JP2014058736A - パーツフィーダ - Google Patents
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Abstract
【課題】低騒音で、移送中のパーツの損傷を軽減したパーツフィーダを提供する。
【解決手段】
炭素0.001〜0.10重量%、シリコン0.10〜3.0重量%、マンガン18.0未満重量%、クロム20.0重量%以下、アルミニウム0.001〜0.1重量%、残部鉄を含んでなる鋼であって、積層欠陥エネルギー(SFE)を20(mJ/m2)以下の条件を満たす化学組成になるように溶製し、所定の熱処理条件、冷却条件及び冷間加工条件を満たす製造方法によってε―Ms相が5〜70体積%とした鋼をパーツフィーダの騒音が発生する部分に配する。
【選択図】なし
【解決手段】
炭素0.001〜0.10重量%、シリコン0.10〜3.0重量%、マンガン18.0未満重量%、クロム20.0重量%以下、アルミニウム0.001〜0.1重量%、残部鉄を含んでなる鋼であって、積層欠陥エネルギー(SFE)を20(mJ/m2)以下の条件を満たす化学組成になるように溶製し、所定の熱処理条件、冷却条件及び冷間加工条件を満たす製造方法によってε―Ms相が5〜70体積%とした鋼をパーツフィーダの騒音が発生する部分に配する。
【選択図】なし
Description
本発明は、騒音の発生を低減させ、同時に、騒音の発生源となる衝撃を小さくして移送中のパーツへの損傷を軽減したパーツフィーダに関するものである。
工場内等で所要のパーツ等を作業性よく供給するために、各種のパーツフィーダが設置されている。このようなパーツフィーダは、ホッパ、分離底又は振動する碗状容器に機械部品等のパーツが接しながら移動するため、使用状態での騒音が大きく、工場内の作業環境を悪化させるという問題点があり、低騒音化のための改善が求められている。
従来のパーツフィーダは、振動によりパーツを移送させる方式が多用されているが、例えば、電子部品に用いられるセラミックチップ、粉末焼成体や樹脂材料タブレットのように外部衝撃に脆いパーツの整列では、振動による移送時の衝撃によって損傷され易いという欠点がある。このために、衝撃を小さくして移送中のパーツの損傷を軽減する技術が求められている。
特許文献1では、この対策を解決するために、パーツフィーダの要所に、バインダーによって金属粉を混合・固化した制振材料からなる成形体を配置してなる低騒音性パーツフィーダを提示している。しかしながら、この方法は余分の材料を貼り合せたものであり、余分のコストが懸るという問題点がある。
特許文献2では、使用状態でのパーツフィーダから外部に発生する騒音に対して、その騒音周波数を消音させる周波数の音を発生させることによって、外部に漏れる騒音を低減する技術が開示されている。しかしながら、この技術は複雑であり、消音を発生させる装置が必要であり、その効果が不十分であるばかりでなく、余分のコストが懸るという問題点がある。
以上述べたように、パーツフィーダ用材料として、材料自体に振動吸収能があり、かつ、機械的性質及び価格の面からの要請を満足する材料が今までに想到され得なかったものである。
一方、金属系の制振性材料としては、鋳鉄、Mn−Cu合金、Mg−Zr合金、Mg−Ni合金、Al−Zn合金、Fe−Al−Cr合金、Ni−Ti合金、Cu−Al−Ni合金等が知られている。
これらをパーツフィーダ用材料の観点から見れば、鋳鉄やMg系合金は強度が低いという欠点がある。Mn−Cu系合金は所望の強度が得られないという欠点がある。Fe−Al−Cr合金は歪によって振動減衰能が低下するという欠点がある。
これらの材料は、振動減衰能は比較的優れているが、高価な元素を多く含んでいるため合金材料の価格上昇となり、上記のようなパーツフィーダ用材料には不適である。
これらをパーツフィーダ用材料の観点から見れば、鋳鉄やMg系合金は強度が低いという欠点がある。Mn−Cu系合金は所望の強度が得られないという欠点がある。Fe−Al−Cr合金は歪によって振動減衰能が低下するという欠点がある。
これらの材料は、振動減衰能は比較的優れているが、高価な元素を多く含んでいるため合金材料の価格上昇となり、上記のようなパーツフィーダ用材料には不適である。
上記の問題を解決するために、本発明者の一人は、特許文献3に示すような、振動吸収能に優れたFe−Mn−Cr合金を提案して、特許登録されている(以下、「制振性に優れた特許鋼」という。)。
この「制振性に優れた特許鋼」は、炭素の質量パーセントが0.001〜0.20%、シリコンの質量パーセントが0.10〜3.0%、マンガンの質量パーセントが18.0未満%、クロムの質量パーセントが20.0%以下、アルミニウムの質量パーセントが0.001〜0.10%、残部が、鉄及び不可避元素を含んで成る鋼である。この鋼は、その機械的性質及び製造方法はステンレス鋼と同等であり、かつ、制振性に優れているので、上記の問題点を解決する材料である。
この「制振性に優れた特許鋼」は、炭素の質量パーセントが0.001〜0.20%、シリコンの質量パーセントが0.10〜3.0%、マンガンの質量パーセントが18.0未満%、クロムの質量パーセントが20.0%以下、アルミニウムの質量パーセントが0.001〜0.10%、残部が、鉄及び不可避元素を含んで成る鋼である。この鋼は、その機械的性質及び製造方法はステンレス鋼と同等であり、かつ、制振性に優れているので、上記の問題点を解決する材料である。
本発明が解決しようとする課題は、騒音の発生を低減させ、同時に、騒音の発生源となる衝撃を小さくして移送中のパーツへの損傷を軽減したパーツフィーダを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明においては、振動吸収能に優れた特許第4984272号によって特定した「制振性に優れた特許鋼」を、パーツフィーダの騒音発生部位に配することによって騒音の発生を低減させる。
更に、パーツと碗状容器との衝突によって発生する共振周波数を「制振性に優れた特許鋼」が振動吸収能の発揮しやすい共振周波数帯になるような碗状容器の設計によって共振現象を低減させることによって振動のパーツに与える衝撃を抑制して、移送中のパーツの損傷を低減させる。
