JP2014074593A - 電力ケーブルの劣化判定方法 - Google Patents

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Sachika Nishida
幸香 西田
Tomoaki Imai
友章 今井
Ryo Domoto
亮 堂本
Noriyuki Akiyama
則行 秋山
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Abstract

【課題】電力ケーブルの残存性能の判定を可能とする。
【解決手段】ゴム又はプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの劣化判定方法であって、劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら、電力ケーブルの絶縁材に流れる電流のうち損失電流を測定し、損失電流から得られる波形について、絶縁材の劣化による歪が生じているか否かを判断し、波形の歪の開始点の課電電圧を歪開始電圧として確定し、種々の劣化状態にある所定の電力ケーブルについて予め取得した歪開始電圧と残存性能との関係に基づいて、確定した歪開始電圧から劣化判定に係る電力ケーブルの残存性能を判定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、CVケーブル等の電力ケーブルの劣化判定方法に関する。
導電芯線と、その導電芯線の外周に被覆された架橋ポリエチレン製の絶縁材と、塩化ビニル製の被覆材(シース)と、を備える架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(Crosslinked polyethylene insulated PVC sheathed cable:CVケーブル)は、代表的な電力ケーブルの1つである。CVケーブル等のゴムやプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの主な劣化形態には、水トリー(Water Tree)劣化がある。
水トリー劣化は、主に外部から電力ケーブルの絶縁材中に浸入した水分と電力ケーブル内の電界との作用により、樹枝状の亀裂が絶縁材中に成長することで起きる。水トリー劣化は電力ケーブルの経年使用により増大し、電力ケーブルの絶縁性能を低下させて絶縁破壊に至る場合がある。これを未然に防ぐため、水トリー劣化の進行度合いを判定する劣化判定技術が、これまでに種々検討されてきた。
例えば、電力ケーブルへの課電電圧により、電力ケーブルの絶縁材には、漏れ電流等による損失電流が流れる。これまでの検討結果から、この損失電流中に含まれる高調波成分が、電力ケーブルに発生した水トリー劣化と強い相関を示すことがわかっている。
そこで、例えば特許文献1では、以下のような電力ケーブルの劣化判定方法が提案されている。交流電圧を電力ケーブル及び標準コンデンサに印加し、損失電流測定ブリッジで試験電圧より90°進み位相の容量性電流の平衡をとり、電力ケーブルの損失電流を抽出する。この損失電流中に含まれる高調波電流の大きさと高調波電流の基本波電流に対する位相とを求め、高調波電流の大きさ及び位相と閾値との比較を行う。これにより、電力ケーブルの劣化又は未劣化を判定する。
また、例えば特許文献2では、以下のような損失電流の高調波成分の解析による電力ケーブルの劣化判定方法が提案されている。電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら損失電流を測定し、損失電流から抽出される高調波成分の課電電圧に対する傾きを求める。この傾きに応じた第1の劣化指標データベース又は第2の劣化指標データベースに基づいて、電力ケーブルの劣化判定を行う。
特開2003−270286号公報 特開2012−042422号公報
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、主に「劣化又は未劣化」の判定のみを目的としており、電力ケーブルの残存性能を判定することは難しかった。また、特許文献2の方法によれば、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を用いた解析により損失電流から高調波成分を切り分けなければならず、解析に多大な労力と時間を要していた。また、特許文献2の方法においては、高調波成分が測定ごとにばらつくことがあり、判定精度を悪化させる場合があった。
本発明の目的は、電力ケーブルの残存性能を判定することができる電力ケーブルの劣化判定方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、係る判定を簡便に行うことができる電力ケーブルの劣化判定方法を提供することである。また、本発明の更に他の目的は、係る判定を精度よく行うことができる電力ケーブルの劣化判定方法を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、
ゴム又はプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの劣化判定方法であって、
劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら、電力ケーブルの絶縁材に流れる電流のうち損失電流を測定し、
前記損失電流から得られる波形について、前記絶縁材の劣化による歪が生じているか否かを判断し、前記波形の歪の開始点の課電電圧を歪開始電圧として確定し、
種々の劣化状態にある所定の電力ケーブルについて予め取得した歪開始電圧と残存性能との関係に基づいて、前記確定した歪開始電圧から前記劣化判定に係る電力ケーブルの残存性能を判定する
電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記損失電流から得られる波形の歪開始電圧を確定するときは、
前記課電電圧から得られる波形と前記損失電流から得られる波形とを合成して直交座標上に表示させたX−Y表示グラフを作成し、
前記X−Y表示グラフのリサージュ波形における最大膨らみ位置の膨らみと、前記X−Y表示グラフのリサージュ波形における原点の膨らみとの比較により前記損失電流から得られる波形に歪が生じているか否かを判断し、前記最大膨らみ位置における課電電圧の値を前記歪開始電圧とする
第1の態様に記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
前記損失電流から得られる波形の歪開始電圧を確定するときは、
前記課電電圧から得られる波形と前記損失電流から得られる波形とを合成して直交座標上に表示させたX−Y表示グラフを作成し、
前記X−Y表示グラフのリサージュ波形において、
前記X−Y表示グラフ上の直線y=xと直交する向きの膨らみを、その直交点の座標位置での膨らみとし、
前記膨らみが最大となる座標位置を前記リサージュ波形の最大膨らみ位置とし、
前記最大膨らみ位置の膨らみが、前記リサージュ波形の原点の膨らみに対して1.5倍以上であれば、前記損失電流から得られる波形に歪が生じていると判断し、前記最大膨らみ位置における課電電圧の値を前記歪開始電圧とする
第1又は第2の態様に記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
前記残存性能は、残存破壊電界または前記電力ケーブルが備える絶縁材の残存厚の少なくともいずれかである
第1〜第3の態様のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
ゴム又はプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの劣化判定方法であって、
劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら、電力ケーブルの絶縁材に流れる電流のうち損失電流を複数回測定し、
前記複数回分の損失電流から、前記絶縁材の劣化により生じる高調波成分をそれぞれ抽出し、
前記複数回分の高調波成分から特定される最大値と最小値との比較値を求め、
種々の劣化状態にある所定の電力ケーブルについて予め取得した比較値と残存性能との関係に基づいて、前記求めた比較値から前記劣化判定に係る電力ケーブルの残存性能を判定する
