JP2014079199A - 原料混合供給によるアミド化合物の製造方法およびアミド化合物の製造装置 - Google Patents

原料混合供給によるアミド化合物の製造方法およびアミド化合物の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】工業的に非常に重要なアミド化合物の効率的な製造方法、および該方法に好適に用いられるアミド化合物の製造装置を提供する。
【解決手段】ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する方法において微生物触媒および/または菌体処理物が添加されている水系媒体に、ニトリル化合物と水の混合物を供給する工程を有するアミド化合物の製造方法、およびニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する反応槽と、ニトリル化合物と水の混合物を供給する混合物供給ラインを備えるアミド化合物の製造装置。

【選択図】図1

Description

本発明は、微生物菌体および/またはその菌体処理物を触媒として用い、ニトリル化合物を水和したアミド化合物を得るアミド化合物の製造方法、ならびにアミド化合物の製造装置に関するものである。
アミド化合物の主要な製造方法の一つとして、ニトリル化合物を原料とする水和法は多くの場合に用いられており、アクリルアミド等のアミド化合物の工業的製法としては、例えば、ラネー銅等などの金属銅触媒を触媒として用い、アクリロニトリル等のニトリル化合物を水和する方法、あるいは近年ではニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物等を触媒として用い、ニトリル化合物を水和する方法が知られている。
微生物菌体および/またはその菌体処理物を触媒として用いる方法は、アクリロニトリル等のニトリル化合物の転化率および選択率が高いことから工業的に注目を浴びている。
一方、アクリロニトリル等のニトリル化合物は、水またはアミド化合物水溶液への溶解度が常温では十分に高いとは言えず、ニトリル化合物の水への溶解が不十分である場合、ニトリル化合物と菌体触媒との接触が不十分となり、生産性の低下、触媒の劣化、及び、ニトリル化合物の気相部への蒸発によるロスの増加等の悪影響が起こる。反応液やアミド化合物水溶液へのニトリル化合物の溶解度は反応液を強く攪拌することで向上させることができるが、このような強い攪拌は菌体触媒の損傷及びそれによる活性の低下をもたらすことがあり好ましくない。
例えば特許文献1では、菌体および水からなる混合物に攪拌下、アクリロニトリルを断続的に滴下することにより反応させることが適当と記載されている。また特許文献2には、反応液流体の単位体積あたりの攪拌所要動力を0.08〜0.7kW/mの範囲内で攪拌を行うことでニトリル化合物と生体触媒の接触や分散性を良好にし、製造コストや環境負荷の抑制されたアミド化合物を製造する方法が開示されている。また特許文献3には、微生物触媒が添加されている水系媒体に、水系媒体を攪拌しながらアクリロニトリルを供給して、水系媒体においてアクリルアミドを製造する方法において、アクリロニトリルを水系媒体に供給するアクリロニトリル供給管の供給口を水系媒体中に配置してアクリロニトリルを供給する方法が提案されている。 しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法においては、ニトリル化合物の気相への蒸発を防止することは不十分であり、特許文献3の方法においても、ニトリル化合物の気相部への蒸発と菌体触媒の損傷を共に防止することは未だ不十分であった。
特公昭56−38118号公報 国際公開第09/113654号パンフレット WO2011/078184
微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いたニトリル化合物の水和反応においては、ニトリル化合物と菌体触媒の接触により反応が進行することより、反応液中でのニトリル化合物および菌体触媒の良好な分散が求められている。
従来技術においてニトリル化合物は反応槽で菌体触媒を含む反応液と混合されることにより、反応槽で水へ溶解することとなり、ニトリル化合物の分散において不利である。
