以下に、本願の開示する基地局、無線通信システム、及び無線通信方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施例により、本願の開示する基地局、無線通信システム、及び無線通信方法が限定されるものではない。
まず、本願の開示する一実施例に係る無線通信システムの構成を説明する。図1は、無線通信システム1の構成を示す図である。図1に示す様に、無線通信システム1は、移動局(UE:User Equipment)10と、eNB(evolutional Node B)20と、RNC(Radio Network Controller)30と、LTE CN(Long Term Evolution Core Network)40と、WCDMA CN(Wideband Code Division Multiple Access Core Network)50と、加入者管理装置としてのHSS60(Home Subscriber Server)とを有する。移動局10は、LTE、WCDMAの何れのRATにも対応したデュアル端末であり、eNB20及びRNC30との間で、RRC(Radio Resource Control)の送受信等、無線通信を行う。また、eNB20と、RNC30と、LTE CN40と、WCDMA CN50と、HSS60との各上位装置は、双方向に、各種信号やデータの送受信が可能な様に有線接続されている。
なお、本実施例では、待受けRATを移動局10に指示する装置がeNB20とRNC30とであることから、図1では、WCDMA側の基地局の図示を省略し、移動局10がRNC30と直接無線接続されるものとした。しかしながら、この様な構成に限らず、NB(Node B)等の無線基地局が、移動局10とRNC30との間に介在するものとしてもよい。
移動局10は、例えば、Always-ON端末である。Always-ON端末は、自端末内の各種アプリケーションプログラムを新バージョンに自動更新するために、基地局としてのeNB20、RNC30を介して、ネットワークに頻繁にアクセスする。移動局10は、通常のパケット呼、音声呼を含むユーザ発呼に加えて、アプリケーションを更新するための自動発呼を行う。図2は、移動局10の機能構成を示す図である。図2に示す様に、移動局10は、無線通信部11と記憶部12と呼接続部13と呼解放部14とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
無線通信部11は、eNB20とRNC30との間で無線通信を行う。例えば、無線通信部11は、eNB20に対して、RRCとして、“Signaling Connection Release Indication”を送信すると共に、“UTRAN MOBIRITY INFORMATION”をeNB20から受信する。また、無線通信部11は、RNC30に対して、RRCとして、“RRC Connection Request”及び“UTRAN MOBIRITY INFORMATION Confirm”の送信を行う。
記憶部12は、呼接続部13及び呼解放部14が実行する処理に使用される各種情報を記憶する。例えば、記憶部12は、ユーザ発呼の有無を記憶する。すなわち、記憶部12は、移動局10による自動発呼の場合、ユーザ発呼の有無として「無」を記憶する一方、ユーザからの発呼要求が有った場合、ユーザ発呼の有無として「有」を記憶する。また、記憶部12は、上記した以外の任意の設定情報や制御情報を記憶する。
図3は、移動局10の記憶部12に記憶されるユーザ発呼有無121を示す図である。ユーザ発呼有無121のデフォルト値は“無”である。設定契機として、ユーザ発呼有無121は、移動局のユーザからの発呼要求が有った場合に“有”に設定され、呼の解放時に“無” に設定される。また、参照契機は、RRC送信時である。
呼接続部13は、“RRC Connection Request”の送信、“UTRAN MOBIRITY INFORMATION”の受信、及び“UTRAN MOBIRITY INFORMATION Confirm”の送信に伴う各種処理を実行する。例えば、呼接続部13は、記憶部12に記憶された情報に対し、参照(読出し)、変更(書込み)、消去等の各種制御を行う。呼接続部13は、“RRC Connection Request”の送信に伴い、ユーザからの発呼要求が有った場合、ユーザ発呼の有無として「有」を記憶部12に記憶させる。呼接続部13は、“RRC Connection Request”のメッセージを編集する際、ユーザ発呼の有無として「無」が記憶されている場合、“Establishment Cause”に対し、「自動発呼」を示す“Cause”を設定する。一方、呼接続部13は、ユーザ発呼の有無として「有」が記憶されている場合、通常の“Establishment Cause”の編集処理を行う。
呼解放部14は、呼解放処理における端末側の処理を行う。例えば、呼解放部14は、“Signaling Connection Release Indication”の送信に伴う処理を実行する。呼解放部14は、記憶部12に記憶された情報に対し、参照(読出し)、変更(書込み)、消去等の各種制御を行う。呼解放部14は、ユーザ発呼の有無として「有」が記憶部12に記憶されている場合、呼解放処理時に「有」を「無」に更新する。
図4は、移動局10のハードウェア構成を示す図である。図4に示す様に、移動局10は、ハードウェアの構成要素として、無線IF(Inter Face)10aとプロセッサ10bとメモリ10cと電子回路10dと入力IF10eと出力IF10fとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
無線IF10aは、eNB20及びRNC30と無線通信を行うためのインタフェース装置であり、例えば、アンテナA1を含む。プロセッサ10bは、データを処理する装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を含む。メモリ10cは、データを記憶する装置であり、例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM、ROM(Read Only Memory) 等を含む。電子回路10dは、例えば、LSI(Large Scale Integration)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。入力IF10eは、移動局10への入力を行う装置であり、例えば、操作ボタン、マイク等を含む。出力IF10fは、移動局10からの出力を行う装置であり、例えば、ディスプレイ、スピーカ等を含む。