電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
前記比較値は、
前記高調波成分の最大値と最小値との比、前記高調波成分の最大値と最小値との差、前記高調波成分の最大値もしくは最小値の割合、または、前記比、前記差もしくは前記割合の積分値、の少なくともいずれかである
第5の態様に記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
前記残存性能は、残存破壊電界または前記電力ケーブルが備える絶縁材の残存厚の少なくともいずれかである
第5又は第6の態様に記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第8の態様によれば、
前記損失電流を測定するときは、
前記課電電圧の昇圧および降圧を少なくとも1回行って、昇圧時および降圧時にそれぞれ前記損失電流の測定を行う
第5〜第7の態様のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第9の態様によれば、
前記損失電流を測定するときは、
前記課電電圧には商用電源の周波数とは異なる周波数の交流電圧を用いる
第1〜第8の態様のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明によれば、電力ケーブルの残存性能を判定することができる電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。また、係る判定を簡便に、或いは精度よく行うことができる電力ケーブルの劣化判定方法が提供される。
本発明の第1実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法に用いる損失電流測定装置の回路図である。 本発明の第1実施形態に係るCVケーブルを例示する模式図である。 本発明の第1実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法をステップごとに示すフロー図である。 上段が本発明の第1実施形態に係る課電電圧波形−損失電流波形のグラフであって、下段が上段のグラフのX−Y表示グラフであって、(a)は重度の水トリー劣化が生じた電力ケーブルのグラフであり、(b)は軽度の水トリー劣化が生じた電力ケーブルのグラフである。 本発明の第1実施形態に係るリサージュ波形から、損失電流波形の歪開始電圧を確定する手順を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、歪開始電圧と残存破壊電界との関係を示すグラフである。 上段が課電電圧波形−損失電流波形のグラフであって、下段が上段のグラフのX−Y表示グラフであって、(a)は非商用周波数を用いて測定したグラフであり、(b)は商用周波数を用いて測定したグラフである。 本発明の第2実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法をステップごとに示すフロー図である。 本発明の第2実施形態に係る損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性を示すグラフであって、(a)は重度の水トリー劣化が生じた電力ケーブルのグラフであり、(b)は軽度の水トリー劣化が生じた電力ケーブルのグラフである。 本発明の第2実施形態に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、(a)は最小値に対する最大値の比と残存破壊電界との関係を示すグラフであり、(b)は最大値および最小値の差と残存破壊電界との関係を示すグラフである。 商用周波数および非商用周波数をそれぞれ用いて測定した損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性を示すグラフである。 本発明の第2実施形態の変形例1に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、(a)は最小値に対する最大値の比の積分値と残存破壊電界との関係を示すグラフであり、(b)は最大値および最小値の差の積分値と残存破壊電界との関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態の変形例2に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、最大値および最小値の差の積分値と残存破壊電界との関係を示すグラフである。
<本発明の第1実施形態>
上述のように、例えば、電力ケーブルへの課電電圧により、電力ケーブルの絶縁材に漏れ電流等による損失電流が流れる。このような損失電流は、電力ケーブルの絶縁材の欠陥や劣化等に起因する。なかでも、損失電流に含まれる高調波成分は、絶縁材中に発生した水トリー劣化と強い相関を示すことが知られている。
本発明の第1実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法では、劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら損失電流を測定し、課電電圧と損失電流とから得られるリサージュ波形を定量的に評価することで、損失電流から高調波成分を切り分けることなく、劣化判定を行う。
(1)損失電流測定装置
まずは、本実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法に用いる損失電流測定装置について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法に用いる損失電流測定装置1の回路図である。
図1に示すように、損失電流測定装置1はブリッジ回路10を備える。ブリッジ回路10は、可変抵抗R3および測定対象となる電力ケーブル50が直接接続された回路部分と、抵抗R4およびコンデンサCsが直接接続された回路部分とが並列接続されて構成される回路である。コンデンサCsには、例えば標準コンデンサが用いられる。
ブリッジ回路10には、周波数可変トランス20が接続されている。周波数可変トランス20は、出力周波数を可変に構成された交流電源としての信号発信器21と、信号発信器21からの交流電圧(課電電圧)をブリッジ回路10に印加する高電圧トランス22とを備える。なお、信号発信器21の出力周波数として、例えば商用電源である50Hz,60Hz等の周波数とは異なる周波数を、測定を実施する地域に応じて選択することで、後述するように、より精度の高い測定が可能となる。
上記のようなブリッジ回路10において、損失電流は、可変抵抗R3および電力ケーブル50の間の中点aと、抵抗R4およびコンデンサCsの間の中点bとの間の電圧として測定される(以降、a−b間の電圧を損失電流信号Iともいう)。
つまり、電力ケーブル50の絶縁材を流れる充電電流は、容量性電流と損失電流とからなる。このうちの容量性電流と、コンデンサCsを流れる容量性電流との大きさをブリッジ回路10で合わせることにより、a−b間には損失電流分だけ電位差が生じる。よって、a−b間の電圧を損失電流に比例する値として検出することができる。差動アンプAmpは、このa−b間の電位の差分を比較し、一定幅で増幅して出力するよう構成される。
また、損失電流測定装置1は、平均化処理部31と、例えば演算機能を備えたオシロスコープ32とを備える。平均化処理部31には、周波数可変トランス20からの課電電圧信号Svと、差動アンプAmpからのa−b間の電圧(損失電流信号I)とが入力されるよう構成される。平均化処理部31は、損失電流信号Iを課電電圧信号Svに同期させて、平均化処理を行うよう構成される。また、オシロスコープ32は、損失電流信号Iから得られる波形等をグラフ化して表示するよう構成される。また、オシロスコープ32の演算機能により、係るグラフを解析するよう構成される。
なお、上述のように、a−b間の電圧は損失電流に比例する。つまり、損失電流は、a−b間の電圧と可変抵抗R3の抵抗値とからオーム則により導き出すことができる値である。よって、本実施形態では、オシロスコープ32におけるグラフ表示やデータ解析上、a−b間の電圧を損失電流として取り扱っている。
