JP2012222246A - コイルおよびコイルの巻線方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁被覆線を用いて多段巻コイルを形成し、近接する線間の電位差を最小限に抑えてコイルの損失を低減し、放熱経路への熱伝達を促進して熱特性を向上させる。
【解決手段】絶縁被覆線を、コイル軸方向の一端側において、径方向の内方または外方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第1列目を形成し、折り返して第1列目と逆方向となるように径方向の外方または内方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第2列目を形成し、折り返して以降の列を形成することを、軸方向の他端側まで繰り返して所定の複数列とし、軸方向に複数列かつ径方向に複数段の多段巻コイルとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、車載装置用のリアクトル、トランス、ソレノイド、その他各種機器用のコイル部材として利用されるコイルとその巻線方法に関する。
例えば、車載インバータ用の昇圧回路にコイルとダストコアからなるリアクトルが用いられる。図6(a)、(b)は、ダストコアを用いたリアクトルの構成例であり、1次絶縁銅線101を巻線したコイル102を成形型内に配置し、ダストコア材料(樹脂および鉄粉)を注入して加熱固化させることで、コイル102の内外周にダストコア103が充填されたリアクトルが製作されている。1次絶縁銅線101には、扁平平角線が用いられ、軸方向に一段のエッジワイズ巻きとした後、絶縁コート樹脂104で全体を被覆することにより2次絶縁してコイル102としている。コイル102の上端および下端からは引き出し線105がダストコア103外に引き出される。
ここで、コスト低減を目的として、扁平平角線に代えて、予め熱可塑性樹脂等で被覆した絶縁被覆線を使用することが検討されている。この場合、扁平平角線を用いたリアクトルと同等のインダクタンス性能を確保するには、径方向に多段に巻き付ける多段巻コイルとする必要がある。多段巻コイルは、一般的には、巻型の外周に軸方向に巻線した後、反対方向に巻き戻すことを繰り返して所定の段数とすることができるが、近接する線間に生じる電位差が特性に影響する。多段巻コイルの巻線方法に関しては、例えば、特許文献1、2が提案されている。
特許文献1は、変圧器用の巻線方法であり、図7(a)、(b)に示すように、巻型201の外周上の一端部に階段状の巻き始め部分202を形成して、その上に巻線導体203を軸方向に巻進めながら、所定段に積み重ねる。この時、階段状の巻き始め部分202の上に、最上段から最下段まで階段状となる巻下げ部を形成し、次に、最下段から最上段まで階段状となる巻上げ部を形成することを繰り返す方法の他、図7(b)に点線で示す渡り線を用いて、全ての列を最下段から最上段へ巻き上げ、巻線方向を1方向とする方法がある。
また、特許文献2の方法は、電線を軸方向の一端から他端へ巻回し、折り返して軸方向の他端から一端へ巻回すること繰り返しながら複数層の巻線を形成している。さらに隣接する層間において、ターン数差が大きく電位差が大きくなる部分に絶縁層を挿入することで、層間の絶縁性を高めている。
特許第3339990号明細書 特開2004−47731号公報
しかしながら、特許文献1に開示される方法は、階段状に巻上げたり巻下げたりすることを繰返しながら巻進める方法で、巻線方向が一定方向でなく、形状が複雑で巻崩れを生じやすい。このため、実際は巻始めに階段状のスペーサを用いるか、接着性の絶縁材で被覆した巻線導体を用いて巻線同士を固着する必要があり、製作コストが上昇する。また、渡り線を用いる方法は、巻線効率が悪く、スペーサを用いる場合は、デッドスペースが大きくなってコイル巻数が少なくなり、所望の性能を確保しようとすると製品が大型化しやすい。
特許文献2の方法は、磁気コアとボビンを有する構成において、ボビン周りに電線を巻回する構成であり、軸方向に長いコイル形状とする場合、折り返し部において電位差が大きくなる。また、ボビンを用い絶縁層を挿入しながら巻線するために、省スペース化が困難で、製作にも手間がかかる。ボビンレスコイルの例示もあるが、融着性電線を使用して、内側と外側の巻線を別途成形して組み合わせる方法を推奨しており、製作工程が複雑となる。
このように、従来の巻線方法では、簡易な方法で損失を悪化させることなく多段巻コイルを得ることは難しい。さらに、絶縁被覆線は、層間に絶縁被覆が介在することから段数が多くなると放熱性が悪化しやすく、コイル内部の蓄熱により製品の熱特性を満足できないおそれがあった。
