JP2014085229A - 振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法 - Google Patents

振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡便な方法による振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法を提供する。
【解決手段】 振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、転石2の加振時の振動計測からこの転石2の固有振動数を特定し、前記転石2の根入れ深さを推定し、この推定された根入れ深さに基づいて前記転石2の全体形を把握し、前記転石2の滑動に対する安定度FS と前記転石の転倒に対する安定度FR を基に前記転石2の落石危険度を評価する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法に関するものである。
発生源における落石危険度評価方法は、これまで斜面を管理する各機関や事業者などにより研究・改良が進められてきた。しかしながら落石の発生メカニズムが十分に解明されていないこともあり、過去の落石事例の統計分析等に基づく経験的な評価方法が現在でもその主流となっている。
落石は様々な要因が複雑に絡み合って発生する事象であり、予知・予測をすることが困難な災害である(下記非特許文献1,2参照)。そこで、鉄道事業者は落石注意箇所の検査を定期的に行うとともに、その検査結果に応じた必要な措置を講じることで落石災害の被害を最小限に抑えるよう努力している。
落石の危険度評価は、発生源における発生危険度と落下した岩塊が線路まで到達するかどうかの影響度を総合して評価することが肝要である。
後者の危険度である線路への影響度の評価について本願発明者らは、数値地形モデルを活用して斜面の傾斜区分などを行い、既存の斜面点検記録や落石災害履歴などの情報と面的に重ね合わせることによって、広範な鉄道沿線斜面から落石注意箇所を効果的・効率的に抽出する方法を整理している(下記非特許文献3,4参照)。また、抽出した注意箇所において不安定岩塊が落下した場合、線路まで到達するかどうかの影響度を落石シミュレーションによる到達確率で定量的に評価するとともに、斜面勾配、落石径、急崖の有無とその数および位置などの斜面パラメータに基づいて類型化した到達確率の簡易判定図を作成した(下記非特許文献4,5,6参照) 。
一方、前者の発生源における落石危険度の評価は、鉄道沿線の斜面管理の実務を行っている現場では、既存のマニュアルや標準(下記非特許文献7,8参照) などを参照し、採点法による評価・判定を行っている。このような採点法による落石危険度の評価方法は、危険度評価を簡易に行うことができるという点でメリットがあるものの、定性的な評価項目が多く現場技術者が評価基準を十分に理解できないものがあったり、技術者の経験等により判定にばらつきが生じたりする場合がある。
したがって、多数存在する注意箇所の不安定岩塊を合理的かつ効率的な方法で検査したい、言い換えれば定量的な指標を基準とした客観的な危険度評価方法もあわせて持っておきたいという現場の要求に十分に応えていないのが現状である。
そこでまず、これまでの落石危険度評価に関する研究が、主として過去の落石事例の統計分析などに基づく採点法であり、現在においても評価方法の主流であることをレビューする。そして、次に、このような落石危険度評価方法の研究・検討の中で、定量的な危険度評価方法を確立するためには落石の発生機構を考慮する必要があり、特に転石タイプの危険度評価のためにはその根入れ状態に着目することが重要であるという考えに至ったことについて説明する。また最近の振動を利用した落石危険度評価方法についても言及する。
そして、本発明の主題として、本願発明者らが提案した振動を利用した根入れ深さの推定方法(下記非特許文献9参照)を活用して、斜面上転石の力学的安定度を直接算定する新しい落石危険度評価方法について検討する。
なお、西日本旅客鉄道株式会社管内(西日本地区2府16県、51線区、線路延長約5000km)において、2005年から2009年までに発生源を特定できた落石災害113件のうち、転石タイプの落石は図16のとおり99件発生している。割合にして約88%と多くを占めていることから、本発明では転石型落石を主対象とした危険度評価方法について検討する。
次に、落石危険度評価方法に関するこれまでの研究について説明する。
(1) 統計的方法(採点法)
落石は、いくつもの素因(例えば、地形や地質の条件など)や誘因(例えば、表流水による浸食、凍結融解、積雪、立木や植生の影響、地震動、岩石や土砂の経年風化など)が複雑に絡み合って自然発生的に生じる現象である。このため落石の発生メカニズムなどは、まだその多くが解明されていないのが現状である(下記非特許文献1,2参照)。
