JP2014085153A - 転動部品の寿命評価方法および寿命評価装置 - Google Patents

転動部品の寿命評価方法および寿命評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼材からなる部材を有する転動部品において該部材中に侵入する拡散性水素起因の損傷寿命を季節因子を排除して正確に評価できる寿命評価方法および寿命評価装置を提供する。
【解決手段】鋼材からなる部材を有する転動部品において該部材中に侵入する拡散性水素起因の損傷寿命を評価する評価方法であって、容器6に囲まれた試験空間7内の容積絶対湿度を一定保持しながら、該試験空間7内において上記部材表面で金属接触が起こる状態で上記転動部品を運転する。
【選択図】図1

Description

本発明は、転がり軸受や歯車などの転動部品の寿命を評価する方法および装置に関する。特に、鋼材からなる転動部品において、侵入する拡散性水素に起因する損傷寿命を評価する方法および装置に関する。
転がり軸受や歯車などの転動部品の寿命評価を行なう場合、実際の使用条件に近い状態で運転して評価を行なうことは、寿命評価精度を向上させる上で重要である。従来の転がり軸受の寿命評価装置として、軸受に作用させるラジアル荷重を任意に設定でき、かつ変動荷重も付加できる装置が提案されている(特許文献1参照)。
一方、転がり軸受や歯車などの転動部品は、特に、水が潤滑剤に混入する条件下、すべりを伴う条件下で使用されると、水や潤滑剤が分解して水素が発生する。この水素が鋼材中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期損傷を起こすことがある。この理由は、接触要素間の接触面で金属接触が起き、金属新生面が露出すると、水や潤滑剤の分解による水素の発生、および、該水素の鋼材中への侵入が促進されるからである。特に、鋼材中に侵入した水素の中でも、拡散性水素が水素脆性の原因と考えられている。
上記現象は、水や潤滑油を滴下しながらエメリー紙で転動部品用鋼をアブレシブ摩耗させた後に昇温脱離水素分析を行った結果、鋼材中から拡散性水素が明瞭に検出された実験事実によって証明されている(非特許文献1参照)。この非特許文献1によれば、潤滑油よりも水を滴下した方が、鋼材中から多くの拡散性水素が検出されている。したがって、すべりが生じるような条件で用いられる転動部品の潤滑由などに水分が混入すると、さらに水素が発生し、より鋼材中に侵入しやすくなると考えられる。水素は、鋼の疲労強度を著しく低下させるため(非特許文献2参照)、さほど大きくない最大接触面圧でも水素が侵入することで早期損傷を発生させる原因となりうる。また、転動部品は、今後ますます水素が発生し易い条件で使用される傾向にある。
特開平11−064167号公報
谷本啓, 田中宏昌, 杉村丈一, トライボロジー会議予稿集, (2010-5 東京), 203-204. ワイ.マツバラ、エッチ.ハマダ( Y. Matsubara and H. Hamada)著, Bearing Steel Technology, ASTM STP1465, J. M. Beswick Ed., (2007), 153-166.
