JP2014054231A - オオムギ属植物の1h染色体の一部を導入することによる小麦粉の生地物性を向上させる方法 - Google Patents

オオムギ属植物の1h染色体の一部を導入することによる小麦粉の生地物性を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】小麦粉の生地物性を向上させる方法、および同方法を用いたコムギの育種改良方法を提供すること。同方法により生地物性が向上した小麦粉を原料とする食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部をコムギに導入することを特徴とする、小麦粉の生地物性を向上させる方法、および小麦粉の生地物性が改善されたコムギの作出方法を提供する。ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギから得られた小麦粉を用いることを特徴とする、食品の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ホルデインを生成するオオムギの1H染色体短腕(1HS)をコムギに導入することにより、小麦粉の生地物性を向上させる方法、同方法を用いて得られたコムギと生地物性が向上した小麦粉、並びに該小麦粉を原料とする加工食品に関する。
小麦粉の生地は、コムギの種子の胚乳に含まれるタンパク質の1種であるグルテンに、水を加え捏ねることで生じる。その物性は、グルテンに含まれる網目構造を形成するグルテニンによる弾性と、単量体からなるグリアジンによる粘性のバランスによって決まる。グルテニンの割合が高いほど生地物性が向上し、製パン性が高まる。
小麦粉の生地物性は、遺伝的要因と環境的要因に影響される。生地物性に関与する遺伝子としては、コムギの第1同祖群染色体の短腕に座乗する低分子量グルテニン・サブユニット遺伝子(Glu-3)、γ/ω-グリアジン遺伝子(Gli-1)、同じ染色体の長腕に座乗する高分子量グルテニン・サブユニット遺伝子(Glu-1)、第6同祖群染色体の長腕に座乗するα/β-グリアジン遺伝子(Gli-2)が知られている。これらの遺伝子の品種間差異について多くの報告がある(非特許文献1参照)。
グルテニン・サブユニットでは、分子間でジスルフィド結合をすることにより非常に大きな網目構造を形成するが、これに関与するシステインの数に変異があり、高分子量グルテニン・サブユニットでシステインが1つ多い変異を持つサブユニット5が、生地物性と製パン性を向上させることが明らかになっている。
M. C. Gianibelli, O. R. Larroque, F. MacRitchie, C. W. Wrigley (2001) Biochemical, Genetic, and Molecular Characterization of Wheat Glutenin and Its Component Subunits. Cereal Chemistry 78: 635 - 646
上記のとおり、小麦粉の生地物性は、コムギのグルテンタンパク質の遺伝子型に大きな影響を受ける。したがって、特定のグルテンタンパク質遺伝子型を持つ品種の小麦粉を選択することにより、生地物性を高めることが出来る。しかしながら、このようにして改良できる範囲は、当該遺伝子型の変異の範囲内に限られていた。一方、小麦粉を利用した加工品は広範囲にわたり、様々な加工特性が求められている。
そこで、本発明では、小麦粉の生地物性をより高める方法を開発することを目的とした。
小麦粉の生地物性に関与するグルテニン・サブユニット遺伝子のうち、低分子量グルテニン・サブユニット遺伝子は、第1同祖群染色体の短腕に座乗している。一方、オオムギ属(Hordeum属)の第1同祖群染色体である1Hの短腕(1HS)にも、これと相同な遺伝子であるB-ホルデインが座乗していることが知られている。
しかし、オオムギはグルテンを持たないため、大麦粉でパンを作ると膨らまない。また、小麦粉に大麦粉を混ぜた場合は生地物性が低下し、製パン性が劣る。それゆえ、オオムギのホルデイン遺伝子に生地物性を高める効果があるとは全く考えられていなかった。
また、オオムギ属の染色体をコムギに導入した系統については、小麦粉生地や食品の製造に適していないと考えられていたため、生地物性を調べた報告はない。
そこで、本発明者らは、オオムギ属1HS染色体断片をコムギに導入することにより、小麦粉の生地に対する影響について鋭意検討を重ねた。その結果、驚くべきことに、オオムギ属1HS染色体断片を導入したコムギでは、生地物性が向上し、つまり、ミキシング耐性が高まり、生地強度が増し、パンや麺などへの加工適性が高まることを見出し、本発明を完成させたのである。
すなわち本発明は、オオムギ属1HS染色体断片をコムギに導入することにより、コムギの生地物性を制御する方法を提供する。
