以下、本発明のRFIDタグ、RFIDタグ付き容器、及びRFIDタグ用のアンテナ装置を適用した実施の形態について説明する。
ここでは、まず、実施の形態のRFIDタグ等について説明する前に、実施の形態の前提技術によるRFIDタグについて説明する。
図1は、実施の形態の前提技術によるRFIDタグ10を示す図である。
RFIDタグ10は、基板20、アンテナ30、及びIC(Integrated Circuit:集積回路)チップ40を含む。
基板20は、例えば、ポリイミド製のシート状の基板である。基板20の表面(図1に示す面)には、アンテナ30がパターニングされるとともに、ICチップ40が実装される。基板20の裏面(図1に示す面の裏側の面)には、接着剤等が塗布され、基板20は後述する容器等に貼着される。
アンテナ30は、一対の端子30A、30Bと、アンテナ部31と、アンテナ部32とを有する。
アンテナ30の一対の端子30A、30Bの間には、ICチップ40が実装されており、一対の端子30A、30Bは、ICチップ40の一対の端子に接続されている。
アンテナ部31は、平面視でアンテナ部32の略半分の大きさを有する矩形ループ状のアンテナ部であり、端子30Aと端子30Bとの間の長さ(実効長)は、例えば、RFIDタグ10の使用周波数における波長(λ)の約1/4程度に設定されている。アンテナ部31は、ICチップ40を含む小さなループを構築する。
アンテナ部31は、主に、アンテナ30とICチップ40とのインピーダンス整合を取るために用いられるアンテナ部であり、アンテナ30とICチップ40との間で共振を生じさせるために、所定のインダクタンスを有する。
アンテナ部32は、平面視で基板20と略同じ大きさを有する矩形ループ状のアンテナであり、端子30Aと端子30Bとの間の長さ(実効長)は、例えば、RFIDタグ10の使用周波数における波長(λ)の約1/3程度に設定されている。アンテナ部32は、ICチップ40を含む大きなループを構築する。なお、アンテナ部32の実効長をRFIDタグ10の使用周波数における波長(λ)の約1/3程度に設定するのは、アンテナ部32をインダクタとして働かせるためである。
アンテナ部32は、主に、アンテナ30のゲインを稼ぐために設けられているアンテナ部であり、インピーダンス整合用のアンテナ部31よりも長い実効長を有する。なお、アンテナ部32は、例えば、RFIDタグ10の使用周波数を953MHzとした場合に、19mm×19mmの正方形状のループになるように実効長が設定される。
ICチップ40は、基板20の表面に実装されてアンテナ30に電気的に接続されており、アンテナ部31、32とそれぞれループを構築する。また、ICチップ40は、固有のIDを表すデータを内部のメモリチップに格納している。
ICチップ40は、アンテナ30を介してRFIDタグ10のリーダライタからRF(Radio Frequency)帯域の読み取り用の信号を受信すると、受信信号の電力で作動し、IDを表すデータをアンテナ30を介して発信する。これにより、リーダライタでRFIDタグ10のIDを読み取ることができる。
このようなRFIDタグ10は、例えば、基板20の裏面(図1に示す面の裏側の面)を容器等に貼り付けることにより、容器等に貼着される。
図2は、RFIDタグ10の等価回路を示す図である。
図2に示すように、RFIDタグ10のアンテナ30は、抵抗器RaとインダクタLaで表すことができる。また、RFIDタグ10のICチップ40は、抵抗器RcとキャパシタCcで表すことができる。すなわち、アンテナ30は、抵抗成分とインダクタンス成分を含んでおり、ICチップ40は、抵抗成分とキャパシタンス成分とで表すことができる。
ここで、抵抗器Raは抵抗値Raの抵抗器であり、インダクタLaはインダクタンスがLaのインダクタである。また、抵抗器Rcは抵抗値Rcの抵抗器であり、キャパシタCcはキャパシタンスがCcのキャパシタである。
アンテナ30のインダクタLaのインダクタンスは、アンテナ部31と32の合成のインダクタンスである。アンテナ部31と32のインダクタンスは、実効長の長いアンテナ部32のインダクタンスの方がアンテナ部31のインダクタンスよりも大きい。
しかしながら、合成のインダクタンスは、アンテナ部31と32のインダクタンスの逆数の和で決まるため、実効長の短いアンテナ部31のインダクタンスが支配的となる。
このため、アンテナ部31のインダクタンスは、主にアンテナ30とICチップ40とのインピーダンス整合を取り、アンテナ30とICチップ40との間で共振を生じさせるために用いられる。
また、アンテナ部32は、アンテナ部31よりも実効長が長く、アンテナ部31よりも使用周波数における波長(λ)に近い実効長を有するため、アンテナ30のゲインを稼ぐために用いられる。
次に、図3及び図4を用いて、RFIDタグ10を容器の側面に貼着し、容器に液体を注いだ場合に、液面の高さによってリーダライタでIDを読み取るのに必要な最小限度の出力が変化することについて説明する。
図3は、RFIDタグ10を容器50の側面に貼着し、リーダライタ60でIDを読み取る状態を示す図である。図4は、容器50に注がれる液体の液面の高さと、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminとの関係を示す特性図である。
図3に示すように、RFIDタグ10を容器50の側面に貼着する。容器50は、円筒状のカップ型の容器であり、上部に開口を有し、内部に液体を収容することができる。
ここでは、一例として、容器50の直径は70mm、高さは80mmとする。また、図3には、容器50の底の高さを0mmとして示し、高さ80mmまで液体を注ぐことができることとする。なお、ここでは、液体として水を用いる。
RFIDタグ10を容器50の側面に貼り付ける高さ方向の位置は、容器50の上端と下端の間である。具体的には、アンテナ30の上端が高さ約40mmの位置にあり、アンテナ30の下端が高さ約20mmの位置にあるように、RFIDタグ10を容器50の側面に貼着した。
RFIDタグ10を側面に貼着した容器50と、リーダライタ60との間の距離を一定にし、空の容器50に少しずつ液体を注ぎながら、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminを測定したところ、図4のような結果を得た。
なお、図4において、横軸は、RFIDタグ10とリーダライタ60との間の距離(mm)を表し、縦軸は、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pmin(dBm)を表す。
