本発明は、加熱状態の溶融器を往復動させることで、投入した多数のプラスチックペレットの樹脂の溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させて、樹脂溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂の射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる成形機における射出装置に関する。
一般に、射出装置は、スクリュータイプ,プランジャタイプのものが存在する。その代表的なものとして、スクリュータイプでは、特許文献1が、プランジャタイプでは、特許文献2にそれぞれ開示されているように、主にシリンダとスクリューとから構成される。シリンダに設けられたホッパから投入されたペレットは、シリンダの内部でスクリューが回転することによって射出ノズル側に移送させられると共に、その移送過程で加熱されて溶融してゆく。そして、溶融した樹脂をノズルの先端に集め、それを射出し、金型に溶融樹脂を送る。
一般のプラスチックペレット(以下、単に『ペレット』という。)は、プラスチック(合成樹脂)製であり、その熱伝導率は約0.07〜0.20kcal/m・hr・℃である。これは、金属の熱伝導率の数百分の1から数千分の1であり、このようなことからペレットは、略断熱材と言える。したがって、ペレットを溶融するために、十分な溶融熱を与えても、熱がペレット内部(中心部)まで伝達しにくく、十分に加熱されるのに、かなりの時間がかかってしまう。
したがって、個々のペレットが十分に溶融されて、樹脂成形ができる状態となるまでは短時間ではきないものであった。そのためにシリンダ内で比較的長い時間をかけて、ペレットを溶融させなければならず、作業効率も良好とはいえないものであった。また、前記射出装置において、シリンダ投入した多数のペレットのそれぞれの固体が、加熱されてスクリューが回転することによって、噴射側に移動させるものであり、このとき多数のペレットの一部がシリンダ内壁に押し付けられる状態となる。
つまり、シリンダ内壁に押圧されることになる。そして、押圧される個々のペレットについても、その固体の表面の一部のみがシリンダ内壁に接触するものであり、個々のペレットの溶融は、ペレット固体が部分的に溶融するのみである。シリンダ内でスクリューによってこねられるペレットは、短時間でシリンダ内壁から離れてしまい、十分な加熱が行われず、ペレット固体は全体が溶融されず、大半のペレットは溶融部分と非溶融部分とが混ざり合った状態となる。
ペレットがスクリューによってシリンダ内壁に繰り返して押圧されることで、ペレットの完全な溶融が行われ、溶融したペレットがノズル付近に移送された場合でも、シリンダに貯留している樹脂の量は、1回の射出に必要な量の数十倍以上であり、無駄な量のペレットがシリンダ内に残留することになる。
また、溶融された樹脂がスクリューとシリンダの隙間を通過するときに、樹脂に機械的損傷を与える。特に、ガラス繊維入りのペレットを溶融する場合には問題が多く、スクリューが磨耗してしまう。また、それぞれのペレットがランダムに一部のみの溶融となるため、シリンダ内にいつまでも同じペレットが残留してしまうことは避けられない。そのために、シリンダ内のペレットにおける材料替えを行う際は、特に、作業が大変である。
このようなスクリュータイプに対してプランジャタイプのものが存在する。この種のものでは、構造が簡単で、且つ小型化にし易いものである。また、スクリューが磨耗するという欠点もプランジャタイプには存在しない。特許文献2は、最も基本的な構造を有するプランジャタイプのものであり、主に多数の貫通孔を有する裁頭円錐状の加熱筒と、射出プランジャと、供給筒等から構成されたものである。そして、射出プランジャにより、合成樹脂原料が加熱筒に送り出され、射出が行われる。しかし、特許文献2においても、種々の問題点を有している。
特許文献2では、射出プランジャと、裁頭円錐状の加熱筒は、その対面する両者の直径が異なるもので、射出プランジャの直径が加熱筒の対面箇所の直径よりも一回り小さく形成されている。また、射出プランジャの先端と加熱筒と射出プランジャの先端部分と供給筒との間には、射出プランジャの先端の面積よりも広い容積の空隙室が存在する。
したがって、溶融した合成樹脂原料は、射出プランジャによって、一旦、前記空隙室に押出されるが、射出プランジャがさらに加熱筒側に移動しても、合成樹脂原料が加熱筒の貫通孔に効率良く流入することができないものであり、加熱筒に流入しないで空隙室に残留してしまうおそれが十分にある。そして、前記空隙部に残留した合成樹脂原料は、加熱筒の貫通孔に新たに送り出そうとする合成樹脂原料の障害となるおそれがある。また、新たに送り出そうとする合成樹脂原料と、長期間残留して劣化した樹脂とが混合されてしまうおそれも十分にある。
そのような裁頭円錐状の加熱筒及び射出プランジャの不都合な点を改良し、極めて良好にペレットの樹脂溶融工程と、溶融樹脂の射出工程が効率良くできる成形機における射出装置を、本願出願人は、特許文献3にて開発した。この特許文献3では、ペレットの集合体を、プランジャにて押圧するのみで、前記ペレットが、溶融器の多数の錐状孔を通過することで、ペレットが樹脂溶融できると同時に、溶融樹脂の射出ができるという画期的な発明を提供できたものである。
この発明では、ペレットを溶融させる溶融工程としては、加熱された溶融器の多数の錐状孔を所定の圧力にて通過することで、ペレットなる個体から出口から出たときに溶融樹脂となる。つまり、ペレットの材質、溶融樹脂の粘性、溶融温度、圧力、溶融速度、押出速度、流量等が関連して、溶融速度と射出速度とが同一となっている。すると、溶融速度で考慮するとかなり早く溶融できるものであるが、今度は、射出速度だけを考察すると、溶融速度と同じ時間となり、射出時間が遅いように感じられるものであった。
特開平6−246802号公報
特公昭36−9884号公報
特許第4880085号公報
そこで、発明が解決しようとする課題(発明の目的)は、加熱された溶融器の多数の錐状孔を所定の圧力にて通過させて樹脂を溶融する溶融工程と、その後の溶融樹脂の射出工程とを分離した上で、射出工程の迅速化を図ることを実現することである。つまり、溶融工程と射出工程を繰り返し行うこうとで、該射出工程を溶融工程の時間に関係なく設定させることで、射出工程の飛躍的な迅速化を図ることである。
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向の先端射出側には出口部材が、その後部側には塞ぎ部が、該塞ぎ部と前記出口部材との中間位置にプラスチックペレットを供給するペレット供給口がそれぞれ設けられたシリンダと、器本体部に錐状の通路で且つ流入側大開口から流出側小開口に連通する多数の溶融孔が形成され且つ前記シリンダ内径と同径とした溶融器と、前記溶融器を加熱する加熱手段と、前記溶融器を往復動させる駆動手段とからなり、前記溶融器の前記流出側小開口が前記出口部材と対面してなると共に、前記溶融器が前記シリンダ内においてプランジャ的な動作をなして、前記駆動手段の復路が前記ラスチックペレットを溶融する溶融工程と、その往路が溶融樹脂の射出工程としてそれぞれ構成されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項2の発明では、請求項1において、前記シリンダの内形は円形として形成されてなると共に、前記溶融器の外形も円形で、しかも同一径としてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明では、請求項1又は2において、前記溶融器のペレット貯留領域の端部と前記塞ぎ部との位置間に前記ペレット供給口が設けられてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項4の発明では、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記溶融器の溶融孔は円錐形状としてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明では、請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は三角形以上の多角形状の開口に形成されると共に、隣接する流入側大開口同士は境目となる部位が刃状として形成されるように近接してなることを特徴とする成形機としたことにより前記課題を解決した。
請求項6の発明では、請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記溶融器と該溶融器に連結固定された前記駆動手段の往復動杆との熱伝導が遮断されるように構成されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項7の発明では、請求項1,2,3,4,5又は6のいずれか1項の記載において、前記溶融器及び往復動杆は、それぞれ組をなして複数具備されると共に、複数の組は並列に配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項8の発明では、請求項7において、前記溶融器及び往復動杆からなる組は、2組として並列配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項9の発明では、請求項7において、前記溶融器及び往復動杆からなる組は、3組以上として並列配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決したものである。
請求項1の発明では、加熱状態の溶融器を往復動させることで、投入した多数のペレットを溶融する溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させて、ペレットを溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂の射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる最大の効果を奏する。特に、本発明では、溶融器本体がプランジャ的な動作をなすことで、出願人が従来必要としていた別部材のプランジャが無くとも、その往復動で溶融工程と射出工程とを実現できることで大きな効果が得られる。
特に、実験例では、多数のペレットがシリンダ内に詰まっている状態で、溶融器を復路工程で可動させたときに、シリンダ内に充満された多数のペレット群が逆流しないで、ペレット相互が押圧され、この動作にて、流入側大開口から流出側小開口に連通する多数の溶融孔を通過することでペレットが溶融して、樹脂溶融ができるものである。これにより、溶融樹脂が良好にできるものである。
具体的には、前記溶融器の前記流出側小開口側面が、プランジャの押圧面としての役割をなし、前記溶融器の前記流出側小開口側面の前記シリンダ内に、溜まった溶融樹脂が、一度の押圧で、迅速且つ早期に前記ノズル部を介して外側に射出することができる利点がある。つまり、多数のプラスチックペレットの樹脂溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させることで、良好な樹脂溶融ができる十分な時間を確保できるし、且つ、溶融樹脂は、溶液状のため、最大速度であっても対応でき、短時間に効率良く射出できるものである。