請求項1に係る本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部をコムギに導入することを特徴とする、小麦粉の生地物性を向上させる方法である。
請求項2に係る本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部をコムギに導入することを特徴とする、小麦粉の生地物性が改善されたコムギの作出方法である。
請求項3に係る本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギを、前記1H染色体短腕を持たないコムギと交配する工程を含む、請求項1又は2記載の方法である。
請求項4に係る本発明は、生地物性がミキシング耐性及び生地強度である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法である。
請求項5に係る本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギから得られた小麦粉を用いることを特徴とする、食品の製造方法である。
請求項6に係る本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギから得られた小麦粉を用いて小麦粉生地を形成する工程を含む、食品の製造方法である。
請求項7に係る本発明は、食品がパン又は麺である、請求項5又は6記載の食品の製造方法である。
請求項8に係る本発明は、ホルデインがB-ホルデイン及びγ-ホルデインを含むものである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法である。
本発明によれば、コムギへのオオムギ属1HS染色体断片の導入により、生地物性を向上させることが出来、生地物性に問題のある国産コムギを改良することが期待できる。
実施例1でChinese Springにオオムギ属1HS染色体断片を導入したコムギ系統(CS1HS)の染色体構成をGISH法で同定した結果を示す。白っぽく蛍光発色している部分がオオムギ属植物由来の染色体断片、灰色に見える部分がコムギ染色体である。 実施例2で、CS1HSとその交配親の種子タンパク質のアルコール可溶性画分(総グルテンタンパク質画分)について、二次元電気泳動法によりホルデインタンパク質の発現を検出した結果である。(a)はコムギ親、(b)はCS1HS、(c)はオオムギ親の泳動写真を示す。右下に、オオムギ親由来の各スポットのN末端アミノ酸配列および推定されるタンパク質を示す。 実施例2で、CS1HSのアルコール不溶性画分(グルテンの網目構造タンパク質画分)についての二次元電気泳動法の結果を示す。各スポットの番号は図2に示したものと同じである。 実施例3でミナミノカオリにオオムギ属1HS染色体断片を導入したコムギ系統(ミナミノカオリ1HS)およびミナミノカオリについて、SDS-セディメンテーションテストを行った結果である。なお、TM-1-8〜71とはミナミノカオリ1HSの各系統の名称である。バーはSDS沈降量(単位:cm)、各バー上の数字は種子タンパク質含量(質量%)を示す。 実施例4におけるCS非導入系統の60%歩留粉(小麦粉)についての生地物性試験の結果(ファリノグラム)を示す。縦軸は生地を捏ねるときの生地抵抗(単位:BU)、横軸は時間(単位:分)である。 実施例4におけるCS1HS導入系統の60%歩留粉についての生地物性試験の結果(ファリノグラム)を示す。縦軸は生地を捏ねるときの生地抵抗(単位:BU)、横軸は時間(単位:分)である。 実施例4におけるミナミノカオリ非導入系統の60%歩留粉についての生地物性試験の結果(ファリノグラム)を示す。縦軸は生地を捏ねるときの生地抵抗(単位:BU)、横軸は時間(単位:分)である。 実施例4におけるミナミノカオリ1HS導入系統の60%歩留粉についての生地物性試験の結果(ファリノグラム)を示す。縦軸は生地を捏ねるときの生地抵抗(単位:BU)、横軸は時間(単位:分)である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕をコムギに導入することにより、小麦粉の生地物性を向上させる方法に関するものである。
本発明に用いられるコムギは、6倍体のコムギであり、いわゆるパンコムギ(普通系コムギ)(Triticum aestivum)やクラブコムギ(T. compactum)、スペルタコムギ(T. spelta)などがこの中に含まれる。
