JP2014081010A - 摩擦プレートと摩擦係合装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】引き摺り現象の抑制効果を維持したまま、ジャダーの発生を抑制することのできる摩擦プレートと摩擦係合装置を提供する。
【解決手段】環状の芯体71と、芯体71の厚さ方向の側面71a、71bに配置される摩擦部材72と、を備え、芯体71はその周方向に沿って、その厚さ方向へ波頂部71tと波底部71sが交互に繰り返される波状を呈しており、芯体71の波頂部71tにおける摩擦部材72tは、芯体71の波底部71sにおける摩擦部材71sよりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い。
【選択図】図3
【解決手段】環状の芯体71と、芯体71の厚さ方向の側面71a、71bに配置される摩擦部材72と、を備え、芯体71はその周方向に沿って、その厚さ方向へ波頂部71tと波底部71sが交互に繰り返される波状を呈しており、芯体71の波頂部71tにおける摩擦部材72tは、芯体71の波底部71sにおける摩擦部材71sよりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い。
【選択図】図3
Description
本発明は摩擦プレートと摩擦係合装置に関し、たとえばクラッチディスクとして用いられる摩擦プレートとそれを用いた摩擦係合装置に関するものである。
従来から、車両用の自動変速機には、変速機構の動力伝達を制動もしくは制動解除するブレーキや動力伝達を断続するクラッチ等の多板式摩擦係合装置が配設されている。この多板式摩擦係合装置は、ドラムやハブの軸線方向で交互に配設されたセパレータプレートおよび摩擦プレートと、油圧によって駆動されるピストンと、を備えている。この多板式摩擦係合装置は、油圧制御装置から供給される油圧によってピストンを駆動させ、セパレータプレートと摩擦プレートを押圧もしくは押圧解放することによって、セパレータプレートと摩擦プレートを当接もしくは開離させ、変速機構の動力伝達を制動もしくは制動解除、または断続している。
ところで、このような多板式摩擦係合装置においては、セパレータプレートと摩擦プレートを開離させた際にそれらの間に介在する潤滑用および冷却用の油によって僅かにトルクが伝達され(「引き摺り現象」ともいう。)、それが変速機構の動力損失の要因となることが知られている。
そこで、従来の多板式摩擦係合装置においては、摩擦プレートの芯体(コアプレート)を波板状に形成するとともに、その芯体に沿って摩擦部材を貼着し、芯体の弾性復元力によってセパレータプレートと摩擦プレートを迅速に開離させ、セパレータプレートと摩擦プレートの間のクリアランスを確保してそれらの間に介在する油を外部へ排出することによって、セパレータプレートと摩擦プレートの間の引き摺り現象を抑制している。
ところで、波板状の摩擦プレートは、セパレータプレートと係合する際、ピストンによる押圧力に応じてその波状部分が次第に撓んでいく。摩擦プレートがセパレータプレートと当接し始めたときには、ピストンによる押圧力が摩擦プレートの波状部分の撓み変形に費やされることや摩擦プレートとセパレータプレートの当接面積が限定されることなどによって摩擦プレートとセパレータプレートの摩擦係数が小さく、ピストンによる押圧力が上昇するに従って摩擦プレートとセパレータプレートの当接面積が増加して摩擦係数が上昇し、摩擦プレートの波状部分が潰れきったときに摩擦プレートとセパレータプレートが完全に当接して所定の摩擦係数に到達し、摩擦プレートとセパレータプレートの回転差が無くなるまでその摩擦係数が維持される。
一方で、平板状の摩擦プレートは、セパレータプレートと当接し始めたときに摩擦プレートとセパレータプレートが摩擦面全体で当接するため、ピストンによる押圧力が上昇しても摩擦プレートとセパレータプレートの摩擦係数は略一定に維持される。
このように、波板状の摩擦プレートを用いた多板式摩擦係合装置においては、摩擦プレートの波状部分が潰れきる前後でピストンの押圧力に対する摩擦係数の変化が不連続となり、平板状の摩擦プレートを用いた場合と比較して、波状部分が潰れきる時点での係合ショックが大きくなるといった問題がある。
このような問題に対し、引き摺り現象の抑制効果を維持したまま、摩擦プレートの波状部分が潰れきる時点でのショックを小さくすることのできる装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている多板式摩擦係合装置は、摩擦プレートが、波の頂部及び底部が放射状に整列する波板状に形成された芯体(コアプレート)と、芯体の波の頂部及び底部に設けられた頂部摩擦部材及び底部摩擦部材と、を有し、頂部摩擦部材の摩擦係数が、底部摩擦部材の摩擦係数よりも高くなるように構成されており、摩擦プレートが、ピストンの押圧によって波板状から平板状に弾性変形することでセパレータプレートと当接し、ピストンの押圧解放によって平板状から波板状に復元することでセパレータプレートと開離する装置である。
特許文献1に開示されている多板式摩擦係合装置によれば、波の頂部及び底部が放射状に整列する波板状に形成された摩擦プレートが、ピストンの押圧力に応じてその波状部分が撓むものの、摩擦プレートの波状部分が潰れきる直前で摩擦係数の低い底部摩擦部材がセパレータプレートと摺接するため、波状部分が潰れきる前後でピストンの押圧力に対する摩擦係数の変化が緩やかになり、摩擦プレートの波状部分が潰れきる時点でのショックが小さくなる。
