JP2014049683A - 静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法 - Google Patents

静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加工精度が高い開口を有する静電レンズを少ない工程で作製するための、静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法を提供する。
【解決手段】一層又は二層の電極層11と、一層のスペーサ基板12と、を有する静電レンズ部材の製造方法において、スペーサ基板12の一方又は両方の面に、開口21を有する電極層11を形成する工程と、スペーサ基板12に、電極層11が有する開口21よりも小さい径の貫通孔22aを形成する工程と、貫通孔22aの周縁にあるスペーサ基板12を選択的にエッチングすることで貫通孔22aを拡充してスペーサ基板12が有する開口22を形成する工程と、を含むことを特徴とする、静電レンズ部材の製造方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、荷電粒子線露光機等に用いられる荷電粒子線静電レンズ(以下、静電レンズ)を構成する静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法に関する。
荷電粒子線レンズ、特に、電子線レンズには大きく分けて電磁レンズと静電レンズとがある。その中でも静電レンズは、磁界レンズに比べて構成がシンプルであるため小型化や高集積化を行う際に有利である。
ところで電子ビーム露光装置に用いられている静電レンズは、例えば、いわゆるアインツェルレンズが一般的に用いられている。アインツェルレンズは3枚の電極及び電極と電極との間に設けられるスペーサ部材で構成されているが、スペーサ部材は、電極と電極との間を電気的に絶縁するための部材である。また3枚の板状の電極のうち、上下両端の2枚の電極には通常アース電位が付与されており、中間の電極には負又は正の電位が印加されている。また各電極には円形の開口があいており、その開口を通過する電子ビームに対してアインツェルレンズは収束効果を発生する。
このように、静電レンズは、電磁レンズと比較して構成がシンプルであるため一般的に製作は容易である。しかし静電レンズは、レンズに含まれる電極に設けた開口の製造誤差に対する光学収差の敏感度が高いことも知られている。つまり静電レンズは、電極に設けた開口の形状が設計値からずれが生じるとそのずれが光学収差にもろに影響する。特に、開口端面の真円度は非点収差の敏感度が高い。つまり開口端面の真円度が悪くなると静電レンズによって収束された電子ビームは、非点収差やその他高次項の収差を持ってしまう。一方、スペーサ部材にも開口が設けられているが、電極が有する開口の口径よりも大きいのが一般的であり、その開口の真円度の良否は電極に設けられている開口ほど厳密に要求されていない。従って、良質の静電レンズを作製する際には、電極が有する開口を精密に形成する技術が要求されることとなる。
特許文献1には、静電レンズ電極の開口を高精度で形成する方法として、SOI基板のボックス層をエッチングストップ層として利用しつつSOI基板のデバイス層を加工して静電レンズ電極が有する開口を精度よく形成する方法が提案されている。
特許第4541798号公報
特許文献1の方法では、SOI基板を使用しているため、静電レンズ電極が有する開口を高精度で加工することができる。しかし、SOI基板は高価であるため、主に材料費に因むコストが増大する。また三層の電極層と電極層間に設けられる合計二個のスペーサ部材を作製してそれらを組み立てて静電レンズを作製しようとすると組み立て工数が増大し、これが製造誤差の増大とコストの増大につながる。従って、静電レンズ電極が有する開口を高精度に加工することとコストダウンを両立させなければいけないことになる。
本発明は上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、加工精度が高い開口を有する静電レンズを少ない工程で作製するための、静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法を提供することにある。
本発明の静電レンズ部材の製造方法の第一の態様は、一層又は二層の電極層と、一層のスペーサ基板と、を有する静電レンズ部材の製造方法において、
前記スペーサ基板の一方又は両方の面に、開口を有する電極層を形成する工程と、