また、普通系コムギの中では、パン用、麺用など用途の別を問わずいずれの品種も使用できる。例えばChinese Spring、新中長、ホクシン、きたもえ、きたほなみ、春よ恋、ハルユタカ、キタノカオリ、タクネコムギ、ホロシリコムギ、タイセツコムギ、キタカミコムギ、ネバリゴシ、ナンブコムギ、コユキコムギ、ゆきちから、シラネコムギ、ハルイブキ、アブクマワセ、アオバコムギ、きぬあずま、農林61号、きぬの波、イワイノダイチ、タマイズミ、つるぴかり、ダブル8号、さとのそら、春のかがやき、あやひかり、ハナマンテン、農林26号、バンドウワセ、ユメセイキ、しゅんよう、フウセツ、ユメアサヒ、キヌヒメ、ニシノカオリ、シロガネコムギ、ふくさやか、ふくほのか、きぬいろは、シラサギコムギ、ミナミノカオリ、チクゴイズミ、さぬきの夢2000、ニシホナミ等といった品種が挙げられる。
本発明におけるオオムギ属植物としては、例えばオオムギ(Hordeum vulgare)、ヤバネオオムギ(H. vulgare var. distichon)、ハダカムギ(H. vulgare var. nudum)などのオオムギ栽培種、H. vulgare spp. spontaniumH. spontanium)、H. bulbosumH. agriocrithonなどのオオムギ野生種、H. chilenseなどのオオムギ近縁野生種、オオムギクサ(H. murinum ssp. leporinum)、ムギクサ(H. murinum)、チシマムギクサ(H. brachyantherum)、ハマムギクサ(H. marinum)、ヒメムギクサ(H. hystrix)、ホソノゲムギ(H. jubatum)、ホソムギクサ(H. nodosum)、ミナトムギクサ(H. pusillum)などが挙げられるが、特にオオムギ栽培種、オオムギ野生種およびオオムギ近縁野生種が好ましい。
本発明において、オオムギ属植物の1H染色体短腕とは、オオムギ属に属する植物が持つ1H染色体(第一染色体)の短腕(以下、「オオムギ属1HS染色体」とも呼ぶ。)を指す。
本発明でコムギに導入されるオオムギ属1HS染色体は、その全体であっても良いが、ホルデイン遺伝子をコムギ植物体中で発現可能な状態で含み、コムギ植物体中でホルデインタンパク質を生成するものであれば、その一部(すなわち1HS染色体断片)であっても良い。
ホルデインはアルコール可溶性のオオムギ属植物の種子貯蔵タンパク質である。ホルデインはB-,C-,D-及びγ-ホルデインの4種類に分類され、これらは全て1H染色体上の構造遺伝子によってコードされる。特に、そのうちB-,C-及びγ-ホルデインの遺伝子座は、1HS染色体の末端部分に集中して存在する。
したがって、本発明で用いられる1HS染色体としては、例えば、B-,C-及びγ-ホルデイン遺伝子から選ばれた1種以上を含む1HS染色体断片も用いることができる。好ましくは、少なくともB-及びγ-ホルデイン遺伝子を含む1HS染色体断片、より好ましくは、B-,C-及びγ-ホルデイン遺伝子を含む1HS染色体断片を、1HS染色体として用いることができる。
なお、γ-ホルデイン遺伝子としては、アクセッション番号AJ580585、M36378、X13508等がある。
B-ホルデイン遺伝子としては、アクセッション番号DQ148297、DQ178602、DQ189997、DQ267476、DQ267477、DQ267478、DQ267479、DQ267480、DQ267481、DQ826387、GQ342970、GQ342971、GQ342972、GQ342973、GQ342974、GQ342975、GQ342976、GQ342977、GQ359102、GQ359103、GQ359104、GQ359105、GQ359106、GQ359107、X03103、X53690、X53691、X87232等がある。
C-ホルデイン遺伝子としては、アクセッション番号M36941、S66938、X60037等がある。
本発明においては、前記オオムギ属植物の1HS染色体を前記コムギに導入し、オオムギ属染色体導入系統を作出する。オオムギ属染色体導入系統の作出は、ISLAM, A.K. et al. 1981 Isolation and characterization of euplasmic what-barley chromosome addition lines. Heredity 46: 161-174; TAKETA, S. et al. 2001 Production and characterization of a complete set of wheat-wild barley (Hordeum vulgare ssp. spontaneum) chromosome addition lines. Breed. Sci. 51: 199-206等に記載された従来の交雑育種法により行うことができる。
簡単に説明すると、まず、オオムギ属植物を花粉親、コムギを母本として交配して雑種第1代(F)を得る。Fの染色体にはオオムギ属染色体が含まれるので、Fについてコムギ親の花粉を用いた戻し交雑や自家受粉を繰り返すことにより、染色体の不均等分配が起り、オオムギ属染色体を1対ずつ持つオオムギ属染色体導入コムギ系統を作出することができる(実施例1参照)。