押圧された多数のペレットは、無駄が一切なく、直接、溶融器の溶融孔の多数の流入側大開口に送り込むことができる。したがって、塞ぎ部と前記溶融器の流入側面部との間の
多数のペレットが順次送り込むことができる。
塞ぎ部と前記溶融器の流入側面部との間に押圧されて、前記溶融孔の流入側大開口から入り込んだペレットは、溶融孔の内周壁面に囲まれる状態となり、溶融孔が錐体状の通路であるから内周壁面は次第に狭くなり、ペレットの周囲との間隔もペレットの流出側小開口側への移動に伴い次第に小さくなる。
溶融器自体は、加熱手段によりペレットの溶融温度に加熱されており、ペレットが溶融してゆく。このとき、ペレットの全周囲は溶融孔の内周壁面により囲まれた状態であり、ペレットは外周から中心部に略均等にバランス良く溶融してゆくことができる。しかも、ペレットが、溶融孔を流入側大開口から流出側小開口に向かって移動する過程で、器本体部は、熱容量が大きいので、加熱手段にて一旦、高温に加熱されると、溶融器は、溶融したペレットの温度に影響されることなく、ペレットを加熱しつつ、十分な溶融温度に維持してゆくことができる。
そして、ペレットが外周から中心に向かって略均等に溶融しつつ、次々に流入側大開口から入り込む多数のペレットに押圧されて、溶融孔の流出側小開口に移動することができ、その間にもペレットは溶融が進行し、溶融孔の軸方向(長手方向)の略中間を通過した当たりでは溶融された部分が殆どであり、溶融器の溶融熱と共に周囲のペレットも溶融が加速度的に進行する。流出側小開口付近では、ペレットは最高温度で完全に溶融しており、溶融樹脂として、前記シリンダ内に溜めることができる。
このように、本発明において、溶融器は、器本体部に多数の錐体状の溶融孔を有するものであり、加熱手段により溶融温度に加熱された多数の錐状の溶融孔に、シリンダのペレット貯留領域W内において押出されたペレット群が大開口側である流入側大開口より入り込むことで、ペレットがバランス良く溶融し、且つ溶融器の熱容量が大きいので高温状態を維持することができ、溶融が促進されて溶融速度も速くなり、出口部材側に溶融樹脂が溜められる。
特に溶融器は、加熱手段によって、流出側小開口部分で樹脂の温度が最高に達することである。射出直前に必要な最適温度で且つ最高温度にすることができ、高温状態を最短時間にすることで樹脂を劣化させないので、高品質の成形が可能となる。つまり、溶融器は、樹脂が溶融する一番最後の過程で、射出直前に樹脂を最適温度に上げることができる構造である。
さらに、溶融器は、器本体部に、多数の錐状の通路が形成された溶融孔を有しており、これら多数の溶融孔は、流入側面部から流出側面部に向って集束することなく、略平行状態に配置されることができる。これによって、多数の流出側小開口は、密集することなく、それぞれ均等に配置されることができる。したがって、溶融器自体の熱容量は、十分に大きいものにできると共に、流出側面部寄りにおける溶融孔間の肉厚部(中実部)の体積を十分に大きく確保することができ、溶融孔間の熱容量も大きくすることができる。
そのため、ペレットが、溶融孔を流入側大開口から流出側小開口に向かって移動する過程で、溶融器が加熱手段にて一旦、高温に加熱されると、大きな熱容量によって高温が維持され、溶融したペレットは温度が低下することなく、十分な溶融温度に維持して、良質なペレット群による溶融樹脂ができる。
請求項2の発明では、前記シリンダの内径は円形として形成されてなると共に、前記溶融器の外径も円形で、しかも同一径として形成したことにより、溶融器は、正確な円筒形状となり、該溶融器の製造を簡単にできるようにすると共に、シリンダへの組付けも容易にできる。請求項3の発明は、前記溶融器のペレット貯留領域の端部と前記塞ぎ部との位置間に前記ペレット供給口が設けられてなることにより、供給するペレットは常時、ペレット貯留領域内において溶融することができる構成にでき、能率的にできる。
請求項4の発明では、溶融器の溶融孔は円錐形状としたことにより、どのような形状のペレットであっても、ペレットの外周が溶融孔の内周壁面に囲まれ易く、ペレットが略均等にバランス良く溶融することができる。請求項5の発明では、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は略多角形状の開口に形成されると共に、隣接する流入側大開口同士は境目となる部位が刃状として形成されるように近接してなることにより、前述した流入側大開口同士の境目の刃状箇所で破砕され、細かく分離されるので、ペレットは流入側大開口により一層入り易くなり、ペレットの溶融を促進させることができる。
請求項6の発明では、前記溶融器と該溶融器に連結固定された前記駆動手段の往復動杆との熱伝導が僅かとなるように構成されているため、溶融工程において、ペレット貯留領域内におけるペレットは加熱等されずに、通常の状態で備蓄状態にできる。請求項7の発明では、前記シリンダ及び前記溶融機は、それぞれ組をなして複数具備されているため、大量のペレットを必要とする大形の金型に対して好適であり、また、本発明における射出装置から出口部材にダイスを使用して、直接、長尺となるワーク(製品)を形成するとき等においても極めて好適である。
請求項8の発明では、請求項7において、前記シリンダ及び前記溶融機からなる組は、2組として並列配置されていることにより、比較的小型ながら、大型の金型に対応しうるものにできる。請求項9の発明では、前記溶融機と前記スクリューからなる組は、3組以上として並列配置されたことにより、より一層、大型の金型に対応しうるものにできる。
なお、溶融孔の流入側大開口は、少なくとも前記ペレットの一部が流入可能な大きさにすれば、溶融孔の流入側大開口には、略1個ずつのペレットが入り込むことができ、ペレットは入り込んだと同時に溶融孔の内周壁面に囲まれることとなり、溶融が開始され、射出成形の作業速度が向上することもある。
(A)は本発明の復路工程を示す縦断側面図、(B)は本発明の往路工程を示す縦断側面図である。
(A)は本発明の溶融工程の初期位置の縦断側面図、(B)は本発明の溶融工程の中間位置の縦断側面図、(C)は本発明の溶融工程の終了位置の縦断側面図である。
(A)は本発明の溶融工程の初期位置の要部縦断拡大側面図、(B)及び(C)は本発明の溶融工程の中間位置の要部縦断拡大側面図、(D)は本発明の溶融工程の終了位置の要部縦断拡大側面図である。
(A)はペレットが流入側大開口から流出側小開口に向かって溶融しながら移動する状態を示す溶融孔の拡大縦断側面図、 (B)はペレットが流入側大開口から流出側小開口に向かって溶融しながら移動する状態を示す溶融孔の拡大模式的略図である。
(A)は本発明の射出工程の初期位置直後の縦断側面図、(B)は本発明の射出工程の中間位置の縦断側面図、(C)は本発明の射出工程の終了位置の縦断側面図である。
(A)(B)及び(C)は本発明の溶融器において、流出側小開口が小径である場合には、開閉弁無しでも、ペレットの逆流が最小限にて、射出工程ができる状態図である。
(A)は溶融器箇所の拡大縦断側面図、(B)は(A)の一部切除した分解斜視図、(C)は(B)の(ア)部拡大図、(D)は(A)のX1−X1矢視断面図である
(A)は第2タイプの溶融器の一部切除した斜視図、(B)は(A)の(イ)部拡大図、(C)は(B)のX2−X2矢視拡大断面図、(D)は(B)のX3−X3矢視拡大断面図、(E)は(B)のX4−X4矢視拡大断面図、(F)はペレットが破断される状態を示す溶融孔の流入側大開口側の要部拡大図である。
(A)は第2タイプの溶融器箇所の拡大縦断側面図、(B)は(A)の(ウ)部拡大図である。
(A)は本発明の射出装置の出口部材におけるH字形状の長尺製品を製造するダイスの斜視図、(B)は(A)のX5−X5矢視拡大断面図、(C)は(A)のX6−X6矢視拡大断面図、(D)は(A)のX7−X7矢視拡大断面図、(E)は(A)のX8−X8矢視拡大断面図である。
(A)は本発明の射出装置において2組の溶融器と往復動杆を並列配置した状態の略示斜視図、(B)は(A)のX9−X9矢視拡大断面図、(C)は(A)のX10−X10矢視拡大断面図、(D)は(A)のX11−X11矢視拡大断面図。
(A)は本発明の射出装置において3組の溶融器と往復動杆を並列配置した状態の略示斜視図、(B)は(A)のX12−X12矢視拡大断面図、(C)は(A)のX13−X13矢視拡大断面図、(D)は(A)のX14−X14矢視拡大断面図である。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明は、図1(A)及び(B)に示すように、主にシリンダ1と、ペレットp,p,…を溶融する溶融器2と、該溶融器2を往復動させる駆動手段3と、加熱手段4とから構成されている。前記シリンダ1の端には出口部材5が、この内部には、往復動する前記溶融器2と塞ぎ部6がそれぞれ設けられている。該塞ぎ部6は、実施形態では、板状に形成されているが、前記シリンダ1の内面を塞ぐことができれば、球面状をなしても、実施形態に制限されない。前記駆動手段3には往復動杆34が設けられている。
また、前記シリンダ1の軸方向(又は長手方向ともいい、図1(A) 及び(B)において、上下方向)の一端側(図1において下端)に前記出口部材5が装着され、軸方向(長手方向の上端)他端側[図1(A)において上端]には前記塞ぎ部6が内臓されている。さらに、軸方向(長手方向の上端)他端側[図1(A)及び(B)において上端]には前記駆動手段3が装着され、該駆動手段3によって前記溶融器2が往復動するように構成されている(図1及び図2参照)。
前記シリンダ1の材質は、加熱が迅速に行われることが必要であり、鉄又は鉄の含有量の多いステンレスなどが好適である。該シリンダ1は、細長く形成されたシリンダ本体部11と、前記塞ぎ部6寄りに形成されたペレット供給口11aから接続された管状の供給管12とで構成されている。該供給管12には、ペレットp,p,…を溜めておくホッパ8に連通するように構成されている。前記供給管12は、前記シリンダ1に一体化された部分と適宜弧状に形成されたパイプとで結合されている。前記シリンダ本体部11は円筒状の部材であり、その内方側は内周側面部11bによって包囲された略円柱状の空隙を有する。
前記シリンダ本体部11の肉厚寸法は、約2mm程度のものが好ましい。前記ホッパ8には、多数のペレットp,p,…が投入可能であり、投入されたペレットp,p,…は、供給管12を通して前記ペレット供給口11aからシリンダ本体部11内に送り込まれる〔図2(A)参照〕。また、特に図示しないが、供給管12にスクリュー搬送又は空気圧装置を具備して、ペレットp,p,…を強制的に投入することもある。前記シリンダ1の断面は、円形をなしているが、僅かに円が変形して楕円状となる場合もある。この場合には、これと同一形状の溶融器2が回転等することなく、正確な往復動が可能となる。
前記シリンダ本体部11の軸方向(長手方向)の一端側(下端)には、ノズル部51又はダイス52等の出口部材5が装着されている。該出口部材5は、前述したようにノズル51部及びダイス52(図10参照)が存在する。前記ノズル部51は、本発明の射出装置と共に使用する金型に合わせて射出部分の口径を変更させるように交換可能に構成されている。前記ノズル部51は、射出口51aと接続部51bとから構成される〔図1(A)参照〕。