本発明の課題は、アミド化合物を効率的に製造する方法、および当該方法において好適に用いられるアミド化合物の製造装置を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ニトリル化合物を反応槽に供給する前に、該ニトリル化合物を別途水と混合し、その後、該混合物を反応槽に供給することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する方法において、微生物触媒および/または菌体処理物が添加されている水系媒体に、ニトリル化合物と水の混合物を供給することを特徴とするアミド化合物の製造方法
〔2〕ニトリル化合物と水の混合物を供給する供給管の供給口を水系媒体中に配置することを特徴とする前記〔1〕に記載のアミド化合物の製造方法
〔3〕ニトリル化合物がアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルであり、アミド化合物がアクリルアミドまたはメタクリルアミドである前記〔1〕または〔2〕に記載の製造方法
〔4〕ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する反応槽と、ニトリル化合物と水の混合物を供給する混合物供給ラインを備えるアミド化合物の製造装置
本願発明においては、反応機へ供給される以前に水と混合されることにより、反応機へ供給される時点でニトリル化合物は水に溶解している。そのため、反応槽内において、良好な分散状態になるための時間が短縮でき効率的にアミド化合物を製造することができる。
図1は、本発明の製造装置の一実施形態を示す模式図である。 図2は、本発明の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
以下、本発明のアミド化合物の製造方法および製造装置について説明する。
〔アミド化合物の製造方法〕本発明のアミド化合物の製造方法は、ニトリルヒドラターゼを含有する微生物触媒および/または菌体処理物が添加されている水系媒体を含んでなる反応槽に、ニトリル化合物と水との混合物を供給する工程を有する。
<ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物>
本発明では、ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物(以下、これらを単に「菌体触媒」ともいう。)をニトリル化合物のニトリル基のアミド化触媒として用いる。
ニトリルヒドラターゼとは、ニトリル化合物を加水分解して対応するアミド化合物を生成する能力(以下、「ニトリルヒドラターゼ活性」ともいう。)を有する酵素(たんぱく質)をいう。
ニトリルヒドラターゼを含有する微生物としては、ニトリルヒドラターゼを産出し、かつニトリル化合物およびアミド化合物の水溶液中でニトリルヒドラターゼ活性を保持している微生物であれば特に限定されない。ニトリルヒドラターゼを産生する微生物としては、ノカルディア(Nocardia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロドクロウス(rhodochrous)種に代表されるロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属またはサーモフィラ(thermophila)種に代表されるシュードノカルディア(Pseudonocardia)属、バクテリジューム(Bacteridium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物などが挙げられる。これらは一種で用いても二種以上を併用しても良い。
また、これら微生物よりクローニングしたニトリルヒドラターゼ遺伝子を任意の宿主で高発現させた形質転換体、および組換えDNA技術を用いて該ニトリルヒドラターゼの構成アミノ酸の一個または二個以上を他のアミノ酸で置換、欠失、削除もしくは挿入することにより、アミド化合物耐性やニトリル化合物耐性、温度耐性を更に向上させた変異型のニトリルヒドラターゼを発現させた形質転換体なども挙げられる。尚、ここでいう任意の宿主には、後述の実施例のように大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、とくに大腸菌に限定されるのものではなく枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。その様なものの例として、MT−10822(本菌株は、1996年2月7日に茨城県つくば市東1丁目1番3号の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター)に受託番号FERM BP−5785として、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて寄託されている。)が挙げられる。
