JP2014070645A - 複動型油圧シリンダの操作構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】付勢機構に動作不良や故障が生じても、優れた応答性を確保できる複動型油圧シリンダの操作構造を提供する。
【解決手段】制御部は、ピストンを中立位置側からシリンダチューブの一端側に移動させる際には、第一圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、ピストンを中立位置側からシリンダチューブの他端側に移動させる際には、第二圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、ピストンを一端側または他端側から中立位置側に移動させる際には、第一圧力制御弁及び第二圧力制御弁を圧油供給状態に制御する。
【選択図】図6

Description

本発明は、シリンダチューブと、前記シリンダチューブに内装されたピストンと、前記ピストンを中立位置に常時付勢する付勢機構と、二つの油室と、が備えられ、前記二つの油室に対する圧油の給排によって前記ピストンが往復移動して、被操作対象を操作可能な複動型油圧シリンダの操作構造に関する。
従来から、このような複動型油圧シリンダの操作構造として、特許文献1に記載のように、作業車(例えば、トラクタ、草刈機)における静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの斜板を操作する複動型油圧シリンダ(文献では、「変速シリンダ」)の操作構造があった。
この技術においては、複動型油圧シリンダのピストンを挟んだ二つの油室のうち第一油室に対して圧油を給排する第一圧力制御弁(文献では、「前進比例制御弁」)と、二つの油室のうち第二油室に対して圧油を給排する第二圧力制御弁(文献では、「後進比例制御弁」)と、ピストンの目標位置を指令する操作具(文献では、「変速ペダル」)と、操作具によって指令された目標位置を検知する指令位置センサ(文献では、「ペダルセンサ」)と、ピストンの現位置を検知する現位置センサ(文献では、「斜板センサ」)と、目標位置及び現位置に基づいて、第一圧力制御弁及び第二圧力制御弁の圧油給排状態を制御する制御部(文献では、「制御手段」)と、が備えられている。
ところで、特許文献1では特に記載はされていないが、このような複動型油圧シリンダの操作構造では、制御部は、中立位置とシリンダチューブの一端側との間でピストンを移動させる際には、第一圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、中立位置とシリンダチューブの他端側との間でピストンを移動させる際には、第二圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御するのが一般的である。
つまり、中立位置とシリンダチューブの一端側との間におけるピストンの移動では、第二圧力制御弁は使用されず(例えば、圧油排出状態とされる)、付勢機構による付勢力と第一圧力制御弁による油圧力との大小関係によってピストンは移動させられる。また、中立位置とシリンダチューブの他端側との間におけるピストンの移動では、第一圧力制御弁は使用されず(例えば、圧油排出状態とされる)、付勢機構による付勢力と第二圧力制御弁による油圧力との大小関係によってピストンは移動させられる。
特開2008−133896号公報(特に、段落0016乃至0019、図4参照)
しかし、このような従来の複動型油圧シリンダの操作構造であると、ピストンをシリンダチューブの一端側または他端側から中立位置側に移動させる際には、付勢機構による付勢力が第一圧力制御弁による油圧力または第二圧力制御弁による油圧力よりも大きな値である必要がある。即ち、ピストンを中立位置側へ移動させる制御は、付勢機構が正常な動作をするか否かに依存している。
したがって、フリクション(例えば、圧油中の異物が原因)によってピストンに動作不良が生じた場合や、付勢機構自体に故障が生じたような場合には、ピストンを中立位置側へ移動させることができなくなって制御不能な状態に陥ったり、ピストンの動きが緩慢となって応答性が悪くなったりする虞がある。
このような実情に鑑み、本発明は、付勢機構に動作不良や故障が生じても、優れた応答性を確保できる複動型油圧シリンダの操作構造を提供することを目的とする。
