JP2014088592A - 金属鉄の製造方法 - Google Patents

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健 杉山
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Abstract

【課題】酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を加熱して金属鉄含有焼結体を製造し、得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕し、スラグを除去して金属鉄を製造するにあたり、前記酸化鉄含有物質として、脈石含有量の多い低品位な酸化鉄含有物質を用いた場合であっても、金属鉄含有焼結体からのスラグ除去率を高めることができる金属鉄の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、塊成物の加熱は、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、該加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱する。
【選択図】図8

Description

本発明は、酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を加熱して金属鉄含有焼結体を製造し、得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕し、スラグを除去して金属鉄を製造する方法に関するものである。
鉄鉱石などの酸化鉄含有物質から還元鉄(金属鉄)を製造する方法としては、例えば、
(1)鉄鉱石と炭材(固体還元材)とを混合して塊成化した塊成物を移動炉床炉(ロータリーハース)に供給して約1300℃で加熱し、該塊成物に含まれる酸化鉄を還元する方法(FASTMET法と呼ばれることがある)や、
(2)鉄鉱石と炭材(固体還元材)とを混合して塊成化した塊成物を移動炉床炉に供給して加熱し、該塊成物に含まれる酸化鉄を還元したのちに、さらに約1450℃まで加熱して還元鉄を溶融させ、表面張力の差などにより還元鉄とスラグに分離する方法(ITmk3法と呼ばれることがある)、
等が知られている。こうした還元鉄の製造方法について、例えば、特許文献1〜3の技術が知られている。
上記(1)の方法について、例えば、特許文献1に、鉄原料と石炭とを含有する混合物を高温度雰囲気下で加熱還元処理し、得られた還元鉄を粉砕処理し、次いで、所定の粒径を境に粒度選別することが記載されている。具体的には、粒度選別機にて平均粒径100μmを超える粒子と平均粒径100μm以下の粒子に分離・選別している。そして平均粒径100μm以下の還元鉄粒子を、磁力により、鉄分を多く含む強磁着物粒子と鉄分の少ない弱磁着物粒子とに分離し、粒度選別された上記所定粒径を超える還元鉄粒子と上記強磁着物粒子とを還元鉄として用いている。一方、弱磁着物粒子には、鉄分は少なく、スラグを多く含むため、そのままセメントやアスファルトに混合して再利用されている。
上記(2)の方法について、例えば、特許文献2や特許文献3の技術が知られている。これらのうち特許文献2には、複数種のダストおよび炭材で構成される含炭ペレットを製造し、これを回転炉床方式の焼成炉で1250〜1350℃の温度で還元処理することにより、ペレット内部のダストは炭材で還元され、粒内物質移動によって凝集したメタリック鉄粒子が、ダストの脈石から生成したFeOを含む低融点のスラグ部分から、自然に分離する作用を利用してメタリック鉄粒子を抽出し高品位粒状還元鉄を製造する製鉄ダストからの高品位還元鉄の製造方法が記載されている。この文献には、回転炉床方式の焼成炉で得られた還元鉄をスクリーンを用いて篩分けし、直径5mm以上の還元鉄を製品として回収することが記載されている。一方、特許文献3には、鉄鉱石および炭材で構成される含炭ペレットを製造し、これを回転炉床方式の焼成炉で1250〜1350℃の温度で還元した後に、さらに炉内温度を1400〜1500℃に上昇させ溶融し、金属鉄を凝集させることで高純度の粒状金属鉄を得る方法が記載されている。
また、上記(1)、(2)の方法について、特許文献4には、加熱還元により金属鉄外皮を生成且つ成長させ、内部には酸化鉄が実質的に存在しなくなるまで還元を進めると共に、内部に生成スラグの凝集物を形成する金属鉄の製法が提案されている。
特開2002−363624号公報 特開平10−147806号公報 特開2002−30319号公報 特開平9−256017号公報
ところで、金属鉄を製造する際に用いる鉄鉱石には、脈石が含まれている。脈石とは、鉱山で採掘された鉄鉱石(粗鉱)を構成している成分のうち、有用金属を含む鉱物以外の成分であり、通常、SiO2やAl23などの酸化物で構成されている。鉄鉱石に含まれる脈石量は、鉄鉱石が採掘される産地によって異なり、脈石量の少ない鉄鉱石は、高品位鉄鉱石と呼ばれ、脈石量の多い鉄鉱石は、低品位鉄鉱石と呼ばれる。
金属鉄を製造する際に低品位鉄鉱石を用いると、次のような問題が生じ易くなる。
即ち、上記(1)の方法で低品位鉄鉱石を用いると、鉄鉱石に含まれる脈石と炭材に含まれている灰分とが相俟って、塊成物に含まれるスラグ成分量が多くなるため、得られる還元鉄にスラグを多く含有し鉄品位が低下する。
上記(2)の方法で低品位鉄鉱石を用いると、溶融させた際に生成するスラグ量が多くなり、溶融したスラグが未溶融の還元鉄を覆ってしまうため、還元鉄に熱が加わることが阻害されて、還元鉄とスラグの十分な分離が行えないことがある。
また、上記(1)、(2)の方法で得られた還元鉄は、例えば、電気炉精錬の原料として用いることができるが、電気炉内へ同時に持ち込まれる脈石量は少ないことが要求される。脈石量が多くなると、電気炉精錬時にスラグが多量に発生し、精錬に必要となるエネルギーが増加するためである。