更に、パーツと碗状容器との衝突によって発生する共振周波数を「制振性に優れた特許鋼」が振動吸収能の発揮しやすい共振周波数帯になるような碗状容器の設計によって共振現象を低減させることによって振動のパーツに与える衝撃を抑制して、移送中のパーツの損傷を低減させる。
本願に係る発明は、「特許請求の範囲」の請求項1乃至5に記載した事項により特定される。
[特許請求の範囲]
[請求項1]
炭素の質量パーセント[%C]が0.001〜0.20[%]、
シリコンの質量パーセント[%Si]が0.10〜3.0[%]、
マンガンの質量パーセント[%Mn]が18.0未満[%]、
クロムの質量パーセント[%Cr]が20.0[%]以下、
アルミニウムの質量パーセント[%Al]が0.001〜0.10[%]
残部が、鉄の質量パーセント[%Fe]及び不可避元素を含んで成り、
ニッケルの質量パーセントを[%Ni]、窒素の質量パーセントを[%N]としたときに、
数式1によって計算される積層欠陥エネルギー(SFE)(mJ/m2)が、
数式2を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とするパーツフィーダ。
[数式1]
SFE(mJ/m2)=25.7+2×[%Ni]+410×[%C]−0.9×[%Cr]−77×[%N]−13×[%Si]−1.2×[%Mn] (1)
[数式2]
−20(mJ/m2)≦ SFE ≦ 20(mJ/m2) (2)
[請求項2]
X線回折法によって測定されたイプシロン・マルテンサイト相の体積パーセント[%ε―Ms相]が、数式3を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載したパーツフィーダ。
[数式3]
5[体積%] ≦ [%ε―Ms相] ≦ 70[体積%] (3)
[請求項3]
片持ち梁法によって測定した制振性を表す損失係数(η)が、数式4を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載したパーツフィーダ。
[数式4]
0.005 ≦ η ≦ 0.10 (4)
[請求項4]
請求項1に規定した組成の鋼であって、
第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、
第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、
第3工程として、700〜1100℃で、1〜60分間、熱処理する工程、
第4工程として、500℃から20℃までの温度領域を、10〜50(℃/秒)の冷却速度で急速冷却する工程、又は、該鋼の炭素質量パーセント[%C]が0.10〜0.20質量%の時には、クロム炭化物析出熱処理をした後に急速冷却する工程、及び、
第5工程として、熱処理のまま、又は、冷間加工率1〜30%の冷間加工を施す工程、
を含む製造方法により製造された「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項2乃至3のいずれかに記載したパーツフィーダ。
[請求項5]
稼働中にワークとパーツフィーダを構成する碗状容器と衝突することによって騒音が発生する部分に、「制振性に優れた特許鋼」を配し、打音試験による該碗状容器の一次共振周波数が100Hz以上となるような形状に設計することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載したパーツフィーダ。
[特許請求の範囲]
[請求項1]
炭素の質量パーセント[%C]が0.001〜0.20[%]、
シリコンの質量パーセント[%Si]が0.10〜3.0[%]、
マンガンの質量パーセント[%Mn]が18.0未満[%]、
クロムの質量パーセント[%Cr]が20.0[%]以下、
アルミニウムの質量パーセント[%Al]が0.001〜0.10[%]
残部が、鉄の質量パーセント[%Fe]及び不可避元素を含んで成り、
ニッケルの質量パーセントを[%Ni]、窒素の質量パーセントを[%N]としたときに、
数式1によって計算される積層欠陥エネルギー(SFE)(mJ/m2)が、
数式2を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とするパーツフィーダ。
[数式1]
SFE(mJ/m2)=25.7+2×[%Ni]+410×[%C]−0.9×[%Cr]−77×[%N]−13×[%Si]−1.2×[%Mn] (1)
[数式2]
−20(mJ/m2)≦ SFE ≦ 20(mJ/m2) (2)
[請求項2]
X線回折法によって測定されたイプシロン・マルテンサイト相の体積パーセント[%ε―Ms相]が、数式3を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載したパーツフィーダ。
[数式3]
5[体積%] ≦ [%ε―Ms相] ≦ 70[体積%] (3)
[請求項3]
片持ち梁法によって測定した制振性を表す損失係数(η)が、数式4を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載したパーツフィーダ。
[数式4]
0.005 ≦ η ≦ 0.10 (4)
[請求項4]
請求項1に規定した組成の鋼であって、
第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、
第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、
第3工程として、700〜1100℃で、1〜60分間、熱処理する工程、
第4工程として、500℃から20℃までの温度領域を、10〜50(℃/秒)の冷却速度で急速冷却する工程、又は、該鋼の炭素質量パーセント[%C]が0.10〜0.20質量%の時には、クロム炭化物析出熱処理をした後に急速冷却する工程、及び、
第5工程として、熱処理のまま、又は、冷間加工率1〜30%の冷間加工を施す工程、
を含む製造方法により製造された「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項2乃至3のいずれかに記載したパーツフィーダ。