このような背景から、発生源における落石危険度評価に関する研究は、災害事例の分析に基づく統計的な評価方法が出発点となっている。そして人命に関わる重大な落石災害を契機に、道路や鉄道などの各機関が、有識者による委員会形式による検討を重ねて落石に対する危険度評価の技術基準を整備してきた経緯がある(下記非特許文献10,11参照) 。
具体的には、地形や地質、湧水や集水の状況、降雨量や気候の地域性、立木や植生などの地被状況などの評価項目について点数を定めた、いわゆる採点法による評価基準(例えば、下記非特許文献12,13,14,15,16参照) が策定された。その後、採点基準の適正化や専門技術者の判断基準を取り入れることを目的として数量化理論に基づく方法(例えば、下記非特許文献17,18,19参照)などが精力的に研究されてきた。そして現在、道路や鉄道で使われている落石危険度評価方法〔落石対策便覧(下記非特許文献20参照) 、道路防災点検の手引き(下記非特許文献21参照) 、落石対策技術マニュアル(下記非特許文献7参照) 、鉄道構造物等維持管理標準・同解説(下記非特許文献8参照) 〕にもこの統計的方法(採点法)の考え方が継承され、実務における主流となっている。
しかしながら、統計的方法は危険度評価を簡易に行う方法としてはもちろん有効であるが、落石とその素因や誘因の関係が複雑であること、地形・地質条件に関し地域特性を持つわが国で全国を網羅した評価基準を決めることが困難であることなどから、現場技術者が評価基準を十分に理解した上で合理的な危険度評価を行いたいというニーズには十分に応えられているとは言い難い。
(2) 落石発生機構に着目した村上、箭内の研究
村上、箭内らは、危険度評価の統計的方法の研究(下記非特許文献17,18参照) を進める一方で、早くから落石発生の可能性を定量化した指標が実務的には必要であることを指摘している(下記非特許文献22,23参照) 。
そこで、まず落石発生機構を究明していくための第一歩として、単純化した2次元的な模型実験を行い、斜面勾配、斜面土質、転石の根入れ深さ、雨水および地震動などの因子が転落型落石(「転石型落石」と同義、以下同様)に及ぼす影響を調べた。
これによると、根入れ角θ=cos-1 [ (r−h )/r ](転石の半径r、根入れ深さh)を用いて、落石発生の臨界傾斜角を滑動および転倒に対する安定計算からそれぞれ求め、これを実験結果と比較・検証した。その結果、転落型落石は地盤と転石の間に働く摩擦力と粘着力、斜面傾斜角、転石の根入れ深さが素因となること、誘因としては水平振動が最も大きく影響すること、落石発生時の運動形態としては主として転倒運動であるが部分的に滑動運動が複雑に絡み合う複合的なものであることなどを指摘するとともに、転石上部における地盤とのはく離部の発達およびそこへの雨水侵入や斜面浸食による転石と地盤の接触面積の減少が落石の危険性を増加させると考察した。
すなわち転落型落石(転石型落石)の発生が、転石周辺の斜面傾斜角、転石と地盤の間に作用する摩擦力と粘着力、転石の大きさを表す半径、転石の単位体積重量、転石の根入れ角などの力学的要因に支配されることを示し、転石の根入れ深さzと臨界根入れ深さz0 =r (1−cosθ0 ) (θ0 :落石発生の臨界根入れ角)から決定されるΨ=z/z0 が落石の安定度すなわち危険度を表す指標として有効であることを示唆している。
このように村上、箭内の研究の先駆性は、これまでの地形・地質的要因と力学的要因を取り入れた数量化法による分析に加えて、落石の発生機構を考慮した力学的安定性に言及し、落石危険度を定量評価する手法として転石の根入れ深さを把握することが重要であることに着目したことである。
(3) 振動を利用した落石危険度評価
1980年代には道路や鉄道系の技術研究機関が、岩塊の振動特性と安定性との関係を検討し始めた(下記非特許文献24,25参照) 。
日本道路公団試験研究所(現高速道路総合技術研究所)は、斜面上の不安定な岩塊と基盤となる地盤にそれぞれ速度振動計を設置し、自動車等の雑振動を振動源として岩塊と地盤の2つの微動を計測し、RMS速度振幅比、卓越振動数、減衰定数を算出し、そしてRMS速度振幅比が2以上で、かつ卓越振動数30Hz未満または減衰定数0.2未満となるものを不安定な岩塊と判定する方法(下記非特許文献26参照) を開発した。
また、独立行政法人土木研究所は、岩盤斜面において岩塊と基盤岩の振動速度波形を計測し、卓越振動数、速度振幅比、振動軌跡などに基づいて安定性を評価し、不安定な岩塊ブロックを抽出する方法(下記非特許文献27参照) を提案している。
これらの方法は、落石危険度振動調査法と岩盤斜面不安定ブロック抽出手法として実用化され、現在も改良が進められている(下記非特許文献28参照) ものの、専門技術者による測定と解析が必要となるなど、実施事例の報告は多くない。