そこで、本願発明は、絶縁被覆線を用いて多段に巻線されたコイルを形成するに当たり、近接する線間の電位差を最小限に抑えることでコイルの損失を低減し、コイルの放熱経路への熱伝達を促進して放熱性を向上させる構造を実現して、インダクタンス等の性能を確保しながら製品コイルの熱特性を満足させること、そして、製作工程の複雑化や製品の大型化を抑制でき、ダストコアを用いたリアクトル等へも容易に適用できるコイルとその巻線方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁被覆線を軸方向に複数列かつ径方向に複数段となるように巻回してなるコイルであって、
上記絶縁被覆線を、コイル軸方向の一端側において、径方向の内方または外方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第1列目を形成し、折り返して第1列目と逆方向となるように径方向の外方または内方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第2列目を形成し、折り返して以降の列を形成することを、軸方向の他端側まで繰り返して所定の複数列とすることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の発明では、上記コイルの径方向の段数が3段ないしそれ以上である。
本発明の請求項3に記載の発明では、上記絶縁被覆線は、扁平率の小さい略方形断面の線材に樹脂被覆を施したものである。
本発明の請求項4に記載の発明は、絶縁被覆線を軸方向に複数列かつ径方向に複数段となるように巻回してなるコイルの巻線方法であって、
コイル軸方向の一端側において、径方向の内方または外方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第1列目を形成し、折り返して第1列目と逆方向となるように径方向の外方または内方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第2列目を形成し、折り返して以降の列を形成することを、軸方向の他端側まで繰り返して所定の複数列とすることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の方法では、上記絶縁被覆線を、コイル軸方向の一端側から他端側へ向けて螺旋状に巻回するとともに、コイル軸方向の一端側において、第1列目の各段の径に応じて拡径または縮径しながら他端側へ向けて螺旋状に巻回し、次に第2列目の各段の径に応じて縮径または拡径しながら他端側へ向けて螺旋状に巻回することを繰り返して、螺旋状コイルを形成した後、各列および格段が互いに密接するように整列させる。
本発明の請求項1の発明は、絶縁被覆線を多段巻したコイルであり、径方向に必要段数、巻き回してから折り返し、径方向に巻き戻すことを繰り返して、全体に軸方向の一端側から他端側へ巻線する。径方向の段数は、従来の扁平平角線幅に対応する段数で良いので、折り返し部までの段数は比較的少なくなり、隣合う線間の電位差を最小限とすることができる。これにより、損失を低減し、通電時の発熱を抑制することができる。しかも、折り返し毎にコイル外周の放熱経路に接触するので、熱伝達を最短にして内部蓄熱を抑制し、放熱性が良好となって熱特性が向上する。
さらに、アスペクト比が大きい従来の扁平平角線に対し、本発明では、汎用線材を使用することで、コスト低減が可能である。したがって、軸方向長の長いコイル形状であっても、損失や熱特性を悪化させることなく、ダストコアを用いたリアクトル等へ適用されて所望の性能を実現することができる。
本発明の請求項2に記載の発明のように、具体的には、径方向に3段以上となると、内部蓄熱の懸念が大きいが、本発明の構成により外周への伝熱が促進されるので、良好な放熱性を維持できる。
本発明の請求項3に記載の発明のように、絶縁被覆線の断面を略方形としたので、占積率が高くなり、予め絶縁被覆することで所定の絶縁耐圧を確保できるので、小型で高性能なコイルを実現できる。
本発明の請求項4に記載の方法によれば、絶縁被覆線を用いて、径方向に必要段数、巻き回してから折り返し、径方向に巻き戻すことを繰り返して、多段巻したコイルを形成する。全体に軸方向の一端側から他端側へ巻線することにより多段巻コイルとするので、従来のように階段状に巻き戻す工程や巻き崩れを防止するためのスペーサ、融着性電線等を用いる必要がない。また、径方向の段数は、従来の扁平平角線幅に対応する段数で良いので、折り返し部までの段数は比較的少なく、隣合う線間の電位差が最小限となり、放熱性が良好となる。したがって、ダストコアを用いたリアクトル等へ適用されて、損失や熱特性を悪化させることなく、所望の性能を実現可能なコイルを、汎用線材を用いた簡易な工程で低コストに製作することができる。
