JP2014055310A - 剛性に優れた薄鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヤング率が230GPa以上となる薄鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.005〜0.04%、Si:0.5%超1.5%以下、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、Ti:0.02〜0.20%およびNb:0.02〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種を、炭化物として固定されていないC量C*が0.012〜0.03に、かつCに対するNbの原子比が0.5以下となる鋼素材に、圧延終了温度:850〜950℃とする熱間圧延を施し、650℃以下で巻き取り酸洗したのち、冷延−焼鈍を2回繰返して施す。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として自動車の車体用として好適な薄鋼板の製造方法に係り、とくに足回り部品、例えば、ロアアーム等の比較的板厚の厚い部材用として好適な、薄鋼板の剛性向上に関する。
近年、地球環境の保全という問題に対する関心の高まりを受けて、自動車でも排ガス規制が行われるなど、自動車における車体の軽量化は極めて重要な課題となっている。そのため、鋼板の高強度化により板厚を減少させることによって、車体の軽量化が図られている。しかし、部品によっては剛性の確保という観点から、板厚減少が難しいものもある。例えば、自動車の足回り部品であるロアアーム等では、一般的に、板厚2.6〜2.9mmと薄鋼板としては厚手の材料が用いられている。このような部品において、剛性を維持しつつ軽量化するためには、使用する鋼板のヤング率を高めることが有効となる。
ヤング率は、集合組織に強く支配され、体心立方格子である鋼の場合では、原子の最稠密方向である<111>方向が最も高く、原子密度の小さい<100>方向が最も小さいことが知られている。通常の異方性の小さい結晶方位を有する鉄のヤング率は、およそ210GPa程度であることは広く知られているが、結晶方位に異方性を持たせ、特定方向の原子密度を高めることができれば、その方向のヤング率を高めることが可能となる。
従来より、鋼板のヤング率に関しては、集合組織を制御することで特定方向のヤング率を高めることが種々検討されてきている。
例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.02〜0.15%、Si:1.5%以下、Mn:1.5〜4.0%、Al:1.5%以下、N:0.01%以下、Nb:0.02〜0.40%を含み、かつ炭窒化物として固定されないC量を特定範囲内に限定し、さらにNをNb含有量との関係で特定範囲に限定した組成の鋼素材を、950℃以下での総圧下量を30%以上とし、さらに仕上圧延をAr3〜900℃で終了し、650℃以上で巻取り、酸洗後、50%以上の圧下率で冷間圧延を行い、500℃からの昇温速度を1〜40℃/sとして、780〜900℃の温度に昇温し均熱したのち、500℃までの冷却速度を5℃/s以上の速度で冷却する焼鈍を施す高剛性高強度薄鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、950℃以下での総圧下量を30%以上とする熱間圧延を施し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進させて、熱延板段階で{113}<110>方位のフェライトを発達させ、その後の冷延、再結晶焼鈍により、{112}<110>を主方位とする組織を形成して、圧延方向に対し直角な方向のヤング率を高めることができるとしている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:1.5%以下、Mn:1.5〜3.5%、Al:1.5%以下、N:0.01%以下、Nb:0.05〜0.40%を含み、かつ炭窒化物として固定されないC量を特定範囲内に限定し、さらにNをNb含有量との関係で特定範囲に限定した組成の鋼素材を、900℃以下での総圧下量を30%以上とし、さらに仕上圧延をAr3〜850℃で終了し、650℃以上で巻取り、酸洗後、50%以上の圧下率で冷間圧延を行い、500℃からの昇温速度を1〜30℃/sとして、780〜900℃の温度に昇温し均熱したのち、500℃までの冷却速度を5℃/s以上の速度で冷却する焼鈍を施す高剛性高強度薄鋼板の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、900℃以下での総圧下量を30%以上とする熱間圧延を施し、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進させて、熱延板段階で{113}<110>方位のフェライトを発達させ、その後の冷延、再結晶焼鈍により、{112}<110>を主方位とする組織を形成して、圧延方向に対し直角な方向のヤング率を高めることができるとしている。
また、特許文献3には、重量割合で、C:0.02〜0.15%、Mn:0.4〜2.0%、Si:0.80%以下、Al:0.001〜0.06%、Cr:0.60%以下、Cu:1.5%以下、Ni:3.0%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下、およびCa:0.0050%以下で、さらにNb:0.005〜0.10%、Mo:0.05〜0.80%、B:0.0003〜0.0030%のうちの2種以上を含有し、かつNb、Mo、B、Ti、Vを特定関係を満足するように含有する鋼片を、950℃〜Ar3の間の累積圧下率を50%以上、Ar3変態点未満の累積圧下率を5%以下とする高ヤング率鋼板の製造方法が記載されている。特許文献3に記載された技術では、950℃〜Ar3の間の累積圧下率を50%以上とすることで、{112}<110>方位を発達させることができ、ヤング率を高めた熱延鋼板が得られるとしている。
