポリマーポリオール類の種類に応じて、ポリエステル型、ポリエーテル型、ポリカーボネート型などに分類される。柔軟性や安定性などの点から、ポリエステル型やポリエーテル型(特に、無黄変性ジイソシアネートを用いたポリエステル型)が好ましい。
ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)はシリコーン成分で変性してもよい。例えば、シリコーン成分として、オルガノシロキサン単位[−Si(−R)−O−](基Rは、メチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基などを示す)を有するケイ素含有ポリオール(特にケイ素含有ジオール)を用いて、原料ポリイソシアネート類[又は未変性ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)の残存イソシアネート基]と反応させることにより変性できる。シリコーン成分の割合は、シリコーン変性ポリウレタンエラストマー(又はポリウレタン樹脂)全体に対して、例えば、60重量%以下の範囲から選択でき、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜30重量%(特に3〜20重量%)程度である。
軟質ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、−100℃〜100℃程度の範囲から選択でき、−80℃〜30℃、好ましくは−70℃〜0℃、さらに好ましくは−60℃〜−30℃程度である。Tgは示差走査熱量計を用いて測定できる。
重合性基を末端又は側鎖に有するポリマーは、硬化性樹脂と反応し、表面の耐擦過性などを向上できる。このようなポリマーとしては、例えば、反応性基を有するポリマー(i)と、このポリマーの反応性基に対する反応性基及び重合性基を有する化合物(ii)との反応生成物などであってもよい。
前記ポリマー(i)としては、カルボキシル基又は酸無水物基を有するポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、末端カルボキシル基を有するポリエステル又はポリアミド、ポリエステルポリオールを用いたポリウレタンなど)、ヒドロキシル基を有するポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合体、末端ヒドロキシル基を有するポリエステル又はポリウレタン、ヒドロキシC2−4アルキルセルロース、N−(ヒドロキシC1−4アルキル)アクリルアミド共重合体など)、イソシアネート基を有するポリマー(例えば、末端イソシアネート基を有するポリウレタン(又はウレタンオリゴマー)など)、アミノ基を有するポリマー(例えば、末端アミノ基を有するポリアミドなど)、エポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジル基を有するアクリル樹脂又はポリエステルなど)などが例示できる。また、前記ポリマー(i)としては、ポリオレフィンやポリスチレンなどのポリマーに、共重合やグラフト重合により、反応性基を導入したポリマーであってもよい。上記ポリマー(i)のうち、反応性基としてカルボキシル基又は酸無水物基、ヒドロキシル基、グリシジル基(特にカルボキシル基又は酸無水物基)を有するポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、前記共重合体は(メタ)アクリル酸を50モル%以上含有するのが好ましい。
前記化合物(ii)としては、エポキシ基を有するビニル化合物[例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシC3−8アルキル(メタ)アクリレート;エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニル(メタ)アクリレート;エポキシシクロヘキセニルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニルC1−4アルキル(メタ)アクリレート;アリルグリシジルエーテルなど]、ヒドロキシル基を有するビニル化合物[例えば、ヒドロキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート、C2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アミノ基を有するビニル化合物[例えば、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン;アミノスチレンなど]、イソシアネート基を有するビニル化合物[例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニルイソシアネートなど]、カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニル化合物[例えば、(メタ)アクリル酸やマレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物など]が例示できる。