本発明の請求項5に記載の方法によれば、全体を螺旋状に巻き回してから、列毎、段毎に整列させるので、成形が容易であり、高性能なコイルを簡易な工程で低コストに製作することができる。
本発明を適用した第1実施形態であり、(a)はリアクトルの概略構成を示す上面視図、(b)は(a)A−A線断面図である。 (a)は本発明を適用したコイルの巻線状態を示す斜視図、(b)はコイル形状を示す斜視図である。である。 (a)は、本発明を適用したリアクトル装置の主要部構成を示す部分断面斜視図、(b)はリアクトル装置の全体概略構成図である。 (a)は本発明の効果を説明するためのリアクトルの部分断面図および絶縁被覆線の概略構成を示す部分断面図、(b)は従来の方法により扁平平角線を用いて巻線したリアクトルの部分断面図、(c)は従来の方法により平角線を用いて巻線したリアクトルの部分断面図である。 (a)は本発明を適用した第2実施形態であり、コイル形状の他の例を示す斜視図、(b)は本発明を適用した第3実施形態であり、リアクトル形状の他の例を示す全体斜視図である。 (a)は従来のリアクトルの概略構成を示す上面視図、(b)は(a)A−A線断面図である。 (a)従来のコイル巻線方法を説明するための巻型斜視図、(b)は(a)のコイルの巻線手順を示す模式図である。
以下に、本発明の第1実施形態を、図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用したコイル2を備えるリアクトル1構成を示す概略図であり、図2は、本発明のコイル2の巻線状態および巻線されたコイル2形状を示す図である。図3は、図1のリアクトル1を応用したリアクトル装置4の構成例であり、例えば、車載インバータ等に設けられる昇圧機構その他に用いることができる。
図1において、リアクトル1は、通電により磁束を発生するコイル2と、コイル2が埋設され発生する磁束の磁路となるダストコア3からなる。ダストコア3は、液状の磁性粉末混合樹脂を硬化させたもので、引き出し線21、22を除くコイル2全体を覆って、所定形状(ここでは、円柱状)に成形されている。図3(a)、(b)に示されるリアクトル装置4において、リアクトル1はケース41の中空部内に収容され、ブラケット42にて所定位置に固定されるようになっている。
本発明において、コイル2は、導体線材(例えば、銅線)に絶縁被覆を施した絶縁被覆線を、軸方向に複数列および径方向に複数段となるように巻回した多段構造を有している。好適には、絶縁被覆線として、低アスペクト比の平角線を熱可塑性樹脂等による皮膜で被覆した絶縁被覆平角銅線(以下、適宜、絶縁被覆銅線という)23が用いられる。ここで、平角線のアスペスト比とは、断面形状が略方形である線材の長辺(幅)と短辺(厚み)の比であり、アスペクト比が低いことは、扁平率が小さいことを示している。低アスペクト比の平角線を用い、予め絶縁被覆した絶縁被覆銅線23とすることで、扁平平角形状の1次絶縁銅線を用いる従来構造よりも線材コストの低減が可能となる。絶縁用の樹脂被覆層の材質や層厚等は、必要特性に応じて適宜選択することができる。
低アスペクト比の平角線を用いる絶縁被覆銅線23は、巻線加工が扁平平角線よりも容易にできただし、幅方向長が小さいことから、扁平平角線と同等のインダクタンス性能を確保するために、必要なターン数を、径方向に多段に巻くことになる。
さらに、絶縁被覆平角銅線を用いた場合には、多段構造となることから、近接する線間の電位差による損失と発熱が問題となりやすい。そこで、本発明では、コイル2の巻線を一列毎に径方向に行い、各列を多段形成しながら、軸方向の一端側から他端側へ向けて巻線する。図1(b)は一例であり、コイル軸方向の一端(ここでは、上端)を巻き始めとして、径方向の内方から外方へ向けて3段に巻き(ターン数1〜3)、第1列目を形成する。次に、折り返して径方向の外方から内方へ向けて3段に巻き(ターン数4〜6)、第2列目を形成する。さらに、折り返して径方向の内方から外方へ向けて3段に巻き(ターン数7〜9)、第3列目を形成する。これを繰り返すことで、軸方向の第9列目まで形成する(ターン数25〜27)。
このように構成することで、近接する巻線間の電位差(ターン数差)が最小限となるようにし、損失を低減するとともに、発熱を抑制することができる。図1の例では、コイル2の第1列目、第9列目を、径方向の内方から外方へ向けて3段に巻き、一端側では、第1列目の第1段目(ターン数1)に引き出し線21が接続され、他端側では、第9列目の第3段目(ターン数27)に引き出し線22が接続される構成としている。ここで、コイル2の各列の巻線方向は、特に制限されるものではなく、第1列目、第9列目を、径方向の外方から内方へ向けて3段に巻くように、構成することももちろんできる。図2(b)に、このような巻き始めを外側として径方向の内方へ多段に巻いたコイル2の構成例を示す。