池田和彦,小橋澄治,「地形・地質からみた落石の傾向と発生予測」,施工技術,第6巻,第8号,pp.17−21,1982. 箭内寛治,「落石の調査と対策,地質と調査」,第3号,pp.38−45,1987.3. 深田隆弘,森泰樹,栩野博,「10m−DEMを活用した鉄道斜面における落石注意箇所抽出の試み」,第46回地盤工学研究発表会(松山),2010.8. 深田隆弘,森泰樹,澁谷啓,「線路への影響評価に基づく落石リスクマップの作成手法」,土木学会論文集C(地圏工学),Vol. 68,No. 1,pp.199−212,2012.3. 深田隆弘,森泰樹,栩野博,藤田浩司,「鉄道沿線における落石ハザードマップの試作」,第66回土木学会年次学術講演会(松山),2011.9. 深田隆弘,谷口達彦,澁谷啓,「落石の線路への影響度の研究」,第67回土木学会年次学術講演会(名古屋),2012.9. 鉄道総合技術研究所,「落石対策マニュアル」,1999.3. 国土交通省鉄道局,「鉄道構造物等維持管理標準・同解説(構造物編 盛土・切土) 」,2007.1. 深田隆弘,橋元洋典,澁谷啓,「転石を模擬した剛体の振動特性による根入れ深さの推定方法」,土木学会論文集A2(応用力学)、Vol.68、No.2(応用力学論文集 Vol.15),pp. I-337−I-344,2012.9. 野口達雄,「鉄道沿線岩石斜面の安定性評価に関する研究」,鉄道総研報告,特別第51号,pp.7−9,2002.3. 大西有三,西山哲,「岩盤崩壊と落石問題に関する現状と課題」,Journal of the Japan Landslide Society,Vol.39,No.1,pp.1−2,2002.6. 小橋澄治,「切取のり面採点表の再検討と落石管理の考え方」,鉄道土木,Vol.15,No.6,pp.39−43,1973.6. 日本鉄道施設協会,「土木建造物取替の考え方(日本国有鉄道施設局土木課編), 1974. 日本鉄道施設協会,「落石対策の手引(日本国有鉄道施設局土木課編),pp.16−28,1978.3. 高速道路調査会,「落石防護施設の設置に関する調査研究報告書」,pp.61−70,1974.2. 日本道路協会,「落石対策便覧」,pp.57−75,1983.7. 村上幸利,箭内寛治,「数量化法による転落型落石の危険度評価」,土木学会論文集,第406号/III−11,pp.223−231,1989.6. 村上幸利,箭内寛治,「数量化法に基づく転落型落石の危険度評価基準について」,土木学会論文集,第415号/IV−12(報告),pp.155−161,1990.3. 野口達雄,岡田勝也,杉山友康,木谷日出男,土田泰弘,「鉄道沿線の軟岩斜面の安定性評価手法」,土木学会論文集No.742/VI−60,pp.149−158,2003.9. 日本道路協会,「落石対策便覧」,pp.300−303,2000.6. 道路保全技術センター,「道路防災点検の手引き(豪雨・豪雪等)」,pp.35−39,2007.9. 村上幸利,箭内寛治,「転落型落石の発生機構に関する基礎的研究」,土質工学会論文報告集,Vol.27,No.1,pp.109−116,1987.3. 村上幸利,箭内寛治,「転落型落石の危険度評価法について」,土質工学会論文報告集,Vol.28,No.3,pp.197−203,1988.9. 奥園誠之,岩竹喜久麿,池田和彦,酒井紀士夫,「振動による落石危険度判定」,応用地質21巻3号,pp.9−12,1980.3. 熊谷兼雄,木谷日出男,吉岡修,「振動計測による浮石危険度判定のための基礎実験」,鉄道技術研究所速報,pp.1−17,1983.10. 緒方健治,松山裕幸,天野淨行,「振動特性を利用した落石危険度の判定」,土木学会論文集,No.749/VI−61,pp.123−135,2003.12. 独立行政法人土木研究所土砂管理管理研究グループ地すべりチーム,「不安定岩盤ブロック抽出のための岩盤斜面振動計測マニュアル(案)」,土木研究所資料,第4051号,2007.7. 竹本将,藤原優,横田聖哉,三塚隆,甲斐国臣,岡本栄,「落石危険度振動調査法を用いた現地調査および判定システムの開発−落石の危険度を現地で判定するシステムの開発−」,土木学会第65回年次学術講演会,2010.9. 深田隆弘,上半文昭,馬貴臣,斉藤秀樹,「転石を模擬した地盤中に根入れを有する剛体の振動特性に関する実験と解析」,第46回地盤工学研究発表会(八戸),2012.7. 沖村孝,鳥居宣之,萩原貞宏,吉田正樹,「道路斜面における落石危険度評価手法の一提案,地すべり」,第39巻,第1号,pp.22−29,2002. 沖村孝,鳥居宣之,吉田正樹,渡辺哲生,佐々木直広,「模型実験による落石崩壊メカニズムに関する研究」,第38回地盤工学研究発表会(秋田),2003.7. 地盤工学会,「地盤工学数式入門」,pp.134−135,2001.5. 深田隆弘,泉並良二,森泰樹,「斜面上転石の振動計測を目的としたシステム構築と計測結果に関する考察」,第65回土木学会年次学術講演会(北海道),2010.9. 地盤工学会,「設計用地盤定数の決め方−土質編−」,p.23およびp.80,2007.12. 地盤工学会,「N値とc・φの活用法」,p132,2005.10.