前記ポリマー(i)の反応性基Rと前記化合物(ii)の反応性基Rとの組み合わせとしては、例えば、Rがカルボキシル基又は酸無水物基であるとき、Rはエポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などであり;Rがヒドロキシル基であるとき、Rはカルボキシル基又は酸無水物基、イソシアネート基などであり;Rがアミノ基であるとき、Rはカルボキシル又は酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基などであり;R1がエポキシ基であるとき、Rはカルボキシル基又は酸無水物基、アミノ基などである。例えば、Rがカルボキシル基又は酸無水物基であるとき、Rがエポキシ基である化合物、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
重合性基を末端又は側鎖に有するポリマーにおいて、重合性基の濃度は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
第2のポリマーの数平均分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、例えば、10,000〜500,000、好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜100,000程度であってもよい。
第1のポリマーと第2のポリマーとの重量割合は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5(例えば、20/80〜80/20)、さらに好ましくは10/90〜90/10(例えば、30/70〜70/30)程度の範囲から選択でき、通常、1/99〜40/60、好ましくは5/95〜35/65、さらに好ましくは10/90〜30/75(特に、15/85〜25/75)程度である。
硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー又はプレポリマー)としては、熱線や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより硬化又は架橋可能である限り特に制限されない。硬化性樹脂(光硬化性樹脂など)は、通常、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)や感光性基(シンナモイル基など)を有している。
モノマーとしては、単官能性モノマー[例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、橋架環式(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルエステル(酢酸ビニルなど)、ビニルピロリドンなど]、2官能性モノマー[例えば、アリル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど)、橋架環式ジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)など]、3個以上(例えば、3〜6個)の重合性基を有する多官能性モノマー[例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど]が例示できる。
重合性基を有するオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。耐擦傷性などの点から、1分子中に2以上(好ましくは2〜6程度)の重合性基を有する硬化性樹脂が好ましい。特に上記の光学的特性及び表面特性を得る点から、少なくとも多官能性モノマー[3〜6官能(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルカンポリオールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]が好ましく、上記多官能性モノマーと重合性基を有するオリゴマー[ウレタン(メタ)アクリレートなど]との組み合わせも好ましい。
硬化性樹脂の分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、例えば、5000以下(例えば、100〜5000)、好ましくは2000以下(例えば、150〜2000)、さらに好ましくは1000以下(例えば、200〜1000)程度である。
硬化性樹脂は開始剤と併用してもよい。開始剤(光重合開始剤など)としては、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類、これらの組み合わせなどが例示できる。開始剤の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。なお、開始剤は、必要により硬化促進剤[例えば、第三級アミン(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤など]と併用してもよい。
1又は複数の熱可塑性ポリマー(第1のポリマーと第2のポリマーとの合計など)と硬化性樹脂との重量割合は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、10/90〜70/30、好ましくは20/80〜60/40、さらに好ましくは30/70〜50/50程度である。
溶媒は、用いるポリマーの種類及び溶解性に応じて選択でき、例えば、水、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、セロソルブ類、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。なお、混合溶媒の場合、少なくとも1種類の溶媒は溶質(複数のポリマー、開始剤など)を均一に溶解できる溶媒であればよい。