本発明の特徴は、
シリンダチューブと、前記シリンダチューブに内装されたピストンと、前記ピストンを中立位置に常時付勢する付勢機構と、二つの油室と、が備えられ、前記二つの油室に対する圧油の給排によって前記ピストンが往復移動して、被操作対象を操作可能な複動型油圧シリンダの操作構造であって、
前記二つの油室のうち第一油室に対して圧油を給排する第一圧力制御弁と、
前記二つの油室のうち第二油室に対して圧油を給排する第二圧力制御弁と、
前記ピストンの目標位置を指令する操作具と、
前記操作具によって指令された前記目標位置を検知する指令位置センサと、
前記ピストンの現位置を検知する現位置センサと、
前記目標位置及び前記現位置に基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁を制御する制御部と、が備えられ、
前記制御部は、
前記ピストンを前記中立位置側から前記シリンダチューブの一端側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、
前記ピストンを前記中立位置側から前記シリンダチューブの他端側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、
前記ピストンを前記一端側または前記他端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁を圧油供給状態に制御する点にある。
本発明によると、ピストンをシリンダチューブの一端側または他端側から中立位置側に移動させる際には、第一圧力制御弁及び第二圧力制御弁が圧油供給状態となる。したがって、第二圧力制御弁の油圧力を付勢機構の付勢力と同じ方向向きの圧油力をピストンに作用させることが可能であるので、仮に、一端側から中立位置側へのピストンの移動の際に、付勢機構に動作不良や故障が生じたとしても、第二圧力制御弁の油圧力が付勢機構の付勢力を補助、補填可能である。同様に、仮に、他端側から中立位置側へのピストンの移動の際に、付勢機構に動作不良や故障が生じたとしても、第一圧力制御弁の油圧力が付勢機構の付勢力を補助、補填可能である。
このように、本発明であれば、付勢機構に動作不良や故障が生じても、優れた応答性を確保できる複動型油圧シリンダの操作構造を提供できる。
本発明において、
前記制御部は、
前記目標位置及び前記現位置に基づいて、前記目標位置と前記現位置との偏差、前記現位置が前記中立位置に対して一方側の領域及び他方側の領域のうち何れの領域に属するかを示す領域情報、及び、前記ピストンが現在移動している方向を示す方向情報を生成する操作情報生成部と、
前記偏差、前記領域情報及び前記方向情報に基づいて、前記第一圧力制御弁を圧油供給状態に制御するか、圧油排出状態に制御するか、及び、前記第二圧力制御弁を圧油供給状態に制御するか、圧油排出状態に制御するかの制御パターンを決定する制御パターン決定部と、
前記偏差、前記領域情報、前記方向情報、及び、前記制御パターンに基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁のうち前記制御パターン決定部によって圧油供給状態に制御することが決定された圧力制御弁を、前記偏差のみに基づいて制御するか、前記偏差及びその他の要素に基づいて制御するかの制御モードを決定する制御モード決定部と、
前記偏差、前記領域情報、前記方向情報、前記制御パターン、及び、前記制御モードに基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁に対する制御信号を生成する制御信号生成部と、が備えられていると好適である。
一般的に、偏差のみに基づいた制御(いわゆる「P制御」)では、偏差が「0」になると(現位置が目標位置になると)、制御部による制御は停止される。しかし、本発明では、ピストンは付勢機構の付勢力によって中立位置に常時付勢されているので、制御部が制御を停止するとピストンは中立位置側へ移動する。そして、現位置と目標位置との偏差が生じ、制御部による制御がなされる。つまり、制御部の制御による目標位置に近付く動作と、制御部の制御停止による目標位置から離れる動作とが繰り返され、結果的に、現位置と目標位置との間には、いわゆる「定常偏差」が残ることとなる。
しかし、本構成によれば、制御モード決定部において、偏差のみに基づく制御だけでなく、偏差及びその他の要素に基づく制御も選択可能であるので、定常偏差が極力少なくなり、現位置を目標位置に近づける事ができて制御精度が高まる。