[請求項5]
稼働中にワークとパーツフィーダを構成する碗状容器と衝突することによって騒音が発生する部分に、「制振性に優れた特許鋼」を配し、打音試験による該碗状容器の一次共振周波数が100Hz以上となるような形状に設計することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載したパーツフィーダ。
本発明は、騒音の発生を低減させ、同時に、騒音の発生源となる衝撃を小さくして移送中のパーツへの損傷を軽減したパーツフィーダを提供するので、職場環境を改善すると同時にパーツフィーダ本来の機能の向上に役立つものである。
以下に、本発明に係わるパーツフィーダについて具体的に説明する。
「制振性に優れた特許鋼」は、振動吸収能(制振性)を発現する金属組織であるイプシロン・マルテンサイト相(以下、「ε―Ms相」という。)を母相のオーステナイト相(以下、「γ相」という。)の中に所定の体積パーセントを生成させる技術を基本としている。
「制振性に優れた特許鋼」の金属組織を図1に示す。黒い笹の葉状の部分(101)がε―Ms相であり、白い部分(102)がγ相である。
「制振性に優れた特許鋼」の金属組織を図1に示す。黒い笹の葉状の部分(101)がε―Ms相であり、白い部分(102)がγ相である。
本発明の請求項1記載事項において、「制振性に優れた特許鋼」の化学組成の内、マンガン質量パーセントを18.0未満質量%としている。これは、制振性に必要なε―Ms相を生成させるために必須であるマンガン質量パーセントを規定している。マンガン質量パーセントを18.0質量未満%にするのは、マンガン質量パーセントが18.0質量%以上になると、加工硬化が大きくなり冷間加工性が著しく悪化するためである。これについては、実験例3において詳述する。
マンガン質量パーセントの下限値は積層欠陥エネルギー(SFE)を20(mJ/m2)以下とする条件によって規定される。
マンガン質量パーセントの下限値は積層欠陥エネルギー(SFE)を20(mJ/m2)以下とする条件によって規定される。
本発明の請求項1記載事項において、「制振性に優れた特許鋼」の化学組成の内、シリコン質量パーセント0.10〜3.0質量%、マンガン質量パーセント18.0未満質量%としている。
これは、良好な制振性発現能を持ちながら、微量のシリコンを添加することによってマンガン量を低く抑えることができることを示してしいる。
即ち、熱処理或いは冷間加工によって制振性発現に必須なε―Ms相が生成し易い度合いを示す積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)(数式1)の関係式において、マンガンの項は−1.2×[%Mn]であり、シリコンの項は−13×[%Si]であることから、シリコンはマンガンの約十倍のSFEの低減効果があることを示している。即ち、SFEを20mJ/m2以下に保持した上で、微量の0.10〜3.0質量%のシリコン添加によってマンガン質量パーセントを18.0未満質量%と少なく抑えられている。
これは、良好な制振性発現能を持ちながら、微量のシリコンを添加することによってマンガン量を低く抑えることができることを示してしいる。
即ち、熱処理或いは冷間加工によって制振性発現に必須なε―Ms相が生成し易い度合いを示す積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)(数式1)の関係式において、マンガンの項は−1.2×[%Mn]であり、シリコンの項は−13×[%Si]であることから、シリコンはマンガンの約十倍のSFEの低減効果があることを示している。即ち、SFEを20mJ/m2以下に保持した上で、微量の0.10〜3.0質量%のシリコン添加によってマンガン質量パーセントを18.0未満質量%と少なく抑えられている。
「制振性に優れた特許鋼」の化学組成の内、クロム質量パーセントを20.0質量%以下としている。これは、本発明の基本となるγ―相生成に関するものである。クロム質量パーセントが20.0質量%を超える領域ではオーステナイト相(γ―相)とフェライト相(α―相)の2相が生成するので、ε―Ms相の生成が阻害されるので、クロム質量パーセントを20.0質量%以下、好ましくは、15.0質量%以下とする。
クロム組成の下限値については、積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)(数式1)を20mJ/m2以下とする条件を満たす範囲を設定することによって、クロムとマンガンの相乗効果によって効果的にγ―相を生成させる領域を広くとることができる。
クロム組成の下限値については、積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)(数式1)を20mJ/m2以下とする条件を満たす範囲を設定することによって、クロムとマンガンの相乗効果によって効果的にγ―相を生成させる領域を広くとることができる。
「制振性に優れた特許鋼」の化学組成の内、炭素質量パーセントを0.20質量%以下とするのは、振動減衰能を発現するγ―相とε―Ms相間の相互作用に悪影響を及ぼす固溶元素、特に、炭素質量パーセントの上限を定めることによって振動減衰能の向上及び安定を計るためであり、炭素重量パーセントが0.20質量%を越えると振動減衰能が低下しかつ不安定になるためである。
炭素と同様の影響を及ぼす窒素は、溶解製造時に大気中より0.020〜0.100質量%程度不可避的に混入して振動減衰能を低下させるものであるが、アルミニウム質量パーセントを0・001〜0.10質量%以下とすることによって鋼中の窒素をAlNの大きい介在物の形にすることによって制振性を阻害する作用をなくするためである。即ち、アルミニウム質量パーセントが0.001質量%未満であると上記の鋼中窒素と結合するに必要なアルミニウム質量パーセントが不足する場合があり、0.10質量%を越えると過剰のアルミニウムによって鋼材の表面や内部にAl2O3系の欠陥が発生しやすくなる危険があるためである。