このように、金属鉄を製造する際に用いる鉄鉱石としては、脈石含有量の少ない高品位なものを用いることが推奨される。しかし、高品位な鉄鉱石の供給源は限られているにもかかわらず、世界の鉄鋼生産量は増加傾向にあるため、高品位な鉄鉱石の供給量は不足することが懸念されている。そこで金属鉄を製造する際に脈石含有量の多い低品位な鉄鉱石を利用する方法の開発が望まれている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を加熱して金属鉄含有焼結体を製造し、得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕し、スラグを除去して金属鉄を製造するにあたり、前記酸化鉄含有物質として、脈石含有量の多い低品位な酸化鉄含有物質を用いた場合であっても、金属鉄含有焼結体からのスラグ除去率を高めることができる金属鉄の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、金属鉄とスラグとの分離性に優れた金属鉄含有焼結体を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る金属鉄の製造方法とは、酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体を製造し、得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕し、スラグを除去して金属鉄を製造する方法であって、前記酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、前記塊成物の加熱は、前記加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、前記加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱する点に要旨を有するものである。
前記一段階目加熱の加熱時間は、総加熱時間に対して30%以上とし、前記二段階目加熱の加熱時間は、総加熱時間に対して25%以上とすることが好ましい。
前記原料混合物に、更に融点調整剤を配合してもよい。前記融点調整剤は少なくともCaO供給物質を含み、前記塊成物に配合するCaO供給物質の量を、前記塊成物中のCaO量およびSiO2量から求められるスラグの塩基度[CaO/SiO2]が0.2〜0.9となるように調整することが好ましい。前記CaO供給物質として、CaO、Ca(OH)2、およびCaCO3よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合することが好ましい。
上記課題を解決することのできた本発明に係る金属鉄含有焼結体とは、酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって得られ、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体であって、該金属鉄含有焼結体は、前記酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、前記塊成物の加熱を、前記加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、前記加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱として得られたものであり、表面からの深さ1mmまでの領域に存在するスラグ相中のFeO量が35%以上である点に要旨を有している。
本発明では、脈石含有量の多い低品位な酸化鉄含有物質を用いているが、該酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、1300℃以上に昇温して二段階目加熱を行っているため、加熱して得られる金属鉄含有焼結体は、金属鉄とスラグとに分離するときの分離性が良好となる。そのため、金属鉄含有焼結体からのスラグ除去率を高めることができ、スラグ含有量の少ない金属鉄を製造できる。また、本発明に係る金属鉄含有焼結体は、金属鉄とスラグとの分離性に優れている。
図1は、1250℃未満の温度における外殻部分(組織A)を反射顕微鏡で撮影した図面代用写真である。 図2は、1250℃以上、1330℃未満の温度における外殻部分(組織B)を反射顕微鏡で撮影した図面代用写真である。 図3は、1330℃以上の温度における外殻部分(組織C)を反射顕微鏡で撮影した図面代用写真である。 図4は、加熱初期における混合物部分(組織D)を反射顕微鏡で撮影した図面代用写真である。 図5は、加熱後期における混合物部分(組織E)を反射顕微鏡で撮影した図面代用写真である。 図6は、実施例において乾燥ペレットを加熱するときの様子を説明するための模式図である。 図7は、実施例において乾燥ペレットを一段階加熱したときの結果を示すグラフである。 図8は、実施例において乾燥ペレットを二段階加熱したときの結果を示すグラフである。 図9は、CO2濃度とスラグ率との関係を示すグラフである。
本発明者らは、酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって得られる金属鉄含有焼結体を、金属鉄とスラグに分離するときの分離性を高める技術を先に提案している(特願2012−99165号)。この技術は、金属鉄含有焼結体を、温度が1000℃以下で、且つ金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含された構造とするところに特徴がある。そして本発明者らは、上記特願2012−99165号の技術を提案した後も、上記金属鉄含有焼結体を、金属鉄とスラグに分離するときの分離性を更に高め、スラグ含有率の低い金属鉄を製造できる方法について鋭意検討を重ねてきた。その結果、酸化鉄含有物質および炭材を含む塊成物を、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、1300℃以上に昇温して二段階目加熱を行えば、上記酸化鉄含有物質として、脈石含有量の多い低品位な酸化鉄含有物質を用いても、金属鉄とスラグとの分離性が良好なものにでき、スラグ含有量の少ない金属鉄を製造できることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明に係る金属鉄の製造方法について説明する。
