JP2014067670A - 放射線発生ユニット及び放射線撮影システム - Google Patents

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Abstract

【課題】放射線発生管1の真空容器8を構成する電極2,4と管状部材6の接合において、安定した密閉状態を得ると同時に、接合面の間からはみ出した導電性接合材13による電界集中を抑制できるようにした放射線発生管1を用いることで、放射線発生ユニット21の信頼性及び性能を向上させる。
【解決手段】電極2,4に、この電極2,4の周縁から管状部材6側に延出した環状の延出部16を設け、延出部16の内側に前記管状部材6の端部を差し込み、管状部材6端面と、この端面と対向する電極2,4の表面との間に導電性接合材13を挟み込んで両者を接合すると共に、延出部16の基部側内周面と、この基部側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間にも導電性接合材13が入り込んでいる一方、延出部16の先端側内周面と、この先端側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間は導電性接合材13が挟み込まれていない空隙15として残した放射線発生管1を用いた放射線発生ユニット21とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、放射線発生管を放射線源として備えた放射線発生ユニット及この放射線発生ユニットを用いた放射線撮影システムに関する。
従来、放射線発生ユニットの放射線源として使用される放射線発生管には、絶縁性の管状部材と、導電性の電極とからなる真空容器が使用されており、この管状部材と電極の接合にはろう材が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
米国特許第7382862号明細書
ところで、放射線発生管の真空容器には、内部の真空雰囲気を維持できる密閉性が要求される。このため、この真空容器を構成する管状部材と電極の接合は、安定した密閉状態が得られるようにして信頼性を高める上で、必要十分な量のろう材等の導電性接合材を用いて行うことが好ましい。
しかしながら、必要十分な量の導電性接合材を用いて接合を行うと、相対向する管状部材の接合面と電極の接合面との間(以降、本明細書では「接合面間」と称する)から導電性接合材がはみ出しやすくなる。接合面間から導電性接合材がはみ出した場合、はみ出した導電性接合材の形状によっては、放射線発生管を駆動させた際に、はみ出した導電性接合材の先端に電界が集中し、この放射線発生管を用いた放射線発生装置内の異常放電を誘発する恐れがある。
一方、放射線発生ユニット及び放射線撮影システムにおいては、小型化や、放出される放射線の高エネルギー化に対応するために、使用する放射線発生管の耐電圧特性の向上が求められている。また、耐電圧特性を向上させることにより、動作安定性が向上し、高圧印加が可能となることで、性能向上が期待される。放射線発生管の真空容器について、安定した密閉性と同時に、耐電圧特性を向上させることで、放射線発生ユニット及びこれを用いた放射線撮影システムの信頼性と性能を向上させることが可能となる。
本発明は放射線発生管の真空容器を構成する電極と管状部材の接合において、安定した密閉状態を得ると同時に、接合面の間からはみ出した導電性接合材による電界集中を抑制できるようにし、もって放射線発生ユニット及び放射線撮影システムの信頼性及び性能を向上させることを目的とする。
本発明の第1は、絶縁性の管状部材と、該管状部材の開口の一方に接合された陰極及び前記管状部材の開口の他方に接合された陽極を備えた真空容器と、前記陰極に接続された電子放出源と、前記陽極に接続されたターゲットとを有し、前記管状部材と、前記陰極及び陽極の少なくとも一方の電極とが、相対向する前記管状部材側の接合面と、前記少なくとも一方の電極側の接合面との間に導電性接合材を挟み込んで接合された放射線管と、該放射線発生管を収容し、前記放射線発生管から生じる放射線を取り出すための放出窓を有する収納容器とを備えた放射線発生ユニットにおいて、