本発明は、上記状況に鑑みて、簡便な方法による振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、転石の加振時の振動計測からこの転石の固有振動数を特定し、前記転石の根入れ深さを推定し、この推定された根入れ深さに基づいて前記転石の全体形を把握し、前記転石の滑動に対する安定度FS と前記転石の転倒に対する安定度FR を基に前記転石の落石危険度を評価することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の滑動力は地盤の主働土圧と転石自重の斜面方向成分、前記転石の抵抗力は地盤の受働土圧と転石底面および側面の摩擦力と粘着力の合力となることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の滑動に対する安定度FS と、前記転石の転倒に対する安定度FR は、
S =PP +Wcosθ・tanφ+(ab+2bd)・c/PA +Wsinθ …(6)
R =Wcosθ×(b/2)+PP ×(2/3)・d/Wsinθ×〔(h/2)−d〕 …(7)
A ={1/2γd2 ・tan2 〔45°−(φ/2)−2cd・tan
〔45°−(φ/2)}×a …(8)
P ={1/2γd2 ・tan2 〔45°+(φ/2)+2cd・tan
〔45°+(φ/2)}×a …(9)
ここで、FS :斜面上転石の滑動に対する安定度
A :根入れ地盤の主働土圧(kN)
P :根入れ地盤の受働土圧(kN)
W:転石の重量(kN)
θ:斜面勾配(°)
φ:地盤のせん断抵抗角(°)
a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
b:転石の斜面傾斜方向の幅(m)
d:転石の根入れ深さ(m)
c:地盤の粘着力(kN/m2
R :斜面上転石の転倒に対する安定度
h:転石の高さ(m,h=h0 +d)
0 :転石の露出部分の高さ(m)
γ:地盤の単位体積重量(kN/m3
a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
によって与えられることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の根入れ比d/h0 を指標として、広範な鉄道沿線斜面から不安定な転石を絞り込む1次スクリーニングに利用することを特徴とする。
本発明によれば、転石の根入れ深さを推定し、この推定された根入れ深さに基づいて斜面上転石の全体形を把握し、この転石の滑動や転倒の力学的な安定度FS とFR を基に落石危険度を評価することができる。
本発明に係る基礎的な振動を利用した転石の根入れ深さの推定方法の実験を示す図である。 根入れ深さ0とみなした場合の固有振動数を示す図である。 傾斜地盤における解析モデル(3次元有限要素法)を示す図である。 傾斜地盤における解析モデルの諸元を示す図である。 傾斜地盤における固有値解析結果を示す図である。 転石の滑動に対する安定度を示す図である。 転石の転倒に対する安定度を示す図である。 斜面Aの概要を示す模式図である。 斜面Bの概要を示す模式図である。 斜面Aの転石の例を示す図面代用写真である。 斜面Bの転石の例を示す図面代用写真である。 斜面上転石の振動計測イメージ図である。 斜面における転石の振動計測状況を示す図面代用写真である。 転石の形状近似を示す図である。 鉄道沿線斜面における調査転石を示す図面代用写真である。 2005年から2009年の落石の発生形態(転石型・はく落型)別の件数データを示す図である。
本発明の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、転石の加振時の振動計測からこの転石の固有振動数を特定し、前記転石の根入れ深さを推定し、この推定された根入れ深さに基づいて前記転石の全体形を把握し、前記転石の滑動に対する安定度FS と前記転石の転倒に対する安定度FR を基に前記転石の落石危険度を評価する。
以下、本発明に係る振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法について説明する。
まず、振動を利用した転石の根入れ深さの推定方法について説明する。
定量的な落石危険度評価方法を確立するためには、転石の振動特性を把握すること、そして転石型落石の力学的な発生メカニズムを考慮することが重要であることを述べた。そこで、振動を利用して転石の根入れ深さを把握し、力学的安定度を計算することで落石危険度を定量的に評価することができないかと考えた。
図1は本発明に係る基礎的な振動を利用した転石の根入れ深さの推定方法の実験を示す図、図2はその根入れ深さ0とみなした場合の固有振動数の模式図である。
本発明者らは、既に、転石を地盤中に根入れを有する剛体に模擬し、剛体の大きさ、重量、地盤固さ、根入れ深さなどの条件を変えて、ハンマー打撃時に計測した加速度波形から固有振動数を算定する基礎的な実験(図1)と、転石や地盤をモデル化した3次元有限要素法による固有値解析を通して、下記の式 (1) 〜 (4) により転石の根入れ深さを推定する方法を提案(上記非特許文献9,29参照) し、さらに、これを2方向からの平均値として下記の式 (5) により求めることにより、根入れ深さの推定長を±5cm程度の誤差で推定できることを実証している。
d=0.396f/f0 * −0.394 …(1)
0 * =0.719Q1 2 +0.745 …(2)