前記スペーサ基板に、前記電極層が有する開口よりも小さい径の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることで前記貫通孔を拡充して前記スペーサ基板が有する開口を形成する工程と、を含むことを特徴とする、静電レンズ部材の製造方法。
本発明の静電レンズ部材の製造方法の第二の態様は、一層又は二層の電極層と、一層のスペーサ基板と、を有する静電レンズ部材の製造方法において、
前記スペーサ基板に貫通孔を形成する工程と、
前記スペーサ基板の一方又は両方の面に、前記貫通孔を設ける位置に対応するように設けられ、かつ前記貫通孔よりも径が大きい開口を有する電極層を形成する工程と、
前記貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることで前記貫通孔を拡充して前記スペーサ基板が有する開口を形成する工程と、を含むことを特徴とする、静電レンズ部材の製造方法。
本発明によれば、加工精度が高い開口を有する静電レンズを少ない工程で作製するための、静電レンズ部材及び静電レンズの製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法によって製造される静電レンズ部材の例を示す模式図であり、(a)は、平面図、(b)及び(c)は、(a)中のAA’断面を示す断面図である。 本発明の製造方法によって製造される静電レンズの例を示す断面模式図である。 本発明の静電レンズ部材の製造方法における第一の実施形態を示す断面模式図である。 本発明の静電レンズ部材の製造方法における第二の実施形態を示す断面模式図である。 真円度の定義を示す図である。 本発明の静電レンズの製造方法における実施形態の例を示す断面模式図である。 実施例2における電極層が有する開口の形成プロセスの例を示す断面模式図である。
本発明の製造方法は、荷電粒子線レンズである静電レンズ及びこの静電レンズの前駆体である静電レンズ部材の製造方法である。ここで静電レンズ部材は、一層又は二層の電極層と、一層のスペーサ基板と、を有する部材である。
本発明に係る静電レンズ部材の製造方法は、下記工程(A)乃至(C)の工程を含んでいる。
(A)スペーサ基板の一方又は両方の面に、開口を有する電極層を形成する工程(電極層形成工程)
(B)スペーサ基板に、電極層が有する開口よりも小さい径の貫通孔を形成する工程(貫通孔形成工程)
(C)貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることでスペーサ基板が有する貫通孔を拡充してスペーサ基板が有する開口を形成する工程(貫通孔拡充工程)
ただし、貫通孔形成工程を行うタイミングは、必ずしも電極層形成工程と貫通孔拡充工程との間に限られない。下記工程(A’)乃至(C’)に示されるように、貫通孔形成工程を電極層形成工程よりも先に行ってもよい。
(A’)スペーサ基板に貫通孔を形成する工程(貫通孔形成工程)
(B’)スペーサ基板の一方又は両方の面に、貫通孔を設ける位置に対応するように設けられ、かつ貫通孔よりも径が大きい開口を有する電極層を形成する工程(電極層形成工程)
(C’)貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることで貫通孔を拡充してスペーサ基板が有する開口を形成する工程(貫通孔拡充工程)
以下、適宜図面を参照しながら、本発明について説明する。
[静電レンズ部材]
図1は、本発明の製造方法によって製造される静電レンズ部材の例を示す模式図であり、(a)は、平面図、(b)及び(c)は、(a)中のAA’断面を示す断面図である。
本発明の製造方法によって製造される静電レンズ部材1は、例えば、図1(a)乃至(c)に示されるように、一層又は二層の電極層11とスペーサ基板12とからなる円盤状の部材である。尚、静電レンズ部材1が二層の電極層11を有している場合、スペーサ基板12は、図1(c)に示されるように、二層の電極層11の間に配置される。
また静電レンズ部材1は、電極層11が有する平面円形状の開口21と、スペーサ基板12が有する平面円形状の開口22と、が連通してなる連通孔20を有している。本発明において、開口21の半径は特に限定されない。また図1(c)のように電極層11が複数ある場合、各電極層(11a、11b)が有する各開口(21a、21b)の口径は、それぞれ異なっていても、同じであっても構わない。ただし、各開口(21a、21b)のうちいずれかの口径は、スペーサ基板12が有する開口22の口径よりも小さくするのが好ましい。さらにレンズの収差の観点から、荷電粒子線の進行方向と平行である開口21及び貫通孔22の中心軸は重なっていることが望ましい。