さらに、特許文献4には、成形性および剛性の優れた冷延鋼板の製造方法が記載されている。特許文献4に記載された技術では、wt%で、C:0.0003〜0.010%、Mn:1.2〜2.5%、Al:0.005〜0.10%、およびNb:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.10%のうちの少なくとも1種を含有する鋼を、加熱炉に装入し1050℃以上に加熱したのち、粗圧延において980〜1100℃の温度範囲で1パス当り、20%以上の大圧下を少なくとも1回以上加え、仕上げ圧延をAr3〜930℃で終了し、仕上げ圧延における(Ar3+150℃)以下での全圧下量を85%以上とし、室温〜800℃で巻取ったものを、30%以上の圧下率で冷間圧延し、再結晶焼鈍する。これにより、圧延方向に垂直な方向のヤング率が高い冷延鋼板が得られるとしている。
特開2006-183131号公報 特開2005-314792号公報 特開平08-311541号公報 特開平05-255804号公報
特許文献1、2に記載された技術では、950℃以下あるいは900℃以下での総圧下量を30%以上とする熱間圧延を必要としている。しかし、対象とする鋼種ではこの温度域での変形抵抗が高く、圧延機にかかる圧延荷重が高くなるため、この温度域で所望の圧下率を確保できにくくなるという問題がある。また、特許文献1、2に記載された技術では、対象とする鋼板も板厚:2.0mm以下の薄鋼板を想定しており、比較的厚い厚手の薄鋼板に関しては何ら言及されていない。
また、特許文献3に記載された技術では、950℃〜Ar3の間の累積圧下率を50%以上、Ar3変態点未満の累積圧下率を5%以下とする、低温仕上げ圧延を施すとしており、また特許文献4に記載された技術では、仕上げ圧延における(Ar3+150℃)以下での全圧下量を85%以上としているが、このような熱間圧延によっては、鋼板を安定的に製造することが難しく、鋼板製造性に問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、引張強さTSが540MPa以上で、かつ圧延方向に直角な方向のヤング率が230GPa以上を有する、剛性に優れた薄鋼板の製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明が対象とする薄鋼板は板厚:2.2mm以上3.4mm以下程度までの比較的厚手の薄鋼板に限定する。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、鋼板のヤング率向上に影響する各種要因について鋭意検討した。鋼板のヤング率は、集合組織に大きく依存し、体心立方格子である普通鋼の場合は、原子の最密方向である<111>方向で高く、逆に原子密度の小さい<100>方向で低い。このことから、冷間圧延で(112)[1-10]方位を発達させれば 、鋼板の圧延方向に直角な方向に<111>方向が揃うため、この方向のヤング率を高めることができる。体心立方格子である普通鋼においては、(112)[1-10]方位は圧延安定方位であるため、冷延圧下率を極端に高めることで、この方位を発達させることは可能である。
しかしながら、最終製品(冷延薄鋼板)が、板厚2.2mm以上の比較的厚手の薄鋼板である場合には、上記した圧延安定方位を発達させるためには70%以上の冷延圧下率とすることが望ましく、冷延圧下率:70%で冷間圧延すると仮定すると、原板である熱延板の必要板厚は7.4mm以上となる。このような厚手の熱延板から冷延板を製造するためには、多くの設備的な課題を伴う。例えば、熱延工程では、まずコイルとして巻き取るコイラーの能力が十分であること、また酸洗、冷延工程では、このような厚手の熱延板を通板可能とすることなどが、挙げられる。しかしながら、現状の製造設備では、このような厚手の熱延鋼板の製造は想定されていない場合がほとんどである。
そこで、本発明者らは、更なる検討の結果、冷延−焼鈍を2回繰返すことにし、さらに化学成分、冷間圧延条件および焼鈍条件を適正に組み合わせることにより、高冷延圧下率を付与することなく、剛性に優れた比較的厚手の薄鋼板を製造できることを見出した。具体的には、冷間圧延機での冷延圧下率を、上記した設備的な問題が発生しにくい、65%以下、好ましくは50%以下としても、最終製品において(112)[1-10]方位の集積を高めることが可能であり、板厚2.2mm以上の比較的厚手の薄鋼板であっても、圧延方向に直角な方向のヤング率を高めることができ、高剛性化を図れることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)鋼素材に、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、焼鈍工程とを順次施して薄鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.005〜0.04%、Si:0.5%超1.5%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、Ti:0.02〜0.20%およびNb:0.02〜0.20%のうちから1種または2種を含み、かつC、N、S、Ti、Nbが次(1)式
0.012 ≦ C* ≦ 0.03 ‥‥(1)
(ここで、C*=[%C]−(12/93)×[%Nb]−(12/48)×([%Ti]−(48/14)×[%N]−(48/32)×[%S])、[%M]:M元素の含有量(質量%))
および次(2)式
([%Nb]/93)/( [%C]/12) ≦ 0.5 ‥‥(2)
(ここで、[%M]:M元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延工程を、前記鋼素材に仕上圧延終了温度:850〜950℃とする熱間圧延を施して熱延板としたのち、巻取温度:650℃以下で巻き取る工程とし、前記熱延板に酸洗後、前記冷間圧延工程の1回目として、65%以下の冷延圧下率:R1(%)で冷間圧延を施す第一冷延工程と、前記焼鈍工程の1回目として、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の範囲の均熱温度:T1(℃)まで加熱し、該均熱温度で300s以下の時間保持したのち、500℃までを平均冷却速度:50℃/s以下の冷却速度で冷却する第一焼鈍工程とを、前記冷延圧下率:R1(%)と前記均熱温度:T1(℃)が次(3)式