1 =1/2π√〔EAg/B(1−v2 )IP W〕 …(3)
2 =√〔(b/h0 2 /(b/h0 2 +1〕 …(4)
d(上バー付き)=(dx +dy )/2 …(5)
ここで、d:根入れ深さの推定長(m)
f:転石の実測固有振動数(Hz)
0 * :転石(露出部分)を根入れ0とみなした場合の固有振動数(Hz)(図2参照)
1 :地盤をばねとみなしたときの転石(露出部分)の基本振動数(Hz)
2 :転石(露出部分)の形状から決まる特性値
E:転石まわりの地盤の変形係数(kN/m2
A:転石(露出部分)の底面積(m2
g:重力加速度(m/s2
B:転石(露出部分)の短辺長さ (m)
ν:ポアソン比 (一般に0.3)
p :形状係数
W:転石(露出部分)の重量(kN)
b:転石の打撃方向の幅 (m)
0 :転石(露出部分)の高さ (m)
d(上バー付き):平均根入れ深さ(m)
x :x方向打撃の固有振動数から算定される根入れ深さ(m)
y :y方向打撃の固有振動数から算定される根入れ深さ(m)
本発明では、上記を前提として、斜面における転石の振動と力学的安定度に基づく落石危険度評価方法について説明する。
(1) 傾斜地盤における転石の振動
前記した水平地盤における固有値解析(3次元有限要素法)を傾斜地盤1に適用し、斜面における転石2の固有振動数を求める。
図3は本発明に係る傾斜地盤における解析モデルの一例を示す図、図4は傾斜地盤における解析モデルの諸元の模式図であり、解析条件は水平地盤で行ったもの(上記非特許文献9,29参照)と同様とし、解析ケースは図4に示す諸元を用いて、表1のとおり解析ケース2ケース、18とおり(寸法2とおり×根入れ比3とおり×傾斜角度3とおり)とする。
傾斜地盤1における固有値解析結果を、横軸に傾斜角度θ、縦軸に傾斜方向の固有振動数fy をとり、図5に示す。この図5から、固有振動数は、いずれのケースにおいても傾斜の影響を受けずにほぼ一定の値となっていることが分かる。
(2) 力学的安定度に基づく落石危険度
次に、斜面における滑動および転倒に対する転石2の力学的安定度を用いて、落石危険度を定義する。ここで転石2のモデル化については、転石を円柱体に近似した村上、箭内(上記非特許文献22,23参照) の研究のほか、直方体に近似した沖村、鳥居ら(上記非特許文献30,31参照) の研究も参考にする。
滑動に対する安定度は、根入れ地盤の破壊に対する安全率として考えることができ、図6に示すとおり、滑動力は地盤の主働土圧と転石自重の斜面方向成分、抵抗力は地盤の受働土圧と転石底面および側面の摩擦力と粘着力の合力となる。ここで転石側面の摩擦力については、摩擦係数と土圧係数の1より小さい2つの係数が掛かることと、根入れ深さが大きくないことを考えれば、粘着力などの他の抵抗力と比べて小さな値となる。そのため安全側の評価であることに加え、計算の簡便性も考慮してこれを無視することとし、滑動に対する安定度FS を下記式 (6) により定義する。
一方、転石の転倒に対する安定度は、図7に示すように支点まわりのモーメントで考える。転倒モーメントは転石自重の斜面方向成分によるもの、抵抗モーメントは転石自重の斜面直角方向成分によるものと転石上部の地盤の受働土圧によるものの合モーメントとなる。
したがって転倒に対する安定度FR は,下記式 (7) で定義する。
なお、下記式 (6) および式 (7) における根入れ地盤の主働土圧と受働土圧は、せん断抵抗力と粘着力がある場合のランキン土圧(上記非特許文献32参照) として、それぞれ下記式 (8) ,式 (9) で与える。
S =〔PP +Wcosθ・tanφ+(ab+2bd)・c〕/(PA +Wsinθ) …(6)
R =(Wcosθ×b/2+PP ×2/3・d)/〔Wsinθ×(h/2−d)〕 …(7)
A =〔(1/2)γd2 ・tan2 (45°−φ/2)−2cd・tan
(45°−φ/2)〕×a …(8)
P =〔1/2γd2 ・tan2 (45°+φ/2)+2cd・tan
(45°+φ/2)〕×a …(9)
ここで、FS :斜面上転石の滑動に対する安定度
A :根入れ地盤の主働土圧(kN)
P :根入れ地盤の受働土圧(kN)
W:転石の重量(kN)
θ:斜面勾配(°)
φ:地盤のせん断抵抗角(°)
a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
b:転石の斜面傾斜方向の幅(m)
d:転石の根入れ深さ(m)
c:地盤の粘着力(kN/m2
R :斜面上転石の転倒に対する安定度
h:転石の高さ(m,h=h0 +d)
0 :転石の露出部分の高さ(m)
γ:地盤の単位体積重量(kN/m3
a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
次に、実斜面における適用と検証について説明する。
(3) 調査斜面と転石
本発明における落石危険度評価方法を実斜面に適用し、その有効性について検証する。図8および図9にそれぞれ斜面AおよびBの代表断面を示す。
図8において、10は斜面A、11は露岩、12は多数の転石、13は倒木、14は簡易柵、15は落石止柵、16は石積壁、17は鉄道線路、18は道路であり、図9において、20は斜面B、21は多数の転石、22は露岩、23は作業道、24,26は落石止柵、25,27は石積壁、28は鉄道線路、29は道路である。