溶媒の沸点(常圧での沸点)は、例えば、50〜150℃、好ましくは55〜120℃(例えば、60〜100℃)、さらに好ましくは65〜95℃(例えば、70〜90℃)程度である。
液状組成物は、必要に応じて、慣用の添加剤(前記透明基材フィルムで例示した添加剤など)を含んでいてもよい。本発明では、表面の触感を向上させるため、液状組成物は、可視光波長より大きな粒子(又はビーズ)を実質的に含まないのが好ましい。
液状組成物の溶質の濃度は、例えば、5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%程度である。
液状組成物の乾燥工程において、乾燥温度は、溶媒の種類に応じて選択でき、例えば、40〜100℃、好ましくは45〜90℃、さらに好ましくは50〜80℃程度である。乾燥時間は、例えば、5秒〜10分、好ましくは10秒〜5分、さらに好ましくは20秒〜2分程度である。なお、液状組成物を支持体に塗布又は流延した後、直ぐに上記乾燥温度で乾燥してもよいが、ゆっくりと相分離を進行させて大きな凹凸構造を形成する点から、室温(例えば、10〜35℃、好ましくは20〜30℃程度)で所定時間(例えば、3秒〜1分間、好ましくは4〜30秒間、さらに好ましくは5〜15秒間程度)放置した後、上記乾燥温度で乾燥するのが好ましい。乾燥後の塗膜の平均厚みは、例えば、1〜25μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは5〜15μm程度である。
液相からのポリマーの相分離では、相分離の進行に伴って共連続相構造が形成され、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)、液滴相構造を形成できる。
相分離構造の固定化工程において、硬化方法は、硬化性樹脂の種類に応じて選択でき、例えば、熱線や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)により硬化する方法であってもよい。通常、紫外線や電子線などの光照射、操作の簡便性の点から、紫外線照射により硬化する方法が汎用される。紫外線の照射量は、例えば、150〜500mJ/cm、好ましくは200〜450mJ/cm、さらに好ましくは250〜400mJ/cm程度である。なお、光照射は、空気中で行ってもよく、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
本発明のフィルムはマルチタッチディスプレイの表面フィルムとして利用できる。マルチタッチディスプレイは、位置検出方法に応じて、抵抗膜式、静電容量式などであってもよいが、応答性の点から静電容量式(投影型静電容量式など)であってもよい。マルチタッチディスプレイは、上記表面フィルムを備えていればよく、通常、表示層[液晶表示素子(LCD)モジュールなど]と、この表示層に積層された透明導電層と、この透明導電層に積層され、かつ上記表面フィルムで構成された表面層とを備えている。なお、表示層(又は表面層)と透明導電層との間には、ハードコート層やガラス板を介在させてもよい。また、各層の積層方法は、特に制限されず、通常、透明両面粘着シート[OCA(Optical Clear Adhesive)テープなど]を介して各層を接着させる場合が多い。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例のフィルムの原料及び物性の評価方法は、以下の通りである。
[原料]
ウレタンプレポリマー:大日精化工業(株)製、ダイアロマーSP−3035
ACA:(株)ダイセル製、サイクロマーP(ACA)Z321M、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させたアクリル樹脂、溶剤として1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)を含有、固形分40重量%
CAP1:イーストマン社製、CAP 482−0.5、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン換算数平均分子量25,000
CAP2:イーストマン社製、CAP 482−20、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン換算数平均分子量75,000
DPHA:ダイセル・サイテック(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
PETIA:ダイセル・サイテック(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレート
TMPTA:ダイセル・サイテック(株)製、トリメチロールプロパントリアクリレート
EB7100:ダイセル・サイテック(株)製、多官能アクリル系UV硬化モノマー
Z7501:JSR(株)製、デソライトZ7501、ナノシリカ粒子を含む多官能アクリル系UV硬化モノマー
U15HA:新中村化学工業(株)製、ウレタンアクリレート
開始剤1:BASF社製、イルガキュア(Irgacure)184
開始剤2:BASF社製、イルガキュア(Irgacure)907
ビーズ:東洋紡績(株)製、FH−S005(平均粒子径5μm)、FH−S010(平均粒子径10μm)、FH−015(平均粒子径15μm)
[ヘーズ及び全光線透過率]
ヘーズ及び全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色(株)製、NDH−5000W)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
