JP2014048242A - 眼鏡レンズの製造方法及び眼鏡レンズの評価方法 - Google Patents

眼鏡レンズの製造方法及び眼鏡レンズの評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レンズ基材の切削面の表面性状を評価し、表面のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータに着目することで、眼鏡レンズの表面に視認できる痕が形成されているか否かを数値化して明確に評価する方法、及び該評価方法を用いて、レンズ基材の研磨工程が与える工程上の負荷を軽減できる眼鏡レンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】眼鏡レンズの光学面に対応する表面を有するレンズ基材を準備する準備工程と、該表面の少なくとも一方の面を切削加工して切削面を得る切削工程と、切削面の表面性状を測定する表面性状測定工程と、表面性状の測定結果に基づき切削面のうねり曲線を算出する第1算出工程と、算出されたうねり曲線から振幅および波長に関するパラメータを算出する第2算出工程と、これらのパラメータを用いてレンズ基材の良否を評価する評価工程と、を有する眼鏡レンズの製造方法。
【選択図】図7

Description

本発明は、眼鏡レンズの製造方法及び眼鏡レンズの評価方法に関する。詳しくは、レンズ基材の切削面のうねり曲線に着目した眼鏡レンズの評価方法及び該評価方法を用いた眼鏡レンズの製造方法に関する。
眼鏡レンズの光学面は、高い面精度が要求される。このため、従来の光学面は、機械加工を用いた切削加工及び研磨加工によって創成されていた(例えば、本出願人による特許文献1参照)。
しかしながら研磨工程では、専用機器及び多数の工具が必要となる。なぜなら、研磨工程においては、切削加工においてレンズ基材の光学面に対応する部分に形成された切削面に対し、工具の形状を合わせる必要があるためである。仮に、工具の形状と切削面とが上手く合わなければ、機械加工された表面を過度に変形させることになり、ひいては、表面の種々の箇所の曲率が損なわれることになる。
その一方、眼鏡レンズには、従来の球面とトーリック面構成の単焦点レンズ、非球面形状の単焦点レンズ、度数が表面上変化する累進レンズ等々、多岐に亘る種類が存在する。更に近年、同一度数のレンズでも、装用者の個別パラメータによって異なる形状の面を使用するいわゆる個別対応レンズも登場している。つまり、眼鏡レンズは装用者のオーダーメイド(カスタムメイド)で製造されるものであり、個々の装用者の処方が反映されていることから、眼鏡レンズの表面を極めて複雑な形状に形成する必要がある。そのため、工具の形状と切削面とを合わせる際に、極めて精緻に研磨を行う必要もあるし、所定の形状を有する工具を細かく分類して多数用意する必要もある。研磨工程を行うだけでも、眼鏡レンズの製造工程において相当な時間を費やすことになり、費用もかかる。その結果、最終製品の眼鏡レンズにその分のコストを上乗せしなければならず、眼鏡レンズの製造者のみならず、眼鏡レンズの装用者にとっても負担が増大してしまう。
そこで、近年では、上記の研磨工程を省略するための試みがなされている(例えば、特許文献2〜5参照)。
本出願人による文献であって、眼鏡レンズに関する特許文献2においては、表面粗さRtが0.05μm以下であれば機械加工による切削痕(以降、単に「切削痕」とも言う。)は作業者の肉眼では視認不可能のはずだったが、日本工業規格(JIS)が推奨する光源(超高圧水銀灯)で検査したところ、表面粗さRtが0.05μm以下であっても切削痕が確認されたことが記載されている。そして、上記の状況を打開する手段として、特許文献2の請求項1等には、機械加工されたレンズ基材の切削面にレンズ基材と同一の材料からなる被膜溶液を塗布し、塗布された被膜溶液を加熱硬化させて被膜を形成することが記載されている。こうすることにより、特許文献2の段落0060及び0061に記載のように、切削ツール(バイト)による螺旋状の突状体と溝とからなる切削加工痕が観察されなくなる。なお、特許文献2の段落0009には、表面粗さRtを5μm程度以下にし、被膜の材料を眼鏡レンズの材料とは異なるようにした場合は、屈折率の違いにより加工痕跡の存在を完全には打ち消すことができないことも記載されている。
