JP2014071327A - 回折光学シートおよび表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回折構造体を含んだ回折光学シートの複屈折率の値および複屈折の面内バラツキを効果的に低減する。
【解決手段】回折光学シート10は、熱可塑性樹脂を用いて形成された回折構造体20を、少なくとも一方の面10aに、有する。回折光学シートの複屈折率の平均値Δnaveおよび回折光学シートの複屈折率の標準偏差σΔnが、次の条件(a)および(b)を満たす。
Δnave≦50×10−6 ・・・条件(a)
(σΔn/Δnave)≦/10 ・・・条件(b)
【選択図】図1

Description

本発明は、回折構造体を表面に形成された回折光学シートに関する。
発明の背景
今日、回折構造体が、回折光学シートの表面に形成されて、種々の分野及び種々の用途で、利用に供されている。このような回折光学シートは、基材シート上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型することによって、作製され得る。
しかしながら、電離放射線硬化型樹脂を用いた製造方法では、通常、パターニングを行うために、光の干渉を感光材料に記録する工程が実施される。この工程は暗室内で実施される必要が有り、さらに、防振台等の設備も必要となる。このため、この製造方法は賦型性の面で優れているが、製造コストが非常に高価となってしまう点において好ましくない。また、電離放射線硬化型樹脂を用いて作製された回折光学シートは、必然的に、電離放射線硬化型樹脂より形成された回折構造体を含む層とは別途に、基材を含むことになる。そして、回折光学シートの一部をなす基材は、製造条件の面や製造コストの面での制約から、回折構造体を含む層との間に好ましくない界面を形成してしまうこともある。
一方、特許文献1に開示されているように、射出成型により、回折構造体を作製することも検討されている。特許文献1に開示された製造方法によれば、回折構造体を含む単層の回折光学シートを作製することができる。
しかしながら、一般的に、射出成型で作製された回折構造体を含む回折光学シートでは、射出時の樹脂の流動に起因して、複屈折率が当該シートの面内でばらついてしまう。また、シートの厚みや使用される樹脂等によっては、複屈折率の値が大きくなってしまう。複屈折率が面内でばらつく或いは複屈折率が大きくなると、回折構造体を含む回折光学シートで光を所望の方向に安定して回折することができない。
その一方で、本発明者らは、以上のような点を考慮しながら鋭意研究を重ねた結果、回折構造体を含む回折光学シートについて、基材を不要としながら、複屈折率の値および複屈折の面内バラツキを低減することができた。すなわち、本発明は、回折構造体を含んだ回折光学シートの複屈折率の値および複屈折率の面内バラツキを効果的に低減することを目的とする。
特開2012−008309号公報
本発明による回折光学シートは、
熱可塑性樹脂を用いて形成された回折構造体を、少なくとも一方の面に、備え、
複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnが、次の条件(a)および(b)を満たす。
Δnave≦50×10−6 ・・・条件(a)
(σΔn/Δnave)≦0.10 ・・・条件(b)
本発明による回折光学シートにおいて、前記熱可塑性樹脂を用いて形成され且つ前記回折構造体を含む単層の回折光学シートであってもよい。
本発明による回折光学シートが、
前記熱可塑性樹脂を用いて形成され且つ前記回折構造体を含む第1の層と、
前記第1の層と積層され且つ熱可塑性樹脂を用いて形成された第2の層と、を含み、
前記第1の層と前記第2の層とが異なる材料を含むようにしてもよい。
本発明による回折光学シートにおいて、前記回折構造体を含む層の厚みは250μm以上となっていてもよい。
本発明による回折光学シートが、熱可塑性樹脂を用いて形成された第2の回折構造体を、他方の面に、さらに備えるようにしてもよい。
本発明による回折光学シートにおいて、前記回折光学シートは、樹脂で形成された型面を有する型を用いて押し出し成型法により作製された押し出し材であってもよい。
本発明による表示装置は、上述した本発明による回折光学シートのいずれかを含む。
本発明による表示装置が、前記回折光学シートを積層された液晶表示パネルを、さらに備えるようにしてもよい。
本発明によれば、回折構造体を含んだ回折光学シートの複屈折率の値および複屈折率の面内バラツキを効果的に低減することができる。