これら微生物の中でも、高活性、高安定性のニトリルヒドラターゼを有するという点で、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属に属する微生物、および該微生物よりクローニングしたニトリルヒドラターゼ遺伝子を任意の宿主で高発現させた形質転換体、および変異型のニトリルヒドラターゼを発現させた形質転換体形質転換体が好ましい。なお、上記形質転換体は、ニトリルヒドラターゼの安定性をより高め、菌体当たりの活性がより高い点で好ましい。
また、微生物内にニトリルヒドラターゼを高発現できる、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1、該微生物よりクローニングしたニトリルヒドラターゼ遺伝子を任意の宿主で高発現させた形質転換体も同様に好ましい。上記ニトリルヒドラターゼを産生する微生物の菌体は、分子生物学・生物工学・遺伝子工学の分野において公知の一般的な方法により調製できる。
本発明に係る組換えベクターは、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子を含有するものであり、ベクターにニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子を連結することにより得ることができる。ベクターとしては、特に限定されるものではなく、例えばpET-21a(+)、pKK223-3、pUC19、pBluescriptKS(+)およびpBR322等に代表される市販の発現プラスミドに、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子を組み込むことにより、該ニトリルヒドラターゼの発現プラスミドを構築することができる。また、形質転換に使用する宿主生物としては、組換えベクターが安定、かつ自己増殖可能で、さらに外来のDNAの形質が発現できるものであればよく、例えば大腸菌が好例として挙げられるが、大腸菌だけに限らず枯草菌、酵母等に導入することにより、ニトリルヒドラターゼの生産能を有する形質転換体を得ることができる。
上述のようなニトリルヒドラターゼを生産する微生物は、公知の方法により、適宜培養し増殖させ、ニトリルヒドラターゼを生産させても良い。この場合使用される培地としては炭素源、窒素源、無機塩類およびその他の栄養素を適量含有する培地であれば合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。例えば、LB培地、M9培地等の通常の液体培地に、微生物を植菌した後、適当な培養温度(一般的には20℃〜50℃であるが、好熱菌の場合は50℃以上でもよい。)で培養させることにより調製できる。培養は前記培養成分を含有する液体培地中で振とう培養、通気攪拌培養、連続培養、流加培養などの通常の培養方法を用いて行うことができる。形質転換体の培養温度としては、15〜37 ℃が好ましい。培養条件は、培養の種類、培養方法により適宜選択すればよく、菌株が生育しニトリルヒドラターゼを生産することが出来れば特に制限はない。
本発明では上述のニトリルヒドラターゼを生産する微生物の菌体を、ニトリル化合物と反応させるために、遠心等により集菌したり、破砕して菌体破砕物を作製する等、さまざまな処理を行っても良く、これらのなんらかの処理を施した菌体を菌体処理物と総称する。
破砕される微生物の菌体の形態としては、ニトリルヒドラターゼを産生する微生物の菌体を含む限り特に制限はないが、例えば、該菌体を含む培養液そのもの、その培養液を遠心分離して分離・回収された集菌体、さらにこの集菌体を生理食塩水等で洗浄したものなどが挙げられる。
上記菌体を破砕する装置としては、菌体を破砕可能であれば特に制限はないが、例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ビーズショッカー、ホモゲナイザー、ダイノーミル、クールミルなどの摩砕装置などが挙げられる。これらの中でも、安価にスケールアップができるという点で、ホモゲナイザーが好ましい。なお、ホモゲナイザーとは、ピストンで送液を行うプランジャー式高圧ポンプの出口に設けられたホモバルブの隙間をネジまたは油圧で調節して、導入された流体に剪断・激突・キャビテーション等の相乗効果を瞬間的に発生させる装置である。このホモゲナイザーは、株式会社三和機械、株式会社イズミフードマシナリなどが市販している。
