JP2014084549A - 合成樹脂製コイルの製造方法 - Google Patents

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【課題】 任意の口径及びピッチの合成樹脂製コイルを容易に得られることを課題とする。
【解決手段】 以下の(A)〜(D)の工程を含むことにより、合成樹脂製コイルを得る。(A)低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体3を準備する工程、(B)表面平滑な耐熱性丸棒2に、低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ熱可塑性樹脂製線材1を螺旋状に巻回し、熱固定して賦型軸を準備する工程、(C)螺旋状に巻回された隣り合う線材1,1間に集束体3を挿入して、螺旋状に集束体3を巻回する工程、(D)線材1及び集束体3が螺旋状に巻回された状態で、熱処理を施し、集束体3中の低融点重合体のみを軟化又は溶融させて、集束体3を合成樹脂製コイル線3’とする工程、及び(E)コイル線3’を丸棒2から取り外すと共に線材1と分離する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、合成樹脂製コイルの製造方法に関し、任意の口径及びピッチの合成樹脂製コイルを容易に得ることができる方法に関するものである。
金属製コイルは、錆びを生じ易く耐久性に劣ること、着色できないこと、重量が重いこと等の理由により、従来より、これに代えて、種々の合成樹脂製コイルが提案されている。本件出願人も、低融点重合体と高融点重合体とで構成されている繊維集束体を用いて、合成樹脂製コイルを製造する方法を提案している(特許文献1及び2)。
特許文献1及び2に記載された合成樹脂製コイルの製造方法は、具体的には、以下のようなものである。まず、低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体を準備する。この繊維集束体を賦型軸に巻き付けた状態で熱処理し、低融点重合体を軟化又は溶融させて、高融点重合体を含む繊維集束体を融着一体化させ、繊維集束体を合成樹脂製コイル線とする。その後、賦型軸に巻き付いている合成樹脂製コイル線を取り外して、合成樹脂製コイルを得るというものである。
特願2011−175984号明細書 特願2012−201922号明細書
本発明は、特許文献1及び2記載の方法において、繊維集束体の巻回方法に工夫を施したもので、任意の口径及びピッチの合成樹脂製コイルを容易に得られることを課題とする。
本発明は、繊維集束体を巻回する際に、予め耐熱性棒に熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回するか、又は同時に耐熱性棒に熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回することによって作成し、耐熱性棒の外径によって合成樹脂製コイルの口径を決定でき、熱可塑性樹脂製線材の径によって合成樹脂製コイルのピッチを決定できるようにしたものである。
すなわち、請求項1に係る発明(以下、「第一発明」という。)は、予め耐熱性棒に熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回する方法であり、具体的には、低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体を準備する工程、耐熱性棒に、前記低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回し、熱固定して賦型軸を準備する工程、螺旋状に巻回された隣り合う前記熱可塑性樹脂製線材間に前記繊維集束体を挿入して、螺旋状に前記繊維集束体を巻回する工程、前記熱可塑性樹脂製線材及び前記繊維集束体が螺旋状に巻回された状態で、熱処理を施し、前記繊維集束体中の前記低融点重合体のみを軟化又は溶融させて、該繊維集束体を合成樹脂製コイル線とする工程、及び前記合成樹脂製コイル線を、前記耐熱性棒から取り外すと共に前記熱可塑性樹脂製線材と分離することを特徴とする合成樹脂製コイルの製造方法に関するものである。