ここで、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminとは、RFIDタグ10とリーダライタ60との間の距離をある一定の距離に保持した状態で、リーダライタ60でRFIDタグ10のIDを読み取るために、リーダライタ60が発信する読み取り用の信号(読み取り信号)に必要になる最小の出力をいう。
リーダライタ60が発信する読み取り信号の出力が、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminより低くなると、RFIDタグ10とリーダライタ60との間の距離をある一定の距離に保持した状態では、リーダライタ60でRFIDタグ10のIDを読み取ることができなくなる。
図4に実線で示すように、容器50に液体を注ぐ前の状態では、液体の液面の高さは0mmであり、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminは、約10dBmであった。
容器50に液体を徐々に注いだところ、液面の高さが約20mmに達するまでは最小限度の出力Pminは低下し、液面の高さが約20mmのときに極小値として約0dBmが得られた。ここで、液面の高さが20mmである状態は、RFIDタグ10のアンテナ30の下端と液面の高さが等しい状態に相当する。
容器50に液体をさらに注いだところ、液面の高さが約20mmよりも高くなると、最小限度の出力Pminは増大し、液面の高さが約40mmのときに、極大値として約30dBmが得られた。ここで、液面の高さが40mmである状態は、RFIDタグ10のアンテナ30の上端と液面の高さが等しい状態に相当する。
容器50に液体をさらに注いだところ、液面の高さが約40mmよりも高くなると、最小限度の出力Pminは減少し、液面の高さが約45mmのときに、最小限度の出力Pminは約15dBmとなった。そして、液面の高さが60mmになると、最小限度の出力Pminは約10dBmとなり、容器50が空の状態(液面の高さが0mmの状態)と略等しい値になった。
以上のように、アンテナ30の上端と液面の高さが略等しいときに、最小限度の出力Pminは極大値になり、アンテナ30の下端と液面の高さが略等しいときに、最小限度の出力Pminは極小値になることが分かった。
なお、図4に破線で示す特性は、容器50の直径を15mmに設定して同様に最小限度の出力Pminを測定して得た結果を示しており、極小値と極大値の絶対値は異なるが、同様の傾向が得られることが確認できた。
このように、RFIDタグ10を側面に貼着した容器50に液体を注ぐと、液面の高さに応じて、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminが変化することが分かった。
従って、RFIDタグ10を側面に貼着した容器50に注がれる液体の量が異なる可能性がある場合には、リーダライタ60が発信する読み取り信号の出力を、最小限度の出力Pminの極大値以上に設定することが必要になる。
具体的には、図3に示すようにRFIDタグ10を容器50に貼着した場合には、リーダライタ60が発信する読み取り信号の出力を30dBm以上に設定することが必要になる。これは、読み取り信号の出力として、少なくとも30dBmは必要になるという意味である。
なお、RFIDタグ10のアンテナ30のアンテナ部31、32の実効長は、容器50が空である状態(液体が全く注がれていない状態)と、容器50を満タンにした状態(高さ80mmまで液体を注いだ状態)とで、同じ通信距離が得られるように調整してある。
次に、実施の形態のRFIDタグ、RFIDタグ付き容器、及びRFIDタグ用のアンテナ装置について説明する。
<実施の形態>
図5は、実施の形態のRFIDタグ100を示す図である。図6は、実施の形態のRFIDタグ用のアンテナ装置100Aを示す図である。図5及び図6では、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。
以下で実施の形態のRFIDタグ100について説明するにあたり、図1に示す前提技術のRFIDタグ10と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
図5に示す実施の形態のRFIDタグ100は、基板120、アンテナ130、及びICチップ140を含む。図6に示すRFIDタグ用のアンテナ装置100Aは、図5に示すRFIDタグ100からICチップ140を取り除いた状態のものである。
すなわち、図5に示すRFIDタグ100は、図6に示すRFIDタグ用のアンテナ装置100Aに、ICチップ140を実装したものである。なお、図6には、ICチップ1140が実装される位置を破線で示す。
実施の形態のRFIDタグ100は、前提技術のRFIDタグ10と同様に、容器50(図3参照)の外側の側面に貼着して用いるものである。RFIDタグ100は、図5に示すY軸の正方向が容器50の高さ方向における上方向を向き、図5に示すX軸方向が円筒型の容器50の周方向を向くように、容器50の外側の側面に貼り付けられる。
基板120は、例えば、ポリイミド製の樹脂フィルムである。実施の形態のRFIDタグ100の基板120は、前提技術のRFIDタグ10の基板20(図1参照)と同様の基板であるが、アンテナ130の平面視での大きさが前提技術のアンテナ30の平面視での大きさと異なるため、前提技術の基板20よりもX軸方向に少し大きくなっている。
なお、RFIDタグ100は円筒状の容器50(図3参照)の側面に貼り付けられるため、基板120は、可撓性を有するフィルム状の部材、又は、シート状の部材であればよく、ポリイミド製のフィルムに限られるものではない。基板120は、例えば、紙製であってもよい。
基板120の表面(図5及び図6に示す面)には、アンテナ130がパターニングされるとともに、ICチップ140が実装される。基板120の裏面(図5及び図6に示す面の裏側の面)には、接着剤等が塗布され、基板120は容器50の外側の側面に貼着される。
アンテナ130は、アンテナ部131、132、133を有する。アンテナ130は、アンテナ部131又は132がICチップ140と共振することにより、リーダライタ60(図3参照)との間で通信を行う。また、この際に、アンテナ部133は、アンテナ130のゲインを稼ぐように機能する。
すなわち、アンテナ130は、アンテナ部131又は132のいずれか一方がICチップ140と共振することによって通信を行う所謂ダイバーシティ方式のアンテナである。
図6には、アンテナ部131、132、133の形状(パターン)を分かり易くするために、アンテナ部131のパターンを破線で示し、アンテナ部132のパターンを一点鎖線で示し、アンテナ部133のパターンを二点鎖線で示す。
