JP2014079973A - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】メインタンク内の顔料成分が沈降している状態でサブタンクへのインク充填動作が行われることを防止する。
【解決手段】サブタンク内のインクが満タンではなく、かつ、メインタンクを装着してからの経過時間が所定時間以上であると判断された場合には、キャリッジの加速度を制御して記録動作を伴うことなくメインタンクからサブタンクへインクを充填する動作を行う。これにより、顔料成分が沈降する前にインクの充填動作を行うことができる。
【選択図】図5
【解決手段】サブタンク内のインクが満タンではなく、かつ、メインタンクを装着してからの経過時間が所定時間以上であると判断された場合には、キャリッジの加速度を制御して記録動作を伴うことなくメインタンクからサブタンクへインクを充填する動作を行う。これにより、顔料成分が沈降する前にインクの充填動作を行うことができる。
【選択図】図5
Description
本発明は、メインタンクとサブタンクとを備えたインクジェット記録装置に関する。
A1サイズやA0サイズといった大判の記録媒体への記録ができるインクジェット記録装置では、主走査方向に往復走査されるキャリッジに搭載された記録ヘッドと大容量のメインタンクとをチューブで連結して記録ヘッドにインクを供給する構成が採用される。
このような大判のインクジェット記録装置の用途は、黒単色の線画から写真調の画像の記録まで幅広く、中でも写真調の画像のような印字デューティーの高い画像の場合、その記録には多量のインクが消費される。そのため大判のインクジェット記録装置では、交換型のメインタンクが用いられているが、記録画像の種類や印刷量によって、多量にインクが消費されると結果としてメインタンクの交換頻度の増加を招くことになる。
メインタンクと記録ヘッドをチューブで直結した構成の場合、メインタンクを交換する際には、記録動作を中断する必要があり、交換作業に消費される時間をロスすることになり記録効率が低下してしまう。また1枚の記録媒体への記録途中にメインタンクの交換作業を行って記録動作を中断すると、中断の前後で時間経過による色ムラが生じ、画像品質が低下してしまうことになる。
そこで、記録動作を中断することなくメインタンクを交換するために、メインタンクと記録ヘッドとの間にサブタンクを備えたインクジェット記録装置が特許文献1に提案されている。特許文献1には、メインタンクとサブタンクとを連結し、メインタンクからサブタンクにインクを移動させ、サブタンクにインクを充填する構成が開示されている。そして、サブタンクからチューブを介して接続された記録ヘッドにインクが供給され記録動作が行なわれる構成となっている。この構成では、メインタンク内のインクを使いきった場合であってもサブタンク内に貯留されているインクによって記録を継続することができる。そのため、サブタンク内のインクを消費して記録動作を行っている間にメインタンクを交換すればよい。これによって、記録動作を中断することなく、メインタンクを交換することができ、メインタンクの交換にかかる時間のロスによる記録効率の低下や時間経過による画像品質の低下を防ぐことができる。
ところで、特許文献1には、サブタンクと記録ヘッドとを連結するインク供給流路としてのチューブの途中にインク供給流路を遮断できる弁部材が配されている。この弁部材は、容積が可変する容積変化部材で構成されており(以下、ダイヤフラム弁と称する。)、このダイヤフラム弁を動作させることによってサブタンク内を負圧にすることができる。メインタンクからサブタンクへのインク充填は、ダイヤフラム弁を動作させてサブタンク内を負圧にしてメインタンクからインクをサブタンクに引き込むことで行なわれる。
ところが、サブタンクと記録ヘッドの間に配置されたダイヤフラム弁を駆動させてサブタンクへのインク充填を行う際には、サブタンクと記録ヘッドとをつなぐインク経路が閉鎖状態と開放状態を繰り返すことが必要になる。そのため、ダイヤフラム弁を駆動させているときは、記録ヘッドへのインク供給が行えず記録動作を継続することができない。つまり、サブタンクへのインク充填と記録動作とを両立することができず、サブタンクへのインク充填の際には、記録動作を中断し、記録動作とは独立した動作にする必要があり、記録効率の低下が生じていた。
そのため本発明者らは、キャリッジの加速度により生じるチューブ内のインクにかかる動圧を用いて、メインタンクからサブタンクへのインク充填を行うことができるインクジェット記録装置を検討している。ところで、メインタンクとサブタンクとを有する記録装置では、キャリッジに加速度が生じていなくても、記録動作に用いられたインク量(以下、記録インク量とも称する)と同じ量のインクがサブタンクからメインタンクに供給される。これは、記録動作によりサブタンクのインクが使用されると、サブタンク内が減圧状態となるためである。
つまり本発明者らが検討する記録装置においては、記録に使用されたインクと、動圧を利用して移動したインクとがメインタンクからサブタンクへと供給され、サブタンクのみで見たときには動圧を利用して移動したインクの量が増加していることになる。
しかしながら、このようなインクジェット記録装置においては、従来のダイヤフラム弁を有するインクジェット記録装置に比べて、サブタンク内のインクが満タンになるまでに時間がかかることになる。そうすると、メインタンク内の顔料成分が沈降している状態でインク充填動作が行われることになり、顔料濃度の高いインクがメインタンクからサブタンクへと充填されることになる。このような顔料濃度野高いインクを用いて記録動作を行うと、記録画像に濃度変化が生じることになり記録品位の低下につながってしまう。
そこで、本発明はサブタンク内に顔料濃度の高いインクが充填されることを防止できる信頼性の高いインクジェット記録装置を提供することを目的としている。
そこで、本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する吐出口を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して往復走査するキャリッジと、インクを貯留するメインタンクと、前記メインタンクから管を介してインクが供給されるサブタンクと、前記サブタンクの中のインクが所定量以上か検知する検知手段と、前記記録ヘッドと前記サブタンクの間を接続する供給チューブと、前記メインタンクが装着されてからの経過時間を取得する取得手段と、前記サブタンクの中のインクが満タンではなく、かつ、前記経過時間が所定時間以上であると判断された場合には、前記供給チューブの中のインクの動圧が、前記管のインク移動に対する耐圧かつ空気移動に対する耐圧より大きくなるような加速度で、記録動作を行わずに前記キャリッジを走査するように制御する制御手段を有することを特徴とする。
このように、メインタンクの顔料成分が沈殿する前にインク充填動作を行うことで、サブタンク内に顔料濃度の高いインクが充填されることを防止することができる。