検証のため、斜面途中に不安定な岩塊が多数存在する、図8に示す斜面A及び図9に示す斜面Bの2箇所を調査斜面として選定した。なおテストフィールドであるため、鉄道線路17,28際の落石止柵15,26や斜面途中の簡易柵14などの落石対策が既に行われている場所である。
斜面A,Bはいずれも線路左側の等斉斜面であり、斜面の傾斜勾配は約40°である。ただし、転石まわりには局所的に傾斜勾配が大きくなっているところも存在している。
地質は斜面Aが崖錐、斜面Bは表層に厚く土砂が堆積している。それぞれの斜面A,Bで簡易貫入試験を3箇所ずつ実施しており、その概略の位置およびNd 値をあわせて図示する。表層50cm程度まではNd 値が1〜5程度、それ以深で10〜30程度となっている。
また、どちらも斜面上方の露岩11,22を発生源とする転石12,21が斜面途中に多数存在しており、斜面Aから12個、斜面Bから10個を調査対象転石として選定した。
図面代用写真1(図10)と図面代用写真2(図11)に、それぞれ斜面A,斜面Bに存在する転石の一例を示す。岩種は流紋岩質の溶結凝灰岩で、硬質で角ばった形状をした転石が多く見られる。
(4) 振動計測方法
振動計測機器は、接道条件や作業条件が必ずしも良好でない鉄道沿線の急傾斜地などでも使用性に優れていることが必要がある。そこでプリアンプ内蔵の機器を採用し、シンプルかつコンパクトなシステム構成としている(上記非特許文献33参照) 。振動計測のイメージは図12に示すように、斜面上転石31に加速度計32を固定し、ゴムハンマー33で打撃した時の加速度波形をAD変換器34でAD変換してパソコンPC35に記録する。また計測は、図13に示す図面代用写真3のとおり作業員2名程度で行うことができる。このようにして計測した加速度波形を高速フーリエ変換し、フーリエスペクトルが最大となる卓越振動数を転石の固有振動数として算定する(上記非特許文献9,29参照) 。
(5) 斜面における地盤の変形係数の評価
地盤の変形係数は、急斜面においても測定できる方法として簡易貫入試験によるNd 値により評価する。Nd 値とN値には、一般的にNd =(1〜3)Nの関係がある(上記非特許文献34参照) 。
ここで上記した根入れ深さの推定式(4)において重要なf0 * が分母にあり、このf0 * が上記式 (3) において地盤の変形係数を含むQ1 〔上記式 (1) 〕と関係していることから、根入れ深さを過大に算定しないためにはQ1 を大きく見積もる方がよい。したがってN=Nd とし、変形係数とN値の一般的な関係であるE=700N(kN/m2 )(上記非特許文献34参照) を用い、これを動的なひずみレベルに対応した2倍相当値(上記非特許文献9,29参照) として、下記式 (10) により地盤の変形係数を求めることとする。なお本願で対象とする転石の露出高さが最大でも1m程度であり、根入れ深さがその半分の50cm程度(根入れ比0.5以上)あれば十分に安定であると考え、地盤の評価は深さ50cmの位置のNd 値で行うこととした。
また、地盤の粘着力cとN値の関係(上記非特許文献35参照) は、斜面の概略安定計算に用いられるc=N/16(kgf/cm2 )〔=6N(kN/m2 )〕として、下記の式 (11) により評価することとする。
E=2×700Nd =1400Nd …(10)
c=6Nd …(11)
(6) 転石露出部分の形状近似
本発明が提案する方法で根入れ深さを推定するためには、まず転石の露出部分の形状を把握する必要がある(上記非特許文献9、29参照) 。
このため、図14に示すように転石41の露出部分の外形寸法を、傾斜に沿った斜面走向方向の寸法a、斜面方向寸法b、斜面直角方向高さh0 の直方体42に近似することとする。ただし、その重量は、直方体42に内接するだ円球体の半分として下記式 (12) により求める。
これは前述したように、根入れ深さを過大に算定しないためにもQ1 〔上記式 (1) 〕を大きく見積もるようにするためであり、結果として根入れ深さを安全側に推定できる。
W=ρ・4/3π・(a/2)・(b/2)・h0 ・1/2=0.52・ρ・a・b・h0 …(12)
ここで、ρ:転石の単位体積重量(kN/m3
a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
b:転石の斜面傾斜方向の幅(m)
0 :転石の露出部分の高さ(m)
(7) 振動計測に基づく根入れ深さの推定
表2に、調査転石の番号、図14の表記にしたがった転石の寸法、転石まわりの斜面傾斜角、振動計測の結果得られる転石の固有振動数(fx :斜面走向方向の固有振動数、fy :斜面傾斜方向の固有振動数)を整理する。振動計測は2009年10月と2011年11月の2回実施している。
転石A−3は根入れ0であったため、2011年調査時には落下して発見できなかった。そのためA−12を新たに調査転石とした。また転石B−9は倒木のため2011年の計測をすることができなかった。また固有振動数の経年比較では顕著な差異が見られないことから、2年程度の経年では転石の不安定化は大きく進展しなかったと考えられる。
さらに、この振動計測結果に基づき、上記式 (1) 〜式 (4) による根入れ深さの推定長を算出した結果も表2にあわせて示す。
(8) 力学的安定度に基づく落石危険度評価の提案
次に、推定した根入れ深さの平均長を用いて、斜面における転石の滑動および転倒の安定度を上記式 (6) 、式 (7) により算定する。
これらの計算結果を表3に示す。なお計算の結果、推定長がマイナスとなるものについては根入れ深さを0としている。