このような構成のコイル2の巻線方法の一例を、図2により説明する。一般的なコイルの巻線方法は、コイルの内径と軸方向長に対応する巻枠を用い、巻枠周りに軸方向に巻き回すものであり、本発明の構成の多段コイルには不適である。特に、図2(b)に示すように、上端の第1列目において巻き始め(ターン数1)が外側にあり、第1列目を径方向の外方から内方へ3段に巻く構成に適用することは難しい。そこで、本発明では、図2(a)に示すように、コイル2を、軸方向の一端側から他端側へ線材を螺旋状に巻き回して形成するとともに、各巻線の径が、各列の各段の径に対応して順に拡径ないし縮径するように巻き進めて、コイル2全体を、図示するような蛇腹状の巻線状態とする。
具体的には、例えば、コイル2の各段に対応する階段形状治具を用い、コイル2の1〜3段目に対応する小径、中径、大径の3段構造として、順に巻線することで、所定の形状とすることができる。すなわち、図2(a)において、コイル2の右端を巻き始めとした時に、1巻目から3巻目を、第1列目の第3段目から第1段目に相当する径となるように、軸方向へ順に縮径する円錐コイル状に巻回し、4巻目から6巻目を、第2列目の第1段目から第3段目に相当する径となるように、軸方向へ順に拡径する円錐コイル状に巻回する。これを1サイクルとして左端側に至るまで繰り返し、治具を外して図示の巻線状態とする。
次いで、このようにして形成した螺旋状の巻線を、軸方向に圧縮して各列および各段を整列させる。この時、各列の第1段目〜第3段目を同心状に位置させて互いに当接する渦巻き状に組み合わせるとともに、隣り合う列の第1段目〜第3段目が互いに当接するように組み合わせて、図2(b)に示す多段コイル形状とする。図中の矢印は、各列から次列への段代わり部を示している。なお、図1、2は本発明のコイル構成の一例であり、コイル2の列数および段数は、所望の特性に応じて適宜設定することができる。好適には、軸方向の列数が、径方向の段数より多いコイル構成において、特に径方向の段数が3段ないしそれ以上の場合に、本発明の効果が発揮されやすい。
図3(a)に示すリアクトル1は、このようにして成形したコイル2を、必要により粘着テープ等で仮固定してケース41内に挿入し、熱硬化性樹脂と磁性粉末(鉄粉)を混練した液状のダストコア3を加熱硬化させることによって製作することができる。図3(b)に示すリアクトル装置4は、ケース41の側方に冷却面43を有しており、通電によるジュール熱で発熱したコイル2は、ダストコア2からケース41を経て冷却面43へ至る放熱経路を介して放熱し、冷却される。この時、上述した本発明の巻線方法とすることで、絶縁被覆平角銅線23を用いたコイル2の損失を低減し、良好な放熱性を確保することができる。この作用効果について、従来構成と比較しながら、説明する。
図4(a)は、図1のコイル2の巻線構造と、コイル2を形成する絶縁被覆銅線(平角銅線)23の断面構造を示している。絶縁被覆銅線23は、銅線の外周を樹脂被覆した構成であり、銅線の長さ方向への熱伝導は良好であるのに対して、外周の樹脂被覆層から外周方向への熱伝導性が劣る。また、コイル2の径方向の巻数が多くなると巻線間に樹脂被覆層が介在して熱伝導を妨げる要因となり、外周方向への放熱性を向上させることが必要となる。
ここで、一般的な軸方向へ巻線する方法の場合、図4(b)に示す扁平平角線を巻線したコイルは、一段巻で径方向には線と線が重ならないので、外周側への伝導熱性には問題が生じていなかった。一方、絶縁被覆平角銅線23は、図4(c)に示すコイルのように、内周側から軸方向に巻き進めた後、折り返してその外周に多段に巻線する構造とすると、樹脂被覆層から外周側への熱伝導性が悪化する。特に軸方向長が長い場合には、折り返し部で近接する線間の電位差が大きくなり、コイルのターン数1とターン数18、ターン数10とターン数27で最大となる。このため交流抵抗が増加することで、損失が発生し、さらに多段巻であるために、コイル中間層から伝熱経路となるダストコアに至る間に7〜8ターン分の距離が必要となる。
例えば、図示の3段構造であれば、コイル全長のうちコイル中間層に相当する約1/3が連続して外側コイル層に覆われ、外周側への伝熱経路は、中間層の銅線(発熱)→中間層の樹脂被覆→外側層の樹脂被覆→外側層の銅線→外側層の樹脂被覆となり、放熱が阻害される。このため、内部蓄熱が生じて放熱性の悪化により、製品に要求される熱特性(例えば≦150℃)を満足できない問題がある。なお、図4はいずれも、各図の右側を内周側、左側を外周側として説明している。