図1は、回折光学シートの一例を示す図である。 図2は、回折光学シートの他の例を示す図である。 図3は、回折光学シートのさらに他の例を示す図である。 図4は、回折光学シートのさらに別の例を示す模式図である。 図5は、回折光学シートに含まれるナノ構造の断面形状を模式的に示す図である。 図6は、複屈折率の測定箇所を説明するための図であって、測定対象となるサンプルを示す平面図である。 図7は、回折光学シートの製造方法の一例を説明するための図である。 図8は、回折光学シートの製造方法の他の例を説明するための図である。 図9は、回折構造体の一例を斜めから示す顕微鏡写真である。 図10は、図9の回折構造体を示す顕微鏡写真である。 図11は、図9の回折構造体を製造する際に用いた賦型シートを斜めから示す顕微鏡写真である。 図12は、図11の賦型シートを示す顕微鏡写真である。 図13は、図9の回折構造体の配光特性を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図9〜図12の写真を除き、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」はシートや板と呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「回折光学シート」は、「回折光学フィルム」や「回折光学板」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状、パネル状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(フィルム状部材、板状部材、パネル状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本件明細書において用いる形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図4に示すように、回折光学シート10は、少なくとも一方の表面10aに回折構造体20を有している。回折構造体20は、凸部や凹部等の単位要素が配列されることによって形成された凹凸パターン21を有する部位である。この回折光学シート10は、後に詳述するように、溶融押し出し成型法によって熱可塑性樹脂を用いて形成され得る。
図1及び図2に示された回折光学シート10では、回折構造体20が一方の表面10aのみに形成されている。一方、図3及び図4に示された回折光学シート10では、回折構造体20が一方の表面10aに形成されるとともに、第2回折構造体25が他方の表面10bに形成されている。なお、図1及び図2に点線で示すように、図1及び図2に示された回折光学シート10では、当該回折光学シートの用途に応じて、他方の表面10bに構造体29が設けられるようにしてもよい。溶融押し出し成型法によれば、回折光学シート10をなすようになる押し出し材の両表面に、構造体20,25,29を並行して形成することができる。一具体例として、回折構造体20が形成された一方の表面10aに対向する他方の表面10bに、凹凸構造体29、具体例として、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズム、集光レンズ、として構成されたレンズ構造体29を形成することができる。
また、図1に示された回折光学シート10は、回折構造体20を一方の表面10aに含む熱可塑性樹脂からなる単一の層からなっている。図3に示された回折光学シート10は、回折構造体20を一方の表面10aに含むとともに第2回折構造体25を他方の表面10bに含む単一の層からなっている。
一方、図2及び図4に示された回折光学シート10は、例えば共押し出しにより、一方の表面10aをなす回折構造体20を含む第1層11と、第1層11と隣接し且つ他方の表面10bを形成する第2層12と、を有している。共押し出しによって形成された第1層11及び第2層12によれば、第1層11及び第2層12の界面をぼやかすことができ、回折光学シート10を透過する光が、第1層11及び第2層12の界面から意図しない光学作用を顕著に受けてしまうことを効果的に防止することができる。
次に、回折構造体20,25についてさらに説明する。回折構造体20,25は、シート状のシート本体部15上に形成され、シート本体部15とともに回折光学シート10を構成する。回折構造体20,25は、凸部や凹部等の単位要素21が規則的または不規則的に配列されることによって形成された凹凸パターン21を有する部位である。
この回折構造体20,25は、回折光学シート10の表面10a,10bをなす凹凸パターン21に対応したパターンにて、回折光学シート10の表面10a,10bを透過する光に位相変調を生じさせる。すなわち、回折構造体20,25は、位相変調型のホログラムを構成している。
回折構造体としてのナノ構造体20,25をなす凹凸パターンは、二値的に構成されて、凸部または凹部が一定の高さまたは深さを有するようにしてもよい。あるいは、回折構造体としてのナノ構造体20,25をなす凹凸パターンが多段に形成されるようにしてもよい。また、回折構造体としてのナノ構造体20,25が、いわゆる回折格子として形成され、凹凸パターンが規則的なパターンを有するようにしてもよい。