炭素と同様の影響を及ぼす窒素は、溶解製造時に大気中より0.020〜0.100質量%程度不可避的に混入して振動減衰能を低下させるものであるが、アルミニウム質量パーセントを0・001〜0.10質量%以下とすることによって鋼中の窒素をAlNの大きい介在物の形にすることによって制振性を阻害する作用をなくするためである。即ち、アルミニウム質量パーセントが0.001質量%未満であると上記の鋼中窒素と結合するに必要なアルミニウム質量パーセントが不足する場合があり、0.10質量%を越えると過剰のアルミニウムによって鋼材の表面や内部にAl2O3系の欠陥が発生しやすくなる危険があるためである。
本発明の請求項2記載事項において、「制振性に優れた特許鋼」のX線回折法によって測定されたε―Ms相の体積%が、5〜70体積%であることを開示している。これは、本発明の基本的な制振発現の必要条件である金属組織、ε―Ms相の定量的表現であり、5体積%未満では制振性が不十分となるためであり、70体積%を超えるとε―Ms相が相互に絡みあって逆に上記の制振性を低下させるためである。好ましくは、ε―Ms相体積%が10〜50体積%である。
本発明の請求項3記載事項において、「制振性に優れた特許鋼」の片持ち梁方式によって測定された制振性鋼の損失係数(η)が、0.005〜0.10であることを開示しているが、これは制振性に優れた鋼としての基本的な指標の条件を開示したものである。
ここで、本発明になる鋼の振動減衰能は振動歪依存性が大きいので、損失係数(η)測定方法は、振動歪みを約10−4以上にする必要があるため、これを可能にする方法として片持ち梁方式を選択した。
測定値においては、損失係数(η)が0.005未満であると制振性に優れた鋼としての振動減衰機能が不十分となるためであり、0.10を超えるための製造条件では鋼材の機械的性質が上記記載の用途に適さなくなるためである。
ここで、本発明になる鋼の振動減衰能は振動歪依存性が大きいので、損失係数(η)測定方法は、振動歪みを約10−4以上にする必要があるため、これを可能にする方法として片持ち梁方式を選択した。
測定値においては、損失係数(η)が0.005未満であると制振性に優れた鋼としての振動減衰機能が不十分となるためであり、0.10を超えるための製造条件では鋼材の機械的性質が上記記載の用途に適さなくなるためである。
本発明の請求項4記載事項において、請求項1で規定される化学組成を有する鋼を「制振性に優れた鋼」にするための製造方法に関して、
950〜1200℃、1〜5時間、加熱する第1工程、
加工仕上がり温度750〜950℃にて熱間加工する第2工程、
700〜1100℃で、1〜60分間熱処理する第3工程、
500℃から20℃までの温度領域を、10〜50(℃/秒)の冷却速度で急速冷却する第4工程、及び、
熱処理のまま、又は、常温で冷間加工率1〜30%の冷間加工を施す第5工程
を含む製造方法を開示している。
ここで、重要な工程は、第3工程、第4工程及び第5工程である。
第3工程において、熱処理温度を700〜1100℃としたのは、700℃未満の温度では冷間加工歪除去及びオーステナイト化が不十分であるために制振性発現が不十分となるためであり、1100℃を超えるとオーステナイト結晶粒が粗大化して機械的性質が不良となるためである。
第4工程においては、γ―相からε―Ms相へ効果的に熱誘起ε―Ms相を生成させるため、500℃から常温までの冷却速度が重要であり、これを10〜50℃/secとした。10℃/sec未満の冷却速度では熱誘起ε―Ms相の生成が不十分となる為である。さらに、炭素質量パーセント[%C]が0.10〜0.20質量%の時には、クロム炭化物析出熱処理をした後に急速冷却することが重要である。これは、制振性発現を阻害する固溶炭素をクロム炭化物の形にして無害化するためである。
第5工程においては、この鋼を更に1〜30%の冷間加工を施すことによってε―Ms相の体積パーセントを増大させること又は冷間加工によって鋼の強度を上げる製造方法を開示している。これは、用途によって必要な制振性や機械的性質或いは硬さを得るために必要に応じて選択することができる。
950〜1200℃、1〜5時間、加熱する第1工程、
加工仕上がり温度750〜950℃にて熱間加工する第2工程、
700〜1100℃で、1〜60分間熱処理する第3工程、
500℃から20℃までの温度領域を、10〜50(℃/秒)の冷却速度で急速冷却する第4工程、及び、
熱処理のまま、又は、常温で冷間加工率1〜30%の冷間加工を施す第5工程
を含む製造方法を開示している。
ここで、重要な工程は、第3工程、第4工程及び第5工程である。
第3工程において、熱処理温度を700〜1100℃としたのは、700℃未満の温度では冷間加工歪除去及びオーステナイト化が不十分であるために制振性発現が不十分となるためであり、1100℃を超えるとオーステナイト結晶粒が粗大化して機械的性質が不良となるためである。
第4工程においては、γ―相からε―Ms相へ効果的に熱誘起ε―Ms相を生成させるため、500℃から常温までの冷却速度が重要であり、これを10〜50℃/secとした。10℃/sec未満の冷却速度では熱誘起ε―Ms相の生成が不十分となる為である。さらに、炭素質量パーセント[%C]が0.10〜0.20質量%の時には、クロム炭化物析出熱処理をした後に急速冷却することが重要である。これは、制振性発現を阻害する固溶炭素をクロム炭化物の形にして無害化するためである。
第5工程においては、この鋼を更に1〜30%の冷間加工を施すことによってε―Ms相の体積パーセントを増大させること又は冷間加工によって鋼の強度を上げる製造方法を開示している。これは、用途によって必要な制振性や機械的性質或いは硬さを得るために必要に応じて選択することができる。
本発明の請求項5において、稼働中にワークとパーツフィーダを構成する碗状容器と衝突することによって発生する部分に、「制振性に優れた特許鋼」を配し、その時の騒音の一次共振周波数を100Hz以上となるような形状に設計するとしている。
本発明者は、多くの振動実験の結果、「制振性に優れた特許鋼」の振動エネルギー吸収能に周波数依存性があり、図2に示すように100Hz以上の共振周波数帯においてその効果を発揮することが分かってきた。このましくは、200Hz以上にするとさらに良好である。
一方、本発明者は、多くの実験結果より数式5の関係を求めた(特許文献3)。