以上のように構成される損失電流測定装置1によれば、測定対象の電力ケーブル50を流れる容量性電流と、コンデンサCsに流れる容量性電流とのバランスをブリッジ回路10でとることにより、損失電流をa−b間の電圧として検出することができる。
このようにブリッジ回路10に組み込まれ、本実施形態の劣化判定方法の対象となる電力ケーブル50は、図2に例示するような架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(Crosslinked polyethylene insulated PVC sheathed cable:CVケーブル)150等である。CVケーブル150は、導電芯線151と、その導電芯線151の外周に被覆された架橋ポリエチレン製の絶縁材152と、を備える。絶縁材152には、例えば銅テープ等からなる図示しない外部遮蔽層が巻かれ、その外側は、塩化ビニル製の被覆材(シース)153で覆われている。
上述のように、CVケーブル150等のゴムやプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブル50には、水トリー(Water Tree)劣化が発生し得る。電力ケーブル50は、水の溜まった管路等の水のある環境下で使用されることがある。このような環境下では、電力ケーブル50の絶縁材中の空隙(ボイド)や異物に水が浸入してしまう場合がある。係る状態で、長期間通電を継続した結果、水分と電力ケーブル50中の電界との作用により、絶縁材中の空隙や異物を起点に樹枝状の亀裂が成長して水トリーとなる。水トリーは、内部に水分を含むために抵抗が低く、電力ケーブル50の絶縁材は絶縁劣化を経て絶縁破壊に至る。これが、電力ケーブル50の水トリー劣化である。本実施形態では、係る水トリー劣化の進行具合を以下の方法により判定する。
(2)電力ケーブルの劣化判定方法
本実施形態に係る電力ケーブル50の劣化判定方法について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る電力ケーブル50の劣化判定方法をステップごとに示すフロー図である。
(損失電流の測定ステップS10)
まずは、上述の損失電流測定装置1を用い、課電電圧を変更しながら損失電流の測定を行う。すなわち、周波数可変トランス20により、信号発信器21から一定周波数の交流電圧をブリッジ回路10に印加する。これにより、ブリッジ回路10に組み込まれる電力ケーブル50の絶縁材には充電電流が流れる。また、コンデンサCsには容量性電流が流れる。電力ケーブル50側の充電電流に含まれる容量性電流と、コンデンサCs側の容量性電流との大きさをブリッジ回路10で合わせることで、中点aと中点bとの間に電位差が生じる。a−b間の電位の差分(電圧)を差動アンプAmpで増幅して平均化処理部31へと出力する。平均化処理部31により、周波数可変トランス20からの課電電圧信号Svに同期させて、差動アンプAmpで増幅されたa−b間の電圧(損失電流信号I)の平均化処理を行う。
また、オシロスコープ32を用い、周波数可変トランス20からの課電電圧信号Svと、平均化処理を施された損失電流信号Iとから種々のグラフを作成して表示することもできる。具体的には、課電電圧信号Svから得られる課電電圧波形と損失電流信号Iから得られる損失電流波形とを重ね合わせた課電電圧波形−損失電流波形のグラフや、これらをそれぞれX軸、Y軸にとったX−Y表示グラフ等の表示が可能である。
図4は、上段が本実施形態に係る課電電圧波形−損失電流波形のグラフであって、下段が上段のグラフのX−Y表示グラフである。また、図4の(a)は重度の水トリー劣化が生じた電力ケーブル50のグラフであり、(b)は軽度の水トリー劣化が生じた電力ケーブル50のグラフである。なお、これらのグラフはいずれも、任意の電力ケーブル50の実測値を示したものであって、あくまでも一例にすぎない。グラフの波形やグラフ中に示される具体的な数値は、測定対象の電力ケーブル50等によって種々に変化し得る。
課電電圧波形−損失電流波形のグラフは、横軸に時間tをとり、縦軸に課電電圧vおよび損失電流iをとって、課電電圧波形と損失電流波形とを重ね合わせて描画したグラフである。X−Y表示グラフは、横軸(x軸)に課電電圧vをとり、縦軸(y軸)に損失電流iをとって、課電電圧波形と損失電流波形とを合成して直交座標(X−Y座標)上に表示させたリサージュ波形のグラフである。
図4(b)の上段に示すように、水トリー劣化がほとんど生じていない(軽劣化)電力ケーブル50の場合、課電電圧波形−損失電流波形のグラフ中、損失電流波形は課電電圧波形と略一致するよう重なり合っている。また、下段に示すように、X−Y表示グラフ中、課電電圧波形と損失電流波形とを合成したリサージュ波形は、原点(0,0)を通る直線y=xに略一致する。このように、軽劣化の電力ケーブル50であれば、損失電流波形は課電電圧波形と略一致し、リサージュ波形は略一直線状となる。
一方で、図4(a)の上段に示すように、重度の水トリー劣化が生じている(重劣化)電力ケーブル50の場合、課電電圧波形−損失電流波形のグラフ中、損失電流波形には歪が生じ、課電電圧波形と重ならない部分が認められる。また、下段に示すように、X−Y表示グラフ中、課電電圧波形と損失電流波形とを合成したリサージュ波形は、その中心軸は原点(0,0)を通る直線y=xに略一致するものの、両端が大きく膨らんだ8の字形状となっている。このように、重劣化の電力ケーブル50では、損失電流波形に歪が生じ、リサージュ波形は8の字形状となる。
重劣化の生じた電力ケーブル50には、抵抗が低く電流の流れやすい水分が水トリーとして多く存在する。このため、損失電流が増大するほか、損失電流基本波に対する第3高調波等の損失電流高調波の割合が高まってしまう。課電電圧波形と略一致する損失電流基本波に対し、損失電流高調波は損失電流基本波より微弱であるものの、損失電流基本波の整数倍(第3高調波であれば3倍)の周波数を有する。よって、損失電流高調波の割合が高まると、基本波と高調波とが合成された損失電流波形に歪を生じさせ、また、リサージュ波形が8の字形状となる。なかでも、第3高調波をはじめ、損失電流基本波の奇数倍の周波数を持つ高調波の影響は多大である。
このように、損失電流波形の歪の程度、あるいは、8の字状となったリサージュ波形の膨らみの程度によって、電力ケーブル50に生じた水トリー劣化の進行具合を知ることができる。以下のフローでは、リサージュ波形の膨らみの程度を定量化し、後述する劣化指標データベースや劣化判定基準に基づき劣化判定を行う。
(歪開始電圧の確定ステップS20)
上記により得られたX−Y表示グラフに基づき、例えばオシロスコープ32が備える演算機能により、リサージュ波形の膨らみの程度を定量化して、損失電流波形に歪が生じているか否かを判断する。また、歪が生じていれば、損失電流波形の歪の開始点の課電電圧、つまり、歪開始電圧を確定する。
以下に、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係るリサージュ波形から、損失電流波形の歪開始電圧を確定する手順を説明する図である。
まず、損失電流波形に歪が生じているか否かについては、リサージュ波形における最大膨らみ位置Bの膨らみと、原点(0,0)の膨らみとを比較することにより判断する。
ここで、図5や上述の図4に示すように、損失電流波形に歪が生じ、両端が膨らんだ8の字形状となったリサージュ波形であっても、その中心軸は、例えば原点(0,0)を通る直線y=xに略一致する。そこで、例えばX−Y表示グラフ上の直線y=xと直交する向きの膨らみを、その直交点Cの座標位置での膨らみとすることができる。例えば、原点での膨らみは、直交点Cの座標位置(0,0)での膨らみである。リサージュ波形においては、理論上、原点(0,0)に膨らみは生じないが、実測値においては原点(0,0)であっても課電電圧波形と損失電流波形とが完全には重ならない場合が多く、これを原点(0,0)の膨らみとすることができる。また、係る膨らみが最大となる座標位置をリサージュ波形の最大膨らみ位置Bとすることができる。
最大膨らみ位置Bの膨らみと原点(0,0)の膨らみとは、例えば最大膨らみ位置Bの膨らみの、原点(0,0)の膨らみに対する比をとることで比較できる。図3に示すように、係る比が、例えば1.5倍以上であれば(S21→YES)、損失電流波形に歪が生じていると判断し、このときの最大膨らみ位置Bにおける課電電圧の値を歪開始電圧として確定する(S22)。また、係る比が、例えば1.5倍未満であれば(S21→NO)、損失電流波形に歪が生じていないと判断する(S23)。