菌体を破砕する時の温度は特に制限はないが、好ましくは0℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上25℃以下である。
また、菌体を破砕する時のpHは特に制限はないが、好ましくはpH4以上10以下、より好ましくはpH6以上8以下である。
ホモゲナイザーを用いて菌体を破砕する場合の圧力は菌体が破砕される圧力であれば特には制限が無いが、好ましくは10MPa以上300MPa以下、より好ましくは30MPa以上100MPa以下である。
<ニトリル化合物> ニトリル化合物としては、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ニトリル化合物、炭素数6〜20の芳香族ニトリル化合物が挙げられ、一種で用いても二種以上を併用してもよい。
脂肪族ニトリル化合物としては、例えば、炭素数2〜6の飽和または不飽和ニトリルが挙げられ;具体的には、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、カプロニトリル等の脂肪族飽和モノニトリル類;マロノニトリル、サクシノニトリル、アジポニトリル等の脂肪族飽和ジニトリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリル等の脂肪族不飽和ニトリルが挙げられる。
芳香族ニトリル化合物としては、例えば、ベンゾニトリル、o−,m−またはp−クロロベンゾニトリル、o−,m−またはp−フルオロベンゾニトリル、o−,m−またはp−ニトロベンゾニトリル、o−,m−またはp−トルニトリル、ベンジルシアナイドが挙げられる。
ニトリル化合物の中でも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
<水(原料水)>
原料水は特に限定されず、蒸留水、イオン交換水などの精製水を用いることができる。
<反応槽> 反応槽としては、一つの反応器から構成される単段の反応槽を用いてもよく、複数の反応器から構成される多段の反応槽を用いてもよい。反応器としては、槽型反応器を用いてもよく、管型反応器を用いてもよい。槽型反応器としては、撹拌機を備える反応器が好ましい。
特に、一段目の槽型反応器と二段目の管型反応器とから構成される反応槽を用い、槽型反応器から排出される反応液を管型反応器で更に反応させると、転化率を向上できるので好ましい。
槽型反応器および管型反応器は、菌体触媒のニトリルヒドラターゼ活性が維持される温度に保たれる限り、熱交換器を備えていてもいなくてもよいが、後述する反応槽温度を制御するため、前記反応器は熱交換器を備えることが好ましい。熱交換器としては、多管円筒式、渦巻管式、渦巻板式、プレート式、二重管式など反応器外部に設置する形態のもの、あるいはジャケット式、コイル式など反応器に直接設置する形態のものが挙げられる。反応器が管型反応器である場合は、反応器自体を多管円筒式あるいは二重管式の熱交換器で構成することが可能である。
反応方法としては、例えば、(1)菌体触媒および反応原料(ニトリル化合物および原料水の混合物などを含む。)を反応槽に一度に全量仕込んでから反応を行う方法(回分反応)、(2)菌体触媒および反応原料(ニトリル化合物および原料水の混合物などを含む。)の一部を反応槽に仕込んだ後、連続的または間欠的に残りの菌体触媒およびニトリル化合物および原料水の混合物を供給して反応を行う方法(半回分反応)、(3)菌体触媒およびニトリル化合物および原料水の混合物の連続的または間欠的な供給と、反応液(菌体触媒、未反応原料および生成したアミド化合物などを含む。)の連続的または間欠的な取出しを行いながら、反応槽内の反応液を全量取り出すことなく連続的に反応を行う方法(連続反応)が挙げられる。これらの中でも、工業的にアミド化合物を大量かつ効率的に製造しやすい点で、連続反応が好ましい。
反応は、菌体触媒の存在下で行われる。菌体触媒の使用形態として、懸濁床、固定床などの適切な形式を選択することができる。例えば連続反応の場合、菌体触媒の懸濁液を調製し、懸濁液を反応槽に供給すればよい。