なお、レンズに関する特許文献3において、例えば段落0013や請求項1には、表面粗度を所定の範囲に収めるよう、機械加工による切削面に対して透明な薄膜を形成することが記載されている。
また、眼鏡レンズに関する特許文献4において、例えば段落0023には、機械加工による切削面に対してワニスを塗布し、表面粗さRaを減少させることにより、研磨工程を省略することが記載されている。
また、眼鏡レンズに関する特許文献5においても、例えば段落0031には、機械加工による切削面に対してワニスを塗布し、表面粗さRaを減少させることにより、研磨工程を省略することが記載されている。
国際公開2005/084885号 国際公開2007/142136号 特開2002−182011号公報 特表2003−526810号公報 特表2003−525760号公報
特許文献2〜5には、研磨工程を省略するための種々の手法が開示されている。その一方、眼鏡レンズ製造者やその取引先等から、上記の手法を用いても切削痕が目視で確認できる程度に生じるため、レンズの歩留まりが低下する場合があるという報告が、本出願人の元へと届いている。そして目視で確認できる切削痕は、数100μmの周期を有する加工痕であるという報告が、本出願人の元へと届いている。
なお、本明細書における「切削痕」とは、機械加工による加工痕のことであり、この切削痕には、例えば切削ツールに起因する加工痕等、種々の加工痕が含まれる。
上記の報告を受け、本発明者らは、切削痕が目視で確認されるそもそもの原因について調査した。特許文献2〜5に記載されているように、従来、眼鏡レンズの表面粗さを低減させることができれば、機械加工に由来する切削痕が目視で確認できなくなると考えられていた。
眼鏡用のプラスチックレンズを構成する樹脂素材に対する加工においては、例えば、カーブジェネレータと呼ばれる装置(以降、「CG装置」と言う。)を用いて、カーブジェネレーティング加工(以降、「CG加工」と言う。)と呼ばれる機械加工が行われている。このCG加工においては、切削ツールとして例えば先端に丸みを帯びたバイトが用いられる。そして、レンズ基材を回転させながら、例えば外周から幾何中心へとバイトを移動させて、レンズ基材をCG加工する。その結果、レンズ基材は所定の光学面形状に切削される。そして、レンズ基材における機械加工面(切削面)には、図1に示すように、バイトに起因する突状体と溝とが形成されることになる。上記のバイトの移動量は「切削ツールの送り量」を意味しており、該送り量を「SD(Spiral Distance)」とも言う。
図1は、CG加工後のレンズ基材の外周から幾何中心へと向かう方向からレンズ基材を平面視又は断面視した際の、突状体と溝とを示す説明図である。図1(a)はレンズ基材の平面図であり実線が突状体の部分を示し、図1(b)はSDが比較的大きい場合の断面図であり、図1(c)はSDが比較的小さい場合の断面図である。
なお、図中の破線は、突状体と溝とからなる構造を強調するための線である。以降、突状体と溝のことを単に「凹凸」とも言う。また、以降、眼鏡レンズにおいて機械加工前の状態、そして機械加工後であって機械加工面(切削面)上に別の部材(例えばハードコート膜)が被膜として設けられる前の状態のものを「レンズ基材」とも言う。一方、機械加工面(切削面)上に別の部材が被膜として設けられた後の状態のものを「眼鏡レンズ」又は単に「レンズ」とも言う。なお、レンズ基材の切削面上に被膜が設けられた場合、切削面上の切削痕による凹凸が、被膜の表面、すなわち眼鏡レンズの表面にも凹凸として反映されやすいことが知られている。
従来の考えに従い、切削痕が視認されるか否かはレンズの表面粗さによる影響が大きいと仮定すると、例えば以下のように考えることができる。すなわち、バイトの送り量(すなわち、SD)が大きければ、自ずとバイト径(切削ツール径)も大きくせざるを得なくなる。そうなると、図1(b)に示すように、数は少ないけれども大きな凸部を残してしまうことになる。そして、表面粗さは自ずと大きくなってしまう。一方、切削ツールの送り量が小さければ、図1(c)に示すように、数は多いけれども小さな凸部しか残らず、表面粗さは自ずと小さくなる。つまり、上記の仮定が正しいのならば、切削ツールの送り量(SD)が小さいほど、表面粗さを小さくすることができ、切削痕を視認不可能な状態にすることが可能となるはずである。