インクジェット記録装置はインクを吐出して記録媒体に対して記録動作を行うために用いることができる。具体的な適用機器としては、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の事務機器や、工業用生産機器などを挙げることができる。このようなインクジェット記録装置を用いることによって、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々の記録媒体に記録を行うことができる。
本明細書内で用いられる「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味することとする。
さらに「インク」とは広く解釈されるべきものであり、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、記録媒体の加工、或いはインクまたは記録媒体の処理に供される液体を言うものとする。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。なお、以下の説明では,同一の機能を有する構成には図面中同一の番号を付与し、その説明を省略する場合がある。
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。なお、以下の説明では,同一の機能を有する構成には図面中同一の番号を付与し、その説明を省略する場合がある。
(装置本体概略構成)
図1は、記録媒体13に記録動作を行うインクジェット記録装置の記録装置本体の概略斜視図を示している。なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、記録媒体の記録幅方向に記録ヘッドを往復走査させて記録動作を行う、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置である。このシリアル型記録装置は、搬送ローラ19よって記録媒体13をY方向(副走査方向)へと間欠的に搬送する。これと共に、キャリッジに搭載された記録ヘッド3を記録媒体13の搬送方向であるY方向と直交する方向であるX方向(主走査方向)に往復走査させながら記録動作を行う。また、図1に示す記録装置本体は、例えば、A1サイズやA0サイズの記録媒体への記録が行えるような大型インクジェット記録装置である。
図1は、記録媒体13に記録動作を行うインクジェット記録装置の記録装置本体の概略斜視図を示している。なお、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、記録媒体の記録幅方向に記録ヘッドを往復走査させて記録動作を行う、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置である。このシリアル型記録装置は、搬送ローラ19よって記録媒体13をY方向(副走査方向)へと間欠的に搬送する。これと共に、キャリッジに搭載された記録ヘッド3を記録媒体13の搬送方向であるY方向と直交する方向であるX方向(主走査方向)に往復走査させながら記録動作を行う。また、図1に示す記録装置本体は、例えば、A1サイズやA0サイズの記録媒体への記録が行えるような大型インクジェット記録装置である。
記録ヘッド3は供給されるインクを複数の吐出口から吐出可能なインクジェット記録ヘッドであり、キャリッジ2に着脱可能に搭載される。キャリッジ2は記録ヘッド3を搭載して図中X方向に沿って往復走査する。具体的には、キャリッジ2は、X方向に沿って配置されたガイドレール5に沿って移動可能に支持されており、ガイドレール5と並行に移動する無端ベルト6に固定されている。無端ベルト6は、キャリッジモータ(CRモータ)の駆動力によって往復運動し、それによってキャリッジ2をX方向に往復走査させる。
また、符号8は図3で詳述するインク供給システムであり、インクの色に対応して、複数の独立したメインタンクを有して設けられている。インク供給システムと記録ヘッド3とは、それぞれインクの色に対応した柔軟な材料からなる複数のインク供給チューブ4によって接続されている。さらに、メインタンクをインク供給システム8に装着することで、メインタンク内に収納された各色のインクを、記録ヘッド3の各ノズル列に独立して供給することが可能となる。また、記録装置本体には、記録ヘッド3のインク吐出状態を回復・維持するために用いられ、記録ヘッドの吐出口を覆うことが可能なキャッピング機構、吐出口からキャップを介してインク吸引可能なポンプ機構を備えた回復処理装置7も設けられている。
(記録ヘッド)
図1(b)に、インクジェット記録装置のキャリッジに搭載される記録ヘッドの一部を分解して示した斜視図を示す。記録ヘッド3は、接続部30によってインクジェット記録装置本体から供給チューブ4を介してインクが供給される。そして接続部30から供給されたインクは、インクの色ごとに設けられた貯留部(不図示)に一時的に貯留され、記録動作時に吐出される。さらに、この貯留部にはゴム製の弾性変形する部材で形成された圧力調整部材40が接続して設けられており、この圧力調整部材40の容積が変化することにより、貯留部内の圧力を調整することができる。具体的には、圧力調整部材40の容積は約1.4mlであり±0.3ml程度の容積変化を許容することができる。 (制御システム)
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録装置本体に搭載される制御システム(制御手段)の構成例を示すブロック図である。図2において、100は主制御部である。この主制御部100は演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU101を備えている。そして、CPU101によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM102、インクの吐出/非吐出を表す2値の記録データを格納するバッファ、CPU101による処理のワークエリア等として用いられるRAM103、入出力ポート104などを備える。さらにRAM103には、記録動作前後のメインタンクのインク量やサブタンクの空き容量等を記憶する記憶手段としても用いることができる。
図1(b)に、インクジェット記録装置のキャリッジに搭載される記録ヘッドの一部を分解して示した斜視図を示す。記録ヘッド3は、接続部30によってインクジェット記録装置本体から供給チューブ4を介してインクが供給される。そして接続部30から供給されたインクは、インクの色ごとに設けられた貯留部(不図示)に一時的に貯留され、記録動作時に吐出される。さらに、この貯留部にはゴム製の弾性変形する部材で形成された圧力調整部材40が接続して設けられており、この圧力調整部材40の容積が変化することにより、貯留部内の圧力を調整することができる。具体的には、圧力調整部材40の容積は約1.4mlであり±0.3ml程度の容積変化を許容することができる。 (制御システム)