このとき、導入系統の染色体構成は、C-バンド法(Giraldetz, R. et al. 1979 Comparison of C-banding pattern in the chromosomes of inbred lines and openpollinated varieties of rye. Z. Pflanzenzuchtg 83: 40-48)やゲノミック in situ ハイブリダイゼーション法(Taketa, S. et al. 1997 Expression of dominant marker genes of barley in wheat-barley hybrids. Genes and Genet. Syst. 72: 101-106)等により同定することができる(実施例1参照)。
上記の1HS染色体導入コムギ系統は、導入したオオムギ属1HS染色体断片を自殖により安定して維持することができる。したがって、本発明により生地物性を向上させたコムギは、小麦加工食品の製造だけでなく、他品種のコムギと掛け合わせることで、より優れた形質を備えたコムギの育種にも活用可能である。
すなわち、オオムギ属1HS染色体を持つ既存のコムギ系統と、1HS染色体を持たないコムギを交配することにより、この新しいコムギ親での1HS染色体導入系統を作出することができる。
具体的にはまず、1HS染色体を持つコムギを花粉親とし、1HS染色体を持たないコムギを母本として交配して雑種第1代(F)を得る。Fの染色体には1HS染色体1本が含まれるので、Fについて新しいコムギ親の花粉を用いた戻し交雑や自家受粉を繰り返し、1HS染色体を1対持つ系統を上記の方法等により同定することで、新しいオオムギ属1HS染色体導入系統を作出することができる(実施例1参照)。
上記のようにして得られたオオムギ属1HS染色体導入系統は、親コムギと比べて生地物性が向上している。
ここでいう「生地物性の向上」とは、小麦粉生地の強さ及び硬さの増加、ミキシング耐性の増加、安定度の増加、等を指す。
このような生地物性が改善されることで、小麦粉生地の弾力が増してべたつきが減り、生地をまとめやすくなり、生地を扱う際の作業性が良くなる。
さらに、本発明によれば、パン、麺、菓子等の小麦加工食品の製造に対する適性、すなわち二次加工適性も改善される。
このように、本発明によれば、オオムギ属1HS染色体導入により、小麦粉生地の物性、二次加工適性を向上させ、小麦粉の品質を改善することが可能である。
なお、コムギの生地物性の確認は、SDS沈降量(SDS-セディメンテーションテスト)、ファリノグラフ、グルテンインデックスなどを用いて容易に行うことができる(実施例参照)。また、実際に食品を試作して加工適性を調べることもできる。
上述のように、オオムギ属植物の1HS染色体を持つコムギから製造された小麦粉は、親コムギよりも優れた品質を持ち、生地物性が向上しているため、食品の製造に用いることができる。
ここでいう「小麦粉」には特に制限はなく、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉等が例示できる。
また、本発明において「食品」とは、食パン、ロールパン、コッペパン、クロワッサン、デニッシュ、フランスパン、ベーグル、スコーン、マフィン、菓子パン、惣菜パン、乾パン等のパン類;中華麺、うどん、スパゲッティ、マカロニ、沖縄そば、そうめん、ひやむぎ、そば等の麺類;餃子の皮;麩;パイ、ドーナツ、クッキー、ビスケット、クラッカー、かりんとう、カステラ、ケーキ、まんじゅう等の菓子類;等の小麦加工食品を指す。
本発明の生地物性が向上されたコムギを用いる食品の製造方法は、一般的な小麦加工食品の製造方法と同様に行うことができ、1HS染色体を持つコムギから得られた小麦粉を用いて小麦粉生地を形成する工程を含む。
ここで、原料の小麦粉は、オオムギ属植物の1HS染色体を持つコムギを原料とする小麦粉のみを用いても、他の小麦粉と混合して用いても良い。
本発明の食品の製造方法は、例えば食品がパン類である場合、小麦粉を水、塩等と混合して混捏し生地を形成する工程、得られた生地を発酵させる工程、生地を成形する工程、焙炉発酵工程、焼成工程等を含む。
また、食品が麺類である場合、本発明の食品の製造方法は、小麦粉を水等と混合して混捏し生地を形成する工程、麺線を切り出す又は孔型から圧出することからなる成形工程等を含む。
以下に実施例、および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
実施例1(オオムギ属1HS染色体導入系統の作出)
