JP2014051637A - シリカ複合材料、コーティング組成物、及びシリカ複合膜の製造方法 - Google Patents

シリカ複合材料、コーティング組成物、及びシリカ複合膜の製造方法 Download PDF

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礼子 斎藤
Yoshihiro Otsuka
喜弘 大塚
Yoshimichi Okano
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Abstract

【課題】 微細な構造が安定的に形成でき、バリア性も向上したコーティング組成物を提供することにある。
【解決手段】 互いに非相溶である複数のセグメントからなる共重合体(X)のミクロ相分離構造を鋳型としてシリカ相が分散形成されたことを特徴とするシリカ複合材料を提供する。また、(1)互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、ポリシラザンと、乾燥溶媒と、芳香族溶媒とを少なくとも含む混合物を、不活性雰囲気下でコーティング組成物に調製するコーティング組成物調製工程と、(2)前記コーティング組成物を塗膜する塗膜工程と、(3)前記塗膜工程後に、加湿条件下でポリシラザンをシリカに転化するシリカ転化工程とを有することを特徴とするシリカ複合膜の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、シリカ複合材料、コーティング組成物、及びシリカ複合膜の製造方法に関する。
従来、塗料組成物としては、水酸基またはシリル基を有する高分子及びポリシラザンを含む原料高分子と、原料高分子を溶解する乾燥溶媒との混合物からなり、高分子からなる有機部と、シリカからなる無機部とをもつ有機−無機ナノコンポジット膜として構成されるものが知られている。
具体的には、シリル基を有する透明性高分子とポリシラザンとを含む原料高分子と、該原料高分子を溶解する乾燥溶媒との混合物からなるものが知られている(特許文献1参照)。
また、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である第一乾燥溶媒と、透明性高分子に対して貧溶媒である第二乾燥溶媒とからなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含むものも知られている(特許文献2参照)。
さらに、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、アルコールとの混合物を含むものも知られている(特許文献3参照)。
特開2009−96901号公報 特開2006−328220号公報 特開2006−328217号公報
しかしながら、上記塗料組成物には、微細な構造が安定的に形成できず、またバリア性も充分ではないという問題点があった。
従って、本発明の目的は、微細な構造が安定的に形成でき、バリア性も向上したシリカ複合材料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、微細な構造が安定的に形成でき、バリア性も向上したシリカ複合膜を得ることを可能にするコーティング組成物及びシリカ複合膜の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の構造を鋳型としてシリカ相を分散させることにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
互いに非相溶である複数のセグメントからなる共重合体(X)のミクロ相分離構造を鋳型としてシリカ相が分散形成されたことを特徴とするシリカ複合材料を提供する。
前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有することが好ましい。
前記シリカ相はポリシラザンによって形成されたものであることが好ましい。
また、本発明は、
互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、
ポリシラザンと、
乾燥溶媒と、
芳香族溶媒とを少なくとも含むことを特徴とするコーティング組成物を提供する。
また、本発明は、
(1)
互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、
ポリシラザンと、
乾燥溶媒と、
芳香族溶媒とを少なくとも含む混合物を、
不活性雰囲気下でコーティング組成物に調製するコーティング組成物調製工程と、
(2)
前記コーティング組成物を塗膜する塗膜工程と、
(3)
前記塗膜工程後に、加湿条件下でポリシラザンをシリカに転化するシリカ転化工程とを有することを特徴とするシリカ複合膜の製造方法を提供する。
本発明のシリカ複合材料によれば、上記のような構成を有するため、微細な構造が安定的に形成でき、バリア性も向上するという効果が得られる。また、シラン化合物の濃度を上げることができるので、焼結後には高い鉛筆硬度が得られる。
また、本発明のコーティング組成物及びシリカ複合膜の製造方法によれば、シリカ複合膜の微細な構造が安定的に形成でき、バリア性も向上し、また、シラン化合物の濃度を上げることにより焼結後には高い鉛筆硬度が得られる。