[静電レンズ]
図2は、本発明の製造方法によって製造される静電レンズの例を示す断面模式図である。本発明において、静電レンズ2は、二枚の静電レンズ部材を貼り合わせることによって作製される。具体的には、下記(2a)及び(2b)の態様がある。
(2a)図1(c)の静電レンズ部材1cを2枚用意してこれらを貼り合わせることによって形成される静電レンズ2a(図2(a))
(2b)図1(b)の静電レンズ部材1bと、図1(c)の静電レンズ部材1cと、を1枚ずつ用意してこれらを貼り合わせることによって形成される静電レンズ2b(図2(b))
尚、静電レンズ部材を貼り合わせる際に、レンズの収差の観点から、荷電粒子線の進行方向と平行である開口21及び貫通孔22の中心軸は重なっていることが望ましい。また静電レンズ2を構成する電極層のうち、静電レンズ2の内部に位置する電極層は、図2(a)及び(b)に示されるように、一層であってもよいし、二層であってもよい。
[静電レンズ部材の製造方法]
次に、本発明の静電レンズ部材の製造方法の好適な実施形態について説明する。
<第一の実施形態>
図3は、本発明の静電レンズ部材の製造方法における第一の実施形態を示す断面模式図である。以下、図3に基づいて本発明の静電レンズ部材の製造プロセスについて説明する。
(1−1)電極層形成工程(図3(a)乃至図3(c))
電極層11を形成するのに必要なスペーサ基板12(図3(a))は、静電レンズの上下面に設けられている二層一組の電極層間に印加する高電圧を絶縁する機能を備えることを要する。スペーサ基板12の材質として、具体的には、ガラスやセラミックス等の絶縁体が挙げられる。またこの絶縁体に加えて、帯電を防止する目的で電極に対して十分に大きな抵抗値を有する高抵抗膜を絶縁体表面に形成してもよい。さらにスペーサ基板12として、十分に大きな抵抗値を有する高抵抗体を用いてもよい。
本実施形態においては、スペーサ基板12の一方又は両方の面に電極層11を成膜する(図3(b))。スペーサ基板12の面上に成膜される電極層12は、静電レンズの上下面に設けられている一組の電極の間で印加された高電圧を安定に規定する目的で設けられる。電極層11の構成材料としては、スペーサ基板12に対して抵抗値が十分に低いことが求められる。電極層11の構成材料として、具体的には、金属材料、金属材料を複数種組み合わせてなる合金、各種半導体等からが挙げられる。本発明においては、後述するようにガラスからなるスペーサ基板12をフッ酸でエッチングするため、電極層11としては、耐フッ酸性のある材料からなる層であることが好ましい。耐フッ酸性のある材料として、Siが挙げられるが、スペーサ基板12と電極層11とのエッチング選択比がとれる組み合わせであれば、特に限定されるものではなく他の組み合わせでもよい。ここで電極層11としてSi膜を形成した場合、Si膜の抵抗値を低くするためにp型もしくはn型の不純物ドープを行うことが好ましいが、ドープ方法に関しては限定されない。
スペーサ基板12の一方又は両方の面に電極層11を成膜した後、成膜した電極層11を加工して、電子ビームを通過させるための開口21を電極層11に形成する(図3(c))。本発明において、電極層11が有する開口21の形状は、静電レンズの収差に直接影響するため、開口21の形状は真円度が小さい円形状にすることが好ましい。尚、本発明において、電極層11が有する開口21の好ましい真円度については、後述する。
(1−2)貫通孔形成工程(図3(d))
以上のプロセスで開口21を有する電極層11を形成した後、スペーサ基板12を加工して、スペーサ基板12に貫通孔22aを形成する(図3(d))。このとき、貫通孔22aの口径は、電極層11が有する開口21の口径より小さくする。本工程において貫通孔22aを形成する際には、スペーサ基板12の材質を考慮したエッチング等によるスペーサ基板12の加工方法を用いて貫通孔22aを形成する。
尚、本工程において貫通孔22aの形状は開口21と同様に円形状ではあるが、円形の精密度を示す真円度については、電極層11が有する開口21程には要求されない。
(1−3)貫通孔拡充工程(図3(e))
次に、貫通孔形成工程(図3(d))においてスペーサ基板12に設けられた貫通孔22aの口径を大きくして、スペーサ基板12が有する開口22を形成する。具体的には、スペーサ基板12に設けられた貫通孔22aの周縁を選択的にエッチングして加工する。これにより貫通孔22aよりも径が大きい開口22がスペーサ基板12に形成されることになる(図3(e))。