しかしながら、特許文献1に示すような、転がり軸受などの転動部品に対する従来の寿命評価方法では、試験環境の湿度は制御されていない。上述のように、水分の混入は、転動接触下で水素を発生させ、その一部は鋼材中に侵入する。実際の転動部品の使用条件下では、直接的な水滴などの浸入のほか、雰囲気中の水蒸気も水分の供給源になり得る。転動部品の評価試験を行なうラボ内の容積絶対湿度は、夏季には高く、冬季には低いため、発生・侵入する拡散性水素量が異なる。そのため、水素起因の損傷寿命を正確に評価することができない。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、鋼材からなる部材を有する転動部品において該部材中に侵入する拡散性水素起因の損傷寿命を季節因子を排除して正確に評価できる寿命評価方法および寿命評価装置を提供することを目的とする。
本発明の転動部品の寿命評価方法は、鋼材からなる部材を有する転動部品において該部材中に侵入する拡散性水素起因の損傷寿命を評価する評価方法であって、試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持しながら、該試験空間内において上記部材表面で金属接触が起こる状態で上記転動部品を運転することを特徴とする。なお、本発明において「転動部品」とは、転がり軸受やギヤなど転がり・すべりを行なう機械要素を含む部品をいう。また、本発明における「容積絶対湿度」(飽和水蒸気量)は、大気の単位容積に含まれる水蒸気の重量(単位:g/m)を示すものである。
また、「拡散性水素」とは、結晶粒界などにトラップされていない比較的自由に動き得る水素のことをいう。この拡散性水素は、室温で時間と共に鋼材中から外に放出されるものである。本発明における「拡散性水素量」は、200℃までの加熱で放出される水素の総量として求めている。また、「非拡散性水素」は、200℃をこえる加熱温度ではじめて鋼材中から放出される水素である。「拡散性水素」と「非拡散性水素」との合計量が、鋼材中に侵入した水素の総量である。なお、本発明で採用した水素量の具体的な測定方法は、後述の実施例に示すとおりである。
上記試験空間内の温度を一定に保持して上記転動部品を運転することを特徴とする。また、上記容積絶対湿度が5g/cm以上であることを特徴とする。
上記評価中に、運転を停止する時間を設けることを特徴とする。また、上記評価中に、運転速度を加減速することを特徴とする。
上記転動部品が、転がり軸受であることを特徴とする。また、上記転がり軸受の外輪および/または内輪に、1点以上の変形を与えつつ運転することを特徴とする。
本発明の転動部品の寿命評価装置は、本発明の転動部品の寿命評価方法に用いる寿命評価装置であって、上記転動部品の運転装置および上記試験空間の湿度調整装置とを備えてなり、上記湿度調整装置により試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持しながら、該試験空間内において上記運転装置により上記部材表面で金属接触が起こる状態で上記転動部品を運転することを特徴とする。
本発明の転動部品の寿命評価方法は、試験空間内の容積絶対湿度を一定保持しながら、該試験空間内において鋼材からなる部材の表面で金属接触が起こる状態で転動部品を運転するので、拡散性水素起因の損傷寿命の評価において、発生・侵入する拡散性水素量に影響を与える季節因子を排除することができる。この結果、鋼材、潤滑剤、潤滑添加剤、表面処理などの耐水素性を正確に評価することができる。
本発明の転動部品の寿命評価装置の一例である摩耗試験機の概略図である。 摩耗試験片の形状を示す平面図および側面図である。 昇温脱離水素放出プロファイルの例を示す図である。 容積絶対湿度と拡散性水素量との関係を示す図である。 屋外での油中水濃度の経時変化の測定装置の概略図である。 屋外での油中水濃度の経時変化の測定結果(開放状態)を示す図である。 屋外での油中水濃度の経時変化の測定結果(密閉状態)を示す図である。 図7の破線間の油中水濃度差と温度差との関係を示す図である。 動力学解析結果(一定速度、変形なし)を示す図である。 動力学解析結果(一定速度、変形あり)を示す図である。 動力学解析結果(加速、変形なし)を示す図である。 油浴給油の転動装置の模式図である。 循環給油の転動装置の模式図である。