比較例1及び2で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例7で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例6及び12で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例3及び11で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例1及び10で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例4及び13で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例5及び14で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例8及び15で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例9で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例6で得られたシリカ複合材料のモルホロジーの電子顕微鏡写真(TEM写真)である。 実施例において得られた複合膜の水蒸気透過度の評価結果を示すグラフである。 実施例において得られた複合膜の水蒸気透過度の評価結果を示すグラフである。
[1.シリカ複合材料]
本発明のシリカ複合材料では、互いに非相溶である複数のセグメントからなる共重合体(X)のミクロ相分離構造を鋳型としてシリカ相が分散形成されている。
[1−1.構造]
まず、ミクロ相分離構造とは、互いに非相溶である複数のセグメントにおいて、分子鎖サイズのオーダーでの微視的相分離が生じてできる構造を指す。
本発明のシリカ複合材料が有する構造の種類は、特に制限されないが、例えば、以下の第1〜第3のモルホロジーの3種類の構造が挙げられる。
第1には、前記ミクロ相分離構造の鋳型中に、前記シリカ相が、シリカと親和性のあるセグメントとともに、概略並行且つ概略等間隔な複数の曲面構造を形成しているモルホロジーである(以下、第1のモルホロジーと称することがある。)。第1のモルホロジーにおいて、前述の複数の直線又は曲線構造を有する前記シリカ相の間隔(シリカ相間の他ドメインの厚み)は、相分離界面厚みと機能の観点から、例えば0.5nm〜300nmであり、好ましくは2nm〜200nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
第2には、前記シリカ相が、シリカと親和性のあるセグメントとともに、マトリックスを形成し、その中に他セグメントによる孤立ドメインとして、概略同一形状の概略円柱状の構造が概略並行且つ概略等間隔で複数形成されているモルホロジーである(以下、第2のモルホロジーと称することがある。)。前記概略円柱状の構造の間隔(隣接する円柱間の他ドメインの厚み)は、相分離界面厚みと機能の観点から、例えば0.5nm〜300nmであり、好ましくは2nm〜200nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
第3には、前記シリカ相が、シリカと親和性のあるセグメントとともに、マトリックスを形成し、その中に他セグメントによる孤立ドメインとして、概略球面状の構造が概略等間隔で複数形成されているモルホロジーである(以下、第3のモルホロジーと称することがある。)。第3のモルホロジーにおいて、前記概略球面状の構造の間隔(隣接する球面間の他ドメインの厚み)は、相分離界面厚みと機能の観点から、例えば0.5nm〜300nmであり、好ましくは2nm〜200nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
[1−2.シリカ相]
前記シリカ相は、シラン化合物によって形成されるものであり、その他の点では特に制限されないが、好ましいシラン化合物としては、例えば、ポリシラザン、ポリカルボシラザン、ジメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。本明細書において、シリカとはケイ素の酸化物を意味し、ケイ素原子に対する酸素の結合比率は2に限定されない。
ポリシラザンとしては、Si−N結合を持つ化合物で、例えば、―(SiRR’−NR’’)n―と表される化合物が挙げられる(式中、R、R’、R’’は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基またはアルキルシリル基であり、それぞれ同一または相異なっていてもよい。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブチニル、オクテル、デセニル等が挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。nは2以上の整数である。)。
ポリシラザンは、水および酸素の存在下で分解して窒素原子と酸素原子とが置換する転化反応により硬化し、シリカとなる。
ポリシラザンは、通常、シリカの被膜の形成に用いられているポリシラザンであれば特に限定はないが、特に好ましいのは、上記式でR、R’、R’’が全て水素である無機オリゴマーであり、−(SiH2NH)n−で表されるペルヒドロポリシラザン(PHPS)である。PHPSは、硬化温度が低いため、本発明に適したポリシラザンである。また、部分メチル化ペルヒドロポリシラザンを用いてもよい。なお、2種以上のポリシラザンを混合して用いてもよい。PHPSの構造については下記に示す。
PHPSは、空気中で焼結することによりアンモニア及び水素を発生しながらシリカ(SiO2)へと転化する。この転化は通常450℃以上の温度が必要であるが、水蒸気を添加することによって100℃以下でも転化が完了し、緻密なシリカ膜を得ることができる。また、クラックが発生しにくく厚膜化が可能となるという利点もある。さらに、PHPSは、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、エーテル、エステル等の様々な有機溶媒に可溶であり、PHPSの持つSi−H基と有機高分子のOH基とが溶媒中で反応し、共有結合を生成するため、PHPSと有機高分子の反応は溶液中で行う事ができる。したがって、溶液をキャストする事によってコンポジットの膜を作製する事ができ、基板にポリマーとPHPSの混合溶液をキャストすれば有機−シリカ複合コート膜を作製する事も可能である。以下に、PHPSの転化の模式図を示した。