回折光学シート10の表面10a,10bに形成される回折構造体20,25の凹凸パターンは、いわゆる計算機合成ホログラム(CGH)の技術を用いて、所望の回折特性を呈するように設計され得る。より具体的には、計算機合成ホログラムの技術を用いることにより、特定の配光特性を示す光が回折光学シート10に入射した場合に表面10a,10bにて所望の輝度分布が実現されるよう、回折構造体20の回折特性を設計することが可能となる。
図9及び図10に示された写真には、回折光学シート10の回折構造体20が示されている。図9及び図10に示された回折構造体20を含む回折光学シート10は、後述の製造方法により、図1の構成を有するように、すなわち、一方の表面10aのみに回折構造体20を含む熱可塑性樹脂の単層として、作製されている。また、熱可塑性樹脂として、屈折率1.49のアクリル樹脂を用いている。
図9及び図10に示された回折光学シート10の回折構造体20は、数百nm〜数μm程度のピッチで設けられた多数の凸部21aによって形成されている。図9及び図10に示された回折光学シート10の回折構造体20において、凸部21aは不規則的に配列されている。すなわち、回折構造体20は、不規則的な凹凸パターン21を形成し、ホログラムを構成している。とりわけ、図9及び図10に示された回折構造体20は、異方性光拡散機能を発現し得るように設計されている。
本件発明者らは、図9及び図10に示された回折光学シート10の回折特性を、実際に調査した。まず、回折光学シートのシート面への法線方向に沿って当該回折光学シートの他方の表面10bへ平行光束を入射させ、回折光学シート10の一方の表面10a上での輝度の角度分布を測定した。輝度の角度分布は、平面視において矩形形状(長方形または正方形)からなる回折光学シート10の一対の対向する辺と平行な第1方向に沿った面内、並びに、平面視において矩形形状からなる回折光学シート10の他の一対の対向する辺と平行な第2方向に沿った面内にて、測定した。輝度の測定には、スクリーン光学特性評価装置GP-500型(MURAKAMI COLOR LAB,製)を用いた。図13のグラフに、測定された輝度の角度分布を示している。
図13に示すように、回折光学シート10は、入射光のうちの第2方向に沿った成分を集中的に拡散し、入射光のうちの第1方向に沿った成分に対して拡散作用をほとんど及ぼさなかった。なお、回折光学シート10の第1方向は、図10に示された顕微鏡写真における横方向に相当する方向であり、回折光学シート10の第2方向は、図10に示された顕微鏡写真における縦方向に相当する方向であった。
このような回折光学シート10の具体的な用途として、表示装置用の光学シートとして用いることができる。表示装置からの映像光を水平方向により拡散させることにより、水平方向に広い視野角を有すると同時に高い正面方向輝度が確保されるといった、家庭用の表示装置において理想的な光学特性を実現することができる。
なお、回折光学シート10の回折構造体20に回折機能が期待される場合、回折構造体20で期待した回折作用が得られるよう、回折光学シート10の内部で意図しない光路変更が生じないことが好ましい。この点において、図1や図3に示されているように、回折光学シート10が単一の層からなることは有利である。また、図2や図4に示されている回折光学シート10において、第1層11及び第2層12が共押し出しにより形成されている場合には、第1層11及び第2層12の界面がぼやけるので、この界面で屈折することによる規則的な光路変更を抑制することができる。
また、回折光学シート10の他方の表面10bに、回折構造体としての回折構造体20と同様の構成を有する第2回折構造体25や、所定の光学作用を入射光に対して及ぼし得る構造体29を設けるようにしてもよい。この場合、回折光学シート10の他方の表面10bでも、入射光の光路を調整することができる。すなわち、一方の表面10a及び他方の表面10bの二段階で光路変更を生じさせることにより、出射光の配光特性を、入射光の配光特性とは大きく異なるものとすることができる。さらに、回折光学シート10の他方の表面10bに、モスアイ型の反射防止構造体をなす回折構造体20,25を設けるようにしてもよい。この場合、入射光の反射を防止しながら当該入射光の配光特性を調整することができる。
ところで、ここで説明する回折光学シート10は、複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnが、次の条件(a)および(b)を満たすようになる。
Δnave≦50×10−6 ・・・条件(a)
(σΔn/Δnave)≦0.10 ・・・条件(b)