コムギ品種「Chinese Spring(CS)」にオオムギ属1HS染色体を断片導入したコムギ系統(CS1HS)は、TAKETA, S. et al. 2001 Production and characterization of a complete set of wheat-wild barley (Hordeum vulgare ssp. spontaneum) chromosome addition lines. Breed. Sci. 51: 199-206で報告されたものであり、同文献に記載された方法に従って作出することができる。
すなわち、Chinese Springを母本とし、オオムギ野生種(Hordeum vulgare subsp. spontaneum)を交雑して雑種第1代を得た。これにCSの花粉を用いた戻し交雑を3回繰り返すことにより、1HS染色体を1対持つ1HS染色体導入コムギ系統を作出した。これらの材料は農業生物資源ジーンバンクより誰でも分譲を受けることが出来る。
このようにして得られたCS1HSのコムギは、オオムギのB-ホルデイン遺伝子(Hor2)のPCRマーカーを持っていた。他の1H染色体のPCRマーカーであるBCD1072(1HS)、MWG800(1HL)、MWG912(1HL)について、マーカーの保有の有無を調査したが、これら3種のマーカーは検出されなかった。したがって、ホルデイン遺伝子が座乗している1HS染色体の末端部分がコムギ染色体に転座したものと考えられた。
CS1HSの染色体構成をゲノミック in situ ハイブリダイゼーション法を用いて同定した(図1)。オオムギ野生種の全DNAを蛍光プローブとし、CSの全DNAをブロッキングDNAとすることで、オオムギ属に特異的な染色体部位を検出した。図1において、白っぽく蛍光発色している部分がオオムギ属1HS染色体由来の染色体断片、灰色に見える部分がコムギ染色体である。この図から分かるように、オオムギ属1H染色体短腕とコムギ染色体の間で相互転座が生じており、転座染色体をダイソミック(2本)で保有していた。
次に、コムギ品種「ミナミノカオリ」にオオムギ属1HS染色体を断片導入したコムギ系統(ミナミノカオリ1HS)は、上記のCS1HSにミナミノカオリを交配することにより作出した。
すなわち、ミナミノカオリを母本としてCS1HSと交雑し、雑種第1代を得た。これにミナミノカオリの花粉を用いて4回戻し交雑を繰り返すことにより、オオムギ属1HS染色体を1対持つミナミノカオリ1HS導入コムギ系統を複数作出した。
実施例2(電気泳動法によるホルデインタンパク質の発現)
実施例1のCS1HSと、その親であるChinese Springおよびオオムギ野生種について、種子タンパク質のアルコール可溶性画分(総グルテンタンパク質画分)を抽出し、二次元電気泳動法によりオオムギ属植物由来のホルデインタンパク質の発現を調べた。
すなわち、各サンプルの種子の胚乳部分(小麦粉)に50%の1-プロパノールを加えて懸濁し、遠心(6,000rpm、10秒)した後、その上ずみを採取した。80%アセトンによりタンパク質を沈殿させ、その沈殿を泳動バッファー(8.5M 尿素, 4% CHAPS, 0.5% IEF Buffer(pH3-10), 16% Isopropanol)に溶かしてサンプルとし、ストリップゲル(pH3-10)を用いて電気泳動(18,000Vhr)を行った。
次に、平衡化バッファー(6M 尿素, 2% SDS, 50mM Tris-Cl (pH6.8), 20% Glycerol, 10mM DTT)でゲルを平衡化後、10% SDS-PAGEで電気泳動(6W, 3hr)し、タンパク質をCoomasie Brilliant Blueで染色した(図2)。各スポットのN末端アミノ酸配列は、泳動後のゲルをPVDF膜に転写し、アミノ酸シークエンサーでエドマン分解法により決定した。公開されているホルデインタンパク質のアミノ酸配列情報を参考にして、各スポットのタンパク質を同定した。
図2の(a)にコムギ親のChinese Spring、(b)にCS1HS、(c)にオオムギ親のオオムギ野生種の泳動写真を示す。また、オオムギ親由来の各スポットのN末端アミノ酸配列および推定されるタンパク質も図2の右下に示した。なお、アミノ酸配列が示されていないスポットは、配列を決定できなかったスポットである。
図2(a)〜(c)を比較すると、CS1HSにおいて、オオムギ属植物と同じホルデインタンパク質(B-, C-, γ-, γ3- ホルデイン)が発現していることが分かる。これらのホルデイン遺伝子は全てオオムギ属1HS染色体上で近接していることが知られている。
次に、CS1HSのアルコール不溶性画分(グルテンの網目構造タンパク質画分)を抽出し、上記と同様に二次元電気泳動を行った。
すなわち、CS1HSの種子の胚乳部分(小麦粉)に50%の1-プロパノールを加えて懸濁し、遠心(6000rpm、10秒)した後、上ずみを捨て、沈殿に抽出液(1% DTT, 80mM Tris (pH8.0)/ 50% 1-プロパノール)を加え、よく攪拌(〜1時間)し、12500 rpmで5分間遠心した。その上ずみを採取して、80%アセトンによりタンパク質を沈殿させ、その沈殿を泳動バッファーに溶かしてサンプルとし、電気泳動に供した。