なお、反応槽として複数の反応器から構成される多段の反応槽を用いる場合、その構成としては、(a)菌体触媒およびニトリル化合物および原料水の混合物を上段の反応器入口に供給し、上段の反応器出口から排出された反応液(菌体触媒、未反応原料および生成したアミド化合物などを含む。)を、下段の反応器入口に供給する直列式態様、(b)菌体触媒およびニトリル化合物および原料水の混合物を二以上の反応器に(他の反応器を経由せずに)直接供給する並列式態様が挙げられる。
例えば、多段の反応槽を用いて連続反応を行う場合等において、菌体触媒およびニトリル化合物および原料水の混合物の供給先は、一段目の反応器(最も上流に位置する反応器)のみに限定されず、二段目以降の反応器(下流に位置する反応器)であってもよい。
反応槽内の液温である反応槽温度は、菌体触媒の耐熱性にもよるが、通常0〜50℃に設定され、好ましくは10〜40℃に設定される。反応槽温度が前記範囲にあると、菌体触媒のニトリルヒドラターゼ活性を良好に維持できる点で好ましい。
反応槽温度とは、反応槽が一つの反応器のみから構成される場合は、当該反応器内の液温を指し;反応槽が複数の反応器から構成される場合は、各々の反応器内の液温を指す。反応槽温度は、例えば、熱電対法(例:Kタイプ)により測定することができる。反応槽温度は、反応槽内の任意の場所で測定可能であり、具体的には反応槽出口(反応液取出し口)で測定可能である。
反応槽の容積は、特に限定するものではないが、工業的な生産を考慮すると、通常0.1m3以上、好ましくは1〜100m3、より好ましくは5〜50m3である。反応槽が複数の反応器から構成される場合、前記容積は各々の反応器の容積を指す。
反応は、一般的には常圧下で行われるが、ニトリル化合物の溶解度を高めるために加圧下で行うこともできる。反応槽内のpHは特に限定されないが、好ましくはpH5〜pH10の範囲にある。pHが前記範囲にあると、ニトリルヒドラターゼ活性を良好に維持できる点で好ましい。
<反応原料および菌体触媒の供給>
ニトリル化合物および水は混合した後にニトリル化合物および水の混合物の供給管を用いて反応槽へと供給されるが、ニトリル化合物と水とを混合する方法としては、既知の技術を用いることができ、例えば、攪拌槽を用いて攪拌混合する方法、ニトリル化合物と水を配管中で混合する方法などが挙げられる。攪拌混合槽を用いる場合には、混合槽の形状は特に限定されるものではないが、一般的に円筒形の混合槽が用いられ、縦型円筒形、横型円筒形、いずれの場合も用いることができる。混合槽には邪魔板を供えていてもよく、邪魔板を供えていなくてもよい。 攪拌混合槽を用いる場合の、攪拌翼は任意の形状のものを選択でき、例えば、プロペラ翼、フラットパドル翼、ピッチドパドル翼、フラットタービン翼、ピッチドタービン翼、リボン翼、アンカー翼、フルゾーン翼などが挙げられる。攪拌翼は、1枚であってもよく、複数枚備えていてもよい。
ニトリル化合物と水を配管中で混合させるには、ニトリル化合物の供給管と水の供給管を結合することによりニトリル化合物と水を直接混合させることができ、さらには配管中にスタティックミキサーなどのラインミキサーを設置することにより積極的に混合する方法などが挙げられる。
ニトリル化合物は、水との混合後、完全に水に溶解していても良いが、必ずしも水に完全に溶解している必要はなく、任意の比率で混合させれば良い。好ましくは水:ニトリル化合物の比率が、体積比で100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50、さらに好ましくは10:1〜1:10である。水と混合されることで、反応液へニトリル化合物を供給する場合と比べ、反応液内でのニトリル化合物の分散がより容易となる。ニトリル化合物と水の混合物の供給管とは、攪拌槽を用いてニトリル化合物と水を混合する場合には、攪拌槽と反応槽を接続する配管であり、ニトリル化合物と水を配管中で混合する場合には、ニトリル化合物の供給管と水の供給管が接続された箇所から反応槽へ接続する配管である。
ニトリル化合物と水の混合物の供給管の反応槽中の水系媒体への供給口の設置位置には特に制限はなく、水系媒体の上部へ設置しても、水系媒体中へ設置してもよいが、ニトリル化合物の気相部への蒸発を抑制する観点から、供給口は水系媒体中へ設置することが好ましい。前記の供給口を水系媒体中へ設置する際は、供給口の設置位置はニトリル化合物の水系媒体中への分散の観点から、水系媒体の最深部の水準を0%とし、水系媒体の液面の水準を100%とした場合、好ましくは80%以下の位置である、より好ましくは60%以下の位置である、更に好ましくは50%以下の位置である。ニトリル化合物と水の混合物の供給管は、ひとつの反応槽につき一本であってもよく、複数本であってもよい。ニトリル化合物と水の混合物の供給管の供給口は、一本の供給管につき一つであってもよく、複数あっても良い。また、反応槽が攪拌機を備える槽型反応器である場合には、ニトリル化合物と水の混合物の供給管の供給口は、ニトリル化合物の水系媒体への分散を良好に行うために、反応槽に設置された攪拌翼の近傍に設置することが好ましい。