図3(e)に示されるように、本工程において形成される貫通孔22の径は、電極層11が有する開口21の径よりも大きくなり、開口21の端部は貫通孔22の端部から突出する。このように、開口21の端部を貫通孔22の端部から突出させるのは、開口21や貫通孔22を電子線が通過する際に貫通孔22の側壁に電子線が衝突する確率を小さくするためである。つまり貫通孔22を通過する電子線から見て、貫通孔22の側壁を電極層11に設けられる開口21で隠すことになり、スペーサ基板12が絶縁性であっても貫通孔22の側壁に電子線が衝突することによって生じる帯電をおおよそ防止することができるためである。
さらにスペーサ基板12における帯電防止効果を高めるために、貫通孔22の側壁に十分に大きな抵抗値を有する材料からなる高抵抗膜を設ける工程を、本工程(貫通孔拡充工程)の後に追加して行ってもよい。又はスペーサ基板12の材料を、電極に対して十分に大きな抵抗値を有する高抵抗体としても、同様にスペーサ基板12における帯電防止効果が得られる。
ただし本発明の製造方法にて製造された静電レンズ部品は、図1(e)に示されるように、スペーサ基板12に設けた貫通孔22の径よりも電極層11に設けた開口21の径が小さい。このため、貫通孔22の側壁のうち電極層11の近傍部分について高抵抗膜(帯電防止膜)を成膜するのは難しい。しかしながら貫通孔22の側壁に設けるべき高抵抗膜の厚みは非常に薄くてもよい。また成膜の指向性が少ないLPCVD法を用いると開口21の裏面にも膜の構成材料が回りこむという利点がある。このためLPCVD法を用いることで貫通孔22の側壁のうち電極層11の近傍部分についても高抵抗膜(帯電防止膜)を少なくとも薄い薄膜として成膜することが可能である。
<第二の実施形態>
図4は、本発明の静電レンズ部材の製造方法における第二の実施形態を示す断面模式図である。以下、図4に基づいて本発明の静電レンズ部材の製造プロセスについて、第一の実施形態との相違点を中心に説明する。
(2−1)貫通孔形成工程(図4(a)乃至図4(b))
本工程において、貫通孔を形成するスペーサ基板12(図4(a))として、第一の実施形態にて説明した絶縁体を使用することができる。
また本工程にてスペーサ基板12に貫通孔22aを設ける(図4(b))方法としては、第一の実施形態での貫通孔形成工程にて説明した方法を利用することができる。
(2−2)電極層形成工程(図4(c)乃至図4(d))
貫通孔22aを形成した後、スペーサ基板12の一方又は両方の面に電極層11を成膜する(図4(c))。尚、成膜された電極層11は、図4(c)に示されるように、貫通孔22aが形成されている領域において層の不連続部分11aが部分的に生じたとしても本発明においては問題ない。成膜された電極層11を加工して、電極層11が有する開口21を形成する際(図4(d))にこの不連続部分11aが開口21の一部となるからである。
本工程において、電極層11の形成方法及び開口21の形成方法(電極層11の加工方法)としては、第一の実施形態にて説明した方法と同様の方法を利用することができる。尚、例えば、フォトリソプロセスにより開口21を形成する際には、プロセスにおいて使用される材料・溶媒によって貫通孔22aの形状が変形しないようにこの貫通孔22aを一旦保護することが好ましい。
(2−3)貫通孔拡充工程(図4(e))
開口21を有する電極層11を形成した後、貫通孔22a周縁にあるスペーサ基板12を加工して、スペーサ基板12が有する開口22を、貫通孔22aよりも口径が大きい開口として形成する(図4(e))。本工程において、スペーサ基板12が有する開口22の口径は、第一の実施形態と同様に電極層11が有する開口21の口径よりも大きくする。
本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、スペーサ基板12が有する開口22を形成した後、この開口22の側壁に高抵抗膜(帯電防止膜)を成膜する工程を行ってもよい。
<開口の真円度>
本発明において、静電レンズ部材1に含まれる電極層11が有する開口21の形状は、静電レンズの収差に直接影響するため、特に重要である。本発明において、開口21の形状は、真円度の小さい円形状である。
図5は、真円度の定義を示す図である。図5(a)のように開口21の形状が楕円である場合、真円度は楕円の内接円と外接円とを用いて定義される。即ち、楕円が接する外接円の半径と楕円が接する内接円の半径との差が真円度となる。図5(b)のような任意図形の場合では、当該図形全体を内側に含む円と当該図形の内部に含まれる円と、を一組の同心円として決定され、それぞれの円の半径の差が最小となるように同心円の中心を決めた時の半径の差が真円度となる。