本発明の評価方法および評価装置が対象とする転動部品は、転がり軸受や歯車、およびそれらの構成部品であり、これらが組み込まれる装置としては、例えば、ガスタービン(ジェット給油)、油圧ポンプ(油圧作動油浸漬)、印刷機(循環給油)、撚線機(ジェット給油または循環給油)、製紙機械(循環給油)、産業機械用減速機(循環給油)、ロボット減速機(油浴潤滑)、航空機エンジン(ジェット給油)、建設機械各部(油浴潤滑)、鉄鋼圧延機ロールネック(オイルミスト潤滑)、圧延機用減速機(循環給油)、工作機(エアオイル潤滑)、鉄道車輌車軸(はねかけ給油)、鉄道車輌駆動装置(油浴潤滑)、鉱山機械竪型ミルタイヤローラ(循環給油または油浴潤滑)、ミル用減速機(循環給油または油浴潤滑)、風力発電装置増速機(循環給油または油浴潤滑)、自動車変速機(はねかけ給油)などが挙げられる。なお、括弧内は、油潤滑方式である。
転動部品は、その潤滑に用いる潤滑油中や、使用雰囲気中に水分が混入・侵入する環境下で用いられる。この水分が混入等する環境について説明する。大気に完全に解放された用途で使用する場合は、大気中からの水分の混入の可能性がある。また、油潤滑方式の転動装置内の転動部品(転がり軸受等)の潤滑油が接触している雰囲気環境は、特に屋外で用いられる転動装置においては、日々の寒暖、乾湿の変動により、マクロ的には転動装置が閉鎖されていたとしても、ミクロ的には開放系であるため、装置内外の環境間で常時呼吸していると考えられる。この潤滑油中に水分が混入する場合としては、例えば、図12(油浴給油) や図13(循環給油) のような機構が考えられる。両図において、上側の図のように、作動中は転動装置内の温度が外気温よりも高くなるため、転動装置内は正圧になり、内気の一部が外部に放出される。一方、両図の下側のように、停止して転動装置内の温度が外気温よりも低下すると、転動装置内は負圧になるため、転動装置内に外気が入り込む。入り込んだ外気が高湿の場合、転動装置内に結露が生じ、潤滑油中に水分が混入する。このように、通常の使用でも潤滑油中への水分混入が考えられる。これらの現象は、後述する実施例の図8等の結果からも確認できる。転動装置が、豪雨や強い風雨にさらされる場合には、さらに多くの水分が混入すると考えられる。
転動部品は、その運動形態から、接触要素間で金属接触が起こり、すべりを伴う条件などで使用されるため、鋼材部材表面における金属新生面の露出により拡散性水素が鋼材中に侵入しやすい等、水素の影響を受けやすい部品といえる。また、上記のとおり、密閉状態で使用する転動部品であっても、温度変化により外気のやりとりが生じる。取り込む外気の容積絶対湿度は、季節や天候により変化するため、転動部品を構成する鋼材部材に侵入する拡散性水素量も変化する。これらより、転動部品の拡散性水素を起因とする損傷寿命を評価するための試験としては、試験空間における湿度を管理することが重要と考えた。
このような点に鑑み、本発明の転動部品の寿命評価方法は、(1)試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持しながら、(2)試験空間内において鋼材からなる部材表面で金属接触が起こる状態で転動部品を運転するものである。また、本発明の転動部品の寿命評価装置は、本発明の転動部品の寿命評価方法に用いる寿命評価装置である。
(1)試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持する。すなわち、試験空間を閉じた空間とし、ある程度の水分を試験空間内の雰囲気中に有し、この試験空間内の容積絶対湿度を、評価運転中において設定する任意の値に一定に保つ。具体的には、試験部を密閉容器などで囲い、必要に応じて調湿機を設けて、試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持する。この容器や調湿機が、本発明の転動部品の評価装置における湿度調整装置である。水分の試験空間内への導入は、調湿機により雰囲気中に混入させる、容器内に液滴として滴下するなどの方法が採用できる。
試験空間内の容積絶対湿度は、5g/cm以上であることが好ましい。好ましくは、7〜26g/cmである。容積絶対湿度を高く保つことで、拡散性水素の鋼材中への侵入を促進させることができる。容積絶対湿度が5g/cm未満であると、試験空間内の雰囲気中の水分量が少なく、水素の発生量および侵入量も少なくなり、評価時間が長くなりすぎるおそれがある。
(2)試験空間内において鋼材からなる部材表面で金属接触が起こる状態で転動部品を運転する。転動部品において、鋼材からなる部材表面で金属接触が起こる状態とは、該部材と他の金属製部材とが、継続的または断続的に接触する状態をいう。また、転動部品内において、複数の鋼材からなる部材を有し、これらが接触する態様の他、試験時に別部材の相手金属材を準備し、これと接触させる態様としてもよい。接触要素間で金属接触が起き、金属新生面が露出すると、該新生面で水や潤滑剤の分解による水素の発生、鋼材中への侵入が促進される。このような現象は、実際の転動部品では偶発的に起きると考えられる。一方、鋼材、潤滑剤、潤滑添加剤、表面処理などの耐水素性を評価するためには、新生面を適度に生成し続けることが重要となる。