ニトリル化合物と水の混合物の供給管の供給口の形状は特に制限はなく、通常使用される形状のものであればいずれも好適に使用できる。菌体触媒の使用量は、反応条件や触媒の種類およびその形態により変化するが、上記微生物の乾燥菌体重量換算で、反応液に対して、通常10〜50,000重量ppm、好ましくは50〜30,000重量ppmである。
反応時間(反応液の滞留時間)は、通常0.5〜50時間、好ましくは2〜25時間である。多段の反応槽を用いる場合、反応時間とは、全反応器における合計の反応時間(反応液の滞留時間)を指す。本発明のアミド化合物の製造方法において、得られたアミド化合物の回収および精製は、例えば、濃縮操作(例:蒸発濃縮)、活性炭処理、イオン交換処理、ろ過処理、晶析操作により行うことができる。
以上のようにして、反応原料であるニトリル化合物に対応するアミド化合物、例えば(メタ)アクリロニトリルであれば(メタ)アクリルアミドを得ることができる。
〔アミド化合物の製造装置〕
本発明のアミド化合物の製造装置は、ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を触媒として、ニトリル化合物の水和反応によりアミド化合物を製造する反応槽と、ニトリル化合物および水の混合物を前記反応槽に供給する供給管を備える。
反応槽の構成については、上述したとおりである。
ニトリル化合物と水の混合物の供給管とは、上述したように、ニトリル化合物と水の混合物を反応槽へ供給する配管である。ニトリル化合物および水を貯蔵する原料貯槽はそれぞれニトリル化合物供給管および水供給管を有し、それぞれの原料供給管は混合槽に接続されるか、あるいは原料供給管同士が直接接続する。原料の混合槽を有する場合は、混合槽から反応槽へ接続する配管がニトリル化合物との混合物の供給管であり、原料供給配管同士が接続する場合には、原料供給配管同士が接続した以降、反応槽へ接続する配管がニトリル化合物と水の混合物の供給管である。
反応槽が複数の反応器から構成される反応槽の場合、ニトリル化合物と水の混合物の供給管は、一段目の反応器にのみ接続されていてもよく、一段目と二段目以降の反応器とに接続されていてもよい。他方、複数の反応器から構成される反応槽の場合、反応器から他の反応器へ反応器へ反応液を送る配管はニトリル化合物と水の混合物の供給管には含まれない。
以下、本発明のアミド化合物の製造装置の具体例を、図面を参照して説明する。
図1の製造装置は、攪拌機7を備える反応槽3と、ニトリル化合物と水の混合物の供給管4を通して反応槽3に接続されたニトリル化合物の供給管5と水の供給管6と、ニトリル化合物の貯蔵槽1とニトリル化合物の貯蔵槽1に配管を介して設置されたニトリル化合物供給ポンプ8と、水の貯蔵槽2と水の貯蔵槽2に配管を介して設置された水供給ポンプ8’とを備える。
図2の製造装置は、攪拌機7を備える反応槽3と、ニトリル化合物と水の混合物の供給管4を通して反応槽3に接続された攪拌機7を備えるニトリル化合物と水の混合槽9と、ニトリル化合物と水の混合槽9に配管を介して設置されたニトリル化合物と水の混合物供給ポンプと、ニトリル化合物の供給管5を通してニトリル化合物と水の混合槽9に接続されたニトリル化合物の貯蔵槽1と、水の供給管6を通してニトリル化合物と水の混合槽9に接続された水の貯蔵槽2と、ニトリル化合物の貯蔵槽1とニトリル化合物の貯蔵槽1に配管を介して設置されたニトリル化合物供給ポンプ8と、水の貯蔵槽2と水の貯蔵槽2に配管を介して設置された水供給ポンプ8’とを備える。
次に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
[実施例1]
〔ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体の調製〕
特開2001−340091号公報の実施例1に記載の方法に従いNo.3クローン菌体を取得し、同じく、同実施例1の方法で培養してニトロリルヒドラターゼを含有する湿菌体を得た。