しかしながら、本発明者らは上記の仮定に疑問を抱き、実際にCG加工を行ったレンズ基材において、切削ツールの送り量と、切削痕が視認されるか否かの結果と、の関係について調査した。調査の結果を図2に示す。
図2は、ハードコート膜をレンズ基材に形成した後の写真である。なお、切削面上にハードコート膜等を形成することで、切削ツールに起因する切削痕以外の加工痕がほぼ視認されなくなることが知られている。従って、図2は、ハードコート膜が設けられたレンズ基材において、切削加工に起因する切削痕が視認されるか否かを示している。
図2(a)に示すように、SDが25μmの場合には切削痕が視認されなくなる。この結果だけを考慮するならば、SDが小さくなればなるほど、切削痕が視認されにくくなるはずである。しかしながら、図2(b)(SDが8μmの場合)、図2(c)(SDが5μmの場合)、図2(d)(SDが1μmの場合)に示すように、SDが小さくなっているにもかかわらず、切削痕が視認されることを、本発明者らは見いだした。この結果に基づき、切削痕が視認されるか否かは、表面粗さによる影響よりも、表面性状に関する他のパラメータによる影響の方が大きいという知見を本発明者らは得た。
このような知見に基づき、本発明の目的は、レンズ基材の切削面の表面性状を評価し、特定のパラメータ(例えば、表面のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータ)に着目することで、眼鏡レンズの表面に視認できる痕が形成されているか否かを数値化して明確に評価する方法、及び該評価方法を用いて、レンズ基材の研磨工程が与える工程上の負荷を軽減できる眼鏡レンズの製造方法を提供することにある。
従来の考えとは全く異なるこの新たな知見に基づき、本発明者らは、切削痕が視認されるメカニズムについて鋭意検討を加えた。その結果、切削痕が視認されるか否かに影響を与えるパラメータは、眼鏡レンズの主表面のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータであることを本発明者らは見いだした。なお、うねり曲線は、表面粗さに関係する粗さ曲線と同様に表面性状を表す曲線であり、粗さ曲線よりも長い周期を有している。
そして、上記のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを用いることで、本発明者らは、眼鏡レンズに形成された痕が視認できるか否かを数値化して評価できるという知見を得た。この知見は、従来のように表面粗さというパラメータを用いて痕が視認できるか否かを評価するという考え方とは全く異なる。また、この知見を、眼鏡レンズの製造方法に適用することで、レンズ基材の研磨工程が製造工程に与える負荷を軽減できるという知見も得た。そして、「少なくともうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを用いて、眼鏡レンズの表面を評価することで、表面上に切削痕が視認される場合と視認されない場合とを明確に判定できる」という知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
本発明の第1の態様は、
眼鏡レンズの光学面に対応する表面を有するレンズ基材を準備する準備工程と、
前記レンズ基材の表面のうち、少なくとも一方の面を切削加工して、切削面を得る切削工程と、
前記切削面の表面性状を測定する表面性状測定工程と、
前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面のうねり曲線を算出する第1算出工程と、
算出された前記うねり曲線から、前記うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを算出する第2算出工程と、
前記振幅および前記波長に関するパラメータを用いて、前記レンズ基材の良否を評価する評価工程と、を有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法である。
本発明の第2の態様は、