しかしながら、特許文献1に開示されている多板式摩擦係合装置においては、ピストンによる押圧力が更に上昇すると、波の頂部及び底部に設けられた頂部摩擦部材及び底部摩擦部材が圧縮され、頂部摩擦部材及び底部摩擦部材の気孔率(空隙率)が低下するため、そのような状態で摩擦プレートとセパレータプレートの相対的な回転数の差が大きくなると、摩擦プレートとセパレータプレートの摩擦係数が低下してジャダー(Judder)が発生するといった問題が生じ得る。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、引き摺り現象の抑制効果を維持したまま、ジャダーの発生を抑制することのできる摩擦プレートと摩擦係合装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による摩擦プレートは、環状の芯体と、該芯体の厚さ方向の側面に配置される摩擦部材と、を備える摩擦プレートであって、前記芯体は該芯体の周方向に沿って、該芯体の厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈しており、前記芯体の波頂部における摩擦部材は、前記芯体の波底部における摩擦部材よりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低いものである。
上記する摩擦プレートによれば、摩擦プレートの芯体をその周方向に沿ってその厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波板状に形成し、その芯体の厚さ方向の側面に沿って摩擦部材を配置することによって、たとえば芯体を弾性変形させて摩擦プレートとセパレータプレートを当接させた後に芯体の弾性復元力によって摩擦プレートとセパレータプレートを迅速に開離させ、摩擦プレートとセパレータプレートの間のクリアランスを迅速に確保することができ、それらの間に介在する油を外部へ迅速に排出して摩擦プレートとセパレータプレートの間の引き摺り現象を抑制することができる。また、芯体の波頂部における摩擦部材の気孔率を波底部における摩擦部材の気孔率よりも相対的に高くすることによって、たとえば摩擦プレートとセパレータプレートが当接し始めた際のセパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性を高めることができ、ジャダーの発生を効果的に抑制することができる。また、芯体の波頂部における摩擦部材の弾性率を波底部における摩擦部材の弾性率よりも相対的に低くする、すなわち、芯体の波底部における摩擦部材の弾性率を波頂部における摩擦部材の弾性率よりも相対的に高くすることによって、たとえば摩擦プレートとセパレータプレートが次第に押圧され、摩擦プレートの波頂部における摩擦部材が圧縮されながら摩擦プレートが次第に撓んでいき、その波頂部における摩擦部材の気孔率が次第に低下してセパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性が低下する場合であっても、波底部における摩擦部材とセパレータプレートが当接することによって摩擦プレートの芯体とセパレータプレートとの間隔が確保され、摩擦プレートの波頂部における摩擦部材の更なる圧縮変形が制限され、摩擦プレートの波頂部における摩擦部材の気孔率の低下が抑制され、セパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性の低下が抑制されるため、セパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性を確保してジャダーの発生を効果的に抑制することができる。
ここで、気孔率とは、摩擦部材内の空隙率であって、たとえば単位体積の摩擦部材に対する吸収した油の容積の割合などで表すことができる。
また、本発明の摩擦プレートに適用される芯体は、機械的強度と耐油性と耐熱性を有する材料からなるものであって、芯体の形成素材としては、たとえば、金属材料、エンジニアリング・プラスチック(以下「エンプラ」という。)やスーパー・エンジニアリング・プラスチック(以下「スーパーエンプラ」という。)の材料等を挙げることができる。
金属材料としては、たとえば、鉄、鋼、合金鋼、ステンレス、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステン合金等を挙げることができる。また、エンプラとしては、たとえば、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス繊維強化PET、環状ポリオレフィン(COP)等を挙げることができる。また、スーパーエンプラとしては、たとえば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を挙げることができる。
また、本発明の摩擦プレートに適用される摩擦部材は、主として繊維材料と充填材と熱硬化性樹脂からなるものである。
繊維材料としては、たとえば、セルロース繊維、アラミド繊維、炭素繊維、レーヨン繊維等を挙げることができ、そのうちのいずれか一種を用いてもよいし、そのうちの二種以上を混合して用いてもよい。また、充填材としては、たとえば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、雲母(マイカ)等を挙げることができ、そのうちのいずれか一種を用いてもよいし、そのうちの二種以上を混合して用いてもよい。また、熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を挙げることができる。
また、上記する摩擦プレートは、前記芯体の波頂部における摩擦部材と前記芯体の波底部における摩擦部材が、別部材で形成されかつ双方が間隔を置いて配置されてもよいし、一体に形成されてもよい。
前記芯体の波頂部における摩擦部材と前記芯体の波底部における摩擦部材が、別部材で形成され、かつ双方が間隔を置いて配置されている場合には、たとえばセパレータプレートと摩擦プレートの間に介在する油を波頂部における摩擦部材と波底部における摩擦部材で形成される油溝を介して外部へ排出することができるため、摩擦プレートとセパレータプレートの間の引き摺り現象を効果的に抑制することができる。また、たとえば前記芯体の波頂部における摩擦部材と前記芯体の波底部における摩擦部材が一体に形成されている場合には、たとえば波頂部における摩擦部材と波底部における摩擦部材の間の隙間が排除され、摩擦プレートとセパレータプレートが当接する際の波頂部における摩擦部材の圧縮変形を波底部における摩擦部材によって抑制することができるともに、摩擦部材を芯体の側面に配置する工程を簡素化することができる。