0.06 ≦|ln(1-R1/100)|×(Ac3変態点−T1)/(Ac3変態点−727) ≦ 0.30 ‥‥(3)
(ただし、R1:65%以下、ここで、Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5+44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti、(C,Si,Mn,P,Al,Ni,Cr,Cu,Mo,V,Ti:各元素の含有量(質量%)))
を満足するように調整して施し、ついで、前記冷延工程の2回目として、65%以下の冷延圧下率:R2(%)で冷間圧延を施す第二冷延工程と、ついで前記焼鈍工程の2回目として、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点)の範囲の均熱温度:T2(℃)まで加熱し、該均熱温度:T2(℃)で150s以下の時間保持したのち、500℃までを平均冷却速度:5〜50℃/sの冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する第二焼鈍工程とを、前記冷延圧下率:R2(%)と前記均熱温度:T2(℃)が次(4)式
0.04≦|ln(1-R2/100)|×(Ac3変態点−T2)/(Ac3変態点−727)≦ 0.16 ‥‥(4)
(ただし、R2:65%以下、ここで、Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5+44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti、(C,Si,Mn,P,Al,Ni,Cr,Cu,Mo,V,Ti:各元素の含有量(質量%)))
を満足するように調整して施し、引張強さ:540MPa以上、圧延方向に直角な方向のヤング率:230 GPa以上を有する鋼板とすることを特徴とする剛性に優れた薄鋼板の製造方法。
(2)(1)において、前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜0.5%、Mo:0.1〜0.5%およびB:0.0005〜0.0030%のうちから選らばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする薄鋼板の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする薄鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強さTSが540MPa以上で、圧延方向に直角な方向のヤング率が230GPa以上である剛性に優れた薄鋼板を、特別な設備的変更を伴うことなく現有設備で製造が可能であり、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、自動車の足回り部品、例えば、ロアアーム等の比較的板厚の厚い部品用として好適である板厚2.2mm以上の比較的厚手の薄鋼板までを現有設備で製造可能となるという効果もある。また、本発明になる薄鋼板は、厚物の自動車用部品用以外にも、板厚2.2mm以上の比較的厚手で、剛性が要求される部材用としても好適に用いることができるという効果もある。
本発明は、鋼素材に、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、焼鈍工程とを順次施して薄鋼板とする薄鋼板の製造方法である。まず、使用する鋼素材の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.005〜0.04%
Cは、Nb、Tiとともに、本発明において重要な元素である。鋼板の高ヤング率化に有利な方位の発達のためには、C含有量を低減するとともに、Nbおよび/またはTiにより炭化物(NbC、TiC)としてCを固定して、固溶C量を低減することが有効である。しかし、Cが0.005%未満では、所望の引張強さTS:540MPa以上を確保することが困難となる。一方、0.04%を超える含有は、高ヤング率化に有利な方位の生成を抑制する。このため、Cは0.005〜0.04%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.03%以下である。
Si:0.5%超1.5%以下
Siは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。引張強さTS:540MPa以上の強度を安定的に確保するために、Siは0.5%超の含有を必要とする。一方、1.5%を超える多量の含有は、鋼板の溶接性を低下させるとともに、熱延工程での加熱時に、スラブ表面にファイヤライトの生成を促進させ、いわゆる赤スケールと呼ばれる表面模様の発生を助長し、さらに、表面に生成するSi酸化物が冷延鋼板の化成処理性を低下させ、また溶融亜鉛めっき鋼板として使用される場合には、表面に生成するSi酸化物が不めっきを誘発する。このようなことから、Siは0.5%超1.5%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.7〜1.2%である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。引張強さTS:540MPa以上の強度を安定的に確保するために、Mnは1.0%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える多量の含有は、原料コストの上昇を招くとともに、溶接性を低下させる。このため、Mnは1.0〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2.5%以下である。
P:0.05%以下
Pは、粒界に偏析して、鋼板の延性および靱性を低下させ、溶接性をも低下させる。さらには、合金化溶融亜鉛めっき鋼板として使用する場合に、溶融亜鉛めっき層の合金化速度を遅延させるという悪影響を及ぼす元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。しかし、0.05%以下であれば許容できるため、Pは0.05%以下に限定した。
S:0.01%以下