また、移動局10の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、無線通信部11は、上述した無線IF10aと電子回路10dとにより実現される。記憶部12は、上述したメモリ10cにより実現される。また、呼接続部13は、上述したプロセッサ10bと電子回路10dとにより実現される。呼解放部14に関しても、上述したプロセッサ10bと電子回路10dとにより実現される。
eNB20は、例えば、無線基地局である。図5は、eNB20の機能構成を示す図である。図5に示す様に、eNB20は、無線通信部21と網側通信部22と呼解放部23と呼接続部24と記憶部25とを有する。呼解放部23は、判定部231と制御部232とを有する。同様に、呼接続部24は、判定部241と制御部242とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
無線通信部21は、Always-ON端末を始めとする移動局との間で、LTEによる無線通信を行う。例えば、無線通信部21は、RRCとして、“Signaling Connection Release Indication”、“RRC Connection Request”、及び“UTRAN MOBIRITY INFORMATION Confirm”を受信する。また、無線通信部21は、RRCとしての“UTRAN MOBIRITY INFORMATION”の送信を行う。
網側通信部22は、他のeNB及びLTE CN40との間で、有線通信を行う。網側通信部22は、例えば、LTE CN40との間で、“NODE HEALTH CHECK”の送受信を行う。
呼解放部23は、呼解放処理における基地局側の処理を行う。呼解放部23は、例えば、“Signaling Connection Release Indication”の受信に伴う処理を実行する。呼解放部23は、記憶部25に記憶された情報に対し、参照(読出し)、変更(書込み)、消去等の各種制御を行う。判定部231は、“Signaling Connection Release Indication”に含まれる「Cause値」に基づき、移動局が自動的に通信を切断したか否かを判定する。例えば、Cause値が「UE Requested PS Data session end」である場合、判定部231は、記憶部25に記憶されている「通信回数」に“1”を加算する。制御部232は、判定部231の計数する「通信回数」の時間管理を行う。制御部232は、eNB20によるサービス開始時に周期タイマを始動させ、所定の周期T1が経過する毎に「通信回数」をクリア(ゼロ更新)する。
呼接続部24は、呼接続処理及びノード間信号の送受信処理における基地局側の処理を行う。呼接続部24は、例えば、“RRC Connection Request”や“UTRAN MOBIRITY INFORMATION Confirm”の受信、“UTRAN MOBIRITY INFORMATION”の送信、あるいは、“NODE HEALTH CHECK”の送受信に伴う処理を実行する。呼接続部24は、記憶部25に記憶された情報に対し、参照(読出し)、変更(書込み)、消去等の各種制御を行う。
判定部241は、“RRC Connection Request”に含まれる“Establishment Cause値”等に基づき、移動局が自動的に発呼したか否かを判定する。例えば、判定部241は、移動局10が自動的に発呼したと判定した場合、移動局10の待受けRAT情報として、記憶部25内の「優先通信RAT」を、“UTRAN MOBIRITY INFORMATION”により移動局10に通知することで、次回発信時のRATを変更する。
制御部242は、“NODE HEALTH CHECK”の送信制御を行う。制御部242は、eNB20によるサービス開始時に周期タイマを始動させ、所定の周期T2が経過する毎に、eNB20の装置状態を「正常」に設定すると共に、記憶部25内の「通信回数」を設定する。そして、制御部242は、LTE CN40への“NODE HEALTH CHECK”の送信を、網側通信部22に指示する。制御部242は、例えば、“NODE HEALTH CHECK”の受信制御を行う。制御部242は、eNB20によるサービス開始以降、LTE CN40から“NODE HEALTH CHECK”を受信した際、現時点の装置状態を参照し、「正常」が設定されている場合、オプションパラメータの有無を確認する。制御部242は、記憶部25を参照し、「WCDMA通信回数÷WCDMA最大通信可能回数=α」と「LTE通信回数÷LTE最大通信可能回数=β」とを算出した後、αとβとの大小関係を比較する。
記憶部25は、上記オプションパラメータが有る場合、「WCDMA最大通信可能回数」、「WCDMA通信回数」、「LTE最大通信可能回数」、「LTE通信回数」の各値をそれぞれ記憶する。記憶部25は、上記αとβとの内、数値が低い方のRAT(WCDMAまたはLTE)を、「優先通信RAT」として記憶する。
図6Aは、eNB20の記憶部25に記憶される基地局通信回数251を示す図である。基地局通信回数251のデフォルト値は“0”である。設定契機として、基地局通信回数251は、SCRI(Signaling Connection Release Indication)の受信時に1インクリメントされ、周期タイマのタイムオーバ時に“0”にクリアされる。また、参照契機は、LTE CN40への“NODE HEALTH CHECK”送信時である。
図6Bは、eNB20の記憶部25に記憶されるRAT通信状況252を示す図である。図6Bに示す様に、RAT通信状況252は、WCDMA最大通信可能回数と、WCDMA通信回数と、LTE最大通信可能回数と、LTE通信回数とを含む。最大通信可能回数は、対応するRATの許容する通信回数の最大値であり、通信回数は、対応するRATを用いて実際に通信が行われた回数(実績値)である。RAT通信状況252を構成する各領域に格納される値のデフォルト値は“0”である。RAT通信状況252の設定契機及び参照契機は、LTE CN40から送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信時である。
図6Cは、eNB20の記憶部25に記憶される優先通信RAT253を示す図である。優先通信RAT253のデフォルト値は、自局のRATを示す“LTE”である。なお、RNC30の場合は、自局のRATを示す“WCDMA”がデフォルト値として格納される。優先通信RAT253の設定契機は、LTE CN40から送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信時である。優先通信RAT253には、上記α、βの内、数値の低い方(負荷の低い方)のRATが設定される。また、参照契機は、Always-ON端末が自動発呼してきたRRCの受信時である。
図7は、eNB20のハードウェア構成を示す図である。図7に示す様に、eNB20は、ハードウェアの構成要素として、無線IF20aとプロセッサ20bとメモリ20cと電子回路20dと網側IF20eとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