前記射出口51aは、シリンダ本体部11の内径よりも狭く形成されたもので、図示されない金型のゲートに挿入する部位である。前記ノズル51の接続部51bと、シリンダ本体部11とは、図示しないが、螺子構造(外螺子,内螺子)による構成で着脱自在となっている。前記ノズル51の材質は、熱伝導の良いものが好適で、具体的には、ベリリウム銅又は銅が望ましい。
前記ダイス52は、樹脂製長尺物(材)を製造するものである。該ダイス52は、前記ノズル51を外してシリンダ1の溶融器2付近に近接するようにシリンダ1に直接、装着するものであり、図10に示すように、適宜の形状の成形孔52aが形成されたものである。該成形孔52aの具体的な形状としては、「H」字形状等であるが、その他の形状として、「L」字形状,四角,三角,円又はその他の多角形状等である。
前記成形孔52aは、ダイス52のシリンダ1への装着側では、円形状の開口として形成され、溶融樹脂qが流入し易い状態となっている。そして、成形孔52aは、ダイス52の吐出開口側に向かうに従い所望の形状に近くなるように形成されている。具体的に、「H」字形状の樹脂製長尺材が形成される成形孔52aでは、該成形孔52aはシリンダ1への装着側から外方側に向かうに従い、円形から次第に「H」字形状となるように形成される〔図10(B)乃至(E)参照〕このように、ダイス52は、長尺な樹脂製の形材を製造する役目をなすものである。つまり、断面形状が同一な長尺物を製造することができる。
前記溶融器2は、略円筒形状形成された器本体部21に多数の溶融孔22,22,…が形成されたものである(図1,図5及び図7等参照)。前記器本体部21の材質は、熱容量が大きく、且つ熱伝導の良いものが好適である。具体的には、銅又はベリリウム銅が使用される。器本体部21は、前記シリンダ1のシリンダ本体部11内部で、往復動可能に構成され、常時には、前記出口部材5寄りに位置するように配置されている〔図1(A)参照〕。
前記溶融器2の器本体部21は、前述したように円筒形状に形成されたものであり、該器本体部21において前記塞ぎ部6と対面する側で且つ多数のペレットp,p,…が流入してくる側の面を流入側面部21aと称する。該流入側面部21aと反対側の面で前記出口部材5と対面し、溶融樹脂qが流出する側の面を流出側面部21bと称する。
また、器本体部21の外周側面を円周側面21cと称する。前記器本体部21は、前述したように円筒形状であり、流入側面部21aの直径D2aと、流出側面部21bの直径D2bとは、円周側面21cは、軸方向に沿っていずれの位置も同一直径となる正確な円筒形状である〔図7(A)参照〕。また、図1〜図6における溶融器2についても、上記の正確な円筒形状としたものである。
次に、溶融孔22は、器本体部21の軸方向(長手方向)に沿って形成されたものである(図1〜図6参照)。さらに詳しくは、溶融孔22は、トンネル状或いは管路状とした錐状の貫通孔である〔図7(B),(C)参照〕。溶融孔22において、前述した錐状の貫通孔とは、孔形成方向に直交する複数の任意の位置の断面形状が広い形状から狭い形状となるように形成されたものであり、具体的には円錐或いは角錐等の空隙を有する孔である〔図7(B),(C)及び図8(A),(B)参照〕。
本発明では、特に、溶融孔22の錐状として円錐形状が好ましく、直径が大から小に向かって次第に小さくなるように形成されている〔図7(B),(C)参照〕。前述したように、溶融孔22は、錐体状の空隙を有する孔であるために、該溶融孔22の両端の開口の大きさは異なる。そこで、前記溶融孔22の大開口側は、ペレットp,p,…が流入する流入側大開口22aと称する〔図4(A),(B),図7(B)及び(C)参照〕。
また、前記溶融孔22の小開口側を流出側小開口22bと称する〔図4(A),(B),図7(B)及び(C)参照〕。つまり、溶融孔22は、流入側大開口22aから流出側小開口22bに連通する通路であり、流入側大開口22aから流出側小開口22bに向かって次第に断面が狭くなる。そして、流入側大開口22aは、器本体部21の流入側面部21a側に位置し、前記塞ぎ部6に対面(又は対向)する〔図1(A)及び(B)参照〕。また、流出側小開口22bは流出側面部21bに位置し、出口部材5に対面(又は対向)する〔図1(A)及び(B)参照〕。
以上述べたように、溶融器2の流入側面部21aには、多数の溶融孔22,22,…の流入側大開口22a,22a,…が配置されたものであり、前記流入側面部21aは、前記塞ぎ部6に対面して流入側大開口22aにペレットp,p,…が流れ込むので、溶融器2の流入側と称する。
また、前記溶融器2の流出側面部21bには、多数の溶融孔22,22,…の流出側小開口22b,22b,…が配置されたものであり、前記流出側面部21bは、出口部材5側に対面して流出側小開口22bからペレットp,p,…が溶融した溶融樹脂qを流出させるので、溶融器2の流出側と称する。そして溶融器2の流入側及び流出側については、図面に示されている(図4参照)。
溶融孔22を円錐形状の孔とした場合では、軸方向(長手方向)に沿って、それぞれの直交する箇所の断面形状は円形状である〔図7(B)及び(C)参照〕。そして、溶融孔22の流入側大開口22aは、1個のペレットp全体が入り込む大きさであり、少なくとも該ペレットpの一部(一部分)が入り込むような大きさとしている。流入側大開口22aの具体的な大きさは、ペレットp,p,…が容易に入り易いような直径で、約3〜4ミリ程度である。
流出側小開口22bは、ペレットp,p,…が溶融して液化した溶融樹脂qとなるような直径は約1〜1.5ミリ程度である。溶融孔22は、その軸方向(長手方向)に沿った断面形状が略テーパー形状である。また、前記溶融器2の流入側面部21a側の多数の溶融孔22,22,…の流入側大開口22a,22a,…相互を、円形面取りとして拡大すると、隣接する溶融孔22,22,…相互の先端が、相合の境目となる部位の先端が、波状に形成される。この刃状は側面から見ると、波形状に形成される。
溶融孔22の形状は、前述したように、軸方向(長手方向)に沿って錐状であり、角錐状とした場合には、四角錐形状としたり、或いは三角錐形状とすることもある。また、四角錐形状と円錐形状を組合わせたタイプも存在する(図8参照)。このタイプの溶融孔22では、円錐形状の溶融孔22の流入側大開口22aを三角形以上の多角形状とし、流出側小開口22bを円形状としたものである。
さらに具体的には、錐状の溶融孔22の流入側大開口22aが略正方形に形成され、隣接する流入側大開口22a,22a同士の間隔が最小限となるように形成された実施形態も存在する〔図8(A)乃至(E)参照〕。この実施形態では、隣接する流入側大開口22a,22aの境目となる部位が刃状として形成されることになり〔図8(B)参照〕、集合する流入側大開口22a,22a,…が格子形状を構成する〔図8(A)乃至(C)参照〕。また、略多角形状とした流入大開口22aは、前述したように正方形等の四角形の他に、三角形,六角形等の形状も存在し、隣接する流入大開口22a,22a同士の縁が平行且つ直線状となるものが好ましい。
このように、流入側大開口22aを略正方形状とし、多数の流入側大開口22a,22a,…によって略格子状を構成されている〔図8(A)乃至(C)参照〕。さらに、隣接する流入側大開口22a,22aの境目が、図8(F)に示すように、刃状となるように構成されることで、各流入側大開口22aの周縁は鋭利な形状となり、流入側大開口22aに入り込もうとするペレットp,p,…が刃状部位に引っ掛かると、前記塞ぎ部6に押圧れるペレットp,p,…群による押圧力によって、細かく破断され、流入側大開口22aにより一層入り易い状態となる。
前記駆動手段3は、減速機付きのモータ駆動部31,ピニオンギア32及びラック軸33とから構成されている。或いは、図示しないが、減速機付きのモータ駆動部31と、ボールねじとボールねじナット駆動との駆動によりロッドが往復動する駆動手段3も存在する。前記ラック軸33の先端又は前記ロッド端には、往復動杆34が連結されている。
該往復動杆34が、前記塞ぎ部6の略中央に貫通され、その先端が前記溶融器2に接続されている。前記ラック軸33は、前記シリンダ1の後部に、ねじ環14によって接続された筒状ケース13にて覆われており、前記モータ駆動部31のモータケース38に固定されている。前記往復動杆34は、鉄又はステンレス製等で構成されている。
前記モータ駆動部31は、ブラシレスモータ又はステッピングモータ等で構成され、高精度の駆動制御が可能であり、且つペレットの材質等を考慮して、溶融工程の時間と、溶融樹脂qの射出工程の時間とを分離させて制御できる。その結果、樹脂を溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂qの射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる。
例えば、溶融工程時間を約30秒とし、溶融樹脂の射出工程時間を約1秒程度とすることによって、射出工程時間を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる最大の利点がある。特に、前記ブラシレスモータは、溶融工程時間を長くし、射出工程間を短くするとき等のように異なる時間帯を、任意に且つ正確に制御するのに好適である。
加熱手段4は、前記シリンダ本体部11の外周面から前記溶融器2を加熱する構成部材であり、該溶融器2への熱伝導性が良好となるように筒状に構成されている。具体的には、IHヒータ等が巻き線状に構成されたもので十分な熱量が得られる。
前記加熱手段4は、シリンダ1のシリンダ本体部11内において往復動する溶融器2を加熱する役目をなす。加熱手段6は、具体的には、電磁誘導装置つまりIH(インダクションヒーティング)コイルが好適であり、樹脂又はセラミック製の断熱材コイルボビンにIHコイルを巻いたものである。
IHコイルとシリンダ本体部11の外周側面との間隔が最適になるようにボビンの形状が設定されている。入力電力は、制御装置により0乃至1Kwまで可変可能としたものが好適である。前記シリンダ1には、熱電対が取り付けられており、シリンダ1の温度を設定値にすることができるようになっている。また加熱手段6の別のタイプとして、バンドヒーターが使用されることもある。さらに、加熱手段6は、前述したものに限定されるものではなく、その他の本発明に使用可能な加熱装置であれば何れのものが使用されても構わない。
前記加熱手段4は、前記シリンダ本体部11に固定状態にセットされているが、前記溶融器2の熱容量的には、駆動手段3にて往復動しても、十分に熱源を保つようにできる。これは、常時は、図1(A)位置、即ち、出口部材5箇所に近づいた定位置としてセットされていることによる。ペレット貯留領域W内において、前記溶融器2が復路に動いて(溶融工程)も、その状態から直ぐに、往路に動く(射出工程)ことになり、溶融器2は、加熱状態が簡単には冷えず、十分な加熱量を得ることができ、所定の温度を保持することができる。
また、前記溶融器2については、断熱処理が必要に応じて設けられている。この点について具体的に説明する。前記溶融器2の流入側面部21a及び流出側面部21bの中心を通る中心貫通孔21d内に、前記駆動手段3の往復動杆34が遊挿されている。つまり、前記中心貫通孔21dの内径が、前記往復動杆34の直径よりも僅かに大きく形成され、接触しないように構成されている。さらに、前記溶融器2の流入側面部21a及び流出側面部21bの中心位置に、それぞれ凹部21a1及び21b1が形成されている。