前記少なくとも一方の電極が、該電極の周縁から前記管状部材側に延出した環状の延出部を有し、該延出部の内側に前記管状部材の一方の端部が差し込まれており、前記管状部材の一方の端面と、該端面と対向する前記少なくとも一方の電極の表面とが前記接合面を構成していると共に、前記延出部の先端側内周面と、該先端側内周面に対向する前記管状部材の一方の端部の外周面との間を前記導電性接合材が挟み込まれていない空隙として残して、前記延出部の基部側内周面と、該基部側内周面に対向する前記管状部材の一方の端部の外周面との間にも前記導電性接合材が入り込んでいることを特徴とする放射線発生ユニットを提供するものである。
また、本発明の第2は、本発明の第1に係る放射線発生ユニットと、
前記放射線発生ユニットから放出され、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出装置と、
前記放射線発生装置と前記放射線検出装置とを連携制御する制御装置とを備えることを特徴とする放射線撮影システムを提供するものである。
本発明においては、放射線発生管の管状部材と電極の接合面の間からはみ出した導電性接合材は延出部内に留められている。従って、電極と管状部材間の接合面からはみ出した導電性接合材の先端が他方の電極と直接対向することがなく、駆動時の電界集中を防止することができ、放射線発生管の耐電圧特性が向上し、長時間に亘り、安定した密閉性と高い耐圧特性を維持することができる。このため、この放射線発生管を用いた本発明の放射線発生ユニット及びこれを用いた放射線撮影システムの信頼性及び放射線出力安定性等の性能を高めることができる。
本発明に係る放射線発生ユニットの一実施形態を示す断面図である。 図1の放射線発生ユニットに用いられている放射線発生管の電極と管状部材の接合部周りの拡大断面図である。 放射線発生管の電極と管状部材を接合する場合の第二の例を示す拡大断面図である。 放射線発生管の電極と管状部材を接合部する場合の第三の例を示す拡大断面図である。 放射線発生管の電極と管状部材を接合部する場合の第四の例を示す拡大断面図である。 本発明に係る放射線撮影システムの一実施形態を示す説明図である。
以下、図面に基づいて本発明を更に説明する。なお、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
図1および図2を用いて本発明の放射線発生ユニット及びそれに用いる放射線発生管の構成例について説明する。
まず、放射線発生管1について説明する。放射線発生管1は、電子放出源(電子銃)3と、ターゲット5と、真空容器8とを備えている。真空容器8は、絶縁性の管状部材6と、この管状部材6の開口の一方に接合された電極である陰極2と、開口の他方に接続された電極である陽極4とを備えている。
電子放出源3は、電子を放出する電子放出部9と、陰極2に接続された電流導入端子11を備えている。電子放出源3は、真空容器8の外部より放出電子量を制御可能な電子放出機能を有するものであればよく、冷陰極型電子放出源、熱陰極型電子放出源等を適宜適用することが可能である。また、大電流の電子線10を安定して取り出せる点では、含浸型カソードの熱陰極型電子放出源を好適に使用することができる。電子放出源3は、陰極2に設けた電流導入端子11を介して、電子放出量の制御及び電子放出のオン・オフのタイミング制御を可能とするために、真空容器8の外部に設置した駆動回路12に電気的に接続されている。この実施形態では、駆動回路12は真空容器8の外部に設置されているが、真空容器8の内部に設置することも可能である。
真空容器8内は、電子放出源3が備える電子放出部9から放出された電子が、電子線10としてターゲット5に照射可能な程度に減圧(真空排気)されている。真空容器8の内部空間の真空度は、使用する電子放出源3の種類や、駆動条件等を考慮して適宜選択する事が可能であるが、通常、1×10-8〜1×10-4Pa程度の真空度とされる。電子放出源としてスピント型、MIM等の冷陰極型電子放出源を使用した場合には、電子放出特性の安定性の観点から、1×10-6Pa以下の真空度とすることが好ましい。真空容器8内の真空度の維持のために、不図示のゲッタを真空容器8の内部空間又は内部空間に連通している不図示の補助スペースに設置することも可能である。