前記評価工程における評価結果をフィードバックして、前記切削工程における切削加工条件を決定するフィードバック工程をさらに有することを特徴とする第1の態様に記載の眼鏡レンズの製造方法である。
本発明の第3の態様は、
前記振幅に関するパラメータが、前記うねり曲線の最大断面高さを示すWt[μm]であり、前記波長に関するパラメータが、前記うねり曲線の波長の平均を示すS[μm]であることを特徴とする第1態様または第2の態様に記載の眼鏡レンズの製造方法である。
本発明の第4の態様は、
前記評価工程において、前記Wtと前記Sとの比を示すWt/Sが下記の関係を満足するときに、前記眼鏡レンズが良品であると評価することを特徴とする第3の態様に記載の眼鏡レンズの製造方法である。
Wt/S≦4.0×10−5
本発明の第5の態様は、
前記第1算出工程において、前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面の粗さ曲線を算出して、前記粗さ曲線の最大断面高さを示すRt[μm]を算出した場合に、
前記評価工程において、前記Wtおよび前記Rtが下記の関係を満足するときに、前記レンズ基材が良品であると評価することを特徴とする第4の態様に記載の眼鏡レンズの製造方法である。
Wt≦0.025μm
Rt≦0.020μm
本発明の第6の態様は、
眼鏡レンズの光学面に対応する表面を有し該表面の少なくとも一方が切削加工された切削面であるレンズ基材を準備する準備工程と、
前記レンズ基材の前記切削面の表面性状を測定する表面性状測定工程と、
前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面のうねり曲線を算出する第1算出工程と、
算出された前記うねり曲線から、前記うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを算出する第2算出工程と、
前記振幅および波長に関するパラメータを評価して、前記レンズ基材の良否を評価する評価工程と、を有することを特徴とする眼鏡レンズの評価方法である。
本発明によれば、レンズ基材の切削面の表面性状を評価し、特定のパラメータ(例えば、表面のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータ)に着目することで、眼鏡レンズの表面に視認できる痕が形成されうるか否かを数値化して明確に評価する方法、及び該評価方法を用いて、レンズ基材の研磨工程が与える工程上の負荷を軽減できる眼鏡レンズの製造方法を提供することができる。その結果、コストや生産時間の削減を実現し、しかも眼鏡レンズの歩留まりをも向上させることができる。
CG加工後のレンズ基材の外周から幾何中心へと向かう方向からレンズ基材を平面視又は断面視した際の、突状体と溝とを示す説明図である。(a)はレンズ基材の平面図であり実線が突状体の部分を示し、(b)はSDが比較的大きい場合の断面図であり、(c)はSDが比較的小さい場合の断面図である。 ハードコート膜を有するレンズ基材において、切削痕の視認度合いとSDとの関係を示す写真であり、超高圧水銀ランプの透過光によるレンズ内面の投影検査を行った際のレンズ基材の平面視写真である。(a)はSDが25μmの場合の写真、(b)はSDが8μmの場合の写真、(c)はSDが5μmの場合の写真、(d)はSDが1μmの場合の写真である。 本実施形態に係る方法により製造あるいは評価される眼鏡レンズの断面概略図である。(a)は眼鏡レンズの全体図であり、(b)は(a)のAの部分の拡大図である。 レンズ基材の表面性状測定において、測定長さにおける測定断面曲線と、評価長さにおける測定断面曲線と、の違いを説明するための模式図である。 レンズ基材の切削面に入射する光がレンズを透過する際の光路を示す模式図である。(a)は、レンズ基材の切削面に形成された凹凸が比較的大きい場合の透過光の光路を示す模式図であり、(b)は、レンズ基材の切削面に形成された凹凸が比較的小さい場合の透過光の光路を示す模式図である。 投影検査の透過光がスクリーン上の明暗の縞として生じる場合に、明暗の縞と輝度プロファイルと断面曲線との関係を示す図である。(a)は、投影検査の透過光がスクリーン上の明暗の縞を示す画像である。(b)は、(a)に示す線上での輝度プロファイルを示すグラフである。