また、前記摩擦プレートは湿式であることが好ましい。
前記摩擦プレートが湿式である場合には、たとえば摩擦プレートとセパレータプレートを滑らかに係合させることができるとともに、摩擦プレートとセパレータプレートの係合時に発生する熱を油を介して外部へ効率的に排出することができる。
また、本発明による摩擦係合装置は、環状の第1の係合部材と環状の第2の係合部材を備え、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材の厚さ方向の側面同士が押圧されて前記第1の係合部材と前記第2の係合部材が摩擦係合する摩擦係合装置であって、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材の少なくとも一方が、環状の芯体と該芯体の厚さ方向の側面に配置される摩擦部材とを備え、前記芯体が該芯体の周方向に沿って該芯体の厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈しており、前記芯体の波頂部における摩擦部材が、前記芯体の波底部における摩擦部材よりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低いものである。
たとえば、上記する前記摩擦係合装置は、スプラインが形成された内周面を有する筒状のドラムと、前記ドラムの内側で該ドラムの軸線上に配置され、かつスプラインが形成された外周面を有する筒状のハブと、軸線方向へ駆動されるピストンと、をさらに備え、前記第1の係合部材は、前記ドラムに対して軸線方向へ摺動し、かつ前記ドラムに同期して回転するように、前記ドラムの内周面に形成されたスプラインに係合しており、前記第2の係合部材は、前記ハブに対して軸線方向へ摺動し、かつ前記ハブに同期して回転するように、前記ハブの外周面に形成されたスプラインに係合しており、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材は、前記ドラムの内周面と前記ハブの外周面の間で軸線方向で並んで配置されており、前記ピストンが軸線方向へ駆動され、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材の厚さ方向の側面同士が押圧されて前記第1の係合部材と前記第2の係合部材が摩擦係合するようになっている。
上記する摩擦係合装置によれば、第1の係合部材と第2の係合部材の少なくとも一方が、環状の芯体とこの芯体の厚さ方向の側面に配置される摩擦部材とを備え、芯体がその周方向に沿ってその厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈していることによって、波状を呈する芯体を弾性変形させて第1の係合部材と第2の係合部材を当接させた後に芯体の弾性復元力によって第1の係合部材と第2の係合部材を迅速に開離させ、第1の係合部材と第2の係合部材の間のクリアランスを迅速に確保することができ、それらの間に介在する油を外部へ迅速に排出して第1の係合部材と第2の係合部材の間の引き摺り現象を抑制することができる。また、芯体の波頂部における摩擦部材の気孔率を波底部における摩擦部材の気孔率よりも相対的に高くすることによって、ピストンによる押圧力によって第1の係合部材と第2の係合部材が押圧されて当接し始めた際の係合部材同士の追従性を高めることができる。また、芯体の波頂部における摩擦部材の弾性率を波底部における摩擦部材の弾性率よりも相対的に低くする、すなわち、芯体の波底部における摩擦部材の弾性率を芯体の波頂部における摩擦部材の弾性率よりも相対的に高くすることによって、ピストンによる押圧力が増加して係合部材同士が次第に押圧され、第1の係合部材と第2の係合部材の少なくとも一方の波頂部における摩擦部材が圧縮されながらその係合部材が次第に弾性的に撓んでいき、その摩擦部材の気孔率が次第に低下して係合部材同士の追従性が低下する場合であっても、芯体の波底部における高弾性率の摩擦部材が他方の係合部材と当接することによって一方の係合部材の波頂部における高気孔率の摩擦部材の更なる圧縮変形が制限され、その波頂部における摩擦部材の気孔率の低下が抑制され、係合部材同士の追従性の低下が抑制されるため、係合部材同士の追従性を確保してジャダーの発生を効果的に抑制することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の摩擦プレートと摩擦係合装置によれば、芯体の波頂部における摩擦部材が、芯体の波底部における摩擦部材よりも気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低いことによって、様々な状況下でたとえばセパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性を高めることができ、セパレータプレートと摩擦プレートの間の引き摺り現象の抑制効果を維持した状態で、ジャダーの発生を効果的に抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の摩擦プレートと摩擦係合装置の実施の形態を説明する。
[摩擦係合装置の実施の形態]
図1は、本発明の摩擦係合装置の実施の形態を分解して示した分解斜視図である。また、図2は、図1で示す摩擦係合装置の縦断面図であって、図2(a)はプレート同士が係合する前の状態を示した図であり、図2(b)はプレート同士が係合した後の状態を示した図である。
図1は、本発明の摩擦係合装置の実施の形態を分解して示した分解斜視図である。また、図2は、図1で示す摩擦係合装置の縦断面図であって、図2(a)はプレート同士が係合する前の状態を示した図であり、図2(b)はプレート同士が係合した後の状態を示した図である。
