JP2014053397A - 多条螺旋状コイルとそれを用いたインダクタ− - Google Patents

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Abstract

【課題】トロイダルコイルの容量増加や整列巻き多重コイルの制作簡易化に的確に対処することができるインダクタ−用コイル、及びそれを用いたインダクタ−を提供する。
【解決手段】インダクタ−用コイルを、軸心を揃えて並ぶ複数本の絶縁電線2からなる帯状の多条線束1が、一方の側端縁3を内側に、他方の側端縁4を外側にして螺旋状に巻回されてなる多条螺旋状とする。この場合、多条線束内の隣接する絶縁電線同士が固着されていることが望ましい。また、このコイルを用い、当該コイルを磁気コアの外周に装着した後、その少なくとも一端を磁気コアの軸方向に伸縮させてコイルの線輪間隔を調整したり、磁気コアに装着したコイルを外側から押圧して磁気コアの外形形状に沿う形状に整形したりしてインダクタ−を製作する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁性体製のリング状コアや棒状コアに簡単かつ疎密自在に装着することができる多条螺旋状コイルとそれを用いたインダクタ−、並びに前記多条螺旋状コイルを用いたインダクタ−の製造方法に関するものである。
電子機器の基本素子として用いられるインダクタ−は電気エネルギ−と磁気エネルギ−との変換機能を有するものであって、“磁束を発生するコイル部分”と“磁束が流れる磁性体製の磁路(コア部)”とで構成されているが、このインダクタ−の一つとして、図5に示すような“リング状コア11に電線(銅線やアルミニウム線)12を巻いた構造のトロイダルコイル”が知られており、コイルで発生する磁束が外部に漏れないのでコイル効率が良い上に磁束が他に影響を与えることが少ないことから従来より種々の機器に多用されている。
なお、上記トロイダルコイルの製造は電線の先端をリング状コアの内空部に通してからコア部を一巻きするという工程を繰り返す手作業によるのが一般的であったが、特許文献1には、図6に示すように、まず電線12を円柱状の芯材13に巻き付けて螺旋状コイルを作成し〔図6(a)〕、続いてこの螺旋状コイル14の一方の端15をリング状コア11の内空部に挿入した後、図6(b)に示すようにリング状コア11を巻き込むように螺旋状コイル14を矢印方向に回転させて螺旋状コイル14をリング状コア11に徐々に巻回させるというトロイダルコイルを能率良く製造する方法が紹介されている。
しかしながら、このようなトロイダルコイルには次の問題があった
即ち、トロイダルコイルにおける電線の巻数は“リング状コアの内径”と“電線の径”によって規制されるが、設置スペ−ス等の関係で寸法が規定されたリング状コアを使用せざるを得ない場合には、トロイダルコイルのエネルギ−量(容量)を高めるべく太径の電線を巻回しようとするとリング状コアの内径寸法(内周寸法)が決まっているが故に電線の巻数が少なくなってしまい、そのため結局はエネルギ−量の十分な確保が叶わないという不都合がある。
つまり、コイルのエネルギ−量は“コイルを流れる電流”と“コイルの巻回数”との積で表されるが、コイルを流れる電流は電気抵抗に反比例し、コイルの電気抵抗は電線(導体)の径の二乗に反比例するものの、電気抵抗を減らしてコイルを流れる電流値を増やすために電線の径を太くするとコイルの巻回数が稼げず、コイルのエネルギ−量を十分に高くすることができなかった。
逆に、電線の径を細くしてコイルの巻回数を増やそうとすると、電線径が細いがために導体断面積が小さくなってコイルを流れる電流が減り、十分なコイルのエネルギ−量を確保できないというジレンマがあった。
