以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
本実施形態は、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像機能を備えた電子機器に配設されるレンズ鏡枠に本発明を適用したものである。本実施形態では一例として、図1に示すように、レンズ鏡枠1は、CCDやCMOSセンサ等の撮像素子2を有してなるカメラ101内に配設されている。
カメラ101は、本実施形態では一例として、箱形状の筐体102内に、レンズ鏡枠1、制御装置103、及び電源電池を収容する図示しない電池収容室を有して構成されている。制御装置103は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、補助記憶装置、入出力装置及び電力制御装置等を具備して構成されており、カメラ101の動作を、所定のプログラムに基づいて制御する構成を有している。レンズ鏡枠1、制御装置103及び電源電池は、電気的に接続される。
制御装置103は、撮像素子2の動作の制御、及び撮像素子2から出力される信号に基づく画像の生成、が可能に構成されている。また、制御装置103は、レンズ鏡枠1が備える電動モータ、電磁ソレノイド等のアクチュエータや、フォトインタラプタ、ホール素子等のセンサに電気的に接続されている。
レンズ鏡枠1が備えるアクチュエータの数や形態は特に限定されるものではないが、アクチュエータは、レンズ鏡枠1が保持するレンズや撮像素子2を移動させるためのものや、絞り、シャッター、NDフィルタ等を駆動するためのもの等、レンズ鏡枠1の仕様に応じて適宜に設けられる。センサは、これらのアクチュエータの動作を制御するために配設されるものである。
カメラ101の筐体102の前面には、内部に配設されたレンズ鏡枠1の最も物体側のレンズに光束を導くための窓状の開口部102aや閃光発光装置104等が設けられている。本実施形態では、開口部102aには、レンズを保護するための透明なガラスが設けられている。なお、カメラ101は、レンズ鏡枠1の非撮影時に開口部102aを遮蔽するバリア装置を有する形態であってもよい。
筐体102の上面部にはレリーズスイッチ105、電源操作スイッチ106等の操作部材が配設されている。また、図示しないが筐体102の側面部又は底面部には電池収容室を開閉するための蓋が設けられている。
また、筐体102の背面部には、例えばレバースイッチ、ダイヤルスイッチ、ボタンスイッチ、タッチセンサ等の、カメラ101の動作指示を使用者が入力する入力するための操作部材が設けられている。また、筐体102の背面には、液晶表示装置又はEL表示装置等からなり画像を表示し出力する画像表示装置が設けられている。
レンズ鏡枠1の構成について以下に説明する。本実施形態では一例として、レンズ鏡枠2は、被写体像を結像するためのレンズ等の撮像光学系部材と撮像素子2を保持するように構成されている。なお、レンズ鏡枠2は、撮像素子2を保持しない形態であってもよい。また、レンズ鏡枠2は、カメラ101に対して着脱可能な形態であってもよい。
レンズ鏡枠1が保持する撮像光学系部材は、一例としてプリズム3を含んでおり、プリズム3によって光軸を屈曲させる、いわゆる屈曲光学系等と称される形態を有している。本実施形態のレンズ鏡枠1ではカメラ101の被写体に面する側(前方)から入射する光を、プリズム3によって略90度屈曲させる構成を有する。
以下の説明では、撮像光学系部材において、被写体からプリズム3に入射し、プリズム3の反射面に至るまでの光軸を第1光軸O1と称し、プリズム3の反射面から撮像素子2に至る光軸を第2光軸O2と称するものとする。
また、本実施形態の撮像光学系部材は、図2に示すように、プリズム3を含み、位置が固定された第1レンズ群と、第2光軸O2に沿って移動することにより、撮影倍率の変更及び合焦距離の変更を実現するための3つのレンズ群である、第2レンズ群4、第3レンズ群5及び第4レンズ群6と、を有して構成されている。第1レンズ群は、例えば、プリズム3とレンズが接合された形態であってもよいし、プリズム3とレンズが離間した形態であってもよい。なお、撮像光学系部材の形態は本実施形態に限られるものではなく、プリズムを有さない形態のものであってもよい。また、撮像光学系部材は、光軸に沿って移動する単一のレンズ群を有する形態であってもよい。
レンズ鏡枠1は、固定枠10、第1移動枠20、第2移動枠30、第3移動枠40、シャッター駆動機構部50、及び撮像素子保持部60を含んで構成されている。