図1および図2で示すように、本実施の形態の摩擦係合装置10は、主として、クラッチドラム51と、ピストン52と、クラッチハブ53と、セパレータプレート54、55、56、57と、摩擦プレート61、62、63と、クッションプレート64と、スプリング65と、スプリング65を支持する支持プレート66と、スナップリング67と、から構成されている。
クラッチドラム51は、図1で示すように、略円筒状に形成されており、ピストン52やクラッチハブ53等をその内部に収容するために一方の端部51kが開口され、他方の端部51hが閉止されている。また、端部51kと端部51hを繋ぐ円筒部51eの内周面51nには、スプライン51uが形成されている。また、円筒部51eには、その内周面51nから外周面51gへ向かって貫通孔51tが複数形成されており、この貫通孔51tを介してクラッチドラム51の内部を流動した潤滑油がその外部へ排出されるようになっている。
また、クラッチハブ53は、略円筒状に形成されており、クラッチドラム51の内側でその軸線L上に同心配置されており、クラッチドラム51の内周面51nに対向する円筒部53eの外周面53gにはスプライン53sが形成されている。
また、セパレータプレート54、55、56、57はそれぞれ、略円環状に形成されており、その内部にはクラッチハブ53が挿通されるようになっている。それぞれのセパレータプレート54、55、56、57の内周面54n、55n、56n、57nには、クラッチハブ53の外周面53gに形成されたスプライン53sとスプライン係合するスプライン突起54s、55s、56s、57sが形成されており、各セパレータプレート54、55、56、57が、クラッチドラム51とクラッチハブ53の間でクラッチハブ53に対して相対的に軸線L方向へ摺動するとともに、クラッチハブ53と同期して回転するようになっている。
また、摩擦プレート61、62、63はそれぞれ、略円環状に形成されており、その内部にはクラッチハブ53が挿通されるようになっている。それぞれの摩擦プレート61、62、63の外周面61g、62g、63gには、クラッチドラム51の内周面53nに形成されたスプライン51uとスプライン係合するスプライン突起61u、62u、63uが形成されており、各摩擦プレート61、62、63が、クラッチドラム51とクラッチハブ53の間でクラッチドラム51に対して相対的に軸線L方向へ摺動するとともに、クラッチドラム51と同期して回転するようになっている。
ここで、セパレータプレートと摩擦プレートは軸線L方向で交互に配置されており、摩擦プレート61が、セパレータプレート54とセパレータプレート55の間に配置され、摩擦プレート62が、セパレータプレート55とセパレータプレート56の間に配置され、摩擦プレート63が、セパレータプレート56とセパレータプレート57との間に配置されており、隣接するプレート同士が軸線L方向へ相対的に摺動することで摩擦係合したり、係合を解放するようになっている。
また、クッションプレート64は、略円環状に形成されており、クラッチドラム51の内側でセパレータプレート57よりも端部51h側に配置され、その内部にクラッチハブ53が挿通されるようになっている。クッションプレート64は、摩擦プレートと同様にクラッチドラム51とスプライン係合し、クラッチドラム51とクラッチハブ53の間でクラッチドラム51に対して相対的に軸線L方向へ摺動するとともに、クラッチドラム51と同期して回転するようになっている。
ピストン52は、図2で示すように、クラッチドラム51の内部のうち端部51hの近傍に配置されている。ピストン52の端部のうち端部51h側の端部52hは閉止されており、ピストン52の端部52hの側面のうち端部51hに対向する側面52sとクラッチドラム51の内壁面51sによって、ピストン室52pが画成されている。このピストン室52pには、不図示の油圧装置から作動油が供給されるようになっており、ピストン室52pに供給される作動油の油圧によって、ピストン52が、端部51hから離隔する方向へ軸線L方向に沿って摺動し、その端部52kがクッションプレート64を介してセパレータプレート57を押圧するようになっている。
また、支持プレート66は、クラッチドラム51の内部かつピストン52とクラッチハブ53の間に、クラッチドラム51に固定されて配置されている。
スプリング65は、支持プレート66とピストン52の間に、支持プレート66の周方向で略均等に複数配設されており、その付勢力によってピストン52をクッションプレート64から離隔する方向へ付勢するようになっている。そのため、ピストン室52pに作動油が供給されていない状態では、ピストン52の端部52kがクッションプレート64を介してセパレータプレート57を押圧しないようになっている。
また、スナップリング67は一部が欠落した略円筒状に形成されており、クラッチドラム51の端部51kから内側へ突出する突起51jとセパレータプレート54の間に介装され、セパレータプレート54、55、56、57および摩擦プレート61、62、63がクラッチドラム51から脱落しないようになっている。
摩擦係合装置10のプレート同士の係合動作を概説すると、図2(a)で示すように、ピストン室52pに作動油が供給されていない状態では、スプリング65の付勢力によってピストン52の端部52kからクッションプレート64へ押圧力が作用せず、セパレータプレートと摩擦プレートが離間してクラッチドラム51の動力がクラッチハブ53へ伝達されない。