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録装置本体に搭載される制御システム(制御手段)の構成例を示すブロック図である。図2において、100は主制御部である。この主制御部100は演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU101を備えている。そして、CPU101によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM102、インクの吐出/非吐出を表す2値の記録データを格納するバッファ、CPU101による処理のワークエリア等として用いられるRAM103、入出力ポート104などを備える。さらにRAM103には、記録動作前後のメインタンクのインク量やサブタンクの空き容量等を記憶する記憶手段としても用いることができる。
入出力ポート104には、搬送ローラを駆動させる搬送モータ(LFモータ)113、キャリッジモータ(CRモータ)114、記録ヘッド3、回復処理装置7などの各駆動回路105、106、107、108が接続されている。これらの各駆動回路105,106,107,108は、主制御部100により制御される。入出力ポート104には、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ112、キャリッジ2に固定されたエンコーダセンサ111、記録装置本体の使用環境である温度と湿度を検知する温湿度センサ109などの各種センサ類が接続されている。また、主制御部100はインターフェース回路110を介してホストコンピュータ115に接続されている。
116は回復処理装置7によって記録ヘッド3から強制的にインクを排出させた場合に、そのインク量をカウントする回復処理カウンタである。117は記録開始前や記録終了時、記録中に行われる予備吐出をカウントする予備吐出カウンタである。118はフチ無し記録を行う場合に記録媒体領域外に記録されるインクをカウントするフチ無しインクカウンタ、119は記録中に吐出するインクをカウントする吐出ドットカウンタである。
以上の構成を有するインクジェット記録装置によって実行される記録動作を説明する。ホストコンピュータ115からインターフェースを介して記録データを受信すると、その記録データはRAM103のバッファに展開される。そして、記録動作が指示されると、搬送ローラ19が作動し、記録媒体が記録ヘッド3との対向位置へと搬送される。キャリッジ2はガイドレール5に沿って図1中X方向へと移動する。キャリッジ2の移動に伴って、記録ヘッド3からはインク滴が吐出され、記録媒体に1バンド分の画像が記録される。この後、搬送ユニットにより、記録媒体はキャリッジ2と直交する図1中Y方向に1バンド分だけ搬送される。以上の動作を繰り返すことにより、記録媒体には所定の画像が形成される。
なお、キャリッジ2の位置は、キャリッジ2の移動に伴ってエンコーダセンサ111から出力されるパルス信号を主制御部100でカウントすることにより検出される。すなわち、エンコーダセンサ111は、X方向に沿って配置された不図示のエンコーダフィルムに一定の間隔で形成された検出部を検出することによってパルス信号を主制御部100へ出力する。主制御部100はこのパルス信号をカウントすることにより、キャリッジ2の位置を検出する。キャリッジ2のホームポジション及びその他の位置への移動は、エンコーダセンサ111からの信号に基づいて行われる。
(インク供給システム)
図3は本発明が適用されるインクジェット記録装置のインクの供給系にかかる構成、すなわちインク供給システム8、記録ヘッド3、インク供給システムと記録ヘッドを連結する供給チューブ4を示す模式図である。ここでは解り易さのために、1本の供給チューブ4の図を用いて説明を行う。
図3は本発明が適用されるインクジェット記録装置のインクの供給系にかかる構成、すなわちインク供給システム8、記録ヘッド3、インク供給システムと記録ヘッドを連結する供給チューブ4を示す模式図である。ここでは解り易さのために、1本の供給チューブ4の図を用いて説明を行う。
図3において、インク供給システム8は記録装置本体の所定の個所に配置されている。そして、メインタンク9、サブタンク10、サブタンク10とメインタンク9とを連結する中空管11、バッファ室12、メインタンク9とバッファ室12を連結する連通管21を備えている。供給チューブ4は、柔軟な材料で構成されたており、サブタンク10と記録ヘッド3とを接続している。サブタンク10と接続された供給チューブ4はキャリッジ2の移動走査方向に並行な部分を有して延在され記録ヘッド3の図中左側に対して接続されるように途中で折り返されて記録装置本体内を這いまわされている。つまり、供給チューブはガイドレール5と並行な部分を有するように配置されている。なお、図3で示した供給チューブ4の配置はあくまで一例であって、この限りではない。
メインタンク9は記録装置本体に対して着脱可能に搭載されるもので、本実施形態におけるインクジェット記録装置では、メインタンク9は、サブタンク10と比べ大容量のインクを収容している。また、メインタンク9は中空管11によってサブタンク10と連通され、連通管21によってバッファ室12と連通されている。メインタンク9は、中空管11および連通管21とメインタンク9の装着状態の底部で接続する構成であり、接続部分を除いて密閉されている。
サブタンク10は記録ヘッド3に対して重力方向下方の位置に配置されている。サブタンク10は天井部がドーム状または傾斜面を備えた構成とされており、中空管11はサブタンク10の重力方向の上部に接続されている。なお、図3はサブタンクの最上部にあたる個所に中空管11が接続された構成を示しており、サブタンク10に対しては実質的に0mmの侵入量で構成されている。
この中空管11の端部が、サブタンク10内のインクと接しない位置にあるときに、後に詳細に説明する供給チューブの中のインクの動圧を用いたインク充填が行われる。すなわちサブタンク10内における中空管11の位置が、サブタンクへのインク充填が完了する際のインク位置となるため、中空管11の侵入量を適宜調整することで、サブタンクの最大のインク量(満タン量)を調節することができる。
また、サブタンク10には、記録ヘッド3と連通する供給チューブ4がサブタンク10の下部(底部近傍)の位置、すなわち必ずインクと接する位置で連通している。サブタンク10は中空管11、供給チューブ4との連結部を除いて実質的に密閉された構造として構成されている。なお、サブタンク10は後述するサブタンクへのインク充填時に実質的に密閉された構成になっていればよく、サブタンクへのインク充填時以外では密閉構成に限られない。また、サブタンクへのインク充填時であっても、以下で説明するインク移動耐圧Pi、空気移動耐圧Paよりも耐圧が大きい連通個所をサブタンクが有していることを妨げない。
中空管11はサブタンク10内の内圧状態によってインクや空気が移動可能となっているが、メインタンク9からサブタンク10に対して重力によって自然にインクが移動することはない構成とされる。例えば、インク移動がスムーズに行えるような流路抵抗となるのに十分な内径であると同時に、中空管11の開口部においてインクがメニスカスを張るために十分な内径(例えば内径:1〜2mm)として構成されている。