アンテナ130は、最も大きい矩形状のループを形成するアンテナ部133の内部に小さなループのアンテナ部131を形成するとともに、アンテナ部131とは別の小さなループのアンテナ部132を設けた構成を有する。
ここで、アンテナ部133の矩形状のループは4つの角部130A、130B、130C、130Dを有するものとして説明する。
アンテナ部131は、一端と他端に端子131A、131Bを有し、矩形状のループを形成する。端子131A、131Bは、アンテナ130の4つの端子のうちの2つである。端子131A、131Bには、ICチップ140の4つの端子のうちの2つの端子が接続される。
アンテナ部131は、一端の端子131AからY軸負方向側に延伸し、角部130AでX軸負方向側に折れ曲がり、さらに中間部130EでY軸正方向側に折れ曲がっている。中間部130Eは、角部130Aと130Bとの中間に位置する部位である。
また、アンテナ部131は、中間部130EからY軸正方向側に延伸し、中間部130FでX軸正方向側に折れ曲がり、さらに角部130DでY軸負方向側に折れ曲がり、他端の端子131Bまで延伸している。なお、中間部130Fは、角部130Cと130Dとの中間に位置する部位であり、X軸方向の位置は、中間部130Eと同一である。
アンテナ部131は、平面視でアンテナ部133の略半分の大きさを有する矩形ループ状のアンテナ部であり、第1アンテナの一例である。アンテナ部131の一端の端子131Aと他端の端子131Bとの間の長さ(実効長)は、例えば、RFIDタグ100の使用周波数における波長(λ)の約1/6程度に設定されている。アンテナ部131は、ICチップ140を含む小さなループを構築する。
ここで、RFIDタグ100は、Y軸正方向が容器50(図3参照)の高さ方向における上方向に一致するように容器50の側面に貼着される。このため、アンテナ部131の上端は、Y軸方向において最も正方向側に位置する部分であり、角部130Dと中間部130Fとの間の部分である。
アンテナ部131の上端は、容器50の高さ方向に対応するY軸方向において、アンテナ部132の上端(角部130Iと角部130Jとの間の部分)よりも、Y軸正方向側(高さ方向における高い側)に位置している。
アンテナ部131は、主に、アンテナ130とICチップ140とのインピーダンス整合を取るために用いられるアンテナ部であり、アンテナ130とICチップ140との間で共振を生じさせるために、所定のインダクタンスを有する。
なお、アンテナ部131の下端とは、Y軸方向において最も負方向側に位置する部分であり、角部130Aと中間部130Eとの間の部分である。
アンテナ部132は、一端と他端に端子132A、132Bを有し、矩形状のループを形成する。端子132A、132Bは、アンテナ130の4つの端子のうちの2つである。
端子132A、132Bには、ICチップ140の4つの端子のうちの残りの2つの端子が接続される。残りの2つの端子とは、ICチップ140の4つの端子のうち、アンテナ部131の端子131A、131Bに接続される2つの端子を除いた残りの端子である。
アンテナ部132は、一端の端子132AからX軸負方向側に延伸し、中点130GでY軸負方向側に折れ曲がり、さらに中点130EでX軸正方向側に折れ曲がり、角部130Aを経て、角部130Hまで延伸している。角部130Hは、角部130AよりもX軸正方向側に位置する。
アンテナ部132は、角部130HでY軸正方向側に折れ曲がり、角部130IでX軸負方向側に折れ曲がり、さらに角部130JでY軸負方向側に折れ曲がり、他端の端子132Bまで延伸している。
なお、角部130Iは、角部130HとはX軸方向の位置が同一であり、角部130HよりもY軸正方向側に位置している。角部130Iは、Y軸方向において、他端の端子132BよりもY軸正方向側に位置している。
また、角部130Jは、角部130IとY軸方向における位置が同一であり、X軸方向における位置は、他端の端子132Bと同一である。
以上のようなアンテナ部132は、X軸方向における正方向側の部分(角部130A及び端子132BよりもX軸正方向側の部分)が、X軸方向における負方向側の部分(角部130A及び端子132BよりもX軸負方向側の部分)よりもY軸方向に長くなっている。
アンテナ部132のうち、中間部130Gから中間部130Eを経て角部130Aに至る部分は、アンテナ部131及び133と共通の部分である。また、アンテナ部132のうち、角部130Aから角部130H、130I、130Jを経て他端の端子132Bに至る部分は、アンテナ部131及び133よりもX軸正方向側に延出している。
アンテナ部132は、第2アンテナの一例である。アンテナ部132の一端の端子132Aと他端の端子132Bとの間の長さ(実効長)は、例えば、RFIDタグ100の使用周波数における波長(λ)の約1/6程度に設定されている。すなわち、アンテナ部132の実効長は、アンテナ部131の実効長と略等しい長さに設定されている。アンテナ部132は、ICチップ140を含む小さなループを構築する。
ここで、RFIDタグ100は、Y軸正方向が容器50(図3参照)の高さ方向における上方向に一致するように容器50の側面に貼着される。このため、アンテナ部132の上端は、Y軸方向において最も正方向側に位置する部分であり、角部130Iと角部130Jとの間の部分である。
アンテナ部132の上端は、容器50の高さ方向に対応するY軸方向において、アンテナ部131の上端(角部130Dと中間部130Fとの間の部分)よりも、Y軸負方向側(高さ方向における低い側)に位置している。
アンテナ部132は、主に、アンテナ130とICチップ140とのインピーダンス整合を取るために用いられるアンテナ部であり、アンテナ130とICチップ140との間で共振を生じさせるために、所定のインダクタンスを有する。
なお、アンテナ部132の下端とは、Y軸方向において最も負方向側に位置する部分であり、中間部130Eと角部130との間の部分である。
アンテナ部133は、一端と他端に、アンテナ部131の一端及び他端の端子131A、131Bを有する。すなわち、アンテナ部133は、端子131A、131Bをアンテナ部131と共有している。
アンテナ部133は、一端の端子131AからY軸負方向側に延伸し、角部130AでX軸負方向側に折れ曲がって角部130Bまで延伸している。また、アンテナ部133は、角部130BでY軸正方向側に折れ曲がり、角部130CでX軸正方向側に折れ曲がり、さらに、角部130DでY軸負方向側に折れ曲がることにより、他端の端子131Bまで延伸している。
アンテナ部133は、端子131Aと端子131Bとの間で、角部130A、130B、130C、130Dを四隅とする矩形状のループを形成している。