一方、ピストン室52pに不図示の油圧装置から作動油が供給されると、ピストン室52p内の作動油の油圧によって、ピストン52が、スプリング65の付勢力に抗してクラッチドラム51の端部51hから離隔する方向へ軸線L方向に沿って駆動する。これにより、図2(b)で示すように、ピストン52の端部52kがクッションプレート64を押圧し、クッションプレート64がクラッチドラム51に対して軸線L方向へ摺動し、クッションプレート64とセパレータプレート57が当接する。次いで、クッションプレート64がセパレータプレート57を押圧し、セパレータプレート57がクラッチドラム51に対して軸線L方向へ摺動して摩擦プレート63と当接してセパレータプレート57と摩擦プレート63が摩擦係合する。ピストン室52p内の作動油の油圧が大きくなるに従って、セパレータプレートと摩擦プレートが順次、クラッチドラム51やクラッチハブ53に対して軸線L方向へ摺動し、セパレータプレートと摩擦プレートが順次当接して摩擦係合していき、クラッチドラム51とクラッチハブ53が接続されてクラッチドラム51の動力がクラッチハブ53へ伝達される。
なお、ピストン室52pの作動油がピストン室52pの外部へ排出されてその内部の油圧が低下すると、スプリング65の付勢力によって、ピストン52がクッションプレート64と離間する方向へ移動する。これにより、クッションプレート64とセパレータプレート57との当接が解除され、セパレータプレートと摩擦プレートの摩擦係合がそれぞれ解除され、クラッチハブ53に対するクラッチドラム51の動力伝達が遮断される。
[摩擦プレートの実施の形態]
次に、図3〜図6を参照して、図1で示す摩擦係合装置の摩擦プレートの実施の形態をより詳細に説明する。
次に、図3〜図6を参照して、図1で示す摩擦係合装置の摩擦プレートの実施の形態をより詳細に説明する。
図3は、図1で示す摩擦プレートを示した斜視図であり、図4は、図3で示す摩擦プレートを示した図であって、図4(a)はその側面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A矢視図である。また、図5は、図3で示す摩擦プレートを作製する工程を説明したフロー図である。また、図6は、図1で示す摩擦プレートとセパレータプレートの係合動作を説明した縦断面であって、図6(a)はプレート同士が係合する前の状態を示した図であり、図6(b)はプレート同士が係合し始めた状態を示した図であり、図6(c)はプレート同士が係合する途中の状態を示した図であり、図6(d)はプレート同士が完全に係合した後の状態を示した図である。
図3で示すように、略円環状の摩擦プレート61は、主として、略円環状の芯体71と、芯体71の厚さ方向(軸線L方向)の側面71a、71bに配置される摩擦部材72と、から構成されている。
芯体71は、その周方向(図中、S方向)に沿って厚さ方向へ突出する波頂部71tと厚さ方向へ窪んだ波底部71sが交互に繰り返して配置されており、その厚さ方向へ起伏する波状に形成されている(図中、波頂部71tと波底部71sはそれぞれ12箇所)。より具体的には、図4(b)で示すように、芯体71の側面71aでは、その周方向に沿って波頂部71taと波底部71saが交互に繰り返して配置されており、芯体71の側面71bでは、側面71aの波頂部71taに対応する箇所に波底部71sbが配置され、側面71aの波底部71saに対応する箇所に波頂部71tbが配置されており、各側面71a、71bが芯体71の厚さ方向へ起伏する波状に形成されている。なお、芯体71の外周面71g(摩擦プレート61の外周面61g)に、上記するスプライン突起61uが形成されている。
ここで、波頂部71tとは、少なくとも波状に形成された芯体71の厚さ方向の側面の傾きが厚さ方向で突出する方向から窪んだ方向へ変化する領域であって、周方向で所定長さを有する領域を含んだ部位である。また、波底部71sとは、少なくとも波状に形成された芯体71の厚さ方向の側面の傾きが厚さ方向で窪んだ方向から突出する方向へ変化する領域を含んだ部位であって、たとえば波頂部71tを除く部位である。
また、摩擦部材72は、図3で示すように、芯体71の波頂部71tに配設される摩擦部材72tと芯体71の波底部71sに配設される摩擦部材72sから構成されており、摩擦部材72tと摩擦部材72sがそれぞれ別部材で形成されている。より具体的には、図4(a)、(b)で示すように、芯体71の側面71aの波頂部71taにはそれぞれ、芯体71の厚さ方向(軸線L方向)および径方向(図4(a)中、R方向)の形状に合わせて気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い略台形状の摩擦部材72tが配設されており、側面71aの波底部71saにはそれぞれ、芯体71の厚さ方向および径方向の形状に合わせて気孔率が相対的に低くかつ弾性率が相対的に高い二つの略台形状の摩擦部材72sが配設されている。また、芯体71の側面71bの波頂部71tbにはそれぞれ、芯体71の厚さ方向および径方向の形状に合わせて気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い二つの略台形状の摩擦部材72tが配設されており、側面71bの波底部71sbにはそれぞれ、芯体71の厚さ方向および径方向の形状に合わせて気孔率が相対的に低くかつ弾性率が相対的に高い略台形状の摩擦部材72sが配設されている。また、芯体71の両側面71a、71bに配設された摩擦部材72t、72sはそれぞれ、芯体71の周方向(図4(a)中、S方向)で間隔を置いて配置されている。
ここで、摩擦プレート61の作製方法を概説すると、図5で示すように、摩擦プレート61の作製工程は、主として、芯体71を作製する工程(S1)と、摩擦部材72を作製する工程(S2)と、芯体71と摩擦部材72を組立てる工程(S3)と、から構成されている。
まず、芯体71を作製する工程(S1)では、金属材料等の弾性を有する平板から略円環状の基材を打ち抜き(S11)、その基材の周方向に沿ってその厚さ方向で起伏するように略円環状の基材を波状に成形する(ウェーブ加工)(S12)。次いで、その波板状の基材を洗浄して芯体とし(S13)、その厚さ方向の側面の所定箇所に接着剤を塗布する(S14)。