さらに、サブタンク内のインク量を検知するセンサ20が、サブタンク内に設けられている。本実施形態においては、一対の電極からなるセンサを用いている。一対の電極のうち一方の電極が、中空管11に近接した位置に設けられている。一方の電極が設けられた位置にインクの液面があるときのサブタンク内のインク量を所定量Vthとしたときに、センサ20を用いることによりサブタンク内のインク量がVth以上であるかVth未満であるかを検知することができる。具体的には、微小電流を印加して電圧を計測することで、電極間のインク有無による抵抗差を検知してサブタンク内インクを検知できる構成となっている。例えば、サブタンク内のインク量が少ない場合、電極間には空気が存在していることになる。また、サブタンク内に十分な量のインクがある場合は、電極間にはインクが存在していることになる。その為、微少電流を印加した際の、空気とインクの電気伝導度の差が電極間の抵抗値の差となるため、電圧を測定することでサブタンク内に所定量Vthのインクが満たされるか否かが分かる。なお、サブタンク内のインク量を検知するセンサとしては光学的に液面の位置を検知する構成も用いることができる。
なお、所定量Vthを記録媒体1枚を記録デューティ100%で印字したときに必要となるインク量としておくことにより、記録動作を中断させずに1枚の記録媒体に印字を行える。本実施形態においてVthは12mlとなる構成となっている。
また、バッファ室12は連通管21によりメインタンク9と接続されており、この連通管21はバッファ室12の底部付近まで延在されている。また、バッファ室12は、メインタンク9と連通管21とで接続されている一方、大気に対して開放(連通)するための大気連通管22を備えている。大気連通管22は、バッファ室12内の上方に先端部を備え、バッファ室12の外部に他端部を備えた構成とされている。これにより、メインタンクの内圧と大気圧のバランスを取っている。このバッファ室12は、外部環境変化等によってメインタンク9から移動してきたインクを収容するための空間として機能するものである。なお、図3に示す状態はメインタンク9と接続された連通管21にインクが満ちているとともに、バッファ室12にインクが存在しており、連通管21の他端部がインク内に存在した状態を示している。これはバッファ室12にメインタンク9からインクが移動した状態を表している。なお、このような状態であってもバッファ室12内が大気と連通した状態が維持されるように、バッファ室12の形状や大気連通管22の配置が適宜選択される。
(インク充填が必要となる状況について)
次に、このような構成のインクジェット記録装置において、サブタンクへのインク充填が必要となる状況について説明する。
次に、このような構成のインクジェット記録装置において、サブタンクへのインク充填が必要となる状況について説明する。
記録動作を実行すると、記録ヘッド3の吐出口からインクが吐出されてインクが消費される。これによって、供給チューブ4を介してサブタンク10内が負圧となり、この負圧が中空管11の流路抵抗並びにメニスカス耐圧を上回ると、インクがメインタンク9からサブタンク10へ供給される。つまり記録動作で消費した量のインクが結果的にメインタンク9から減少する。
そして、インク供給によってメインタンク9内が負圧になると、バッファ室12内にインクがない場合には、大気連通管22によって大気に連通したバッファ室12、連通管21を介して大気がメインタンク9に導入され負圧が解消される。
なお、図3のようにバッファ室12内にインクが存在し、連通管21がインクと連通した状態では、連通管21を介してバッファ室12内のインクがメインタンク内に戻り、メインタンク内の負圧を解消する。
なお、図3のようにバッファ室12内にインクが存在し、連通管21がインクと連通した状態では、連通管21を介してバッファ室12内のインクがメインタンク内に戻り、メインタンク内の負圧を解消する。
そして、記録動作が継続して行われると最終的にはメインタンク9に収容されたインクが無くなり、メインタンク9の交換が必要となる。メインタンク9の交換中にはサブタンク10内のインクを使用して記録動作が継続される。
つまり、メインタンク9に収容されたインクが無くなりサブタンク10に収容されたインクを消費して記録動作を行った後には、サブタンク10内のインクが減少しているため、サブタンク10へのインク充填を行う必要がある状況となっているといえる。
(動圧を利用してサブタンクへインクを充填する方法)
インク量が減少しているサブタンクへのインク充填する方法としては、本発明者らが検討している動圧を利用してインクを充填する方法を用いることができる。以下、この充填方法について図4を参照して説明を行う。
インク量が減少しているサブタンクへのインク充填する方法としては、本発明者らが検討している動圧を利用してインクを充填する方法を用いることができる。以下、この充填方法について図4を参照して説明を行う。
図4は往方向の走査と復方向の走査を行なってキャリッジ2の移動に伴う供給チューブ4内のインクの動圧を利用したサブタンクへのインク充填を示す模式図である。図4は(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の順で経時しており、一往復のキャリッジ動作を示している。また、S1、S2はそれぞれキャリッジ2の移動方向を示しており、図4(a)、(b)、(c)はS1方向への移動を示しており、図4(d)、(e)、(f)はS2方向への移動を示している。
図4中、P11は加速度a11、P12は加速度a12、P13は加速度a13、P14は加速度a14による供給チューブ4内のインクに働く動圧をそれぞれ示している。また、Piは中空管11内におけるインク移動に対する耐圧、Paは中空管11内における空気移動に対する耐圧、Phは記録ヘッド3の吐出口(不図示)におけるメニスカス耐圧を示している。
まず図4(a)を用いて、サブタンク10からメインタンク9へ空気が移動する点について説明する。
記録ヘッド3を保持したキャリッジ2は、インクジェット記録装置本体に搭載された制御系(図2参照)によって、キャリッジ2は加速度a11でS1方向に加速するよう制御される。記録ヘッド3に接続した供給チューブ4には、キャリッジ2の移動に追従して移動する区間が存在する。このとき、供給チューブ4のうち、キャリッジ2の移動に追従して移動する区間内に存在するインクは加速度a11による慣性力を受ける。供給チューブ4はキャリッジ2の移動方向に並行となるように配置されているので、加速度a11による慣性力を受けたインクが供給チューブ4からサブタンク10に移動する。このとき発生する圧力が、加速度a11による供給チューブ内のインクに働く動圧P11である。
そして、動圧P11を受けたインクが、供給チューブ4内からサブタンク10に移動することによってサブタンク10内を加圧する。
サブタンク10の内部は上方に空気層が存在しており、空気層が中空管11と接している。このとき、中空管11のメインタンク9内に存在する接続端では空気移動に対する耐圧Paとして流路抵抗及びメニスカス耐圧が発生している。つまり動圧P11がこの耐圧Paよりも大きい場合、サブタンク10からメインタンク9へと空気が移動することとなる。空気が移動することによってメインタンク9内が加圧状態になると、メインタンク9内のインクが連通管21を介してバッファ室12へ移動することになる。バッファ室12内にインクが移動した際、大気連通管22を介してバッファ室12内の空気が押し出される。