〔アクリルアミドの製造〕
最終製品として、水溶液中のアクリルアミド濃度が50重量%の製品を得るため、図1に示す製造装置(ただし、反応装置としては第1反応器のみを図示している。)を用いて、以下の条件で反応を行った。
第1反応器として攪拌機を備えた、槽内径1m、直胴部長さ1.36mのSUS製ジャケット冷却器付槽型反応器(容積:1m)、第2反応器として容積0.5mのSUS製二重管型反応器を準備した。アクリロニトリルの供給配管と水の供給配管は途中で接続した合流配管となっており、アクリロニトリルおよび水は合流配管中で混合され、第一反応器には混合物として供給される。混合物の供給配管は供給口が槽底面から1.5mの高さになるように設置した。第1反応器には、予め400kgの水を仕込んだ。
上記培養方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第1反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を11kg/hの速度で連続的に供給した。また、純度99.8%のアクリロニトリルを32kg/hの速度でアクリロニトリル供給配管を介し連続的に供給、純水を37kg/hの速度で純水供給配管を介し連続的に供給し、アクリロニトリル供給配管及び純水供給配管はそれぞれ第一反応器へ接続する以前に互いに接続した後に第一反応器へと接続した。反応中の反応液の温度は20℃となるように、第1反応器のジャケット及び第2反応器の二重管に5℃の冷却水を流通して温度制御を行った。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液を供給した。反応中の反応液の液面は槽底面から1mの高さとなるように、反応液を第1反応器から80kg/hの速度で連続的に抜き出し、第2反応器に連続的に供給して、第2反応器内でさらに反応を進行させた。
反応開始から200時間後に以下のHPLC条件にて分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は52.4重量%であった。
ここで分析条件は以下のとおりであった。
・アクリルアミド分析条件:
高速液体クロマトグラフ装置:LC−10Aシステム(株式会社島津製作所製)
(UV検出器波長250nm、カラム温度40℃)
分離カラム :SCR-101H (株式会社島津製作所製)
溶離液 :0.05%(容積基準)−リン酸水溶液
・アクリロニトリル分析条件:
高速液体クロマトグラフ装置:LC−10Aシステム(株式会社島津製作所製)
(UV検出器波長200nm、カラム温度40℃)
分離カラム :Wakosil-II 5C18HG (和光純薬製)
溶離液 :7%(容積基準)−アセトニトリル、0.1mM−酢酸、
0.2mM−酢酸ナトリウムを各濃度で含有する水溶液
[実施例2]
実施例1のアクリルアミドの製造において、アクリロニトリルと水の混合物の供給配管の供給口の設置位置を槽底面から0.75mをとしたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は53.1重量%であった。
[実施例3]
実施例1のアクリルアミドの製造において、アクリロニトリルと水の混合物の供給配管の供給口の設置位置を槽底面から0.5mをとしたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は53.2重量%であった。
[比較例1]
実施例1のアクリロニトリルの製造において、アクリロニトリルの供給配管と水の供給配管をそれぞれ独立して第一反応器へ接続し、アクリロニトリル及び純水の供給口は共に槽底面から1.5mの高さになるように設置した以外は、実施例1と同様にして、アクリルアミドの製造を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が92%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が80重量ppmとなった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は52.1重量%であった。
[比較例2]