一方、本発明者らは先に「電線を同一巻回方向に巻回した単層コイルが2層以上重なってなる整列多層巻きコイル(整列巻き多重コイル)」を提案し(特許文献2を参照)、コンパクトでありながらも高い磁気特性が得られるインダクタ−用コイルとして注目されたが、その後、それを製造するための巻線工程に少なからぬ時間が掛かることから急な需要への対処法を開発することの必要性が認識されるようになった。
特開平9−115761号公報 特許第4878369号公報
上述のような事情を踏まえて本発明が課題としたのは、トロイダルコイルの容量(エネルギ−量)増加や整列巻き多重コイルの製作簡易化に的確に対処することができ、かつ簡単にインダクタ−の容量調整を行うことが可能なインダクタ−用コイル、並びにそれを用いたインダクタ−とその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を行い次の知見を得ることができた。
即ち、前述したようにインダクタ−用コイルの容量(エネルギ−量)は“コイルを流れる電流”と“コイルの巻回数”との積で表されるが、“コイルの巻回数”を増すことに加えて“コイルを流れる電流”をも増加させるためには巻回する導体(電線)の断面積を増やさなければならない。そして、限られた巻回長さ範囲内で“コイルの巻回数”を増すと共に巻回する導体(電線)の断面積を増やすためには、導体(電線)の“巻回長さ方向寸法”を小さくした上で“巻回長さ方向と直角の方向(コイル厚さ方向)の寸法”を大きくしなければならず、導体として丸電線を使用する場合にはこれを巻回長さ方向と直角の方向(コイル厚さ方向)に積み重ね、かつ電気抵抗を極力抑えるために各層をなす丸電線を並列接続状態にする必要がある。
しかしながら、丸電線を巻回長さ方向と直角の方向(コイル厚さ方向)に整然と積み重ねた形態にコイル巻きすることは、例えばトロイダルコイルのような密でない部位が生じるコイルの場合(トロイダルコイルではリングの内側部位は密に丸電線同士が接していたとしても外側部位は必然的に疎な状態となる)には極めて困難であって、現実的な手段であるとは言えない。
しかるに、インダクタ−用コイルを、図1に示すような「同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線2,2,・・からなる帯状の多条線束1が、一方の側端縁3を内側に他方の側端縁4を外側にして螺旋状に巻回され、かつ多条線束内の隣接する絶縁電線同士が自己融着絶縁電線の使用等により固着されてなる多条螺旋状コイル」とすると、これをリング状の磁気コアに装着する場合であっても前記図6(b)に示した手法を採用することで帯形状(偏平形状)の崩れを懸念することなく多条積層の状態で巻回数多く磁気コアに巻回することができ、導体断面積の大きなコイルを有したトロイダルコイルを安定かつ簡易に実現することができる。
また、上記多条螺旋状コイルは素線の絶縁電線が軟質であって径も比較的細いことから伸縮・屈曲が自在であり、そのため磁気コアの外周に装着してからその少なくとも一端を磁性コアの軸方向に押圧すると、コイルの線輪間隔(ピッチ)は容易に縮まるので線輪間隔の調整ができる上、例えば柱状の磁気コアを適用するならば線輪が密着した前記特許文献2が示す如き高密度の多条コイルを短時間に極めて簡便に実現することができる。
また、当該多条螺旋状コイルを磁気コアの外周に装着した後、この多条螺旋状コイルを外側から押圧して(外形を押圧して)変形させ磁気コアの外形形状に沿うように整形すれば、螺旋状コイルと磁気コアとの間に生じがちな無為な隙間が矯正されて磁気コアの形状に則した実効断面が密に詰まったインダクタ−を簡易に得ることもできる。
本発明は上記知見事項等を基に完成されたものであり、インダクタ−用のコイル及びインダクタ−を次の構成とした点に特徴を有するものである。
1) 同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線からなる帯状の多条線束が、一方の側端縁を内側に、他方の側端縁を外側にして螺旋状に巻回されてなることを特徴とする、多条螺旋状コイル。