なお、本実施形態では、各座標位置での膨らみを直線y=xと直交する向きの膨らみとしたが、膨らみを規定する手法はこれに限られない。各座標位置での膨らみを、例えばX−Y表示グラフの横軸(x軸)方向や、あるいは縦軸(y軸)方向の膨らみなどとしてもよい。例えばリサージュ波形の中心軸が直線y=xから外れたグラフ等であっても、膨らみの方向など、膨らみを規定する手法を適宜選択することで、リサージュ波形の膨らみを比較的、安定して定量化することができる。損失電流波形の歪を判断する最大膨らみ位置の膨らみと原点の膨らみとの比較による上記所定値は、膨らみの規定手法に応じて適宜設定することができる。
以上のように、本実施形態では、例えばFFT解析等により損失電流から高調波成分を切り分けることなく、より簡便に、リサージュ波形を用いて高調波成分の大きさや影響を定量化することができる。
(残存性能の推定ステップS30)
続いて、予め取得した歪開始電圧と残存性能との関係に基づいて、上記のように求めた歪開始電圧から、電力ケーブル50の残存性能の判定を行う。電力ケーブル50の残存性能には、例えば残存破壊電界や、電力ケーブル50が備える絶縁材の残存厚等がある。指標となる歪開始電圧と残存性能との関係は、例えば後述の劣化指標データベースや劣化判定基準として予めまとめられている。
電力ケーブル50に絶縁破壊が起きる電界、つまり、破壊電界は、電力ケーブル50の長期間の使用により、初期破壊電界に対して次第に減少していく。このような破壊電界の減少を引き起こす主要要因の1つが水トリー劣化である。残存破壊電界は、電力ケーブル50の破壊電界がその時点でどれだけ残存しているかを示す値であり、電力ケーブル50の残存性能のひとつである。
電力ケーブル50の絶縁材の厚さは、やはり水トリー劣化等を主要要因として、絶縁材の全体厚、つまり、初期厚に対して次第に減少していく。絶縁材の残存厚は、電力ケーブル50の絶縁材の厚さがその時点でどれだけ残存しているかを示す値であり、同じく、電力ケーブル50の残存性能のひとつである。主に水トリー劣化のみを考慮すると、
「絶縁材の残存厚=絶縁材の全体厚−絶縁材の厚さ方向の水トリー長」
である。
残存性能の推定ステップS30では、上記のように求めた歪開始電圧に基づき、まずは、電力ケーブル50の残存性能の推定を行う。続いて、後述の残存性能の判定ステップS40にて、電力ケーブル50の残存性能の良否判定を行う。
そこでまずは、例えばオシロスコープ32が備える演算機能により、上記のように求めた歪開始電圧を、予め測定しておいた歪開始電圧と残存破壊電界との関係を示す劣化指標データベースにあてはめて、電力ケーブル50の残存性能のひとつ、例えば、残存破壊電界の推定値を得る。
図6に、劣化指標データベースを例示する。図6は、本実施形態に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、歪開始電圧と残存破壊電界との関係を示すグラフである。
図6に例示するように、残存破壊電界の推定に用いる劣化指標データベースは、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を歪開始電圧(kV)とするグラフとして表わされる。グラフ上の値は、軽劣化から重劣化まで、水トリー劣化の進行状態が様々に異なる電力ケーブル50について、予め、上記手法により損失電流波形の歪開始電圧を確定し、また、残存破壊電界を実測して、プロットしたものである。
但し、重劣化の生じていない電力ケーブル50では、上述の図4下段のX−Y表示グラフにおいて、リサージュ波形の最大膨らみ位置の膨らみが1.5倍未満となって損失電流波形に歪なしと判断され、歪開始電圧を確定することができない。そこで、このようなリサージュ波形を示した電力ケーブル50の残存破壊電界を、歪開始電圧が100kVの線上に全てプロットした。これらの電力ケーブル50の残存破壊電界は、いずれも20kV/mm以上であった。
このように得られた図6に示すように、電力ケーブル50の歪開始電圧が低下していくほど電力ケーブル50の残存破壊電界も減少しており、水トリー劣化が進行していく様子がうかがえる。
残存性能の推定ステップS30では、劣化判定に係る電力ケーブル50について上記の通り確定した歪開始電圧を、上記のように予め測定された図6のグラフにあてはめることで、この電力ケーブル50の残存破壊電界の推定値(推定破壊電界)を得る。
(残存性能の判定ステップS40)
続いて、上述の推定値に基づき、予め作成しておいた劣化判定基準を適用して、電力ケーブル50の残存性能の良否判定を行う。
本実施形態では、上記により求めた残存破壊電界の推定値から、残存性能の良否判定を行う。以下の表1に、このような残存性能の良否判定を行う劣化判定基準の一例を示す。
表1に例示するように、劣化判定基準は、例えば上述の歪開始電圧から導き出される残存破壊電界の数値範囲ごとに、電力ケーブル50の残存性能の判定が関係付けられた表形式となっている。表1に示す判定内容は、電力ケーブル50のこれまでの実績や経験値等から導き出したものである。
残存性能の判定ステップS40では、劣化判定に係る電力ケーブル50について得られた残存破壊電界の推定値を、劣化判定基準の残存破壊電界の数値範囲と照合することで、残存性能の良否判定を行うことができる。
以上により、電力ケーブル50の劣化判定が終了する。
ここで、具体例を挙げると、例えば評価試料1の電力ケーブル50では、図4の下段に示したようなX−Y表示グラフに基づき、損失電流波形の歪開始電圧が約50.0kVであると確定した。これを、図6の劣化指標データベースにあてはめると、残存破壊電界の推定値は約8.5kV/mmであった。この数値は、表1の劣化判定基準の「残存破壊電界10kV/mm未満」にあたる。表1によれば、係る数値範囲における残存性能の判定は「不良」となる。このことから、評価試料1の電力ケーブル50には、重度の水トリー劣化が生じていると判断でき、直ちに交換する等の対応を取ることができる。
他の具体例として、例えば評価試料2の電力ケーブル50では、図4の下段に示したようなX−Y表示グラフにおけるリサージュ波形の最大膨らみ位置の膨らみが1.5倍未満となった。つまり、図6の劣化指標データベースにあてはめると、残存破壊電界の推定値は20kV/mm以上である。表1の劣化判定基準の「残存破壊電界20kV/mm以上」の数値範囲における残存性能の判定は「良」である。このことから、評価試料2の電力ケーブル50には、水トリー劣化が無いか、あるいは軽劣化の状態であると判断でき、差し当たっての交換は不要とする等の対応を取ることができる。なお、係る判定後、評価試料2の残存破壊電界を実測したところ、約30.8kV/mmであり、判定の通り、残存性能は充分であることが確認された。
なお、信号発信器21の出力周波数として、非商用周波数を用いる効果について以下に述べる。
上述のように、本実施形態では、例えば非商用周波数、つまり、商用電源の周波数とは異なる周波数を信号発信器21の出力周波数として使用する。例えば西日本であれば、60Hz以外の周波数を用いる。これにより、図7に示すように、波形の乱れ等の少ないグラフが得られ、より精度の高い測定が可能となる。
図7は、上段が課電電圧波形−損失電流波形のグラフであって、下段が上段のグラフのX−Y表示グラフであって、(a)は非商用周波数を用いて測定したグラフであり、(b)は商用周波数を用いて測定したグラフである。なお、これらのグラフはいずれも、軽劣化の生じた任意の電力ケーブル50の実測値を示したものであって、あくまでも一例にすぎない。いずれのグラフも、同一の電力ケーブル50を測定した結果である。
上記のように、図7(a)は、非商用周波数である50Hzを用い、軽劣化の電力ケーブル50を測定したグラフである。図7(a)の上段のグラフ中、損失電流波形は課電電圧波形と略一致する。また、下段のグラフ中、リサージュ波形は原点(0,0)を通る直線y=x上にある。このように、グラフ上においても、図7(a)に係る電力ケーブル50は軽劣化であることがわかる。