本発明が対象とする鋼材としては、軸受等に一般的に使用される鋼であり、例えば、例えば、高炭素クロム軸受鋼(SUJ1、SUJ2、SUJ3、SUJ4、SUJ5等;JIS G 4805)、浸炭鋼(SCr420、SCM420等;JIS G 4053)、ステンレス鋼(SUS440C等;JIS G 4303)、高速度鋼(M50等)などが挙げられる。また、これらの鋼材に、高周波熱処理、窒化処理などを施したものも対象となる。
また、転動部品を運転するとは、その部品の構成に応じて、転動や回転を行なうことである。例えば、転動部品が転がり軸受である場合には、内外輪を該内外輪間で転動する転動体を介して相対的に回転させ、転動部品が歯車である場合は、該歯車を複数噛み合わせつつ回転させる。また、鋼材からなる試験片を転動部品と模擬して、これを用いて摺動、転動、回転させるような場合も、本発明における「転動部品を運転する」に含むものとする。例えば、鋼材からなる所定形状の試験片を、表面にアルミナや炭化珪素等の砥粒を固着させた研磨紙に摺動させること等が挙げられる。本発明の転動部品の評価装置では、これらの運転態様に応じた運転装置を用いて、試験空間となる容器内で上記のような運転を行なう。
本発明の転動部品の寿命評価方法では、試験空間内の容積絶対湿度に加えて、該試験空間内の温度も一定に保持しながら、転動部品を運転することが好ましい。拡散性水素の拡散速度は温度に依存するため、温度を一定とすることで、拡散性水素の侵入量のばらつきを抑制できる。
運転は、例えば一定速度で運転することができる。回転運転である場合は、回転速度を一定とし、回転数は8000min−1以上であることが望ましい。回転数が8000min−1未満であると、生じるすべりが小さくなるためである。
また、すべりによる水素発生を促すためには、運転速度を加減速することがより望ましい。水素発生をより確実に促すためには、加減速の回転数は最低1000min−1以下、最高8000min−1以上とすることが望ましい。上記条件を満たさない場合、すべりによる水素発生が少なくなり、評価時間が非常に長くなり、比較評価が困難となるおそれがある。また、一定回転または加減速の繰り返しの間に、運転を停止する停止時間を設けることで、温度上昇した転動部品が冷え、部品の内圧が下がり、試験空間内の高湿な空気を吸い込むため、水素発生が促進される。
鋼材部材表面における最大接触面圧は、2.0GPa以上が望ましい。実際の転動部品はそれ以下の最大接触面圧で用いられることもあるが、耐水素性を短時間で評価するためには、ある程度高くする必要がある。また、転動部品が転がり軸受の場合、外輪および/または内輪に1点以上で変形を与えつつ運転することが好ましい。変形量としては、真円度で5μm以上とすることが望ましい。このような条件を満たす場合、すべりが多くなり水素発生が促進される。なお、「真円度」は、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさをいい、半径法等により測定される(JIS B0621)。
本発明の転動部品の寿命評価方法では、接触要素間に潤滑剤を介在させた状態で評価を行なうことが好ましい。使用雰囲気中の水分が、潤滑剤中に混入し、この潤滑剤が摺動界面に介在し、摺動界面の金属新生面において、混入している水や潤滑剤自体の分解により水素が発生し、鋼材中への侵入が促進される。また、この条件下での潤滑剤や潤滑添加剤の耐水素性に関する評価が可能である。
潤滑剤としては、任意の潤滑油やグリースが使用できる。潤滑油およびグリース基油としては、特に限定されず、転動部品の分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、高度精製油、エステル系合成油、合成炭化水素油、リン酸エステル油、シリコーン油、フッ素油などの合成油、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油などの鉱油などが使用できる。また、これらの混合油も使用できる。グリースとする際の増ちょう剤としては、特に限定されず、転動部品の分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。