2) 多条線束内の隣接する絶縁電線同士が固着されてなる、前記 1)項記載の多条螺旋状コイル。
3) 多条線束が多重重ねの帯状構造とされた、前記 1)項又は 2)項に記載の多条螺旋状コイル。
4) 前記 1)項乃至 3)項の何れかに記載の多条螺旋状コイルが磁気コアの外周に装着されてなることを特徴とするインダクタ−。
5) 前記 4)項に記載のインダクタ−であって、磁気コアの外周に装着された多条螺旋状コイルが外側から押圧されて磁気コアの外形形状に沿う形状に整形されていることを特徴とするインダクタ−。
本発明に係る多条螺旋状コイルは、帯状の多条線束が一方の側端縁を内側に他方の側端縁を外側にして螺旋状に巻回されてなるものであるので、前記図6(b)に示した手法を採用するだけで導体断面積の大きなコイルを有した容量の高いトロイダルコイルを簡易に得ることができる。
また、本発明に係る多条螺旋状コイルは材質が軟質で伸縮・屈曲が自在であるので、コアへの装着時にコイルの一端又は両端を磁気コアの軸方向に伸縮させて(押圧するかあるいは引張るかして)コイルの線輪間隔を調整することにより容量が適度に調整されたインダクタ−を簡易に得ることができる上、棒状のコアを適用してコイルの線輪間隔を密着状態とすれば高密度の整列巻き多条コイルを有したインダクタ−を簡便に製造することができ、インダクタ−の制作作業性が大幅に改善される。
図1は、本発明に係る多条螺旋状コイルの説明図である。 図2は、本発明に係る多条螺旋状コイルを製作するために使用できる治具の一例を説明した概要図である。 図3は、図2に示す治具の螺旋溝部に関する説明図である。 図4は、インダクタ−の棒状磁気コアに多条螺旋状コイルを装着する際にコイルの線輪間隔を調整する手法を説明した概念図である。 図5は、トロイダルコイルの説明図である。 図6は、既知のトロイダルコイル製造法に係る説明図であって、(a)並びに(b)はそれぞれ採られる工程の1つを示す概念図である。
図1は、本発明に係る多条螺旋状コイルの1例を示した説明図である。
この多条螺旋状コイルは、同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線2,2,・・(銅やアルミニウムを材質とする)からなる帯状の多条線束1が、一方の側端縁3を内側に他方の側端縁4を外側にして螺旋状に巻回されてなるものである。
このような多条螺旋状コイルは、例えば次のように製作することができる。
即ち、図2は丸棒状の型5であって、その表面に図3に示すような断面形状の螺旋溝6が彫られたものであるが、回転するこの丸棒状の型5の螺旋溝6に絶縁電線7の必要条数を図3の如くに送り込んで(図3では4条の電線が送り込まれた状態を示す)を巻き付けることにより、“同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線からなる帯状の多条線束“が螺旋状に巻回された図1に示す如き多条螺旋状コイルが得られる。
この多条螺旋状コイルは、コイル軸心方向の導体寸法(電線の直径)が小さくてもコイル径方向に大きな導体寸法(電線直径の条数倍)を占めるものであるので導体の総断面積が大きく、各絶縁電線を並列接続することによって低抵抗下で大きな流通電流を確保することができる。そのため、トロイダルコイルのようなコイルの巻回長さに制限があって太径の電線を使用できないインダクタ−においても十分なコイル巻回数と流通電流を確保することができ、容量(エネルギ−量)の増加に寄与する。
なお、前記多条螺旋状コイルは、帯状の多条線束を多重重ね(例えば二重重ね)の構造とするのがコイルをインダクタ−の磁気コアに装着する際に懸念される形状崩れの抑制につながるので好ましい。
ところで、コイルをインダクタ−の磁気コアに装着する際の形状崩れを防止するためには、前記多条螺旋状コイルを多条線束内の隣接する絶縁電線同士が固着された構成とするのがより望ましい。