一方で、図7(b)は、商用周波数である60Hzを用い、図7(a)と同じ電力ケーブル50を測定したグラフである。図7(b)の上段のグラフ中、損失電流波形には歪が生じ、課電電圧波形と重ならない部分が認められる。また、下段のグラフ中、リサージュ波形は8の字形状となっている。軽劣化の電力ケーブル50を測定したにも関わらず、このように、損失電流波形に歪が生じたり、リサージュ波形が8の字状となったりしてしまうのは、周辺環境によると考えられる。
つまり、図7(b)に係るグラフは、損失電流測定装置等の測定環境の周辺に存在し、商用電源で動作する機器から発生する損失電流高調波の影響を受けてしまっているのである。対象となる電力ケーブル50の測定時、これら周辺機器からの損失電流高調波を同時に測定してしまい、図7(b)のように、あたかも電力ケーブル50に重劣化が生じているかのようなグラフとなる。これでは、グラフに基づく判定の精度も損なわれてしまう。
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)すなわち、本実施形態では、劣化指標データベースや劣化判定基準を予め用意し、これらに基づき電力ケーブル50の残存性能を判定することができる。
例えば、上述の特許文献1の方法では、主に「劣化又は未劣化」の判定しか行うことができなかった。電力ケーブルの残存性能が不明だと、電力ケーブルの絶縁性能の低下予測が困難である。よって、電力ケーブルの交換必要時期を特定できず、絶縁破壊等の故障を確実に予防することが難しかった。
しかしながら、本実施形態によれば、予め測定しておいた劣化指標データベースや、予め作成した劣化判定基準を用い、電力ケーブル50の残存破壊電界や電力ケーブル50の絶縁材の残存厚等の残存性能を推定し判定することができる。よって、電力ケーブル50の交換時期を特定し、絶縁破壊等をより確実に予防することができる。
(b)また、本実施形態では、損失電流測定装置1による測定値から比較的容易に得られるX−Y表示グラフに基づき、電力ケーブル50の残存性能を簡便に判定することができる。
例えば、上述の特許文献2の方法では、FFT解析により損失電流から高調波成分を切り分けなければ電力ケーブルの残存性能の判定ができなかった。このため、データ解析に多大な労力と時間を費やしていた。
しかしながら、本実施形態によれば、損失電流から高調波成分を切り分けることなく、損失電流測定装置1で得られる測定値に近いデータを利用する。よって、FFT解析等の煩雑な解析作業を行うことなく、電力ケーブル50の残存性能を簡便に判定することができる。
(c)また、本実施形態では、例えば非商用周波数を用いて測定を行うので、周辺機器からの損失電流高調波の影響を抑制することができる。よって、より正確な測定値に基づくグラフを得ることができ、判定の精度を向上させ、誤判定の可能性を低減することができる。
(d)また、本実施形態では、課電電圧信号Svに同期させて損失電流信号Iの平均化処理を行う。これにより、例えば突発的なノイズ等による影響を低減することができる。
<本発明の第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る電力ケーブルの劣化判定方法では、損失電流に含まれる高調波成分の再現性に着目して劣化判定を行う点が、リサージュ波形を定量的に評価することで劣化判定を行う上述の実施形態と異なる。
電力ケーブルの劣化判定方法における判定精度を高めるべく種々の研究を行うなか、本発明者等は、重劣化の生じた電力ケーブルにおいては、複数回の測定を行うごとに、課電電圧に対する損失電流高調波の測定値がばらつくことに気がついた。一方で、軽劣化品や劣化の生じていない電力ケーブルにおいては、複数回の測定に対し、損失電流高調波の測定値は良好な再現性を示した。
そこで、本発明者等は、損失電流高調波の測定値の再現性の良否を利用して電力ケーブルの劣化判定を行えないかと考え、鋭意研究を行った。その結果、所定の手順で定量化された再現性の良否と、電力ケーブルの残存破壊電界や絶縁材の残存厚に所定の相関を見いだすに至った。
以下の記載は、発明者等が見いだしたこれらの知見に基づくものである。
(1)電力ケーブルの劣化判定方法
まずは、本実施形態に係る電力ケーブル50の劣化判定方法について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る電力ケーブル50の劣化判定方法をステップごとに示すフロー図である。
本実施形態においても、図2に示すCVケーブル150等の電力ケーブル50が劣化判定の対象となる。また、図1に示す損失電流測定装置1と同じ装置を用いて劣化判定に係る測定を行う。なお、本実施形態において、損失電流測定装置1が備えるオシロスコープ32の演算機能には、例えば損失電流から第3高調波を抽出する高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を用いた演算機能が含まれる。
(損失電流の測定ステップS60)
図8に示すように、まずは、損失電流測定装置1を用い、課電電圧を変更しながら損失電流の測定を複数回行う(S61)。このとき、1回ごとの測定方法は上述の実施形態と同様である。すなわち、所定の交流電圧をブリッジ回路10に印加し、検出されたa−b間の電位差を差動アンプAmpで増幅して平均化処理部31へと出力する。平均化処理部31により、課電電圧信号Svに同期させて、損失電流信号Iの平均化処理を行う。
本実施形態では、ここで、オシロスコープ32が備えるFFT解析機能により、損失電流信号Iから高調波成分、例えば第3高調波を抽出する。つまり、損失電流信号IをFFT解析にかけることで、損失電流信号Iに含まれる所定の周波数成分を分離し、基本波が有する基本周波数(課電電圧の周波数と同一)に対する第3高調波等の周波数の大きさなどを測定する。これにより、周波数可変トランス20からの課電電圧信号Svと、損失電流信号Iから抽出された第3高調波とから、損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性が求まる。これを所定回数繰返し行い、複数回分の測定値を得る(S62)。
また、オシロスコープ32によれば、上記により求めた損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性をグラフ化して表示することもできる。
図9は、本実施形態に係る損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性を示すグラフであって、(a)は重度の水トリー劣化が生じた電力ケーブル50のグラフであり、(b)は軽度の水トリー劣化が生じた電力ケーブル50のグラフである。なお、これらのグラフはいずれも、任意の電力ケーブル50の実測値を示したものであって、あくまでも一例にすぎない。グラフの波形やグラフ中に示される具体的な数値は、測定対象の電力ケーブル50等によって種々に変化し得る。
図9に例示するように、第3高調波の課電電圧に対する依存性は、例えば横軸に課電電圧(kV)をとり、縦軸に損失電流の第3高調波(A)をとって、複数回分の第3高調波の測定値を重ね合わせて描画したグラフとして表わすことができる。
図9(b)に示すように、軽劣化の電力ケーブル50の複数回分の測定に係る損失電流の第3高調波は、課電電圧に対して互いに似通った傾向を示し、数値範囲も近似している。したがって、例えば所定の課電電圧における複数回分の測定値の最大値と最小値との差は極めて小さく、また、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)は1.0に極めて近くなる。このように、軽劣化の電力ケーブル50であれば、複数回の測定に係る第3高調波について、再現性の良い測定値が得られる。
一方で、図9(a)に示すように、重劣化の電力ケーブル50の複数回分の測定に係る損失電流の第3高調波は、課電電圧に対して互いの傾向が異なっており、数値範囲もばらついている。例えば所定の課電電圧における複数回分の測定値の最大値と最小値との差は大きく、また、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)は1.0を大きく超える数値となる。このように、重劣化の電力ケーブル50では、複数回の測定に係る第3高調波について、再現性の悪い測定値となる。
このように、水トリー劣化によって損失電流高調波の測定値の再現性が影響を受ける点について、本発明者等は、測定に係る電力ケーブル50への課電により、水トリー劣化が生じた電力ケーブル50中の欠陥部分に状態変化が起きるためと考えている。