アンテナ部133は、第3アンテナの一例である。アンテナ部133の一端の端子131Aと他端の端子131Bとの間の長さ(実効長)は、例えば、RFIDタグ100の使用周波数における波長(λ)の約1/3程度に設定されている。アンテナ部133は、ICチップ140を含む大きなループを構築する。
なお、アンテナ部133は、実効長が使用周波数における波長(λ)と略等しい長さに設定される所謂ループアンテナとは異なり、インダクタとして働くループ状のアンテナである。このため、アンテナ部133の実効長は、使用周波数における波長λよりも短く設定される。これは、ループ状のアンテナ部131、132も同様である。
このため、実施の形態では、アンテナ部133の実効長をRFIDタグ100の使用周波数における波長(λ)の約1/3程度に設定している。
アンテナ部133は、主に、アンテナ130のゲインを稼ぐために設けられているアンテナ部であり、インピーダンス整合用のアンテナ部131、132よりも長い実効長を有する。なお、アンテナ部133は、例えば、RFIDタグ10の使用周波数を953MHzとした場合に、19mm×19mmの正方形状のループになるように実効長が設定される。
また、アンテナ部133は、端子131A、131Bをアンテナ部131と共有しているため、アンテナ部131がICチップ140と共振して通信を行う際には、アンテナ部133も同時に通信に用いられ、ゲイン用のアンテナ部として機能する。これは、アンテナ部133は、アンテナ部131がICチップ140と共振して通信を行う際に、ゲイン用のアンテナとして機能するために配設されているからである。
しかしながら、アンテナ部133は、中間点130Fにおいて、アンテナ部131の中間部130Fと130Gとの間の区間を介してアンテナ部132の中間部130Gに接続されている。また、アンテナ部133は、中間点130Eにおいて、アンテナ部132に接続されている。
このため、アンテナ部132がICチップ140と共振して通信を行う際には、アンテナ部133の中間部130Fから角部130C及び130Bを経て中間部130Eに至る部分は、アンテナ部131の中間部130Fと130Gとの間の部分を介して、ゲイン用のアンテナ部として機能する。すなわち、アンテナ部132が通信を行う際には、アンテナ部133の一部がゲイン用のアンテナとして機能することが考えられる。
ここで、RFIDタグ100は、Y軸正方向が容器50(図3参照)の高さ方向における上方向に一致するように容器50の側面に貼着される。このため、アンテナ部133の上端は、Y軸方向において最も正方向側に位置する部分であり、角部130Cと角部130Dとの間の部分である。
なお、アンテナ部133の下端とは、Y軸方向において最も負方向側に位置する部分であり、角部130Bと中間部130Aとの間の部分である。
図5に示すICチップ140は、基板20の表面に実装されて、下面(図5に示す上面とは反対側の面)側にある4つの端子がアンテナ130の端子131A、131B、132A、132Bに接続されることにより、アンテナ130に電気的に接続されている。
ICチップ140は、アンテナ部131、132、133とそれぞれループを構築する。また、ICチップ140は、固有のIDを表すデータを内部のメモリチップに格納している。
ここで、図7を用いて、ICチップ140の下面側の4つの端子と、アンテナ130の端子131A、131B、132A、132Bとの接続関係について説明する。
図7は、実施の形態のRFIDタグ100のICチップ140と端子131A、131B、132A、132Bとの接続関係を示す図である。図7には、図5に示すICチップ140と端子131A、131B、132A、132Bとを拡大して示す。なお、図7では、図5及び図6と同様にXYZ座標系を定義する。
端子131A、131B、132A、132Bには、それぞれ、配線部131C、131D、132C、132Dが接続されている。ICチップ140の端子141A、141B、142A、142Bは、それぞれ、配線部131C、131D、132C、132Dを介して、端子131A、131B、132A、132Bに接続されている。
ここで、端子141A、141B、142A、142Bは、端子141A及び141Bの対と、端子142A及び142Bの対として用いられる。端子141A及び141Bには、アンテナ部131及び133が接続され、端子142A及び142Bにはアンテナ部132が接続される。
端子141Aは、アンテナ部131及び133に接続される給電用端子であり、端子141Bはグランド端子である。
端子142Aは、アンテナ部132に接続される給電用端子であり、端子142Bはグランド端子である。
ICチップ140は、端子141A及び141Bに接続されるアンテナ部131、又は、端子142A及び142Bに接続されるアンテナ部132のいずれか一方がリーダライタ60(図3参照)から受信する読み取り信号によって駆動される。
すなわち、ICチップ140は、端子141A及び141Bに接続されるアンテナ部131、又は、端子142A及び142Bに接続されるアンテナ部132のうち、より低い電力でICチップ140を駆動することのできるアンテナ部によって駆動される。
ICチップ140は、端子141A及び141Bに接続されるアンテナ部131、又は、端子142A及び142Bに接続されるアンテナ部132のいずれか一方(より電力の低い方)を択一的に選択して駆動する。
このようなICチップ140は、例えば、米国のインピンジ社(Impinj, Inc.)、米国のエイリアンテクノロジー社(Alien Technology Corporation)、又は、オランダのNXPセミコンダクターズ社(NXP Semiconductors)等から入手可能である。
ICチップ140は、端子141A及び141Bに接続されるアンテナ部131、又は、端子142A及び142Bに接続されるアンテナ部132のいずれか一方を介してRFIDタグ100のリーダライタ60(図3参照)からRF帯域の読み取り用の信号を受信する。そして、ICチップ140は、受信信号の電力で作動し、IDを表すデータをアンテナ部131、又は、アンテナ部132を介して発信する。これにより、リーダライタ60でRFIDタグ100のIDを読み取ることができる。
なお、アンテナ部131がICチップ140と共振して通信を行う際には、上述のようにアンテナ部133がゲイン用のアンテナとして同時に通信を行う。また、アンテナ部132がICチップ140と共振して通信を行う際には、上述のようにアンテナ部133の一部分(アンテナ部133の中間部130Fから角部130C及び130Bを経て中間部130Eに至る部分)がゲイン用のアンテナとして同時に通信を行う。