本発明の金属鉄の製造方法は、
酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を製造する工程と(以下、塊成化工程ということがある)、
得られた塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体を製造する工程と(以下、加熱工程ということがある)、
得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕する工程と(以下、粉砕工程ということがある)、
粉砕物からスラグを除去して金属鉄を回収する工程(以下、スラグ除去工程ということがある)
を含んでおり、
前記酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、
前記加熱工程では、前記塊成物の加熱を、前記加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、前記加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱するところに特徴を有している。
まず、上記金属鉄含有焼結体について説明する。上記金属鉄含有焼結体の構造自体は、本発明者らが先に提案した特願2012−99165号と同じであり、上記外殻は、金属鉄とスラグを含んでいる。金属鉄とスラグを含むことによって、金属鉄のみで構成されるよりも外殻の強度が小さくなるため、粉砕し易くなる。上記外殻の内側には、粒状金属鉄とスラグを含む混合物を内包している。上記外殻に内包させる混合物を、粒状金属鉄とスラグとを含む混合物とすることによって、混合物を容易に粉砕できる。そのため粉砕物からスラグを除去すれば、(粒状)金属鉄を磁着物、スラグを非磁着物として分離、回収できる。従って本発明によれば、(粒状)金属鉄にスラグは殆ど混在しないため、(粒状)金属鉄の純度を高めることができる。
上記金属鉄含有焼結体は、表面温度が1000℃以下である。表面温度が1000℃以下とは、上記塊成物を加熱炉内で加熱した後、冷却されていることを意味している。即ち、上記金属鉄含有焼結体は、酸化鉄含有物質と炭材とを含む塊成物を加熱炉内で加熱して得られるが、加熱炉では、後述するように1000〜1450℃程度で加熱される。そのため、表面温度が1000℃以下とは、加熱後に冷却された状態を意味している。
上記金属鉄含有焼結体は、外殻に包含されている内部の混合物を漏出させないために、全体が外殻で覆われている必要がある。また、金属鉄含有焼結体の強度は、加熱炉からディスチャージャー等で排出する際に形状を維持できる範囲であれば良い。そこで、外殻部分の断面積割合は、金属鉄含有焼結体の中心を通るように切断した断面において、おおよそ50面積%以上あればよい。
上記外殻は、金属鉄がネットワーク状(網目状)に形成されており、多孔質のように空隙が存在していることが好ましい。上記外殻は、金属粒が繋がってできたネットワーク状の組織と、その組織の隙間の少なくとも一部にスラグが存在していることが推奨される。ネットワーク状の組織の隙間の少なくとも一部にスラグが存在することによって、外殻の強度は、金属鉄のみで構成されているよりも小さくなり、粉砕し易くなる。
本発明の上記金属鉄含有焼結体は、表面からの深さ1mmまでの領域に存在するスラグ相中のFeO量が35%以上である。スラグ相中のFeO量が35%以上となることによって、還元時に塊成物の外殻が崩壊するのを防止できる。即ち、後述するように、加熱炉内に送入した塊成物は、天然ガスなどの燃料をバーナーで燃焼させたときの輻射熱によって加熱される。そのため塊成物の表面では、雰囲気中のCO2ガスやH2OガスによってFeOの還元状態に留まった粒子が脈石成分と反応して溶融スラグを生成する。FeO含有溶融スラグは非磁着物となるためFeの損失となるが、その影響は非常に小さいことがわかった。一方、FeO含有溶融スラグは、加熱初期に塊成物の表面に形成され、酸化鉄および金属鉄粒子の間へ侵入するため、還元時に外殻が崩壊することを防ぐ役割を果たすことが分かった。
次に、本発明に係る金属鉄の製造方法について順を追って説明する。
[塊成化工程]
塊成化工程では、酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を製造する。
本発明では、上記酸化鉄含有物質として、従来では通常用いることのなかった低品位な酸化鉄含有物質を用いるところに特徴がある。上記低品位な酸化鉄含有物質とは、本明細書では、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2とAl23との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを意味している。SiO2とAl23は、酸化鉄含有物質(例えば、鉄鉱石)に含まれる種々の脈石のうち、含有率が相対的に高い物質であり、本明細書では、これらを脈石の代表物質としている。そして、全鉄量の質量に対するSiO2とAl23との合計質量の割合を、本明細書ではスラグ率と定義し、スラグ率が5%以上の酸化鉄含有物質を低品位なものとしている。上記スラグ率は、11%以上であっても好ましく、より好ましくは12%以上である。
上記酸化鉄含有物質としては、具体的には、スラグ率が5%以上の鉄鉱石、砂鉄、製鉄ダスト、非鉄精錬残渣、製鉄廃棄物などを用いることができる。
上記炭材としては、例えば、石炭やコークスなどを用いることができる。上記炭材は、上記酸化鉄含有物質に含まれる酸化鉄を還元できる量の固定炭素を含有していればよい。具体的には、上記酸化鉄含有物質に含まれる酸化鉄を還元できる固定炭素量に対して、0〜5質量%の範囲で余剰に含有していればよい。