該凹部21a1及び21b1には、セラミック製又はポリイミド製等の断熱材で円板状の支持片25,25が配置されつつ、前記往復動杆34に固定されている。具体的には、一方の支持片25が前記往復動杆34に挿入された後に、該往復動杆34の先端側が前記溶融器2の中心貫通孔21dに貫通される。そして、前記一方の支持片25が前記溶融器2の流入側面部21aの凹部21a1配置される。
この状態にて、他方の支持片25及び円板71が挿入されたカラー部材72が前記往復動杆34に形成された先端側細径部34aに挿入される。前記カラー部材72は、鉄又はステンレス製等で構成されている。さらに、前記往復動杆34の先端側細径部34aのねじ部34bにナット34cが螺合されて該往復動杆34に前記溶融器2が固定される。つまり、前記溶融器2は、直接には前記往復動杆34に接触しないで、前記支持片25,25を介して前記往復動杆34に固定されるものである。このため、該往復動杆34には、前記溶融器2の熱伝導は、殆ど無い状態にできる。つまり、熱遮断状態にできる。
また、溶融器2箇所の別の実施形態としては、図9(A)及び(B)に示すように、前記往復動杆34の先端側細径部34aのみに、セラミック製又はポリイミド製等の断熱材で筒状カラー35が挿入固定されると共に、該筒状カラー35が前記溶融器2の中心貫通孔21dに嵌入されている。さらには、他の第1実施形態とほぼ同じに構成されている。
これらの構造によって、溶融器2に発生する熱源は、前記シリンダ1の内部の金属製(主に、ステンレス製等)の往復動杆34に熱伝導しないように構成されている。以上のように、前記溶融器2の断熱の目的としては、溶融の最に溶融器2の熱量がペレットp,p,…の溶融にみに使われるようにすることである。そのために、前記溶融器2と前記往復動杆34との間に断熱材(支持片25又は筒状カラー35)が介在されている。
前記溶融器2の内部構造としては、開閉弁7が必要に応じて設けられている(図1,図2及び図4等参照)。つまり、前記溶融器2の流入側大開口22a又は流出側小開口22bを復路工程では開き、前記溶融器2の流入側大開口22a又は流出側小開口22bを往路工程では閉じるようにした開閉弁7が設けられている。
具体的には、該開閉弁7は、往路工程の時に、前記溶融器2の先端側を閉鎖したり、或いは、復路工程の時に、解放するように構成されている。具体的には、前記開閉弁7は、円板71と、鍔73付きカラー部材72とから構成されている。該鍔73付きカラー部材72が、前記溶融器2の流出側面部21bの前面に位置し、前記溶融器2の中心を貫通された前記往復動杆34の先端部に、前記カラー部材72を介して、前記鍔73と前記流出側面部21bとの間で、僅かに前後動可能に設けられている。
前記円板71の直径D7は、前記流出側面部21bの直径D2bよりも小径に形成されている〔図7(A)参照〕。
つまり、
である。これは、復路工程の時に、溶融樹脂qが流れやすくするためである。
前述の構成を簡単に説明すると、前記開閉弁7は、前記出口部材5と前記溶融器2との間に設けられると共に、前記溶融器2の流出側小開口22bに対して接離する円板71としてなり、該円板71は前記溶融器2の直径よりも小径に形成されて構成されている。
前記開閉弁7における円板71には、図7(B)及び(C)に示すように、多数の貫孔71aが形成され、該貫孔71aは前記溶融器2の流出側小開口22bの位置とは不一致するように形成されてなると共に、前記円板71に突設された案内ピン71bが前記溶融器2に形成された穴部21p間に遊挿可能に構成されている。
かかる構成によって前記円板71が鍔と溶融器の面との間で僅かではあるが接離可能に構成されている。具体的には、円板72の板厚tとすると、鍔と溶融器の面との間は、t+αとなっており、該αの範囲内において、接離する動きを呈する〔図7(A)参照〕。
特に、前記溶融器2の流出側小開口22bの孔径が流入側大開口22aに対して格段と小さい場合[図6(A)〜(C)参照]、例えば、約1ミリ内外の場合には、駆動手段3による往路工程によって、溶融樹脂qを出口部材5を介して押圧しても、前記溶融器2の流出側面部21bの表面積が全流出側小開口22bの面積よりも格段と大きく、該全流出側小開口22bの孔部から逆流する溶融樹脂qの割合は極端に少なくなって、押圧されて出口部材5から溶融樹脂qを良好に射出できる。実験的にも十分に確認できる。このように、前記溶融器2に開閉弁7を設けなくとも、溶融樹脂qの射出工程を行うことができる[図6(A)〜(C)参照]。
以下、ペレットの溶融工程及び理論について説明する。まず、溶融工程前段階では、図2(A)及び図3(A)に示すように、シリンダ1内のペレット貯留領域Wに、ペレット供給口11aからペレットp,p,…が溶融器2の流入側面部21a手前側に貯留されている。
そして、溶融工程がONされると、駆動手段3による復路工程によって、ペレット貯留領域W内に入っている多数のペレットp,p,…は、図2(B)及び図3(B)に示すように、前記溶融器2の流入側面部21aと前記塞ぎ部6との間で圧縮されて、前記ホッパ8側に戻ろうとする作用もなすが、実際には、多数のペレットp,p相互間には押圧力f,f,…が発生して押出状態となり、多数の流入側大開口22a,22a,…から溶融孔22,22,…内に入り込むようにして流入する〔図2(B),図3(B),図4(A),(B)参照〕。流入側大開口22aは、前述したように、各ペレットpの少なくとも一部(一部分)が入り込む大きさである。
通常は、流入側大開口22aは、平均的なサイズのペレットp全体が流入側大開口22aから入り込む程度の大きさとしている〔図4(A),(B)参照〕。溶融孔22,22,…内に入り込んだそれぞれのペレットp,p,…は、あとから流入するペレットp,p,…によって、流出側小開口22b側に押圧され、溶融器2は、加熱手段4を介してペレットpを溶融する温度に維持されている。
したがって、流入側大開口22aから入り込んだペレットpは、流入側大開口22aから流出側小開口22bに向かって移動するに従いペレットp中心部に向かって溶融する〔図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpは、流入側大開口22aに入り始めた初期の状態で、ペレットpの周囲が溶融孔22の内周壁面に略均等に囲まれた状態となるように設定されている。
そして、ペレットpは、溶融孔22を流出側小開口22b側に向かって移動するに従い、溶融されつつ、サイズが次第に縮小されてゆく〔図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpが流出側小開口22b側に向かって溶融しながら移動しても、溶融孔22も次第に狭くなっているので、溶融して縮小されたペレットpの周囲は均等に囲まれた状態を維持している。それゆえに、ペレットpの溶融は、迅速に行われてゆく。
つまり、個々のペレットpの周囲は、溶融孔22の内壁面に略均等に囲まれ、常に内壁面に近接又は当接された状態を維持する〔図4(A)及び(B)参照〕。そして、ペレットpの溶融が進むに従い、さらに溶融孔22の狭い部分に進行し、ペレットpの溶融を促進させる。しかも、溶融孔22の内部でペレットpは溶融して液化しているので、後から送り込まれたペレットpは、既に液化したペレットpaの熱によって溶融がさらに促進される〔図4(A)及び(B)参照〕。
このようにして、ペレットpは、溶融孔22の流入側大開口22aから流出側小開口2
2bに向かうにしたがい、溶融が進み、流出側小開口22b付近又これより手前位置では溶融を完了して、完全に液状化する〔図3(C),図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpは、この完全に液状化された溶融樹脂qとなって、流出側小開口22bから図2(C)に示すように、前記シリンダ1内に貯留される。
以上述べたように、駆動手段3による復路工程によって、ペレット貯留領域W内に入っている多数のペレットp,p,…相互間に押圧力f,f,…発生して圧縮されて、溶融孔22の流入側大開口22aより入り込んだペレットpは、流出側小開口22bに向かう過程において、常に溶融孔22の内周壁面に包囲された状態である。それゆえに、加熱手段4を介して、ペレットpの溶融が行われ、図2(C)に示すように、ストローク量Lで押圧が終了するとともに、前記溶融器2の下側のシリンダ1内に溶融樹脂qが貯留される。
多数のペレットp,p,…は、殆ど必要な量のみを溶融できるので材料がシリンダ本体部11内で長時間熱的、機械的ストレスに晒されることがない。よって、品質の良い樹脂成形品ができる。また、本発明おける射出装置は、溶融効率が高く、必要以上の材料を投入する必要がないので装置全体が小型になり、省電力、省資源である。また、射出直前の溶融最終過程で射出適正温度かつ最高温度となることで樹脂の高温状態を最低時間に短縮できるということも品質の良い樹脂成形ができるものである。
本発明の溶融器2及び駆動手段3の往復動杆34は、複数組が具備されることもある。すなわち、本発明において、通常では、1個の溶融器2と、1個の駆動手段3の往復動杆34とが対をなして、1組とし、シリンダ1には1組の溶融器2と往復動杆34とが装着されている〔図1(A)参照〕。これに対して、一つのシリンダ1に溶融器2と往復動杆34の組が複数組の装着される実施形態が存在する(図11,図12参照)。これら複数組はシリンダ1内に並列配置される〔図11(A),図12(A)参照〕。
まず、シリンダ1内に、溶融器2と往復動杆34の組を2組とした実施形態について説明する(図11参照)。この実施形態では、シリンダ1に2つの空隙部11c,11cが並列状態に形成される。そして、両空隙部11c,11cに溶融器2と往復動杆34とからなる組が並列してそれぞれ装着される〔図11(A)乃至(C)参照〕。
前記ホッパ8は両空隙部11c,11cに連結している〔図11(B)参照〕。そして、シリンダ1の出口部材5装着側付近では、両溶融器2,2の流出側面部21b,21bがシリンダ1内で露出し、両溶融器2,2からの溶融したペレットp,p,…が混じり合い、出口部材5から溶融樹脂qを外部に送り出すことができるようになっている〔図11(D)参照〕。
次に、シリンダ1内に、溶融器2と往復動杆34の組を3組とした実施形態について説明する(図12参照)。この実施形態では、シリンダ1に3つの空隙部11c,11c,…が三角形状(又はおむすび形状)となるように並列状態に形成される。そして、全両空隙部11c,11c,…に溶融器2と往復動杆34とからなる組が3個並列してそれぞれ装着される〔図12(A)乃至(C)参照〕。
前記ホッパ8は全空隙部11c,11c,…に連結している〔図12(B)参照〕。そして、シリンダ1の出口部材5装着側付近では、全溶融器2,2,…の流出側面部21b,21b,…がシリンダ1内で露出し、全溶融器2,2,…からの溶融したペレットp,p,…が混じり合い、出口部材5から外部に溶融樹脂qを送り出すことができるようになっている〔図12(D)参照〕。
本発明における射出装置は、シリンダ1の軸方向(長手方向)が垂直状に設置されるが、水平状或いは傾斜状に設置されることもある。特に大形の金型に対して、射出成形する場合には、水平状に配置することもある。
1…シリンダ、11a…ペレット供給口、2…溶融器、21a…流入側面部、
21b…流出側面部、22…溶融孔、22a…流入側大開口、22b…流出側小開口、
3…駆動手段、4…加熱手段、5…出口部材、6…塞ぎ部、p…ペレット、
q…溶融樹脂。