なお、使用されるポリシラザンの分子量に特に限定はないが、ポリシラザンの乾燥溶媒への溶解し易さや成膜性の点、また、透明性保護膜の透明性の点から、その数平均分子量が50〜10,000、さらには500〜2,000であることが好ましい。
[1−3.共重合体(X)]
共重合体(X)は、互いに非相溶である複数のセグメントからなる共重合体であれば良く、その他の点では特に制限されない。前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有することが好ましく、主鎖にエポキシ基を有することがより好ましい。必ずしも反応性の高いエポキシ基が好ましいとは言えない。「複数」とは2以上であれば良く、特に制限されないが、複合化における相分離構造の安定性という観点から、3以上であることが好ましく、3であることがより好ましい。
共重合体(X)としては特に制限されないが、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられ、相分離構造発現の観点からはブロック共重合体がより好ましい。
共重合体(X)は、ビニル芳香族炭化水素化合物、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1つを主体とするセグメントと、共役ジエン化合物を主体とするセグメントとからなる共重合体であることが好ましい。「主体とする」とは、ビニル芳香族炭化水素化合物、ポリアルキレンオキシド、及びポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルの合計量、又は、共役ジエン化合物の量が、それぞれセグメントの10重量%以上であることを意味するが、ドメイン形成の安定性という観点から、好ましくは15重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
共重合体(X)がブロック共重合体である場合、ビニル芳香族炭化水素化合物、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1つを主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であることが好ましい。なお、共重合体(X)がグラフト共重合体等である場合も、各セグメントの好ましい構成成分について、ブロック共重合体の各ブロックと同様に考えることができる。
共重合体(X)がブロック共重合体である場合、その構造は特に限定されるものではないが、例えば、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体であって、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等で表されるブロック共重合体であってもよく、A−B−Aで表されるブロック共重合体であることが好ましい。また、分子自体の構造は、直鎖状、分岐状、放射状等のいずれの構造であってもよく、さらにこれらの任意の組合せであってもよい。
重合体ブロック(A)中のビニル芳香族炭化水素化合物、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、均一に分布していても、またテーパー状に分布していてもよい。また、この共重合部分には、ビニル芳香族炭化水素化合物、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルが均一に分布している部分および/またはテーパー状に分布している部分が、それぞれ複数個共存していてもよい。なお、共重合体(X)がグラフト共重合体等である場合も、各セグメント中の構成成分の好ましい分布について、ブロック共重合体と同様に考えることができる。
重合体ブロック(B)に存在する不飽和炭素結合は、水添反応によって部分的に水素化されていてもよい。重合体ブロック(B)において、部分的に水素化された不飽和炭素結合を有する重合体ブロックの割合は、例えば0〜90重量%である。共重合体(X)がグラフト共重合体等である場合も同様に考えることができる。
重合体ブロック(B)(不飽和炭素結合が部分的に水素化されたものを含む)に存在する不飽和炭素結合は、エポキシ当量が140〜2700の範囲になるようにエポキシ化されていることが好ましい。共重合体(X)がグラフト共重合体等である場合も同様に考えることができる。
共重合体(X)を構成するビニル芳香族炭化水素化合物の代表例としては、スチレン、α−メチルスチレン等の種々のアルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン、アルキル置換ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらは1種でも、2種以上の混合物であってもよい。
共重合体(X)を構成するポリアルキレンオキシドの代表例としては、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンオキシド(ポリエチレングリコール)が好ましい。これらは1種でも、2種以上の混合物であってもよい。
共重合体(X)を構成するポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルの代表例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸tert−ブチルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ラウリルエステル等が挙げられる。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。これらは1種でも、2種以上の混合物であってもよい。