上記酸化鉄含有物質および炭材を含む上記原料混合物には、更に融点調整剤を配合することが好ましい。上記融点調整剤とは、鉄の融点に影響する物質は除くこととし、塊成物に含まれる鉄以外の成分(特に、脈石)の融点に影響する物質を意味する。即ち、上記原料混合物として融点調整剤を配合することによって、塊成物に含まれる酸化鉄以外の成分(特に、脈石)の融点に影響を与え、例えばその融点を降下させることができる。それにより脈石は、溶融が促進され、溶融スラグを形成する。このとき酸化鉄の一部は溶融スラグに溶解し、溶融スラグ中で還元されて金属鉄となる。溶融スラグ中で生成した金属鉄は、固体のまま還元された金属鉄と接触することにより、固体の還元鉄として凝集する。
上記融点調整剤としては、少なくともCaO供給物質を含むものを用いることが好ましい。上記CaO供給物質としては、例えば、CaO(生石灰)、Ca(OH)2(消石灰)、CaCO3(石灰石)、およびCaMg(CO32(ドロマイト)よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合することが好ましい。
上記融点調整剤としては、上記CaO供給物質のみを用いても良いし、上記CaO供給物質に加えて、例えば、MgO供給物質、Al23供給物質、SiO2供給物質などを用いることができる。MgO、Al23、およびSiO2も、上記CaO同様、塊成物に含まれる鉄以外の成分(特に、脈石)の融点に影響する物質である。
上記MgO供給物質としては、例えば、MgO粉末、天然鉱石や海水などから抽出されるMg含有物質、MgCO3よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合することが好ましい。上記Al23供給物質としては、例えば、Al23粉末、ボーキサイト、ベーマイト、ギブサイト、ダイアスポアなどを配合することが好ましい。上記SiO2供給物質としては、例えば、SiO2粉末や珪砂などを用いることができる。
上記塊成物は、酸化鉄含有物質、炭材、および融点調整剤以外の成分として、バインダーなどが更に配合されていてもよい。上記バインダーとしては、例えば、多糖類など(例えば、コーンスターチや小麦粉等の澱粉など)を用いることができる。
上記酸化鉄含有物質、炭材、および融点調整剤は、混合する前に予め粉砕しておくことが好ましい。例えば、上記酸化鉄含有物質は平均粒径が10〜60μm、上記炭材は平均粒径が10〜60μm、上記融点調整剤は平均粒径が5〜90μmとなるように粉砕することが推奨される。
上記酸化鉄含有物質等を粉砕する手段は特に限定されず、公知の手段を採用できる。例えば、ハンマーミル、振動ミル、ロールクラッシャ、ボールミル、ケージミルなどを用いればよい。
上記原料混合物を混合する混合機としては、例えば、回転容器形混合機や固定容器形混合機を用いることができる。上記回転容器形混合機としては、例えば、回転円筒形、二重円錐形、V形などの混合機を用いることができる。上記固定容器形混合機としては、例えば、混合槽内に回転羽(例えば、鋤など)を設けた混合機を用いることができる。
上記原料混合物を塊成化する塊成機としては、例えば、皿形造粒機(ディスク形造粒機)、円筒形造粒機(ドラム形造粒機)、双ロール型ブリケット成型機などを用いることができる。
上記塊成物の形状は特に限定されず、例えば、塊状、粒状、ブリケット状、ペレット状、棒状などであればよく、好ましくはペレット状やブリケット状であればよい。
得られた塊成物は、後述する加熱工程で加熱炉へ送入する前に、乾燥させてもよい。
[加熱工程]
加熱工程では、上記塊成化工程で得られた塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体を製造する。
本発明では、上記加熱工程において、上記塊成物の加熱を、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱することが重要である。
一段階目加熱と二段階目加熱を規定している理由は次の通りである。即ち、本発明者らは、上記金属鉄含有焼結体の構造に着目し、該金属鉄含有焼結体を構成している外殻部分と、該外殻の内側に包含されている混合物部分の夫々について、(粒状)金属鉄とスラグに分離するときの分離性を向上させるために検討したところ、外殻部分と混合物部分の形態は次のように変化することが分かった。
塊成物を加熱炉内に送入すると、外部からの輻射熱により加熱されて、酸化鉄が還元される反応がおこる。
(外殻部分)
加熱初期においては、ペレット内部への伝熱量が多いため、外殻部分の表面温度は低い。このとき、例えば、1250℃未満の温度では、微細な金属鉄と微細な半溶融状態のスラグが混在している状態となる(以下、組織Aということがある)。従って金属鉄とスラグとの分離性は極めて悪い。こうした形態は、加熱時間が不足した場合や、熱供給が少ない塊成物の下部(炉床近傍)に認められる。
塊成物の加熱が進み、外殻部分の表面温度がやや高くなると(例えば、1250℃以上、1330℃未満)、金属鉄が焼結して網目状となり、溶融スラグはやや大きく成長し、網目状の金属鉄の中に溶融スラグが分散した状態となる(以下、組織Bということがある)。この形態では、溶融スラグの成長が充分ではないため、金属鉄とスラグとの分離性は、良いとは言えない。こうした形態は、塊成物のうち、特に、外殻部の上部に認められる。
塊成物の加熱が更に進み、外殻部分の表面温度が一層高くなると(例えば、1330℃以上)、金属鉄が板状に連なり、溶融スラグが大きく成長し、点在している状態となる(以下、組織Cということがある)。この形態では、溶融スラグが充分に成長しているため、金属鉄とスラグとの分離性は良好となる。こうした形態は、塊成物のうち、特に、外殻部の上部に認められる。
上記組織Aと組織Bは、加熱の初期段階において、塊成物の外殻部全体に認められるが、上記組織Cは、昇温速度が大きく、炭材の消費量が大きい外殻部の上部にのみ認められる。即ち、加熱炉内の温度を、例えば、1300℃以上に高めても、塊成物の温度分布は均一とはならず、外殻部の上部と下部で温度差が生じるため、外殻部の上部は、組織Cとなる部分が多いが、外殻部の下部は、組織Aや組織Bにしかならないことが多い。
(混合物部分)
混合物部分は、外殻部からの伝熱が緩やかな場合は、金属鉄が網目状に生成した後に、スラグが溶融する。この溶融スラグ中には、FeOは殆ど存在しない。その後、金属鉄へ炭素が浸炭すると、金属鉄は粒状になる(以下、組織Dということがある)。