Sは、熱間圧延での延性を著しく低下させて熱間割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させるとともに、粗大なMnSを形成し、延性および穴拡げ性を低下させる。このような問題は、S量が0.01%を超えると顕著となる。このため、Sは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する有用な元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超える過剰な含有は、鋼板の表面欠陥を誘発する原因ともなる。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
N:0.01%以下
Nは、0.01%を超えて多量に含有すると、過剰な窒化物が生成し、熱間圧延中にスラブ割れを伴い、表面疵が発生する恐れがある。また延性や靱性の低下も招く。このため、Nは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Ti:0.02〜0.20%およびNb:0.02〜0.20%のうちから1種または2種
Ti、Nbはいずれも、炭化物としてCを固定し、固溶Cを低減する作用を有する本発明では重要な元素であり、1種または2種を選択して含有する。
Tiは、Cと結合し、熱延板中に炭化物(TiC)として析出し、鋼中に存在する固溶Cの一部を固定し、鋼板の高ヤング率化に寄与する。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える多量の含有は、合金コストの増加も招くだけでなく、冷間圧延時の圧延負荷を高め、安定した鋼板製造を困難にする。このため、含有する場合には、Tiは0.02〜0.20%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.15%以下である。
Nbは、Tiと同様に、Cと結合し、熱延板中に炭化物(NbC)として析出し、鋼中に存在する固溶Cの一部を固定し、鋼板の高ヤング率化に寄与する。なお、Nbの微細な炭窒化物は、強度の上昇に有効に寄与する。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える多量の含有は、合金コストの増加も招くだけでなく、熱間圧延時や冷間圧延時の圧延負荷を高めるため、安定した鋼板製造を困難にする。このため、Nbは0.02〜0.20%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.15%以下である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明ではさらに、C、N、S、Ti、Nbを上記した範囲で、かつ次(1)式
0.012 ≦ C* ≦ 0.03 ‥‥(1)
(ここで、C*=[%C]−(12/93)×[%Nb]−(12/48)×([%Ti]−(48/14)×[%N]−(48/32)×[%S])、[%M]:M元素の含有量(質量%))
および次(2)式
([%Nb]/93)/( [%C]/12) ≦ 0.5 ‥‥(2)
(ここで、[%M]:M元素の含有量(質量%))
を満足するように調整して含有する。
(1)式で規定するC*は、NbやTiにより炭化物として固定されないC量(固溶C量)を意味する。このC*が、0.03を超えて大きくなると、固溶Cが多量に存在することになり、鋼板のヤング率を高めるために優位な方位の集合組織形成を阻害する。一方、0.012未満では、固溶Cが少なすぎて、最終製品において第二相が全く存在しなくなり、引張強さTS:540MPa以上の確保が困難となる。このため、C*は0.012〜0.03の範囲に限定した。なお、好ましくは0.012〜0.025である。ただし、C*の算出に際しては、([%Ti]−(48/14) ×[%N]−(48/32) ×[%S] )が 零以下である場合には、([%Ti]−(48/14) ×[%N]−(48/32) ×[%S] )は零として計算するものとする。
(2)式左辺で規定する([%Nb]/93)/( [%C]/12)は、Cに対するNbの原子比である。Cに対するNbの原子比が0.5を超えると、合金コストの高騰を招くとともに、熱間圧延および冷間圧延での圧延負荷が増大する。このようなことからCに対するNbの原子比は0.5以下に限定した。好ましくは0.3以下である。なお、Cに対するNbの原子比の下限は特に限定する必要はないが、Cに対するNbの原子比が0.05未満となるNb含有は、焼鈍時に固溶Cが多量に存在することになり、所望のヤング率が確保できなくなる。このため、Cに対するNbの原子比は0.05以上とすることが好ましい。より好ましくは0.1以上である。
上記した成分範囲が基本の組成であるが、この基本組成に加えてさらに、必要に応じて選択元素として、Cr:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜0.5%、Mo:0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Cu:0.1〜0.5、V:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種、を選択して含有することができる。
Cr:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜0.5%、Mo:0.1〜0.5%、B:0.0005〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cr、Ni、Mo、Bはいずれも、熱延工程において、加工オーステナイトの再結晶を抑制することで、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進し、鋼板のヤング率の向上に寄与する結晶方位を発達させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。