固定枠10は、レンズ鏡枠1を構成する他の部材を所定の位置に保持する基部となる部材である。固定枠10は、図示しない保持機構によって、カメラ101の筐体102に対して所定の位置に保持されるように構成されている。また、固定枠10は、プリズム3を含む第1レンズ群を保持している。なお、固定枠10は、単一の部材からなる形態であってもよいし、複数の部材が組み合わされてなる形態であってもよい。
第1移動枠20、第2移動枠30及び第3移動枠40は、それぞれ第2レンズ群4、第3レンズ群5及び第4レンズ群6を保持し、第2光軸O2に沿って独立して移動可能に構成された枠部材である。第1移動枠20、第2移動枠30及び第3移動枠40は、レンズ鏡枠1内に配設された複数の電動モータによって駆動される。電動モータは、それぞれ制御装置103に電気的に接続されている。なお、第1移動枠20及び第1移動枠20を駆動する機構の詳細については後述する。
シャッター駆動機構部50は、第1移動枠20及び第2移動枠30の間に配設されており、第2光軸O2に沿う光路を開放または遮蔽することによって撮像素子2の露光時間を機械的に制御可能に構成されている。シャッター駆動機構部50は、固定枠10に固定されている。なお、シャッター駆動機構部50は、絞り機構を備える形態であってもよいし、光路上にNDフィルタを進退させる機構を備える形態であってもよい。また、シャッター駆動機構部50は、第1移動枠20または第2移動枠30に固定され、光軸O2に沿って移動可能な形態であってもよい。
撮像素子移動機構部60は、撮像素子2を第2光軸O2に直交する平面に沿って移動可能に保持する機構部である。撮像素子移動機構部60は、例えば制御装置103に設けられた加速度センサやジャイロスコープ等によって検出されたレンズ鏡枠1の移動に応じて撮像素子2を移動させることによって露光中の像のブレを防止する、ブレ補正機能を実現するためのものである。
撮像素子移動機構部60の構成は、一般にイメージセンサシフト方式のブレ補正機構と称される周知のものと同様であり、詳細な説明は省略するものとする。なお、レンズ鏡枠1は、撮像素子移動機構部60を備えない形態であってもよい。また、レンズ鏡枠1は、光学系部材の一部を移動させることによって露光中の像のブレを防止する、いわゆるレンズシフト方式のブレ補正機構を備える形態であってもよい。
以下に、第1移動枠20及び第1移動枠20を駆動する機構の詳細な構成について説明する。
第2群レンズ4を保持する第1移動枠20は、固定枠10に固定された第1案内軸11及び第2案内軸12に沿って摺動可能に構成されている。図3から図5に示すように、第1案内軸11は、断面が円形の丸軸状の部材であり、中心軸が第2光軸O2と略平行となるように配設されている。
移動レンズ保持枠である第1移動枠20には、第1案内軸11が挿通される貫通孔である摺動孔22が穿設されている。摺動孔22は、第1案内軸11の外周に所定の隙間を有して嵌合する内径を有している。すなわち、第1案内軸11と摺動孔22とは、いわゆるすきま嵌めの関係を有している。
第1案内軸11と摺動孔22との嵌合によって、第1案内軸11に対する第1移動枠20の径方向の移動、及び第1案内軸11に直交する軸周りの倒れ方向の移動が規制される。言い換えれば、第1移動枠20の摺動孔22に第1案内軸11挿入された状態においては、第1移動枠20は、第1案内軸11に対して、第1案内軸11の軸方向の移動、及び案内軸11周りの回動が可能な状態である。
第1移動枠20の第1案内軸11周りの回動は、次に述べる第1移動枠20の挟持部23と第2案内軸12との嵌合によって規制される。
第2案内軸12は、第1案内軸11に対して第2光軸O2を挟む位置に配設されている。第2案内軸12は、第2光軸O2に直交する平面による断面が凸形状であり、第2光軸O2に対して略平行に延在するレール状の部材である。より詳しくは、第2案内軸12は、固定枠10に一体に成形された部位であり、固定枠10の内面から、第2光軸O2に向かって突出している。第2案内軸12は、略一定の幅で第2光軸O2と略平行に延在している。
第1移動枠20には、第2案内軸12に対して第2案内軸12を幅方向に挟持するように嵌合する挟持部23が設けられている。挟持部23は、第2案内軸12に対して所定の隙間を有して嵌合するU字状の溝形状の部位である。挟持部23は、第2案内軸12の長手方向に沿って摺動可能である。
挟持部23と第2案内軸12との嵌合によって、第1移動枠20の第1案内軸11周りの回動が規制される。なお、第2案内軸12は、第1案内軸11と同様の丸軸状の部材からなり、第1案内軸11と略平行に配設される形態であってもよい。
第1移動枠20には、第1移動枠20が、第1案内軸11及び第2案内軸12に嵌合した状態において、第2レンズ群4を第2光軸O2上に保持する、レンズ保持枠23が設けられている。レンズ保持枠23は、第2光軸O2を略中心軸とした貫通孔を有しており、該貫通孔内において第2レンズ群4を保持する。