一方、塊成物の内部に炭素とFeOが残っている状態で昇温されると、溶融スラグ中のFeOと炭素が反応して微細な粒状金属鉄が溶融スラグ中に生成する(以下、組織Eということがある)。即ち、スラグが溶融し始めたときにFeOが近傍に存在すると、FeOがスラグ中へ溶解してスラグの融点を低下し、スラグ量を増加させる。この状態で近傍に炭素が存在すると、
2FeO(l)+C→2Fe(s)+CO2(g)
の溶融還元が起こり、非常に微細な金属鉄が生成する。これが、組織Eの状態である。この組織Eは、固体金属鉄の生成が遅れた状態で温度上昇する塊成物内部に見られる。
上記組織A〜組織Eを反射顕微鏡で撮影した図面代用写真の一例を図1〜図5に示す。図1は250倍、図2は250倍、図3は30倍、図4は250倍、図5は30倍で撮影した写真である。
粉砕によって、(粒状)金属鉄とスラグが分離しやすい順に上記組織A〜組織Eを並べると、組織A(主に外殻部分)→組織E(主に混合物部分)→組織B(主に外殻部分)→組織D(主に混合物部分)→組織C(主に外殻部分)の順に分離性が向上する。そのため、外殻部分は組織Cとし、混合物部分は組織Dとすることが推奨される。
金属鉄とスラグの分離性を高めるために、外殻部分を組織Cの形態とするように加熱温度を高く設定して塊成物を一気に加熱すると、内部の混合物部分も急速に加熱されるため、組織形態は組織Eとなる。そのため、組織Cとなっている外殻部分からは、大きく成長した溶融スラグを良好に除去できるが、組織Eとなっている混合物部分は、粒状金属鉄が非常に微細になっているため、スラグとの分離性が悪い。
金属鉄とスラグの分離性を高めるため混合物部分を組織Dの形態とするには、脈石成分が溶融したときは、酸化鉄(FeO)が金属鉄へ還元されておりスラグへは溶融しないことが必要である。
一方、溶融スラグの共存状態では、固体状態の金属鉄が溶融すると比較的大きな金属鉄粒子になる。固体金属鉄の溶融は、金属鉄への浸炭開始温度と浸炭量に依存する。浸炭は、炭素が充分存在する状態で、1300℃以上に昇温すると顕著になる。よって脈石成分の溶融温度を1300℃未満に調整し、炉内温度を1300℃未満に設定して金属鉄を十分生成させた後に1300℃以上にする必要がある。
以上の条件を総合し、本発明では、塊成物を加熱炉内に送入した後、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱する。
ここで、塊成物を加熱炉内に送入し、二段階の加熱を行ったときにおける炉内温度、ペレット中心温度、排ガスのCO濃度、排ガスのCO2濃度、計算により求めた還元率、計算により求めた金属化率の結果の一例を図8に示す。図8は、後述する実施例における表5に示したNo.6の結果を示している。
図8に示すように、加熱初期では、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として溶融スラグの生成速度を小さくし、同時に金属鉄への浸炭をなくした状態で、塊成物の内部まで還元反応を進める。1200℃以上の温度ではスラグは溶融を開始するが、実際の塊成物内では伝熱と吸熱反応が起こるため、塊成物のうち1200℃以上となる部分は表面部分の薄層のみであり、塊成物の大部分は、1200℃に到達する前に金属鉄への還元反応が大きく進む。
一段階目加熱において金属鉄が生成し始めた後は、加熱炉内の温度を上昇させて1300℃以上に高める。塊成物の外殻部分では、炭素が消費されて、欠乏しているため、組織Cを形成する。一方、塊成物内部の混合物部分には、炭素が多く残留しているため、組織Dを形成する。二段階目加熱を行うときの上限は特に限定されないが、例えば、1450℃である。
本発明では、加熱炉内に送入した塊成物の約20mm上方以内の位置における温度を、加熱炉内の温度と同等と評価する。
上記一段階目加熱の加熱時間は、総加熱時間に対して30%以上とすることが好ましく、より好ましくは45%以上である。一段階目加熱の加熱時間の上限は、総加熱時間に対して70%以下とすることが好ましい。
一段階目加熱の加熱温度は、ペレット中心温度が920℃に達し、「C+CO2→2CO」で示される吸熱反応が起こり始める時間以上に保持すれば、ペレット温度はスラグ成分が溶融しない1100℃以下に保つ時間が延長できる。ここで、ペレット温度は、炉内温度とペレット中心温度の算術平均温度としている。この時間は全体の37%に相当する。
但し、ペレットの成分、粒径、一段階目加熱の加熱温度によっては、加熱時間は変化するため、一段階目加熱の加熱時間は、総加熱時間に対して30%以上とすることが好ましい。また、一段階目加熱の加熱時間が、総加熱時間に対して45%以上になると、金属鉄が平均して生成し始めるため、好ましくは金属鉄が生成を始める時間以上(即ち、総加熱時間に対して45%以上)とするのが良い。一段階目加熱の加熱時間の上限は、二段階目加熱を開始する時間までとすればよい。
昇温後の上記二段階目加熱の加熱時間は、総加熱時間に対して25%以上とすることが好ましく、より好ましくは30%以上である。二段階目加熱の加熱時間の上限は、総加熱時間に対して70%以下とすることが好ましい。
二段階目加熱の加熱温度を、仮に1350℃とすると、ペレット平均温度を1300℃とするためにはペレット中心温度を1250℃にする必要がある。図8に基づいて推定すると、165秒前から加熱炉内の温度を1300℃以上の高温にする必要がある。この時間が全加熱時間の25%に相当する。二段階目加熱の加熱時間の上限は、一段階目加熱における加熱時間の最短時間の残りとなる70%である。
二段階目加熱の加熱時間は、長いほど確実に溶融スラグを生成することが出来るが、生産性を向上させる観点からは短いほうが良い。
上記総加熱時間とは、塊成物を加熱炉内に装入した時点から、塊成物を加熱炉内で加熱還元して得られた金属鉄含有焼結体を加熱炉から排出する時点までの時間を意味する。この総加熱時間は、塊成物に含まれる酸化鉄の還元反応が終了し、冷却後、粉砕、スラグ除去しやすい組織とするために必要な時間内でできるだけ短時間であることが生産性向上の観点から求められる。総加熱時間の一例を、代表的なスラグ成分であるCaO−SiO2−Al23系スラグを含有する塊成物(φ19mm)について調べたところ、11分間であった。