また、摩擦部材72を作製する工程(S2)では、天然パルプ繊維や有機合成繊維等を撚り合わせて繊維基材とし、この繊維基材に充填材や摩擦調整剤を配合して抄造して抄紙体を作製する(抄紙)(S21)。次いで、その抄紙体に希釈した熱硬化性樹脂溶液を含浸させ(S22)、それを乾燥させて希釈溶剤を揮発させた後、その熱硬化性樹脂を加熱して硬化させ(キュア)(S23)、それを所定形状(たとえば、略台形状)に裁断する(S24)。ここで、熱硬化性樹脂の加熱硬化時の温度や圧力、熱硬化性樹脂溶液の粘度などを調整することによって、作製される摩擦部材の気孔率(空隙率)や弾性率などを調整する。
芯体71と摩擦部材72を組立てる工程(S3)では、所定形状に裁断した気孔率(空隙率)や弾性率の異なる摩擦部材72を芯体71の所定箇所に貼り付けて接着し(S31)、所定の環境下で接着剤を硬化させて摩擦部材72を芯体71に固着させる(S32)。ここで、芯体71の波頂部71tには、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦部材72tを貼り付けて接着し、芯体71の波底部71sには、気孔率が相対的に低くかつ弾性率が相対的に高い摩擦部材72sを貼り付けて接着する。これにより、芯体71の波頂部71tに気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦部材72tが配設され、芯体71の波底部71sに気孔率が相対的に低くかつ弾性率が相対的に高い摩擦部材72sが配設された、周方向(図4(a)中、S方向)に沿って厚さ方向へ起伏する略円環状かつ波板状の摩擦プレート61を作製することができる。
次に、図1で示す摩擦プレート61とセパレータプレート54、55の係合動作をより具体的に説明すると、図6(a)で示すように、たとえばピストン室52pに作動油が供給されていない状態では、摩擦プレート61とセパレータプレート54、55は離間して配置され、摩擦プレート61とセパレータプレート54、55が係合していない。
次いで、たとえばピストン室52pに不図示の油圧装置から作動油が供給されると、ピストン52の押圧力によってセパレータプレート55がクラッチハブ53に対して相対的に軸線L方向へ摺動し、摩擦プレート61とセパレータプレート55が当接する。そして、摩擦プレート61が、セパレータプレート55の押圧力によってクラッチドラム51に対して相対的に軸線L方向へ摺動し、摩擦プレート61とセパレータプレート54が当接する。
ここで、摩擦プレート61の芯体71は、その厚さ方向の両側面71a、71bにおいて、その周方向に沿って波頂部71tと波底部71sが交互に配置されてその厚さ方向へ起伏する波状に形成されており、芯体71の両側面71a、71bの波頂部71ta、71tbには、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦部材72tが配置されている。そのため、摩擦プレート61とセパレータプレート54、55はそれぞれ、波頂部71tに配置された気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦部材72tを介して当接し始める。波頂部71tに配置された高気孔率の摩擦部材72tはセパレータプレート54、55の表面形状に追従するため、摩擦プレート61とセパレータプレート54、55が当接し始めた際にセパレータプレート54、55に対して摩擦プレート61を円滑に追従させることができ、ジャダーの発生を抑制することができる。
次いで、ピストン室52p内の作動油の油圧を更に大きくすると、図6(c)で示すように、ピストン52の押圧力によって波頂部71tに配置された高気孔率の摩擦部材72tが圧縮変形されたり、芯体71自体が弾性変形し、セパレータプレート54、55同士が近接していく。芯体71の両側面71a、71bの波底部71sa、71sbには、気孔率が相対的に低くかつ弾性率が相対的に高い摩擦部材72sが配置されており、芯体71自体が弾性変形してセパレータプレート54、55同士が近接していくと、セパレータプレート54、55と波頂部71sに配置された高弾性率の摩擦部材72sが当接し始める。波頂部71sに配置された高弾性率の摩擦部材72sは、波頂部71tに配置された摩擦部材72tよりも圧縮され難いため、摩擦部材72sによって波頂部71tに配置された高気孔率の摩擦部材72tの圧縮変形が抑制され、摩擦部材72tの気孔率の低下が抑制され、セパレータプレート54、55に対する摩擦プレート61の追従性を維持することができ、ジャダーの発生を抑制することができる。
ピストン室52p内の作動油の油圧を更に大きくすると、図6(d)で示すように、芯体71自体が弾性変形して略平板状となり、セパレータプレート54、55同士が更に近接するものの、上記するように、芯体71の両側面71a、71bにおいて、高弾性率の摩擦部材72sの間に高気孔率の摩擦部材72tが配置されており、高弾性率の摩擦部材72sによって波頂部71tに配置された摩擦部材72tの気孔率の低下を抑制することができるため、セパレータプレート54、55に対する摩擦プレート61の追従性を確保してジャダーの発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態によれば、摩擦プレート61の芯体71を円環状かつ波板状に形成し、その芯体71の厚さ方向の側面に沿って摩擦部材72を配置することによって、芯体71を弾性変形させて摩擦プレートとセパレータプレートを当接させた後に芯体71の弾性復元力によって摩擦プレートとセパレータプレートを迅速に開離させ、セパレータプレートと摩擦プレートの間のクリアランスを迅速に確保することができ、それらの間に介在する油を外部へ迅速に排出して摩擦プレートとセパレータプレートの間の引き摺り現象を抑制することができる。また、芯体71の波頂部71tにおける摩擦部材72tの気孔率を波底部71sにおける摩擦部材72sの気孔率よりも相対的に高くすることによって、ピストン52による押圧力によって摩擦プレートとセパレータプレートが当接し始めた際のセパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性を高めることができる。