また、RFIDタグ100のアンテナ130のアンテナ部131、132、133の実効長は、容器50が空である状態(液体が全く注がれていない状態)と、容器50を満タンにした状態(高さ80mmまで液体を注いだ状態)とで、同じ通信距離が得られるように調整してある。
次に、図8を用いて、RFIDタグ100の断面構造について説明する。
図8は、実施の形態のRFIDタグ100の断面構造を示す図である。図8では、図5乃至図7と同様にXYZ座標系を定義する。
図8に示すRFIDタグ100の断面は、図5におけるA−A矢視断面である。図8には、容器50の断面と、RFIDタグ100の表面に貼着するラベルシート200を示す。
図8に示すように、RFIDタグ100は、基板120の表面にアンテナ130が形成されるとともに、ICチップ140が実装されている。ICチップ140は、アンダーフィル材等を用いて、基板120の表面に接着すればよい。
ICチップ140を基板120の表面に接着することにより、ICチップ140の端子141A、141B、142A、142Bと、アンテナ130の端子131A、131B、132A、132Bとが接続される。
なお、ICチップ140の端子141A、141B、142A、142Bと、アンテナ130の端子131A、131B、132A、132Bとの間には、バンプ等を用いればよい。バンプは、例えば、金バンプを用いるとができる。
また、図8では、破線の矢印で示すように、平面視でRFIDタグ100よりも大きいラベルシート200をRFIDタグ100の上から重ねて容器50の側面に貼り付けることによって、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼り付けている。
ラベルシート200は、シート201、接着層202、及び印字層203を有する。シート201は、ポリイミド等の樹脂フィルム、又は、紙製のシート等であればよい。シート201の裏面(Z軸負方向側の面)には、接着層202が設けられている。シート201の表面(Z軸正方向側の面)には、印字層203が形成されている。
接着層202は、例えば、アクリル系の接着剤等をシート201の裏面に塗布することによって、又は、テープ状の接着シ―トをシート201の裏面に貼り付けることによって形成することができる。
印字層203は、シート201の表面に形成される。印字層203は、例えば、容器50の種類を示すラベル、又は、文字等を印刷したものである。
なお、図8では、ラベルシート200を用いてRFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼り付ける形態について説明した。しかしながら、例えば、アンテナ130とICチップ140を保護する保護シートをRFIDタグ100の表面に貼り付けた状態で、RFIDタグ100の裏面に接着剤を塗布して、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼り付けてもよい。
次に、図9及び図10を用いて、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼着してリーダライタ60でIDを読み取った場合における最小限度の出力Pminについて説明する。
図9は、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼着し、リーダライタ60でIDを読み取る状態を示す図である。図10は、容器50に注がれる液体の液面の高さと、リーダライタ60でRFIDタグ100のIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminとの関係を示す特性図である。
図9に示すように、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼着する。なお、ここでは、液体として水を用いる。ここで、図9に示すRFIDタグ100が側面50Aに貼着された容器50は、RFIDタグ付き容器の一例である。
RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼り付ける高さ方向の位置は、容器50の上端と下端の間である。具体的には、アンテナ部131及び133の上端が高さ約40mmの位置にあり、アンテナ部132の上端が高さ約35mmの位置にあるように、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼着した。また、この状態で、アンテナ部131、132、133の下端は、高さ20mmの位置にあることとする。
RFIDタグ100を側面に貼着した容器50と、リーダライタ60との間の距離を一定にし、空の容器50に少しずつ液体を注ぎながら、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminを測定したところ、図10のような結果を得た。
なお、図10において、横軸は、RFIDタグ100とリーダライタ60との間の距離(mm)を表し、縦軸は、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pmin(dBm)を表す。
ここで、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminとは、RFIDタグ100とリーダライタ60との間の距離をある一定の距離に保持した状態で、リーダライタ60でRFIDタグ100のIDを読み取るために、リーダライタ60が発信する読み取り用の信号(読み取り信号)に必要になる最小の出力をいう。
リーダライタ60が発信する読み取り信号の出力が、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminより低くなると、RFIDタグ100とリーダライタ60との間の距離をある一定の距離に保持した状態では、リーダライタ60でRFIDタグ100のIDを読み取ることができなくなる。
図10に実線で示すように、容器50に液体を注ぐ前の状態では、液体の液面の高さは0mmであり、リーダライタ60でIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminは、約10dBmであった。
容器50に液体を徐々に注いだところ、液面の高さが約20mmに達するまでは最小限度の出力Pminは低下し、液面の高さが約20mmのときに極小値として約0dBmが得られた。ここで、液面の高さが20mmである状態は、RFIDタグ100のアンテナ部131、132、133の下端と液面の高さが等しい状態に相当する。