[写像鮮明度]
写像鮮明度は、写像性測定器(スガ試験機(株)製、ICM−1DP)を用いて測定した。
[防眩性]
防眩性の判定は、ルーバーの無いむきだしの蛍光灯を、実施例及び比較例のフィルムに写し、その正反射光の眩しさを目視にて以下の基準に従って評価した。
○…眩しさを感じない
△…眩しさを僅かに感じる
×…眩しさが感じられる。
[ギラツキ]
ギラツキの判定は、150ppiの解像度を有する液晶用カラーフィルター上に、実施例及び比較例のフィルムを配設し、バックライトを照射し、目視にて以下の基準に従って評価した。
○…ギラツキが感じられない
△…ギラツキが僅かに感じられる
×…ギラツキが感じられる。
[白ボケ]
白ボケの判定は、150ppiの解像度を有する液晶用カラーフィルター上に、実施例及び比較例のフィルムを配設し、バックライトを照射し、目視にて以下の基準に従って評価した。
○…黒表示が鮮明に見える
△…黒表示が白味がかって見える
×…黒表示が白く見える。
[表面平均粗さSa、平均凸間距離Sm及び平均傾斜角度θa]
Sa、Sm及びθaは、(株)菱化システム製「VertScan」を用いて測定した。なお、対物レンズは、50倍のレンズを用いて、視野253μm×189μmで観察を行った。
[バイオスキン−サンプル摩擦係数]
実施例及び比較例のフィルムの摩擦力を、静・動摩擦測定器(トリニティーラボ社製「ハンディートライボマスターTL201Ts」)を用いて、荷重50g、速度20mm/秒の測定条件で測定した。なお、接触子として、5mm厚のスポンジシート(セメダイン社製「すきま用テープN−1」)に人工皮膚(ビューラックス社製「バイオスキン」)を貼り付けた接触子を使用した。得られた摩擦力から、静摩擦係数μs、平均摩擦係数μk、標準偏差を算出した。
[触感]
10名の被験者が、それぞれ実施例及び比較例のフィルムを指で強く押して左右に擦ったとき又はピンチイン/ピンチアウトの操作を行ったときの触感及び引っ掛かりの有無を以下の基準で評価し、10名の被験者の官能評価の平均により触感を評価した。
5…いずれの操作でも引っ掛かりがなく、触感が良い
4…触感が良いが、時々引っ掛かりを感じる
3…少し引っ掛かりを感じる
2…引っ掛かりを感じ、触感が悪い
1…引っ掛かりや凹凸を感じ、触感が悪い。
実施例1〜2及び比較例1〜6
表1に示す成分を、表1に示す割合になるように秤量し、遮光瓶に入れ混合した。この溶液を、所定のワイヤーバーを用いてPETフィルム(東洋紡績(株)製、A4300、厚さ125μm)上に流延した後、室温中で10秒間放置し、所定温度に調整した防爆オーブンにて所定時間乾燥し、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)から照射量300mJ/cmで紫外線を約9秒間照射することにより硬化処理し、フィルムを作製した。
実施例3〜9
表1に示す成分を、表1に示す割合になるように秤量し、遮光瓶に入れ混合した。なお、アクリル樹脂とセルロースアセテートプロピオネートとは非相溶であり、上記溶液は濃縮とともに相分離性を示す。上記溶液を、所定のワイヤーバーを用いてトリアセチルセルロースフィルム上に流延した後、室温中で5秒間放置し、所定温度に調整した防爆オーブンにて所定時間乾燥することにより、相分離構造を形成し、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)から照射量300mJ/cmで紫外線を約9秒間照射することにより硬化処理し、フィルムを作製した。
実施例及び比較例のフィルムの評価結果を表2に示す。また、実施例1〜3、8〜9及び比較例1〜2、4のフィルムの粗さ曲線及び表面構造を図1〜8に示す。
表2から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、マルチタッチ操作での表面の触感に優れるとともに、防眩性にも優れ、ギラツキ、白ボケを抑制できる。また、図1〜8から明らかなように、実施例では、比較例と異なり、断面高さが高く、かつ平均傾斜角度の大きな凸部が比較的小さい間隔で形成されている。このような表面構造の違いにより、実施例では、ディスプレイの視認性を損なうことなく、表面の触感を大きく改善できる。
本発明のフィルムは、マルチタッチ操作での表面の触感に優れているため、マルチタッチディスプレイ(例えば、静電容量式、抵抗膜式などのタッチパネル付き表示装置)用表面フィルムとして好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 表面に複数のポリマーの相分離構造による凹凸が形成されたマルチタッチディスプレイ用表面フィルムであって、ヘーズが15〜50%であり、0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した写像鮮明度が5〜50%であり、表面の三次元算術平均粗さが0.15〜1μmである表面フィルム。
  2. ヘーズが20〜40%であり、かつ0.5mm幅の光学櫛を用いた写像性測定器で測定した写像鮮明度が5〜25%である請求項1記載の表面フィルム。
  3. 表面の動摩擦係数が0.5〜2.5である請求項1又は2記載の表面フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の表面フィルムを備えたマルチタッチディスプレイ。
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