その結果を図3に示す。各スポットの番号は図2に示したものと同じである。図2(b)で検出されたホルデインタンパク質のうち、B-ホルデインとγ-ホルデインが含まれていた。生地物性の改善に重要と考えられるグルテンの網目構造を形成するタンパク質(グルテニン)と同じ画分に含まれていることから、これらの2種類のホルデインタンパク質が、本発明における生地物性の制御に必要であると推測される。
実施例3(SDS沈降量によるグルテンポリマー量の比較)
ミナミノカオリ1HSおよびその小麦親であるミナミノカオリについて、小麦粉の製パン適性の評価法の1つであるSDS-セディメンテーションテスト(Takata et al. (1999) Breeding Science 49: 221-223)を行った。
なお、ミナミノカオリ1HSの作出過程(実施例1)において、ミナミノカオリを4回戻し交配することで、遺伝的背景が若干異なる複数の系統が得られた。本実施例では、ミナミノカオリ1HSとして、これらの複数の系統を用いた(TM-1-8〜71)。
すなわち、各サンプルの小麦粉3.5gを秤量し、100mlの有栓メスシリンダーに入れ、水50mlを加え手で激しく振って、セディメンテーション用の振盪機で5分混ぜた。B液(:2.0%SDS水溶液 1L(SDS 20g+水 980ml)+乳酸貯蔵溶液 20ml(85%乳酸 100ml+水 800ml)を6時間加熱還流)50mlを加え、10回上下に攪拌し、セディメンテーション用の振盪機で5分混ぜ、24時間後に再度10回上下に攪拌し、40分静置後に沈降量を読んだ。
各サンプルのSDS沈降量(cm)を図4に示す。また、燃焼法で測定した各サンプルの種子タンパク質含量(質量%)を、図4のバー上に数字で示した。
その結果、ミナミノカオリ1HSはいずれのサンプルもミナミノカオリより沈降量が多かった。SDS沈降量が多いほど、グルテンの質が良好で、量が多いことを示す。したがって、オオムギ属1HS染色体をコムギに導入すると、製パン適性が向上することが分かる。また、タンパク質含量についても、ミナミノカオリ1HSの方が多かった。
実施例4(二次加工適性の評価)
実施例1で試験系統のChinese Springにオオムギ属1HS染色体を断片導入したコムギ(CS1HS)と非導入のChinese Spring(CS)、実施例1で実流通しているミナミノカオリにオオムギ属1HS染色体を断片導入したコムギ(ミナミノカオリ1HS)と非導入のミナミノカオリ(ミナミノカオリ)を、ビューラー社製テストミルにて挽砕し、60%歩留粉(小麦粉)を調製した。
各サンプルについて原麦および60%歩留粉の水分と蛋白含量(燃焼法)を分析し、また生地物性試験およびグルテン質の評価を行った。
(1)化学分析
分析の結果、CS1HSの原麦蛋白は15.8質量%であり、CS非導入系統の12.2質量%を上回った。CS1HS導入系統の60%歩留粉蛋白も14.2質量%であり、CS非導入系統の10.4質量%を上回った。
一方、ミナミノカオリ1HS導入系統の原麦蛋白は16.3質量%であり、ミナミノカオリ非導入系統の13.5質量%を上回った。ミナミノカオリ1HS導入系統の60%歩留粉蛋白も14.2質量%であり、ミナミノカオリ非導入系統の11.6質量%を上回った。
なお、上記の蛋白含量はいずれも13.5%水分ベースでの測定値である。
このように、オオムギ属1HS染色体を導入することによって、コムギ種子の蛋白含量が増加することが分かった。
(2)生地物性試験
ファリノグラフ(ブラベンダー社製)による60%歩留粉の生地物性試験を実施し、小麦粉の吸水性、ミキシング耐性、小麦粉生地の硬さおよび強さを確認した。ファリノグラフとは、生地をこねる際にミキサーブレードにかかる生地抵抗の経時変化を測定する装置である。
生地吸水率は、上記の生地抵抗が500BU(ブラベンダーユニット)になるときに要した加水量と、粉の水分量で求められる。CS1HSの生地吸水率は59.6質量%であり、CSの58.9質量%より高かった。一方、ミナミノカオリ1HSの生地吸水率は61.4質量%であり、ミナミノカオリの65.7質量%より低かった。
しかし、CS1HSおよびミナミノカオリ1HSはともに、それぞれの非導入系統より、生地が弱化するまでに要する時間が長くなっており、つまり、ミキシング耐性が高く、生地の弾力が強くなっていた(図5)。このことから、オオムギ属1HS染色体を導入することにより、両1HS導入系統は生地物性が向上していることがわかった。
なお、図5において、(a)はCS、(b)はCS1HS、(c)はミナミノカオリ、(d)はミナミノカオリ1HSのファリノグラムを示す。縦軸は生地をこねるときの生地抵抗(単位:BU)を、横軸は時間(分)を示す。
(3)グルテン質の評価