ここで不安定な転石の候補と考えられる根入れ深さが50cm未満となった転石をピックアップしてみると、A−1、A−3、A−4、A−10、B−2、B−3、B−4、B−6、B−9、B−10の10個である。2011年調査時に落下していた転石A−3は根入れ深さが0と算定され、不安定な転石であったことが示された。
次に根入れ深さのみで危険度を評価するのではなく、転石の根入れ比d/h0 で見ると、A−1、A−3、A−4、B−6などが根入れ比0.25未満となっている。
さらに斜面における力学的安定度が1.2未満となるものとしては、滑動に対するものがA−1、A−3、A−4、B−6で、転倒に対するものは比較的露出高さの低い転石を選んだため1.2未満となるものはなかった。
以上のように根入れ深さ、根入れ比、滑動および転倒に対する安定度などを算定することにより、落石危険度を定量的に評価することができる。
一方で、例えば根入れ比d/h0 が0.25以下となるものを不安定な転石として1次スクリーニングすることにより、広範な鉄道沿線斜面から詳細調査が必要となる転石を絞り込むことができるなど、現場において効率的な危険度評価方法とすることも期待できる。
(9) 本発明の危険度評価方法の検証
本発明の落石危険度評価方法の有効性を検証するために、根入れ深さの現地確認(転石8個)を行うとともに、落石危険度振動調査法(以下「既存手法」という)による判定結果(転石11個)との比較を行う。
調査転石のうち根入れ深さの平均長が50cm未満と判定されたものを中心に、実際に掘削して根入れ部の状況を確認した。根入れ深さを確認した転石、振動計測に基づく根入れ深さの推定長、そして根入れ深さの実測長とその平均長を表4に示す。
また、転石の根入れ深さの確認状況の写真を図15に示す。地中の根入れ部を明確にするために、スプレーで露出部と地表面の境界を明示した後に、根入れ部の掘削を行った。図15において、(a)A−10:掘削前、(b)A−10:掘削後、(c)A−10:根入れ確認状況、(d)B−3:掘削前、(e)B−3:掘削後、(f)B−3:根入れ確認状況、(g)B−4:掘削前、(h)B−4:掘削後、(i)B−4:根入れ確認状況、(j)B−10:掘削前、(k)B−10:掘削後、(l)B−10:根入れ確認状況、(m)A−5:外観、(n)A−8:外観、(o)A−11:外観を示している。
実際の転石は根入れ部の形状が複雑であるため、根入れ深さが一定値とならない場合も多く、実測長にもばらつきがある。しかしながら実測した根入れ深さの平均的な値は、本発明の方法に基づく根入れ深さの推定長と合致し、安全側もしくは最大でも+5cm程度の差である。
次に、本発明の方法と既存手法による危険度評価結果の比較について述べる。本発明の方法と既存手法の判定が一致したものは、既存手法で判定した転石11個のうち5個である。その判定内容は、A−3:不安定、A−4:不安定、B−2:安定、B−7:安定、B−9:安定(表3、本発明の方法と既存手法の比較欄の記号「○」)である。
本発明の方法と既存手法が異なる判定をしたものは、残りの6個で、既存手法ではこれら6個の転石をすべて不安定と判定している。この6個のうち、本発明の方法による推定で根入れ深さが50cm未満となったものは、A−10:推定長27cm、B−3:同18cm、B−4:9cmの3個(表3、記号「△」)である。本発明の方法と既存手法で異なる判定をしているが、これらの転石については根入れ深さが小さく、揺れやすい転石であったといえる。しかしながら根入れ深さが小さく揺れやすい転石であったとしても、斜面における力学的な安定度を計算すると、滑動および転倒に対する安定度は大きく、すなわち落石危険度の小さい転石であるということができる。なお、転石A−10、B−3、B−4については、表4で示したように実際に根入れ部の掘削を行って根入れ深さを実測しており、本発明の方法による根入れ深さの平均推定長と実測平均長はほぼ一致していることを確認している。
さらに、本発明の方法と既存手法で異なる判定をした残る3個のA−5、A−8、A−11(表3、記号「※」)について述べる。これらの転石に関する既存手法の計測データ(表3)を詳しく見てみると、RMS速度振幅比がx方向またはy方向いずれかで2未満(判定基準では安定)となっているものがあり、卓越振動数も25.0〜30.7Hzの値を示しており、判定基準の30Hzに近い値となっている。すなわち、この3個の転石は、既存手法による判定でも安定領域と不安定領域の境界に位置する転石であるといえる。また転石A−5、A−8、A−11は表2の寸法のとおり、底面の2辺(a,b)に比べ露出高さ(h0 )は小さく、扁平で安定した形状をしている。
以上のことから、本発明の方法と既存手法で異なる判定結果となったものもあるが、既存手法による評価は根入れ深さの小さい揺れやすい転石を判別しており、転石の形状、根入れ深さや斜面の傾斜を考慮した安定度までを判定することは難しいと考えられる。最終的に落石発生につながる不安定さを評価する指標としては、滑動や転倒に対する力学的な安定度が有力であり、これを算定することのできる本発明の方法の有効性が示されたものと考えている。
また、この落石危険度評価方法は鉄道沿線の実斜面において適用し、その有効性を確認した。
本発明で得られた知見を結論として以下にまとめる。
(A) 発生源における落石危険度の評価方法は、落石の発生メカニズムが十分に解明されていないこともあり、現在においても過去の落石事例の統計分析等に基づく経験的なものとなっている。そこで転石型落石を対象として、転石の根入れ状態に着目するとともに、斜面における力学的安定度と関係づけた客観的・定量的な評価方法を検討した。
