JP2014062863A - 有機無機複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の技術的課題は、放射線遮蔽能が十分に高いと共に、石膏ボード、鉄板、コンクリート等を併用しなくても、自立性や強度が高く、しかもリサイクルのため分別回収されたガラスを再利用し得る放射線遮蔽材を創案することである。
【解決手段】本発明の有機無機複合体は、実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有し、放射線遮蔽材に用いられることを特徴とする。リサイクルによって回収されたガラスは、例えば、ブラウン管のパネルガラス、プラズマディスプレイのガラス、光学ガラス等である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の有機無機複合体は、実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有し、放射線遮蔽材に用いられることを特徴とする。リサイクルによって回収されたガラスは、例えば、ブラウン管のパネルガラス、プラズマディスプレイのガラス、光学ガラス等である。
【選択図】なし
Description
本発明は、放射線遮蔽材に用いられる有機無機複合体に関し、具体的には放射線を扱う理化学機器周辺、原子力施設、医療施設等の壁材等に好適な有機無機複合体に関する。
放射線を扱う理化学機器周辺、原子力施設、医療施設等では、放射線遮蔽材が使用されている。例えば、放射線遮蔽材として、鉛を含有するガラス(鉛ガラス)が使用されている。特に、観察窓や覗き窓は、オペレーターや医療従事者等の視認性を確保するため、透明度の高い鉛ガラスが使用されている。一方、観察窓や覗き窓以外の部分は、外部に放射線を漏洩させない限り、透明性が要求されない。よって、この部分には、一般的に、石膏ボードや塗装した化粧板を貼り付けた鉄板又は鉛板が使用されている。
ところで、2011年7月にアナログ放送がデジタル放送に移行した。これに伴い、多数のアナログテレビが、リサイクルされている。アナログテレビは、ブラウン管テレビが中心であり、その質量の大半をガラスが占めている。ブラウン管のパネル部分には、ブラウン管内で発生した放射線を遮蔽するために、バリウムやストロンチウム等の原子番号の大きな元素を多く含むガラスが使用されている。
ブラウン管テレビは、リサイクル業者により、分解後、金属、プラスチック、配線、ガラス等の部材毎に分別される。分別回収されたパネルガラスは、再度、パネルガラスの生産にリサイクルすることが可能である。しかしながら、ブラウン管テレビは、将来的には、生産終了になる可能性がある。そして、ブラウン管テレビの生産が終了すると、膨大な量のパネルガラスが余ることが予想される。
このような事情に鑑み、破砕したブラウン管用ガラスを箱に詰めて放射線遮蔽材として使用する試みが検討されている(非特許文献1参照)。
インターネット<URL:http://www.nims.go.jp/news/press/2011/07/p201107250.html>
従来放射線遮蔽材として用いられてきた鉛板は、高い放射線遮蔽能を有するが、素材が柔らかいため、壁材として使用すると、自立性や強度が不足する。このため、鉛板を壁材として使用する場合、石膏ボード、鉄板、コンクリート等を併用する必要がある。そして、これらの放射線遮蔽材は高コストである。また、鉛は環境負荷が高い物質である。したがって、鉛を用いない放射線遮蔽材が求められている。
一方で、非特許文献1に記載のような方法で作製された放射線遮蔽材は、放射線を遮蔽し得るものの、箱内の破砕ガラス間の空隙の状態によっては、放射線遮蔽能が均一にならず、放射線が想定以上に漏洩する虞がある。
そこで、本発明の技術的課題は、放射線遮蔽能が十分に高いと共に、石膏ボード、鉄板、コンクリート等を併用しなくても、自立性や強度が高く、しかもリサイクルのため分別回収されたガラスを再利用し得る低コスト且つ環境負荷の低い放射線遮蔽材を創案することである。
本発明者等は、種々の実験を行った結果、実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収された放射線遮蔽能の高いガラスと、有機材料とを所定割合含む有機無機複合体を放射線遮蔽材として用いることにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の有機無機複合体は、実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有し、放射線遮蔽材に用いることを特徴とする。ここで、「実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス」は、そのまま破砕したものであってもよいし、溶融して繊維状などに成形したガラス、熱処理によって結晶が析出したガラスであってもよい。なお、「実質的に鉛を含有せず」とは、鉛の含有量が1000ppm未満であることを指す。
また、本発明の有機無機複合体は、上記ガラスが、ブラウン管のパネルガラス、プラズマディスプレイのガラス、光学ガラスのいずれかを含むことが好ましい。
また、本発明の有機無機複合体は、板状であることが好ましい。
また、本発明の有機無機複合体は、ガラスが粉末状であり、且つその平均粒子径D50が1〜100μmであることが好ましい。なお、「平均粒子径D50」は、例えば、レーザー回折法等で測定可能である。
また、本発明の有機無機複合体は、ガラスが繊維状であり、且つその直径が1〜100μmであることが好ましい。
また、本発明の有機無機複合体は、厚さ5mmの板状に成形した場合に、板厚方向に管電圧100kVで照射したX線の透過率が10%以下であることが好ましい。