本発明において、
前記制御モード決定部は、
前記ピストンを前記中立位置側から前記一端側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御することを決定し、かつ、
前記ピストンを前記中立位置側から前記他端側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御することを決定し、かつ、
前記ピストンを前記一端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御すること、及び、前記第二圧力制御弁を前記偏差のみに基づいて制御することを決定し、
前記ピストンを前記他端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御すること、及び、前記第一圧力制御弁を前記偏差のみに基づいて制御することを決定すると好適である。
本構成によれば、ピストンを中立位置側から一端側に移動させる際には、第二圧力制御弁は圧油排出状態にされ、圧油供給状態の第一圧力制御弁が偏差及びその他の要素に基づいて制御される。また、ピストンを中立位置側から他端側に移動させる際には、第一圧力制御弁は圧油排出状態にされ、圧油供給状態の第二圧力制御弁が偏差及びその他の要素に基づいて制御される。
つまり、ピストンを中立位置側から一端側または他端側に移動させる際には、第一圧力制御弁または第二圧力制御弁の一方のみが制御され、かつ、その圧力制御弁は偏差及びその他の要素に基づいて制御される。したがって、二つの圧力制御弁を制御するのと比較して簡単な制御で済み、かつ、定常偏差の少ない精度の良い制御が可能となる。
一方、ピストンを一端側から中立位置側に移動させる際には、圧油供給状態の第一圧力制御弁が偏差及びその他の要素に基づいて制御されると共に、圧油供給状態の第二圧力制御弁が偏差のみに基づいて制御される。また、ピストンを他端側から中立位置側に移動させる際には、圧油供給状態の第二圧力制御弁が偏差及びその他の要素に基づいて制御されると共に、圧油供給状態の第一二圧力制御弁が偏差のみに基づいて制御される。
つまり、ピストンを一端側または他端側から中立位置側に移動させる際には、付勢機構の付勢力と反対方向向きの圧油力をピストンに作用させる圧力制御弁を偏差及びその他の要素に基づいて制御し、かつ、付勢機構の付勢力と同じ方向向きの圧油力をピストンに作用させる圧力制御弁を偏差のみに基づいて制御する。
上述したように、偏差のみに基づくP制御では、偏差が「0」のときは何も制御がなされないので、現位置が目標位置に対して比較的精度良く追従しているような場合は、付勢機構の付勢力を補助する圧力制御弁は何の制御もされないこととなる。したがって、付勢機構に動作不良等が生じた場合や、付勢機構の容量が小さくて付勢力が足りないような場合のみに、付勢機構の付勢力を補助する圧力制御弁が制御され、何の問題も生じていない場合には、無駄な制御が行われない。
このように、圧力制御弁に対する圧油供給制御を、ピストンが位置する領域とピストンの移動方向とによって使い分けることにより、無駄のない制御が可能となる。
本発明において、
前記その他の要素は、前記偏差の積分値であると好適である。
本構成によると、制御モード決定部は、偏差のみによるP制御以外に、偏差と偏差の積分値とによる制御、いわゆるPI制御を選択可能である。PI制御では、過去の偏差の変遷(積分値)が制御に反映されるので、P制御と比較して、現位置と目標位置との定常偏差が少なくなって、制御精度が向上する。
本発明において、
前記その他の要素は、前記偏差の積分値及び前記偏差の微分値であると好適である。
本構成によると、制御モード決定部は、偏差のみによるP制御以外に、偏差と偏差の積分値と偏差の微分値による制御、いわゆるPID制御を選択可能である。PID制御では、過去の偏差の変遷(積分値)と偏差の増減の変化率(微分値)が反映されるので、P制御と比較して、現位置と目標位置との定常偏差が少なくなって、制御精度が向上する。
本発明において、
前記被操作対象は、静油圧式無段変速装置または油圧機械式無段変速装置の油圧ポンプの斜板であると好適である。