本発明は、加熱状態の溶融器を往復動させることで、投入した多数のプラスチックペレットの樹脂の溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させて、樹脂溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂の射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる成形機における射出装置に関する。
一般に、射出装置は、スクリュータイプ,プランジャタイプのものが存在する。その代表的なものとして、スクリュータイプでは、特許文献1が、プランジャタイプでは、特許文献2にそれぞれ開示されているように、主にシリンダとスクリューとから構成される。シリンダに設けられたホッパから投入されたペレットは、シリンダの内部でスクリューが回転することによって射出ノズル側に移送させられると共に、その移送過程で加熱されて溶融してゆく。そして、溶融した樹脂をノズルの先端に集め、それを射出し、金型に溶融樹脂を送る。
一般のプラスチックペレット(以下、単に『ペレット』という。)は、プラスチック(合成樹脂)製であり、その熱伝導率は約0.07〜0.20kcal/m・hr・℃である。これは、金属の熱伝導率の数百分の1から数千分の1であり、このようなことからペレットは、略断熱材と言える。したがって、ペレットを溶融するために、十分な溶融熱を与えても、熱がペレット内部(中心部)まで伝達しにくく、十分に加熱されるのに、かなりの時間がかかってしまう。
したがって、個々のペレットが十分に溶融されて、樹脂成形ができる状態となるまでは短時間ではできないものであった。そのためにシリンダ内で比較的長い時間をかけて、ペレットを溶融させなければならず、作業効率も良好とはいえないものであった。また、前記射出装置において、シリンダ投入した多数のペレットのそれぞれの固体が、加熱されてスクリューが回転することによって、噴射側に移動させるものであり、このとき多数のペレットの一部がシリンダ内壁に押し付けられる状態となる。
つまり、シリンダ内壁に押圧されることになる。そして、押圧される個々のペレットについても、その固体の表面の一部のみがシリンダ内壁に接触するものであり、個々のペレットの溶融は、ペレット固体が部分的に溶融するのみである。シリンダ内でスクリューによってこねられるペレットは、短時間でシリンダ内壁から離れてしまい、十分な加熱が行われず、ペレット固体は全体が溶融されず、大半のペレットは溶融部分と非溶融部分とが混ざり合った状態となる。
ペレットがスクリューによってシリンダ内壁に繰り返して押圧されることで、ペレットの完全な溶融が行われ、溶融したペレットがノズル付近に移送された場合でも、シリンダに貯留している樹脂の量は、1回の射出に必要な量の数十倍以上であり、無駄な量のペレットがシリンダ内に残留することになる。
また、溶融された樹脂がスクリューとシリンダの隙間を通過するときに、樹脂に機械的損傷を与える。特に、ガラス繊維入りのペレットを溶融する場合には問題が多く、スクリューが磨耗してしまう。また、それぞれのペレットがランダムに一部のみの溶融となるため、シリンダ内にいつまでも同じペレットが残留してしまうことは避けられない。そのために、シリンダ内のペレットにおける材料替えを行う際は、特に、作業が大変である。
このようなスクリュータイプに対してプランジャタイプのものが存在する。この種のものでは、構造が簡単で、且つ小型化にし易いものである。また、スクリューが磨耗するという欠点もプランジャタイプには存在しない。特許文献2は、最も基本的な構造を有するプランジャタイプのものであり、主に多数の貫通孔を有する裁頭円錐状の加熱筒と、射出プランジャと、供給筒等から構成されたものである。そして、射出プランジャにより、合成樹脂原料が加熱筒に送り出され、射出が行われる。しかし、特許文献2においても、種々の問題点を有している。
特許文献2では、射出プランジャと、裁頭円錐状の加熱筒は、その対面する両者の直径が異なるもので、射出プランジャの直径が加熱筒の対面箇所の直径よりも一回り小さく形成されている。また、射出プランジャの先端と加熱筒と射出プランジャの先端部分と供給筒との間には、射出プランジャの先端の面積よりも広い容積の空隙室が存在する。
したがって、溶融した合成樹脂原料は、射出プランジャによって、一旦、前記空隙室に押出されるが、射出プランジャがさらに加熱筒側に移動しても、合成樹脂原料が加熱筒の貫通孔に効率良く流入することができないものであり、加熱筒に流入しないで空隙室に残留してしまうおそれが十分にある。そして、前記空隙部に残留した合成樹脂原料は、加熱筒の貫通孔に新たに送り出そうとする合成樹脂原料の障害となるおそれがある。また、新たに送り出そうとする合成樹脂原料と、長期間残留して劣化した樹脂とが混合されてしまうおそれも十分にある。
そのような裁頭円錐状の加熱筒及び射出プランジャの不都合な点を改良し、極めて良好にペレットの樹脂溶融工程と、溶融樹脂の射出工程が効率良くできる成形機における射出装置を、本願出願人は、特許文献3にて開発した。この特許文献3では、ペレットの集合体を、プランジャにて押圧するのみで、前記ペレットが、溶融器の多数の錐状孔を通過することで、ペレットが樹脂溶融できると同時に、溶融樹脂の射出ができるという画期的な発明を提供できたものである。
この発明では、ペレットを溶融させる溶融工程としては、加熱された溶融器の多数の錐状孔を所定の圧力にて通過することで、ペレットなる固体から出口から出たときに溶融樹脂となる。つまり、ペレットの材質、溶融樹脂の粘性、溶融温度、圧力、溶融速度、押出速度、流量等が関連して、溶融速度と射出速度とが同一となっている。すると、溶融速度で考慮するとかなり早く溶融できるものであるが、今度は、射出速度だけを考察すると、溶融速度と同じ時間となり、射出時間が遅いように感じられるものであった。
特開平6−246802号公報
特公昭36−9884号公報
特許第4880085号公報
そこで、発明が解決しようとする課題(発明の目的)は、加熱された溶融器の多数の錐状孔を所定の圧力にて通過させて樹脂を溶融する溶融工程と、その後の溶融樹脂の射出工程とを分離した上で、射出工程の迅速化を図ることを実現することである。つまり、溶融工程と射出工程を繰り返し行うこうとで、該射出工程を溶融工程の時間に関係なく設定させることで、射出工程の飛躍的な迅速化を図ることである。
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向の先端射出側には出口部材が、その後部側には塞ぎ部が、該塞ぎ部と前記出口部材との中間位置にプラスチックペレットを供給するペレット供給口がそれぞれ設けられたシリンダと、器本体部に錐状の通路で且つ流入側大開口から流出側小開口に連通する多数の溶融孔が形成され且つ前記シリンダ内径と同径とした溶融器と、前記溶融器を加熱する加熱手段と、前記溶融器を往復動させる駆動手段とからなり、前記溶融器の前記流出側小開口が前記出口部材と対面してなると共に、前記溶融器が前記シリンダ内においてプランジャ的な動作をなして、前記駆動手段の復路が前記プラスチックペレットを溶融する溶融工程と、その往路が溶融樹脂の射出工程としてそれぞれ構成されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項2の発明では、請求項1において、前記シリンダの長手方向から見た断面形状の内周は円形として形成されてなると共に、前記溶融器の長手方向から見た断面形状の外周も円形で、しかも同一径としてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明では、請求項1又は2において、前記シリンダ内における射出工程が終了したときの前記溶融器の後部と前記塞ぎ部との間のペレット貯留領域の後部位置に前記ペレット供給口が設けられてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項4の発明では、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記溶融器の溶融孔は円錐形状としてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明では、請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は三角形以上の多角形状の開口に形成されると共に、隣接する流入側大開口同士は境目となる部位が刃状として形成されるように近接してなることを特徴とする成形機としたことにより前記課題を解決した。
請求項6の発明では、請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記溶融器と該溶融器に連結固定された前記駆動手段の往復動杆との熱伝導が遮断されるように構成されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項7の発明では、請求項1,2,3,4,5又は6のいずれか1項の記載において、前記溶融器及び往復動杆は、それぞれ組をなして複数具備されると共に、複数の組は並列に配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。
請求項8の発明では、請求項7において、前記溶融器及び往復動杆からなる組は、2組として並列配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項9の発明では、請求項7において、前記溶融器及び往復動杆からなる組は、3組以上として並列配置されてなることを特徴とする成形機における射出装置としたことにより、前記課題を解決したものである。
請求項1の発明では、加熱状態の溶融器を往復動させることで、投入した多数のペレットを溶融する溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させて、ペレットを溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂の射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる最大の効果を奏する。特に、本発明では、溶融器本体がプランジャ的な動作をなすことで、出願人が従来必要としていた別部材のプランジャが無くとも、その往復動で溶融工程と射出工程とを実現できることで大きな効果が得られる。
特に、実験例では、多数のペレットがシリンダ内に詰まっている状態で、溶融器を復路工程で可動させたときに、シリンダ内に充満された多数のペレット群が逆流しないで、ペレット相互が押圧され、この動作にて、流入側大開口から流出側小開口に連通する多数の溶融孔を通過することでペレットが溶融して、樹脂溶融ができるものである。これにより、溶融樹脂が良好にできるものである。
具体的には、前記溶融器の前記流出側小開口側面が、プランジャの押圧面としての役割をなし、前記溶融器の前記流出側小開口側面の前記シリンダ内に、溜まった溶融樹脂が、一度の押圧で、迅速且つ早期に前記ノズル部を介して外側に射出することができる利点がある。つまり、多数のプラスチックペレットの樹脂溶融工程と、溶融樹脂の射出工程とに分離させることで、良好な樹脂溶融ができる十分な時間を確保できるし、且つ、溶融樹脂は、溶液状のため、最大速度であっても対応でき、短時間に効率良く射出できるものである。