陰極2は、電子放出源3の周辺の静電場の空間的な非対称性を緩和すると共に局所的な電界集中が生じないように、真空容器8に対する電子放出源3の取り付け部の静電場を規定している。電子放出源3は電子放出部9を有しており、電子放出部9は、放出電子電流を供給する2極の電極をエミッタ電極対として備える(不図示)。電子線10の集束、非点収差補正等の電子光学的な機能を付加する場合は、更に数極の補助電極(不図示)を設けることができる。前述のエミッタ電極対と補助電極からなる電極群は、陰極2側から、放射線発生管1の外部の駆動回路12と電流導入端子11を介して接続することが可能である。前述の静電場の非対称性の緩和の観点からは、陰極2は、陽極4の電極電位に対して充分低い定電位に規定されることが好ましく、電子放出部9の電位を供給するエミッタ電極対のいずれか一方と同電位に規定するか、エミッタ電極対のそれぞれの電位の中間電位により電位規定することも可能である。また、前記補助電極は、放射線発生管1の外部に配置した不図示の補正回路と接続することが可能である。前記補正回路および前記電圧源は、いずれも、駆動回路12が備えるようにすることも可能である。
また、陰極2は延出部16を有しており、延出部16の内側に管状部材6の一方の端部が差し込まれている。
陽極4は、不図示の電圧源によりターゲット5を電位規定し、後述するターゲット5に流れる陽極電流を、前記電圧源を介して接地端子7に通電する機能を有する。更に、陽極4は、陰極2と同様にして、放射線発生管1のターゲット5の周辺の静電場を規定している。陽極4には、放射線の照射範囲を規定可能な不図示の遮蔽体を設けることも可能であり、陽極4とターゲット5とは、この遮蔽体を介して接続することも可能である。
また、陽極4も陰極2と同様に延出部16を有しており、延出部16の内側に管状部材6の一方の端部が差し込まれている。
陽極2と陰極4の材料は、導電性、気密性、強度、及び管状部材6との線膨張係数整合によって決定することが可能であり、コバールやタングステン等を適用することができる。
ターゲット5には、電子放出部9に対して10kV〜200kVの正電位が印加されており、電子放出部9から放出された電子が電子線10として、10keV〜200keVの入射エネルギーをもってターゲット5に入射して放射線を発生させる。従って、陰極2と陽極4間の電界分布の非対称性を抑制する観点から、陽極4には、陰極2に対して、電子放出部9に対するターゲット5の電位と同程度の正電位が印加されることが好ましい。
ターゲット5は、電子の衝突によって放射線を発生する重元素を含有したターゲット材を備えている。ターゲット5は、ターゲット材のみからなる自立型の形態とすることが可能であり、自立型の形態としては、ダイアフラム状の金属薄膜が陽極4に接続されている形態を含む。また、ターゲット5は、放射線を透過する材料中にターゲット材料を分散した状態で含有する分散型形態とすることや、ターゲット材料を含む金属薄膜を、放射線を透過させる材料からなる支持基板上に積層した積層型の形態とすることも可能である。放射線を透過させる支持基板としては、ベリリウムやダイアモンドのような低原子番号材料からなる基板が好ましい。金属薄膜は数μmの厚さで支持基板上に形成することが、放射線の減衰を抑制する点、ターゲット5の熱変形によるデフォーカスを抑制する点で好ましい。この金属薄膜は、放射線量/入射電子量の変換効率の観点から、原子番号26以上の重金属材料を用いることが好ましい。具体的には、タングステン、モリブデン、クロム、銅、コバルト、鉄、ロジウム又はレニウム若しくはこれらの合金材料とすることが可能である。支持基板上への金属薄膜の形成方法は、支持基板との密着性が確保されればよく、特定の方法には限定されるものではない。金属薄膜の形成方法としては、スパッタ、CVD、蒸着等の各種成膜方法が利用可能である。