無線IF20aは、移動局10と無線通信を行うためのインタフェース装置であり、例えば、アンテナA2を含む。プロセッサ20bは、データを処理する装置であり、例えば、CPU、DSP等を含む。メモリ20cは、データを記憶する装置であり、例えば、RAM、ROM等を含む。電子回路20dは、例えば、LSI、FPGA、ASIC等を含む。網側IF20eは、携帯電話システムの網側ネットワークに接続された有線回線を介して、他のeNBや、CN等の上位装置と有線通信を行うためのインタフェース装置である。
また、eNB20の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、無線通信部21は、上述した無線IF20aと電子回路20dとにより実現される。網側通信部22は、上述した網側IF20eと電子回路20dとにより実現される。また、呼解放部23は、プロセッサ20bと電子回路20dとにより実現される。同様に、呼接続部24は、プロセッサ20bと電子回路20dとにより実現される。記憶部25は、上述したメモリ20cにより実現される。
以上、eNB20の構成を代表的に説明したが、RNC30の機能構成は、RATがWCDMAである点を除き、eNB20の機能構成と同様である。従って、共通する構成要素には、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その図示及び詳細な説明は省略する。具体的には、RNC30の無線通信部31と網側通信部32と呼解放部33と呼接続部34と記憶部35とは、eNB20の無線通信部21と網側通信部22と呼解放部23と呼接続部24と記憶部25とにそれぞれ対応する構成要素である。呼接続部34の判定部341は、移動局10が自動発呼したと判定し、かつ、記憶部35内の「優先通信RAT」を参照した結果「優先通信RAT」が「WCDMA」であった場合、無線通信切替え機能をスキップし、WCDMAによる発信処理を継続する。
図8は、RNC30のハードウェア構成を示す図である。図8に示す様に、RNC30は、ハードウェアの構成要素として、基地局側IF30aとプロセッサ30bとメモリ30cと電子回路30dと網側IF30eとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
基地局側IF30aは、基地局を介して移動局と通信を行うためのインタフェース装置である。プロセッサ30bは、データを処理する装置であり、例えば、CPU、DSP等を含む。メモリ30cは、データを記憶する装置であり、例えば、RAM、ROM等を含む。電子回路30dは、例えば、LSI、FPGA、ASIC等を含む。網側IF30eは、携帯電話システムの網側ネットワークに接続された有線回線を介して、他のRNCや、CN等の上位装置と有線通信を行うためのインタフェース装置である。
また、RNC30の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、無線通信部31は、上述した基地局側IF30aと電子回路30dとにより実現される。網側通信部32は、上述した網側IF30eと電子回路30dとにより実現される。また、呼解放部33は、プロセッサ30bと電子回路30dとにより実現される。同様に、呼接続部34は、プロセッサ30bと電子回路30dとにより実現される。記憶部35は、上述したメモリ30cにより実現される。
図9は、LTE CN40の機能構成を示す図である。図9に示す様に、LTE CN40は、同RAT通信部41と異RAT通信部42と呼接続部43と記憶部44とを有する。更に、呼接続部43は、制御部431を有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
同RAT通信部41は、eNB20と有線通信を行う。同RAT通信部41は、eNB20から“NODE HEALTH CHECK”を受信すると共に、eNB20に対し、“NODE HEALTH CHECK”を送信する。同様に、異RAT通信部42は、異RATであるWCDMA CN50と有線通信を行う。異RAT通信部42は、WCDMA CN50から“NODE HEALTH CHECK”を受信すると共に、WCDMA CN50に対し、“NODE HEALTH CHECK”を送信する。
呼接続部43は、ノード間信号の送受信処理におけるCN側の処理を行う。呼接続部43は、例えば、“NODE HEALTH CHECK”の受信、あるいは、“NODE HEALTH CHECK”の送信に伴う処理を実行する。呼接続部43は、記憶部44に記憶された情報に対し、参照(読出し)、変更(書込み)、消去等の各種制御を行う。
制御部431は、eNB20から送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信制御を行う。制御部431は、“NODE HEALTH CHECK”をeNB20から受信した際、現時点のLTE CN40の装置状態を参照し、「正常」が設定されている場合、オプションパラメータの有無を確認する。制御部431は、WCDMA CN50に対する“NODE HEALTH CHECK”の送信制御を行う。制御部431は、LTE CN40によるサービス開始時に周期タイマを始動させ、所定の周期T3が経過する毎に、上記装置状態を「正常」に設定すると共に、記憶部44に格納されている全eNBの「eNB通信回数」の総和を「現通信回数」に設定する。また、制御部431は、記憶部44に格納されている「最大能力」を「LTE最大通信可能回数」に設定し、WCDMA CN50に対し、“NODE HEALTH CHECK”を送信させる。
また、制御部431は、WCDMA CN50から送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信制御を行う。制御部431は、“NODE HEALTH CHECK”をWCDMA CN50から受信した際、現時点のLTE CN40の装置状態を参照し、「正常」が設定されている場合、オプションパラメータの有無を確認する。制御部431は、eNB20に対する“NODE HEALTH CHECK”の送信制御を行う。
更に、制御部431は、LTE CN40によるサービス開始時に周期タイマを始動させ、所定の周期T4が経過する毎に、上記装置状態を「正常」に設定すると共に、以下の処理を行う。制御部431は、記憶部44に記憶されている全eNBの「eNB通信回数」の総和を「LTE通信回数」に設定し、「最大能力」を「LTE最大通信可能回数」に設定する。また、制御部431は、記憶部44に記憶されているWCDMA CN50の「最大通信可能回数」と「現通信回数」とをそれぞれ、「WCDMA最大通信可能回数」と「WCDMA通信回数」とに設定し、これらの情報が設定された“NODE HEALTH CHECK”をeNB20へ送信させる。