押圧された多数のペレットは、無駄が一切なく、直接、溶融器の溶融孔の多数の流入側大開口に送り込むことができる。したがって、塞ぎ部と前記溶融器の流入側面部との間の多数のペレットが順次送り込むことができる。
塞ぎ部と前記溶融器の流入側面部との間に押圧されて、前記溶融孔の流入側大開口から入り込んだペレットは、溶融孔の内周壁面に囲まれる状態となり、溶融孔が錐体状の通路であるから内周壁面は次第に狭くなり、ペレットの周囲との間隔もペレットの流出側小開口側への移動に伴い次第に小さくなる。
溶融器自体は、加熱手段によりペレットの溶融温度に加熱されており、ペレットが溶融してゆく。このとき、ペレットの全周囲は溶融孔の内周壁面により囲まれた状態であり、ペレットは外周から中心部に略均等にバランス良く溶融してゆくことができる。しかも、ペレットが、溶融孔を流入側大開口から流出側小開口に向かって移動する過程で、器本体部は、熱容量が大きいので、加熱手段にて一旦、高温に加熱されると、溶融器は、溶融したペレットの温度に影響されることなく、ペレットを加熱しつつ、十分な溶融温度に維持してゆくことができる。
そして、ペレットが外周から中心に向かって略均等に溶融しつつ、次々に流入側大開口から入り込む多数のペレットに押圧されて、溶融孔の流出側小開口に移動することができ、その間にもペレットは溶融が進行し、溶融孔の軸方向(長手方向)の略中間を通過した当たりでは溶融された部分が殆どであり、溶融器の溶融熱と共に周囲のペレットも溶融が加速度的に進行する。流出側小開口付近では、ペレットは最高温度で完全に溶融しており、溶融樹脂として、前記シリンダ内に溜めることができる。
このように、本発明において、溶融器は、器本体部に多数の錐体状の溶融孔を有するものであり、加熱手段により溶融温度に加熱された多数の錐状の溶融孔に、シリンダのペレット貯留領域内において押出されたペレット群が大開口側である流入側大開口より入り込むことで、ペレットがバランス良く溶融し、且つ溶融器の熱容量が大きいので高温状態を維持することができ、溶融が促進されて溶融速度も速くなり、出口部材側に溶融樹脂が溜められる。
特に溶融器は、加熱手段によって、流出側小開口部分で樹脂の温度が最高に達することである。射出直前に必要な最適温度で且つ最高温度にすることができ、高温状態を最短時間にすることで樹脂を劣化させないので、高品質の成形が可能となる。つまり、溶融器は、樹脂が溶融する一番最後の過程で、射出直前に樹脂を最適温度に上げることができる構造である。
さらに、溶融器は、器本体部に、多数の錐状の通路が形成された溶融孔を有しており、これら多数の溶融孔は、流入側面部から流出側面部に向って集束することなく、略平行状態に配置されることができる。これによって、多数の流出側小開口は、密集することなく、それぞれ均等に配置されることができる。したがって、溶融器自体の熱容量は、十分に大きいものにできると共に、流出側面部寄りにおける溶融孔間の肉厚部(中実部)の体積を十分に大きく確保することができ、溶融孔間の熱容量も大きくすることができる。
そのため、ペレットが、溶融孔を流入側大開口から流出側小開口に向かって移動する過程で、溶融器が加熱手段にて一旦、高温に加熱されると、大きな熱容量によって高温が維持され、溶融したペレットは温度が低下することなく、十分な溶融温度に維持して、良質なペレット群による溶融樹脂ができる。
請求項2の発明では、前記シリンダの長手方向から見た断面形状の内周は円形として形成されてなると共に、前記溶融器の長手方向から見た断面形状の外周も円形で、しかも同一径として形成したことにより、溶融器は、正確な円筒形状となり、該溶融器の製造を簡単にできるようにすると共に、シリンダへの組付けも容易にできる。請求項3の発明は、前記シリンダ内における射出工程が終了したときの前記溶融器の後部と前記塞ぎ部との間のペレット貯留領域の後部位置に前記ペレット供給口が設けられてなることにより、供給するペレットは常時、ペレット貯留領域内において溶融することができる構成にでき、能率的にできる。
請求項4の発明では、溶融器の溶融孔は円錐形状としたことにより、どのような形状のペレットであっても、ペレットの外周が溶融孔の内周壁面に囲まれ易く、ペレットが略均等にバランス良く溶融することができる。請求項5の発明では、隣接する前記溶融孔の流入側大開口は略多角形状の開口に形成されると共に、隣接する流入側大開口同士は境目となる部位が刃状として形成されるように近接してなることにより、前述した流入側大開口同士の境目の刃状箇所で破砕され、細かく分離されるので、ペレットは流入側大開口により一層入り易くなり、ペレットの溶融を促進させることができる。
請求項6の発明では、前記溶融器と該溶融器に連結固定された前記駆動手段の往復動杆との熱伝導が僅かとなるように構成されているため、溶融工程において、ペレット貯留領域内におけるペレットは加熱等されずに、通常の状態で備蓄状態にできる。請求項7の発明では、前記シリンダ及び前記溶融機は、それぞれ組をなして複数具備されているため、大量のペレットを必要とする大形の金型に対して好適であり、また、本発明における射出装置から出口部材にダイスを使用して、直接、長尺となるワーク(製品)を形成するとき等においても極めて好適である。
請求項8の発明では、請求項7において、前記シリンダ及び前記溶融機からなる組は、2組として並列配置されていることにより、比較的小型ながら、大型の金型に対応しうるものにできる。請求項9の発明では、前記溶融機と前記スクリューからなる組は、3組以上として並列配置されたことにより、より一層、大型の金型に対応しうるものにできる。
なお、溶融孔の流入側大開口は、少なくとも前記ペレットの一部が流入可能な大きさにすれば、溶融孔の流入側大開口には、略1個ずつのペレットが入り込むことができ、ペレットは入り込んだと同時に溶融孔の内周壁面に囲まれることとなり、溶融が開始され、射出成形の作業速度が向上することもある。
(A)は本発明の復路工程を示す縦断側面図、(B)は本発明の往路工程を示す縦断側面図である。
(A)は本発明の溶融工程の初期位置の縦断側面図、(B)は本発明の溶融工程の中間位置の縦断側面図、(C)は本発明の溶融工程の終了位置の縦断側面図である。
(A)は本発明の溶融工程の初期位置の要部縦断拡大側面図、(B)及び(C)は本発明の溶融工程の中間位置の要部縦断拡大側面図、(D)は本発明の溶融工程の終了位置の要部縦断拡大側面図である。
(A)はペレットが流入側大開口から流出側小開口に向かって溶融しながら移動する状態を示す溶融孔の拡大縦断側面図、 (B)はペレットが流入側大開口から流出側小開口に向かって溶融しながら移動する状態を示す溶融孔の拡大模式的略図である。
(A)は本発明の射出工程の初期位置直後の縦断側面図、(B)は本発明の射出工程の中間位置の縦断側面図、(C)は本発明の射出工程の終了位置の縦断側面図である。
(A)(B)及び(C)は本発明の溶融器において、流出側小開口が小径である場合には、開閉弁無しでも、ペレットの逆流が最小限にて、射出工程ができる状態図である。
(A)は溶融器箇所の拡大縦断側面図、(B)は(A)の一部切除した分解斜視図、(C)は(B)の(ア)部拡大図、(D)は(A)のX1−X1矢視断面図である
(A)は第2タイプの溶融器の一部切除した斜視図、(B)は(A)の(イ)部拡大図、(C)は(B)のX2−X2矢視拡大断面図、(D)は(B)のX3−X3矢視拡大断面図、(E)は(B)のX4−X4矢視拡大断面図、(F)はペレットが破断される状態を示す溶融孔の流入側大開口側の要部拡大図である。
(A)は第2タイプの溶融器箇所の拡大縦断側面図、(B)は(A)の(ウ)部拡大図である。
(A)は本発明の射出装置の出口部材におけるH字形状の長尺製品を製造するダイスの斜視図、(B)は(A)のX5−X5矢視拡大断面図、(C)は(A)のX6−X6矢視拡大断面図、(D)は(A)のX7−X7矢視拡大断面図、(E)は(A)のX8−X8矢視拡大断面図である。
(A)は本発明の射出装置において2組の溶融器と往復動杆を並列配置した状態の略示斜視図、(B)は(A)のX9−X9矢視拡大断面図、(C)は(A)のX10−X10矢視拡大断面図、(D)は(A)のX11−X11矢視拡大断面図。
(A)は本発明の射出装置において3組の溶融器と往復動杆を並列配置した状態の略示斜視図、(B)は(A)のX12−X12矢視拡大断面図、(C)は(A)のX13−X13矢視拡大断面図、(D)は(A)のX14−X14矢視拡大断面図である。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明は、図1(A)及び(B)に示すように、主にシリンダ1と、ペレットp,p,…を溶融する溶融器2と、該溶融器2を往復動させる駆動手段3と、加熱手段4とから構成されている。前記シリンダ1の端には出口部材5が、この内部には、往復動する前記溶融器2と塞ぎ部6がそれぞれ設けられている。該塞ぎ部6は、実施形態では、板状に形成されているが、前記シリンダ1の内面を塞ぐことができれば、球面状をなしても、実施形態に制限されない。前記駆動手段3には往復動杆34が設けられている。
また、前記シリンダ1の軸方向(又は長手方向ともいい、図1(A) 及び(B)において、上下方向)の一端側(図1において下端)に前記出口部材5が装着され、軸方向(長手方向の上端)他端側[図1(A)において上端]には前記塞ぎ部6が内臓されている。さらに、軸方向(長手方向の上端)他端側[図1(A)及び(B)において上端]には前記駆動手段3が装着され、該駆動手段3によって前記溶融器2が往復動するように構成されている(図1及び図2参照)。
前記シリンダ1の材質は、加熱が迅速に行われることが必要であり、鉄又は鉄の含有量の多いステンレスなどが好適である。該シリンダ1は、細長く形成されたシリンダ本体部11と、前記塞ぎ部6寄りに形成されたペレット供給口11aから接続された管状の供給管12とで構成されている。該供給管12には、ペレットp,p,…を溜めておくホッパ8に連通するように構成されている。前記供給管12は、前記シリンダ1に一体化された部分と適宜弧状に形成されたパイプとで結合されている。前記シリンダ本体部11は円筒状の部材であり、その内方側は内周側面部11bによって包囲された略円柱状の空隙を有する。
前記シリンダ本体部11の肉厚寸法は、約2ミリ程度のものが好ましい。前記ホッパ8には、多数のペレットp,p,…が投入可能であり、投入されたペレットp,p,…は、供給管12を通して前記ペレット供給口11aからシリンダ本体部11内に送り込まれる〔図2(A)参照〕。また、特に図示しないが、供給管12にスクリュー搬送又は空気圧装置を具備して、ペレットp,p,…を強制的に投入することもある。前記シリンダ1の断面は、円形をなしているが、僅かに円が変形して楕円状となる場合もある。この場合には、これと同一形状の溶融器2が回転等することなく、正確な往復動が可能となる。
前記シリンダ本体部11の軸方向(長手方向)の一端側(下端)には、ノズル部51又はダイス52等の出口部材5が装着されている。該出口部材5は、前述したようにノズル51部及びダイス52(図10参照)が存在する。前記ノズル部51は、本発明の射出装置と共に使用する金型に合わせて射出部分の口径を変更させるように交換可能に構成されている。前記ノズル部51は、射出口51aと接続部51bとから構成される〔図1(A)参照〕。