ここで、複屈折率とは、回折光学シート10のシート面に沿って延びる方向のうち最も屈折率が大きくなる遅相軸方向での屈折率nと、回折光学シート10のシート面に沿って延びる方向のうち最も屈折率が小さくなる進相軸方向での屈折率nと、の差(Δn=n−n)である。
複屈折率は、まずリタデーション値を求め、得られたリタデーション値から算出することができる。ここで、リタデーション値とは、面内の複屈折性の程度、言い換えると、回折光学シートを通過する際に光の偏光状態に依存して生じる光路差や位相差を表す指標である。具体的には、リタデーション値は、「複屈折率の測定対象となる回折光学シートの厚み×当該回折光学シートの複屈折率」の値である。したがって、複屈折率は、測定対象となる回折光学シートの厚みでリタデーション値を除することにより、算出される。リタデーション値は、例えば、王子計測機器製KOBRA−WRを用いて、測定角0°かつ測定波長548.2nmに設定して、測定された値とすることができる。一方、回折光学シートの厚みは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定され得る。
他の方法として、回折光学シート10のシート面に沿った各方向の屈折率を実際に測定して、複屈折率を求めることもできる。具体的にはまず、吸収軸が互いに直交するようにして配置された二枚の偏光板、すなわちクロスニコルで配置された二枚の偏光板の間で、回折光学シート10を回転させた際の明るさの変化から、回折光学シート10の遅相軸方向および進相軸方向を特定する。次に、特定された遅相軸方向および進相軸方向の屈折率を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって測定し、測定値から複屈折率を求めることができる。
また、条件(a)および条件(b)の充足を判断する際における複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnは、略矩形形状(略長方形または略正方形)からなる測定対象(回折光学シート)40に対し九つの測定箇所にて測定された複屈折率Δnの平均値または標準偏差を用いる。図6に示すように、サンプル40の九つの測定箇所は、次のように決定される。まず、平面視において矩形形状からなるサンプルについて、一方の一対の対向する縁部44,42と平行に延び且つ他方の一対の縁部41,43を二等分する第1線分46と、他方の一対の対向する縁部41,43と平行に延び且つ一方の一対の縁部42,44を二等分する第2線分47と、を特定する。なお、サンプルの平面視形状が矩形形状から大きくずれている場合には、サンプル40の平面視での外輪郭に内接する最も大面積となる矩形形状を特定し、当該矩形形状について、上述の第1線分46及び第2線分47を特定する。
ここまでの手順により、図6に示すように、特定された二つの二等分線46,47により、サンプル40が面方向において四つの区域に分割され、四つの区域の各中心部を第1〜第4の測定箇所とする。また、第1線分46および第2線分47の交点周辺を第5測定箇所とする。さらに、第1線分46と他方の一対の縁部41,43の各々との交点周辺を第6測定箇所、第7測定箇所とする。さらに、第2線分47と一方の一対の縁部44,43の各々との交点を第8測定箇所、第9測定箇所とする。
複屈折率が大きくなって条件(a)が満たされない場合、入射光の偏光状態に応じて、当該入射光が、予定していなかった不要な光学作用を受けることになる。この結果、回折光学シート10がもはや期待された光学機能を発揮し得なくなる、或いは、当該不要な光学作用が欠陥等を引き起こしてしまう。また、複屈折率が面内でばらついて条件(b)が満たされない場合、当該予定していなかった不要な光学作用を受ける程度が、面内においてばらつき、上記の不具合が目立ちやすくなってしまう。とりわけ、回折光学シート10は、回折構造体20,25による繊細で緻密な光学機能を期待されており、複屈折率の大きさや複屈折率のバラツキの影響を非常に受けやすい。
例えば、回折光学シート10の複屈折率が大きい場合又は回折光学シート10の複屈折率が面内でばらついている場合、回折光学シート10から出射する光に生じる位相変調は、パターン及び量において、回折構造体に期待された位相変調と異なるようになる。したがって、回折光学シート10は、その本来の目的である所望の回折現象を引き起こすことができなくなる。
また、今般使用されている多くの機器、とりわけ光学機器には、偏光板が組み込まれている。偏光板から出射する偏光した光が、複屈折率が大きい又は複屈折率が面内でばらついている回折光学シート10へ入射すると、回折光学シート10上に虹模様のような干渉色が生じてしまう。回折光学シート10に干渉色が視認されるようになると、多くの場合、回折光学シート10が組み込まれた機器の品位を大きく低下させてしまうことになる。典型的には、偏光板を含んだ液晶表示装置の表示面に、複屈折率が大きい又は複屈折率が面内でばらついている回折光学シートを積層した場合、表示画質を著しく劣化させることになり、表示装置の品位を大幅に下げることになる。