(c)は、(a)に示す線上での表面性状測定により得られる断面曲線を示すグラフである。(d)は、(c)の断面曲線から算出されたうねり曲線を示すグラフである。(e)は、(c)の断面曲線から算出された粗さ曲線を示すグラフである。 被膜の厚さを天地方向で連続的に変化させて、レンズ基材の切削面上に被膜を形成する方法について説明する図である。(a)は、該方法を説明するための断面概略図であり、(b)は被膜が形成された眼鏡レンズにおける引き上げ側(天地の天側)、幾何中心近傍、被膜溶液側(天地の地側)の写真と、それぞれの箇所でのうねり曲線とを示す。 図7に示す眼鏡レンズの天地方向における測定位置とうねり曲線の振幅に関するパラメータ等との関係を定量的に表したグラフである。(a)は眼鏡レンズにおける測定位置(横軸)と、Wt(縦軸)と、の関係を表すグラフであり、(b)は眼鏡レンズにおける測定位置(横軸)と、WtおよびSの比(Wt/S)(縦軸)と、の関係を表すグラフであり、(c)は眼鏡レンズにおける測定位置(横軸)と、Rt(縦軸)と、の関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について以下の順序で説明を行う。
1.眼鏡レンズ
A)眼鏡レンズの全体構成
B)レンズ基材
C)被膜
2.眼鏡レンズの製造方法
A)レンズ基材の選定(準備工程)
B)切削工程
C)本実施形態に係る眼鏡レンズの評価方法を用いた評価工程
D)被膜形成工程
E)フィードバック工程
F)加工調整工程
G)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄・マルチコート加工等)
3.眼鏡レンズの評価方法
A)準備工程
B)表面性状測定工程
C)第1算出工程
D)第2算出工程
E)評価工程
4.実施形態に係る効果
5.変形例
なお、本実施形態においては、眼鏡レンズとして眼鏡用のプラスチックレンズを一例に挙げて説明を行う。以降、眼鏡レンズのみならず眼鏡用のプラスチックレンズについても、「眼鏡レンズ」又は単に「レンズ」とも言う。
<1.眼鏡レンズ>
A)眼鏡レンズの全体構成
図3に、本実施形態に係る方法により製造あるいは評価される眼鏡レンズ1の断面概略図を示す。(a)は眼鏡レンズ1の全体図、(b)は(a)のAの部分の拡大図である。
図3に示すように、該眼鏡レンズ1は、レンズ基材2と被膜3とを有している。レンズ基材2は、物体側の光学面2a(凸面)と、眼球側の光学面2b(凹面)と、を有している。また、被膜3はレンズ基材2の切削面上に設けられている。本実施形態では、眼球側の光学面2b(凹面)を切削加工し、物体側の光学面2a(凸面)は研磨後の面又は切削加工前の面である場合について説明する。
なお、本明細書における「切削面」とは、機械加工による切削(研削)後であって、鏡面研磨が行われていない面のことを指す。
B)レンズ基材
レンズ基材2は、眼鏡レンズ1の基となるものであり、レンズ基材2の主表面に光学面が形成されることにより、眼鏡レンズ1の光学特性を担うことができる。本実施形態では、レンズ基材2の材質としては、プラスチック樹脂が好ましい。具体的には、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチルグリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリカーボネート、ウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エンチオール反応を利用したスルフィド、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられる。なお、レンズ基材2の材質はガラスでもよい。
本実施形態では、レンズ基材2は、ジエチルグリコールビスアリルカーボネートを用いて製造される。このようなレンズ基材2は、例えば特開2005−141162号公報に開示されている成型用鋳型にモノマーを充填した後、電気炉によって一定時間加熱されることにより製造される。成型用鋳型は、筒状のガスケットと、このガスケット内に組み込まれる一対のモールドとで構成されている。成型用鋳型内のモノマーは、加熱により重合・硬化してレンズ基材2となり鋳型から取り出される。