また、動圧P11により記録ヘッド3の貯留部からインクが流れ出る。そしてこの時生じる圧力は圧力調整部材40で調整されることになる。なお、圧力調整部材40で調整可能な変動量にも限界があるため、記録ヘッド3の吐出口におけるメニスカス耐圧Phよりも小さい動圧P11となるように制御することが好ましい。このように制御しておくことにより、記録ヘッド3における吐出口から記録ヘッド3内に空気が流入することを防止することができる。
つまり供給チューブ4内のインクの動圧P11(以下で示す関係式ではP1と表記)が、中空管11の空気移動に対する耐圧Paより大きい(P1>Pa)加速度a11を与えることで、サブタンク10からメインタンク9へ空気を移動させることができる。また記録ヘッド3の吐出口におけるメニスカス耐圧Phより小さくなるような(Ph>P1>Pa…式(1))加速度a11とすることで吐出口からの空気流入を防止することができる。
図4(b)は、図4(a)の状態からキャリッジ2の移動速度が一定の速度(例えば25インチ/秒)になった状態で一定の速度でS1方向に移動する様子を示している。この一定速度での移動中はキャリッジ移動による圧力変化がなく動圧変化によるインクの移動はない。この状態のインクの移動は、記録を実行していることにより記録ヘッドから吐出されるインク量に応じた量のインクがメインタンク9からサブタンク10に移動するだけである。なお、メインタンク内の負圧によっては、バッファ室12と連通管21の状況に応じてインクまたは空気を引き込む動作が行われ、インク供給が継続されて記録信号に応じたS1方向の記録動作が行われる。
次に図4(c)を用いて、メインタンク9からサブタンク10にインクを移動させる点について説明する。図4(b)に示すように所定の区間、一定の速度でキャリッジ2をS1方向に移動させて記録を行う。その後、インクジェット記録装置本体に搭載された制御系(図2参照)によって、記録ヘッド3を保持したキャリッジ2は、マイナスの加速度a12で減速するよう制御される。
減速区間で供給チューブ4内のインクはマイナスの加速度a12による慣性力を受ける。供給チューブ4はキャリッジ2の移動方向に並行となるように配置されているので、加速度a12による慣性力を受けたインクが供給チューブ4から記録ヘッド3の方向へ移動する。このとき発生する圧力が、加速度a12による供給チューブ4内のインクにかかる動圧P12である。
動圧P12を受けたインクが、供給チューブ4から記録ヘッド3の方向に移動することによってサブタンク10内が減圧される。
中空管11にはインク移動に対する耐圧Piとして流路抵抗及びメニスカス耐圧が発生している。そのため、動圧P12がこの耐圧Piよりも大きくなるときに、メインタンク9からサブタンク10へインクが移動することになる。このとき、メインタンク9内が負圧状態になるため図4(c)に示されるように、連通管21とバッファ室12内にインクが存在した状態ではバッファ室12内のインクが連通管21を介してメインタンク9内に引き込まれる。一方、連通管21やバッファ室12内にインクが存在しない場合には大気連通管22、バッファ室12、連通管21を介して空気をメインタンク9内に引き込むことになる。
また、動圧P12により記録ヘッド3へ移動したインクは、記録ヘッド3内の貯留部に流れ込む。そしてこの時生じる圧力は圧力調整部材40で調整されることになる。なお、圧力調整部材40で調整可能な変動量にも限界があるため、記録ヘッド3の吐出口におけるメニスカス耐圧Phよりも小さくなるように動圧P12を制御することが好ましい。このように、制御しておくことにより、記録ヘッド3の吐出口からインクが漏れ出ることを防止することができる。
つまり供給チューブ4内のインクの動圧P12(以下で示す関係式ではP2と表記)が、中空管11のインク移動に対する耐圧Piより大きい(P2>Pi)加速度a12を与えることで、メインタンク9からサブタンク10へインクを移動させることができる。また記録ヘッド3の吐出口におけるメニスカス耐圧Phより小さくなるような(Ph>P2>Pi…式(2))加速度a12とすることで吐出口からのインク漏れを防止することができる。
加速度a12で減速したキャリッジ2は次第に速度を落とし、静止する。静止した後、キャリッジ2はS2方向に移動を始める。S2方向への加速の様子を示した図が、図4(d)である。このときの加速度a13の方向はa12と同じで、その時のインク動圧P13(関係式ではP2と表記)がチューブ内のインクに作用する。このときの耐圧関係は図4(c)と同じ関係式を満足する。そのため、図4(c)と同様にメインタンク9からサブタンク10へのインクの移動が行われる。
図4(e)は、図4(d)の状態からキャリッジ2の移動速度が一定の速度(例えば25インチ/秒)の状態でS2方向に移動する様子を示しており、図4(b)と同様一定速度での移動中にインクを記録媒体13に吐出することで、S2方向の記録動作を行う。
その後、所定の区間、一定の速度で移動中に記録を行った後、加速度a14で減速する状態を示した図が、図4(f)である。このときの加速度a14の方向は加速度a11と同じで、その時のインク動圧P14(関係式ではP1と表記)がチューブ内のインクに作用する。このときの耐圧関係は図4(a)と同じ関係式を満足する。すなわち、図4(a)と同様にサブタンク10からメインタンク9へ空気の移動が発生する。
その後、所定の区間、一定の速度で移動中に記録を行った後、加速度a14で減速する状態を示した図が、図4(f)である。このときの加速度a14の方向は加速度a11と同じで、その時のインク動圧P14(関係式ではP1と表記)がチューブ内のインクに作用する。このときの耐圧関係は図4(a)と同じ関係式を満足する。すなわち、図4(a)と同様にサブタンク10からメインタンク9へ空気の移動が発生する。
以上説明した一往復の記録動作を繰り返すことにより、特に図4(c)、(d)で示された加減速領域で動圧変化を利用したサブタンクへのインク充填が行なえる。
以上の動作を満足する記録装置本体の構造の一例は以下の通りである。
サブタンク容量:約30ml、連通管21の内径:約1〜2mmφ、長さ:約25〜30mm、連通管21はサブタンク内への侵入量は実質的に0mm、メインタンク内への侵入量は約2.5mmである。また、供給チューブ4は内径:約2〜2.5mmφ、長さ:約650〜1000mmである。記録ヘッドの吐出口のメニスカス耐圧は、負圧5kPa〜10kPa程度である。
さらに具体的には、供給チューブ内のインクの動圧は、
Pn=(mn・an)/S …式(3)
mn:加速度がかかるインクの質量
S:供給チューブの断面積
an:キャリッジの加速度
で表すことができる。また、この時最大の動圧が生じる時のインク質量は、
mn=kSLn …式(4)
k:インクの比重
S:供給チューブの断面積
L−n:加速度による慣性を受ける供給チューブの最大長さ
と表すことができる。
式(3)に式(4)を代入することにより、
Pn=kLnan …式(5)
という関係となっていることがわかる。