[数式5]
共振周波数fn: fn=kxD×W/L2(Hz) (5)
ここで、数式5内の符号は、短冊状のサンプルにおいて、k:比例定数、D:板厚(mm)、W:板幅(mm)、L:板長さ(mm)である。
実際のパーツフィーダの碗状容器の形状は複雑であり、用途に応じた最適の設計になっている。数式5から、所定の碗状容器形状において、板厚(Dmm)を変更することによって、共振周波数を請求項5に適合するような設計をすることが実際的である。また、碗状容器の一次共振周波数の確認をするには、実験室的な打音試験による周波数解析を指針として最適形状と厚さを見出すのが確実で実際的である。
本発明者は、多くの振動実験の結果、「制振性に優れた特許鋼」の振動エネルギー吸収能に周波数依存性があり、図2に示すように100Hz以上の共振周波数帯においてその効果を発揮することが分かってきた。このましくは、200Hz以上にするとさらに良好である。
一方、本発明者は、多くの実験結果より数式5の関係を求めた(特許文献3)。
[数式5]
共振周波数fn: fn=kxD×W/L2(Hz) (5)
ここで、数式5内の符号は、短冊状のサンプルにおいて、k:比例定数、D:板厚(mm)、W:板幅(mm)、L:板長さ(mm)である。
実際のパーツフィーダの碗状容器の形状は複雑であり、用途に応じた最適の設計になっている。数式5から、所定の碗状容器形状において、板厚(Dmm)を変更することによって、共振周波数を請求項5に適合するような設計をすることが実際的である。また、碗状容器の一次共振周波数の確認をするには、実験室的な打音試験による周波数解析を指針として最適形状と厚さを見出すのが確実で実際的である。
以下、本発明を実験例によって説明する。
[実験例1]
実験例1は、本発明の請求項1に関するものであり、本発明に係わる「制振性に優れた特許鋼」の騒音低減能の評価のための実験である。
図3に、打音試験方法を示した。
実験例1では、本発明例として表2記載の本発明例1の材料及び比較例として市販SUS304を用いて、1.0×50×200mmの板状サンプルを糸で吊るしてインパルス・ハンマーで軽く叩くことによって発生する打音を精密騒音計によって計測した。表1にその結果を示す。各々、上段は自由減衰時間軸波形、下段は騒音の共振周波数解析結果である。この時の一次共振周波数は、150Hzである。これを数式5に代入すると、k=105と求められる。
本発明に係る「制振性に優れた特許鋼」は、本打音試験ではオーバーオール値において良好な騒音低減効果が確認できた。また、200Hz以上の共振周波数の帯域において、さらに良好で安定した騒音低減効果が確認できた。
実験例1は、本発明の請求項1に関するものであり、本発明に係わる「制振性に優れた特許鋼」の騒音低減能の評価のための実験である。
図3に、打音試験方法を示した。
実験例1では、本発明例として表2記載の本発明例1の材料及び比較例として市販SUS304を用いて、1.0×50×200mmの板状サンプルを糸で吊るしてインパルス・ハンマーで軽く叩くことによって発生する打音を精密騒音計によって計測した。表1にその結果を示す。各々、上段は自由減衰時間軸波形、下段は騒音の共振周波数解析結果である。この時の一次共振周波数は、150Hzである。これを数式5に代入すると、k=105と求められる。
本発明に係る「制振性に優れた特許鋼」は、本打音試験ではオーバーオール値において良好な騒音低減効果が確認できた。また、200Hz以上の共振周波数の帯域において、さらに良好で安定した騒音低減効果が確認できた。
[実験例2]
実験例2は、本発明の請求項1に関するものであり、本発明に係る制振性に優れた鋼の化学組成の特定に関する実験である。
実験例2として、表2に示す組成の鋼を溶製した。
ここで、表2に記載されていない元素について説明すると、窒素は、溶製時に不可避的に侵入するもので0.008〜0.100%の範囲とした。
リン(P)及び硫黄(S)はいずれも0.01%以下であった。
ニッケル(Ni)は、意図的には添加しなかった。
溶製・鋳造した鋼を1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工して 1.1mm厚の熱延板とした。これを、真空中にて950℃、1時間の熱処理を行い常温の油中に急速冷却した。この時、500℃から常温までの冷却速度は20℃/秒であった。これを、さらに制振性を付与するために10%の冷間圧延加工を施した。
この材料の積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)を数式1によって計算した。
ここで、数式1における[%C]は、原理的には固溶炭素質量パーセント[%C]を用いる必要がある。図4は、全炭素質量パーセントと固溶炭素質量パーセントの関係を示している。炭素が0.10質量%を超えると、クロム炭化物の析出処理をすることによって制振を良好に維持することが重要である。図4は、クロム炭化物処理条件を示したものである。実験例2において、本発明例13及び14が、700℃で30分間のクロム炭化物析出の熱処理を行った後、水中に急速冷却した例である。
鋼中のε―Ms相の体積%をX線回折法によって求めた。 また、片持ち梁方式によって損失係数(η)を測定した。この測定方法は一端をクランプで固定し振動部のサイズは、1mm厚x50mm幅×100mm長であり固定部を3G(3×980mm/sec2)の加速度で衝撃を与え自由減衰時間及び振動周波数を測定して損失係数(η)を求めた。この時の振動歪は10−4レベルであった。
表2に、総合評価として優良(◎)、良好(○)及び不可(×)の記号を付した。
実験例2は、本発明の請求項1に関するものであり、本発明に係る制振性に優れた鋼の化学組成の特定に関する実験である。
実験例2として、表2に示す組成の鋼を溶製した。
ここで、表2に記載されていない元素について説明すると、窒素は、溶製時に不可避的に侵入するもので0.008〜0.100%の範囲とした。
リン(P)及び硫黄(S)はいずれも0.01%以下であった。
ニッケル(Ni)は、意図的には添加しなかった。