上記加熱炉としては、公知の炉を用いればよく、例えば、移動炉床式加熱炉を用いればよい。上記移動炉床式加熱炉とは、炉床がベルトコンベアのように炉内を移動する加熱炉であり、具体的には、回転炉床炉が例示できる。上記回転炉床炉は、炉床の始点と終点が同じ位置になるように、炉床の外観形状が円形(ドーナツ状)に設計されており、炉床上に供給された塊成物は、炉内を一周する間に加熱還元されて(粒状)金属鉄を生成する。従って、回転炉床炉には、回転方向の最上流側に塊成物を炉内に供給する装入手段が設けられ、回転方向の最下流側(回転構造であるため、実際には装入手段の直上流側になる)に排出手段が設けられる。
[粉砕工程]
粉砕工程では、上記加熱工程で得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕する。上記加熱工程で得られた金属鉄含有焼結体は、その一部を粉砕してもよいし、全部を粉砕してもよい。上記金属鉄含有焼結体の一部を粉砕する場合は、例えば、上記加熱工程で得られた金属鉄含有焼結体を篩分け等により外殻と、該外殻の内側に包含されている混合物とに分離し、外殻側のみを粉砕して金属鉄とスラグに分離するか、或いは混合物側のみを粉砕して粒状金属鉄とスラグに分離すればよい。一方、上記金属鉄含有焼結体の全部を粉砕する場合は、例えば、上記加熱工程で得られた金属鉄含有焼結体を、外殻と混合物の区別なく粉砕し、金属鉄、粒状金属鉄、およびスラグに分離すればよい。
上記金属鉄含有焼結体を粉砕する方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、振動ミル、ロールクラッシャ、ボールミル、ローラーミル、ハンマーミル、ケージミルなどを用いればよい。
[スラグ除去工程]
スラグ除去工程では、上記粉砕工程で得られた粉砕物からスラグを除去して金属鉄を回収する。即ち、上記粉砕工程において、上述したように、金属鉄含有焼結体の外殻と、該外殻の内側に包含されている混合物とに分離してから粉砕した場合には、金属鉄の回収率を高めるために、金属鉄含有焼結体の外殻を粉砕した粉砕物からスラグを除去して金属鉄を回収すればよい。また、別途、外殻の内側に包含されている混合物を粉砕した粉砕物からスラグを除去して粒状金属鉄を回収すればよい。
上記粉砕工程において、上述したように、金属鉄含有焼結体の全部を粉砕した場合には、金属鉄含有焼結体の粉砕物からスラグを除去することによって、金属鉄と粒状金属鉄を同時に回収できる。
上記粉砕物からスラグを除去する方法は特に限定されず、例えば、磁選分離が挙げられる。磁選分離の条件は、公知の条件を採用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実験例1]
酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって、金属鉄含有焼結体を製造した。
上記酸化鉄含有物質としては、下記表1に示す成分組成の鉄鉱石を用いた。表中、T.Feは全鉄量を意味している。
下記表1に示した鉄鉱石の成分組成に基づいて、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合(スラグ率)[(SiO2+Al23)/T.Fe×100]を求めた。その結果、スラグ率は14.2%であった。
上記炭材としては、下記表2に示す成分組成の石炭を用いた。
上記鉄鉱石および石炭に、更に融点調整剤として石灰石およびAl23粉末、バインダーとして小麦粉を下記表3に示す割合で配合したものを原料混合物とし、これに少量の水を加えて転動造粒によりφ19mmの炭材内装ペレットを製造した。
得られた炭材内装ペレットを180℃で乾燥し、乾燥ペレット(塊成物)を製造した。乾燥ペレットの成分組成を下記表4に示す。また、下記表4に示した乾燥ペレットの成分組成に基づいて、塩基度(CaO/SiO2)、およびAl23とSiO2の比(Al23/SiO2)を算出し、併せて示す。
上記加熱炉として横型電気炉を準備し、上記乾燥ペレットを横型電気炉内で11分間加熱し、還元反応を起こさせた後、冷却ゾーンへ取り出して室温まで冷却した。
具体的な加熱条件は次の通りである。
下記表5に示すNo.1、4、7は、炉内温度を1350℃に予め加熱しておいた横型電気炉へ乾燥ペレットを送入して加熱し、総加熱時間が11分間となるように調整して加熱した例である。No.1、4、7のうち、乾燥ペレットをNo.1の条件で加熱したときにおける炉内温度、ペレット中心温度、排ガスのCO濃度、排ガスのCO2濃度、計算により求めた還元率、計算により求めた金属化率を図7に示す。ここで、初期還元率が負の値になっている(即ち、酸化している)理由は、ペレット原料がマグネタイトであるためである。なお、図7には、炉内温度を調整したときの制御温度も併せて示した。
下記表5に示すNo.2と3は、炉内温度を1330℃に予め加熱しておいた横型電気炉へ乾燥ペレットを送入して加熱し、総加熱時間が11分間となるように調整して加熱した例である。
下記表5に示すNo.5と6は、炉内温度を1250℃に予め加熱しておいた横型電気炉へ乾燥ペレットを供給し、4分間加熱した後、炉内温度を平均昇温速度25℃/分で1350℃に加熱し、総加熱時間が11分間となるように調整して加熱した例である。No.5、6のうち、乾燥ペレットをNo.6の条件で加熱したときにおける炉内温度、ペレット中心温度、排ガスのCO濃度、排ガスのCO2濃度、計算により求めた還元率、計算により求めた金属化率を図8に示す。なお、図8には、炉内温度を調整したときの制御温度も併せて示した。
横型電気炉内の雰囲気と、冷却ゾーンの雰囲気は、二酸化炭素ガスと窒素ガス中の二酸化炭素ガス濃度を30〜75体積%で変化させた。下記表5に雰囲気ガスの組成を示す。