Pn=(mn・an)/S …式(3)
mn:加速度がかかるインクの質量
S:供給チューブの断面積
an:キャリッジの加速度
で表すことができる。また、この時最大の動圧が生じる時のインク質量は、
mn=kSLn …式(4)
k:インクの比重
S:供給チューブの断面積
L−n:加速度による慣性を受ける供給チューブの最大長さ
と表すことができる。
式(3)に式(4)を代入することにより、
Pn=kLnan …式(5)
という関係となっていることがわかる。
すなわち式(1)Ph>P1>Paと式(2)Ph>P2>Piとは、Ph/(kL1)>a1>Pa/(kL1)と、Ph/(kL2)>a2>Pi/(kL2)と変換できることが分かる。
以上のように、キャリッジを上述のような関係を満たす加速度で加速するように加速度制御することで、供給チューブに生じるインクの動圧を用いてメインタンクからサブタンクへのインク充填を行うことができる。
(インク攪拌について)
ところでこのようなインクジェット記録装置においては、染料インクのみならずインク溶液中に色材である顔料成分を分散させた顔料インクが広く用いられているが、顔料インクは一定時間放置されると重力の影響により顔料成分が沈降することが知られている。
ところでこのようなインクジェット記録装置においては、染料インクのみならずインク溶液中に色材である顔料成分を分散させた顔料インクが広く用いられているが、顔料インクは一定時間放置されると重力の影響により顔料成分が沈降することが知られている。
このように顔料成分が沈降しているような状態で動圧を利用したインクの充填動作が行われると、メインタンク内の顔料成分の濃度の高いインクが、中空管11を介してサブタンクに充填されることになる。そうすると、サブタンク内の顔料成分の濃度が充填されるにつれて徐々に高くなることになる。
このような顔料濃度の高いインクを用いて記録動作を行うと、記録媒体の位置に応じて画像の濃度むらが生じることになり、画像品位の低下を招くことになる。そのため顔料濃度が高いインクがメインタンクからサブタンクに充填されることを防止するために、メインタンクのインクに顔料沈降が生じる前にインク充填動作を完了してしまう必要がある。
(インク充填タイミング制御)
メインタンク内に顔料沈降が生じないうちにインク充填を行うために本実施形態で行われるサブタンクへのインク充填タイミング制御について図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5は本実施形態におけるサブタンクへのインクタンク充填チェックシーケンスのフローチャートである。図6は図5のS104に示すサブタンク充填シーケンスのフローチャートである。
メインタンク内に顔料沈降が生じないうちにインク充填を行うために本実施形態で行われるサブタンクへのインク充填タイミング制御について図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5は本実施形態におけるサブタンクへのインクタンク充填チェックシーケンスのフローチャートである。図6は図5のS104に示すサブタンク充填シーケンスのフローチャートである。
図5において、まずS101でメインタンクの装着が行われると、メインタンクを装着してからの経過時間Tを取得する。この経過時間Tは不図示のカウンターでカウントしておくことができる。次にS102で、一対の電極からなるセンサ20を用いてサブタンク内のインク量Vがサブタンクが満タンであるとされる所定量以上(V≧Vth)であるかを判断する。
S102でVがVth以上、即ちサブタンクが満タンであると判断された場合はS105へと進み、サブタンク充填シーケンスは終了する。一方、S102において、VがVth未満、即ちサブタンクが満タンでないと判断された場合はS103へと進む。
S103ではメインタンクを装着してからの経過時間Tが、予め決められた所定時間Tthに到達しているか否か判定される。経過時間が所定時間以上(T≧Tth)である場合には、S104へ進み、記録動作を伴わないサブタンク充填シーケンスを実施してサブタンク充填を行う。メインタンクを記録装置に装着してからの経過時間と共に、メインタンク内のインクは多少なりとも沈降が発生する。しかし経過時間が短い場合は顔料濃縮レベル、即ち沈降レベルも低く、そのようなインクがサブタンクに充填されて、記録媒体に記録動作が行われても記録画像に影響が出ることはない。一方、経過時間が所定期間経過すると顔料濃縮レベルが高い沈降インクがメインタンクの下部にたまってしまい中空管11を介してサブタンクに充填されることになるため、記録画像に濃度むら等の影響が出てしまう。即ち、所定時間Tthはメインタンクからサブタンクにインクを充填しても記録画像に影響の出ない沈殿しか生じない時間に設定されている。
なお、所定時間Tthが極端に短いと、サブタンク充填動作が頻繁に行われることになるため、記録装置本体における記録動作ができないタイミング、即ちデッドタイムの発生頻度が増えてしまう。その為所定時間Tthは、画像影響が出ない時間以内であって、可能な限り長い時間とすることが必要である。本実施形態においては上記点を鑑みて、所定時間Tthは12時間と設定した。即ち、メインタンクを装着してからの経過時間が12時間に到達した時、S104へ進み、サブタンク充填シーケンスが実施され、サブタンク充填が行われる。なお所定時間Tthは、メインタンクの形状やインクの種類によってインクの顔料成分の沈降速度や沈降した際のレベルに差が生じるため、メインタンクの形状やインクの種類に応じて適宜設定することが好ましい。またメインタンク内のインク残量によってもメインタンク内のインクの沈降状況は変化することから、所定時間Tthは、メインタンク内のインク残量に応じて変更してもよい。例えばメインタンク内のインク残量が減少するにつれて、沈降する顔料の量は減ることから所定時間Tthは長くなるように変更することができる。
図6に示すS104のサブタンク充填シーケンスがスタートすると、図4を用いて説明したキャリッジの加速度制御を行った状態でキャリッジの往復動作が所定回数実行される(S201)。この場合には、記録動作を行うことなく、即ちインク吐出動作を伴わずにキャリッジの往復動作を行い、強制的にサブタンクへのインク充填動作を行う。なお、記録動作を行うことなくインク充填を行う場合には、常に加速度が生じるようにキャリッジを走査してもよいし、記録動作を行いながらインク充填する場合と同様に加速と減速との間で定速度の区間があるように走査してもよい。記録動作を伴わなければ、キャリッジの往復動作によるインク充填動作であっても、十分に高速にインク充填が行えるため顔料沈降による画像むらが生じることを防止することができる。
キャリッジの往復動作を所定回数行った後には、S202へと進み、サブタンク内のインクが満タン(V≧Vth)となっているかをセンサ20を用いて検知する。サブタンク内インク充填がされていないと判断された場合、即ちVがVth未満であると判断された場合はS201へと戻り、再度キャリッジの往復動作を行いインクの充填動作を行う。