本発明の有機無機複合体は、実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有する。ガラスの含有量は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。有機材料の含有量は、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。ガラスの含有量が少な過ぎると、十分な放射線遮蔽能を確保し難くなり、また有機無機複合体の自立性や強度が低下し易くなり、更にガラスの再利用を促進し難くなる。一方、ガラスの含有量が多過ぎると、有機無機複合体が脆くなると共に、有機無機複合体の製造効率が低下し易くなる。また、有機材料の含有量が少な過ぎると、有機無機複合体が脆くなると共に、有機無機複合体の製造効率が低下し易くなる。一方、有機材料の含有量が多過ぎると、十分な放射線遮蔽能を確保し難くなり、また有機無機複合体の自立性や強度が低下し易くなり、ガラスの再利用を促進し難くなる。
本発明の有機無機複合体は、板状であることが好ましい。このようにすれば、内壁等の壁材に適用し易くなる。
本発明の有機無機複合体において、ガラスはリサイクルを目的とし分別回収されたガラスを使用するため廃棄物処理や資源の点で、環境的要請を満たすことができる。リサイクルのため回収されたガラスは、密度が2.65g/cm3以上、好ましくは2.80g/cm3以上、より好ましくは3.00g/cm3以上であることが好ましい。ガラスの密度が2.65g/cm3以上であれば、有機無機複合体に用いた場合に、十分な放射線遮蔽性能を得ることができる。
リサイクルのため回収されたガラスとしては、例えば、ブラウン管のパネルガラス、PDPのガラス基板、PDPのパネルから回収される封着ガラス、バリアリブ等の部材、光学ガラス(レンズ、プリズム等)等を用いることができる。これらのガラスの組成はメーカーや製造年によって異なるが、ブラウン管のパネルガラスの代表組成は、SiO2 50〜70%、Al2O3 0〜5%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、CeO2 0〜5%、である。PDPのガラス基板の代表組成は、SiO2 45〜65%、Al2O3 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%である。PDPの封着ガラスやバリアリブはBi系、Pb系のガラスが用いられており放射線遮蔽能が高い。また、光学ガラスには屈折率を高めるために希土類元素やPb、Bi、Nb、Ta等が含まれるため、放射線が高い。本発明の有機無機複合体では、これらのガラスを単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
本発明の有機無機複合体に用いられるガラスは、粉末状、或いは繊維状であることが好ましい。
ガラスを粉末状(ガラス粉末)にして用いると、放射線遮蔽能を付与し得るだけでなく、有機無機複合体の強度を高めることができる。ガラス粉末は、ガラスを周知の粉砕装置、例えばボールミル、ビーズミル、ジェットミル等で粉砕した後、必要に応じて分級することにより作製可能である。
ガラス粉末の平均粒子径D50は1〜100μm、2〜50μm、2〜30μm、特に2〜20μmが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径D50が1μmより小さいと、粉砕に時間を要し、ガラス粉末の製造コストが高騰する虞がある。一方、ガラス粉末の平均粒子径D50が100μmより大きいと、有機無機複合体の自立性や強度が低下し易くなる。
ガラスを繊維状(ガラスファイバー)にして用いると、放射線遮蔽能を付与し得るだけでなく、有機無機複合体の強度を高めることができる。ガラスファイバーには、溶解炉で溶融した溶融ガラスを遠心力又は高温高速の炎で吹き飛ばすことにより作製される短繊維ガラスファイバーと、溶解炉で溶融した溶融ガラスを白金製ノズルから取り出し、高速で巻き取ることにより作製される長繊維ガラスファイバーがあるが、本発明では、何れのガラスファイバーも使用可能である。
ガラスファイバーの直径は1〜100μm、1〜50μm、2〜50μm、特に3〜30μmが好ましい。ガラスファイバーの直径が1μmより小さいと、有機無機複合体中のガラスの割合を高めることが困難になり、十分な放射線遮蔽能を確保し難くなる。一方、ガラスファイバーの直径が100μmより大きいと、ガラスファイバーの生産効率が低下すると共に、有機無機複合体の強度が低下し易くなる。
本発明の有機無機複合体に用いられるガラスは、シランカップリング剤等で表面処理(特に、カップリング処理)されていることが好ましい。このようにすれば、ガラス表面に存在する水酸基と有機材料の官能基の橋渡しが可能になる。その結果、ガラスと有機材料の結合強度が高まり、有機無機複合体の初期強度が向上すると共に、経年劣化も抑制することができる。
本発明の有機無機複合体において、有機材料としては、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂、或いはフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用可能である。
本発明の有機無機複合体には、上記ガラスおよび有機材料以外にも、装飾目的等のため、顔料等を含有してよい。
なお、本発明の有機無機複合体において、ガラスと有機材料の複合化方法は、特に限定されない。例えば、(1)ガラスと有機材料の混合物に、重合促進剤を添加して混練、硬化させて、複合化する方法、(2)ガラスと有機材料の混合物を熱処理して、複合化する方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
表1は、実験に用いたガラスのガラス組成を質量%で示している。なお、ガラスA〜Fの組成は、ブラウン管のパネルガラス、PDPのパネルガラス、PDPパネルの破砕物、レンズ用光学ガラスの組成に各々対応している。表2、3は、本発明の実施例(試料No.1〜10)及び比較例(試料No.11、12)を示している。
次のようにして各試料を調製した。まず、表1に記載のガラス組成のガラスA〜Fを溶融および成形し、これらの密度をアルキメデス法を用いて測定した。次いで、これらのガラスA〜Fを粉砕した。具体的には、容積7Lのアルミナ製ボールミル内に、2kgの各ガラスと3kgのアルミナ製玉石を入れて、時間を変えて粉砕を行った。粉砕後、ステンレス製篩で分級して、各種粒度を有するガラス粉末を得た。なお、ガラス粉末の平均粒子径D50(体積基準)は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値である。