本構成によれば、被操作対象が、作業車等に比較的良く搭載される静油圧式無段変速装置または油圧機械式無段変速装置の油圧ポンプの斜板である。したがって、変速制御に無駄がなく、かつ、変速応答性の良い作業車とすることができる。
本発明を適用したHSTの油圧回路図である。 HSTの側面図である。 油圧シリンダ周辺の断面図である。 斜板の側面図である。 油圧シリンダの操作構造を示すブロック図である。 入力情報と制御信号との関係を示す表である。 油圧シリンダの制御状態を示す模式図である。
以下に、本発明の複動型油圧シリンダの操作構造を、作業車の静油圧式無段変速装置(以下、「HST」と称する)の油圧ポンプの斜板を操作対象とする油圧シリンダに適用した例を、図面に基づいて説明する。
〔油圧シリンダ操作構造の全体構成について〕
図1及び図2に示すごとく、HST100には、HSTケース105に収容された状態で、アキシャルプランジャ型の油圧ポンプ103及び油圧モータ104が備えられている。油圧ポンプ103は入力軸101に連結され、油圧ポンプ103は出力軸102に連結されている。油圧ポンプ103は、入力軸101から入力されたエンジン等の駆動源からの動力を斜板角度の変更により無段に変速する。油圧モータ104は、さらにその動力を斜板角度の変更により無段に変速する。本実施形態においては、油圧ポンプ103が主変速装置であり、油圧モータ104が副変速装置である。油圧ポンプ103の斜板角度の目標位置を指令する「操作具」としての主変速レバー4(図5参照)、及び、油圧モータ104の斜板角度の目標位置を指令する副変速レバーは、例えば、運転部に設けられている。
油圧ポンプ103と油圧モータ104とは循環油路110で連結されており、圧油が循環油路110を介して油圧ポンプ103と油圧モータ104との間を往来する。その流れの向きによって、動力を正転動力と逆転動力とに切り換えられる。これにより、例えば、前進状態と後進状態とを作り出せられる。油圧ポンプ103は、斜板角度が大きい程に、吐出量が多くなって、入力軸101から入力された動力は増速される。油圧モータ104は、斜板角度が大きい程に、出力軸102を一定回転させるのに必要な油量が多くなって、出力軸102から出力される動力は減速される。
入力軸101には、ギア式のチャージポンプ107が取付けられており、入力軸101の回転によってオイルパン106(例えば、ミッションケース)からオイルが吸い上げられる。チャージポンプ107と循環油路110とはチャージ油路109によって接続されており、油圧ポンプ103や油圧モータ104や循環油路110からオイルがリークしても、循環油路110では必要量のオイルが維持される。チャージポンプ107のオイル供給方向下手側にはオイルフィルタ108が取付けられており、濾過されたオイルがチャージ油路109に供給される。
ところで、油圧ポンプ103の斜板120(図2参照)の角度は、油圧シリンダ1の伸縮によって変更され、油圧シリンダ1は、電磁式の「第一圧力制御弁」としての第一バルブ2と、電磁式の「第二圧力制御弁」としての第二バルブ3との制御によって伸縮される。油圧モータ104の斜板角度は、油圧アクチュエータ114の伸縮によって変更され、油圧アクチュエータ114は圧力制御バルブ113,113の制御によって伸縮される。
チャージ油路109のうち、オイルフィルタ108よりもオイル供給方向下手側の箇所からポンプ用パイロット油路111及びモータ用パイロット油路112が分岐されている。そして、ポンプ用パイロット油路111は、第一バルブ2及び第二バルブ3に接続されている。第一バルブ2は、第一油路8を介して油圧シリンダ1の第一油室14に接続され、第二バルブ3は、第二油路9を介して油圧シリンダ1の第二油室15に接続されている。このような構成により、ポンプ用パイロット油路111からのオイルが、第一油室14及び第二油室15に供給され、この圧油の油圧力に基づいて油圧シリンダ1が伸縮される。また、モータ用パイロット油路112は、圧力制御バルブ113,113に接続されている。圧力制御バルブ113は、油路を介して油圧アクチュエータ114の油室に接続されている。このような構成により、モータ用パイロット油路112からのオイルが、油圧アクチュエータ114の油室に供給され、この圧油の油圧力に基づいて油圧アクチュエータ114が伸縮される。
〔油圧ポンプの具体的構造について〕