本発明の転動部品の寿命評価方法は、試験空間内の容積絶対湿度を一定保持しながら、試験空間内において鋼材からなる部材の表面で金属接触が起こる状態で転動部品を運転することで、鋼材や潤滑剤を含めた転動部品の耐水素性を正確に評価することができる。このため、従来よりも寒冷または灼熱下での建設作業に用いられる建設機械や、従来では積極的に設置検討がなされていなかった洋上や山岳地帯などへ設置する風力発電装置に用いる転動部品において、耐水素性を考慮した十分な評価を行なった上での設置が可能となる。この結果、メンテナンス頻度を減少させること等が可能となる。
本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
<摩耗試験>
図1に示す試験機を用いて転動部品の摩耗試験を行なった。試験機1は、主軸2に設けられた試験片3(3個)に、定盤4上の研磨紙5との間で滑りと摩耗を与える構造である。試験片3には、自転および公転による滑りが加わる。試験片3は、軸受用鋼SUJ2を用い、旋削、熱処理、研削の工程で図2の形状に製作した。熱処理はSUJ2の標準焼入焼戻条件である。3つの試験片3の総摩耗面積は312mm、研磨紙の番手は#220、研磨紙の砥粒材質はエメリー、公転周速は0.59m/s、自転周速は0.03m/s、面圧は85.4kPa、容器6に囲まれた試験空間7内の温度は30℃、温湿度調節時間は30min、試験時間は40minの条件下で、容器6に囲まれた試験空間7内の容積絶対湿度を7〜26g/mの数水準に設定して、摩耗試験を行なった。試験では油(タービンオイルVG100)を孔6aより1ml/minで連続滴下した。試験空間7内の温度および湿度の調整は、図示しない温湿度調整装置により行なった。
図1に示す試験機が、本発明の寿命評価装置の一例である。転動部品の寿命は、試験片における経過時間と摩耗状態や剥離状態とから評価できる。
摩耗試験終了後から20分後に水素分析を開始した。図3に昇温脱離水素分析で得られた水素放出プロファイルの例を示す。これは、容積絶対湿度7.3g/mに設定した際の測定結果である。図中に矢印を付した100℃付近にピークを持ち、常温〜200℃で脱離した水素量を拡散性水素量と定義している。昇温速度は180℃/min、水素検出器はガスクロマトグラフである。
図4に試験空間内の容積絶対湿度と試験片に侵入した拡散性水素量の関係を示す。容積絶対湿度が高くなるにつれて、拡散性水素量が増加することから、摩耗試験で試験片に侵入する拡散性水素は、試験空間内の容積絶対湿度に大きく依存するといえる。したがって、試験空間内の容積絶対湿度を制御することは、拡散性水素の侵入量を制御することになり、容積絶対湿度を高く保てば、拡散性水素の侵入を促すことができる。
<屋外での油中水濃度の経時変化の測定>
図5に示す測定装置11を用いて屋外での油中水濃度の経時変化の測定を行なった。試験油(ポリグリコール油)12をステンレス容器13に入れ、外気と接触する開放状態と、密閉フタ14で外気との接触をなくした密閉状態の2条件において、気温、相対湿度、油温、油中水濃度の経時変化を8日間測定した。試験油は、スターラー21と撹拌子22を用いて撹拌しながら試験を行なった。気温と相対湿度は温湿度計15で、油温は熱電対16で測定した。油中水濃度は、静電容量値と油温で決まることから、その関係を予め検量線として求めた。プローブ17と変換機18とからなる静電容量計19で静電容量値を測定し、検量線から油中水濃度を求めた。なお、各測定値は記録計20で記録した。図6に開放状態の測定結果を、図7に密閉状態の測定結果をそれぞれ示す。なお、図6および図7における横軸は、日付である。
図6に示すように、開放状態では、前半期の雨の日には、油中水濃度が単調に増加した。後半期の晴れの日には、油中水濃度は変動しながら減少しており、相対湿度が高いときには油中水濃度が増加し、相対湿度が低いときには減少する傾向が見られた。一方、図7に示すように、密閉状態では、測定終了時の油中水濃度は測定前とほとんど変わらなかったが、後半期の晴れの日には油中水濃度に変動が見られた。
図8に、図7に示した破線で区切った9つの範囲での油中水濃度差と温度差の関係を示す。油中水濃度差と温度差に明瞭な直線相関がある。密閉状態あっても、温度変化により外気のやりとりが生じるといえる。したがって、運転の間に停止時間を設けることが望ましい。これは、実際の転動部品の使用条件に即しており、停止時間に転動部品が冷え、内圧が下がり、高湿な空気が吸い込まれ、水素の発生が促進されるためである。
<動力学解析>
転がり軸受の公知の動力学解析モデル(特開2012−26500号公報に示すもの)をもとに、軸受を玉軸受として、汎用機構解析ソフト(DM Adams R3)を用いて動力学解析を行なった。動力学解析結果を図9、10、11に示す。図9の計算条件は、軸受:6203、回転速度:一定速度8700min−1(外輪回転)、最大面圧:2.0GPa、変形:変形なし。図10の計算条件は、軸受:6203、回転速度:一定速度8700min−1(外輪回転)、最大面圧:2.0GPa、変形:外輪外径の2箇所を押えて、真円度で10μmの変形を与えた。図11の計算条件は、軸受:6203、回転速度:初速8.7min−1、加速度8700min−1/sでの加速(外輪回転)、最大面圧:2.0GPa、変形:変形なし。