S202でサブタンクが満タンであると判断された場合、即ちVがVth以上であると判断された場合は、S203へと進みサブタンク充填シーケンスを終了する。つまり、サブタンクが満タンであると判断されるまでキャリッジ往復動作を繰り返し行う。
そしてサブタンク満タンになった後にS105へと進み、サブタンク充填チェックシーケンスを終了する。
このようなサブタンク充填チェックシーケンスは記録装置本体の電源が入ったタイミングや1枚の記録媒体への記録動作が終了する毎に行うことで、適宜サブタンクへの充填を行うことができる。しかし記録装置本体の電源が入った際にチェックシーケンスを行う際には、既にメインタンクを装着してからの経過時間TがTthを大きく超える場合があり得る。その際に、そのままサブタンク充填動作を行ってしまうとメインタンク内の顔料濃度の高いインクがサブタンクへと流入してしまうことになる。そのため経過時間Tが所定時間Tthを大きく超えている場合には、記録装置本体のオペレーションパネル等にメインタンク内のインクが沈降しており正常に記録が行えない可能性があるとのメッセージを表示させ。ユーザーにメインタンクを記録装置本体から外して手動でメインタンクを振って撹拌するように促しても良い。
なお、S102でサブタンク内のインクが満タンの場合にはサブタンク充填シーケンスを行わずにサブタンク充填チェックシーケンスを終了して記録動作を行うが、このような状態で記録動作を行っていれば沈降した顔料成分を撹拌させることができる。以下、このような顔料撹拌の状態について説明する。
図7は(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の順で経時しており、一往復のキャリッジ動作を示している。また、S1、S2はそれぞれキャリッジ2の移動方向を示しており、図7(a)、(b)、(c)はS1方向への移動を示しており、図7(d)、(e)、(f)はS2方向への移動を示している。
図7(a)は、加速度a11による慣性力を受けたインクが供給チューブ4からサブタンク10に移動し、さらにサブタンク10からメインタンク9へインクが移動する状態を示している。このとき、中空管11のメインタンク9内に存在する接続端ではインク移動に対する耐圧Paとして流路抵抗が発生している。つまり動圧P11がこの耐圧Paよりも大きい場合、サブタンク10からメインタンク9へとインクが移動することとなる。
図7(b)は、図7(a)の状態からキャリッジ2の移動速度が一定の速度(例えば25インチ/秒)になった状態で一定の速度でS1方向に移動する様子を示している。
図7(c)は、加速度a12による慣性力を受けたインクが供給チューブ4から記録ヘッド3に移動することによってサブタンク内が減圧され、これによりメインタンク9からサブタンク10にインクが移動する状態を示している。このとき中空管11にはインク移動に対する耐圧Piとして流路抵抗が発生している。そのため、動圧P12がこの耐圧Piよりも大きくなるときに、メインタンク9からサブタンク10へインクが移動することになる。
加速度a12で減速したキャリッジ2は次第に速度を落とし、静止する。静止した後、キャリッジ2はS2方向に移動を始める。S2方向への加速の様子を示した図が、図7(d)である。このときの加速度a13の方向はa12と同じで、その時のインク動圧P13(関係式ではP2と表記)がチューブ内のインクに作用する。このときの耐圧関係は図7(c)と同じであり、図7(c)と同様にメインタンク9からサブタンク10へのインクの移動が行われる。
図7(e)は、図7(d)の状態からキャリッジ2の移動速度が一定の速度(例えば25インチ/秒)の状態でS2方向に移動する様子を示しており、図7(b)と同様一定速度での移動中にインクを記録媒体13に吐出することで、S2方向の記録動作を行う。
その後、所定の区間、一定の速度で移動中に記録を行った後、加速度a14で減速する状態を示した図が、図7(f)である。このときの加速度a14の方向は加速度a11と同じで、その時のインク動圧P14(関係式ではP1と表記)が供給チューブ内のインクに作用する。このときの耐圧関係は図7(a)と同じであり、図7(a)と同様にサブタンク10からメインタンク9へインクの移動が発生する。
このようにサブタンクにインクが十分に充填されている状態では、図7(a)と図7(f)で中空管11を介してサブタンク10からメインタンク9に移動するのは空気ではなくインクとなる。つまりキャリッジの加速度をインク充填時と同様の関係を満たす加速度となるように加速度制御することで、メインタンクとサブタンクとの間で相互にインクの移動が発生するため、これによりインク撹拌効果を得ることができる。
なお、このようなインク撹拌効果は、記録動作を行わない状態でキャリッジを往復移動させても同様に得ることができる。そのため、記録動作を行わない状態でメインタンクを装着してから所定期間経過した場合、或いは前回攪拌動作から所定期間経過した後に行うことで、メインタンク及びサブタンク内でインクの顔料成分が沈降することを防止することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、記録動作を伴わずに行う強制的なインクの充填動作を動圧を利用したインク充填動作を用いて行う場合を示した。しかし本実施形態に示すようにダイヤフラム弁14(弁部材)を設けて、ダイヤフラム弁によって強制的なインク充填動作を行ってもよい。
第1の実施形態においては、記録動作を伴わずに行う強制的なインクの充填動作を動圧を利用したインク充填動作を用いて行う場合を示した。しかし本実施形態に示すようにダイヤフラム弁14(弁部材)を設けて、ダイヤフラム弁によって強制的なインク充填動作を行ってもよい。
図8は本実施形態に係るインクジェット記録装置の模式図である。このインクジェット記録装置は、第1の実施形態に係る図3の記録装置と、サブタンク10と記録ヘッド3とを連結する供給チューブ4の途中に、容積変化可能な可撓性材料からなるダイヤフラム弁14が設けられている点のみが異なっている。このダイヤフラム弁14は、その容積を小さくしてインク流路を閉鎖する状態と、容積を拡大してインク流路を開放する状態をとることができる。
図9はダイヤフラム弁14を用いたサブタンク充填動作を説明する為の模式図であり、メインタンク内のインクを使い切り、サブタンク10内のインクを消費して記録動作を行った後、メインタンクを交換した後の状態を示している。
図9に示す様に、まず図9(a)ではダイヤフラム弁14の容積が拡大している状態(ダイヤフラム弁14を開いている状態)を表している。その後図9(b)に示す様にダイヤフラム弁の容積を小さくする(ダイヤフラム弁14を閉じている状態)とすることにより、ダイヤフラム弁14内のインクがサブタンク10に移動し、これに伴いサブタンク10内の空気がメインタンク9内に移動する。その後、図9(c)に示すようにダイヤフラム弁14の容積を大きくする(ダイヤフラム弁14を開いている状態)とことにより、サブタンク10内のインクがダイヤフラム弁14内に移動し、これに伴いメインタンク9内のインクがサブタンク10内に移動する。このようにダイヤフラム弁14の開閉動作を繰り返すことで、サブタンク充填動作を行うことができる。
本実施形態で用いられるサブタンク充填チェックシーケンスは第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