また、下記表5に示すNo.1〜6は、図6の(a)に示すように、窪みが浅い(窪み深さ:5mm)アルミナトレーに入れ、乾燥ペレットが酸化性雰囲気ガス(図中の矢印)に曝され易い条件で加熱した。下記表5に示すNo.7は、図6の(b)に示すように、窪みが深い(窪み深さ:20mm)アルミナトレーに入れ、乾燥ペレットが酸化性雰囲気ガス(図中の矢印)に曝され難い条件で加熱した。図6の(a)は、実機における条件を模擬しており、図6の(b)は、実験室で実験を行うときの条件を模擬している。
上記炉内温度は、乾燥ペレットの約20mm上方の位置に熱電対を設けて直接測定した。
上記混合ガスは、炉内に送入した上記乾燥ペレットの約20mm上方の位置における流速が3L/分(標準状態)となるように調整した。
上記乾燥ペレットが加熱される間のペレット内における反応について考察する。
乾燥ペレットを炉内に送入してから、初期急速温度上昇区間では、乾燥ペレット内で次の反応が起こっていると考えられる。即ち、乾燥ペレットを炉内に送入すると、乾燥ペレットの表面から内部に向かって急激な熱伝達が起こる。このとき、乾燥ペレットの上部は、輻射熱により最も速く加熱されるが内部への伝熱量が大きいため、温度上昇が遅れる。
ここで、鉄鉱石として、マグネタイト鉄鉱石を用いた場合について、炉内で起こる反応を説明する。
温度が低い状態では、下記式(1)の還元反応より下記式(2)の酸化反応のほうが多く起こるため、ペレットの平均では酸化反応が起こっている。
Fe34+CO→3FeO+CO2 ・・・(1)
Fe34+CO2→Fe23+CO ・・・(2)
次に、ペレット中心温度が約1060℃に到達するまでの区間では、乾燥ペレット内で次の(3)〜(6)の反応が起こっていると考えられる。
C(g)+CO2(g)→2CO(g) ・・・(3)
CO(g)+Fe34(s)→3FeO(s)+CO2(g) ・・・(4)
2CO(g)+Fe34(s)→3Fe(s)+2CO2(g) ・・・(5)
FeO+SiO2+CaO→スラグ(L) ・・・(6)
ここで、乾燥ペレットの中心部の温度が約950℃に到達すると、昇温速度が急激に小さくなる。この理由は、乾燥ペレットの内部では、ペレット中心温度が920℃以上になるため、上記式(3)に示される吸熱反応が起こっていると考えられる。
上記式(3)に示されているCO2ガスは、雰囲気ガスに含まれるCO2ガスではなく、上記式(4)、(5)に示される反応で副生するCO2ガスである。
上記式(3)の反応が活発に起こることによって、乾燥ペレット内部におけるCOガス濃度が高くなるため、上記式(4)、(5)の反応が促進される。そのため、乾燥ペレットの中心部において酸化鉄の還元が促進される。
また、約1060℃の温度では、下記式(7)で示されるスラグ生成反応は起こらないが、乾燥ペレットの中心部の温度が約1060℃になっている場合は、乾燥ペレットの表面側は、約1060℃以上の温度に到達している。そのため乾燥ペレットの表面に近づくほど、下記式(7)で示される反応が起こっており、溶融スラグが副生していると考えられる。
SiO2+CaO→スラグ(L) ・・・(7)
次に、乾燥ペレットを炉内に送入し、約1060℃に到達してから、約1300℃に到達するまでの区間では、乾燥ペレット内で次の反応が起こっていると考えられる。
この区間では、酸化鉄が還元されて生成した金属鉄同士が焼結し、連なった構造となるか、下記式(8)に示されるように、還元されて生成した金属鉄が、残留している炭素で浸炭され、融点が降下し、粒状の金属鉄を生成する反応が起こり始める。
Fe(s)+C→Fe(L) ・・・(8)
また、この区間では、SiO2、CaO、Al23が、下記式(9)に示されるように、スラグを形成する。
SiO2+CaO+Al23→スラグ(L) ・・・(9)
約1300℃に到達した後は、上記式(8)に示す浸炭反応が活発に起こり、雰囲気ガスの温度に近づくまで緩やかに昇温した。
本実験では、炉内の雰囲気温度を1350℃に設定しているため、乾燥ペレットは溶融せず、炉内に送入した乾燥ペレットの形状をほぼ保っている。
次に、冷却ゾーンで冷却して得られた還元ペレットの構造について考察する。下記表5のNo.1〜7に示した塊成物は、いずれも、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下であった。
次に、冷却ゾーンで冷却して得られた還元ペレットを、ディスクミルを用いて3秒間粉砕し、平均粒径を45μmとした。
粉砕して得られた粉砕物を、磁石を用いて磁選し、磁着物と非磁着物に分離した。磁着物は、金属鉄が主体であり、非磁着物は、スラグが主体であった。磁着物中に残留しているSiO2量とAl23量の合計を測定した。また、還元ペレットに含まれるSiO2量とAl2O量の合計を算出し、還元ペレットに含まれるSiO2とAl23の合計量に対する、非磁着物に含まれるSiO2とAl23の合計量の割合(スラグ除去率)を下記表5に示す。
次に、還元ペレットの質量に対する、非磁着物の質量の割合を算出し、非磁着物率を算出した。結果を下記表5に示す。
次に、磁着物中のT.Fe量に対する、SiO2量とAl23量との合計の割合(スラグ率)を算出した。結果を下記表5に示す。
次に、加熱雰囲気中のCO2濃度と磁着物中のスラグ率との関係を図9に示す。図9において、◆は酸化性雰囲気ガスに曝されやすい条件で、1330℃で加熱したときの結果(No.2、3)、▲は酸化性雰囲気ガスに曝されやすい条件で、1350℃で加熱したときの結果(No.1、4)、△は酸化性雰囲気ガスに曝されにくい条件で、1350℃で加熱したときの結果(No.7)、○は酸化性雰囲気ガスに曝されやすい条件で、1250℃で加熱した後、1350℃に昇温して加熱したときの結果(No.5、6)を夫々示している。
図9から明らかなように、加熱温度が高くなるほどスラグ率が低下することが分かる。また、雰囲気ガスの酸化度が高いほど、および、酸化性のガスに曝される方が、スラグ率が低下する傾向を示す。酸化性ガス雰囲気において、二段階の加熱を行った方がさらに低いスラグ率になる。
次に、還元ペレット中のT.Feの質量に対する、磁着物中のT.Feの質量の割合(鉄回収率)を算出した。結果を下記表5に示す。