共重合体(X)を構成する共役ジエン化合物の代表例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの中で、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが安価であり、かつ入手し易いので好適である。これらは1種でも、2種以上の混合物であってもよい。
共重合体(X)を構成するビニル芳香族炭化水素化合物と共役ジエン化合物との共重合組成比(前者/後者の重量比)は、好ましくは5/95〜70/30であり、さらに好ましくは10/90〜60/40である。本発明に使用できるブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜100,000である。低分子量では、ゴム状弾性体の性質が発現し難く、また高分子量では溶融し難くなるので好ましくない。ここで数平均分子量とは、GPC法によって測定した標準ポリスチレン換算分子量を意味する。
エポキシ化する前の共重合体(X)の製造方法は、特に限定されるものではなく、どのような方法で製造されたものでもよい。例えば、特公昭40−23798号公報、特公昭47−3252号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭56−28925号公報等に記載されているように、リチウム触媒等を用いて、不活性溶媒中で製造する方法が挙げられる。
共重合体の水添物の製造方法は、特に限定されるものではなく、どのような方法で製造されたものでもよい。例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報等に記載されているように、共重合体(X)を、不活性溶媒中で、水素化触媒の存在下に、水素化して製造する方法が挙げられる。水素化量は特に限定されるものではないが、引き続きエポキシ化反応を行なう際、エポキシ化剤と反応しうる不飽和炭素結合が水添物の分子内に残っている必要がある。共重合体(X)を適当な有機溶剤に溶解またはスラリー状にした後、エポキシ化する。エポキシ化剤によりエポキシ化される部位は、重合体ブロック(B)の分子内に存在する不飽和結合であることが好ましく、重合体ブロック(B)の主鎖に存在する不飽和結合であることがより好ましい。例えば、共重合体(X)がグラフト共重合体等である場合でも考え方は同様である。
エポキシ化する際に使用される有機溶剤の代表例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の直鎖状および分岐状炭化水素類、ならびにそれらのアルキル置換誘導体類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類およびそれらのアルキル置換誘導体類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、およびアルキル置換芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の脂肪族カルボン酸エステル類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、共重合体(X)またはその水添物の溶解性、およびその後の溶剤回収の容易性等から、シクロヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、キシレン等である。
また、エポキシ化反応を行う際に使用できるエポキシ化剤の代表例としては、過酢酸、過安息香酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸等の有機過酸類、過酸化水素、過酸化水素と低分子の脂肪酸とを組み合わせたもの等が挙げられる。これらエポキシ化剤の中では、過酢酸が工業的に大量に製造されるため安価に入手でき、しかも安定度が比較的高いので好ましい。使用するエポキシ化剤の量は、特に限定されるものではなく、使用するエポキシ化剤の反応性、所望されるエポキシ化度、使用する共重合体、またはその水添物中の不飽和炭素結合量等の条件により、任意に適当な量を選択することができる。エポキシ化反応を行う際には、必要に応じて、触媒を使用することもできる。
エポキシ化反応を行う際の温度は、使用するエポキシ化剤、用いる溶剤、共重合体、またはその水添物の種類、量等により異なり、特に限定されるものではない。例えば、過酢酸をエポキシ化剤として使用する場合の反応温度は、好ましくは0〜70℃の範囲で選ばれる。0℃未満では反応速度が遅く、70℃を越えると、生成したエポキシ基が開環したり、過酢酸の分解が進行したりして、いずれも好ましくない。過酢酸の安定性を向上するために、リン酸塩類をエポキシ化反応に際して反応系に添加してもよい。エポキシ化反応時間は、0.1〜72時間の範囲で選ぶことが生産性の観点から好ましい。エポキシ化反応終了後は、反応液を室温に下げ、エポキシ化反応の際に生成した酸類を、アルカリ水溶液で中和、または純水で洗浄し除去する。
[2.コーティング組成物]
本発明のコーティング組成物は、
互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、
ポリシラザンと、
乾燥溶媒と、
芳香族溶媒とを少なくとも含むが、その他の点では特に制限されない。
コーティング組成物は、低分子(例えば、分子量200〜5000)のエポキシ化合物を含んでいても良い。
[2−1.共重合体(X’)]
共重合体(X’)については、セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する点以外については、前述の共重合体(X)と同様である。
セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有することにより、シラン化合物がエポキシ基の密度が比較的高い領域で転化して、シリカ相によるモルホロジーをより安定的に形成しやすくなる。コーティング組成物が、低分子のエポキシ化合物を含む場合も同様である。
コーティング組成物における共重合体(X’)の含量は、ミクロ相分離構造を形成させる観点から、共重合体(X’)とポリシラザンとの総量を100重量部として、例えば10〜95重量部であり、好ましくは20〜90重量部であり、より好ましくは30〜88重量部である。
[2−2.ポリシラザン]
ポリシラザンについては、前記シリカ相を形成する好ましいシラン化合物として記載したポリシラザンと同様である。
コーティング組成物におけるポリシラザンの含量(シラン分率)は、第1のモルホロジーを安定的に形成するという観点から、例えば5〜40重量%であり、好ましくは10〜35重量%であり、より好ましくは20〜35重量%である。第2のモルホロジーを安定的に形成するという観点からは、例えば、35〜55重量%であり、好ましくは40〜55重量%であり、より好ましくは40〜52重量%である。第3のモルホロジーを安定的に形成するという観点からは、例えば、55〜95重量%であり、好ましくは58〜90重量%であり、より好ましくは60〜85重量%である。コーティング組成物を用いてシリカ複合膜を得て、さらにシリカ複合膜の加熱により高い表面硬度を得るという観点からは、例えば50〜90重量%であり、好ましくは55〜90重量%であり、より好ましくは70〜90重量%である。
[2−3.乾燥溶媒]
乾燥溶媒は、ポリシラザンが加水分解されない程度まで脱水された溶媒を意味する。乾燥溶媒は、上記ポリシラザンを溶解する乾燥溶媒であることが好ましい。
乾燥溶媒が水を含むと、水との反応によりコーティング組成物のゲル化が進み好ましくないため、乾燥剤を用いる等の方法により溶媒から水分を除去する。また、ポリシラザンは水酸基と反応し易いため、乾燥溶媒は水酸基を含まない溶媒であることが好ましい。
乾燥溶媒としては、具体的には、芳香族炭化水素としてキシレン、ベンゼン、トルエン等、エステルとして酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸n−ブチル等、ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン等、エーテル類としてジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカリン、灯油、石油等、また、クロロホルム等が挙げられる。上記溶媒のうち、1種または2種以上を混合して用いることができる。また、これらを主溶媒とし、さらにシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等、炭化水素類を第二乾燥溶媒として添加することが可能である。
乾燥溶媒の割合は、コーティング組成物の調製方法、溶媒の種類にもよるが、コーティング組成物を塗膜する基材の状態にあわせて使用すればよい。乾燥溶媒の割合は、例えば、ポリシラザン100重量部に対して600〜50000重量部、好ましくは1000〜40000重量部、より好ましくは2000〜30000重量部とすることができる。
ただし、基材が樹脂からなる樹脂基材である場合には、乾燥溶媒は、ポリシラザンに対して良溶媒である主溶媒と、樹脂基材に対して貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒を用いることもできる。第二乾燥溶媒に関しては、樹脂基材の種類等に応じて適宜なものを選択すればよい。
[2−4.芳香族溶媒]
芳香族溶媒としては、特に制限されないが、共重合体(X’)を溶解するものであることが好ましく、さらにポリシラザンを溶解するものであることがより好ましい。また、ポリシラザンの溶解性という観点から、芳香族溶媒は吸水性を有さないものであることが好ましい。また、芳香族溶媒として乾燥溶媒と同一のものを用いても良い。
芳香族溶媒としては、モルホロジーを安定的に形成するという観点から、コーティング組成物の乾燥後期(例えば、溶媒濃度10重量%)であっても、乾燥溶媒の分率が低くなるようなものを選択することが好ましい。
コーティング組成物の乾燥後期であっても、乾燥溶媒の分率が低くなるような芳香族溶媒の具体的な基準を以下に述べる。まず、一般的に、溶媒の蒸発量は、以下の式(1)によって計算できる。なお、特別の断りが無い限り、以下、蒸発量及び蒸気圧の単位は、それぞれmol及びPaとする。
蒸発量=蒸気圧×(分子量)1/2 (1)
上記式(1)を乾燥溶媒及び芳香族溶媒に適用して以下の蒸発シミュレーションを行う。具体的には、以下の式である。
乾燥溶媒の蒸発量=
乾燥溶媒のモル分率×乾燥溶媒の蒸気圧×(乾燥溶媒の分子量)1/2 (2)
芳香族溶媒の蒸発量=
芳香族溶媒のモル分率×芳香族溶媒の蒸気圧×(芳香族溶媒の分子量)1/2 (3)
式(2)及び(3)で算出された蒸発量を考慮して、乾燥溶媒及び芳香族溶媒のモル分率を変更して、上記式(2)及び(3)による計算を溶媒量が初期の10重量%以下になるまで計算を繰り返し、10重量%以下になった段階での乾燥溶媒の重量分率(乾燥後期の重量分率)が、例えば、25重量%以下であり、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは14.2重量%以下になるように設定する。
具体的には、例えば、乾燥溶媒と芳香族溶媒以外に、モル分率を考慮する必要がある溶媒が無い場合には、以下の計算をすることになる。
(溶液中の乾燥溶媒の量)−(蒸発量/50000)=A (4)
(溶液中の芳香族溶媒の量)−(蒸発量/50000)=B (5)
として、