記憶部44は、上記オプションパラメータが有る場合、「eNB通信回数」をeNB毎に記憶する。同様に、記憶部44は、上記オプションパラメータが有る場合、WCDMA CN50の「異RAT最大通信可能回数」及び「異RAT通信回数」を記憶する。また、記憶部44は、LTE CN40によるサービス開始時より、LTE CN40の最大能力を「最大能力」として記憶する。
図10Aは、LTE CN40の記憶部44に記憶される基地局通信回数441を示す図である。基地局通信回数441には、各eNBを一意に識別するための基地局番号(例えば、1、2、3、・・・、255、・・・)と、各eNBに在圏する移動局との通信回数を示す基地局通信回数(例えば、1000、200、800、・・・、1500、・・・)とが対応付けて記憶される。基地局通信回数441のデフォルト値に関し、基地局番号は固定値である。基地局通信回数のデフォルト値は“0”であるが、更新可能である。設定契機は、eNB20を含む各eNBから送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信時である。また、参照契機は、異RATのCN(WCDMA CN50)への“NODE HEALTH CHECK”送信時、及びeNB20への“NODE HEALTH CHECK”送信時である。
図10Bは、LTE CN40の記憶部44に記憶されるCN最大能力442を示す図である。CN最大能力442のデフォルト値は、LTEのRATによる最大通信可能回数である。なお、WCDMA CN50の場合には、WCDMAによる最大通信可能回数が、CN最大能力442のデフォルト値として、更新可能に記憶される。また、参照契機は、異RATのCN(WCDMA CN50)への“NODE HEALTH CHECK”送信時、及びeNB20への“NODE HEALTH CHECK”送信時である。
図10Cは、LTE CN40の記憶部44に記憶される異RAT通信状況443を示す図である。図10Cに示す様に、異RAT通信状況443は、異RAT最大通信可能回数と異RAT通信回数とを含む。異RAT最大通信可能回数は、LTEとは異なるRAT(WCDMA)の許容する通信回数の最大値であり、異RAT通信回数は、LTEとは異なるRAT(WCDMA)を用いて実際に通信が行われた回数(実績値)である。異RAT通信状況443を構成する各領域に格納される値のデフォルト値は“0”である。RAT通信状況443の設定契機は、異RATのCN(WCDMA CN50)から送信される“NODE HEALTH CHECK”の受信時である。また、参照契機は、eNB20への“NODE HEALTH CHECK”送信時である。
図11は、LTE CN40のハードウェア構成を示す図である。図11に示す様に、LTE CN40は、ハードウェアの構成要素として、プロセッサ40aとメモリ40bと電子回路40cと網側IF40dとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
プロセッサ40aは、データを処理する装置であり、例えば、CPU、DSP等を含む。メモリ40bは、データを記憶する装置であり、例えば、RAM、ROM等を含む。電子回路40cは、例えば、LSI、FPGA、ASIC等を含む。網側IF40dは、携帯電話システムの網側ネットワークに接続された有線回線を介して、他のeNBや、CN等の上位装置と有線通信を行うためのインタフェース装置である。
また、LTE CN40の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、同RAT通信部41は、上述した電子回路40cと網側IF40dとにより実現される。同様に、異RAT通信部42は、上述した電子回路40cと網側IF40dとにより実現される。また、呼接続部43は、上述したプロセッサ40aと電子回路40cとにより実現される。記憶部44は、上述したメモリ40bにより実現される。
以上、LTE CN40の構成を代表的に説明したが、WCDMA CN50の構成は、制御部を除き、LTE CN40の構成と同様である。従って、共通する構成要素には、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その図示及び詳細な説明は省略する。具体的には、WCDMA CN50の同RAT通信部51と異RAT通信部52と呼接続部53と記憶部54とは、LTE CN40の同RAT通信部41と異RAT通信部42と呼接続部43と記憶部44とにそれぞれ対応する構成要素である。また、WCDMA CN50のプロセッサ50aとメモリ50bと電子回路50cと網側IF50dとは、LTE CN40のプロセッサ40aとメモリ40bと電子回路40cと網側IF40dとにそれぞれ対応する構成要素である。
呼接続部53の制御部531は、WCDMA CN50によるサービス開始時に周期タイマを始動させ、所定の周期T5が経過する毎に、WCDMA CN50の装置状態を「正常」に設定すると共に、以下の処理を行う。制御部531は、記憶部54に記憶されている全RNCの「RNC通信回数」の総和を「WCDMA通信回数」に設定し、「最大能力」を「WCDMA最大通信可能回数」に設定する。また、制御部531は、記憶部54に記憶されているLTE CN40の「最大通信可能回数」と「現通信回数」とをそれぞれ、「LTE最大通信可能回数」と「LTE通信回数」とに設定し、これらの情報が設定された“NODE HEALTH CHECK”をRNC30へ送信させる。
次に、本実施例における無線通信システム1の動作を説明する。図12は、eNB20の実行する通信回数集計処理を説明するためのシーケンス図である。以下の動作説明では、移動局10と同様の構成を有するn(nは自然数)台の移動局を、移動局10−1〜10−nと記載する。また、説明の便宜上、基地局としてeNB20、及びCNとしてLTE CN40の動作を代表的に説明するが、RNC30及びWCDMA CN50についても、それぞれ同様の動作が可能である。
S1では、移動局10−1の無線通信部11は、eNB20に対して、SCRIを送信する。SCRIは、3GPP Rel.8に規定されているFast Dormancy(自動通信における切断手順)機能においてサポートされているRRC送信機能である。
S2では、eNB20の判定部231は、移動局10−1との通信回数をカウントする。他の移動局10−nに関しても、S1及びS2と同様の処理が実行される(S3、S4)。すなわち、eNB20は、自局のセルに在圏している全ての移動局から上記SCRIを受信した回数をカウントし、単位時間当たりの受信回数を記憶部25に記憶させる。単位時間は、数秒〜十数秒であり、例えば、4秒程度である。