管状部材6は電気的絶縁性を有する。図示される管状部材6は、陰極2と陽極4がそれぞれを接合された両端の開口を備えている。管状部材6、陰極2及び陽極4で構成されている真空容器8は、電子放出部9から放出された電子のターゲット5への照射を許容する内部空間を形成できるものであればよい。すなわち、図1および図2のように陰極2と陽極4が互いに露出して対向している形態だけでなく、管状部材6の内部空間が不図示の仕切壁により区分されており、電子放出源3が仕切壁を貫通して設置されているような形態も含まれる。また、陽極4又は陰極2が、管状部材6の側面に接続された形態としても良い。更には、陰極2と陽極4が互いに対向せずに、非平行な位置関係に接合された形態とすることも可能である。管状部材6の断面の外周形状や内周形状は円形に限らず多角形であってもよい。管状部材6の材料は、電気絶縁性、気密性、低ガス放出性、耐熱性及び陰極2や陽極4との線膨張係数整合の観点で選ばれるが、ボロンナイトライド、アルミナ等の絶縁性セラミック、ホウケイ酸ガラス等の絶縁性の無機ガラスが適用可能である。
本実施形態においては、陰極2及び陽極4の両者が、管状部材6の各端面と、この各端面と対向する陰極2及び陽極4の各表面とが管状部材側の接合面と電極側の接合面をそれぞれ構成し、それぞれの間に導電性接合材13を挟み込んで接合されている。しかし、管状部材6と導電性接合材13によって接合するのは、陰極2及び陽極4のいずれか一方の電極とすることもできる。導電性接合材13としては、導電性と耐熱性を有し、しかも電極材料と絶縁材料との間の、所謂、異種材料間の接合性が良好であることから、銀ろう、銅ろう等の硬ろう(ろう付け用合金)が好ましい。
導電性接合材13は、接合工程において接合対象の変形を防止しやすくするために、接合すべき少なくとも一方の電極および、管状部材6のいずれよりも融点が低く、接合すべき少なくとも一方の電極及び管状部材6よりも軟化変形しやすい性質を備えていることが好ましい。また、これと共に、接合すべき少なくとも一方の電極及び管状部材6に対する濡れ性が良好で、密着しやすい性質を有することが好ましい。
本実施形態においては、陰極2及び陽極4の周縁からそれぞれ管状部材側に環状の延出部16が延出しており、この延出部16の内側に管状部材6の端部がそれぞれ差し込まれている。延出部16の内側に差し込まれた管状部材6の端部の外周面と、延出部16の内周面とは、互いに相対向しており、延出部16の基部側内周面と、この基部側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間にも導電性接合材13が入り込んでいる。しかし、延出部16の先端側内周面と、この先端側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間は導電性接合材13が挟み込まれていない空隙15として残されている。延出部16の基部側内周面と、この基部側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間に入り込んでいる導電性接合材13は、管状部材6の各端面と、この各端面と対向する陰極2及び陽極4の各表面との間に挟み込まれた導電性接合材13がはみ出してきたものである。
真空容器8の真空気密性を良好なものとするためには、必要十分な量の導電性接合材13が必要であり、その結果として、導電性接合材13は管状部材6の外周面に濡れ広がる。濡れ広がる導電性接合材13は、実質的に陰極2や陽極4と同電位に規定される。濡れ広がった導電性接合材13の状態によっては電界集中が発生する。導電性接合材13の濡れ広がりの形状によっては、局所的な突起形状の変形や、形状分布が生じる観察事実も認められ、このような導電性接合材13の形状分布は、電界集中を一層助長する。このような電界集中ポイントが他方の電極に対して露出していると、耐電圧特性が一層制限される。
本実施形態においては、上記導電性接合材13の濡れ広がりによる耐電圧特性低下防止のために、濡れ広がった導電性接合材13の先端を延出部16の先端より外側に出ない位置に留めている。導電性接合材13の先端を延出部16の内側に留めることにより、延出部16の先端が電界集中箇所となる。導電性接合材13が濡れ広がり電界集中箇所となった場合、規定することは難しいが、予め形成された延出部16の先端が電界集中箇所となる場合、予め設計段階で放電防止を図ることができる。
更に管状部材6と電極の接合状態を説明すると、図2に示されるように、延出部16の先端側の内径が基部側の内径より段差19を介して大きくなっている。延出部16の基部側内周面と、この基部側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間は、間隔が狭くなっており、導電性接合材13が入り込んでいる。しかし、延出部16の先端側内周面と、この先端側内周面に対向する管状部材6の端部の外周面との間は、間隔が広くなっており、この領域は導電性接合材13が挟み込まれていない空隙15として残されている。