静電レンズを構成する電極層11の開口は、真円度が小さいほど好ましい。最先端の半導体製造に用いられる電子ビーム露光装置に要求されるウエハ上でのパターン解像度は10nm乃至30nmである。これを実現するために荷電粒子線装置に備えられる静電レンズを構成する電極層11が有する開口21の真円度は、好ましくは、100nm以下である。
[静電レンズの製造方法]
図6は、本発明の静電レンズの製造方法における実施形態の例を示す断面模式図である。
本発明の静電レンズの製造方法は、静電レンズ部材を作製する工程と、静電レンズ部材を貼り合わせる工程と、を有している。
ここで静電レンズ部材を作製する工程は、本発明の静電レンズ部材の製造方法に従って二枚の静電レンズ部材を製造する工程である。尚、二枚の静電レンズ部材の詳細は、後述する実施形態にて説明する。
<第一の実施形態>
図2(a)に示される静電レンズ2aを作製する際には、図1(c)の静電レンズ部材1cを2枚用意してこれらを貼り合わせる(図6(a−1)、(a−2))。静電レンズ部材1c同士を貼り合わせる方法としては、一般的な接着剤を用いて静電レンズ部材1c同士を貼り合わせる方法、接合法を用いて静電レンズ部材1c同士を貼り合わせる方法等が挙げられる。ここで本実施形態における静電レンズ部材の貼り合わせ工程は、図6(a−2)に示されるように、静電レンズ部材1cを二枚用意して貼り合わせる工程である。具体的には、各静電レンズ部材1cが有する電極層同士(電極層11と電極層11)を貼り合わせる工程である。
尚、静電レンズ2aを作製する際には、静電レンズ部材1cが有する電極層11同士の接触を考慮して電極層11が有する開口21の大きさを適宜設計するのが好ましい。具体的には、図6(a)に示されるように、静電レンズの中央に位置する電極層11が有する開口21の形状を保存させる目的で、接触させる側の面に設けられる電極層11の開口の大きさを互いに異なるように設計するのが好ましい。より好ましくは、用意する二枚の静電レンズ部材1cのうち一枚は、静電レンズの中央に位置する面側に設けられる電極層11が有する開口21の径を貫通孔22よりも大きくして、もう一枚は該当する開口21の径を貫通孔22よりも小さくする。静電レンズ部材1c同士を貼り合わせる際に部材間の位置ずれを全くなくすことはできないが、貼り合わせる部材二枚のうち一枚において静電レンズの中央に位置する電極層が有する開口を他の部材に接触させないようにしておく。これにより、静電レンズの中央に位置する電極層に設けた開口の精度が悪くなるのを防ぐことができる。
一方、静電レンズ2aの最表層として設けられている電極層11が有する開口21は、その径の大きさを揃えるのが好ましい。
以上の方法により電極層11に設けた開口21の精度がよい静電レンズ2aを製造することができる。
<第二の実施形態>
図2(b)に示される静電レンズ2bを作製する際には、図1(c)の静電レンズ部材1c(第一静電レンズ部材)と、図1(b)の静電レンズ部材1b(第二静電レンズ部材)と、を1枚ずつ用意してこれらを貼り合わせる(図6(b−1)、(b−2))。ここで本実施形態における静電レンズ部材の貼り合わせ工程は、図6(b−2)に示されるように、静電レンズ部材1b一枚と静電レンズ部材1c一枚とを用意して貼り合わせる工程である。具体的には、静電レンズ部材1bが有するスペーサ基板12と静電レンズ部材1cが有する電極層11とを貼り合わせる工程である。
尚、静電レンズ2bにおいて、静電レンズ部材1cに備える電極層11が有する開口21は、スペーサ基板12が有する開口22よりも口径が小さくなるように作製する。こうすればスペーサ基板12と接触することはないため静電レンズ2bの中央に位置する電極層11に設けた開口21の精度が悪くなることはない。一方、静電レンズ2bの最表層として設けられている電極層11が有する開口21は、その径の大きさを揃えるのが好ましい。
図3に示される製造プロセスに基づいて、ホウケイ酸ガラス基板からなるスペーサ基板12とSi膜からなる電極層11を有する静電レンズ部材を作製した。
(1−1)電極層形成工程(図3(a)乃至図3(c))
本実施例(実施例1)では、直径4インチ厚み200μmのホウケイ酸ガラスウエハ(以下、ガラスウエハと表記することがある。)を、スペーサ基板12(図3(a))として用いた。
次に、LPCVD法を用いて、ガラスウエハの両面にSiを成膜してSi膜(PolySi膜)を形成した。このときSi膜の厚みは5μmであった。