S5では、eNB20の網側通信部22は、上記単位時間当たりの受信回数を、eNB20の属するLTE CN40に通知する。LTE CN40の同RAT通信部41は、該通知を受けると、上記単位時間当たりの受信回数を記憶部44に記憶させる。通信回数は、単位時間が経過する毎に繰り返しカウントされる。すなわち、S6では、eNB20の判定部231は、S4で加算された通信回数を“0”にクリアした後、上述したS1〜S5の各処理を再び実行する(S7、S8)。
図13は、LTE CN40及びWCDMA CN50の実行する通信回数集計処理を説明するためのシーケンス図である。S11では、RNC30−1の網側通信部32は、RNC30−1に在圏する各移動局との通信回数を、WCDMA CN50に通知する。WCDMA CN50は、S11で通知された上記通信回数を記憶部54に記憶する(S12)。S11、S12の各処理は、他のRNC30−2〜30−nに関しても同様に実行される(S13、S14)。単位時間が経過すると、WCDMA CN50の制御部531は、通知及び記憶された、全てのRNC30−1〜30−nの通信回数を合計し、その値を記憶部54に記憶させる(S15)。S11〜S15の各処理は、各eNB20−1〜20−nとLTE CN40との間でも、同様に実行される(S16〜S20)。
ここで、3GPPでは、異なるRAT間で上記通信回数の集計結果を通知し合うためのメッセージは規定されていないが、基地局−CN間及びCN−CN間では、制御用リンクの正常性確認のため、HEALTH CHECK信号の送受信が行われている。そこで、本実施例における無線通信システム1では、基地局とCNとは、NODE HEALTH CHECK信号に対し、上記通信回数の集計結果を付与することにより、通信回数を通知し合うものとする。図14は、eNB20、RNC30からCN40、50宛に送信される“NODE HEALTH CHECK”信号M1の構成例を示す図である。図14に示す様に、“NODE HEALTH CHECK”信号M1は、送受信される情報の種別を保持する「IE/Group Name」領域と、対応する情報が現時点で採る状態を保持する「Presence」領域とを有する。「Presence」領域には、“Message Type”として、例えば“M”が保持され、“Message ID”として、例えば“M”が保持される。更に、送信元(eNB20またはRNC30)の現在の“装置状態”として、例えば“M”が保持され、“基地局通信回数”として、例えば、初期値“0”が保持される。
S21では、WCDMA CN50の異RAT通信部52は、LTE CN40に対し、S15で記憶された上記通信回数と、WCDMAによる最大通信可能回数とを送信する。同様に、LTE CN40の異RAT通信部42は、WCDMA CN50に対し、S20で記憶された上記通信回数と、LTEによる最大通信可能回数とを送信する(S22)。WCDMA CN50とLTE CN40との間で、各RATの通信回数及び最大通信可能回数の交換が完了すると、これらの回数値は、各CNの制御部531、431により参照可能な形態で、記憶部54、44にそれぞれ記憶される(S23、S24)。
図15は、LTE CN40とWCDMA CN50との間で送受信される“NODE HEALTH CHECK”信号M2の構成例を示す図である。図15に示す様に、“NODE HEALTH CHECK”信号M2は、送受信される情報の種別を保持する「IE/Group Name」領域と、対応する情報が現時点で採る状態を保持する「Presence」領域とを有する。「Presence」領域には、“Message Type”として、例えば“M”が保持され、“Message ID”として、例えば“M”が保持される。更に、送信元(LTE CN40またはWCDMA CN50)の現在の“装置状態”として、例えば“M”が保持され、“最大通信可能回数”及び“現通信回数”として、例えば、初期値“0”がそれぞれ保持される。
S25〜S30では、各RATの通信回数及び最大通信可能回数が、WCDMA CN50に接続された全てのRNC30−1〜30−nに通知される。これにより、各RNC30−1〜30−nにおいて、WCDMAとLTEとの内、何れのRATが負荷の低いRATであるかの判断が可能となる。LTE側においても、同様の処理が実行される。S31〜S36では、各RATの通信回数及び最大通信可能回数が、各eNB20−1〜20−nに通知されるため、LTE CN40に接続された全てのeNBが、負荷の低いRATを、移動局の待受けRATに決定することが可能となる。
図16は、CN40、50からeNB20、RNC30宛に送信される“NODE HEALTH CHECK”信号M3の構成例を示す図である。図16に示す様に、“NODE HEALTH CHECK”信号M3は、送受信される情報の種別を保持する「IE/Group Name」領域と、対応する情報が現時点で採る状態を保持する「Presence」領域とを有する。「Presence」領域には、“Message Type”として、例えば“M”が保持され、“Message ID”として、例えば“M”が保持される。また、送信元(LTE CN40またはWCDMA CN50)の現在の“装置状態”として、例えば“M”が保持される。更に、“WCDMA最大通信可能回数”、“WCDMA通信回数”、“LTE最大通信可能回数”、及び“LTE通信回数”として、例えば、初期値“0”がそれぞれ保持される。
次の単位時間の開始を契機として、上述したS11〜S36の一連の処理は、再び実行される(例えば、S37〜S40)。そして、同様の処理が、単位時間毎に繰り返し実行される。
図17は、eNB及びRNCの実行する待受けRAT決定処理を説明するためのシーケンス図である。S41では、RNC30の制御部342は、図13のS25、S26でWCDMA CN50から受信されたWCDMA通信回数(全RNC通信回数)とWCDMA最大通信可能回数とから、αを算出する。αは、WCDMA通信回数をWCDMA最大通信可能回数で除算することによって得られる値であり、WCDMA側における自動発呼による通信負荷を示す指標となる。S42では、LTEに関し、S41と同様の処理が実行される。すなわち、RNC30の制御部342は、図13のS25、S26でWCDMA CN50から受信されたLTE通信回数(全eNB通信回数)とLTE最大通信可能回数とから、βを算出する。βは、LTE通信回数をLTE最大通信可能回数で除算することによって得られ、LTE側における自動発呼による通信負荷を示す指標となる。