図3及び図4に示すごとく、油圧ポンプ103には斜板120が備えられている。斜板120は、入力軸101に対して、入力軸101の軸芯L回りに回転自在な状態、かつ、軸芯Lと直交する傾斜軸芯A回りに揺動自在な状態で支持されている。一方、入力軸101には、ヘッド122が相対回転不能な状態で支持されている。ヘッド122には、循環油路110の一部が、軸芯Lと平行な状態で穿孔されている。この循環油路110の一部は、軸芯L回りに沿って、一定角度毎に間隔を空けて複数形成されている。これらの循環油路110にはピストン123が内挿されている。ピストン123は、軸芯Lに沿って循環油路110に対してスライド移動自在であり、かつ、不図示のスプリング等によって斜板120側に常時付勢されている。
ピストン123の斜板120側の先端には、ボールジョイント125(ユニバーサルジョイント)を介して、ベースプレート124が取付けられている。ベースプレート124は、斜板120の表面に対して相対移動可能である。
以上の構成により、斜板120が傾斜した状態で入力軸101が回転すると、ヘッド122を介して複数のピストン123も軸芯L回りに回転する。この際、ベースプレート124が斜板120の表面に沿って移動するので、斜板120の傾斜に沿ってピストン123が循環油路110(ヘッド122)に対して出退する。この結果、油圧ポンプ103はオイルの吸引と吐出とを行うことができる。
〔油圧シリンダの具体的構造について〕
図3に示すごとく、油圧シリンダ1には、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に内装されて、シリンダチューブ10の内周面に沿ってスライド移動可能なピストン11と、ピストン11を中立位置Nに常時付勢する「付勢機構」としてのスプリング13と、が備えられている。シリンダチューブ10は、HSTケース105のうち油圧ポンプ103の横隣に位置する箇所に孔を穿孔して構成されている。ピストン11は、シリンダチューブ10の内部の一端(図3における紙面上方側)から他端(図3における紙面下方側)の間で移動可能である。また、油圧シリンダ1には、ピストン11を挟んで他端側に、上述した第一油室14が備えられ、一端側には第二油室15が備えられている。
この油圧シリンダ1の操作構造には、上述した主変速レバー4によって指令された目標位置を検知する「指令位置センサ」としてのポテンショメータ5と、ピストン11の現位置を検知する「現位置センサ」としてのポテンショメータ6と、現位置及び目標位置に基づいて第一バルブ2及び第二バルブ3を制御する制御部7と、が備えられている。制御部7によって第一バルブ2及び第二バルブ3が制御されて、第一油室14及び第二油室15に圧油が給排され、ピストン11が移動する。ポテンショメータ5及びポテンショメータ6は、極めて短い所定時間毎、もしくは、常時センシングするように設定されている。
ピストン11の外周部には、操作溝11bが形成されており、操作溝11bには、斜板120の外周部に突設された操作部121が係合されている。したがって、ピストン11が移動することにより、操作部121が操作され、結果的に斜板120が傾斜軸芯A回りに揺動する(図4参照)。本実施形態では、ピストン11が一端側(図3における紙面上方側)に位置する状態、即ち、図4に示す前進領域Fに斜板120が傾斜した状態で、作業車の不図示の走行装置は前進状態となるものとする。また、ピストン11が他端側(図3における紙面下方側)に位置する状態、即ち、後進領域Rに斜板120が傾斜した状態で、走行装置は後進状態となるものとする。さらに、ピストン11が中立位置Nに位置する状態、即ち、斜板120が中立位置Nとなった状態で、走行装置は停止状態となるものとする。
シリンダチューブ10の開放端(図3における紙面上側端)は、シリンダカバー19によって閉塞されている。シリンダカバー19には、スプリング13を外挿支持する支持ロッド12が貫通支持されている。支持ロッド12の端部12aが中間部分よりも拡径され、支持ロッド12に付勢力調整ナット16(ダブルナット)が締結され、スプリング13の両端部の夫々は、カラー17及びカラー18を介して、端部12aと付勢力調整ナット16とによって挟持されている。付勢力調整ナット16を締めたり、緩めたりすることで、スプリング13の付勢力を調整できる。