請求項2に係る発明(以下、「第二発明」という。)は、同時に耐熱性棒に熱可塑性樹脂製線材と繊維集束体を螺旋状に巻回する方法であり、具体的には、低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体を準備する工程、前記繊維集束体と、前記低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ熱可塑性樹脂製線材とを引き揃えて複線体を準備する工程、前記複線体を耐熱性棒に螺旋状に巻回することによって、螺旋状に巻回された前記熱可塑性樹脂製線材間に前記繊維集束体が挿入されて螺旋状に巻回された状態とする工程、前記熱可塑性樹脂製線材及び前記繊維集束体が螺旋状に巻回された状態で、熱処理を施し、前記繊維集束体中の前記低融点重合体のみを軟化又は溶融させて、該繊維集束体を合成樹脂製コイル線とする工程、及び前記合成樹脂製コイル線を、前記耐熱性棒から取り外すと共に前記熱可塑性樹脂製線材と分離することを特徴とする合成樹脂製コイルの製造方法に関するものである。
まず、本発明においては繊維集束体を準備する。繊維集束体は、低融点重合体及び高融点重合体を含んでいる。具体的には、低融点重合体よりなる繊維と高融点重合体よりなる繊維を混合集束して繊維集束体としてもよいし、低融点重合体成分と高融点重合体成分よりなる複合繊維を集束して繊維集束体としてもよい。繊維は短繊維であっても長繊維であってもよい。特に、本発明においては、低融点重合体を鞘成分とし高融点重合体を芯成分とする芯鞘型複合長繊維を集束してなるマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。低融点重合体は、80〜160℃程度で軟化又は溶融するものであるのが好ましい。そして、高融点重合体は、低融点重合体が軟化又は溶融する温度で、軟化したり溶融したりすることがないものであり、軟化点差又は融点差が20℃以上であるのが好ましい。低融点重合体と高融点重合体の好ましい組み合わせとしては、低融点ポリエステル/高融点ポリエステル、低融点ポリプロピレン/高融点ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン、低融点ナイロン/高融点ナイロン等が挙げられる。
繊維集束体は、その断面において二層構造となっているのが好ましい。すなわち、繊維集束体の内層が低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維群で形成されており、その表層が低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ繊維群によって形成されているのが好ましい。かかる二層構造とすることにより、繊維集束体を熱処理した後、熱可塑性樹脂製線材と分離しやすくなる。なぜなら、繊維集束体中の低融点重合体が表層に殆ど存在していないため、繊維集束体とそれに接触している熱可塑性樹脂製線材とが、熱処理時に接着しにくいからである。
第一発明においては、予め耐熱性棒に熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回することによって、賦型軸を得る。耐熱性棒としては、主として表面平滑な耐熱性丸棒が用いられ、好ましくは、表面平滑な金属製丸棒が用いられる。熱可塑性樹脂製線材の種類としては、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸又は紡績糸等の線状のものであれば用いることができるが、表面が平滑なモノフィラメント糸を用いるのが好ましい。表面が平滑な方が、熱処理時において繊維集束体との接着の程度が低く、熱処理後に合成樹脂製コイル線と分離しやすいからである。熱可塑性樹脂製線材は、繊維集束体中の低融点重合体の融点よりも高い融点を持つものである。熱可塑性樹脂製線材の融点が低融点重合体の融点以下であると、熱処理時に溶融又は軟化して、繊維集束体と融着し、熱処理後に合成樹脂製コイル線と分離しにくくなるので、好ましくない。熱可塑性樹脂製線材は、螺旋状に巻回された後、加熱されて螺旋形態に熱固定される。加熱温度は、熱可塑性樹脂製線材が可塑化する温度であればよい。たとえば、熱可塑性樹脂製線材として、直径約1mmのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸を用いたときには、加熱温度180℃程度で加熱時間5分程度で、螺旋形態に熱固定される。