また、図3に示すように、延出部16は、少なくとも一方の電極(陽極4又は陰極2)の周縁から突出した環状の基部側延出部17と、この基部側延出部17の外周面に着脱可能に接合された環状の先端側延出部18とで構成することもできる。前端側延出部18接合は、不図示の導電性の接合材による接合やかしめ等で固着することもできるが、ネジ込み等で脱着可能としておくことが好ましい。このような構成とすることにより、予め濡れ出る導電性接合材13の量が不明である場合に、陰極2または陽極4と管状部材6の接合後に、先端側延出部18を後付けして延出部16とすることができる利点がある。また、予め複数の長さに規定した先端側延出部18を複数製造しておき、導電性接合材13の濡れ広がりによって使い分けることができる。さらに、放射線発生管駆動時には先端側延出部18の先端が電界集中箇所となるため、予め設計された先端側延出部18を複数製造することで、どのような長さの先端側延出部18も設置することができるが、導電性接合材13を最低限に留め、間隙15を有する程度になるべく短い方が望ましい。
図4で示す形態では、延出部16の内径が、先端方向に向かって徐々に広げられており、延出部16の内面が先端方向に向かって徐々に広がるテーパー面14を形成している。このような構成とすることにより、管状部材6および延出部16の導電性接合材13に対する濡れ性と、導電性接合材13の表面張力により、適度な間隙15において力が均衡することにより導電性接合材13が延出部16からはみ出ることを確実に防止することができる。延出部16の傾斜や突出量は導電性接合材13の経験的な濡れ出る量から適宜決めることができる。導電性接合材13の表面張力が働くため、導電性接合材13が、管状部材6および延出部16の両方に濡れ広がっていた方が好ましい。この時、導電性接合材13の濡れ広がりは、管状部材6上に先端24が留まり、延出部16側に先端25が留まる。具体的には、管状部材6の開口端を基準に、先端25までの距離をa、先端24までの距離をb、延出部16の傾斜開始点までの距離をcとした時、a>cかつb>cを満たす形状となる。つまり、表面張力の関係で、管状部材6表面および延出部16表面に対して導電性接合材13が濡れ広がるため、導電性接合材13の断面中央部分が凹んだ形状に留められる。
さらに、図5のように、管状部材6の一方(または両方)の端部の外径が、管状部材6の他方(反対側の)の端部に向かって徐々に縮小されたものとし、管状部材6の外面に傾斜26を形成して導電性接合材13を延出部16内に留めることもできる。図5に示すように、延出部16は導電性接合材13が間隙15に留まる程度の長さに形成されている。この形態では、管状部材6側の表面に傾斜26を設けたことにより、延出部16側の先端25よりも管状部材6側の先端24のほうが長く濡れた状態で、導電性接合材13の断面中央部分が凹んだ形状に留めることができ、図4に示す放射線発生管と同様の効果がある。
本発明の放射線発生管を用いると、延出部16の先端も電界集中するが、放射線発生管の構造から予め設計することができる。よって、濡れ出た導電性接合材13の先端のような予期しない電界集中点を電気的に隠し、予め設計された電界分布の放射線発生管を形成することができ、安定した耐圧特性が得られる。
図1に示されるように、放射線発生管1は、収納容器20に収容され放射線発生ユニット21を構成している。収納容器20には、放射線発生管1からの放射線の出射方向に合わせて、放射線の放出窓22が設けられている。放射線発生管1を収納した収納容器20内の余剰空間には、放射線発生ユニット21の耐電圧特性と駆動時の動作特性の安定化の観点から、絶縁性の流体(絶縁性液体23)が充填されている。絶縁性液体23を導入しておくことにより、放射線発生管1の陰極2と陽極4の間の絶縁性を確保した上で、放射線発生管1の動作時の放熱性を向上することが可能となる。絶縁性液体23は、電気絶縁性が高く、冷却能力の高く、熱による変質の少ないものが好ましく、例えば、シリコーン油、トランス油、フッ素系オイル等の電気絶縁油、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系の絶縁性液体等が使用可能である。