Crは、熱延工程において、加工オーステナイトの再結晶を抑制して、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進し、{113}<110>方位を発達させ、その後の冷延工程、焼鈍工程を経て鋼板のヤング率を向上させることができる。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて多量に含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。また、溶融亜鉛めっき鋼板として使用する場合には、表面に生成するCrの酸化物が不めっきを誘発する。このようなことから、含有する場合には、Crは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以下である。
Niは、Crと同様に、熱延工程において、加工オーステナイトの再結晶を抑制することで、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進し、{113}<110>方位を発達させ、その後の冷延工程、焼鈍工程を経て鋼板のヤング率を向上させることができる。また、Niは、固溶強化元素として、鋼の高強度化にも有効に寄与する。さらに、Niは、Cu添加による熱間延性の低下に伴う表面欠陥の発生を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、0.5%を超える多量のNi含有は、均熱後の冷却過程において高ヤング率化に必要なフェライトの生成を阻害し、また合金コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは0.1〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3%以下である。
Moは、Cr、Niと同様に、熱延工程において、加工オーステナイトの再結晶を抑制することができ、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進することで、{113}<110>方位を発達させ、その後の冷延工程、焼鈍工程を経て鋼板のヤング率を向上させることができる。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、0.5%を超えて多量に含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Moは0.1〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3%以下である。
Bは、Mo、Cr、Niと同様に、熱延工程において、加工オーステナイトの再結晶を抑制することができ、未再結晶オーステナイトからのフェライト変態を促進することで、{113}<110>方位を発達させ、その後の冷延工程、焼鈍工程を経て鋼板のヤング率を向上させることができる。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0030%を超えて含有しても、上記した効果が飽和するうえ、均熱後の冷却時のフェライト生成を著しく阻害し、ヤング率を低下させる。このため、含有する場合には、Bは0.0005〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0020%以下である。
Cu:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種
Cu、Vは、いずれも、鋼板強度を増加させる元素であり、必要に応じて1種または2種を選択して含有できる。
Cuは、固溶して、鋼板強度の増加に寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.1%以上含有する必要があるが、0.5%を超えて多量に含有すると、熱間圧延時に割れを引き起こして、表面性状を低下させる悪影響を及ぼす。このため、含有する場合には、0.1〜0.5%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3%以下である。
Vは、微細な炭窒化物を形成して、鋼板強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超えて多量に含有させても、強度増加の効果は小さく、含有量に見合う効果を期待できなくなり。経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Vは0.01〜0.20%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、O:0.005%以下が許容できる。
上記した組成を有する鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はなく、通常公知の溶製方法、鋳造方法がいずれも適用できる。上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の溶製炉で溶製し、連続鋳造法等の鋳造方法で、スラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、造塊−分塊圧延法を用いても何ら問題はない。
鋳造された鋼素材は、そのまま、あるいは一旦冷却してから加熱し、熱延工程を施される。
なお、一旦冷却したのちの加熱は、加熱温度:1150〜1300℃とする加熱とすることが好ましい。加熱温度が1150℃未満では、冷却中に析出した粗大な析出物が再固溶せず残存し、成形性を低下させる要因となる。一方、1300℃を超えて高温では、結晶粒の粗大化や、酸化ロスによる歩留低下が増大する。
熱延工程は、加熱された鋼素材、あるいは加熱することなく鋳造まま鋼素材に、粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を施し熱延板とした後、所定の巻取温度でコイル状に巻き取る工程とする。