図10は本実施形態におけるサブタンク充填シーケンスを説明するためのフローチャートである。まずS301でサブタンク充填シーケンスがスタートすると、S302へと進みダイヤフラム弁開閉動作を所定回数実行する。次にS303へと進み、サブタンクのインクが満タンとなったかどうか判断する。サブタンク内のインクが満タンになっていないと判断された場合は再びS302へと戻り、再度ダイヤフラム弁開閉動作を所定回数実行する。S303でサブタンク内のインクが満タン充填されたと判断された場合には、S304へと進みサブタンク充填シーケンスを終了する。
このようにダイヤフラム弁14を用いてサブタンク充填動作を行えば、キャリッジ往復動作を伴わずにサブタンクの充填を行うことができる。つまり記録ヘッドが非吐出の状態で往復動作を行わないため、第1の実施形態と比較してサブタンク充填動作時の吐出口からの水分蒸発を抑えることが可能となる。その為、サブタンク充填動作後の記録動作開始前に行われる、記録ヘッド内吐出口近傍の乾燥、増粘インクを非記録領域部に吐出するインク量、即ち廃インク量を減らす事が可能となる。
また、第1の実施形態で示した動圧を利用したサブタンク充填動作と、本実施形態に示すダイヤフラム弁14による充填動作とを連動して行うこともできる。このような場合には、メインタンクからサブタンクにインクが移動する、図4(c)及び(d)の加速度制御とダイヤフラム弁14を閉状態から開状態とする動作とを同時に行う。そしてサブタンクからメインタンクに空気が移動する、図4(a)及び(f)の加速度制御とダイヤフラム弁14を開状態から閉状態とする動作とを同時に行うように制御する。これにより、どちらか一方のみを用いてインク充填動作を行う場合に比べて短時間でサブタンクへの充填動作を完了させることができる。
2 キャリッジ
3 記録ヘッド
4 供給チューブ
8 供給システム
9 メインタンク
10 サブタンク
11 中空管
12 バッファ室
13 記録媒体
14 ダイヤフラム弁
3 記録ヘッド
4 供給チューブ
8 供給システム
9 メインタンク
10 サブタンク
11 中空管
12 バッファ室
13 記録媒体
14 ダイヤフラム弁
Claims (11)
- インクを吐出する吐出口を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載して往復走査するキャリッジと、
インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクから管を介してインクが供給されるサブタンクと、
前記サブタンク内のインクが所定量以上か検知する検知手段と、
前記記録ヘッドと前記サブタンクの間を接続する供給チューブと、
前記メインタンクが装着されてからの経過時間を取得する取得手段と、
を備えるインクジェット記録装置であって、
前記サブタンクのインクが満タンではなく、かつ、前記経過時間が所定時間以上であると判断された場合には、前記供給チューブの中のインクの動圧が、前記管のインク移動に対する耐圧かつ空気移動に対する耐圧より大きくなるような加速度で、記録媒体への記録動作を行わずに前記キャリッジを走査するように制御する制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記制御手段は、前記供給チューブの中のインクの動圧を、前記管のインク移動に対する耐圧かつ空気移動に対する耐圧より大きくなるように、前記キャリッジの加速度を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記供給チューブには、容積変化することで前記メインタンクからサブタンクへとインクを供給する弁部材が設けられており、
前記制御手段は、前記キャリッジの加速度の制御と、前記弁部材の開閉動作の制御とを連動して行うことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。 - 前記制御手段は、前記供給チューブの中のインクの動圧が、前記吐出口におけるメニスカス耐圧より小さくなるように前記キャリッジの加速度を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
- インクを吐出する吐出口を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載して往復走査するキャリッジと、
インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクから管を介してインクが供給されるサブタンクと、
前記サブタンク内のインクが所定量以上か検知する検知手段と、
前記記録ヘッドと前記サブタンクの間を接続する供給チューブと、
前記メインタンクが装着されてからの経過時間を取得する取得手段と、
前記供給チューブに設けられ、容積変化することで前記メインタンクからサブタンクへとインクを供給する弁部材と、を備えたインクジェット記録装置であって、
記録動作の際に前記供給チューブの中のインクの動圧が、前記管のインク移動に対する耐圧かつ空気移動に対する耐圧より大きくなるような加速度で前記キャリッジを走査するように制御する加速度制御手段と、
前記サブタンクのインクが満タンではなく、かつ、前記経過時間が所定時間以上であると判断された場合には、前記弁部材を用いて前記サブタンクにインクが充填されるように制御する制御手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記サブタンクには、サブタンク内のインクが満タンかどうかを検知するセンサが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
- 前記センサは一対の電極からなり、前記一対の電極の一方が前記管に近接する領域に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
- 前記管は、重力方向に関して、前記メインタンクの下部と前記サブタンクの上部とを接続していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
- 前記供給チューブは、前記キャリッジの移動に追従して移動する部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
- 前記サブタンクは、前記供給チューブと前記管とを除いて密閉された構造となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御手段は、前記経過時間が所定時間以上が経過しているかの判断を、1枚の記録媒体への印字が終了する毎におこなうことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
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Cited By (4)
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