ところで、二段階の加熱を行うときの総加熱時間を短縮するには、二段階目加熱を行なうときの加熱温度を高めに設定すると共に、一段階目加熱の加熱終了時点における温度から二段階目加熱の加熱開始時点における温度までの昇温速度を短縮することが好ましい。
下記表5において、酸化性雰囲気ガスに曝され易い条件で加熱したときの結果を比較すると、加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、加熱炉内の温度を1300℃以上に昇温変更して二段階目加熱することによって、加熱炉内の温度を一定(即ち、No.1、4では1350℃、No.2、3では1330℃)として加熱するよりも、磁着物中のスラグ率が低下することが分かる。
二段階の加熱を採用することによって、磁着物中のスラグ率が低下する理由は、一段階目加熱を比較的低温で行うことによって、乾燥ペレットの内部で還元されて生成した金属鉄が焼結した後、浸炭するため、金属鉄が粒状に大きく成長し易くなるからと考えられる。即ち、加熱炉内の温度を高温側で一定に設定すると、乾燥ペレットは一気に加熱されるため、ペレットの内部では金属鉄への浸炭が微細金属鉄の段階から始まり、非常に微細な粒状金属鉄となる。そのため、粒状金属鉄とスラグとの分離性が低下すると考えられる。
そこでペレット内部で生成する金属鉄を大きく成長させるには、加熱初期にスラグの融液を多く生成させないことが必要であり、加熱初期の段階での加熱温度は、1280℃以下の低温とする必要がある。この理由は、SiO2−CaO−FeOの三元系状態図によれば、最低融点は約1100℃であるが、スラグ中のFeO濃度の低下によって溶融温度が上昇して融液生成量は減少するからである。また、ペレット内の平均温度は、加熱炉内の温度(外部加熱温度)とペレット中心温度との中間温度と見積もることができる。図8によれば、二段階の加熱を行ったときの一段階目加熱時におけるペレット中心温度は920℃であるため、ペレット平均温度が溶融スラグの生成しない1100℃となるためには、加熱炉内の温度(外部加熱温度)は1280℃となる。従って、加熱炉内の温度(外部加熱温度)を1280℃以下とすれば、ペレット内に殆んど溶融スラグは生成しない。
しかし、ソリューションロス反応(CO2+C=2CO)を促進させるために、加熱温度は、1000℃以上にする必要がある。
一段階目加熱を行った後は、外殻部を金属鉄とスラグに分離し易くするために、加熱炉内の温度を1300℃以上に高めて加熱する必要がある。即ち、比較的低温で加熱すると、外殻部の上部では、微細金属鉄が微細分散した状態でスラグが溶融するため、金属鉄とスラグの分離が困難となる。そこで、一段階目加熱を行なった後は、加熱炉内の温度を高め、溶融スラグ量を増加させて金属鉄の焼結を促進する必要がある。金属鉄の焼結を促進することによって、金属鉄が板状に連続するため、スラグとの分離性が向上する。金属鉄の焼結を促進するには、二段階目加熱を行うときの炉内における加熱温度は1300℃以上とする必要がある。この理由は、SiO2−CaO−Al23の三元系状態図によれば、最低融点は約1250℃であるため、二段階目加熱の加熱時には還元が進んでいる。スラグ中のFeOは無視できるため、前述した状態図に基づいて検討すると、ペレット内のスラグを確実に溶融させるには、ペレット中心温度が1250℃になる必要がある。ペレット中心温度と加熱炉内の温度との温度差は、図8に基づけば、50℃と見積もることができるため、二段階目加熱を行うときの加熱炉内の温度は、1300℃以上とする必要がある。

Claims (6)

  1. 酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体を製造し、得られた金属鉄含有焼結体の少なくとも一部を粉砕し、スラグを除去して金属鉄を製造する方法であって、
    前記酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、
    前記塊成物の加熱は、前記加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、前記加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱することを特徴とする金属鉄の製造方法。
  2. 前記一段階目加熱の加熱時間を総加熱時間に対して30%以上とし、前記二段階目加熱の加熱時間を総加熱時間に対して25%以上とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記原料混合物に、更に融点調整剤を配合する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記融点調整剤は少なくともCaO供給物質を含み、前記塊成物に配合するCaO供給物質の量を、前記塊成物中のCaO量およびSiO2量から求められるスラグの塩基度[CaO/SiO2]が0.2〜0.9となるように調整する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記CaO供給物質として、CaO、Ca(OH)2、およびCaCO3よりなる群から選ばれる少なくとも一つを配合する請求項4に記載の製造方法。
  6. 酸化鉄含有物質および炭材を含む原料混合物からなる塊成物を加熱炉内で加熱し、該塊成物中の酸化鉄を還元することによって得られ、金属鉄およびスラグを含む外殻の内側に、粒状金属鉄およびスラグを含む混合物が包含されており、表面温度が1000℃以下である金属鉄含有焼結体であって、
    該金属鉄含有焼結体は、
    前記酸化鉄含有物質として、全鉄量(T.Fe)の質量に対するSiO2量とAl23量との合計質量の割合[(SiO2+Al23)/T.Fe×100)]が5%以上のものを用いると共に、
    前記塊成物の加熱を、前記加熱炉内の温度を1000〜1280℃として一段階目加熱した後、前記加熱炉内の温度を1300℃以上として二段階目加熱として得られたものであり、表面からの深さ1mmまでの領域に存在するスラグ相中のFeO量が35%以上であることを特徴とする金属鉄含有焼結体。
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