また、第1移動枠20には、コイルバネである付勢部材13の一端を係止するフック状の係止部27が形成されている。図2に示すように、付勢部材13の他端は、固定枠10に形成されたフック状の係止部14に係止される。固定枠10の係止部14は、第1移動枠20の係止部27よりも撮像素子2に近い位置に設けられている。付勢部材13は、いわゆる引っ張りコイルバネであり、第1移動枠20が第1案内軸11に沿って摺動する範囲全体において、常に第1移動枠20を撮像素子2側(像側)に向かって付勢する力を生じるように構成されている。
以上のように、第1移動枠20は、第2レンズ群4を保持し、固定枠10に固定された第2光軸O2と略平行な第1案内軸11及び第2案内軸12に沿って摺動可能に配設されている。また、第1移動枠20は、付勢部材13によって、常に第2光軸O2の像側に向かって付勢されている。そして、この第1移動枠20は、次に述べる電動モータ71を含む駆動部70によって駆動される。
駆動部70は、図4に示すように、回転する出力軸を有する電動モータ71、電動モータ71の出力軸とともに回動可能に設けられた雄ネジであるスクリュー72、スクリュー72に螺合する雌ネジ部73aを有するナット73、及び電動モータ71とスクリュー72を支持する支持部74を有して構成されている。
電動モータ71及びスクリュー72は、支持部74を介して固定部10に固定されている。電動モータ71及びスクリュー72は、第1案内軸11の近傍において、回転軸が第1案内軸11と略平行となるように配設されている。図4及び図5に示すように、第1移動枠20には、スクリュー72との干渉を避けるための切り欠き部24が形成されている。
雄ネジであるスクリュー72には、ナット73の雌ネジ部73aが螺合している。ナット73は、スクリュー72との相対的な回転に伴いスクリュー72の回転軸に沿って移動可能である。ナット73は、スクリュー72に螺合した状態において、第1移動枠20に対して第2光軸O2の像側から接する位置に配設されている。具体的には、第1移動枠20には、第2光軸O2に対して略直交し、かつ第2光軸O2の像側に向かって面する平面からなる部位である当接面25が形成されている。当接面25は、切り欠き部24の近傍に形成されている。そして、ナット73は、この当接面25に、第2光軸O2の像側から当接するように配設されている。
ここで、付勢部材13は第1移動枠20を第2光軸O2の像側に向かって付勢するように配設されていることから、第1移動枠20は、付勢部材13の付勢力によって、常にナット73と当接面25において接した状態となる。すなわち、付勢部材13は、第1移動枠20をナット73に向かって押し付ける力を生ずるように構成された部材である。
ナット73は、雌ネジ部73aが形成された本体部から、雌ネジ部73aの中心軸に対して径方向外側に向かって延出する突出部73bを有している。すなわち、突出部73bは、雌ネジ部73aの中心軸に対して略直交する軸に沿って延出している。突出部73bは、詳しくは後述するが、第1移動枠20に形成された略溝形状の係合部26と係合することによって、ナット73の第1移動枠20に対するスクリュー72の回転軸周りの相対的な回動を規制する(阻止する)ように構成された部位である。
そして、ナット73の第1移動枠20に対するスクリュー72の回転軸周りの相対的な回動が規制されることによって、スクリュー72が電動モータ71によって回転駆動された場合には、ナット73はスクリュー72の回転軸方向に移動する。すなわち、電動モータ71によって回転駆動されるスクリュー72の回転に伴い、ナット73は第2光軸O2と略平行な方向に移動する。上述したように、第1移動枠20は、付勢部材13によってナット73に向かって押し付けられていることから、第1移動枠20は、ナット73と共に第2光軸O2と略平行な方向に移動する。
次に、ナット73と、第1移動枠20のナット73に接する部位である係合部26及び当接面25の詳細について説明する。
まず、ナット73の突出部73bと、第1移動枠20の係合部26とが係合する構成について説明する。
図6及び図8に示すように、ナット73の突出部73bの両側面には、突出部73bから突出する突起状の部位である第1凸部73cが形成されている。また、第1凸部73cは、先端部が略半円形状の断面を有する細長の凸形状部、又は先端部が略球形状の凸形状部である。
より詳細には、一対の凸部73cは、雌ネジ部73bの中心軸C及び突出部73bの延出方向に沿った軸Aを含む平面に略直交する軸Bに沿って両方向に突出している。すなわち、図8に示すように、第2光軸O2に沿う方向から見た場合(雌ネジ部73bの中心軸Cに沿う方向から見た場合)において、第1凸部73cは、突出部73bの延出軸Aに対して略直交する軸B上の両方向に突出している。