溶製・鋳造した鋼を1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工して 1.1mm厚の熱延板とした。これを、真空中にて950℃、1時間の熱処理を行い常温の油中に急速冷却した。この時、500℃から常温までの冷却速度は20℃/秒であった。これを、さらに制振性を付与するために10%の冷間圧延加工を施した。
この材料の積層欠陥エネルギーSFE(mJ/m2)を数式1によって計算した。
ここで、数式1における[%C]は、原理的には固溶炭素質量パーセント[%C]を用いる必要がある。図4は、全炭素質量パーセントと固溶炭素質量パーセントの関係を示している。炭素が0.10質量%を超えると、クロム炭化物の析出処理をすることによって制振を良好に維持することが重要である。図4は、クロム炭化物処理条件を示したものである。実験例2において、本発明例13及び14が、700℃で30分間のクロム炭化物析出の熱処理を行った後、水中に急速冷却した例である。
鋼中のε―Ms相の体積%をX線回折法によって求めた。 また、片持ち梁方式によって損失係数(η)を測定した。この測定方法は一端をクランプで固定し振動部のサイズは、1mm厚x50mm幅×100mm長であり固定部を3G(3×980mm/sec2)の加速度で衝撃を与え自由減衰時間及び振動周波数を測定して損失係数(η)を求めた。この時の振動歪は10−4レベルであった。
表2に、総合評価として優良(◎)、良好(○)及び不可(×)の記号を付した。
以下、表2について詳述する。
本発明例1〜14は、シリコン質量パーセントを本発明の推奨範囲内である0.5〜1.0質量%を添加した例である。
ここで、本発明例1〜3は、マンガンが16〜17質量%と比較的高い例であり、ε―Ms相体積%は、本発明範囲内であるので損失係数(η)は極めて良好である。
特に、本発明例3においては、シリコンを0.8質量%添加しているので、クロムが6.0質量%でもSFEの条件を満たせば、極めて良好な損失係数(η)を示すことが確認できた。
次に、本発明例4〜12は、SFE値が10〜20mJ/m2以下でありε―Ms相体積%は本発明の請求範囲内であるので、損失係数(η)は良好である。
特に、クロムについては、SFEの条件を満足する範囲である、7.0重量%(本発明例5、7及び9)、或いは、5.0重量%(本発明例12)においても良好な制振性発現が確認された。
本発明例13及び14については、炭素が0.11及び0.15質量%と0.10質量%を超えているので、クロム炭化物析出処理を行ったので、SFE及び損失係数(η)が特許請求の範囲となり総合評価は良好(○)である。
比較例1及び2については、マンガンの多量添加により、SFE、ε―Ms相体積%及び損失係数(η)の指標からの判断では、良好(○)であるが、マンガン質量%が22.0及び19.0質量%と高いために材料が硬く冷間加工性が不良のために量産に当たっては製造コストが高くなるので総合評価は不可(×)となるものであり、これは実験例3の項において詳述する。
比較例3は、シリコン無添加のためにマンガン質量%が低い場合には、制振性が不良である。
比較例4は、シリコン量が過大のため、材料が硬く加工コストが高くなるので実生産ができない。
比較例5は、マンガン量が不足しているため制振性が不良である。
比較例6は、クロム量が過大のため、母相がγ−相とα−相の2相域となっているために、ε―Ms相の生成量が少ないので損失係数(η)が不十分である。
比較例7は、アルミニウムが不足しているため、固溶窒素のAlNとしての固定が不十分なため、制振性が不十分である。
比較例8は、炭素量が過多であるので、制振性が不良である。
比較例9は、クロム炭化物析出処理をしなかったので制振性が不良である。
本発明例1〜14は、シリコン質量パーセントを本発明の推奨範囲内である0.5〜1.0質量%を添加した例である。
ここで、本発明例1〜3は、マンガンが16〜17質量%と比較的高い例であり、ε―Ms相体積%は、本発明範囲内であるので損失係数(η)は極めて良好である。
特に、本発明例3においては、シリコンを0.8質量%添加しているので、クロムが6.0質量%でもSFEの条件を満たせば、極めて良好な損失係数(η)を示すことが確認できた。
次に、本発明例4〜12は、SFE値が10〜20mJ/m2以下でありε―Ms相体積%は本発明の請求範囲内であるので、損失係数(η)は良好である。
特に、クロムについては、SFEの条件を満足する範囲である、7.0重量%(本発明例5、7及び9)、或いは、5.0重量%(本発明例12)においても良好な制振性発現が確認された。
本発明例13及び14については、炭素が0.11及び0.15質量%と0.10質量%を超えているので、クロム炭化物析出処理を行ったので、SFE及び損失係数(η)が特許請求の範囲となり総合評価は良好(○)である。
比較例1及び2については、マンガンの多量添加により、SFE、ε―Ms相体積%及び損失係数(η)の指標からの判断では、良好(○)であるが、マンガン質量%が22.0及び19.0質量%と高いために材料が硬く冷間加工性が不良のために量産に当たっては製造コストが高くなるので総合評価は不可(×)となるものであり、これは実験例3の項において詳述する。
比較例3は、シリコン無添加のためにマンガン質量%が低い場合には、制振性が不良である。
比較例4は、シリコン量が過大のため、材料が硬く加工コストが高くなるので実生産ができない。
比較例5は、マンガン量が不足しているため制振性が不良である。
比較例6は、クロム量が過大のため、母相がγ−相とα−相の2相域となっているために、ε―Ms相の生成量が少ないので損失係数(η)が不十分である。
比較例7は、アルミニウムが不足しているため、固溶窒素のAlNとしての固定が不十分なため、制振性が不十分である。
比較例8は、炭素量が過多であるので、制振性が不良である。
比較例9は、クロム炭化物析出処理をしなかったので制振性が不良である。
[実験例3]
実験例3は、本発明の請求項1に関して、本発明に係る制振性に優れた鋼のマンガン量を冷間加工性の観点から評価したものである。
表3は、実験例2の表2記載の本発明例1(Mn:17%)、本発明例8(Mn:8%)、比較例2(Mn:22%)及びSUS304(Mn:1%)のマンガン含有量の異なる鋼について、試験圧延機(ワークロール径85mmφの4段圧延機)によって、2.0mmから約0.03mm厚までの冷間圧延における中間熱処理回数と熱処理が必要となるまでの冷間圧延率を測定したものである。