グルテン質を評価するために、AACC Internationalの定める公定法(Approved Method 38-12)に従い、Perten社製The Glutomatic Systemを用いてグルテンを採取し、グルテンの硬さの指標であるグルテンインデックスを調べた。
グルテンインデックスは、ウェットグルテンを専用の篩カセットに入れて遠心脱水したのち、篩上に残ったウェットグルテン量を、篩上および篩い抜けのウェットグルテンの合計量に対する割合(質量%)で表したものである。グルテンが強いほど篩を通過しないグルテンが多くなるため、グルテンインデックスは大きな値となる。
CS1HSはグルテンインデックスが76.5であり、CSの51.1より高かった。ミナミノカオリ1HSもグルテンインデックスが99.0であり、ミナミノカオリの94.7より高かった。したがって、CSとミナミノカオリの両方とも、オオムギ属1HS染色体断片を導入することにより、グルテンが強くなっていることが分かった。
また、採取したグルテンについて、7名のパネラーにより評価を行った。
その結果、CS・ミナミノカオリ両非導入系統のグルテンは軟らかく、弾力が弱く、膜は薄いが弱く、広がらなかった。一方、CS・ミナミノカオリ両1HS導入系統のグルテンはしっかりさと弾力を感じ、膜は広がりやすくなっていた。
このように、いずれのコムギ品種においても、オオムギ属1HS染色体断片を導入することによるグルテン質の良化が見られた。
実施例5(製パン試験)
実施例4で得られたCSとミナミノカオリ両方の1HS導入系統および非導入系統の60%歩留粉を用いて、70%中種法にて製パン試験を実施した。製パン法は以下の通りである。
(1)60%歩留粉 70質量部、水 40質量部、生イースト 2.3質量部、およびイーストフード 0.1質量部を、捏ね上げ温度24℃となるようにミキシング(低速2分間、中速2分間)して中種を作り、醗酵室(温度27℃、湿度75%)で4時間醗酵した。
(2)工程(1)で得た発酵後の中種に対し、60%歩留粉 30質量部、食塩 2質量部、砂糖 5質量部、脱脂粉乳 2質量部、および水(1HS導入系統は21質量部、非導入系統は20質量部)を加えてミキシング(低速2分間、中速3分間、高速1分間)した。次いで、ショートニング 5質量部を加え、捏ね上げ温度28℃となるよう再度ミキシング(低速1分間、中速3分間、高速3分間、中速4分間)して、生地を得た。
(3)工程(2)で得た生地を、醗酵室(温度27℃、湿度75%)で20分間休ませた後、460gに分割して丸め、さらに室温で20分間休ませた。その後、棒状に整形してワンローフ型に詰め、醗酵室(温度38℃、湿度85%)で40分間最終醗酵した。
(4)工程(3)で得た最終醗酵後の生地を、210℃で25分間焼成し、放冷後、袋に詰めた。
その結果、CSは、生地がまとまりにくく、弾力なくべたつきが目立ち、作業性が悪く、次工程の丸め時(工程(3))も同様だった。パン容積は1770ccであった。一方、CS1HSは、生地がまとまり、しっかりとしてやや硬さがあり、CSに比べて作業性が良化しており、次工程の丸め時でも同様だった。パン容積は2090ccだった。
また、ミナミノカオリの生地は、弾力なくややべたつき、作業性が悪かった。パン容積は1995ccだった。一方、ミナミノカオリ1HSの生地は、しっかりとして滑らかで硬さがあり、ミナミノカオリに比べて作業性が良化していた。パン容積は2115ccだった。
このように、1HS導入によって、CSとミナミノカオリ両方で生地が硬くしっかりとまとまり、製パン生地性とボリュームの改善が見られた。
実施例6(蛋白量をそろえた製パン試験)
実施例5で見られた製パン性の変化がグルテン質に起因するか確認するために、1HS導入系統の60%歩留粉に市販のコムギ澱粉(「白雪みどり」、籠島製粉製)を混合し、非導入系統と同程度の蛋白量に調整して、再度実施例5と同様にして製パン試験を実施した。
CS1HSは60%歩留粉:コムギ澱粉=73:27で混合、ミナミノカオリ1HSは60%歩留粉:コムギ澱粉=82:18(いずれも質量比)で混合し、蛋白量を調整した。
CSは実施例5の試験と同様、生地がまとまりにくく、弾力なくべたつきが目立ち、作業性が悪く、次工程の丸め時も同様だった。パン容積は1815ccであった。一方、CS1HSの生地は、捏ね上げ時は脆いもののしっかりとし、軟らかく滑らかで、作業性の良化が見られた。パン容積は1905ccだった。
また、ミナミノカオリの生地は、弾力が小さくゆるみが見られ、ややべたついており、作業性が劣っていた。パン容積は1990ccだった。一方、ミナミノカオリ1HSは、伸展性が小さく滑らかで、生地がしっかりとし、べたつきが見られず、作業性の良化が見られた。パン容積は大差ないが、ミナミノカオリ1HSのパンは、ミナミノカオリと比較してパイルの伸びが大きく、外観は良好だった。