一方、上述した条件(a)及び条件(b)が満たされる場合、以上の不具合が生じず、回折構造体20,25によって所望の回折現象を引き起こすことができる。
次に、回折光学シート10の製造方法について説明する。以下の説明において、回折光学シート10は、押し出し成型装置50を用いた溶融押し出し成型法により、熱可塑性樹脂から形成される。
押し出し成型装置50は、熱可塑性樹脂をシート状に押し出す押し出し機55と、押し出し機55からの押し出し材49を、誘導するロール群61,62,63,64,66,67と、押し出し材49を成型する際の型として機能する賦型シート74を供給する賦型シート供給機構70と、を含んでいる。押し出し機55は、原料となるペレット状の熱可塑性樹脂を加熱し、シート状の押し出し材49をダイ56から押し出す。押し出し材49は、第1主ロール61及び第2主ロール62の間に進み、その後、第2主ロール62及び第3主ロール63の間と第3主ロール63及び第4主ロール64の間とを通過するようにして、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動する。その後、押し出し材49は、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過する。
一方、賦型シート供給機構70は、長尺の賦型シート74を巻き取った状態で保持する供給ロール71と、供給ロール71から繰り出される賦型シート74を巻き取り回収する回収ロール72と、を有している。賦型シート74は、供給ロール71から繰り出されると、第1主ロール61と第2主ロール62との間に進む。次に、賦型シート74は、第2主ロール62及び第3主ロール63の間と第3主ロール63及び第4主ロール64の間とを通過するようにして、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動する。その後、賦型シート74は、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過して、回収ロール72に巻き取られて回収される。
図7に示すように、押し出し成型装置50から押し出された高温の押し出し材49は、第1主ロール61及び第2主ロール62の間を賦型シート74に接触して通過し、その後、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過するまで賦型シート74と接触した状態で同期して移動する。押し出し材49と賦型シート74とが重ね合わされて移動する間、とりわけ、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動している間、押し出し材49と賦型シート74は互いに向けて押圧された状態となっている。そして、賦型シート74は、押し出し材49に形状を転写するための型として機能し、押し出し材49と対面する側の面に、押し出し材49に転写すべき凹凸に対応した凹凸が形成されている。この結果、回折構造体20をなす凹凸パターン21が押し出し材49に賦型され、回折光学シート10が作製される。
ここで、賦型シート74は、少なくとも押し出し材49と接触するようになる面を樹脂によって作製されている。例えば、賦型シート74は、樹脂製の基材上に電離放射線硬化型樹脂を賦型することによって、予め準備される。基材上に電離放射線硬化型樹脂を賦型することによれば、賦型シート74に所望の形状を精度良く付与することができる。
すなわち、以上の回折光学シート10の製造方法では、比較的に熱容量が小さく且つ比較的に熱伝導性に劣る樹脂によって、押し出し材49を成型するための型面が形成されている。このため、押し出し成型装置50から押し出された高温の押し出し材49の熱が、賦型シート74に接触することによって、押し出し材49から賦型シート74に急速に奪われてしまうことはない。この結果、高温の押し出し材49が、賦型シート74の表面に形成された凹凸に精度よく追従して変形することができる。
また、主ロール61,62から案内ロール66,67を通過するまでの間の長期間に亘って、押し出し材49が賦型シート74と接触し続ける。このため、押し出し材49が案内ロール66,67へ到達する際には、押し出し材49の温度は、賦型シート74からの離型に適した温度にまで十分に低下することができる。この結果、押し出し材49は賦型シート74から円滑に離型することができる。さらに、賦型シート74から離れたとき、押し出し材49の温度が既に十分低下しているので、押し出し材49に賦型された形状が、賦型シート74から離れた後に平坦化してしまうことが効果的に抑制される。