熱可塑性樹脂製線材は、任意のピッチで螺旋状に巻回される。図1では、隣り合う熱可塑性樹脂製線材1間に、一定の隙間を設けて巻回した例を示したが、隙間がなくても差し支えない。前者の場合は、この隙間に繊維集束体3が挿入されて、螺旋状に巻回される。また、後者の場合には、表面平滑な耐熱性丸棒2を用いれば、螺旋形態となった熱可塑性樹脂製線材1が上下方向に自由に動いて、繊維集束体3が隣り合う熱可塑性樹脂製線材1,1間に挿入される。いずれの場合も、巻回された繊維集束体3のピッチは、(熱可塑性樹脂製線材1の径+繊維集束体3の径)となる。耐熱性丸棒2は、熱可塑性樹脂製線材1が熱固定される際に、及び繊維集束体3が熱処理される際に、何らの影響を受けないものであればよい。具体的には、金属製丸棒を用いるのがよい。繊維集束体3は、この丸棒に螺旋状に巻回されるものであるから、丸棒の直径によって、その口径が決定される。すなわち、本発明の賦型軸を用いれば、丸棒2の直径によって巻回された螺旋の口径が決定でき、熱可塑性樹脂製線材1及び繊維集束体3の径によって、そのピッチが決定できるのである。なお、特許文献2記載の発明を利用した場合は、丸棒2の直径が螺旋の口径に相当せず、またそのピッチも熱可塑性樹脂製線材1及び繊維集束体3の径の合計に相当しないが、この場合であっても、丸棒2の直径によって螺旋の口径を決定でき、またそのピッチも熱可塑性樹脂製線材1及び繊維集束体3の径の合計によって決定できることに変わりない。なおまた、耐熱性棒として丸棒を使用せずに、横断面が楕円形等の他の形状であっても、その径によって、螺旋状に巻回された繊維集束体3の口径が決定されることは、いうまでもない。
第二発明においては、熱可塑性樹脂製線材1のみを耐熱性丸棒2に螺旋状に巻回せずに、繊維集束体3と熱可塑性樹脂製線材1とを引き揃えて複線体を準備しておき、この複線体を耐熱性丸棒2に螺旋状に巻回する。複線体を巻回する際、螺旋状に巻回された熱可塑性樹脂製線材1間に繊維集束体3が挿入されて螺旋状に巻回された状態とする。すなわち、複線体に捩れを与えずに、繊維集束体3と熱可塑性樹脂製線材1とが平行を維持したまま、耐熱製丸棒2に螺旋状に巻回する。これによって、第二発明の場合も、耐熱性丸棒2の直径により螺旋の口径を決定でき、またそのピッチも熱可塑性樹脂製線材1及び繊維集束体3の径の合計によって決定できる。
第一発明及び第二発明のいずれの場合であっても、熱可塑性樹脂製線材1及び繊維集束体3が、耐熱性丸棒2に螺旋状に巻回された状態となり、この状態で熱処理を施す。熱処理の条件は、繊維集束体3中の低融点重合体のみが軟化又は溶融する温度である。すなわち、高融点重合体は当初の繊維形態を保持したままであり、低融点重合体のみが軟化又は溶融する。これによって、繊維集束体3は、低融点重合体によって繊維形態の高融点重合体が融着し、繊維集束体3全体が一体化した合成樹脂製コイル線3’が得られる。そして、この合成樹脂製コイル線3’中には、高融点重合体が当初の繊維形態を保持した状態で存在している。この後、合成樹脂製コイル線3’を冷却し、熱可塑性樹脂製線材1と共に耐熱性丸棒2から取り外す。そして、合成樹脂製コイル線3’を熱可塑性樹脂製線材1と分離することによって、合成樹脂製コイルを得ることができる。
本発明に係る方法によれば、耐熱性棒として種々の径のものを選択し、熱可塑性樹脂製線材として種々の径のものを選択することができ、任意の口径及び任意のピッチの合成樹脂製コイルを得ることができるという効果を奏する。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明は、耐熱性棒及び熱可塑性樹脂製線材の両者により賦型軸が構成されるため、任意の口径及びピッチの合成樹脂製コイルが得られるとの技術的思想に基づくものとして、解釈されるべきである。
(繊維集束体の準備)
低融点重合体として融点161℃の共重合ポリエステルを準備し、高融点重合体として融点260℃のポリエチレンテレフタレートを準備した。そして、複合溶融紡糸法によって、低融点重合体が鞘成分で高融点重合体が芯成分で構成された、繊度約11デシテックスの芯鞘型複合長繊維を得た。なお、鞘成分と芯成分の質量比は、鞘成分:芯成分=1:2.7とした。この芯鞘型複合長繊維を96本束ねて、1100デシテックス/96フィラメントのマルチフィラメント糸を得た。さらに、このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し組紐を得た。得られた組紐の径は1.0mmであり、これを繊維集束体とした。
(賦型軸の準備)
表面が平滑で直径6mmのステンレンス製丸棒を準備した。また、直径0.7mmのポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸を準備した。モノフィラメント糸を構成しているポリエチレンテレフタレートは、前記した融点260℃の高融点重合体と同一のものである。そして、ステンレス製丸棒に、モノフィラメント糸を間隔を開けずに螺旋状に(螺旋となった隣り合うモノフィラメント糸同士が接触している状態で)巻回した。そして、この巻回状態下において、180℃で5分間加熱して、熱固定した。以上のようにして、賦型軸を準備した。