(B) 本発明の方法は、加振時の振動計測から固有振動数を特定し、転石の根入れ深さをまず推定する。根入れ深さが分かると斜面上転石の全体形が把握できるので、転石の滑動や転倒の力学的な安定度FS やFR などを基に落石危険度を評価することができる。また、根入れ比d/h0 を指標として、広範な鉄道沿線斜面から不安定な転石を絞り込む1次スクリーニングに利用することも考えられる。
(C) 本発明の方法を、鉄道沿線の実斜面における転石の危険度評価に適用した。そして、危険度が高いと判断した転石の根入れ部を実際に掘削した結果、転石の平均的な根入れ深さを推定できることが分かった。また、既存の危険度調査法との比較を行った結果、本発明の方法の有効性を確認することができた。
(D) 定量的な落石危険度評価方法が確立されていない現状において、専門技術者でなくとも取り扱いが容易な計測機器を使用した本発明の方法は、落石発生メカニズムに基づき現場技術者が理解した上で判定できる評価方法の第一歩となると考えている。従前の採点法などで行われてきた判定結果との照合事例を蓄積することで、本発明の方法の有効性を高めることができると考えている。
本発明の新しい落石危険度評価方法は鉄道のみならず、道路などの他の分野においても適用可能である。今後、複雑な形状を有する実転石の形状近似や地盤の変形係数の評価の方法、さらに根入れ深さ推定式の一層の精度向上など、新しい落石危険度評価方法のシステム化に向けた取り組に発展させていくことができると考えられる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法は、簡便な方法による振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法として利用可能である。
1 傾斜地盤
2,41 転石
10 斜面A
11,22 露岩
12,21 多数の転石
13 倒木
14 簡易柵
15,24,26 落石止柵
16,25,27 石積壁
17,28 鉄道線路
18,29 道路
20 斜面B
23 作業道
31 斜面上転石
32 加速度計
33 ゴムハンマー
34 AD変換器
35 パソコンPC
42 直方体

Claims (4)

  1. 転石の加振時の振動計測から該転石の固有振動数を特定し、前記転石の根入れ深さを推定し、該推定された根入れ深さに基づいて前記転石の全体形を把握し、前記転石の滑動に対する安定度FS と前記転石の転倒に対する安定度FR を基に前記転石の落石危険度を評価することを特徴とする振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法。
  2. 請求項1記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の滑動力は地盤の主働土圧と転石自重の斜面方向成分、前記転石の抵抗力は地盤の受働土圧と転石底面および側面の摩擦力と粘着力の合力となることを特徴とする振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法。
  3. 請求項1記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の滑動に対する安定度FS と、前記転石の転倒に対する安定度FR は、
    S =PP +Wcosθ・tanφ+(ab+2bd)・c/PA +Wsinθ …(6)
    R =Wcosθ×(b/2)+PP ×(2/3)・d/Wsinθ×〔(h/2)−d〕 …(7)
    A ={1/2γd2 ・tan2 〔45°−(φ/2)−2cd・tan
    〔45°−(φ/2)}×a …(8)
    P ={1/2γd2 ・tan2 〔45°+(φ/2)+2cd・tan
    〔45°+(φ/2)}×a …(9)
    ここで、FS :斜面上転石の滑動に対する安定度
    A :根入れ地盤の主働土圧(kN)
    P :根入れ地盤の受働土圧(kN)
    W:転石の重量(kN)
    θ:斜面勾配(°)
    φ:地盤のせん断抵抗角(°)
    a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
    b:転石の斜面傾斜方向の幅(m)
    d:転石の根入れ深さ(m)
    c:地盤の粘着力(kN/m2
    R :斜面上転石の転倒に対する安定度
    h:転石の高さ(m,h=h0 +d)
    0 :転石の露出部分の高さ(m)
    γ:地盤の単位体積重量(kN/m3
    a:転石の斜面走向方向の奥行き(m)
    によって与えられることを特徴とする振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法。
  4. 請求項3記載の振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法において、前記転石の根入れ比d/h0 を指標として、広範な鉄道沿線斜面から不安定な転石を絞り込む1次スクリーニングに利用することを特徴とする振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法。
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