RNC30の無線通信部31は、移動局10−1〜10−nからのRRCの受信を待機しており、例えば、移動局10−1からの新たな自動発呼に伴って送信されたRRC Connection Requestを受信する(S43)。制御部342は、RRC Connection Requestの受信を検知すると、αとβとを比較する(S44)。該比較の結果、α>βの場合(S44;Yes)、制御部342は、自RAT(WCDMA)よりも異RAT(LTE)の負荷が低いものと判断する。従って、RNC30の無線通信部31は、該判断結果を基に、負荷の低い異RAT(LTE)での待受けを指示するRRC(UTRAN MOBILITY INFORMATION)を、移動局10−1に返信する(S45)。これに対し、S44における比較の結果、α≦βの場合(S44;No)には、制御部342は、自RAT(WCDMA)が異RAT(LTE)よりも負荷が低いものと判断する。従って、RNC30の無線通信部31は、該判断結果を基に、負荷の低い自RAT(WCDMA)での待受けを指示するRRC(UTRAN MOBILITY INFORMATION)を、移動局10−1に返信する(S46)。
以上、WCDMA側における待受けRAT決定処理について説明したが、上記一連の処理は、LTE側においても同様に実行される。LTE側のeNB20の動作は、WCDMA側のRNC30の動作と同様である。また、LTE側の移動局10−1〜10−nの動作は、WCDMA側の移動局10−1〜10−nの動作と同様である。従って、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、ステップS51〜S56に示す各処理は、上述したステップS41〜S46の各処理にそれぞれ対応する。
なお、α及びβの算出、または待受けRATの決定は、必ずしも、双方の基地局(RNC30、eNB20)にて行われる必要は無く、何れか一方の基地局における算出結果または決定結果を他方の基地局が共有するものとしてもよい。かかる態様では、例えば、RNC30が、S41、S42にて算出したαとβの各値を、WCDMA CN50、HSS60等の上位装置を介して、eNB20に通知する。あるいは、RNC30が、S44にて決定した待受けRATを、上位装置を介して、eNB20に通知することとなる。これにより、待受けRAT決定処理に伴うシステム負荷が低減される。また、メモリの使用容量の節減が可能となる。
図18は、WCDMA側が低負荷の場合にRNC30の実行するRAT切替え抑止処理を説明するためのシーケンス図である。図18は、図17と同様のステップを複数含むことから、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図18のステップS61〜S63に示す各処理は、図17に示したステップS41〜S43の各処理にそれぞれ対応する。以下、図17との相違点について説明する。
S64では、RNC30の制御部342は、例えば、移動局10−1から送信されたRRC Connection Requestの受信を検知すると、上記αとβとを比較し、該比較結果に基づき、LTEの負荷がWCDMAの負荷よりも低いか否かを判定する。その際、制御部342は、α>βである場合、LTE側が低負荷であると判定し、α≦βである場合、WCDMA側が低負荷であると判定する。LTE側が低負荷であると判定された場合(S64;Yes)、RNC30の無線通信部31は、RRCとしてRRC Connection Rejectを、移動局10−1に返信する(S65)。これにより、RNC30は、RATを、WCDMAからLTEに切り替えさせ、移動局10−1が待受けRATとしてWCDMAを選定することを抑止する。その結果、移動局10−1は、より高速かつ低負荷なLTEでの待受けが可能となる。一方、S64における判定の結果、LTE側が低負荷でないと判定された場合(S64;No)、RNC30の無線通信部31は、RRCとしてRRC Connection Setupを、移動局10−1に返信する(S66)。これにより、RNC30によるRATの切替え制御(リダイレクション)は抑止されるため、移動局10−1は、待受けRATとしてWCDMAを継続して使用することとなる。その結果、LTE側の基地局やCNが輻輳状態にある場合であっても、RAT切替えに起因する輻輳の更なる拡大は未然に防止される。
なお、上記S43、S53、S63では、移動局10−1は、無線通信部11により、“RRC Connection Request”を各基地局(RNC30またはeNB20)宛に送信するが、3GPPでは、Always-ON端末による自動発呼を特定するための“Cause”は規定されていない。そこで、本実施例では、“RRC Connection Request”内に新規の“Cause”が追加される。図19は、“RRC Connection Request”において自動発呼を特定するための“Cause”を示す図である。本実施例に係る無線通信システム1では、Always-ON端末としての移動局10からの発信に際し、該発信が自動発呼である場合には、移動局10は、図19に示す様に、“RRC Connection Request”内に、新規CauseC1(例えば、“spare9”)を設定する。“RRC Connection Request”を受信した基地局は、該新規CauseC1が識別子として設定されている場合には、移動局10からの発信が自動発呼であると認識する。これにより、各基地局(RNC30またはeNB20)は、移動局10による“RRC Connection Request”の発信が、音声、パケット等のユーザ発呼であるか、自動発呼であるかを、容易かつ迅速に識別することができる。
続いて、移動局10の動作を説明する。図20は、発呼時における移動局10の動作を説明するためのシーケンス図である。まずS71では、移動局10の呼接続部13は、移動局10に対するユーザからの発呼要求を待機しており、該発呼要求を検知すると、該発呼要求がユーザの手動操作によるものであるか否かを判定する。判定の結果、上記発呼要求が手動による発呼である場合(S71;Yes)には、呼接続部13は、記憶部12内のユーザ発呼有無121(図3参照)に対し、ユーザ発呼が存在することを示す「有」の値を設定する(S72)。一方、上記判定の結果、上記発呼要求が手動による発呼(ユーザ発呼)でない場合(S71;No)には、ステップS72の処理は省略され、後続するステップS73の処理に移行する。
S73では、移動局10の呼接続部13は、ユーザ発呼有無121の現在の設定値を参照する。該参照の結果、ユーザ発呼有無121が“無”に設定されている場合(S73;Yes)、呼接続部13は、eNB20宛の“RRC Connection Request”を構成する“Establishment Cause”に対し、自動発呼であることを示す「新規CauseC1(図19参照)」を設定する(S74)。一方、上記参照の結果、ユーザ発呼有無121が“有”に設定されている場合(S73;No)には、呼接続部13は、上記“Establishment Cause”に対し、「新規CauseC1」を追加することなく、通常の“Establishment Cause”を上記“RRC Connection Request”に設定する(S75)。