乾燥溶媒の蒸発量=
A/(A+B)×乾燥溶媒の蒸気圧×(乾燥溶媒の分子量)1/2 (6)
芳香族溶媒の蒸発量=
B/(A+B)×芳香族溶媒の蒸気圧×(芳香族溶媒の分子量)1/2 (7)
式(6)及び(7)による計算を溶媒量が初期の10重量%以下になるまで計算を繰り返し、10重量%以下になった段階での乾燥溶媒の重量分率を上述のように設定する。
例えば、共重合体(X’)として、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)のブロック共重合体でポリブタジエンのエポキシ化率が20モル%であるものを用い、ポリシラザン及び乾燥溶媒としてNN−120(AZエレクトロニックマテリアルズ社製;PHPS/ジブチルエーテル20重量%溶液)を用いる場合において、芳香族溶媒としてトルエン、エチルベンゼンを用いたとして、上記式(2)〜(7)に記載したようなシミュレーションを行った。その結果を以下の表1に示す。なお、シリカ分率は58重量%を想定し、NN−120は0.51ml(ジブチルエーテル)、エチルベンゼン及びトルエンは1.97g用いることとした。
上記の場合、共重合体(X’)がジブチルエーテルに不溶であり、コーティング組成物の乾燥時には、エチルベンゼンよりもトルエンがより蒸発しやすい。したがって、トルエンを用いる場合よりはエチルベンゼンを用いたほうが、ポリマーの偏析によりコート膜表面が平滑にならないという問題がより生じにくいと考えられる。
つまり、乾燥溶媒がジブチルエーテルである場合には、芳香族溶媒はトルエンよりもエチルベンゼンであることが好ましい。また、同様の考え方によれば、乾燥溶媒がシクロヘキサンである場合には、芳香族溶媒はトルエンであることが好ましい。
芳香族溶媒の量は、特に制限されないが、溶液の粘度と固形分分率の観点から、例えば、ポリシラザン100重量部に対して600〜50000重量部、好ましくは1000〜40000重量部、より好ましくは2000〜30000重量部とすることができる。
[3.シリカ複合膜の製造方法]
本発明のシリカ複合膜の製造方法は、少なくとも(1)コーティング組成物調製工程、(2)塗膜工程、及び(3)シリカ転化工程を含む。以下に、これらの各工程を詳細に説明する。
[3−1.(1)コーティング組成物調製工程]
(1)コーティング組成物調製工程における、共重合体(X’)、ポリシラザン、乾燥溶媒、及び芳香族溶媒については、上述したものと同様である。
ポリシラザンは、水蒸気や酸素が存在する空気中で、ゲル化や転化が進行するため、ポリシラザンの反応性が低い不活性雰囲気下で、コーティング組成物を調製する必要がある。不活性雰囲気としては、例えば、水を含まない窒素ガスや希ガス等の不活性ガス雰囲気中であることが望ましい。
[3−2.(2)塗膜工程]
前記コーティング組成物を塗膜する具体的な方法としては、特に制限されないが、例えば、前記コーティング組成物を基材の表面に塗布すること等が挙げられる。前記塗布の方法としては、通常用いられる塗工法であれば、例えば、スプレー法、スピンコート法等が適用可能であるが、外観品質の点で、ディップコート法またはフローコート法により前記塗料組成物を塗布する工程であるのが望ましい。ディップコート法やフローコート法は、基材の表面が塗料組成物に長時間さらされないので、塗料組成物による基材の劣化が低減される。
前記基材の種類に限定はなく、例えば、金属製基材や樹脂製基材等に塗布することができる。特に、樹脂製基材は、透明性を有する樹脂からなるのが望ましい。樹脂製基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、シクロオレフィン樹脂等のエンジニアリングプラスチック等が望ましい。
[3−3.(3)シリカ転化工程]
(3)シリカ転化工程は、前記塗膜工程後に、加湿条件下でポリシラザンをシリカに転化する工程である。加湿条件下で、乾燥溶媒及び芳香族溶媒が蒸発すると共にポリシラザンがシリカへと転化することにより、透明性保護膜が得られる。
さらに、塗料組成物中の透明性高分子や基材を劣化させない程度の温度であれば、硬化工程において焼結することによりポリシラザンの転化を促進させることも可能であり、より短時間で塗料組成物が硬化する。なお、ポリシラザンのガラス転移温度以下での焼結であれば、塗料組成物がもつ微視的な構造が失われることはない。焼結温度としては、例えば15〜150℃であり、好ましくは60〜120℃である。
[4.シリカ複合膜]
前述のように、本発明のコーティング組成物及びシリカ複合膜の製造方法によれば、シリカ複合膜のモルホロジーが安定的に形成でき、バリア性も向上し、また、シラン化合物の濃度を上げることにより焼結後には高い鉛筆硬度が得られる。
シリカ複合膜としては、特に制限されないが、透明性の観点から、UV−vis測定を行い、空気を基準とした600nmの透過率が、例えば85%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。前記透過率の上限は特に制限されないが、例えば100%である。
加熱処理をしていないシリカ複合膜は、耐擦傷性の観点から、PET基板にコートした場合にJISK5600−5−4に基づき、室温(25℃)で測定した表面硬度が、例えば0.5GPa以上であり、好ましくは0.6GPa以上であり、より好ましくは0.65GPa以上である。加熱処理をしたシリカ複合膜の場合は、前記表面硬度は、例えば0.7GPa以上であり、好ましくは0.8GPa以上であり、より好ましくは1.0GPa以上である。これらの表面硬度の上限は特に制限されないが、例えば2.5GPaである。