本発明例1又は8は、2.0mmから約0.03mmまでに中間熱処理回数は3回であり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は63〜70%である。
これに対して、比較例2(Mn:22%)は、9回の中間熱処理が必要となり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は、35%である。これは、冷間加工のコストが実生産における圧延コストが過大となるために実用化が阻害されていることが明白に示されている。
実施例1及び8は、SUS304と同等の冷間加工性であることが確認され、実生産可能との総合評価である。
実験例3は、本発明の請求項1に関して、本発明に係る制振性に優れた鋼のマンガン量を冷間加工性の観点から評価したものである。
表3は、実験例2の表2記載の本発明例1(Mn:17%)、本発明例8(Mn:8%)、比較例2(Mn:22%)及びSUS304(Mn:1%)のマンガン含有量の異なる鋼について、試験圧延機(ワークロール径85mmφの4段圧延機)によって、2.0mmから約0.03mm厚までの冷間圧延における中間熱処理回数と熱処理が必要となるまでの冷間圧延率を測定したものである。
本発明例1又は8は、2.0mmから約0.03mmまでに中間熱処理回数は3回であり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は63〜70%である。
これに対して、比較例2(Mn:22%)は、9回の中間熱処理が必要となり、次の中間熱処理までの平均冷間圧延率は、35%である。これは、冷間加工のコストが実生産における圧延コストが過大となるために実用化が阻害されていることが明白に示されている。
実施例1及び8は、SUS304と同等の冷間加工性であることが確認され、実生産可能との総合評価である。
[実験例4]
実験例4は、本発明の請求項4に関するものである。
即ち、制振性を発現するε―Ms相を効果的に生成させることによって、良好な制振性と機械的性質を持つ鋼を得るための製造条件に関するもので、本発明の主要な要件を実証するものである。
表2に記載した本発明例1の材料を用いた。これを1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工して3mm厚の熱延鋼板とした。これを、真空中で950℃×10分の熱処理を行った。これらを表4の処理条件で冷却或いは冷間加工を行った。表4に、これらの機械的性質及び損失係数(η)の測定結果を示す。
総合評価は、良好(○)及び不可(×)で表示した。
実験例4は、本発明の請求項4に関するものである。
即ち、制振性を発現するε―Ms相を効果的に生成させることによって、良好な制振性と機械的性質を持つ鋼を得るための製造条件に関するもので、本発明の主要な要件を実証するものである。
表2に記載した本発明例1の材料を用いた。これを1000℃で2時間加熱し、仕上げ温度850℃で熱間加工して3mm厚の熱延鋼板とした。これを、真空中で950℃×10分の熱処理を行った。これらを表4の処理条件で冷却或いは冷間加工を行った。表4に、これらの機械的性質及び損失係数(η)の測定結果を示す。
総合評価は、良好(○)及び不可(×)で表示した。
表4について詳細に説明する。
試験No.1−1〜1−5は、950℃で熱処理後に油中に急速冷却した場合である。
試験No.2−1〜2−5は、950℃で熱処理後に空冷した場合である。
油中に急冷した場合は、急冷によってε―Ms相が生成しているので、軽加工で優れた制振性と所望の機械的性質を得ることができる。
一方、空冷した場合は、冷間加工度を上げてゆくことによって制振性は付与されるが逆に延性が低下することになり、制振性と機械的性質を全て満足させる製造条件を見出し難い。
試験No.1−1〜1−5は、950℃で熱処理後に油中に急速冷却した場合である。
試験No.2−1〜2−5は、950℃で熱処理後に空冷した場合である。
油中に急冷した場合は、急冷によってε―Ms相が生成しているので、軽加工で優れた制振性と所望の機械的性質を得ることができる。
一方、空冷した場合は、冷間加工度を上げてゆくことによって制振性は付与されるが逆に延性が低下することになり、制振性と機械的性質を全て満足させる製造条件を見出し難い。
[実験例5]
実験例5は、本発明の請求項5に関するものである。
表2の本発明例1の組成の鋼から、3mm厚の熱延板を得た。これを、冷間圧延により2.0mm厚及び1.5mm厚の鋼板を作製した。これを、950℃、1時間の熱処理を行い油中に急速冷却した。碗状容器は複雑な形状をプレス成形するので、加工性を重視して冷間加工をしなかった。比較材として、2.0mm厚のSUS304を用いた。これらを、プレス加工によって図6に示すようなパーツフィーダの碗状容器を作製した。この時の上端の直径を200mmφ、深さを70mmとした。
これらの碗状容器(A、B及びC)を実験例1と同じ方法によって振動実験を行った。結果を表5に示す。「A」は、本特許鋼を板厚2.0mmの場合であり、「B」は、板厚1.5mmの場合である。表5における、「A」と「B」の1次共振周波数の差異は、数式5によって説明できる。制振性を示す自由減衰時間は、「A」は、「B」よりも若干良好である。「C」は、SUS304の材料であり、自由減衰時間が長いので、制振性が打音試験においても不良である。
表6は、表5の碗状容器をパーツフィーダに組み上げて、実際に稼働させたて、1m離れた場所での精密騒音計のデータを示している。使用したパーツは、フェライト粉末を焼成した電気部品であり、脆くて外部からの衝撃によって損傷し易いパーツである。「A」は、良好な騒音低減効果を確認できる。「B」は、{C}と比較すれば騒音は低くなっている。パーツ損傷率から考察すると、碗状容器の板厚を大きくすることによって1次共振周波数を高くすることによって、本特許鋼において、振動衝撃を小さくする効果を発揮させることができることを示している。
実験例5は、本発明の請求項5に関するものである。