“RRC Connection Request”の生成が完了すると、移動局10の無線通信部11は、eNB20に対し、該“RRC Connection Request”を送信する(S76)。なお、上述した一連の発呼制御処理は、eNB20に対する発呼時は元より、RNC30に対する発呼に際しても同様に実行される。
次いで、図21は、RAT変更時における移動局10の動作を説明するためのシーケンス図である。移動局10は、待受けRATの変更に際して、3GPP 25.331 Figure8.3.3-1に従い、UTRAN(Universal mobile telecommunications system Terrestrial Radio Access Network)70との間で、信号の送受信を行う。すなわち、移動局10の無線通信部11は、UTRAN70に対し、“UTRAN MOBILITY INFORMATION”を送信する(S81)と、UTRAN70は、これに対する確認応答信号として、“UTRAN MOBILITY INFORMATION COFIRM”を返信する(S82)。
図22は、呼解放時における移動局10の動作を説明するためのシーケンス図である。移動局10の呼解放部14は、eNB20とのパケット通信中(S91)に、パケット通信が所定時間実行されていないことを検知すると(S92)、RRCの“Signaling Connection Release Indication Cause”に対し、“UE Requested PS Data session end”を設定する(S93)。“Signaling Connection Release Indication”の編集が完了すると、移動局10の無線通信部11は、eNB20に対し、該“Signaling Connection Release Indication”を送信する(S94)。送信完了後、呼解放部14は、記憶部12内のユーザ発呼有無121(図3参照)を、ユーザ発呼が存在しないことを示す「無」の値に更新する(S95)。なお、上述した一連の解放制御処理は、eNB20に対する呼解放時は元より、RNC30に対する呼解放に際しても同様に実行される。
図23は、移動局10の通信開始RATと負荷状態とに応じた、無線切替え機能及び待受けRAT変更の有無を説明するための図である。図23に示す様に、無線切替え機能及び待受けRAT変更の有無は、移動局10が通信を開始した際に使用したRAT(通信開始RAT)、発呼手段、発呼種別、負荷状態をパラメータとして、決定される。例えば、図23の最上段のデータが示す様に、「通信開始RAT」が“WCDMA”、「発呼手段」が“自動発呼”、「発呼種別」が“パケット”、「負荷状態」が“WCDMA<LTE”である場合を想定する。この場合、従来であれば、3GPP規格に従った「無線切替え機能」により、通信開始RATである“WCDMA”は“LTE”に切り替えられ、これに伴い、待受けRATは、“LTE”に変更される。その結果、移動局は、“LTE”での待受けを行うこととなる。これに対し、本実施例では、上記場合、移動局10は「無線切替え機能」を有さない(図23のD1参照)。このため、移動局10は、「負荷状態」を考慮して、“WCDMA”から“LTE”への待受けRATの変更を抑止し、通信開始時と同様、“WCDMA”での待受けを継続することとなる。
一方、「負荷状態」が“WCDMA≧LTE”である場合には、移動局10は「無線切替え機能」を有する。従って、移動局10の「通信開始RAT」が“WCDMA”であっても、通信開始RATは、無線切替え機能により、より高速な“LTE”に切り替えられる。これに伴い、待受けRATは、図23のD2、D3に示す様に、“WCDMA”から“LTE”に変更される。その結果、移動局10は、以降、“LTE”での待受けを行うこととなる。反対に、「負荷状態」が“WCDMA≦LTE”である場合には、移動局10は、3GPP規格上の「無線切替え機能」を有さない。しかしながら、移動局10の「通信開始RAT」が“LTE”である場合には、通信開始RAT(LTE)は、より負荷の低い“WCDMA”に切り替えられる。これに伴い、待受けRATは、“LTE”から“WCDMA”に変更される(図23のD4、D5)。その結果、移動局10は、以降、“WCDMA”での待受けを行うこととなる。
以上説明した様に、無線通信システム1は、LTE及びWCDMAにより通信可能な移動局10と、移動局10と通信するeNB20とを有する。eNB20は、制御部242と無線通信部21とを有する。制御部242は、移動局10からの自動発呼による通信回数(実績値)と上記自動発呼による最大通信可能回数(上限値)とに基づき、LTE及びWCDMAの通信負荷(例えば、上記α、β)を推定する。無線通信部21は、LTE及びWCDMAの内、制御部242により推定された通信負荷が低い方のRAT(例えば、LTE)を、移動局10に通知する。移動局10は、無線通信部21により通知された上記RATを、上記自動発呼に伴う待受けに使用する呼接続部13を有する。
換言すれば、eNB20及びRNC30は、Always-ON端末による全ての自動発呼回数をRAT毎に監視し、自動発呼率の小さい(負荷の低い)RATを、待受けRATに決定する。eNB20及びRNC30は、決定されたRATをAlways-ON端末に通知すると、該端末は、通知されたRATで待受けを行う。これにより、待受けが特定のRATに集中することが回避され、輻輳に伴う発呼の紛失や輻輳の更なる拡大が抑制される。
本実施例に係る無線通信システム1は、例えば、以下の効果を奏する。無線通信システム1は、新たに自動発呼してきた移動局10の待受けRATを、負荷の低いRATに決定する。従って、移動局10以外の移動局(例えば、音声通信可能なAlways-ON端末)の自動発呼により、本来はWCDMA側で受け付けてWCDMA側で通信を継続すべき発呼要求が、紛失されたり規制の対象となる、といった事態は回避される。更に、無線通信システム1は、WCDMA側の負荷と比較してLTE側の負荷が高いと判定された場合、LTE側の負荷状態を考慮して、WCDMA側で自動発呼した移動局10のRAT切替え(リダイレクション)を抑止する。これにより、LTE側が輻輳状態にある場合にまでRATの切替えが実行されることはなくなり、輻輳の更なる拡大は未然に防止される。
eNB20において、無線通信部21は、上記自動発呼の検知に伴い、該自動発呼をした移動局10に対し、制御部242により推定された通信負荷が低い方のRAT(例えば、WCDMA)による待受けを指示するものとしてもよい。これにより、eNB20は、自局に自動発呼をしてきた移動局10に対し、より負荷の低いRATでの待受けをさせることができる。従って、移動局10を含む多数の移動局が待受けに使用するRATが一方のRATに集中すること無く、RAT間での負荷分散が図られる。その結果、無線通信システム1は、自動発呼を効率的に処理することが可能となる。