これらのことから、押し出し材49に対して、単位要素21の緻密パターンを有した回折構造体20,25を、高精度に成型することが可能となる。本件発明者らが実験したところ、次の式(1)または式(2)を満たす、さらには式(1)および(2)の両方を満たす高アスペクト比(h/p)且つ微細な単位要素21を配列してなる回折構造体20,25を賦型することができた。とりわけ、式(1)および式(2)の両方を満たすようにして、厚みtが0.25mm以上5mm以下となる回折光学シート10を作製することもできた。
0.5 ≦ h/p ≦ 3 ・・・式(1)
0.6 ≦ h/p+0.47t ≦ 5.5 ・・・式(2)
なお、式(1)および式(2)において、図5に示すように、hは、回折光学シート10のシート面への法線方向に沿った凸部21aの高さ〔μm〕であり、pは、回折光学シート10のシート面に沿って凸部21aのピッチ〔μm〕であり、tは、回折光学シート10のシート面への法線方向に沿った回折光学シート10の厚み〔mm〕である。
加えて、賦型シート74を用いた場合には、以上のように成型精度(転写精度、賦型精度)が向上するため、主ロール61〜64から押し出し材49および賦型シート74へ向けた加圧力を、著しく高める必要は無い。この点から、押し出し材49に強い剪断力が加えられることを回避することができ、上述した条件(a)および条件(b)が満たされるようになる。すなわち、得られた回折光学シート10の複屈折率を、低い値にて、回折光学シート10のシート面に沿った面内で安定させることができる。
また、主ロール61〜64からの加圧力を低下させることにより、賦型シート74の損傷を緩和することができ、賦型シート74を繰り返し利用することが可能となる。これにより、回折光学シート10の製造原価を直接的に低下させることができる。
以上のようにして、比較的に安価な溶融押し出し成型法によって、高精細な凹凸パターンを有した回折構造体20,25を含む回折光学シート10を製造することができる。
なお、図9及び図10に示された回折構造体20を有した回折光学シート10は、図7の押し出し成型装置50を用いて上述の溶融押し出し成型法によって、アクリル樹脂からなる単層押し出し材として、実際に作製したものである。図9及び図10に示された回折構造体20を有した回折光学シート10の作製において、図11及び図12に示された賦型シート74を用いた。この際、図9〜図12の写真を比較することにより、極めて高い成型精度(賦型精度、転写精度)で成型が行われていることを視覚的に確認することができる。
なお、図7に示された製造方法によれば、図1に示された熱可塑性樹脂の単層からなる回折光学シート10が得られる。このような製造方法によれば、基材上に電離放射線硬化型樹脂を賦型することによって得られる回折光学シートと比較して、厚みの厚い、例えば250μmを超える厚み回折光学シート10を単層で作製することができる。このように厚みを250μm程度まで厚くすると、回折構造体20を支持するための支持体を不要とすることができ、回折光学シート10内に反射を誘発する界面が形成されることを防止することができる。
また、押し出し成型装置50において、第2主ロール62の外周面に凹凸を形成しておくことにより、図1及び図2に点線で示すように、当該凹凸に対応する構造体29を回折光学シート10の他方の表面10bに形成することができる。
さらに、押し出し成型装置50の押し出し機55が共押し出しを行うことにより、製造される回折光学シート10が、回折構造体20を含む第1層11と、第1層11に隣接する第2層12と、を含むようにすることができる。共押し出しによれば、第1層11及び第2層12が、異なる材料を含むようになる。例えば、図2に示すように、回折構造体20を含む第1層11をアクリル樹脂で作製することによって、微細構造を有した回折構造体20に優れた耐擦傷性を付与することができ、同時に、第2層12をポリカーボネイト樹脂で作製することによって、回折光学シート10に柔軟性を付与することができる。
共押し出しで回折光学シート10を作製する場合、第1層11及び第2層12のうちの少なくとも一方が、熱可塑性樹脂からなる母材と、母材中に分散した拡散成分と、を有するようにしてもよい。この際、第1層11および第2層12のうちの一方の母材をなす熱可塑性樹脂と、第1層11および第2層12のうちの他方をなす母材の熱可塑性樹脂が同一の屈折率を有するようにしてもよい。例えば、第1層11の材料および第2層12の材料が、拡散成分の有無の点のみにおいて、異なるようにしてもよい。このような例によれば、第1層11および第2層12の間に、透過光に光学作用を及ぼし得る光学界面が、実質的に存在しないことになる。