放射線発生管1を駆動するための駆動回路12は、収納容器20の内外のいずれに配置することも可能である。
収納容器20は、放射線発生ユニット21の動作安定性や安全性の観点から、所定の電位に規定することが好ましい。好適な所定の規定電位としては、接地端子7を介して規定した接地電位である。収納容器20の材料としては、各種の材料を選択することが可能であるが、放射線遮蔽性、強度、表面電位規定性能の観点から、鉄、ステンレス、鉛、真鍮、銅等の金属が使用可能である。
本発明の放射線発生管は、透過型ターゲットを備えた放射線発生管に限定されず、反射型ターゲットを備えた放射線発生管にも好適に適用できる。
次に、図6に基づいて、本発明に係る放射線撮影システムの一実施形態を説明する。
図6に示すように、既に説明した放射線発生ユニット21は、その放出窓22部分に設けられた可動絞りユニット100と共に放射線発生装置200を構成している。可動絞りユニット100は、放射線発生ユニット21から照射される放射線の照射野の広さを調整する機能を有する。また、可動絞りユニット100として、放射線の照射野を可視光により模擬表示できる機能が付加されたものを用いることもできる。
システム制御装置202は、放射線発生装置200と放射線検出装置201とを連携制御する。駆動回路12は、システム制御装置202による制御の下に、放射線発生管1に各種の制御信号を出力する。この制御信号により、放射線発生装置200から放出される放射線の放出状態が制御される。放射線発生装置200から放出された放射線は、被検体204を透過して検出器206で検出される。検出器206は、検出した放射線を画像信号に変換して信号処理部205に出力する。信号処理部205は、システム制御装置202による制御の下に、画像信号に所定の信号処理を施し、処理された画像信号をシステム制御装置202に出力する。システム制御装置202は、処理された画像信号に基づいて、表示装置203に画像を表示させるための表示信号を表示装置203に出力する。表示装置203は、表示信号に基づく画像を、被検体204の撮影画像としてスクリーンに表示する。放射線の代表例はX線であり、本発明の放射線発生ユニット13と放射線撮影システムは、X線発生ユニットとX線撮影システムとして利用することができる。X線撮影システムは、工業製品の非破壊検査や人体や動物の病理診断に用いることができる。
(実施例1)
本実施例は上記実施形態で例示された構成の例であり、以下、図2を用いて詳細に説明する。
本実施例の放射線発生管を以下のようにして作成した。まず、住友電気工業株式会社製の高圧合成ダイアモンドを支持基板して用意した。前記支持基板は、直径5mm、厚さ1mmのディスク状(円柱状)の形状である。用意した支持基板を、UV−オゾンアッシャにより支持基板の表面にある有機物を除去した。
この支持基板の直径1mmの円形の2面のうちの一方の面上に、スパッタ法により、Arをキャリアガスとして、チタンからなる密着層を10nmの厚さで形成した。チタンの成膜時の支持基板は、260℃となるようにステージ加熱により加熱した。次に、成膜装置の雰囲気をベントする事なしに、連続成膜により、密着層の上に、Arをキャリアガスとして、スパッタにより、タングステンからなるターゲット層を7μmの厚さに形成した。タングステンの成膜時のダイアモンドからなる支持基板は、チタンの成膜時と同様に、260℃となるようにステージ加熱により加熱した。
チタンからなる密着層およびタングステンからなるターゲット層の各層の厚さは、積層成膜する前に、予め、単層膜で成膜した膜厚と成膜時間との検量線データを取得し、成膜時間により指定の膜厚となるようにして調整した。検量線データを取得する為の膜厚の測定は、株式会社 堀場製作所製の分光エリプソメータUVISEL ERを用いた。このようにして、ダイアモンドからなる支持基板、チタンからなる密着層、タングステンからなるターゲット層がこの順に積層したターゲット5を得た。