試料No.1〜8、11については、得られたガラス粉末にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いて乾式のカップリング剤処理を行った。なお、上記カップリング処理は、pH6の条件で行った。
試料No.9については、得られたガラス粉末を再度溶融し、小型ポットの白金のノズルから高速で巻き取ることにより、長繊維ガラスファイバーとした。試料No.10については、得られたガラス粉末を再度溶融し、高温高速の炎を用いて吹き飛ばすことにより、短繊維ガラスファイバーとした。次に、両ガラスファイバーの表面にカップリング剤処理を行った。
カップリング剤処理後に、ガラス粉末、ガラスファイバーを120℃1時間の条件で乾燥した。
有機材料として、平均粒子径D5030〜100μm、質量平均分子量5〜130万のポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末、メタクリレート系モノマーであるメチルメタクリレート(MMA)の混合物を使用した。なお、有機樹脂の平均粒子径D50は、4μmであった。
続いて、ガラス粉末またはガラスファイバーと、有機材料とを表2、3に記載の割合で混合した後、更に重合開始剤として過酸化ベンゾイル、重合促進剤としてN,N−ジメチル−p−トルイジンを添加して混練、硬化させて、有機無機複合体を得た。なお、過酸化ベンゾイル、N,N−ジメチル−p−トルイジンの添加量は、約10分で硬化するように、MMA100質量部に対して、それぞれ2質量部、1質量部とした。次に、得られた有機無機複合体を下記評価試料の寸法になるように成形した。
X線透過率は、原則として、JIS Z4502に記載の手順で行ったが、評価試料作製の都合上、評価試料の寸法を長さ150mm×幅150mm×厚さ5mmとした。測定条件として、X線管電圧を100kV、管電流値を12.5mAとした。なお、X線の線質を硬くするために、0.25mm厚の付加フィルターをX線発生装置の出口に装着した。
オートグラフにより、3点曲げ試験(スパン16mm)を行い、曲げ強度を評価した。なお、評価試料の寸法を3mm×4mm×20mmとした。
表2、3から明らかなように、試料No.1〜10は、X線透過率が10%以下であった。一方、試料No.11は、ガラスの含有量が少ないため、X線透過率が高かった。また、試料No.12は、有機物のみを硬化させたものであり、X線透過率が95%であった。
本発明の有機無機複合体は、放射線を扱う理化学機器周辺、原子力施設、医療施設等で使用される放射線遮蔽材として好適であり、例えば内壁等の壁材として好適である。
Claims (8)
- 実質的に鉛を含有せず且つリサイクルのため回収されたガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有し、放射線遮蔽材に用いられることを特徴とする有機無機複合体。
- ガラスの密度が2.65g/cm3以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機無機複合体。
- ガラスが、ブラウン管のパネルガラス、プラズマディスプレイのガラス、光学ガラスのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機複合体。
- 板状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機無機複合体。
- ガラスが粉末状であり、且つその平均粒子径D50が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機無機複合体。
- ガラスが繊維状であり、且つその直径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機無機複合体。
- 厚さ5mmの板状に成形した場合に、板厚方向に管電圧100kVで照射したX線の透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機無機複合体。
- 実質的に鉛を含有しないガラス 30〜90質量%、有機材料 10〜70質量%を含有し、厚さ5mmの板状に成形した場合に、板厚方向に管電圧100kVで照射したX線の透過率が10%以下であることを特徴とする有機無機複合体。
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JP2012209200A JP2014062863A (ja) | 2012-09-24 | 2012-09-24 | 有機無機複合体 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017125828A (ja) * | 2016-01-15 | 2017-07-20 | 卯 石井 | ロックウール素材及びその成形体である放射線遮蔽低減体を用いた公衆被爆防護、職業被爆防護、医療被爆防護ならびに放射性廃棄物処理に関する。 |
JP2018066584A (ja) * | 2016-10-17 | 2018-04-26 | バサルトジャパン株式会社 | 放射線遮蔽剤、放射線遮蔽部材及び放射線遮蔽方法 |
-
2012
- 2012-09-24 JP JP2012209200A patent/JP2014062863A/ja active Pending
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JP2018066584A (ja) * | 2016-10-17 | 2018-04-26 | バサルトジャパン株式会社 | 放射線遮蔽剤、放射線遮蔽部材及び放射線遮蔽方法 |
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