ここで、一対の第1凸部73cが配設される軸Bは、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第1案内軸11の断面を通過する位置に定められている。より好ましくは、一対の第1凸部73cが配設される軸Bは、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第1案内軸11の中心軸Dを通過もしくは中心軸Dの近傍を通過する位置に定められる。
第1移動枠20に設けられた係合部26は、ナット73に対して、突出部73bの両側面に設けられた第1凸部73cにおいて接触することによって、第1移動枠20に対するナット73の雌ネジ部73bの中心軸C周りの相対的な回転を規制するように構成されている。
より詳細には、図8に示すように、係合部26は、内部にナット73の突出部73bが収まる溝形状の部位である。そして、該溝形状の係合部26の両側壁部は、互いに略平行であり、かつナット73の雌ネジ部73aの中心軸Cに略平行な平面状である。そして、係合部26の両側壁部の離間距離は、突出部73bを所定の隙間を有した状態または隙間の無い状態で挟持するように設定されている。ここで、突出部73bは、両側面に第1凸部73cが設けられていることから、係合部26の両側壁部は、突出部73bの第1凸部73cと接触する。
言い換えれば、係合部26にナット73の突出部73bが係合した状態においては、係合部26の両側壁部と突出部73bの延出軸Aとが略平行な関係となる。そして、突出部73bは、第1凸部73cの部位において、係合部26の両側壁部によって挟持される。
このように、雌ネジ部73aの中心軸Cに略平行となるように配設された2平面からなる係合部26によって突出部73bが挟持されることにより、ナット73の雌ネジ部73bの中心軸C周りの第1移動枠20に対する相対的な回転が規制される。そして、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、一対の第1凸部73cと係合部26との接触点は、第1案内軸11の断面を通過する直線である軸B上に配設されている。さらに言い換えるならば、第2光軸O2に略直交する平面による断面において、一対の第1凸部73cと係合部26とは、第1案内軸11の断面を通過する直線である軸B上において点状に接している。
次に、ナット73と、第1移動枠20の当接面25とが接触する構成について説明する。
図6及び図7に示すように、ナット73の当接面25に対向する面は、雌ネジ部73aに略直交する平面として形成されている。そして、このナット73の当接面25に対向する面には、先端部が略球形状である複数の第2凸部73dが配設されている。複数の第2凸部73dの先端は、雌ネジ部73aに略直交する同一平面上に位置している。
ナット73は、この複数の第2凸部73dにおいて、第1移動枠20の当接面25と接触する。そして、第2光軸O2に沿う方向から見た場合(雌ネジ部73bの中心軸Cに沿う方向から見た場合)において、この複数の第2凸部73dと当接面25との接触点の分布の重心Gが、第1案内軸11の断面を通過する直線である軸B上または軸Bの近傍に位置するように、複数の第2凸部73dが配設されている。より好ましくは、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、複数の第2凸部73dと当接面25との接触点の分布の重心Gは、第1案内軸11の中心軸Dを通過する直線である軸B上に位置する。
第2凸部73dの数は、2つ以上であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、図6に示すように、3つの第2凸部73dがナット73の当接面25に対向する面上に配設されている。より具体的には、1つの第2凸部73dが、突出部73bの先端部に配設されており、他の2つの第2凸部73dがナット73の雌ネジ部73aの近傍に配設されている。
そして、図8に示すように、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第2凸部73dと当接面25との3つの接触点の分布の中心Gが、第1案内軸11の断面を通過する直線である軸B上に位置している。より具体的には、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、3つの第2凸部73dは、突出部73の延出方向に沿った軸Aと第1案内軸11の断面を通過する直線である軸Bとの交点上を重心とした略正三角形の頂点となる位置にそれぞれ配設されている。言い換えるならば、本実施形態においては、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第2凸部73dと当接面25との3つの接触点の分布の中心Gは、一対の第1凸部73cと係合部26との2つの接触点の略中心に位置している。