次に、直径60mmΦで厚さ3mmのディスク状のコバールからなる金属板の中心部に、直径1.1mmΦの円柱状の開口を形成するように加工して陽極4とした。さらに陽極4の外周部には、段差19が形成されている延出部16を設けている。具体的には陽極4の外周側に厚さ1mm、金属板からのはみ出し量が5mmの部分と、内周が61mm、厚みが0.5mm、金属板からのはみ出し量が10mmの部分が形成されている延出部16である。陽極4に対して、有機溶媒洗浄、リンス、UV−オゾンアッシャ処理によって、陽極4の表面にある有機物を除去した。
次に、陽極4の開口と、ディスク状のターゲット5の外周部との間に、銀ろうを導電性接合材として付与し、ろう付けを行い、ターゲット5が接続された陽極4を得た。
次に、直径60mmΦで厚さ3mmのディスク状のコバールからなる金属板の中心部に、予め、電流導入端子11を備え付けて陰極2とした。陰極2も陽極4と同様に延出部16を設けている。陰極2に対して、陽極4にした洗浄と同様の洗浄を行い、有機溶媒洗浄、リンス、UV−オゾンアッシャ処理によって、陽極4の表面にある有機物を除去した。
次に、電流導入端子11と含浸型電子銃を電気的および機械的に接続して、電子放出源3と接続された陰極2を得た。
次に、長さ70mm、外径60mm、内径50mmの円管状で、アルミナからなる誘電性の管状部材6を用意した。管状部材6に対しても、陰極2や陽極4にしたのと同様の洗浄を行い、表面の有機物を除去した。
次に、陰極2の電子放出源3が接続された面と、管状部材6の一方の開口端との間に、環状に成形した日本工業規格BAg―8(Ag72−Cu28、融点780℃)の銀ろうを挿入して820℃でろう付けを行った。このろう付けにより、環状に気密接合した導電性接合材13を備える接合部を形成した。この際、銀ろうは陰極2の延出部16の内側と管状部材6の外周表面との間ににも濡れ出し、より確実に気密接合される。
次に、管状部材6の他方の開口端と、ターゲット5のタングステンを露出している側の陽極4の面とを、陰極2側の接合と同様のろう付けを行い、環状に気密接合した導電性接合材13を備える接合部を形成した。この際、銀ろうは陽極4の延出部16の内側と管状部材6の外周表面との間にも濡れ出し、より確実に機密接合される。
以上によって、陰極2と陽極4とのそれぞれと、管状部材6とを、管状部材6の二つの開口端においてそれぞれに気密接合により接続した真空容器8を作成した。
次に、不図示の排気管と排気装置により、真空容器8の内部を1E−5Paの真空度となるように排気した後、排気管を封止することにより、放射線発生管1を作成した。
上記のような方法で、放射線発生管1を5個作製し、延出部16の周辺を観察したところ、接合面間から濡れ出した銀ろうが、延出部16よりもはみ出すことは無かった。さらに、放射線発生装置18に用いた絶縁性液体20と同じ電気絶縁油中で高電圧印加を試みた。陰極2を接地し、陽極4を高圧電源に接続し、徐々に陽極電圧を140kVまで上げていった。5個すべてが、最終的に140kVまで印加可能であった。
上記作製した放射線発生管1を用いて放射線発生ユニット21とし、駆動したところ、安定して放射線であるX線の放出が確認できた。
(比較例1)
実施例1で作成した放射線発生管1に対して、延出部16を設けずに、実施例1同様の作成工程によって、図5に示す放射線発生管を5個作成した。
作製した放射線発生管の接合部から濡れ出した銀ろうを観察したところ、先端部が波状であった。更に、実施例1と同様に、高電圧印加を試みた。5個とも、140kV以下の電圧にて、連続的に放電し、140kVを安定に印加することができなかった。また、放電した個所を観察したところ、銀ろうが飛散したような痕跡が確認された。
(実施例2)
実施例1で作成した放射線発生管1に対して、延出部16の形状を図4に示す形に変更した。具体的には、接合のための延出部16を5mm、傾斜を設けた延出部16を5mm設けた。延出部16の外周は62mmとし、先端の厚みを0.2mmとし、延出部16と管状部材6が接合している境界から延出部16の先端まで直線的な傾斜により広げたテーパーとした。
上記のような方法で、放射線発生管1を5個作製し、延出部16の周辺を観察したところ、接合部から濡れ出した銀ろうが、延出部16よりもはみ出すことは無かった。さらに、放射線発生装置18に用いた絶縁性液体20と同じ電気絶縁油中で高電圧印加を試みた。陰極2を接地し、陽極4を高圧電源に接続し、徐々に陽極電圧を140kVまで上げていった。5個すべてが、最終的に140kVまで印加可能であった。