図2及び図3に示すごとく、HSTケース105には、油圧シリンダ1に隣接する状態でバルブケース115が取付けられている。第一バルブ2及び第二バルブ3は、バルブケース115に内装されている。バルブケース115とHSTケース105(シリンダチューブ10)とに亘って、第一バルブ2と第一油室14とを接続する第一油路8が形成されると共に、第二バルブ3と第二油室15とを接続する第二油路9が形成されている。また、バルブケース115には、ポテンショメータ6の検出アーム6aが内装されている。なお、ピストン11の外周部には、上述した操作溝11bと並列状態で、検出アーム6aが係合されるアーム係合溝11aが形成されている。
〔制御部の構成について〕
図5に示すごとく、制御部7には、操作情報生成部70と、制御パターン決定部71と、制御モード決定部72と、制御信号生成部73と、が備えられている。
ポテンショメータ5によって検知された目標位置及びポテンショメータ6によって現位置は、目標情報及び現位置情報として操作情報生成部70に送られる。そして、操作情報生成部70は、目標位置と現位置との偏差と、現位置が中立位置Nに対して前進領域F(本発明の「一方側の領域」)及び後進領域R(本発明の「他方側の領域」)のうち何れの領域に属するかを示す領域情報と、ピストン11が現在移動している方向を示す方向情報とを生成する。生成された偏差と領域情報と方向情報とは、制御パターン決定部71、制御モード決定部72、及び、制御信号生成部73に送られる。
なお、「偏差」としては、目標位置情報と現位置情報との差の絶対値や、この絶対値を増幅した値やこの絶対値の自然対数値等を用いることが考えられる。
また、「領域情報」は、現位置の値を用いることが考えられ、例えば、現位置の値が正値であれば、ピストン11は「前進領域F」に位置しており、負値であれば、ピストン11は「後進領域R」に位置していると判断することができる。
また、「方向情報」は、目標位置情報と現位置情報との差の正負値と領域情報との複合値等である。例えば、目標位置情報と現位置情報との差が「正」であり、かつ、ピストン11が「前進領域F」に位置していれば、ピストン11は現在、中立位置Nから前進領域F(シリンダチューブ10の一端側)へ向けて動いていると判断できる。
また、図6に示すごとく、方向情報が、[中立位置Nから前進領域F(シリンダチューブ10の一端側)への向き]のとき、及び、[中立位置Nから後進領域R(シリンダチューブ10の他端側)への向き]のときは、走行装置は増速状態である。また、方向情報が、[前進領域F(シリンダチューブ10の一端側)から中立位置Nへの向き]のとき、及び、[後進領域R(シリンダチューブ10の他端側)から中立位置Nへの向き]のときは、走行装置は減速状態である。
制御パターン決定部71は、偏差と領域情報と方向情報に基づいて、第一バルブ2を、圧油供給状態及び圧油排出状態のうち何れの状態に制御するか、及び、第二バルブ3を、圧油供給状態及び圧油排出状態のうち何れの状態に制御するか、の制御パターンを決定する。決定された制御パターンの情報は、制御モード決定部72及び制御信号生成部73に送られる。
制御モード決定部72は、偏差と領域情報と方向情報と制御パターンの情報とに基づいて、制御パターン決定部71によって圧油供給状態に制御することが決定されたバルブを、偏差のみに基づいて制御する(以下、「P制御」と称する)か、偏差及び偏差の積分値に基づいて制御するか(以下、「PI制御」と称する)の制御モードを決定する。決定された制御モードの情報は、制御信号生成部73に送られる。
制御信号生成部73は、偏差と領域情報と方向情報と制御パターンの情報と制御モードの情報とに基づいて、第一バルブ2及び第二バルブ3に対する制御信号を生成する。生成された制御信号は、第一バルブ2及び第二バルブ3に送られる。そして、第一バルブ2及び第二バルブ3が制御信号に基づいて制御されて、結果的に油圧シリンダ1が操作される。
〔制御信号について〕
図6及び図7に基づいて、制御部7に入力された入力値と制御信号生成部73によって生成される制御信号との関係、及び、その際の油圧シリンダ1の制御状態を説明する。制御部7への入力値としては、偏差と領域情報と方向情報とである。偏差は、電流値の大小を決定する際等に使用されたりする。また、ピストン11の操作指令量が大きく、ピストン11を後進領域Rから前進領域Fに移動させるような場合は、下記のように、中立位置Nを挟んで、制御が変わるが、偏差を予め勘案していることにより、少し先の状態を見込んだ好適な制御を行うことができる。