以上に説明したように、本実施形態のレンズ鏡枠1は、第2光軸O2に略平行に配設された第1案内軸11に沿って摺動し、第2レンズ群4を保持する第1移動枠20と、前記第1移動枠20を、スクリュー72の回転に伴って進退移動可能であって、第1移動枠20に当接するナット73を有してなる駆動部70と、を具備して構成されている。ナット73は、雌ネジ部73aの径方向外側に向かって延出する突出部73bを有し、この突出部73bが第1移動枠20に設けられた係合部26によって、突出部73bの延出方向(軸A)とは直交する方向から挟持されることによって、ナット73の第1移動枠20に対するスクリュー72の回転軸(軸C)周りの相対的な回転が規制されている。そして、本実施形態においては、この第1移動枠20の係合部26とナット73の突出部73bとは、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第1案内軸11の断面を通過し、かつ突出部73bの延出方向(軸A)と直交する直線(軸B)上において接触している。
このような構成を有する本実施形態においては、スクリュー72とナット73の雌ネジ部73aとの間の摩擦抵抗に起因する、スクリュー72の回転時にナット73を第1移動枠20に対して軸C周りに相対的に回転させようとする力F1は、突出部73bの一対の第1凸部73cのいずれかを介して係合部26に入力される。この力F1は、ナット73の第1移動枠20に対する軸C周りの相対的な回転を阻止するために第1移動枠20にかかる力であると称することができる。
ここで、前述のように、係合部26と突出部73bとの接触点は、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、第1案内軸11の断面を通過し、かつ突出部73bの延出方向(軸A)と直交する直線(軸B)上に位置していることから、前記ナット73の第1移動枠20に対する相対回転を阻止するための力F1は、第1移動枠20に対して、第1案内軸11に向かう方向(軸Bに沿う方向)に入力される。すなわち、前記力F1のベクトルは、第1案内軸11と交差する。
このため、ナット73の第1移動枠20に対する相対回転を阻止するための力F1による、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントは発生しない、もしくは当該モーメントを抑制することができる。特に、図8に示すように、軸Bが第1案内軸11の中心軸Dを通過する場合には、力F1が第1移動枠に入力されることよる、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントは発生しない。
このため、本実施形態のレンズ鏡枠1においては、スクリュー72の回転し始めや、回転速度の変更時等において力F1の強さが変化する場合や、スクリュー72の回転方向を逆転して力F1の向きが反対になる場合であっても、力F1が第1移動枠に入力されることよる、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントが皆無もしくは微少であることから、第2レンズ群4の駆動時における第2レンズ群4の揺れを抑制することができる。
また、このように、駆動部70による第2レンズ群4の駆動時において、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントを皆無もしくは微少なものとすることが可能となることによって、第1移動枠20の第1案内軸11周りの回動を規制するための、挟持部23と第2案内軸12との嵌め合いを比較的緩いものとすることができ、摺動抵抗の低減や、許容寸法精度の緩和によるコスト削減も実現される。
さらに、本実施形態のレンズ鏡枠1では、移動枠20には、付勢部材13の付勢力によってナット73に当接する部位に、第2光軸O2と略直交する平面からなる当接面25が形成されており、ナット73は、先端が略球形状の複数の第2凸部73dにおいて第1移動枠20に接触し、第1移動枠20を第2光軸O2に沿う方向に押圧するように構成されている。すなわち、第2レンズ群4の駆動時における、第1移動枠20とナット73との間における、第2光軸O2に沿う方向についての力の伝達は、当接面25と複数の第2凸部73dとの複数の接触点において行われる。