図9、10、11の図の構成は次の通りである。左側の図は対象となる軸受のモデル図である。右上のグラフは玉と内輪軌道面の最大面圧部のすべり率の時刻歴変化を示したグラフであり、右下のグラフは最大面圧の時刻歴変化を示したグラフである。この玉は、左側の図中に7つあるうちの「右図の玉」と示した1つである。なお、すべり率は、玉と内輪の速度差を、玉と内輪の平均速度で割ったものであり、玉の速度をV1、内輪の速度をV2とした場合には、すべり率(%)=(V1−V2)/((V1+V2)/2)×100で表される。
一定速度、変形なしの条件(図9)では、すべり率は約5%であり、一定速度、変形ありの条件(図10)では、変形部分を高い負荷を受けた玉が通過するときに、すべり率が約5%から約6%に増加した。一方、加速時(図11)においては、負荷域の入り口部のすべり率が約250%に増加した。
図9と図11との比較より、すべりによる水素発生を促すため、加減速運転がより望ましい。上記条件を満たさない場合、すべりによる水素発生が少なくなり、評価時間が非常に長くなり、比較評価が困難となるおそれがある。また、図9と図10との比較より、試験軸受の外輪もしくは内輪、またはその両方を1点以上で変形し、その変形が5μm以上であることが望ましい。上記条件を満たす場合、すべりが多くなり水素発生が促進され、比較評価が容易となる。
本発明の転動部品の寿命評価方法は、拡散性水素起因の損傷寿命を正確に評価できるので、ガスタービン、油圧ポンプ、印刷機、撚線機、製紙機械、産業機械用減速機、ロボット減速機、航空機エンジン、建設機械各部、鉄鋼圧延機ロールネック、圧延機用減速機、工作機、鉄道車輌車軸、鉄道車輌駆動装置、ミル用減速機、風力発電装置増速機、自動車変速機などに用いられる転がり軸受や歯車の評価に好適に利用できる。
1 試験機(転動部品の寿命評価装置)
2 主軸
3 試験片
4 定盤
5 研磨紙
6 容器
7 試験空間
11 測定装置
12 試験油
13 ステンレス容器
14 密閉フタ
15 温湿度計
16 熱電対
17 プローブ
18 変換機
19 静電容量計
20 記録計
21 スターラー
22 撹拌子

Claims (8)

  1. 鋼材からなる部材を有する転動部品において該部材中に侵入する拡散性水素起因の損傷寿命を評価する評価方法であって、
    試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持しながら、該試験空間内において前記部材表面で金属接触が起こる状態で前記転動部品を運転することを特徴とする転動部品の寿命評価方法。
  2. 前記試験空間内の温度を一定に保持して前記転動部品を運転することを特徴とする請求項1記載の転動部品の寿命評価方法。
  3. 前記評価中に、運転を停止する時間を設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の転動部品の寿命評価方法。
  4. 前記評価中に、運転速度を加減速することを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3記載の転動部品の寿命評価方法。
  5. 前記容積絶対湿度が5g/m以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の転動部品の寿命評価方法。
  6. 前記転動部品が、転がり軸受であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載の転動部品の寿命評価方法。
  7. 前記転がり軸受の外輪および/または内輪に、1点以上の変形を与えつつ運転することを特徴とする請求項6記載の転動部品の寿命評価方法。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項記載の転動部品の寿命評価方法に用いる転動部品の寿命評価装置であって、
    前記転動部品の運転装置および前記試験空間の湿度調整装置とを備えてなり、
    前記湿度調整装置により前記試験空間内の容積絶対湿度を一定に保持しながら、該試験空間内において前記運転装置により前記部材表面で金属接触が起こる状態で前記転動部品を運転することを特徴とする転動部品の寿命評価装置。
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