粗圧延は、所定の寸法形状のシートバーとすることができればよく、とくに限定する必要はない。また、仕上圧延は、圧延終了温度を850〜950℃の範囲の温度とする圧延とする。仕上圧延終了温度を950℃以下とすることにより、未再結晶オーステナイトからフェライトへの変態が進み、微細なフェライト組織の熱延板が得られ、さらに冷延、焼鈍工程後に(112)[1-10]方位への集積度を高めることができる。一方、仕上圧延終了温度が850℃未満では、Ar3変態点を下回るおそれが大きくなり、熱延板組織に加工組織が混在し、冷延、焼鈍工程後に(112)[1-10]方位への集積が妨げられる。また、変形抵抗の増加により圧延荷重が大幅に増大するなど、鋼板製造上の困難が伴う。このようなことから、仕上圧延は、圧延終了温度:850〜950℃とする圧延とした。
仕上圧延終了後、熱延板を、巻取温度:650℃以下でコイル状に巻き取る。巻取温度が650℃を超えて高温となると、TiおよびNbの炭窒化物が粗大化し、冷間圧延後の焼鈍工程における加熱段階において、フェライトの再結晶を抑制する効果や、オーステナイト粒の粗大化を抑制する効果が低下する。このため、巻取温度は650℃以下に限定した。なお、巻取温度が400℃を下回ると、硬質な低温変態相が多く生成するため、その後の冷間圧延での変形が不均一となり、ヤング率に有利な方位への集積が妨げられ、焼鈍工程後に所望の集合組織が発達せず、鋼板のヤング率を向上させることが困難となる。さらに、巻取り後の冷間圧延での圧延荷重が増加し、冷間圧延が難しくなる。このようなことから、巻取温度は400℃以上にすることが好ましい。
巻き取り後、熱延板は通常公知の方法で酸洗され、冷延工程、焼鈍工程を施される。
本発明では、酸洗された熱延板に、冷延工程−焼鈍工程をその順に2回繰返す工程とする。1回目の冷延工程を第一冷延工程、1回目の焼鈍工程を第一焼鈍工程と、2回目の冷延工程を第二冷延工程、2回目の焼鈍工程を第二焼鈍工程と、称する。
1回目の冷延工程−焼鈍工程は、鋼板組織の微細化を目的の1つとする。
第一冷延工程における冷延圧下率:R1(%)は、65%以下に限定した。というのは、特別な設備変更を伴うことなく、現有の冷間圧延設備や他の製造設備で容易に最終板厚2.2mm以上の比較的厚い薄鋼板を製造可能とするためである。なお、好ましくはR1(%)は50%以下、さらに好ましくは45%以下である。
第一冷延工程に続く第一焼鈍工程は、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の範囲の均熱温度:T1(℃)まで加熱し、該均熱温度T1で300s以下の時間保持したのち、平均冷却速度:50℃/s以下の冷却速度で冷却する工程とする。
均熱温度T1(℃)が、(Ac3変態点−150℃)未満では、未再結晶粒が多く、かつ不均一に残存するため、後工程である2回目の冷延工程および焼鈍工程において、ヤング率向上に有利な方位の発達が妨げられる。一方、(Ac3変態点−50℃)を超えて高温となると、組織が粗大化する。このようなことから、均熱温度T1(℃)は(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の範囲の温度に限定した。
また、均熱温度T1における保持時間が300sを超えて長くなると、組織の粗大化が生じる。このため、均熱温度T1における保持時間は300s以下に限定した。なお、好ましくは50〜150sである。
さらに、1回目の冷延工程−焼鈍工程では、冷延圧下率R1(%)と均熱温度T1(℃)は、次(3)式
0.06≦|ln(1−R1/100)|×(Ac3変態点−T1)/(Ac3変態点−727)≦0.30 ‥‥(3)
を満足するように調整する。ここで、R1(%)は65%以下とし、Ac3変態点は、次式
Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5 +44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti、
(C、Si、Mn、P、Al、Ni、Cr、Cu、Mo、V、Ti:各元素の含有量(質量%))
で算出するものとする。
(3)式の中央値、|ln(1−R1/100)|×(Ac3変態点−T1)/(Ac3変態点−727)は、冷間圧延時の塑性歪みが、焼鈍時に組織の回復・再結晶によって減少する程度を表す。この値が0.06未満では、第一冷延工程の冷延圧下率R1(%)が低すぎて、第一冷延工程に続く第一焼鈍工程で組織の微細化が困難となる。一方、この値が0.30を超えて大きくなると、熱延板の板厚が極めて厚くなることとなり、現状の酸洗および冷間圧延の製造設備では通板が困難となる。このようなことから、(3)式の中央値、|ln(1−R1/100)|×(Ac3変態点−T1)/(Ac3変態点−727)を0.06〜0.30の範囲に限定し、冷延圧下率R1(%)と均熱温度T1(℃)とが(3)式を満足するように調整することとした。
また、均熱後の冷却時に、オーステナイトがフェライトに変態することで、ヤング率向上に優位な方位の発達が可能となる。均熱後の平均冷却速度が、50℃/sを超えて速くなると、500℃までの冷却時に残存するオーステナイトが多くなり、その後の冷却によって、低温変態相として一部存在することとなるがその量が多くなり過ぎ、成形性が低下する。このため、均熱後の冷却速度を500〜T1℃までの平均で、平均冷却速度:50℃/s以下に限定した。なお、好ましくは10〜30℃/sである。
1回目の冷延工程−焼鈍工程に引続いて、2回目の冷延工程−焼鈍工程を施す。2回目の冷延工程−焼鈍工程では、最終製品厚さに仕上げること、さらに鋼板のヤング率を向上させることを目的とする。
2回目の冷延工程である第二冷延工程は、65%以下の冷延圧下率:R2(%)で冷間圧延を施す工程とする。
第二冷延工程における冷延圧下率R2(%)は、第一冷延工程と同様に、65%以下に限定した。というのは、特別な設備変更を伴うことなく、現有の冷間圧延設備や他の製造設備で容易に最終板厚2.2mm以上の比較的厚い薄鋼板を製造可能とするためである。なお、好ましくはR2(%)は50%以下、さらに好ましくは45%以下である。
第二冷延工程に続く第二焼鈍工程は、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点)の範囲の均熱温度T2(℃)まで加熱し、該均熱温度T2(℃)で150s以下の時間保持したのち、平均冷却速度:5〜50℃/sの冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する工程とする。