またさらに、共押し出しで回折光学シート10を作製する場合、各層11,12を、厚みの厚い、例えば250μmを超える層として作製することができる。
加えて、図8に示すように、押し出し成型装置50に、第2賦型シート供給機構75をさらに設けるようにしてもよい。第2賦型シート供給機構75は、賦型シート供給機構70と同様に、長尺の第2賦型シート79を巻き取った状態で保持する第2供給ロール76と、第2供給ロール76から繰り出される第2賦型シート79を巻き取り回収する第2回収ロール77と、を有している。第2賦型シート79は、第2供給ロール76から繰り出されると、第1主ロール61と第2主ロール62との間に進む。次に、賦型シート74は、第2主ロール62及び第3主ロール63の間と第3主ロール63及び第4主ロール64の間とを通過するようにして、第2主ロール62、第3主ロール63及び第4主ロール64の外周面に支持されて移動する。その後、第2賦型シート79は、第1案内ロール66及び第2案内ロール67の間を通過して、第2回収ロール77に巻き取られて回収される。
第2賦型シート79は、第1主ロール61と第2主ロール62との間から第1案内ロール66と第2案内ロール67との間を通過するまで、賦型シート74とは逆側から押し出し材49に接触する。この結果、図3に示すように、回折光学シート10は、賦型シート74によって賦型された一方の表面10aの回折構造体20と、第2賦型シート79によって賦型された他方の表面10bの第2回折構造体25と、を有するようになる。
なお、第2回収ロール77に回収された第2賦型シート79は、賦型シート74と同様に、再利用され得る。また、図8に示された押し出し成型装置50にて、押し出し機55が共押し出しを行うことにより、図4に示された回折光学シート10のように、一方の表面10aに形成された回折構造体20と、他方の表面10bに形成された第2回折構造体25とを、異なる材料を含む層11,12として形成することができる。
ところで、回折光学シート10が上述した条件(a)および条件(b)を満たすようになるのは、回折光学シート10が上述した溶融押し出し成型法により製造されることに起因している。射出成型で作製された回折光学シートは、作製されるべき回折光学シートの厚み等に依存して条件(a)を安定して満たすことができず、さらに、条件(b)をほぼ満たすことは不可能である。また、電離放射線硬化型樹脂を基材上に賦型する方法で作製された回折光学シートも、主として基材に起因して、条件(a)および条件(b)が満たされないことが多い。
ここで、表1は、本件発明者らが、溶融押し出し成型法により作製された樹脂フィルム(サンプル1,2)と、射出成型により作製された樹脂フィルム(サンプル3,4)とに対して、複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnを調査した結果の一例を示している。複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnを正確に測定するため、サンプル1〜4は、回折構造体を含まない単なる板状材とし、その平面視のおける形状は、10cm×10cmの正方形形状とした。サンプル1及びサンプル2は、アクリル樹脂の押し出し材とした。サンプル1は、溶融押し出し時の線圧(上述した第1主ロール61および第2主ロール62の間での圧力を押し出し材の幅で除した値)を30kg/cmとして作製し、サンプル2は、溶融押し出し時の線圧を90kg/cmとして作製した。サンプル3及びサンプル4は、アクリル樹脂の射出成型品とした。
複屈折率は、まず、各サンプルのリタデーション値(Re)および厚み(t)を測定し、その後、リタデーション値(Re)を厚み(t)で割ることによって求めた。各サンプルに対する複屈折率の測定箇所は、上述した第1〜第9測定箇所とした(図6参照)。リタデーション値(Re)の測定は、王子計測機器製KOBRA−WRを用いて、測定角0°かつ測定波長548.2nmに設定して、行った。一方、厚みの測定は、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて行った。リタデーション値(Re)の測定結果および厚み(t)の測定結果を、複屈折率の値とともに、表1に示す。
サンプル1及びサンプル2は、上述の条件(a)及び条件(b)を十分に満たしていた。一方、サンプル3及びサンプル4は、上述の条件(a)を満たしたが、条件(b)を満たしていなかった。
また、互いの吸収軸が直交するようにして配置された一対の偏光板、すなわち、クロスニコル配置された一対の偏光板の間に、各サンプルを配置した状態で、一方の偏光板の側から照明しながら他方の偏光板上に、虹模様等の干渉色が観察されるか否かを確認した。サンプル1及びサンプル2については、注意深く観察したが、虹模様等の干渉色の存在が確認されなかった。一方、サンプル3及びサンプル4については、他の測定箇所よりも複屈折率の測定値が相対的に高くなった第6測定箇所に対応する部分に、局所的に模様が確認された。サンプル3及びサンプル4の第6測定箇所は、射出成型時のゲートに最も近い部位であり、確認された模様はゲートから射出される樹脂の流れに沿っていると考えられた。