図6の(a)欄及び図7(a)に示すごとく、ピストン11が前進領域Fと中立位置Nとの間に位置し、かつ、ピストン11が現在、中立位置Nから前進領域Fに向けて移動している場合、制御部7は、第一バルブ2を圧油供給状態にしてPI制御モードで制御し、かつ、第二バルブ3を圧油排出状態にする。この場合は、スプリング13の中立位置N側への付勢力に、第一バルブ2による油圧力が勝って、ピストン11は中立位置Nから前進領域Fに向けて移動する。これにより、斜板120は図7(a)の白抜き矢印の向きに揺動して傾斜する。
図6の(b)欄及び図7(b)に示すごとく、ピストン11が前進領域Fと中立位置Nとの間に位置し、かつ、ピストン11が現在、前進領域Fから中立位置Nに向けて移動している場合、制御部7は、第一バルブ2を圧油供給状態にしてPI制御モードで制御し、かつ、第二バルブ3を圧油供給状態にしてP制御モードで制御する。この場合は、スプリング13の中立位置N側への付勢力に、第一バルブ2による油圧力が負けて、ピストン11は前進領域Fから中立位置Nに向けて移動する。これにより、斜板120は図7(b)の白抜き矢印の向きに揺動して傾斜する。そして、第二バルブ3がP制御されるので、例えば、スプリング13に作動不良や故障が生じた場合のみ、第二バルブ3による油圧力がスプリング13の付勢力を補助、補填し、ピストン11(斜板120)の応答性が落ちることがない。
図6の(c)欄及び図7(c)に示すごとく、ピストン11が後進領域Rと中立位置Nとの間に位置し、かつ、ピストン11が現在、中立位置Nから後進領域Rに向けて移動している場合、制御部7は、第一バルブ2を圧油排出状態にし、かつ、第二バルブ3を圧油供給状態にしてPI制御モードで制御する。この場合は、スプリング13の中立位置N側への付勢力に、第二バルブ3による油圧力が勝って、ピストン11は中立位置Nから後進領域Rに向けて移動する。これにより、斜板120は図7(c)の白抜き矢印の向きに揺動して傾斜する。
図6の(d)欄及び図7(d)に示すごとく、ピストン11が後進領域RFと中立位置Nとの間に位置し、かつ、ピストン11が現在、後進領域RFから中立位置Nに向けて移動している場合、制御部7は、第一バルブ2を圧油供給状態にしてP制御モードで制御し、かつ、第二バルブ3を圧油供給状態にしてPI制御モードで制御する。この場合は、スプリング13の中立位置N側への付勢力に、第二バルブ3による油圧力が負けて、ピストン11は後進領域RFから中立位置Nに向けて移動することになる。これにより、斜板120は図7(d)の白抜き矢印の向きに揺動して傾斜する。そして、第一バルブ2がP制御されるので、例えば、スプリング13に作動不良や故障が生じた場合のみ、第一バルブ2による油圧力がスプリング13の付勢力を補助、補填し、ピストン11(斜板120)の応答性が落ちることがない。
〔別実施形態について〕
(1)上述の実施形態では、スプリング13の付勢力に抗する圧油力を生み出すバルブを、PI制御する構成としたが、このバルブをP制御やPID制御する構成であっても良い。
(2)上述の実施形態では、スプリング13の付勢力を補助、補填するバルブをP制御する構成としたが、この制御がPI制御やPID制御であっても良い。
本発明は、コンバイン、トラクタ、田植機、草刈機、建設機械等の作業車の静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの斜板だけでなく、作業車の油圧機械式無段変速装置の油圧ポンプの斜板にも適用可能であり、また、油圧ポンプの斜板でなくとも可変容量型の油圧モータの斜板や、作業装置を昇降させる昇降シリンダの操作構造等にも適用可能である。
に適用できる。
1 油圧シリンダ
2 第一バルブ(第一圧力制御弁)
3 第二バルブ(第二圧力制御弁)
4 主変速レバー(操作具)
5 ポテンショメータ(指令位置センサ)
6 ポテンショメータ(現位置センサ)
7 制御部
10 シリンダチューブ
11 ピストン
13 スプリング(付勢機構)
14 第一油室
15 第二油室
70 操作情報生成部
71 制御パターン決定部
72 制御モード決定部
73 制御信号生成部
100 HST(静油圧式無段変速装置)
120 斜板(被操作対象)

Claims (6)

  1. シリンダチューブと、前記シリンダチューブに内装されたピストンと、前記ピストンを中立位置に常時付勢する付勢機構と、二つの油室と、が備えられ、前記二つの油室に対する圧油の給排によって前記ピストンが往復移動して、被操作対象を操作可能な複動型油圧シリンダの操作構造であって、