2回目の焼鈍工程後に高いヤング率を有する鋼板とするためには、焼鈍加熱時には、冷間圧延によって発達した(112)[1-10]方位をもつフェライトの再結晶を抑制し加工フェライトからオーステナイトへ変態させる必要があり、さらに、均熱後の冷却時には、そのオーステナイトを上記した方位をもつフェライトに再変態させて、ヤング率向上に優位な集合組織を発達させる必要がある。
均熱温度T2(℃)が(Ac3変態点−150℃)未満と低い場合には、圧延組織が残存し、伸びが低下する。一方、均熱温度T2(℃)が(Ac3変態点)を超えて高温となる場合には、オーステ ナイト粒が粗大になり、焼鈍後の冷却時に再変態したフェライトが(112)[1-10]方位に集積することが難しくなる。このようなことから、均熱温度T2(℃)は(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点)の範囲の温度に限定した。
また、均熱温度T2(℃)での保持時間が、150sを超えて長時間となると、オーステナイト粒の粗大化が起こる。このため、均熱温度T2での保持時間を150s以下に限定した。なお、好ましくは20〜100sである。
さらに、2回目の冷延工程−焼鈍工程では、冷延圧下率R2(%)と均熱温度T2(℃)は、次(4)式
0.04≦|ln(1−R2/100)|×(Ac3変態点−T2)/(Ac3変態点−727)≦0.16 ‥‥(4)
を満足するように調整する。ここで、R2(%)は65%以下とし、Ac3変態点は、次式
Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5 +44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti、
(C、Si、Mn、P、Al、Ni、Cr、Cu、Mo、V、Ti:各元素の含有量(質量%))
で算出するものとする。
(4)式の中央値、|ln(1-R2/100)|×(Ac3変態点−T2)/(Ac3変態点−727)は、冷間圧延による塑性歪みが、焼鈍時に組織の回復・再結晶によって減少する程度を表している。この値が0.04未満では、冷延圧下率R2(%)が低すぎ、ヤング率向上に優位な集合組織を発達させることができない。一方、この値が、0.16を超えて大きくなると、明確な理由はわかっていないが、鋼板のヤング率を高くできなくなる。このようなことから、(4)式の中央値、|ln(1−R2/100)|×(Ac3変態点−T2)/(Ac3変態点−727)を0.04〜0.16の範囲に限定し、冷延圧下率R2(%)と均熱温度T2(℃)とが(4)式を満足するように調整することとした。
また、第二焼鈍工程においては、均熱後の冷却は、フェライトを十分に生成させて、鋼板ヤング率の向上に有利な集合組織を発達させるために重要である。このために、均熱後の冷却速度を、500℃までの平均で、5〜50℃/sの範囲に限定した。均熱後の平均冷却速度が、50℃/sを超えて速くなると、冷却時に残存するオーステナイトを全てフェライト変態させることができなくなる。一方、5℃/s未満では、冷却が遅すぎて生産性が低下する。なお、好ましくは10〜300℃/sである。
また、第二焼鈍工程においては、均熱した後、上記した平均冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する。冷却停止温度が500℃を超えて高い場合には、パーライトが生成し、鋼板ヤング率が低下する。このため、均熱後は、5〜50℃/sの平均冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度で冷却することとした。なお、好ましくは、冷却停止温度は300〜400℃である。
第二焼鈍工程では、上記した均熱後の冷却処理に加えて、過時効帯を通過させる処理を施してもよい。
また、上記した第二焼鈍工程後に、溶融亜鉛浴中を通板させて、鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を形成し溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき処理を施してもよい。また、さらに溶融亜鉛めっき層を合金化し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とする合金化処理を施しても良い。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
(実施例1)
表1に示す組成の鋼Aを真空溶解炉にて溶製し、鋳型に鋳造して小型鋼塊(鋼素材)とした。得られた鋼素材を、1250℃で1時間加熱後、実験圧延機で熱間圧延し、板厚2.5mmの熱延板とした。その際、熱間圧延の仕上温度は900℃、コイル巻取り相当処理として600℃で1時間保持後炉冷した。なお、熱延板板厚を3.0mm、4.0mmと厚くした熱延板も用意した。
次いで、得られた熱延板を酸洗したのち、表2に示す条件で、実験圧延機と実験焼鈍炉を用いて、1回目の冷延工程−焼鈍工程(第一冷延工程−第一焼鈍工程)、および2回目の冷延工程−焼鈍工程(第二冷延工程−第二焼鈍工程)を順次施して、1.2mm厚の冷延鋼板とした。なお、実験圧延機を用いたため、実機製造厚の1/2を想定して熱間圧延および冷間圧延の圧下率を設定した。したがって、鋼板厚:1.2mmは、実機製造時の鋼板厚:2.4mmを想定したものである。また冷延圧下率は、実機相当の冷延圧下率とした。
得られた冷延鋼板から、試験片長手方向が圧延方向に対し直角な方向となるように試験片(幅10mm×長さ50mm)を切り出し、横振動型の共振周波数測定装置を用いて、ASTM(American Society to Testing Materials)C 1259の基準に準拠して、ヤング率(E)を測定した。
また、得られた冷延鋼板から、引張方向が圧延方向に対し平行な方向となるように、JIS5号引張試験片(GL:50mm)を切り出し、引張特性(引張強さTS、伸びEl)を測定した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2014055310
Figure 2014055310
Figure 2014055310