また、芯体71の波頂部71tにおける摩擦部材72tの弾性率を波底部71sにおける摩擦部材72sの弾性率よりも相対的に低くする、すなわち、芯体71の波底部71sにおける摩擦部材72sの弾性率を波頂部71tにおける摩擦部材72tの弾性率よりも相対的に高くすることによって、ピストン52による押圧力が増加するに従って摩擦プレートの波頂部71tにおける摩擦部材72tが圧縮されながら芯体71が次第に撓んでいき、その波頂部71tにおける摩擦部材72tの気孔率が次第に低下する場合に波底部71sにおける摩擦部材72sをセパレータプレートと当接させ、高弾性率の摩擦部材72sによって波頂部71tにおける摩擦部材72tの更なる圧縮変形を制限することができ、セパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性の低下を抑制してジャダーの発生を効果的に抑制することができる。また、摩擦プレート等が油内に浸漬されている場合には、高弾性率の摩擦部材72sによって波頂部71tにおける摩擦部材72tの圧縮変形を制限することによって、高気孔率の摩擦部材72tの油の排出能力の低下を抑制することができるため、セパレータプレートに対する摩擦プレートの追従性の低下を抑制してジャダーの発生を効果的に抑制することができる。
なお、上記する実施の形態では、摩擦係合装置として湿式クラッチ装置に適用する形態について説明したが、たとえば摩擦係合装置として乾式クラッチ装置やブレーキ装置などに適用してもよい。
また、上記する実施の形態では、摩擦プレートの芯体の波状部分が略正弦波形状を呈する形態について説明したが、その波状部分の形状や基数は適宜設定することができる。たとえば摩擦プレートの芯体の波状部分は略三角形状や略台形形状などを呈していてもよいし、波状部分の波頂部を中心としてその周方向で非対称な形状を呈していてもよい。また、波板状に形成される芯体の波状部分の振幅(波高)や波長、芯体の厚みや径方向の幅などは、芯体の弾性復元力などに応じて適宜設定することができる。
また、上記する実施の形態では、摩擦プレートの芯体の波頂部に配設される摩擦部材と波底部に配設される摩擦部材が別部材で形成される形態について説明したが、摩擦プレートの芯体の波頂部に配設される摩擦部材と波底部に配設される摩擦部材は一体に形成してもよい。また、上記する実施の形態では、摩擦プレートの厚さ方向の両側面に波頂部と波底部で気孔率や弾性率の異なる摩擦部材を配設する形態について説明したが、摩擦プレートの厚さ方向の一側面のみに摩擦部材を配設してもよいし、たとえば摩擦プレートの厚さ方向の一側面には同一の気孔率や弾性率を有する摩擦部材を配設してもよい。
また、上記する実施の形態では、セパレータプレートが略平板状を呈する形態について説明したが、たとえばセパレータプレートはその厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈していてもよい。その場合には、セパレータプレートと摩擦プレートの軸線方向で対向する側面同士の波頂部が略一致するように、セパレータプレートと摩擦プレートを配置することが好ましい。
[試験体による摩擦プレートの回転数に対する摩擦係数を測定した実験とその結果]
本発明者等は、波板状の芯体に配置される摩擦部材の気孔率や弾性率が異なる3種類の試験体(実施例、比較例1、2)を作製し、それぞれの試験体に対して回転数を変化させた際の摩擦係数測定を実施した。なお、摩擦係数の測定方法としては、摩擦試験機(SAE No.2)を使用し、試験体を自動変速機潤滑油(Automatic Transmission Fluid)に浸漬させ、試験体の両側面に面圧を付加した状態で、回転数と面圧を変化させた際の摩擦係数を測定した。
本発明者等は、波板状の芯体に配置される摩擦部材の気孔率や弾性率が異なる3種類の試験体(実施例、比較例1、2)を作製し、それぞれの試験体に対して回転数を変化させた際の摩擦係数測定を実施した。なお、摩擦係数の測定方法としては、摩擦試験機(SAE No.2)を使用し、試験体を自動変速機潤滑油(Automatic Transmission Fluid)に浸漬させ、試験体の両側面に面圧を付加した状態で、回転数と面圧を変化させた際の摩擦係数を測定した。
[実施例、比較例1、2の作製方法]
まず、実施例と比較例1、2の作製方法を概説すると、セルロース繊維とアラミド繊維と珪藻土を質量比が15:40:45で配合して抄紙体を作製した。そして、坪量が280g/m2の抄紙体に対してフェノール樹脂を15質量%だけ含浸させ、それを乾燥炉で乾燥させて余剰分を揮発させた後、それを硬化炉で加熱硬化させ、それを略台形状に裁断して摩擦部材Aを作製した。また、坪量が320g/m2の抄紙体に対してフェノール樹脂を25質量%だけ含浸させ、それを乾燥炉で乾燥させて余剰分を揮発させた後、それを硬化炉で加熱硬化させ、それを略台形状に裁断して摩擦部材Bを作製した。以下の表1で示すように、作製された摩擦部材Aは、気孔率が58%、圧縮弾性率が18MPaであり、摩擦部材Bは、気孔率が48%、圧縮弾性率が36MPaであった。
まず、実施例と比較例1、2の作製方法を概説すると、セルロース繊維とアラミド繊維と珪藻土を質量比が15:40:45で配合して抄紙体を作製した。そして、坪量が280g/m2の抄紙体に対してフェノール樹脂を15質量%だけ含浸させ、それを乾燥炉で乾燥させて余剰分を揮発させた後、それを硬化炉で加熱硬化させ、それを略台形状に裁断して摩擦部材Aを作製した。また、坪量が320g/m2の抄紙体に対してフェノール樹脂を25質量%だけ含浸させ、それを乾燥炉で乾燥させて余剰分を揮発させた後、それを硬化炉で加熱硬化させ、それを略台形状に裁断して摩擦部材Bを作製した。以下の表1で示すように、作製された摩擦部材Aは、気孔率が58%、圧縮弾性率が18MPaであり、摩擦部材Bは、気孔率が48%、圧縮弾性率が36MPaであった。