シリカ複合膜は、ガスバリア性の観点から、膜厚48.0μmのポリビニルアルコール基板に膜厚10.0μmでコートした場合に、カップ法により、膜面積9.075×10-42、相対湿度58%、水蒸気圧13.46mmHgの条件で測定した水蒸気透過度が、例えば500gμm/m2mmHgday以下であり、好ましくは400gμm/m2mmHgday以下であり、より好ましくは250gμm/m2mmHgday以下である。前記水蒸気透過度の下限は特に制限されないが、例えば0.05gμm/m2mmHgdayである。なお、水蒸気圧13.30〜13.62mmHgの範囲内の条件で測定した場合であっても、上記のように水蒸気圧13.46mmHgの条件で測定して得られた数値との誤差は1.5%以内となる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[合成例1]
攪拌機、温度計、ジャケットを装備した容量5リットルの反応器に、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)のブロック共重合体(JSR製、商品名:TR−2000;PS:40重量%、PBD:60重量%)300部と、酢酸エチル1500部とを仕込み、SBSを酢酸エチルに溶解した。反応器の内温を40℃に昇温し、内温をこの温度に維持しつつ、攪拌下、過酢酸の30%酢酸エチル溶液169部を、3時間に亘って連続的に滴下し、エポキシ化反応を行った。
エポキシ化反応終了後、内温を常温に戻し、純水で洗浄し、エポキシ化ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン重合体の酢酸エチル溶液を得た。この重合体溶液を、スチームストリッピング法により処理して酢酸エチルを除去した後、上記で得られた重合体の水分散スラリーを、回転式スクリーンによって水切りし、さらにベント付き二軸スクリュー押出機へ供給・溶融し、ダイスから押出されたストランドをカッティングした。
得られたペレットはポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)のブロック共重合体(PS:40重量%、PBD:60重量%であり、ポリブタジエンのエポキシ化率が20モル%)のものを得た。
[実施例1〜15]
乾燥させたエチルベンゼンに、合成例1で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)のブロック共重合体(PS:40重量%、PBD:60重量%であり、ポリブタジエンのエポキシ化率が20モル%)を溶解させ、ポリマー溶液A(ポリマー濃度1重量%)とした。上記溶液Aにおいて、エチルベンゼンに替えてトルエンを用いた溶液をポリマー溶液Bとした。
一方、PHPS/ジブチルエーテル20重量%溶液(AZ エレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「N,N−120」、比重0.82g/ml)を溶液Cとし、PHPS/トルエン20重量%溶液(AZ エレクトロニックマテリアルズ社製、商品名「N,N−110」、比重0.92g/ml)を溶液Dとした。
溶液A〜Dを下記表2に記載する割合で混合して、混合溶液を調製した。混合溶液のコートはPETを基板とし、4000rpm,90secでスピンコートした。コートした基板を大気中、約25℃で静置、1日乾燥した後、80℃、6時間、過酸化水素水溶液存在下で加熱し、ポリスチレン−シリカナノ複合体とした。なお、実施例14及び15については、加熱は行わなかった。
上記ポリスチレン−シリカナノ複合体が生じる反応式を以下に示す。
各実施例のポリスチレン−シリカナノ複合体における、シリカ、ポリスチレン、及びポリブタジエンの重量%等について以下の表3に記載する。
[比較例1及び2]
溶液Aのみを2.0g用い、溶液B〜Dを用いなかった以外は実施例と同様の操作を行ったものを比較例1とした。溶液Bのみを2.0g用い、溶液A、C、Dを用いなかった以外は実施例と同様の操作を行ったものを比較例2とした。
[電子顕微鏡による観察]
混合溶液を、カーボン膜を張った銅グリット(応研商事社製、商品名「シートメッシュCu200−A」)にキャストし、室温で2日間乾燥させた後に、TEMによる観察を行った。写真を図1〜10に示す。
図1は、比較例1(右側)及び比較例2(左側)の結果を示す。比較例1ではDBE5.3%により、比較例2ではOsO4により染色を行った。黒色部分がPBD、白色部分がPSであり、いずれの場合も明確なミクロ相分離構造が見られた。
図2は、実施例7(シリカ分率25.8%)の結果を示す。染色は特に行なってはいない(以下、特に断りが無ければ、染色については同様とする。)。白色部分が有機部分であり、黒色部分がシリカ相である(以下、特に断りが無ければ、同様である。)。明確な第1のモルホロジーが見られた。
図3の左側の写真は、実施例6(シリカ分率31.7%)の結果を示し、図3の右側の写真は、実施例12(シリカ分率31.6%)の結果を示す。何れの場合も、明確な第1のモルホロジーが見られた。
図4の左側の写真は、実施例3(シリカ分率41.1%)の結果を示し、図4の右側の写真は、実施例11(シリカ分率48.0%)の結果を示す。何れの場合も、第2のモルホロジーが見られた。
図5の左側の写真は、実施例1(シリカ分率58.2%)の結果を示し、図5の右側の写真は、実施例10(シリカ分率58.1%)の結果を示す。何れの場合も、第3のモルホロジーが見られた。
図6の左側の写真は、実施例4(シリカ分率73.6%)の結果を示し、図5の右側の写真は、実施例13(シリカ分率73.5%)の結果を示す。何れの場合も、第3のモルホロジーが見られた。
図7の左側の写真は、実施例5(シリカ分率80.7%)の結果を示し、図5の右側の写真は、実施例14(シリカ分率80.6%)の結果を示す。何れの場合も、第3のモルホロジーが見られた。
図8の左側の写真は、実施例8(シリカ分率84.7%)の結果を示し、図5の右側の写真は、実施例15(シリカ分率84.7%)の結果を示す。何れの場合も、第3のモルホロジーが見られた。