    前記二つの油室のうち第一油室に対して圧油を給排する第一圧力制御弁と、
    前記二つの油室のうち第二油室に対して圧油を給排する第二圧力制御弁と、
    前記ピストンの目標位置を指令する操作具と、
    前記操作具によって指令された前記目標位置を検知する指令位置センサと、
    前記ピストンの現位置を検知する現位置センサと、
    前記目標位置及び前記現位置に基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁を制御する制御部と、が備えられ、
    前記制御部は、
    前記ピストンを前記中立位置側から前記シリンダチューブの一端側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、
    前記ピストンを前記中立位置側から前記シリンダチューブの他端側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁のみを圧油供給状態に制御し、かつ、
    前記ピストンを前記一端側または前記他端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁を圧油供給状態に制御する複動型油圧シリンダの操作構造。
  2. 前記制御部は、
    前記目標位置及び前記現位置に基づいて、前記目標位置と前記現位置との偏差、前記現位置が前記中立位置に対して一方側の領域及び他方側の領域のうち何れの領域に属するかを示す領域情報、及び、前記ピストンが現在移動している方向を示す方向情報を生成する操作情報生成部と、
    前記偏差、前記領域情報及び前記方向情報に基づいて、前記第一圧力制御弁を圧油供給状態に制御するか、圧油排出状態に制御するか、及び、前記第二圧力制御弁を圧油供給状態に制御するか、圧油排出状態に制御するかの制御パターンを決定する制御パターン決定部と、
    前記偏差、前記領域情報、前記方向情報、及び、前記制御パターンに基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁のうち前記制御パターン決定部によって圧油供給状態に制御することが決定された圧力制御弁を、前記偏差のみに基づいて制御するか、前記偏差及びその他の要素に基づいて制御するかの制御モードを決定する制御モード決定部と、
    前記偏差、前記領域情報、前記方向情報、前記制御パターン、及び、前記制御モードに基づいて、前記第一圧力制御弁及び前記第二圧力制御弁に対する制御信号を生成する制御信号生成部と、が備えられている請求項1に記載の複動型油圧シリンダの操作構造。
  3. 前記制御モード決定部は、
    前記ピストンを前記中立位置側から前記一端側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御することを決定し、かつ、
    前記ピストンを前記中立位置側から前記他端側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御することを決定し、かつ、
    前記ピストンを前記一端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第一圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御すること、及び、前記第二圧力制御弁を前記偏差のみに基づいて制御することを決定し、
    前記ピストンを前記他端側から前記中立位置側に移動させる際には、前記第二圧力制御弁を前記偏差及びその他の要素に基づいて制御すること、及び、前記第一圧力制御弁を前記偏差のみに基づいて制御することを決定する請求項2に記載の複動型油圧シリンダの操作構造。
  4. 前記その他の要素は、前記偏差の積分値である請求項2または3に記載の複動型油圧シリンダの操作構造。
  5. 前記その他の要素は、前記偏差の積分値及び前記偏差の微分値である請求項2または3に記載の複動型油圧シリンダの操作構造。
  6. 前記被操作対象は、静油圧式無段変速装置または油圧機械式無段変速装置の油圧ポンプの斜板である請求項1から5の何れか一項に記載の複動型油圧シリンダの操作構造。
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