成型用鋳型から取り出されたレンズ基材2は、両面又は片面が旋盤等の加工機によって切削(研削)加工されて切削面が形成される。切削加工については後述する。
C)被膜
本実施形態においては、レンズ基材2の切削面の上に、被膜3が設けられている。この被膜3は、眼鏡レンズ1に種々の特性を付与する膜であることが好ましい。具体的には、ハードコート膜、反射防止膜、偏光膜、フォトクロミック膜、撥水膜、防曇性膜、プライマー膜等が例示される。また、被膜3は複数の膜から構成されていてもよい。本実施形態では、被膜3がハードコート膜である場合について説明する。ハードコート膜は、レンズ基材2の硬度を高めるとともに耐擦傷性を向上させるためのものでもある。
ハードコート膜としての被膜3は、例えば、シリコン系樹脂などの有機物質を用いて形成される。具体的には、レンズ基材2の切削面に被膜3の原料を塗布して硬化させることにより形成される。この被膜3は、切削面を覆うように形成されることが好ましい。
<2.眼鏡レンズの製造方法>
次に、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法の一例として、上記の眼鏡レンズ1を製造する方法を説明する。
A)レンズ基材の選定(準備工程)
まず、上述した成型後のレンズ基材2を準備する。レンズ基材2の形状は特に制限されない。
B)切削工程
切削工程では、レンズ基材の一方の面を切削してもよいし、両方の面を切削してもよい。また、切削面が凸形状となるように形成してもよいし、凹形状となるように形成してもよい。本実施形態では、光学面2b(凹面)を切削加工する場合について説明する。
まず、上記で準備したレンズ基材2をレンズ保持具にブロッキングした後、レンズ保持具をNC制御されるCG装置に取り付けて、保持されたレンズ基材2の未加工面を切削加工して切削面を得る。
CG装置では、レンズ基材の外周から幾何中心に渡って、形成されるべき光学面の形状をトレースするように、レンズ基材の径方向において所定のピッチで切削刃を送りながら加工する。なお、この「送り」の量が、切削ツール送り量(SD)である。SDやバイトの硬度等の加工条件は、レンズ基材の材質や形状、切削痕の大きさ等を考慮して適宜決定すればよい。
なお、SDは、Spiral Distanceの略であり、Spiral(螺旋)という単語を用いているが、本明細書における螺旋は、従来における螺旋とは若干意が異なる。つまり、従来の螺旋は、中心点から渦を巻くように線が形成され、外周方向に向かうにつれて、隣接する線と線との間が広くなる。一方、本明細書における「螺旋」は、外周方向に向かっても、隣接する線と線との間は略一定である。また、ここで言う「略一定」とは、SDを一定に設定し、その設定どおりにCG加工が行われた場合を含むのはもちろんのこと、SDを一定に設定したが光学面の所々で誤差程度にSDにバラつきがある場合も含む。
C)本実施形態に係る眼鏡レンズの評価方法を用いた評価工程
評価工程では、切削加工したレンズ基材2の切削面の表面性状を測定した結果から、切削面のうねり曲線を算出し、さらに該うねり曲線から振幅および波長に関するパラメータを算出する。そして、これらのパラメータを用いて、レンズ基材2の良否を評価する。
本実施形態において、「レンズ基材の良否を評価する」とは、算出される所定のパラメータを用いて評価して、該パラメータが特定の範囲内にあるレンズ基材を良品として評価し、該パラメータが特定の範囲外である眼鏡レンズを不良品として評価することをいう。本実施形態に係る眼鏡レンズの評価方法の詳細については後述する。なお、評価結果に基づき、フィードバック工程を設け、評価結果をフィードバックしてもよい。フィードバック工程の詳細については後述する。
評価工程において、良品であると評価されたレンズ基材は、被膜形成工程に供して、レンズ基材の切削面上に被膜を形成する。被膜を形成した後は、必要に応じて染色等を施し、完成品の眼鏡レンズを得る。一方、不良品であると評価されたレンズ基材は、例えば、破棄してもよいし、あるいは原料の再利用を行ってもよい。本実施形態では、不良品であると評価されたレンズ基材を、加工調整工程に供して加工してもよい。加工調整工程の詳細については後述する。
D)被膜形成工程