次いで、厚さが1.8mmの弾性を有する平板から略円環状の基材を打ち抜き、その基材の周方向に沿ってその厚さ方向で8山だけ起伏するように波状に成形した波高が100μmの芯体を用意し、その芯体の厚さ方向の両側面に接着剤を塗布した。
そして、図7(a)で示すように、波板状の芯体の両側面の波頂部に摩擦部材A、その波底部に摩擦部材Bをそれぞれ間隔を空けて貼り付け、所定の環境下で接着剤を硬化させて摩擦部材A、Bを芯体に固着させて実施例を作製した。また、図7(b)で示すように、波板状の芯体の両側面の波頂部と波底部に摩擦部材Aを間隔を空けて貼り付け、所定の環境下で接着剤を硬化させて摩擦部材Aを芯体に固着させて比較例1を作製した。また、図7(c)で示すように、波板状の芯体の両側面の波頂部と波底部に摩擦部材Bを間隔を空けて貼り付け、所定の環境下で接着剤を硬化させて摩擦部材Bを芯体に固着させて比較例2を作製した。
[試験体による摩擦プレートの回転数に対する摩擦係数を測定した結果]
図8は、試験体による摩擦プレートの回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図であって、図8(a)は面圧が0.5Mpaの場合の回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図であり、図8(b)は面圧が1.5Mpaの場合の回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図である。なお、自動変速機潤滑油の油温は、面圧が0.5Mpaの場合に40度であり、面圧が1.5MPaの場合に100度であった。
図8は、試験体による摩擦プレートの回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図であって、図8(a)は面圧が0.5Mpaの場合の回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図であり、図8(b)は面圧が1.5Mpaの場合の回転数に対する摩擦係数を測定した結果を示した図である。なお、自動変速機潤滑油の油温は、面圧が0.5Mpaの場合に40度であり、面圧が1.5MPaの場合に100度であった。
図8で示すように、比較例1の試験体では、面圧が0.5MPaの場合に、回転数が800rpmまでμ-V(摩擦係数−回転数)特性が正勾配を有するものの、面圧が1.5MPaの場合には、回転数が100rpm以上でμ-V特性が負勾配を有することが確認された。また、比較例2の試験体では、面圧によるμ-V特性の差が小さいものの、面圧が0.5MPaと1.5MPaの双方の場合に、回転数が400rpm以上もしくは200rpm以上でμ-V特性が負勾配を有することが確認された。一方で、実施例の試験体では、面圧が0.5MPaと1.5MPaの双方の場合に、回転数が800rpmまでμ-V特性が正勾配を有することが確認された。
この実験結果より、芯体の波頂部における摩擦部材の気孔率を波底部における摩擦部材の気孔率よりも高くし、芯体の波頂部における摩擦部材の弾性率を波底部における摩擦部材の弾性率よりも低くすることによって、様々な面圧下でμ-V特性を正勾配とする、即ち、回転数が増加するに従って摩擦係数を増加させることができ、様々な状況下でセパレータプレートと摩擦プレートの間の引き摺り現象を抑制しながらジャダーの発生を抑制し得ることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
10…摩擦係合装置、51…クラッチドラム、52…ピストン、53…クラッチハブ、54、55、56、57…セパレータプレート(第2の係合部材)、61、62、63…摩擦プレート(第1の係合部材)、64…クッションプレート、65…スプリング、66…支持プレート、67…スナップリング、71…芯体、72…摩擦部材
Claims (6)
- 環状の芯体と、該芯体の厚さ方向の側面に配置される摩擦部材と、を備える摩擦プレートであって、
前記芯体は該芯体の周方向に沿って、該芯体の厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈しており、
前記芯体の波頂部における摩擦部材は、前記芯体の波底部における摩擦部材よりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦プレート。 - 前記芯体の波頂部における摩擦部材と前記芯体の波底部における摩擦部材は、別部材で形成され、かつ双方が間隔を置いて配置されている、請求項1に記載の摩擦プレート。
- 前記摩擦プレートは湿式である、請求項1または2に記載の摩擦プレート。
- 環状の第1の係合部材と環状の第2の係合部材を備え、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材の厚さ方向の側面同士が押圧されて前記第1の係合部材と前記第2の係合部材が摩擦係合する摩擦係合装置であって、
前記第1の係合部材と前記第2の係合部材の少なくとも一方が、環状の芯体と該芯体の厚さ方向の側面に配置される摩擦部材とを備え、前記芯体が該芯体の周方向に沿って該芯体の厚さ方向へ波頂部と波底部が交互に繰り返される波状を呈しており、前記芯体の波頂部における摩擦部材が、前記芯体の波底部における摩擦部材よりも、気孔率が相対的に高くかつ弾性率が相対的に低い摩擦係合装置。 - 前記芯体の波頂部における摩擦部材と前記芯体の波底部における摩擦部材は、別部材で形成され、かつ双方が間隔を置いて配置されている、請求項4に記載の摩擦係合装置。
- 前記第1の係合部材と前記第2の係合部材は油内に浸漬されている、請求項4または5に記載の摩擦係合装置。
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-
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