容器50に液体をさらに注いだところ、液面の高さが約20mmよりも高くなると、最小限度の出力Pminは増大し、液面の高さが約35mmのときに、極大値として約22dBmが得られた。
容器50に液体をさらに注いだところ、液面の高さが約35mmよりも高くなると、最小限度の出力Pminは減少し、液面の高さが約40mmのときに、最小限度の出力Pminは約15dBmとなった。そして、液面の高さが60mmになると、最小限度の出力Pminは約10dBmとなり、容器50が空の状態(液面の高さが0mmの状態)と略等しい値になった。
ここで、実施の形態のRFIDタグ100では、容器50の高さ方向において、アンテナ部131及び133とアンテナ部132との上端の位置が異なる。
また、前提技術のRFIDタグ10では、アンテナ30の上端と液面の高さが略等しいときに、最小限度の出力Pminは極大値になり、アンテナ30の下端と液面の高さが略等しいときに、最小限度の出力Pminは極小値になることが分かっている。
このため、実施の形態のRFIDタグ100では、アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性と、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性とは異なる。
ここで、アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性とは、ICチップ140の端子141A、141Bをアンテナ部131及び133に接続し、端子142A、142Bをアンテナ部132に接続しない状態において得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性である。
また、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性とは、ICチップ140の端子142A、142Bをアンテナ部132に接続し、端子141A、141Bをアンテナ部131及び133に接続しない状態において得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性である。
アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性は、図10に破線で示す特性となり、極小値は液面の高さが約20mmのときに得られ、極大値は液面の高さが約40mmのときに得られた。アンテナ部131がICチップ140と共振する際には、アンテナ部133はゲイン用のアンテナとして機能している。
すなわち、極小値はアンテナ部131及び133の下端と液面の高さが略等しいときに得られている。また、極大値はアンテナ部131及び133の上端と液面の高さが略等しいときに得られている。
ここで、図10に破線で示すアンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性は、第1特性の一例であり、液面の高さが約40mmのときに得られる極大値は第1極大値の一例である。
また、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性は、図10に一点鎖線で示す特性となり、極小値は液面の高さが約20mmのときに得られ、極大値は液面の高さが約33mmのときに得られた。
すなわち、極小値はアンテナ部132の下端と液面の高さが略等しいときに得られている。また、極大値はアンテナ部132の上端と液面の高さが略等しいとき、より正確にはアンテナ部132の上端よりも液面の高さが少し低いときに得られている。
図10に一点鎖線で示すアンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性は、第2特性の一例であり、液面の高さが約33mmのときに得られる極大値は第2極大値の一例である。
実施の形態のRFIDタグ100のICチップ140は、アンテナ部131又は132のうち、より低い電力でICチップ140と共振するアンテナ部によって駆動される。
このため、容器50が空の状態から徐々に液体を注いでいくと、液面が約20mmに到達するまでは、ICチップ140は、アンテナ部131又は132のうちのいずれかによって駆動される。
液面が0mmから約20mmまでの間は、アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性と、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性とは略等しいからである。
また、液面が約20mmを超えて約35mmまでは、ICチップ140は、アンテナ部131によって駆動される。
液面が約20mmから約35mmまでの間は、アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性の方が、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性よりも、最小限度の出力Pminが低いからである。
また、液面が約35mmを超えて約60mmまでは、ICチップ140は、アンテナ部132によって駆動される。
液面が約20mmから約35mmまでの間は、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性の方が、アンテナ部131がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性よりも、最小限度の出力Pminが低いからである。
以上のように、ICチップ140は、液面が0mmから約20mmまでの間は、アンテナ部131又は132を選択して通信を行う。また、ICチップ140は、液面が約20mmを超えて約35mmまでは、アンテナ部131を選択して通信を行う。
また、ICチップ140は、液面が約35mmを超えて約60mmまでは、アンテナ部132を選択して通信を行う。このように、ICチップ140は、液面の高さに応じて、より低い最小限度の出力Pminが得られるアンテナ部(131又は132)を選択して通信を行う。
すなわち、リーダライタ60でRFIDタグ100のIDを読み取るのに必要な最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性は、図10に実線で示す通りである。図10に実線で示す特性は、図10に破線で示す特性(アンテナ部131だけで得られる特性)と、図10に一点鎖線で示す特性(アンテナ部132だけで得られる特性)とのうち、出力の低い方を繋いだ特性になる。