次に、Si膜の上にフォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成した後、RIE等のドライエッチングによってSi膜をエッチングした。次に、レジストを剥離することで所望の領域に開口21を有するSi膜(電極層11)を得た。このとき開口21の口径は120μmであった。尚、本実施例では、ガラスウエハの両面にそれぞれ設けられているSi膜をそれぞれ加工する必要があるが、Si膜の加工については片面ずつ行った。また開口21を形成する際に各電極層11に設ける開口21の位置を合わせるために、パターンの一部にアライメントマークを設けた。さらに、レジスト層を露光する際には、一般的な両面露光装置を使用した。
(1−2)貫通孔形成工程(図3(d))
次に、サンドブラスト法により、開口21を設けたことによって露出したガラスウエハの一部を加工して貫通孔22aを形成した。このとき貫通孔22aの径は100μmであり、この貫通孔22aは、平面から見て電極層11に含まれる開口21の内側に含まれていた。
尚、サンドブラスト法を用いる際には、フォトリソプロセスを用いて、サンドプラストに耐えるマスク(ドライフィルムレジスト)を、貫通孔22aを設ける領域以外の領域に前もって形成した。また本工程において、貫通孔22aの口径は開口21の口径よりも小さいため、上記マスク(ドライフィルムレジスト)によって開口21の端部は保護される。次に、マスクとして使用したレジストを剥離した。
(1−3)貫通孔拡充工程(図3(e))
次に、緩衝フッ酸を用いたエッチングにより、ガラスウエハを選択的に加工し、貫通孔22aを拡充することでスペーサ基板12であるガラスウェハが有する開口22を形成した。このときガラスウェハ(スペーサ基板12)が有する開口22の口径は130μmであった。ここで本工程で使用した緩衝フッ酸は、ガラスウェハのエッチングレートが電極層11を構成するSiよりも大きいためSi膜(電極層11)に損傷を与えることなく、貫通孔22aの周縁にあるガラスウエハを選択的にエッチングすることができる。またこのエッチングは等方的に進み、貫通孔22aの径は均一に大きくなった。
以上により、図1(c)に示される静電レンズ部材を得た。
図4に示される製造プロセスに基づいて、ホウケイ酸ガラス基板からなるスペーサ基板12とSi膜からなる電極層11を有する静電レンズ部材を作製した。
(2−1)貫通孔形成工程(図4(a)乃至図4(b))
実施例1と同様のガラスウエハ(ホウケイ酸ガラスウェハ)を、スペーサ基板12(図4(a))として用いて、サンドプラスト法を用いて所定の領域に貫通孔22aを形成した。このとき貫通孔22aの口径は、100μmであった。
(2−2)電極層形成工程(図4(c)乃至図4(d))
次に、実施例1と同様の方法により、抵抗値が低いSi膜を形成した。尚、本実施例(実施例2)では、ガラスウエハの一部に貫通孔22aが設けられているため、貫通孔22aの内側にSi膜の一部が回り込んでいた。
次に、フォトリソプロセスを利用して、Si膜の所定の領域に開口21を、図7に基づいて形成した。
まずガラスウエハの両面にそれぞれ成膜されているSi膜上に、ドライフィルム31を貼り付けた(図7(a))。尚、このドライフィルム30は、貫通孔22aの内部にレジストが侵入することを防ぐ役割を果たす。次に、フォトリソプロセスを利用してドライフィルム31を加工して貫通孔22aを連通させた(図7(b))。次に、CDE等の等方性ドライエッチングにより、貫通孔22aの内側に付着したSi膜を除去した(図7(c))。次に、ドライフィルム31を剥離した後、別のドライフィルム32を貼り付け、フォトリソプロセスを利用してドライフィルム32を加工して貫通孔22aを連通させた(図7(d))。次に、ドライエッチングにより、Si膜(電極層11)を加工し、開口21を形成した後、レジストとして使用したドライフィルム32を剥離した。以上に説明した工程によって形成された開口21の口径は120μmであった。
(2−3)貫通孔拡充工程(図4(e))
実施例1と同様の方法により、貫通孔22aの周縁にあるガラスウエハを選択的にエッチングして貫通孔の径を大きくすることで、ガラスウェハ(スペーサ基板12)が有する開口22を口径130μmで形成した。
以上により、図1(c)に示される静電レンズ部材を得た。
実施例1又は2で作製した静電レンズ部材について、絶縁性のスペーサ基板12に設けられている貫通孔22の側壁に電子線が衝突することによって生じる帯電を防止するために、貫通孔22の側壁に高抵抗膜を成膜した。
LPCVD法を用いて、実施例1又は2で作製した静電レンズ部材を構成するスペーサ基板12が有する開口22の側壁にSiを成膜して帯電防止膜を形成した。このとき帯電防止膜の膜厚は20nm〜50nmであった。