上記作製した放射線発生管1を用いて放射線発生ユニット21とし、駆動したところ、安定して放射線であるX線の放出が確認できた。
1:放射線発生管、2:陰極、3:電子放出源、4:陽極、5:ターゲット、6:管状部材、7:接地端子、8:真空容器、9:電子放出部、10:電子線、11:電流導入端子、12:駆動回路、13:導電性接合材、14:テーパー面、15:間隙、16:延出部、17:基部側延出部、18:先端側延出部、19:段差、20:収納容器、21:放射線発生ユニット、22:放出窓、23:絶縁性液体、26:傾斜、100:可動絞りユニット、200:放射線発生装置、201:放射線検出装置、202:システム制御装置、203:表示装置、204:被検体、205:信号処理部、206:検出器

Claims (9)

  1. 絶縁性の管状部材と、該管状部材の開口の一方に接合された陰極及び前記管状部材の開口の他方に接合された陽極を備えた真空容器と、前記陰極に接続された電子放出源と、前記陽極に接続されたターゲットとを有し、前記管状部材と、前記陰極及び陽極の少なくとも一方の電極とが、相対向する前記管状部材側の接合面と、前記少なくとも一方の電極側の接合面との間に導電性接合材を挟み込んで接合された放射線発生管と、該放射線発生管を収容し、前記放射線発生管から生じる放射線を取り出すための放出窓を有する収納容器とを備えた放射線発生ユニットにおいて、
    前記少なくとも一方の電極が、該電極の周縁から前記管状部材側に延出した環状の延出部を有し、該延出部の内側に前記管状部材の一方の端部が差し込まれており、前記管状部材の一方の端面と、該端面と対向する前記少なくとも一方の電極の表面とが前記接合面を構成していると共に、前記延出部の先端側内周面と、該先端側内周面に対向する前記管状部材の一方の端部の外周面との間を前記導電性接合材が挟み込まれていない空隙として残して、前記延出部の基部側内周面と、該基部側内周面に対向する前記管状部材の一方の端部の外周面との間にも前記導電性接合材が入り込んでいることを特徴とする放射線発生ユニット。
  2. 前記延出部の先端側の内径が基部側の内径より段差を介して大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の放射線発生ユニット。
  3. 前記延出部は、前記少なくとも一方の電極の周縁から突出した基部側延出部と、該基部側延出部の外周面に着脱可能に接合された先端側延出部とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線発生ユニット。
  4. 前記延出部の内径が、先端方向に向かって徐々に広げられていることを特徴とする請求項1記載の放射線発生ユニット。
  5. 前記管状部材の一方の端部の外径が、前記管状部材の他方の端部に向かって徐々に縮小されていることを特徴とする請求項1記載の放射線発生ユニット。
  6. 前記導電性接合材の融点が、前記少なくとも一方の電極及び前記管状部材の融点より低いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線発生ユニット。
  7. 前記導電性接合材が、硬ろうであることを特徴とする請求項6に記載の放射線発生ユニット。
  8. 前記放射線発生管を収容した内部の余剰空間には絶縁性液体が満たされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の放射線発生ユニット。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の放射線発生ユニットと、
    前記放射線発生ユニットから放出され、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出装置と、
    前記放射線発生装置と前記放射線検出装置とを連携制御する制御装置とを備えることを特徴とする放射線撮影システム。
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