重劣化の生じた電力ケーブル50には、内部に水分を含む水トリーが多く存在する。このような電力ケーブル50に課電すると、水トリーの生じた部分にも、容量性電流と損失電流とを含む充電電流が流れて発熱する。このときの熱により、水トリー中に含まれる水分に、水圧変化や、気化等の状態変化が起こり、水トリー内部に空隙が発生する等、水トリーの状態に変化が生じている可能性がある。このように水トリーの状態が変化すれば、水トリー内部を流れる上記各電流も変化し、そのときどきで測定される損失電流高調波も変化してしまう。よって、複数回の測定ごとに測定値が異なり、再現性の悪い結果になると考えられる。一方、軽劣化の電力ケーブル50には水トリーがほとんど存在しないため、課電による状態変化も起こり難く、再現性の良い結果になると考えられる。
このように、損失電流高調波の再現性の良否の程度によって、電力ケーブル50に生じた水トリー劣化の進行具合を知ることができる。以下のフローでは、係る再現性の良否の程度を定量化し、後述する劣化指標データベースや劣化判定基準に基づき劣化判定を行う。
(最大値・最小値の比較ステップS70)
上記により得られた損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性に係る複数回分の測定値から、例えばオシロスコープ32が備える演算機能により、所定の課電電圧における最大値および最小値を特定し、これらの最大値と最小値との比較値を得る。最大値および最小値を特定する課電電圧には、任意の電圧値を選択することができる。
また、上記比較値は、例えば最大値と最小値との比や、最大値と最小値との差である。最大値と最小値との比は、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)、或いは、最大値に対する最小値の比(最小値/最大値)のいずれであってもよい。比率を取るか差分を取るか等、比較値をどのような値とするかは、電力ケーブル50の径や、測定長、絶縁材の初期厚、或いは、電力ケーブル50の使用環境や測定環境等により、適宜選択することができる。比と差との両方を比較値として定めてもよい。
なお、上述のように、課電電圧信号Svに同期させて損失電流信号Iの平均化処理を行っているので、例えば突発的なノイズ等を弱めることができる。よって、最大値および最小値の特定にあたっては、このようなノイズを最大値あるいは最小値と誤認してしまう可能性が低減される。
(残存性能の推定ステップS80)
本実施形態においては、まずは、残存性能の推定ステップS80にて、最大値と最小値との比較値に基づき、電力ケーブル50の残存性能を推定する。すなわち、例えばオシロスコープ32が備える演算機能により、上記のように求めた最大値と最小値との比較値を、予め測定しておいた比較値と例えば残存破壊電界との関係を示す劣化指標データベースにあてはめて、劣化判定に係る電力ケーブル50の残存破壊電界の推定値を得る。図10に、劣化指標データベースを例示する。
図10は、本実施形態に係る劣化判定方法に用いる劣化指標データベースの一例であって、(a)は最小値に対する最大値の比と残存破壊電界との関係を示すグラフであり、(b)は最大値および最小値の差と残存破壊電界との関係を示すグラフである。
図10(a)に例示するように、上記比較値を、最小値に対する最大値の比とした場合の劣化指標データベースは、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を第3高調波の比(最大値/最小値)とするグラフとして表わされる。グラフ上の値は、水トリー劣化の進行状態が様々に異なる電力ケーブル50について、予め、上記手法により第3高調波の比較値を求め、また、残存破壊電界を実測してプロットしたものである。第3高調波の比(最大値/最小値)が1.0より大きくなっていくほど電力ケーブル50の残存破壊電界も減少しており、水トリー劣化が進行していく様子がうかがえる。
また、図10(b)に例示するように、上記比較値を、最大値と最小値との差とした場合の劣化指標データベースは、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を第3高調波の差(最大値−最小値)とするグラフとして表わされる。グラフ上の値は、上記と同様、種々の電力ケーブル50について、予め求めた第3高調波の比較値と、残存破壊電界の実測値とを対応させてプロットしたものである。第3高調波の差(最大値−最小値)が大きくなっていくほど電力ケーブル50の残存破壊電界も減少しており、水トリー劣化が進行していく様子がうかがえる。
残存性能の推定ステップS80では、劣化判定に係る電力ケーブル50について上記の通り求めた比較値を、上記のように予め測定された図10(a),(b)いずれかの対応するグラフにあてはめることで、この電力ケーブル50の残存破壊電界の推定値(推定破壊電界)を得る。
(残存性能の判定ステップS90)
続いて、上記により求めた残存破壊電界の推定値を、予め作成しておいた劣化判定基準にあてはめて、残存性能の判定を行う。
劣化判定基準としては、例えば上述の実施形態で示した表1を用いることができる。係る表1に基づき、上述の実施形態と同様の手法および手順で、劣化判定に係る電力ケーブル50について残存性能の判定を行うことができる。
以上により、電力ケーブル50の劣化判定が終了する。
ここで、具体例を挙げると、例えば評価試料3の電力ケーブル50は、損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性が、上述の図9(a)に示す結果となった。すなわち、課電電圧が20kVのとき、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)は5.7であった。これを、図10(a)の劣化指標データベースにあてはめると、残存破壊電界の推定値は12.3kV/mmであった。この数値は、表1の劣化判定基準の「残存破壊電界10kV/mm以上20kV/mm未満」にあたる。表1によれば、係る数値範囲における残存性能の判定は「要注意」となる。このことから、評価試料3の電力ケーブル50には、重度の水トリー劣化が生じていると判断でき、優先的に交換スケジュールに組み入れる等の対応を取ることができる。
他の具体例として、例えば評価試料4の電力ケーブル50は、損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性が、上述の図9(b)に示す結果となった。すなわち、課電電圧が20kVのとき、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)は1.5であった。これを、図10(a)の劣化指標データベースにあてはめると、残存破壊電界の推定値は26.2kV/mmであった。この数値は、表1の劣化判定基準の「残存破壊電界20kV/mm以上」にあたる。表1によれば、係る数値範囲における残存性能の判定は「良」となる。このことから、評価試料2の電力ケーブル50は軽劣化の状態であると判断でき、差し当たっての交換は不要とする等の対応を取ることができる。
なお、本実施形態においても、信号発信器21の出力周波数として非商用周波数を用いることで、所定の効果が得られる。
図11は、上述の重劣化の生じた評価試料3の電力ケーブル50について、商用周波数である60Hzと、非商用周波数である50Hzとをそれぞれ用い、損失電流の第3高調波の課電電圧に対する依存性を複数回測定したグラフである。
図11に示すように、非商用周波数で測定した第3高調波(グラフ中の○印)では、上述の通り、複数回分の測定値の最大値と最小値との差は大きく、例えば課電電圧20kVにおいて、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)が5.7となっている。このように、グラフ上においても、評価試料3の電力ケーブル50に重劣化が生じていることがわかる。
一方で、商用周波数で測定した第3高調波(グラフ中の×印)では、複数回分の測定値の最大値と最小値との差は小さく、例えば課電電圧20kVにおいて、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)が2.7しかない。重劣化の生じている評価試料3の電力ケーブル50を測定したにも関わらず、あたかも第3高調波の測定値の再現性が良好であり、係る電力ケーブル50に重劣化が生じていないかのようなグラフとなってしまった。