そして、図10に実線で示す特性の極大値は約22dBmであり、前提技術によるRFIDタグ10の特性の極大値(約30dBm)に比べて、8dBmほどリーダライタ60の読み取り信号の出力を低下することができることが分かる。
すなわち、実施の形態のRFIDタグ100を容器50に貼着した場合には、リーダライタ60が発信する読み取り信号の出力を22dBmに設定すれば、RFIDタグ100のIDをリーダライタ60で読み取ることができる。
これは、容器50の高さ方向において、上端の位置が互いに異なるアンテナ部131及び133とアンテナ部132とをRFIDタグ100が含むことによって実現されることである。
以上のように、実施の形態によれば、読み取りに必要な消費電力を低減したRFIDタグ100を提供することができる。
ここで、図10に実線で示す最小限度の出力Pminの特性は、アンテナ部131だけでの最小限度の出力Pminの極大値が得られる高さ(約40mm)と、アンテナ部132だけで最小限度の出力Pminの極大値が得られる高さ(約33mm)との間に、極大値を有する。
アンテナ部131だけでの最小限度の出力Pminの極大値と、アンテナ部132だけでの最小限度の出力Pminの極大値とは、それぞれ、容器50に注がれる液体の液面の高さがアンテナ部131、132の上端の高さと略等しくなるときに得られる。
図10に実線で示す最小限度の出力Pminの特性は、アンテナ部131だけでの最小限度の出力Pminの特性と、アンテナ部132だけで最小限度の出力Pminの特性との低い部分を合成した特性であり、高さが約35mmのときに極大値を示している。
このように合成して得る特性の極大値は、2つのアンテナ部131、132の単独での最小限度の出力Pminの特性の極大値よりも低下している。
従って、RFIDタグ100を容器50の側面50Aに貼り付ける場合は、アンテナ部131と132の上端の位置が、容器50の上端と下端の中央付近に位置するようにすることが好ましい。
これは、容器50に液体を注ぐ場合には、液面は上端と下端の間のどこかであって、上端と下端の間の中央付近に来ることが想定されるからであり、そのような量の液体が容器50に注がれる際に、読み取りに必要な消費電力を低減するためである。
なお、図10に一点鎖線で示す特性は、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に得られる最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性であり、極大値が得られる際の液面の高さは約33mmであり、アンテナ部132の上端の高さ(35mm)よりも少し低い。
これは、アンテナ部132がICチップ140と共振する際に、アンテナ部133の一部分がゲイン用のアンテナとして通信を行うことにより、最小限度の出力Pminの極大値を与える液面の高さが、アンテナ部132の上端の高さとずれたことによるものと考えられる。このアンテナ部133の一部分とは、アンテナ部133の中間部130Fから角部130C及び130Bを経て中間部130Eに至る部分である。
RFIDタグ100をリーダライタ60で読み取る際には、RFIDタグ100とリーダライタ60との間で読み取り信号等の電波が伝送されることになる。
例えば、病院のように電波の出力を制限している環境下では、リーダライタ60の出力が制限される場合がある。このようにリーダライタ60の出力が制限されるような環境下では、読み取りに必要な消費電力を低減した実施の形態のRFIDタグ100は、非常に有益である。
従って、実施の形態のRFIDタグ100は、例えば、電波の出力をあまり上げることができないような環境下で用いることに適している。
なお、以上では、第3アンテナの一例としてのアンテナ部133が、第1アンテナの一例としてのアンテナ部131の端子131A、131Bを共有する形態について説明した。しかしながら、第3アンテナは、第2アンテナの一例としてのアンテナ部132の端子132A、132Bを共有するように接続されていてもよい。
次に、図11を用いて、実施の形態のRFIDタグ100のバリエーション(変形例)について説明する。
図11は、実施の形態の変形例のRFIDタグ101、102、103を示す図である。なお、図11では、図5と同様にXYZ座標系を定義する。また、RFIDタグ101、102、103は、Y軸正方向を容器50(図9参照)の高さ方向における上向きにして容器50の側面50Aに貼り付けられる。
図11(A)に示すRFIDタグ101は、図5に示すRFIDタグ100のアンテナ130の中間部130Fと角部130Dとの間の部分を変形したものである。
図11(A)に示すRFIDタグ101では、角部130Dの位置が図5に示す角部130DよりもY軸負方向側にずれており、角部130Dと中間部130Fとの間が中間部130Kで折れ曲がっている。また、角部130I及び130Jの間の部分が図5に示す角部130I及び130Jの間の部分よりもY軸正方向側に延出しており、中間部130Kと角部130Dとの間の部分よりも、Y軸正方向側に位置している。
すなわち、図11(A)に示すRFIDタグ101では、アンテナ部131の上端(角部130Dと中間部130Kとの間の部分)よりも、アンテナ部132の上端(角部130Iと130Jとの間の部分)の方が、容器50の高さ方向に対応するY軸方向において、Y軸正方向側(高さ方向における高い側)に位置している。
このため、図11(A)に示すRFIDタグ101では、アンテナ部131が第2アンテナの一例であり、アンテナ部132が第1アンテナの一例である。
このように、アンテナ部131と132の上端の高さは互いに異なるため、図6に示すRFIDタグ100と同様に、アンテナ部131と132は、最小限度の出力Pminの極大値が現れる液面の高さが異なる。
従って、図11(A)に示すRFIDタグ101は、図6に示すRFIDタグ100と同様に、読み取りに必要な消費電力を低減することができる。
また、図11(B)に示すRFIDタグ102は、図5に示すRFIDタグ100の形状を、X軸方向に反転(鏡像反転)させた形状を有する。すなわち、X軸方向を左右の方向とすると、図11(B)に示すRFIDタグ102は、図5に示すRFIDタグ100と左右対称の形状を有する。
このようなRFIDタグ102においても、図5に示すRFIDタグ100と同様に、第1アンテナの一例であるアンテナ部131の上端は、第2アンテナの一例であるアンテナ部132の上端よりも容器50(図9参照)の高さ方向において高い位置に存在する。
このため、図11(B)に示すRFIDタグ102は、図5に示すRFIDタグ100と同様に、図10に示すような最小限度の出力Pminを示し、読み取りに必要な消費電力を低減することができる。