このように、蛋白量をそろえた試料を使った試験でも、製パン生地性とボリュームの改善が見られた。したがって、製パン性が良化するのは、1HS導入によりグルテン質が強くなることが要因であることが確認できた。
実施例7(中華めん試験)
実施例4で得られたミナミノカオリ1HSおよびミナミノカオリの60%歩留粉を用いて、製粉協会方式中華めん適性評価法にて中華麺試験を実施した。評価法は以下の通りである。
すなわち、60%歩留粉 100質量部に食塩 1質量部、かんすい 1質量部、水 33質量部を加えて、5分間ミキシングを行い、生地を得た。前記生地を、製麺ロールにより整形1回、複合2回、圧延4回を行い、最終の麺帯の厚みを1.4mmとして20番の切り歯で切り出し、麺線を得た。麺線の長さは約25cmとした。
前記麺線は2分30秒間茹で、茹で水を切った上で、あらかじめ準備しておいたスープに入れ、食感(硬さ、弾力)を評価した。茹で伸びの評価は、茹で後5分後に再び食感を調べ、茹で直後からの劣化の大小で評価した。
上記の官能評価は、以下の評価基準に従ってパネラー10名により行い、平均点を求めた(表1)。
評価は硬さ、弾力、茹で伸びについてミナミノカオリを7点(コントロール)とし、次の採点基準で7段階に評価した。
10点:かなり良い、9点:少し良い、8点:わずかに良い、7点:普通(差なし)、6点:わずかに劣る、5点:少し劣る、4点:かなり劣る。
ここで、「硬さ」については硬いもの、「弾力」については弾力が強いもの、「茹で伸び」については5分後の食感の変化が小さいものを、高い点とした。
また、中華麺の茹で歩留と煮崩れ率を調べた(表2)。
次に、レオメータ(RHEOTECH FUDOH RHEO METER NRM-3002D、不動工業社製)を用いて、中華麺の強度(g)と破断強度(g/cm)を測定した。強度とは切断に要した力である。破断強度とは強度を切断面の面積で割った値である。測定は、2分30秒茹でた麺線を1本ずつ切断し、5本の平均値を求めた(表2)。

茹で歩留:生めん重量に対する茹で麺重量の比率。
煮崩れ率:茹でによって茹で水に溶出した中華麺の割合。
強度:切断に要した力。測定値が大きいほど硬いことを示す。
破断強度:単位面積あたりの強度。測定値が大きいほど硬いことを示す。
食感試験において、ミナミノカオリよりもミナミノカオリ1HSの小麦粉を使用した中華麺の方が、硬く、弾力が強かった(表1)。
茹で後5分後の食感試験においては、ミナミノカオリ1HSを使用した中華麺は、ミナミノカオリよりも茹で伸びが遅く、硬さも維持していた(表1)。
また、ミナミノカオリ1HSの煮崩れ率はミナミノカオリより低く、煮崩れしにくいことが確認できた(表2)。茹で歩留についても、ミナミノカオリ1HSの方がミナミノカオリより小さかった(表2)。
さらに、ミナミノカオリ1HSは麺の強度と破断強度ともに大きく、ミナミノカオリよりも麺が硬くなっていることが確認できた(表2)。
以上の結果から、オオムギ属1HS染色体断片を導入することにより、コムギの製めん適性が向上することが分かった。
本発明において、コムギへのオオムギ属1HS染色体断片の導入により、小麦粉の生地物性を向上させることが出来た。したがって、本発明は、生地物性に問題のある国産コムギ品種の改良技術としての利用が期待できる。

Claims (8)

  1. ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部をコムギに導入することを特徴とする、小麦粉の生地物性を向上させる方法。
  2. ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部をコムギに導入することを特徴とする、小麦粉の生地物性が改善されたコムギの作出方法。
  3. ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギを、前記1H染色体短腕を持たないコムギと交配する工程を含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 生地物性がミキシング耐性及び生地強度である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギから得られた小麦粉を用いることを特徴とする、食品の製造方法。
  6. ホルデインを生成するオオムギ属植物の1H染色体短腕の一部を持つコムギから得られた小麦粉を用いて小麦粉生地を形成する工程を含む、食品の製造方法。
  7. 食品がパン又は麺である、請求項5又は6記載の食品の製造方法。
  8. ホルデインがB-ホルデイン及びγ-ホルデインを含むものである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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