このような「多条線束内の隣接する絶縁電線同士が固着された多条螺旋状コイル」は、例えば絶縁電線として自己融着絶縁電線を用いると共に、前記図2に示した螺旋コイル成形用の型5として加熱可能な金属製等の型を使用することにより容易に製作することが可能である。
即ち、加熱できる図2に示すような形状の型5(金属製)を用い、加熱されて回転するこの丸棒状の型の螺旋溝に自己融着絶縁電線の必要条数を送り込んで巻き付けを行えば、“同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線が固着された帯状の多条線束”が螺旋状に巻回されてなる多条螺旋状コイルを得ることができる。
勿論、螺旋状コイル製作時に自己融着絶縁電線を加熱型の溝内に軸方向へも複数本並ぶように送り込んで多層巻きすれば、それらの隣接絶縁電線が固着されてなる多重重ね(例えば二重重ね)の多条螺旋状コイルが得られ、線束同士の固着による一層強固な相互補強がなされるので、コイルをインダクタ−の磁気コアに装着する際における形状崩れの懸念は更に抑えられる。
さて、上述した本発明に係る多条螺旋状コイルは素線の絶縁電線が軟質であって径も比較的細いことから伸縮・屈曲が自在であるので変形の自由度が大きい。
そのため、前記トロイダルコイルのリング状コアへの装着が容易である。
更に、磁気コアの断面形状を問わず、前記多条螺旋状コイルを磁気コアに装着してから当該コイルの外形を押圧し(外側から押圧し)コイルの帯状螺旋構造を崩す変形を生じさせて磁気コアの形状に沿うように整形することもできる。これにより、磁気コアの形状に則したコイル形状のインダクタ−を簡単に実現することができる。
また、本発明に係る多条螺旋状コイルは、それを磁気コアに装着する際にコイルの一端又は両端をコイル軸心方向に押圧してコイルの線輪間隔(ピッチ)を自在に調整することができる。そのため、図4に示すように、本発明に係る多条螺旋状コイル8を棒状の磁気コア9を有するインダクタ−に装着し、この多条螺旋状コイル8を矢印方向に押し込んで線輪間隔を密着状態とすることにより容易に高密度の整列巻き多条コイルとすることができ、高性能のインダクタ−を簡便に得ることができる。
以上に説明した通り、本発明によると、様々な形態のインダクタ−に適用が可能で要求性能に幅広く対応し得るインダクタ−を簡易に製造できるインダクタ−用コイルが実現され、またこれを用いることによってモ−タ,トランス,インバ−タ,リアクトル,チョ−クコイル等の電気・磁気エネルギ−変換器の性能要求に自在に応じることができるインダクタ−を提供できるなど、産業上有用な効果がもたらされる。
1 帯状の多条線束
2 絶縁電線
3 一方の側端縁
4 他方の側端縁
5 丸棒状の型
6 螺旋溝
7 自己融着絶縁電線
8 多条螺旋状コイル
9 棒状の磁気コア
11 リング状コア
12 電線
13 芯材
14 螺旋状コイル
15 螺旋状コイルの一方の端

Claims (5)

  1. 同一直線上に軸心を揃えて平らに並ぶ複数本の絶縁電線からなる帯状の多条線束が、一方の側端縁を内側に、他方の側端縁を外側にして螺旋状に巻回されてなることを特徴とする、多条螺旋状コイル。
  2. 多条線束内の隣接する絶縁電線同士が固着されてなる、請求項1記載の多条螺旋状コイル。
  3. 多条線束が多重重ねの帯状構造とされた、請求項1又は2記載の多条螺旋状コイル。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の多条螺旋状コイルが磁気コアの外周に装着されてなることを特徴とするインダクタ−。
  5. 請求項4に記載のインダクタ−であって、磁気コアの外周に装着された多条螺旋状コイルが外側から押圧されて磁気コアの外形形状に沿う形状に整形されていることを特徴とするインダクタ−。
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