これに対して、図4(a)の本発明のコイル2の巻線構造では、列毎に所定の段数を径方向に巻線するので、1列毎に内周側および外周側のコイル2が、ダストコア3に接触することになる。したがって、軸方向長が長い場合であっても、内部に蓄熱されにくく、放熱性が大きく向上する。しかも、コイル2の折り返し部における線間電位差が最小限となり、損失が低減するため、発熱自体が抑制される。これにより、絶縁性と放熱性を両立させることが可能になり、高価な扁平平角線を使用する必要がなく、高いコスト低減効果が得られる。
本発明の効果を確認するため、図4(a)の本発明のコイル2と、図4(b)のコイル構造について、同一の条件で通電試験を行い、熱特性を比較した。その結果、図4(b)のコイル構造では、図4(b)のコイル構造に対して約10%程度の熱低減効果が得られた。
図5(a)は本発明の第2実施形態であり、コイル2の巻線構造の他の例を示す。図2(b)に示したコイル2は、図2(a)の螺旋状の巻線を組み合わせることにより製作され、多段構造であることから、各列に図示する段代わり部が形成され、隙間が生じる。このため、図5(a)におけるコイル2は、この段代わり部における巻線を、隙間が小さくなるように屈曲させて(ベンディング)、図中、矢印に示す形状とする。これにより、隙間が小さくなり巻線導体の占積率が大きくなるために、リアクトル性能が向上する。
図5(b)は本発明の第3実施形態であり、コイル2を用いたリアクトル1構造の他の例を示す。図1に示したリアクトル1は、コイル2をダストコア3と組み合わせた空芯コイルとして構成されているが、図5(b)に示すように、圧粉磁芯を用いたコア5を有するリアクトル1とすることもできる。この場合、コイル2形状は、略長方形のコア5の断面形状に対応する略長方形の筒状体となり、同様の方法にて巻線することができる。また、コア5は、例えばコの字型の2つの半部を組み合わせた構造とし、本発明の方法にて巻線したコイル2を、コア5の半部の一端側から外挿し、コア5の両半部を衝合させることで、リアクトル1とすることができる。
このように、本発明のコイル構造は、熱特性が改善されたことにより幅広い昇圧パターン、電流で使用可能であり、小容量から大容量まで対応可能な車載インバータ用リアクトルとして有効である。さらに、車載インバータに限らず、車載用または家電用その他の各種用途に使用される電子機器、制御機器、電源装置、駆動装置用のリアクトル、トランス、コイル部材に好適に利用することができる。
1 リアクトル
2 コイル
21、22 引き出し線
23 絶縁被覆銅線(絶縁被覆線)
3 ダストコア
4 リアクトル装置
41 ケース
42 ブラケット
43 冷却面
5 コア

Claims (5)

  1. 絶縁被覆線を軸方向に複数列かつ径方向に複数段となるように巻回してなるコイルであって、
    上記絶縁被覆線を、コイル軸方向の一端側において、径方向の内方または外方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第1列目を形成し、折り返して第1列目と逆方向となるように径方向の外方または内方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第2列目を形成し、折り返して以降の列を形成することを、軸方向の他端側まで繰り返して所定の複数列とすることを特徴とするコイル。
  2. 上記コイルの径方向の段数が3段ないしそれ以上である請求項1記載のコイル。
  3. 上記絶縁被覆線は、扁平率の小さい略方形断面の1次絶縁線材に樹脂被覆を施したものである請求項1または2記載のコイル。
  4. 絶縁被覆線を軸方向に複数列かつ径方向に複数段となるように巻回してなるコイルの巻線方法であって、
    コイル軸方向の一端側において、径方向の内方または外方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第1列目を形成し、折り返して第1列目と逆方向となるように径方向の外方または内方へ向けて所定の複数段数巻き回して、軸方向の第2列目を形成し、折り返して以降の列を形成することを、軸方向の他端側まで繰り返して所定の複数列とすることを特徴とするコイルの巻線方法。
  5. 上記絶縁被覆線を、コイル軸方向の一端側から他端側へ向けて螺旋状に巻回するとともに、
    コイル軸方向の一端側において、第1列目の各段の径に応じて拡径または縮径しながら他端側へ向けて螺旋状に巻回し、次に第2列目の各段の径に応じて縮径または拡径しながら他端側へ向けて螺旋状に巻回することを繰り返して、螺旋状コイルを形成した後、各列および格段が互いに密接するように整列させる請求項4記載のコイルの巻線方法。
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