上述のように、損失電流測定装置等の測定環境の周辺に商用電源で動作する機器が存在すると、劣化判定に係る電力ケーブル50の測定時、係る機器から発生する損失電流高調波を測定してしまう場合がある。このような損失電流高調波は、電力ケーブル50から検出される第3高調波よりも強い場合があり、また、商用電源電圧は非常に安定しているため、安定的に測定されてしまう。よって、電力ケーブル50への課電電圧を多少変化させても、電力ケーブル50からの第3高調波の微小な最大値、最小値の差が検出されず、あたかも再現性の良い測定値が得られたかのように誤認しかねない。
本実施形態においては、例えば非商用周波数により電力ケーブル50の測定を行うので、周辺機器からの損失電流高調波の影響を低減し、より精度の高い劣化判定を行うことができる。
(2)本実施形態の変形例1
続いて、本実施形態の変形例1について以下に説明する。本変形例は、最大値と最小値との比較値として積分値を用いる点が、上述の第2実施形態とは異なる。
すなわち、本変形例においては、課電電圧の所定範囲内において、最大値と最小値との比(最大値/最小値、あるいは、最小値/最大値)や最大値と最小値との差の積分値を算出し、比較値とする。
この場合、残存破壊電界の推定に用いる劣化指標データベースは、例えば図12に例示するグラフとすることができる。
図12(a)は、比較値を最小値に対する最大値の比の積分値とした場合に用いる劣化指標データベースの一例である。図12(a)に示すように、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を第3高調波の比(最大値/最小値)の積分値とするグラフとして、予め測定した数値をプロットしたものである。図12(a)において、第3高調波の比の積分値は、課電電圧が10kV以上40kV以下の範囲内で求めた。
図12(b)は、比較値を最大値と最小値との差の積分値とした場合の劣化指標データベースの一例である。図12(b)に示すように、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を第3高調波の差(最大値−最小値)の積分値とするグラフとして、予め測定した数値をプロットしたものである。図12(b)において、第3高調波の差の積分値は、課電電圧が10kV以上40kV以下の範囲内で求めた。
本変形例では、劣化判定に係る電力ケーブル50について求めた積分値を、上記のように予め測定された図12(a),(b)いずれかの対応するグラフにあてはめることで、この電力ケーブル50の残存破壊電界の推定値(推定破壊電界)を得る。
その後は、上述と同様、例えば表1を用いて残存性能の判定を行うことで、劣化判定を行うことができる。
(3)本実施形態の変形例2
次に、本実施形態の変形例2について以下に説明する。本変形例は、劣化判定に係る電力ケーブル50の外部遮蔽層の劣化の有無をも考慮に入れる点が、上述の第2実施形態とは異なる。
上述の図2に例示するように、劣化判定に係る電力ケーブル50は、導電芯線151、絶縁材152、被覆材153等からなるCVケーブル150等である。また、上述のように、絶縁材152と被覆材153との間には、例えば銅テープ等からなる外部遮蔽層が巻かれている。係る外部遮蔽層には、CVケーブル150等の電力ケーブル50の長期間の使用により錆などが発生し、外部遮蔽層が劣化してしまう場合がある。
本発明者等は、このような外部遮蔽層の劣化の状態によって、電力ケーブル50から検出される第3高調波等の損失電流高調波が影響を受ける場合があることを見いだした。さらに、本発明者等によれば、第3高調波等への影響は、例えば上述のような第3高調波の課電電圧に対する依存性を示すグラフの傾きから判別することができる。
具体的には、電力ケーブル50の外部遮蔽層があまり劣化していないときは、上記グラフにおける第3高調波は課電電圧を高めていくと急激に大きくなり、グラフの傾きは比較的大きくなる。また、電力ケーブル50の外部遮蔽層の劣化が激しいときは、上記グラフにおける第3高調波は課電電圧を高めていっても緩やかにしか上昇せず、グラフの傾きは比較的なだらかになる。
そこで、本変形例においては、上述の最大値・最小値の比較ステップS70に加えて、グラフの傾き比較ステップを行う。つまり、まずは、上記グラフにおける所定の傾きθを任意設定値と定める。次に、劣化判定に係る電力ケーブル50のグラフの傾きを算出する。続いて、算出したグラフの傾きが、定められた任意設定値より大きいか小さいかを比較する。
このとき、グラフの傾き比較に用いる任意設定値は、例えば1.0×100.2以上1.0×102.0以下とすることができる。これらは、外部遮蔽層の劣化が激しい電力ケーブル50のグラフの傾きが、例えば1.0×10以上1.0×100.2以下であり、外部遮蔽層の劣化が少ない電力ケーブル50のグラフの傾きが、例えば1.0×101.4以上1.0×102.0以下であることに基づき、定めた数値である。
なお、最大値・最小値の比較ステップS70、グラフの傾き比較ステップは、どちらを先に行ってもよく、或いは並行して行ってもよい。
本変形例において、残存破壊電界の推定に用いる劣化指標データベースは、例えば図13に例示するグラフとすることができる。
図13に例示するグラフは、上記比較値を最大値と最小値との差(最大値−最小値)の積分値とした場合に用いる劣化指標データベースの一例であって、例えば横軸を残存破壊電界(kV/mm)とし、縦軸を第3高調波の差(最大値−最小値)の積分値とするグラフとして表わされる。グラフ上の値は、水トリー劣化の進行状態が様々に異なる電力ケーブル50について、予め、上記手法により第3高調波の比較値を求め、また、残存破壊電界を実測してプロットしたものである。グラフ中、○印は外部遮蔽層の劣化が激しい電力ケーブル50の測定値であって、例えばこれを第1劣化指標データベースとする。×印は外部遮蔽層の劣化が少ない電力ケーブル50の測定値であって、例えばこれを第2劣化指標データベースとする。図13において、第3高調波の差の積分値は、課電電圧が10kV以上40kV以下の範囲内で求めた。
本変形例では、劣化判定に係る電力ケーブル50について得られた第3高調波の傾きから、まずは、第1劣化指標データベース(○印)、第2劣化指標データベース(×印)のどちらにあてはめるかを選択する。つまり、測定した第3高調波の傾きが、例えば上記の任意設定値以下であれば、第1劣化指標データベースを選択する。また、測定した第3高調波の傾きが、例えば上記の任意設定値を超えていれば、第2劣化指標データベースを選択する。次に、選択した劣化指標データベースに対して最大値と最小値との比較値をあてはめて、残存破壊電界の推定値を得る。
その後は、上述と同様、例えば表1を用いて残存性能の判定を行うことで、劣化判定を行うことができる。
(4)本実施形態のその他の変形例
本実施形態のその他の変形例として、以下にいくつか例示する。
例えば、上述の実施形態や変形例においては、高調波成分として第3高調波を抽出したが、劣化判定に用いる高調波成分は、第5高調波、または第7高調波等、これ以外の高調波であってもよい。あるいは、複数の高調波成分を抽出して用いることもできる。
また、上述の実施形態や変形例においては、最大値と最小値との比較値を最大値と最小値との比や差、あるいはこれらの積分値としたが、比較値には、最大値と最小値との合計値に対するこれら最大値や最小値の割合、または、これらの積分値等を用いることもできる。また、上記に列挙した数値の複数を比較値として用いてもよい。
また、上述の実施形態や変形例においては、交流電圧を印加して損失電流の測定を複数回行い、複数回分の測定値から第3高調波の最大値と最小値とを得ることとしたが、係る測定回数は任意である。また、課電電圧の昇圧および降圧を少なくとも1回行えば、昇圧時および降圧時にそれぞれ測定を行い、係る測定値から最大値と最小値とを得ることができる。これにより、測定の効率化を図ることができる。
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態及びその変形例によっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
(a)また、本実施形態及びその変形例では、損失電流に含まれる高調波成分の再現性に着目して劣化判定を行う。これにより、劣化判定を精度よく行うことができる。