以上のように本実施の形態によれば、回折光学シート10が、回折構造体20,25を少なくとも一方の面10aに備えており、且つ、複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnが、次の条件(a)および(b)を満たす。
Δnave≦50×10−6 ・・・条件(a)
(σΔn/Δnave)≦0.10 ・・・条件(b)
このような回折光学シート10は、樹脂で形成された型面を有する型(賦型シート)74,79を用いた溶融押し出し成型法により、作製され得る。樹脂で形成された型面を有する型74,79を用いた溶融押し出し成型法によれば、次の条件(1)または条件(2)を満たす、さらには式(1)および式(2)の両方を満たすアスクペクト(h/p)が高く且つ微小な単位要素21を緻密に配置してなる回折構造体20,25を、極めて安価に製造することができる。
0.5 ≦ h/p ≦ 3 ・・・式(1)
0.6 ≦ h/p+0.47t ≦ 5.5 ・・・式(2)
また、熱可塑性樹脂の押し出し材からなる回折光学シート10によれば、条件(a)及び条件(b)を十分に満たすことができる。したがって、単位要素21の配列パターンに対応したパターンにては回折構造体20,25への入射光に屈折率変調を生じさせることができ、これにより、当該光を所望の方向に精度良く回折させることができる。
なお、上述した一実施の形態は、例示であって、様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。以下の説明では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
例えば、[0076]図9及び図10を参照しながら、回折構造体20を説明したが、図9及び図10の回折構造体は一例に過ぎない。図9及び図10示された例では、回折構造体をなす単位要素21が或る程度不規則的に配列されてホログラムを形成している。しかしながら、図9及び図10に示された例に限られず、回折構造体をなす単位要素21が規則的に配置されて、所謂回折格子をなすホログラムを形成するようにしてもよい。
10 回折光学シート
10a 一方の表面
10b 他方の表面
11 第1層
12 第2層
15 シート本体部
20 回折構造体
21 単位要素
21a 凸部
21b 凹部
22a 基端部
22b 先端部
25 回折構造体、第2回折構造体
29 構造体
40 サンプル
41,42,43,44 縁部
46,47 線分
49 押し出し材
50 押し出し成型装置
55 押し出し機
56 ダイ
66,62,63,64 主ロール
66,67 案内ロール
70 賦型シート供給機構
71 供給ロール
72 回収ロール
74 賦型シート
75 第2賦型シート供給機構
76 第2供給ロール
77 第2回収ロール
79 第2賦型シート

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂を用いて形成された回折構造体を、少なくとも一方の面に、備え、
    複屈折率の平均値Δnaveおよび複屈折率の標準偏差σΔnが、次の条件(a)および(b)を満たす、回折光学シート。
    Δnave≦50×10−6 ・・・条件(a)
    (σΔn/Δnave)≦0.10 ・・・条件(b)
  2. 前記熱可塑性樹脂を用いて形成され且つ前記回折構造体を含む単層の回折光学シートである、請求項1に記載の回折光学シート。
  3. 前記熱可塑性樹脂を用いて形成され且つ前記回折構造体を含む第1の層と、
    前記第1の層と積層され且つ熱可塑性樹脂を用いて形成された第2の層と、を含み、
    前記第1の層と前記第2の層とが異なる材料を含んでいる、請求項1に記載の回折光学シート。
  4. 前記回折構造体を含む層の厚みは、250μm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回折光学シート。
  5. 熱可塑性樹脂を用いて形成された第2の回折構造体を、他方の面に、さらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回折光学シート。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学シートを含む、表示装置。
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