表2の本発明例1の組成の鋼から、3mm厚の熱延板を得た。これを、冷間圧延により2.0mm厚及び1.5mm厚の鋼板を作製した。これを、950℃、1時間の熱処理を行い油中に急速冷却した。碗状容器は複雑な形状をプレス成形するので、加工性を重視して冷間加工をしなかった。比較材として、2.0mm厚のSUS304を用いた。これらを、プレス加工によって図6に示すようなパーツフィーダの碗状容器を作製した。この時の上端の直径を200mmφ、深さを70mmとした。
これらの碗状容器(A、B及びC)を実験例1と同じ方法によって振動実験を行った。結果を表5に示す。「A」は、本特許鋼を板厚2.0mmの場合であり、「B」は、板厚1.5mmの場合である。表5における、「A」と「B」の1次共振周波数の差異は、数式5によって説明できる。制振性を示す自由減衰時間は、「A」は、「B」よりも若干良好である。「C」は、SUS304の材料であり、自由減衰時間が長いので、制振性が打音試験においても不良である。
表6は、表5の碗状容器をパーツフィーダに組み上げて、実際に稼働させたて、1m離れた場所での精密騒音計のデータを示している。使用したパーツは、フェライト粉末を焼成した電気部品であり、脆くて外部からの衝撃によって損傷し易いパーツである。「A」は、良好な騒音低減効果を確認できる。「B」は、{C}と比較すれば騒音は低くなっている。パーツ損傷率から考察すると、碗状容器の板厚を大きくすることによって1次共振周波数を高くすることによって、本特許鋼において、振動衝撃を小さくする効果を発揮させることができることを示している。
本発明は、騒音の発生を低減させ、同時に、騒音の発生源となる衝撃を小さくして移送中のパーツへの損傷を軽減したパーツフィーダを提供するので、職場環境を改善すると同時にパーツフィーダの耐損傷性能を向上させるので、産業上の利用可能性は高い。
101:ε―Ms相
102:γ相
301:インパルス・ハンマー
302:サンプル
303:精密騒音計
304 サンプルを吊るす糸
102:γ相
301:インパルス・ハンマー
302:サンプル
303:精密騒音計
304 サンプルを吊るす糸
Claims (5)
- 炭素の質量パーセント[%C]が0.001〜0.20[%]、
シリコンの質量パーセント[%Si]が0.10〜3.0[%]、
マンガンの質量パーセント[%Mn]が18.0未満[%]、
クロムの質量パーセント[%Cr]が20.0[%]以下、
アルミニウムの質量パーセント[%Al]が0.001〜0.10[%]
残部が、鉄の質量パーセント[%Fe]及び不可避元素を含んで成り、
ニッケルの質量パーセントを[%Ni]としたときに、
数式1によって計算される積層欠陥エネルギー(SFE)(mJ/m2)が、
数式2を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とするパーツフィーダ。
[数式1]
SFE(mJ/m2)=25.7+2×[%Ni]+410×[%C]−0.9×[%Cr]−77×[%N]−13×[%Si]−1.2×[%Mn] (1)
[数式2]
−20(mJ/m2)≦ SFE ≦20(mJ/m2) (2) - X線回折法によって測定されたイプシロン・マルテンサイト相の体積パーセント[%ε―Ms相]が、数式3を満足する「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載したパーツフィーダ。
[数式3]
5[体積%] ≦ [%ε―Ms相] ≦ 70[体積%] (3) - 「制振性に優れた特許鋼」が、
片持ち梁法によって測定した制振性を表す損失係数(η)が、数式4を満足することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載したパーツフィーダ。
[数式4]
0.005 ≦ η ≦ 0.10 (4) - 請求項1に規定した組成の鋼であって、
第1工程として、950〜1200℃で、1〜5時間、加熱する工程、
第2工程として、加工仕上がり温度750〜950℃で、熱間加工する工程、
第3工程として、700〜1100℃で、1〜60分間、熱処理する工程、
第4工程として、500℃から20℃までの温度領域を、10〜50(℃/秒)の冷却速度で急速冷却する工程、又は、炭素質量パーセント[%C]が0.10〜0.20質量%の時には、クロム炭化物析出熱処理をした後に急速冷却する工程及び、
第5工程として、熱処理のまま、又は、冷間加工率1〜30%の冷間加工を施す工程
を含む製造方法により製造された「制振性に優れた特許鋼」を含んで構成されることを特徴とする、請求項2乃至3のいずれかに記載したパーツフィーダ。 - 稼働中にワークとパーツフィーダを構成する碗状容器と衝突することによって発生する部分に、「制振性に優れた特許鋼」を配し、打音試験による該碗状容器の一次共振周波数が100Hz以上となるような形状に設計することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載したパーツフィーダ。
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Cited By (2)
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JP2017075387A (ja) * | 2015-08-19 | 2017-04-20 | 有限会社Tkテクノコンサルティング | 疲労耐久性に優れた制振鋼及び該鋼を含んで構成される構造体 |
JP2018522137A (ja) * | 2015-05-22 | 2018-08-09 | オウトクンプ オサケイティオ ユルキネンOutokumpu Oyj | オーステナイト鋼で作られたコンポーネントを製造するための方法 |
-
2012
- 2012-09-18 JP JP2012221677A patent/JP2014058736A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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