前記射出口51aは、シリンダ本体部11の内径よりも狭く形成されたもので、図示されない金型のゲートに挿入する部位である。前記ノズル51の接続部51bと、シリンダ本体部11とは、図示しないが、螺子構造(外螺子,内螺子)による構成で着脱自在となっている。前記ノズル51の材質は、熱伝導の良いものが好適で、具体的には、ベリリウム銅又は銅が望ましい。
前記ダイス52は、樹脂製長尺物(材)を製造するものである。該ダイス52は、前記ノズル51を外してシリンダ1の溶融器2付近に近接するようにシリンダ1に直接、装着するものであり、図10に示すように、適宜の形状の成形孔52aが形成されたものである。該成形孔52aの具体的な形状としては、「H」字形状等であるが、その他の形状として、「L」字形状,四角,三角,円又はその他の多角形状等である。
前記成形孔52aは、ダイス52のシリンダ1への装着側では、円形状の開口として形成され、溶融樹脂qが流入し易い状態となっている。そして、成形孔52aは、ダイス52の吐出開口側に向かうに従い所望の形状に近くなるように形成されている。具体的に、「H」字形状の樹脂製長尺材が形成される成形孔52aでは、該成形孔52aはシリンダ1への装着側から外方側に向かうに従い、円形から次第に「H」字形状となるように形成される〔図10(B)乃至(E)参照〕このように、ダイス52は、長尺な樹脂製の形材を製造する役目をなすものである。つまり、断面形状が同一な長尺物を製造することができる。
前記溶融器2は、略円筒形状形成された器本体部21に多数の溶融孔22,22,…が形成されたものである(図1,図5及び図7等参照)。前記器本体部21の材質は、熱容量が大きく、且つ熱伝導の良いものが好適である。具体的には、銅又はベリリウム銅が使用される。器本体部21は、前記シリンダ1のシリンダ本体部11内部で、往復動可能に構成され、常時には、前記出口部材5寄りに位置するように配置されている〔図1(A)参照〕。
前記溶融器2の器本体部21は、前述したように円筒形状に形成されたものであり、該器本体部21において前記塞ぎ部6と対面する側で且つ多数のペレットp,p,…が流入してくる側の面を流入側面部21aと称する。該流入側面部21aと反対側の面で前記出口部材5と対面し、溶融樹脂qが流出する側の面を流出側面部21bと称する。
また、器本体部21の外周側面を円周側面21cと称する。前記器本体部21は、前述したように円筒形状であり、流入側面部21aの直径D2aと、流出側面部21bの直径
D2bとは、円周側面21cは、軸方向に沿っていずれの位置も同一直径となる正確な円
筒形状である〔図7(A)参照〕。また、図1〜図6における溶融器2についても、上記の正確な円筒形状としたものである。
次に、溶融孔22は、器本体部21の軸方向(長手方向)に沿って形成されたものである(図1〜図6参照)。さらに詳しくは、溶融孔22は、トンネル状或いは管路状とした錐状の貫通孔である〔図7(B),(C)参照〕。溶融孔22において、前述した錐状の貫通孔とは、孔形成方向に直交する複数の任意の位置の断面形状が広い形状から狭い形状となるように形成されたものであり、具体的には円錐或いは角錐等の空隙を有する孔である〔図7(B),(C)及び図8(A),(B)参照〕。
本発明では、特に、溶融孔22の錐状として円錐形状が好ましく、直径が大から小に向かって次第に小さくなるように形成されている〔図7(B),(C)参照〕。前述したように、溶融孔22は、錐体状の空隙を有する孔であるために、該溶融孔22の両端の開口の大きさは異なる。そこで、前記溶融孔22の大開口側は、ペレットp,p,…が流入する流入側大開口22aと称する〔図4(A),(B),図7(B)及び(C)参照〕。
また、前記溶融孔22の小開口側を流出側小開口22bと称する〔図4(A),(B),図7(B)及び(C)参照〕。つまり、溶融孔22は、流入側大開口22aから流出側小開口22bに連通する通路であり、流入側大開口22aから流出側小開口22bに向かって次第に断面が狭くなる。そして、流入側大開口22aは、器本体部21の流入側面部21a側に位置し、前記塞ぎ部6に対面(又は対向)する〔図1(A)及び(B)参照〕。また、流出側小開口22bは流出側面部21bに位置し、出口部材5に対面(又は対向)する〔図1(A)及び(B)参照〕。
以上述べたように、溶融器2の流入側面部21aには、多数の溶融孔22,22,…の流入側大開口22a,22a,…が配置されたものであり、前記流入側面部21aは、前記塞ぎ部6に対面して流入側大開口22aにペレットp,p,…が流れ込むので、溶融器2の流入側と称する。
また、前記溶融器2の流出側面部21bには、多数の溶融孔22,22,…の流出側小開口22b,22b,…が配置されたものであり、前記流出側面部21bは、出口部材5側に対面して流出側小開口22bからペレットp,p,…が溶融した溶融樹脂qを流出させるので、溶融器2の流出側と称する。そして溶融器2の流入側及び流出側については、図面に示されている(図4参照)。
溶融孔22を円錐形状の孔とした場合では、軸方向(長手方向)に沿って、それぞれの直交する箇所の断面形状は円形状である〔図7(B)及び(C)参照〕。そして、溶融孔22の流入側大開口22aは、1個のペレットp全体が入り込む大きさであり、少なくとも該ペレットpの一部(一部分)が入り込むような大きさとしている。流入側大開口22aの具体的な大きさは、ペレットp,p,…が容易に入り易いような直径で、約3〜4ミ
リ程度である。
流出側小開口22bは、ペレットp,p,…が溶融して液化した溶融樹脂qとなるような直径は約1〜1.5ミリ程度である。溶融孔22は、その軸方向(長手方向)に沿った断面形状が略テーパー形状である。また、前記溶融器2の流入側面部21a側の多数の溶融孔22,22,…の流入側大開口22a,22a,…相互を、円形面取りとして拡大すると、隣接する溶融孔22,22,…相互の先端が、相合の境目となる部位の先端が、刃状に形成される。この刃状は側面から見ると、波形状に形成される。
溶融孔22の形状は、前述したように、軸方向(長手方向)に沿って錐状であり、角錐状とした場合には、四角錐形状としたり、或いは三角錐形状とすることもある。また、四角錐形状と円錐形状を組合わせたタイプも存在する(図8参照)。このタイプの溶融孔22では、円錐形状の溶融孔22の流入側大開口22aを三角形以上の多角形状とし、流出側小開口22bを円形状としたものである。
さらに具体的には、錐状の溶融孔22の流入側大開口22aが略正方形に形成され、隣接する流入側大開口22a,22a同士の間隔が最小限となるように形成された実施形態も存在する〔図8(A)乃至(E)参照〕。この実施形態では、隣接する流入側大開口22a,22aの境目となる部位が刃状として形成されることになり〔図8(B)参照〕、集合する流入側大開口22a,22a,…が格子形状を構成する〔図8(A)乃至(C)参照〕。また、略多角形状とした流入大開口22aは、前述したように正方形等の四角形
の他に、三角形,六角形等の形状も存在し、隣接する流入大開口22a,22a同士の縁
が平行且つ直線状となるものが好ましい。
このように、流入側大開口22aを略正方形状とし、多数の流入側大開口22a,22a,…によって略格子状を構成されている〔図8(A)乃至(C)参照〕。さらに、隣接する流入側大開口22a,22aの境目が、図8(F)に示すように、刃状となるように構成されることで、各流入側大開口22aの周縁は鋭利な形状となり、流入側大開口22aに入り込もうとするペレットp,p,…が刃状部位に引っ掛かると、前記塞ぎ部6に押圧れるペレットp,p,…群による押圧力によって、細かく破断され、流入側大開口22aにより一層入り易い状態となる。
前記駆動手段3は、減速機付きのモータ駆動部31,ピニオンギア32及びラック軸33とから構成されている。或いは、図示しないが、減速機付きのモータ駆動部31と、ボールねじとボールねじナット駆動との駆動によりロッドが往復動する駆動手段3も存在する。前記ラック軸33の先端又は前記ロッド端には、往復動杆34が連結されている。
該往復動杆34が、前記塞ぎ部6の略中央に貫通され、その先端が前記溶融器2に接続されている。前記ラック軸33は、前記シリンダ1の後部に、ねじ環14によって接続された筒状ケース13にて覆われており、前記モータ駆動部31のモータケース38に固定されている。前記往復動杆34は、鉄又はステンレス製等で構成されている。
前記モータ駆動部31は、ブラシレスモータ又はステッピングモータ等で構成され、高精度の駆動制御が可能であり、且つペレットの材質等を考慮して、溶融工程の時間と、溶融樹脂qの射出工程の時間とを分離させて制御できる。その結果、樹脂を溶融できる十分な時間を確保すると共に、その溶融樹脂qの射出工程を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる。
例えば、溶融工程時間を約30秒とし、溶融樹脂の射出工程時間を約1秒程度とすることによって、射出工程時間を極めて迅速で且つ短時間に効率良くできる最大の利点がある。特に、前記ブラシレスモータは、溶融工程時間を長くし、射出工程間を短くするとき等のように異なる時間帯を、任意に且つ正確に制御するのに好適である。
加熱手段4は、前記シリンダ本体部11の外周面から前記溶融器2を加熱する構成部材であり、該溶融器2への熱伝導性が良好となるように筒状に構成されている。具体的には、IHヒータ等が巻き線状に構成されたもので十分な熱量が得られる。
前記加熱手段4は、シリンダ1のシリンダ本体部11内において往復動する溶融器2を加熱する役目をなす。加熱手段4は、具体的には、電磁誘導装置つまりIH(インダクションヒーティング)コイルが好適であり、樹脂又はセラミック製の断熱材コイルボビンにIHコイルを巻いたものである。
IHコイルとシリンダ本体部11の外周側面との間隔が最適になるようにボビンの形状が設定されている。入力電力は、制御装置により0乃至1Kwまで可変可能としたものが好適である。前記シリンダ1には、熱電対が取り付けられており、シリンダ1の温度を設定値にすることができるようになっている。また加熱手段4の別のタイプとして、バンドヒーターが使用されることもある。さらに、加熱手段4は、前述したものに限定されるものではなく、その他の本発明に使用可能な加熱装置であれば何れのものが使用されても構わない。
前記加熱手段4は、前記シリンダ本体部11に固定状態にセットされているが、前記溶融器2の熱容量的には、駆動手段3にて往復動しても、十分に熱源を保つようにできる。これは、常時は、図1(A)位置、即ち、出口部材5箇所に近づいた定位置としてセットされていることによる。ペレット貯留領域W内において、前記溶融器2が復路に動いて(溶融工程)も、その状態から直ぐに、往路に動く(射出工程)ことになり、溶融器2は、加熱状態が簡単には冷えず、十分な加熱量を得ることができ、所定の温度を保持することができる。
また、前記溶融器2については、断熱処理が必要に応じて設けられている。この点について具体的に説明する。前記溶融器2の流入側面部21a及び流出側面部21bの中心を通る中心貫通孔21d内に、前記駆動手段3の往復動杆34が遊挿されている。つまり、前記中心貫通孔21dの内径が、前記往復動杆34の直径よりも僅かに大きく形成され、接触しないように構成されている。さらに、前記溶融器2の流入側面部21a及び流出側面部21bの中心位置に、それぞれ凹部21a1及び21b1が形成されている。