図9の写真は、実施例9(シリカ分率87.4%)の結果を示す。第3のモルホロジーが見られた。
以上の図1〜9の結果から、相分離がMolau則に従っていることが示唆された。
図10の写真は、実施例6(シリカ分率31.7%)の結果を示す。図10の左側の写真は無染色の場合の結果であり、右側の写真はOsO4染色を行った場合の結果である。したがって、右側の写真では、PBDとシリカ相の双方が染色されているはずである。図10の左側の写真、右側の写真の何れにおいても本質的に同一の構造が見られたので、PBD中にシリカが分散してシリカ相を形成することが確認された。本発明の構成を限定するものではないが、エポキシ基の局在したドメインにポリシラザンが集結したためであると考えられた。
[鉛筆硬度の評価]
鉛筆硬度の測定はPET基板(東レ社製、商品名「ルミラーS10」)にコートした複合体についてJISK5600−5−4に基づき、室温(25±2℃)で行った。その結果を下記表4に記載する。
実施例13のように、シリカの分率を74重量%まで上昇させて加熱した場合、表面硬度がブロック共重合体単体の2Bから4Hに増加した。すなわちシリカ分率74重量%では、シリカが表面硬度を支配したといえる。
[水蒸気透過度の評価]
水蒸気透過度測定の試料は、下記表5記載の厚みのポリビニルアルコールの基板(PVA基板)に、下記表5記載のコート膜厚で混合溶液をコートして作製した。水蒸気透過度は、カップ法により、膜面積9.075×10-42、相対湿度58%、水蒸気圧13.30〜13.62mmHgの条件で測定した。なお、コート無しで同様の測定を行ったものを比較例3とした。その結果を下記表5に記載する。
表5に記載した結果から、シリカの添加により、水蒸気透過度が落ちる、つまりバリア性が向上することが示された。また、より小さい水蒸気透過度を得る、つまり高いバリア性を得るという観点からは、芳香族溶媒は、トルエンよりエチルベンゼンが好ましいことが示された。
[複合膜透過率の評価]
混合溶液を、PET基板(東レ社製、商品名「ルミラーS10」)又はスライドガラス(松浪硝子工業社製、商品名「ミクロスライドガラスS−1226」)にスピンコートし、厚み1.0mmの複合膜を作成した。以下に具体的に述べる方法で透過率を評価した結果、得られた複合膜はシリカ分率(14〜80重量%)及び溶媒の種類によらず透明であることが示された。
(1.測定波長600nmにおける透過率評価)
表6に示したサンプル1〜5について、サイズ76×26mmとして、紫外可視分光光度計(日本分光社製、商品名「V−530」)を用いて、空気をリファレンスとして、測定波長600nmにおける透過率を測定した。結果を以下の表6に示す。
(2.測定波長800〜300nmにおける透過率評価)
サイズ76×26mmのサンプルについて、紫外可視分光光度計(日本分光社製、商品名「V−530」)を用いて、測定領域800〜300nm、走査速度200nm/minで、空気をリファレンスとして、透過率を測定した。表6記載のサンプル1、2及び3について測定した結果を図11に、表6記載のサンプル4及び5について測定した結果を図12に示す。
これらの透過率評価結果から、得られた複合膜は充分な透明性を有することが示された。
[ポリスチレン−シリカナノ複合体のFT−IR解析]
複合体のFT−IR解析を行い、複合体中の官能基の反応を検討した。混合溶液では、2180cm-1付近のSi−H基が残存していることがわかった。測定後、サンプルを600℃、7時間、過酸化水素水溶液存在下で加熱することにより、Si−H基の消失が確認された。すなわち、加熱に伴い複合体中のPHPSがシリカに転化することがわかった。
以上の結果から、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体にPHPSを添加することで、精密なモルホロジーを持つ複合体が得られ、バリア性及び透明性の高い複合膜が得られ、さらに、溶媒の種類、サンプルの加熱により、平滑なコート膜や高い表面硬度を得られることが明らかになった。
本発明のコーティング組成物によれば、微細な構造が安定的に形成され、高い透明性を有し、向上したバリア性を有し、シラン化合物の濃度を上げることができるシリカ複合膜を製造できるため、特に、層間絶縁膜等の絶縁膜、ハードコート材料、封止材料、ビルトアップ基材、反射防止膜、触媒担持構造体等として有用である。

Claims (5)

  1. 互いに非相溶である複数のセグメントからなる共重合体(X)のミクロ相分離構造を鋳型としてシリカ相が分散形成されたことを特徴とするシリカ複合材料。
  2. 前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する請求項1記載のシリカ複合材料。
  3. 前記シリカ相がポリシラザンによって形成されたものである請求項1又は2記載のシリカ複合材料。
  4. 互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、
    ポリシラザンと、
    乾燥溶媒と、
    芳香族溶媒とを少なくとも含むことを特徴とするコーティング組成物。
  5. (1)
    互いに非相溶である複数のセグメントからなり、前記セグメントの少なくとも1つがエポキシ基を有する共重合体(X’)と、
    ポリシラザンと、
    乾燥溶媒と、
    芳香族溶媒とを少なくとも含む混合物を、
    不活性雰囲気下でコーティング組成物に調製するコーティング組成物調製工程と、
    (2)
    前記コーティング組成物を塗膜する塗膜工程と、
    (3)
    前記塗膜工程後に、加湿条件下でポリシラザンをシリカに転化するシリカ転化工程とを有することを特徴とするシリカ複合膜の製造方法。
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