(合成樹脂製コイルの製造)
組紐を賦型軸の隣り合うモノフィラメント糸間に挿入して、組紐を螺旋状に巻回した。そして、この状態を保持したまま、180℃で10分の条件で、熱風処理を施した後、空冷した。この結果、組紐中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分が軟化又は溶融して融着し、組紐中の芯鞘型複合長繊維が一体化した合成樹脂製コイル線となった。この後、ステンレス製丸棒を抜いて、螺旋状に巻回しているモノフィラメント糸及び合成樹脂製コイル線を取り外し、さらにモノフィラメント糸と合成樹脂製コイル線を分離して、合成樹脂製コイルを得た。得られた合成樹脂製コイルの口径は6mmで、そのピッチは1.7mmであった。すなわち、合成樹脂製コイルの口径は丸棒の直径に相当し、そのピッチはマルチフィラメント糸及び組紐の径の合計に相当するものであった。したがって、本実施例によれば、合成樹脂製コイルの口径並びにピッチは、丸棒の直径並びに組紐及びモノフィラメント糸の径により、決定しうることが分かる。
丸棒に熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回した賦型軸の平面図である。 賦型軸に繊維集束体を螺旋状に巻回した状態を示した平面図である。
1 熱可塑性樹脂製線材
2 表面平滑な耐熱性丸棒
3 繊維集束体
3’ 合成樹脂製コイル線

Claims (6)

  1. 低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体を準備する工程、
    耐熱性棒に、前記低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ熱可塑性樹脂製線材を螺旋状に巻回し、熱固定して賦型軸を準備する工程、
    螺旋状に巻回された隣り合う前記熱可塑性樹脂製線材間に前記繊維集束体を挿入して、螺旋状に前記繊維集束体を巻回する工程、
    前記熱可塑性樹脂製線材及び前記繊維集束体が螺旋状に巻回された状態で、熱処理を施し、前記繊維集束体中の前記低融点重合体のみを軟化又は溶融させて、該繊維集束体を合成樹脂製コイル線とする工程、及び
    前記合成樹脂製コイル線を、前記耐熱性棒から取り外すと共に前記熱可塑性樹脂製線材と分離することを特徴とする合成樹脂製コイルの製造方法。
  2. 低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維集束体を準備する工程、
    前記繊維集束体と、前記低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ熱可塑性樹脂製線材とを引き揃えて複線体を準備する工程、
    前記複線体を耐熱性棒に螺旋状に巻回することによって、螺旋状に巻回された前記熱可塑性樹脂製線材間に前記繊維集束体が挿入されて螺旋状に巻回された状態とする工程、
    前記熱可塑性樹脂製線材及び前記繊維集束体が螺旋状に巻回された状態で、熱処理を施し、前記繊維集束体中の前記低融点重合体のみを軟化又は溶融させて、該繊維集束体を合成樹脂製コイル線とする工程、及び
    前記合成樹脂製コイル線を、前記耐熱性棒から取り外すと共に前記熱可塑性樹脂製線材と分離することを特徴とする合成樹脂製コイルの製造方法。
  3. 繊維集束体が、低融点重合体を鞘成分とし高融点重合体を芯成分とする芯鞘型複合長繊維を集束してなるマルチフィラメント糸で構成されている請求項1又は2記載の合成樹脂製コイルの製造方法。
  4. 繊維集束体は、その内層に低融点重合体及び高融点重合体を含む繊維群で形成されており、その表層が該低融点重合体の融点よりも高い融点を持つ繊維群によって形成されている請求項1又は2記載の合成樹脂製コイルの製造方法。
  5. 耐熱性棒が表面平滑な金属製丸棒である請求項1又は2記載の合成樹脂製コイルの製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂製線材がモノフィラメント糸である請求項1又は2記載の合成樹脂製コイルの製造方法。
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