該凹部21a1及び21b1には、セラミック製又はポリイミド製等の断熱材で円板状の支持片25,25が配置されつつ、前記往復動杆34に固定されている。具体的には、一方の支持片25が前記往復動杆34に挿入された後に、該往復動杆34の先端側が前記溶融器2の中心貫通孔21dに貫通される。そして、前記一方の支持片25が前記溶融器2の流入側面部21aの凹部21a1配置される。
この状態にて、他方の支持片25及び円板71が挿入されたカラー部材72が前記往復動杆34に形成された先端側細径部34aに挿入される。前記カラー部材72は、鉄又はステンレス製等で構成されている。さらに、前記往復動杆34の先端側細径部34aのねじ部34bにナット34cが螺合されて該往復動杆34に前記溶融器2が固定される。つまり、前記溶融器2は、直接には前記往復動杆34に接触しないで、前記支持片25,25を介して前記往復動杆34に固定されるものである。このため、該往復動杆34には、前記溶融器2の熱伝導は、殆ど無い状態にできる。つまり、熱遮断状態にできる。
また、溶融器2箇所の別の実施形態としては、図9(A)及び(B)に示すように、前記往復動杆34の先端側細径部34aのみに、セラミック製又はポリイミド製等の断熱材で筒状カラー35が挿入固定されると共に、該筒状カラー35が前記溶融器2の中心貫通孔21dに嵌入されている。さらには、他の第1実施形態とほぼ同じに構成されている。
これらの構造によって、溶融器2に発生する熱源は、前記シリンダ1の内部の金属製(主に、ステンレス製等)の往復動杆34に熱伝導しないように構成されている。以上のように、前記溶融器2の断熱の目的としては、溶融の際に溶融器2の熱量がペレットp,p,…の溶融にのみに使われるようにすることである。そのために、前記溶融器2と前記往復動杆34との間に断熱材(支持片25又は筒状カラー35)が介在されている。
前記溶融器2の内部構造としては、開閉弁7が必要に応じて設けられている(図1,図2及び図5等参照)。つまり、前記溶融器2の流入側大開口22a又は流出側小開口22bを復路工程では開き、前記溶融器2の流入側大開口22a又は流出側小開口22bを往路工程では閉じるようにした開閉弁7が設けられている。
具体的には、該開閉弁7は、往路工程の時に、前記溶融器2の先端側を閉鎖したり、或いは、復路工程の時に、解放するように構成されている。具体的には、前記開閉弁7は、円板71と、鍔73付きカラー部材72とから構成されている。該鍔73付きカラー部材72が、前記溶融器2の流出側面部21bの前面に位置し、前記溶融器2の中心を貫通された前記往復動杆34の先端部に、前記カラー部材72を介して、前記鍔73と前記流出側面部21bとの間で、僅かに前後動可能に設けられている。
前記円板71の直径D7は、前記流出側面部21bの直径D2bよりも小径に形成されている〔図7(A)参照〕。
つまり、
である。これは、復路工程の時に、溶融樹脂qが流れやすくするためである。
前述の構成を簡単に説明すると、前記開閉弁7は、前記出口部材5と前記溶融器2との間に設けられると共に、前記溶融器2の流出側小開口22bに対して接離する円板71としてなり、該円板71は前記溶融器2の直径よりも小径に形成されて構成されている。
前記開閉弁7における円板71には、図7(B)及び(D)に示すように、多数の貫孔71aが形成され、該貫孔71aは前記溶融器2の流出側小開口22bの位置とは不一致するように形成されてなると共に、前記円板71に突設された案内ピン71bが前記溶融器2に形成された穴部21p間に遊挿可能に構成されている。
かかる構成によって前記円板71が鍔と溶融器の面との間で僅かではあるが接離可能に構成されている。具体的には、円板72の板厚tとすると、鍔と溶融器の面との間は、t+αとなっており、該αの範囲内において、接離する動きを呈する〔図7(A)参照〕。
特に、前記溶融器2の流出側小開口22bの孔径が流入側大開口22aに対して格段と小さい場合[図6(A)〜(C)参照]、例えば、約1ミリ内外の場合には、駆動手段3による往路工程によって、溶融樹脂qを出口部材5を介して押圧しても、前記溶融器2の流出側面部21bの表面積が全流出側小開口22bの面積よりも格段と大きく、該全流出側小開口22bの孔部から逆流する溶融樹脂qの割合は極端に少なくなって、押圧されて出口部材5から溶融樹脂qを良好に射出できる。実験的にも十分に確認できる。このように、前記溶融器2に開閉弁7を設けなくとも、溶融樹脂qの射出工程を行うことができる[図
6(A)〜(C)参照]。
以下、ペレットの溶融工程及び理論について説明する。まず、溶融工程前段階では、図2(A)及び図3(A)に示すように、シリンダ1内のペレット貯留領域Wに、ペレット供給口11aからペレットp,p,…が溶融器2の流入側面部21a手前側に貯留されている。前記シリンダ1内における射出工程が終了したときの前記溶融器2の後部と前記塞ぎ部6との間に前記ペレット貯留領域Wが設けられ、該ペレット貯留領域Wの後部位置に前記ペレット供給口11aが設けられている。
そして、溶融工程がONされると、駆動手段3による復路工程によって、ペレット貯留領域W内に入っている多数のペレットp,p,…は、図2(B)及び図3(B)に示すように、前記溶融器2の流入側面部21aと前記塞ぎ部6との間で圧縮されて、前記ホッパ8側に戻ろうとする作用もなすが、実際には、多数のペレットp,p相互間には押圧力f,f,…が発生して押出状態となり、多数の流入側大開口22a,22a,…から溶融孔22,22,…内に入り込むようにして流入する〔図2(B),図3(B),図4(A),(B)参照〕。流入側大開口22aは、前述したように、各ペレットpの少なくとも一部(一部分)が入り込む大きさである。
通常は、流入側大開口22aは、平均的なサイズのペレットp全体が流入側大開口22aから入り込む程度の大きさとしている〔図4(A),(B)参照〕。溶融孔22,22,…内に入り込んだそれぞれのペレットp,p,…は、あとから流入するペレットp,p,…によって、流出側小開口22b側に押圧され、溶融器2は、加熱手段4を介してペレットpを溶融する温度に維持されている。
したがって、流入側大開口22aから入り込んだペレットpは、流入側大開口22aから流出側小開口22bに向かって移動するに従いペレットp中心部に向かって溶融する〔図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpは、流入側大開口22aに入り始めた初期の状態
で、ペレットpの周囲が溶融孔22の内周壁面に略均等に囲まれた状態となるように設定されている。
そして、ペレットpは、溶融孔22を流出側小開口22b側に向かって移動するに従い、溶融されつつ、サイズが次第に縮小されてゆく〔図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpが流出側小開口22b側に向かって溶融しながら移動しても、溶融孔22も次第に狭くなっているので、溶融して縮小されたペレットpの周囲は均等に囲まれた状態を維持している。それゆえに、ペレットpの溶融は、迅速に行われてゆく。
つまり、個々のペレットpの周囲は、溶融孔22の内壁面に略均等に囲まれ、常に内壁面に近接又は当接された状態を維持する〔図4(A)及び(B)参照〕。そして、ペレットpの溶融が進むに従い、さらに溶融孔22の狭い部分に進行し、ペレットpの溶融を促進させる。しかも、溶融孔22の内部でペレットpは溶融して液化しているので、後から送り込まれたペレットpは、既に液化したペレットpaの熱によって溶融がさらに促進される〔図4(A)及び(B)参照〕。
このようにして、ペレットpは、溶融孔22の流入側大開口22aから流出側小開口22bに向かうにしたがい、溶融が進み、流出側小開口22b付近又これより手前位置では溶融を完了して、完全に液状化する〔図3(C),図4(A)及び(B)参照〕。ペレットpは、この完全に液状化された溶融樹脂qとなって、流出側小開口22bから図2(C)に示すように、前記シリンダ1内に貯留される。
以上述べたように、駆動手段3による復路工程によって、ペレット貯留領域W内に入っている多数のペレットp,p,…相互間に押圧力f,f,…が発生して圧縮されて、溶融孔22の流入側大開口22aより入り込んだペレットpは、流出側小開口22bに向かう過程において、常に溶融孔22の内周壁面に包囲された状態である。それゆえに、加熱手段4を介して、ペレットpの溶融が行われ、図2(C)に示すように、ストローク量Lで押圧が終了すると共に、前記溶融器2の下側のシリンダ1内に溶融樹脂qが貯留される。
多数のペレットp,p,…は、殆ど必要な量のみを溶融できるので材料がシリンダ本体部11内で長時間熱的、機械的ストレスに晒されることがない。よって、品質の良い樹脂成形品ができる。また、本発明おける射出装置は、溶融効率が高く、必要以上の材料を投入する必要がないので装置全体が小型になり、省電力、省資源である。また、射出直前の溶融最終過程で射出適正温度かつ最高温度となることで樹脂の高温状態を最低時間に短縮できるということも品質の良い樹脂成形ができるものである。
本発明の溶融器2及び駆動手段3の往復動杆34は、複数組が具備されることもある。すなわち、本発明において、通常では、1個の溶融器2と、1個の駆動手段3の往復動杆34とが対をなして、1組とし、シリンダ1には1組の溶融器2と往復動杆34とが装着されている〔図1(A)参照〕。これに対して、一つのシリンダ1に溶融器2と往復動杆34の組が複数組の装着される実施形態が存在する(図11,図12参照)。これら複数組はシリンダ1内に並列配置される〔図11(A),図12(A)参照〕。
まず、シリンダ1内に、溶融器2と往復動杆34の組を2組とした実施形態について説明する(図11参照)。この実施形態では、シリンダ1に2つの空隙部11c,11cが並列状態に形成される。そして、両空隙部11c,11cに溶融器2と往復動杆34とからなる組が並列してそれぞれ装着される〔図11(A)乃至(C)参照〕。
前記ホッパ8は両空隙部11c,11cに連結している〔図11(B)参照〕。そして、シリンダ1の出口部材5装着側付近では、両溶融器2,2の流出側面部21b,21bがシリンダ1内で露出し、両溶融器2,2からの溶融したペレットp,p,…が混じり合い、出口部材5から溶融樹脂qを外部に送り出すことができるようになっている〔図11(D)参照〕。
次に、シリンダ1内に、溶融器2と往復動杆34の組を3組とした実施形態について説明する(図12参照)。この実施形態では、シリンダ1に3つの空隙部11c,11c,…が三角形状(又はおむすび形状)となるように並列状態に形成される。そして、全空隙部11c,11c,…に溶融器2と往復動杆34とからなる組が3個並列してそれぞれ装着される〔図12(A)乃至(C)参照〕。
前記ホッパ8は全空隙部11c,11c,…に連結している〔図12(B)参照〕。そして、シリンダ1の出口部材5装着側付近では、全溶融器2,2,…の流出側面部21b,21b,…がシリンダ1内で露出し、全溶融器2,2,…からの溶融したペレットp,p,…が混じり合い、出口部材5から外部に溶融樹脂qを送り出すことができるようになっている〔図12(D)参照〕。
本発明における射出装置は、シリンダ1の軸方向(長手方向)が垂直状に設置されるが、水平状或いは傾斜状に設置されることもある。特に大形の金型に対して、射出成形する場合には、水平状に配置することもある。
1…シリンダ、11a…ペレット供給口、2…溶融器、21a…流入側面部、
21b…流出側面部、22…溶融孔、22a…流入側大開口、
22b…流出側小開口、3…駆動手段、4…加熱手段、5…出口部材、
6…塞ぎ部、p…ペレット、q…溶融樹脂。