実際のレンズ鏡枠1においては、スクリュー72には微少な曲がりや偏心が有り、ナット73の雌ネジ部73aの中心軸Cの位置は、第1移動枠20に対して変動する。このため、第2レンズ群4の駆動時には、ナット73の第1移動枠20に対する相対位置の変化が生じ、第1移動枠20とナット73との間の摩擦抵抗に起因して第1移動枠20には力F2が入力される。このナット73の第1移動枠20に対する相対位置の変化によって生じる力F2の入力は、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させる原因となり得る。
ここで、本実施形態では、第1移動枠20とナット73との接触を、平面と略球形状との点接触とすることによって、第1移動枠20とナット73との間の摩擦抵抗を微少なものとしていることから、ナット73の第1移動枠20に対する相対位置の変化によって第1移動枠20に入力される力F2は極めて弱くなる。
また加えて、本実施形態では、第2光軸O2に沿う方向から見た場合において、当接面25と複数の第2凸部73dとの複数の接触点の分布の重心Gが、第1案内軸11の断面を通過する直線(軸B)上に位置している。当接面25と複数の第2凸部73dとの複数の接触点の分布の重心Gは、ナット73の第1移動枠20に対する相対位置の変化によって第1移動枠20に入力される力F2の入力点と同等である。
したがって、ナット73が軸Bに沿う方向に第1移動枠20に対して相対移動する場合には、力F2のベクトルが第1案内軸11と交差するため、力F2による第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントを抑制または皆無とすることができる。
また、ナット73が軸Aに沿う方向に第1移動枠20に対して相対移動する場合には、第1突起部73cの先端部が略円形または略球形であることから、ナット73の突出部73bは係合部26に対して極めて低い摩擦抵抗で摺動するため、力F2による第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントを抑制することができる。
以上のように、本実施形態によれば、駆動部70による第2レンズ群4の駆動時において、スクリュー72の偏心等に起因してナット73が第1移動枠20に対して相対移動する場合においても、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントを微少なものとすることができ、第2レンズ群4の揺れを抑制することができる。
なお、上述した実施形態では、ナット73の第2凸部73dは、ナット73と一体に形成されたものであるが、第2凸部73dは、ナット73とは異なる部材として設けられる形態であってもよい。
例えば、図9に示すように、第2凸部73dは、例えば鋼製の球からなり、ナット73に形成された凹部内において回転可能に配設される形態であってもよい。このような、図9に示す変形例では、第2凸部73dと第1移動枠20の当接面25との間の摩擦抵抗をさらに低減することが可能であり、ナット73が第1移動枠20に対して相対移動する場合における、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントをさらに微少なものとすることができる。
また、上述した本実施形態では、第2光軸O2に沿う方向から見た場合における、当接面25と複数の第2凸部73dとの複数の接触点の分布の重心Gが、第1凸部73cと係合部26との2つの接触点の略中心に位置しているが、重心Gの位置はこの形態に限られるものではない。
例えば、図10に示すように、当接面25と複数の第2凸部73dとの複数の接触点は、第1案内軸11の周囲に配設され、第2光軸O2に沿う方向から見た場合における、これらの接触点の分布の重心Gが第1案内軸11の中心軸D上もしくは中心軸D近傍に配置される形態であってもよい。このような図10に示す変形例では、ナット73が第1移動枠20に対して相対移動する場合において、第1移動枠20とナット73との間の摩擦抵抗に起因して第1移動枠20に入力される力F2のベクトルが、第1案内軸11の中心軸Dを交差することから、第1移動枠20を第1案内軸11周りに回転させるモーメントを皆無とすることができる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うレンズ鏡枠もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明に係るレンズ鏡枠は、上述の実施形態で説明したカメラに配設される形態に限らず、レンズ交換可能なカメラシステムにおける交換レンズや、録音機器、携帯通信端末、ゲーム機、デジタルメディアプレーヤー、時計、ナビゲーション装置等の電子機器に備えられる撮像装置を構成するものであってもよいことは言うまでもない。