例えば、上述の特許文献2の方法では、高調波成分が測定ごとにばらついてしまうことがあった。高調波成分の測定値がばらつくと、残存性能についても正確な推定値を得ることが困難となり、判定精度が悪化するおそれがある。
しかしながら、本実施形態等によれば、損失電流に含まれる高調波成分の再現性に着目することで、損失電流の測定時に生じ得る測定値の変動をむしろ利用することができ、判定精度を向上させることができる。
(b)また、本実施形態等では、損失電流に含まれる高調波成分のうち、特に第3高調波を抽出して劣化判定に用いている。このように、高調波成分の中でも比較的強度が高く、損失電流に対する影響力の大きい第3高調波を抽出することで、より正確な測定および判定が可能となる。
(c)また、本実施形態等では、課電電圧の昇圧および降圧を少なくとも1回行って、昇圧時および降圧時にそれぞれ損失電流の測定を行う。これにより、測定の効率化を図ることができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、電力ケーブル50の一例としてCVケーブル150を挙げたが、劣化判定に係るケーブルはこれに限られない。本発明に係る劣化判定方法は、ゴムやプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルに広く適用可能である。また、図2に例示した1本の導電芯線を有する単芯ケーブルに限らず、3芯ケーブル等であってもよい。
また、上述の実施形態では、オシロスコープ32の演算機能により各種解析を行うこととしたが、オシロスコープ32とは独立したコンピュータ等により構成される演算手段により各種解析を行ってもよい。係る演算手段は、損失電流測定装置とは別個に独立していてもよい。
また、上述の実施形態では、残存破壊電界の推定値から残存性能の良否判定を行うこととしたが、係る手法に限定されない。例えば、絶縁材の残存厚の推定値から残存性能の良否判定を行うようにしてもよい。この場合に用い得る劣化判定基準の一例を、以下の表2に示す。
表2に示す絶縁材の残存厚の割合は、種々の劣化状態にある電力ケーブル50の実測値に基づくものである。つまり、種々の劣化状態にある電力ケーブル50について、上述の通り、水トリーが生じていない部分の絶縁材の厚さを残存厚として予め測定し求めた、絶縁材の初期の厚さ(元厚)に対する上記残存厚の割合である。
またこの場合、電力ケーブル50の歪開始電圧または比較値と、絶縁材の残存厚との関係を示す劣化指標データベースを用いることで、絶縁材の残存厚の推定値を残存性能として求めることができる。
また或いは、残存破壊電界の推定値と絶縁材の残存厚の推定値との両方を劣化指標データベースから求めてもよい。このとき、残存性能の判定には、残存破壊電界の推定値と絶縁材の残存厚の推定値との両方を用いることもできる。
1 損失電流測定装置
10 ブリッジ回路
20 周波数可変トランス
21 信号発信器
22 高電圧トランス
31 平均化処理部
32 オシロスコープ
50 電力ケーブル
150 CVケーブル
151 導電芯線
152 絶縁材
153 被覆材
Amp 差動アンプ
Cs コンデンサ
損失電流信号
R3 可変抵抗
R4 抵抗
Sv 課電電圧信号

Claims (9)

  1. ゴム又はプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの劣化判定方法であって、
    劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら、電力ケーブルの絶縁材に流れる電流のうち損失電流を測定し、
    前記損失電流から得られる波形について、前記絶縁材の劣化による歪が生じているか否かを判断し、前記波形の歪の開始点の課電電圧を歪開始電圧として確定し、
    種々の劣化状態にある所定の電力ケーブルについて予め取得した歪開始電圧と残存性能との関係に基づいて、前記確定した歪開始電圧から前記劣化判定に係る電力ケーブルの残存性能を判定する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化判定方法。
  2. 前記損失電流から得られる波形の歪開始電圧を確定するときは、
    前記課電電圧から得られる波形と前記損失電流から得られる波形とを合成して直交座標上に表示させたX−Y表示グラフを作成し、
    前記X−Y表示グラフのリサージュ波形における最大膨らみ位置の膨らみと、前記X−Y表示グラフのリサージュ波形における原点の膨らみとの比較により前記損失電流から得られる波形に歪が生じているか否かを判断し、前記最大膨らみ位置における課電電圧の値を前記歪開始電圧とする
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  3. 前記損失電流から得られる波形の歪開始電圧を確定するときは、
    前記課電電圧から得られる波形と前記損失電流から得られる波形とを合成して直交座標上に表示させたX−Y表示グラフを作成し、
    前記X−Y表示グラフのリサージュ波形において、
    前記X−Y表示グラフ上の直線y=xと直交する向きの膨らみを、その直交点の座標位置での膨らみとし、
    前記膨らみが最大となる座標位置を前記リサージュ波形の最大膨らみ位置とし、
    前記最大膨らみ位置の膨らみが、前記リサージュ波形の原点の膨らみに対して1.5倍以上であれば、前記損失電流から得られる波形に歪が生じていると判断し、前記最大膨らみ位置における課電電圧の値を前記歪開始電圧とする
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  4. 前記残存性能は、残存破壊電界または前記電力ケーブルが備える絶縁材の残存厚の少なくともいずれかである
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  5. ゴム又はプラスチックを絶縁材として用いた電力ケーブルの劣化判定方法であって、
    劣化判定に係る電力ケーブルへの課電電圧を変更しながら、電力ケーブルの絶縁材に流れる電流のうち損失電流を複数回測定し、
    前記複数回分の損失電流から、前記絶縁材の劣化により生じる高調波成分をそれぞれ抽出し、
    前記複数回分の高調波成分から特定される最大値と最小値との比較値を求め、
    種々の劣化状態にある所定の電力ケーブルについて予め取得した比較値と残存性能との関係に基づいて、前記求めた比較値から前記劣化判定に係る電力ケーブルの残存性能を判定する
    ことを特徴とする電力ケーブルの劣化判定方法。
  6. 前記比較値は、
    前記高調波成分の最大値と最小値との比、前記高調波成分の最大値と最小値との差、前記高調波成分の最大値もしくは最小値の割合、または、前記比、前記差もしくは前記割合の積分値、の少なくともいずれかである
    ことを特徴とする請求項5に記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  7. 前記残存性能は、残存破壊電界または前記電力ケーブルが備える絶縁材の残存厚の少なくともいずれかである
    ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  8. 前記損失電流を測定するときは、
    前記課電電圧の昇圧および降圧を少なくとも1回行って、昇圧時および降圧時にそれぞれ前記損失電流の測定を行う
    ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
  9. 前記損失電流を測定するときは、
    前記課電電圧には商用電源の周波数とは異なる周波数の交流電圧を用いる
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電力ケーブルの劣化判定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113671325A (zh) * 2021-08-18 2021-11-19 云南电网有限责任公司大理供电局 一种基于高频电场变化的终端局放监测方法及系统

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