本発明例はいずれも、引張強さTSが540MPa以上で、かつ圧延方向に直角な方向のヤング率が230GPa以上を有する、剛性に優れた薄鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所望のヤング率を確保できていない。
(実施例2)
表4に示す組成の溶鋼を真空溶解炉にて溶製し、鋳型に鋳造して小型鋼塊(鋼素材)とした。得られた鋼素材を1250℃で1時間加熱したのち、実験圧延機で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延板とした。その際、熱間圧延の仕上温度は900℃、コイル巻取り相当処理として600℃で1時間保持後炉冷した。
得られた熱延板を酸洗したのち、表5に示す条件で、実験圧延機と実験焼鈍炉を用いて、1回目の冷延工程−焼鈍工程(第一冷延工程−第一焼鈍工程)、および2回目の冷延工程−焼鈍工程(第二冷延工程−第二焼鈍工程)を順次施して、1.2mm厚の冷延鋼板とした。
得られた冷延鋼板から、実施例1と同様に試験片を採取し、引張特性およびヤング率を調査した。得られた結果を表6に示す。
Figure 2014055310
Figure 2014055310
Figure 2014055310
本発明例はいずれも、引張強さTSが540MPa以上で、かつ圧延方向に直角な方向のヤング率が230GPa以上を有する、剛性に優れた薄鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所望のヤング率を確保できていない。

Claims (3)

  1. 鋼素材に、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、焼鈍工程とを順次施して薄鋼板とするにあたり、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.005〜0.04%、 Si:0.5%超1.5%以下、
    Mn:1.0〜3.0%、 P:0.05%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下
    を含有し、Ti:0.02〜0.20%およびNb:0.02〜0.20%のうちから1種または2種を含み、かつC、N、S、Ti、Nbが下記(1)式および下記(2)式を満足するように調整して含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延工程を、前記鋼素材に仕上圧延終了温度:850〜950℃とする熱間圧延を施して熱延板としたのち、巻取温度:650℃以下で巻き取る工程とし、
    前記熱延板に酸洗後、前記冷間圧延工程の1回目として、65%以下の冷延圧下率:R1(%)で冷間圧延を施す第一冷延工程と、前記焼鈍工程の1回目として、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の範囲の均熱温度:T1(℃)まで加熱し、該均熱温度で300s以下の時間保持したのち、500℃までを平均冷却速度:50℃/s以下の冷却速度で冷却する第一焼鈍工程とを、前記冷延圧下率:R1(%)と前記均熱温度:T1(℃)が下記(3)式を満足するように調整して施し、ついで、
    前記冷延工程の2回目として、65%以下の冷延圧下率:R2(%)で冷間圧延を施す第二冷延工程と、ついで前記焼鈍工程の2回目として、(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点)の範囲の均熱温度:T2(℃)まで加熱し、該均熱温度:T2(℃)で150s以下の時間保持したのち、500℃までを平均冷却速度:5〜50℃/sの冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度まで冷却する第二焼鈍工程とを、前記冷延圧下率:R2(%)と前記均熱温度:T2(℃)が下記(4)式を満足するように調整して施し、
    引張強さ:540MPa以上、圧延方向に直角な方向のヤング率:230 GPa以上を有する鋼板とすることを特徴とする剛性に優れた薄鋼板の製造方法。

    0.012 ≦ C* ≦ 0.03 ‥‥(1)
    ここで、C*=[%C]−(12/93)×[%Nb]−(12/48)×([%Ti]−(48/14)×[%N]−(48/32)×[%S])、[%M]:M元素の含有量(質量%)
    ([%Nb]/93)/( [%C]/12) ≦ 0.5 ‥‥(2)
    ここで、[%M]:M元素の含有量(質量%)
    0.06≦|ln(1-R1/100)|×(Ac3変態点−T1)/(Ac3変態点−727) ≦ 0.30 ‥‥(3)
    ただし、R1:65%以下、
    ここで、Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5+44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti
    C,Si,Mn,P,Al,Ni,Cr,Cu,Mo,V,Ti:各元素の含有量(質量%)
    0.04≦|ln(1-R2/100)|×(Ac3変態点−T2)/(Ac3変態点−727)≦ 0.16 ‥‥(4)
    ただし、R2:65%以下
    ここで、Ac3変態点(℃)=910−203×C0.5+44.7×Si−30×Mn+700×P+400×Al−15.2×Ni−11×Cr−20×Cu+31.5×Mo+104×V+400×Ti
    C,Si,Mn,P,Al,Ni,Cr,Cu,Mo,V,Ti:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜0.5%、Mo:0.1〜0.5%およびB:0.0005〜0.0030%のうちから選らばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の薄鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.1〜0.5%、V:0.01〜0.20%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の薄鋼板の製造方法。
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