尚、帯電防止膜として形成されるSi膜は、ドーピングなしの真性半導体でもよいし、電極層よりも十分抵抗値が高くなる範囲で不純物をドーピングしてp型又はn型の半導体でもよい。ここで帯電防止膜として不純物がドーピングされた半導体を形成する場合、例えば、LPCVD法においてSi膜を成膜するために必要なSiH4ガスに加えてPH3等の不純物ガスを適宜導入することにより得られる。
1(1b、1c):静電レンズ部材、2(2a、2b):静電レンズ、11:電極層、12:スペーサ基板、20:連通孔、21(21a、21b):(電極層が有する)開口、22:(スペーサ基板が有する)開口、22a:貫通孔、31(32):ドライフィルム

Claims (7)

  1. 一層又は二層の電極層と、一層のスペーサ基板と、を有する静電レンズ部材の製造方法において、
    前記スペーサ基板の一方又は両方の面に、開口を有する電極層を形成する工程と、
    前記スペーサ基板に、前記電極層が有する開口よりも小さい径の貫通孔を形成する工程と、
    前記貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることで前記貫通孔を拡充して前記スペーサ基板が有する開口を形成する工程と、を含むことを特徴とする、静電レンズ部材の製造方法。
  2. 一層又は二層の電極層と、一層のスペーサ基板と、を有する静電レンズ部材の製造方法において、
    前記スペーサ基板に貫通孔を形成する工程と、
    前記スペーサ基板の一方又は両方の面に、前記貫通孔を設ける位置に対応するように設けられ、かつ前記貫通孔よりも径が大きい開口を有する電極層を形成する工程と、
    前記貫通孔の周縁にあるスペーサ基板を選択的にエッチングすることで前記貫通孔を拡充して前記スペーサ基板が有する開口を形成する工程と、を含むことを特徴とする、静電レンズ部材の製造方法。
  3. 前記電極層のうち少なくとも一層の電極層が有する開口の口径が、前記スペーサ基板が有する開口の口径よりも小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の静電レンズ部材の製造方法。
  4. 前記電極層が有する開口の真円度が100nm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電レンズ部材の製造方法。
  5. 静電レンズ部材を作製する工程と、
    前記静電レンズ部材を貼り合わせる工程と、を有し、
    前記静電レンズ部材を作製する工程が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電レンズ部材の製造方法に従って静電レンズ部材を製造する工程であり、
    前記静電レンズ部材を作製する工程にて作製される静電レンズ部材が、それぞれ開口を有する二層の電極層と、前記二層の電極層の間に設けられ、かつ開口を有するスペーサ基板と、を有する第一静電レンズ部材、及び開口を有する一層の電極層と、開口を有するスペーサ基板と、を有する第二静電レンズ部材であり、
    前記静電レンズ部材を貼り合わせる工程が、前記第一静電レンズ部材が有する電極層と前記第二静電レンズ部材が有するスペーサ基板と貼り合わせる工程であることを特徴とする、静電レンズの製造方法。
  6. 前記第一静電レンズ部材が有する二層の電極層及び前記第二静電レンズ部材が有する電極層がそれぞれ有する開口のうちのいずれかの口径が、前記第一静電レンズ部材に含まれるスペーサ基板及び前記第二静電レンズ部材に含まれるスペーサ基板がそれぞれ有する開口のいずれよりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の静電レンズ部品の製造方法。
  7. 静電レンズ部材を作製する工程と、
    前記静電レンズ部材を貼り合わせる工程と、を有し、
    前記静電レンズ部材を作製する工程が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電レンズ部材の製造方法に従って静電レンズ部材を製造する工程であり、
    前記静電レンズ部材を作製する工程にて作製される静電レンズ部材が、それぞれ開口を有する二層の電極層と、前記二層の電極層の間に設けられ、かつ開口を有するスペーサ基板と、を有する静電レンズ部材であり、
    前記静電レンズ部材を貼り合わせる工程が、前記静電レンズ部材を二枚用意して、各前記静電レンズ部材が有する電極層同士を貼り合わせる工程であることを特徴とする、静電レンズの製造方法。
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