eNB20において、制御部242は、上記通信回数(実績値)と上記最大通信可能回数(上限値)との所定時間(例えば、4秒程度)毎の集計結果を用いて、上記通信負荷(例えば、上記α、β)を上記所定時間毎に推定するものとしてもよい。これにより、移動局10は、各RATの接続状況が変わった場合でも、常時、負荷の低いRATでの待受けが可能となる。従って、無線通信システム1は、通信環境の経時変化等に伴う負荷状況の変動に容易に対応することができる。その結果、無線通信システム1の環境適応性が向上する。
上述した様に、本実施例における無線通信システム1は、RAT間における負荷分散技術を、Always-ON端末からの自動発呼処理に適用することで、従来の負荷分散技術とは異なる、本実施例に特有の効果を奏する。例えば、Always-ON端末としての移動局10が、音声やパケットのユーザ発呼を行う際、通信負荷を軽減するため、負荷の低いRATを用いると、WCDMAの負荷がLTEの負荷より低い場合、待受けRATとして、WCDMAが選択されることとなる。その結果、移動局10は、WCDMAよりも高速のLTEによる待受けができず、ユーザの利便性を損なう可能性がある。そこで、無線通信システム1は、RAT間における負荷分散技術を、ユーザの関与しない自動発呼処理に適用する。これにより、ユーザは、利便性を損なうことなく、Always-ONの一機能として、例えば、端末内のアプリケーションを自動的に更新する機能を享受することができる。併せて、Always-ON端末の自動発呼は、モバイルネットワークの通信トラフィックを飛躍的に増大させることが懸念されるが、本実施例に係る無線通信システム1によれば、自動発呼は、複数のRAT間で適宜分散される。その結果、通信負荷を抑制することが可能となる。
なお、上記実施例では、eNB20及びRNC30は、最大通信可能回数に対する通信回数の比率を基に、各RATの通信負荷を推定する際、自動発呼による通信回数(以下、「自動発呼回数」と記す。)を用いるものとした。しかしながら、eNB20及びRNC30は、自動発呼回数に限らず、ユーザ発呼回数を用いるものとしてもよい。この場合、上記αは、WCDMAによるユーザ発呼回数を、WCDMAによるユーザ発呼可能回数の最大値で除算した値となり、上記βは、LTEによるユーザ発呼回数を、LTEによるユーザ発呼可能回数の最大値で除算した値となる。更に、eNB20及びRNC30は、待受けRATを選択する際、ユーザ発呼回数の内、特に音声の発呼回数、またはパケットの発呼回数を用いて、通信負荷を推定するものとしてもよい。
また、上記実施例では、無線通信システム1は、上記αとβとの大小関係を単純に比較し、α、βの内、小さい値に対応するRATを待受けRATとしたが、かかる態様に限らず、比較に先立ち、重み付けを行ってもよい。すなわち、eNB20及びRNC30は、α、βの内、何れか一方の算出結果に対し、所定の係数を乗算することで、何れかのRATが優先的に待受けRATに選択される様な態様を採ることができる。例えば、eNB20及びRNC30は、αとβとの比較に先立ち、βに対して1未満の係数(例えば、0.8)を乗算するものとすれば、α>βとなる可能性が高くなる。これにより、eNB20及びRNC30は、移動局10に対し、待受けRATとして「LTE」を優先的に指定することができる。従って、WCDMAと比較してLTEの通信容量に余裕のある場合には、上記の様な重み付けを施すことが好適である。反対に、WCDMAの許容通信容量が大きい場合には、eNB20及びRNC30は、1を超える係数(例えば、1.2)をβに乗算するものとすれば、WCDMAが選択される確率が上昇する。この様に、eNB20及びRNC30は、上記係数を可変的に設定することで、各RATの通信容量に応じた負荷の調整が可能となる。
更に、上記実施例では、無線通信システム1は、上記αとβとの内、値の低い方のRATを負荷の低いRATと推定するものとしたが、上記α、βの差分を負荷推定の基準としてもよい。すなわち、eNB20及びRNC30は、前回の単位時間における上記αとβとを、記憶部25及び記憶部35にそれぞれ保持しておき、今回の単位時間における上記α’とβ’との差分である“α’−α”及び“β’−β”を算出する。そして、eNB20及びRNC30は、該差分が小さい方のRATが、自動発呼回数の増加幅が小さい(または減少幅が大きい)ことから、負荷の低いRATであると推定する。
あるいは、eNB20及びRNC30は、上記差分の代わりに、上記α、βの増加率(α’/α、及びβ’/β)を用いて、各RATの負荷を推定するものとしてもよい。かかる態様では、eNB20及びRNC30は、上記増加率の低い(または減少率の高い)方のRATを、負荷の低いRATと推定する。上述した、差分または増加率を用いる何れの態様によっても、各時間単位間の経時的変動を加味して、より精度良く通信負荷を推定することができる。また、無線通信システム1は、差分または増加率を用いて負荷の低いRATを推定する方法と、上記重み付けを付与する方法とを組み合わせてもよい。
更に、上記実施例では、eNB20及びRNC30は、LTE、WCDMAの2種類のRATを対象として、待受けRATを選択するものとした。しかしながら、eNB20及びRNC30は、3つ以上のRAT(例えば、LTE、WCDMA、CDMA2000)の中から、負荷の低いRATを選択するものとしてもよい。このとき選択されるRATは、必ずしも1つのRATでなくてもよい。また、選択対象となるRATに関しても、LTEとWCDMAの様に、必ずしも異なる周波数帯を使用するものでなくてもよく、同一周波数帯を使用するRATであっても、無線通信方式が異なるものであれば、本実施例に係る無線通信システム1の適用は可能である。
また、上記実施例では、移動局として、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)を想定して説明したが、本発明は、移動局に限らず、eNBやRNCに対し、直接または間接的に自動発呼を行う様々な通信機器に対して適用可能である。
更に、無線通信システム1の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的態様は、図示のものに限らず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、図2に示した呼接続部13と呼解放部14、あるいは図5に示した呼解放部23と呼接続部24を、それぞれ1つの構成要素として統合してもよい。その際、呼接続部13、24が、呼解放部14、23を、構成要素の1つとして包含するものとしてもよい。また、これとは反対に、eNB20、RNC30の呼接続部24、34に関し、例えば、最大通信可能回数に対する通信回数の比率を算定する部分と、通信負荷の低いRATを推定する部分とに分散してもよい。また、メモリ10c、20c、30c、40b、50bを、移動局10、eNB20、RNC30、LTE CN40、WCDMA CN50の外部装置として、ネットワークやケーブル経由で接続する様にしてもよい。