実施例1のアクリロニトリルの製造において、アクリロニトリルの供給配管と水の供給配管をそれぞれ独立して第一反応器へ接続し、アクリロニトリル及び純水の供給口は共に槽底面から0.5mの高さになるように設置した以外は、実施例1と同様にして、アクリルアミドの製造を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が92%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が80重量ppmとなった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は53.0重量%であった。
[実施例4]
〔アクリルアミドの製造〕
最終製品として、水溶液中のアクリルアミド濃度が50重量%の製品を得るため、図2に示す製造装置(ただし、反応装置としては第1反応器のみを図示している。)を用いて、以下の条件で反応を行った。
原料混合槽として攪拌機を備えた容積1mのSUS製攪拌槽、第1反応器として攪拌機を備えた、槽内径1m、直胴部長さ1.36mのSUS製槽型反応器(容積:1m)、第2反応器として容積0.5mのSUS製二重管型反応器を準備した。原料混合槽にはアクリロニトリルの供給配管と水の供給配管としてSUS製の配管をそれぞれ独立して接続した。第一反応機にはアクリロニトリルと水の混合物の供給配管としてSUS製の配管を原料混合槽より接続し、供給口が槽底面から1.5mの高さになるように設置した。
第1反応器には、予め400kgの水を仕込んだ。
上記培養方法で得られた湿菌体を純水に懸濁した。第1反応器内を撹拌しながら、この懸濁液を11kg/hの速度で連続的に供給した。また、純度99.8%のアクリロニトリルを32kg/hの速度で原料混合槽へ連続的に供給し、純水を37kg/hの速度で原料混合槽へ連続的に供給した。アクリロニトリル及び純水は原料混合槽にて攪拌機を用いて混合され、アクリロニトリル及び純水の混合物は69kg/hの速度で第一反応器へ連続的に供給した。反応中の反応液の温度は20℃となるように温度制御を行った。さらに反応pHが7.5〜8.5となるように、0.1M−NaOH水溶液を供給した。反応中の反応液の液面は槽底面から1mの高さとなるように制御した。
反応開始から200時間後に以下のHPLC条件にて分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は52.6重量%であった。
[実施例5]
実施例4のアクリルアミドの製造において、アクリロニトリルと水の混合物の供給配管の供給口の設置位置を槽底面から0.75mをとしたこと以外は実施例4と同様にして反応を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は53.2重量%であった。
[実施例6]
実施例4のアクリルアミドの製造において、アクリロニトリルと水の混合物の供給配管の供給口の設置位置を槽底面から0.5mをとしたこと以外は実施例4と同様にして反応を行った。反応開始から200時間後に上記HPLC分析を行ったところ、第1反応器出口でのアクリルアミドへの転化率が95%、かつ第2反応器出口でのアクリロニトリル濃度が検出限界以下(10重量ppm以下)となった。また、第二反応器出口でのアクリルアミド濃度は53.3重量%であった。
1:ニトリル化合物の貯蔵槽
2:水の貯蔵槽
3:反応槽
4:ニトリル化合物と水の混合物の供給管
5:ニトリル化合物の供給管
7:攪拌機
8:ニトリル化合物供給ポンプ
8’:水供給ポンプ
9:ニトリル化合物と水の混合槽
10:ニトリル化合物と水の混合物供給ポンプ


Claims (4)

  1. ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する方法において、微生物触媒および/または菌体処理物が添加されている水系媒体に、ニトリル化合物と水の混合物を供給することを特徴とするアミド化合物の製造方法
  2. ニトリル化合物と水の混合物を供給する供給管の供給口を水系媒体中に配置することを特徴とする請求項1に記載のアミド化合物の製造方法
  3. ニトリル化合物がアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルであり、アミド化合物がアクリルアミドまたはメタクリルアミドである請求項1または2に記載の製造方法
  4. ニトリルヒドラターゼを含有する微生物菌体および/またはその菌体処理物を用いてアミド化合物を製造する反応槽と、ニトリル化合物と水の混合物を供給する混合物供給ラインを備えるアミド化合物の製造装置
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