図11(C)に示すRFIDタグ103は、図5に示すRFIDタグ100を時計回りに90度回転させ、図5に示すアンテナ部131の中間部130Gと130Lとの間の部分を、図11(C)においてY軸方向にずらしたものである。
図11(C)に示すRFIDタグ103では、アンテナ130に中間部130Lが新たに設けられている。中間部130Lは中間部130GよりもY軸正方向側に位置している。また、これに伴い、中間部130Fの位置が変更されている。中間部130Fは、中間部130LとY軸方向における位置が等しい。
このため、アンテナ部131の上端(中間部130Fと130Lの間の部分)は、容器50の高さ方向に対応するY軸方向において、アンテナ部132の上端部(中間部130Eと130Gとの間の部分)よりも、Y軸正方向側(高さ方向における高い側)に位置している。
このようなRFIDタグ103においても、図5に示すRFIDタグ100と同様に、第1アンテナの一例であるアンテナ部131の上端は、第2アンテナの一例であるアンテナ部132の上端よりも容器50(図9参照)の高さ方向において高い位置に存在する。
このため、図11(C)に示すRFIDタグ103は、図5に示すRFIDタグ100と同様に、図10に示すような最小限度の出力Pminを示し、読み取りに必要な消費電力を低減することができる。
なお、以上では、RFIDタグ100を容器50の外側の側面に貼着する形態について説明したが、RFIDタグ100は、容器50の内側の側面に貼着してもよい。
また、以上では、容器50に液体として水を注ぐ形態について説明した。しかしながら、容器50に注がれる液体は水に限られるものではない。例えば、水とは誘電率の異なる液体を容器50に注いだ場合は、水を用いて測定した最小限度の出力Pminの液面の高さに対する特性(図4及び図10)は、液面の高さ方向にシフトする可能性がある。
このような場合には、アンテナ部131、132、133の実効長を適宜調節すること等により、最適な特性が得られるようにすればよい。
また、RFIDタグ100の無線通信に用いる周波数は、各国で定められている。例えば、UHF(Ultra High Frequency:極超短波)帯の場合、日本では、952MHz〜954MHz、又は2.45GHzが代表的である。また、米国では915MHz、欧州(EU)では868MHzが代表的な周波数として割り当てられている。
以上の実施の形態では、使用周波数が953MHzである場合において、アンテナ部131、132、133の実効長を設定した。このため、使用周波数が異なる場合は、アンテナ部131、132、133の実効長を適宜調整すればよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態のRFIDタグ、RFIDタグ付き容器、及びRFIDタグ用のアンテナ装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
液体が注がれる容器の上端と下端の間の側面に貼り付けられ、リーダライタによって識別信号が読み取られるRFIDタグであって、
第1上端部を有するループ状の第1アンテナと、
前記第1上端部よりも前記容器の高さ方向において低い位置に配設される第2上端部を有するループ状の第2アンテナと、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナに接続され、前記第1アンテナ又は前記第2アンテナのいずれか一方が前記リーダライタから受信する読み取り信号によって駆動され、前記識別信号を出力するICチップと
を含む、RFIDタグ。
(付記2)
前記第1アンテナで受信される前記読み取り信号で前記識別信号を読み取る場合に必要な前記読み取り信号の第1最小出力の前記容器に注がれる液体の液面の高さに対する第1特性と、前記第2アンテナで受信される前記読み取り信号で前記識別信号を読み取る場合に必要な前記読み取り信号の第2最小出力の前記容器に注がれる液体の液面の高さに対する第2特性とは異なり、前記第1特性の第1極大値は、前記第2特性の第2極大値よりも、前記液面が高い位置に存在する、付記1記載のRFIDタグ。
(付記3)
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナのインダクタンスは、前記ICチップとインピーダンス整合が取られる値に設定される、付記1又は2記載のRFIDタグ。
(付記4)
前記第1アンテナの前記第1上端部以外の第1線路と、前記第2アンテナの前記第2上端部以外の第2線路とは、共通部分を有する、付記1乃至3のいずれか一項記載のRFIDタグ。
(付記5)
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナよりも長く、かつ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの使用周波数における波長よりも短い実効長を有する第3アンテナをさらに含む、付記1乃至4のいずれか記載のRFIDタグ。
(付記6)
前記第3アンテナは、前記第1アンテナ又は前記第2アンテナと両端の端子を共有する、付記5に記載のRFIDタグ。
(付記7)
下端から上端までの間に液体が注がれる容器と、
前記容器の前記上端と前記下端の間の側面に貼り付けられ、リーダライタによって識別信号が読み取られるRFIDタグとを含み、
前記RFIDタグは、
第1上端部を有するループ状の第1アンテナと、
前記第1上端部よりも前記容器の高さ方向において低い位置に配設される第2上端部を有するループ状の第2アンテナと、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナに接続され、前記第1アンテナ又は前記第2アンテナのいずれか一方が前記リーダライタから受信する読み取り信号によって駆動され、前記識別信号を出力するICチップと
を有する、RFIDタグ付き容器。
(付記8)
液体が注がれる容器の上端と下端の間の側面に貼り付けられ、リーダライタによって識別信号が読み取られるRFIDタグ用のアンテナ装置であって、
第1上端部を有するループ状の第1アンテナと、
前記第1上端部よりも前記容器の高さ方向において低い位置に配設される第2上端部を有するループ状の第2アンテナと、
を含み、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、前記第1アンテナ又は前記第2アンテナのいずれか一方が前記リーダライタから受信する読み取り信号によって駆動され、前記識別信号を出力するICチップを接続する端子を有する、RFIDタグ用のアンテナ装置。