本工程では、評価工程において良品であると評価されたレンズ基材の切削面上に被膜3を形成する。被膜3を形成する具体的な方法としては、公知の方法を用いればよい。例えばスパッタリングや真空蒸着法等を用いて成膜してもよいが、本実施形態では、浸漬処理を用いて被膜3を形成する。
まず、レンズ基材に対し、被膜を形成するための溶液を容易に塗布できるように、例えば静電気を除去する等の前処理を行う。前処理を行った後、レンズ基材を洗浄乾燥する。レンズ基材の洗浄は、例えば所定の洗浄液に浸漬して洗浄すればよい。また、レンズ基材の乾燥は、例えばスピナーを用いて行えばよい。
次に、乾燥後のレンズ基材を、被膜3の原料となる溶液(以降、「被膜溶液」とも言う。)の液面に対してレンズ基材2の径方向が略垂直になるように、被膜溶液に所定時間浸漬する。そして、被膜溶液が塗布されたレンズ基材をスピナーに装着して、スピナーを回転させ、回転により生じる遠心力を利用してスピンコートし、レンズ基材上に塗布された被膜溶液の厚みを所定の厚みとする。
被膜溶液がスピンコートされたレンズ基材を、例えば加熱炉に載置して、所定の温度で加熱することにより被膜溶液から溶媒が除去され硬化する。その結果、レンズ基材の切削面上に被膜としてのハードコート膜が形成され、眼鏡レンズ1が得られる。なお、被膜3は、スピンコートされた被膜溶液が加熱硬化することにより形成されるものであるため、高い面精度が得られる。そのため、切削面上に形成された切削痕に起因する凹凸が被膜表面にも反映されやすい。
E)フィードバック工程
本実施形態では、評価工程における評価結果をフィードバックして、切削工程における切削加工条件を調整するフィードバック工程を設けることが好ましい。
調整する切削加工条件としては、例えば、切削加工で用いられる切削ツールの径あるいはSD等が例示される。また、CG装置に取り付けられたレンズ基材の回転数あるいは切削ツールの硬度等が例示され、表面粗さの調整をもたらす機械加工等も例示される。
上記の条件の調整は、作業者が行ってもよいし、評価結果の数値等に基づき、プログラム等により決定してもよい。
F)加工調整工程
加工調整工程では、評価工程において不良品であると評価されたレンズ基材を再加工する。具体的には、レンズ基材の切削面を研磨する。レンズ基材を研磨する工程は、製造工程に与える負荷が大きいものの、本実施形態では、不良品であると評価されたレンズ基材のみを研磨するため、レンズ基材の全部を研磨する場合に比べて、製造工程に与える負荷を低減することができる。レンズ基材の切削面を研磨する方法は、公知の方法を用いればよい。
G)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄等)
必要に応じて、カラー染色・検査・超音波洗浄等を、被膜が形成されたレンズ基材に施す。こうして、眼鏡用のプラスチックレンズである眼鏡レンズ1の完成品を製造する。
<3.眼鏡レンズの評価方法>
次に、本実施形態に係る眼鏡レンズの評価方法の一例として、上記のレンズ基材を評価する方法を詳細に説明する。
A)準備工程
まず、上記の切削工程を経て、切削面が形成されたレンズ基材を準備する。
B)表面性状測定工程
続いて、準備したレンズ基材の表面性状を測定する。具体的には、JIS B0601:2001(GPS 表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ)、JIS B0632:2001(GPS 表面性状:輪郭曲線方式−位相補償フィルタの特性)、JIS B0633:2001(GPS 表面性状:輪郭曲線方式−表面性状評価の方式及び手順)、JIS B0651:2001(GPS 表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さの測定機の特性)に準じて測定を行う。すなわち、表面性状を測定する際に、上記のJISに規定された方法あるいはそれに類似した方法を用いるが、該JISに規定された数値条件を必ずしも用いなくてよい。また、測定面は、レンズ基材の切削面である。
本実施形態では、表面性状の測定装置としては、JIS B0651:2001に準じて、触針式の測定装置を用いる。該測定装置は、測定面(レンズ基材の切削面)にプローブ(触針)の先端部を接触させ、測定面上の任意の方向にプローブの先端部を所定の距離(測定長さ)だけ移動させて、測定面の凹凸をプローブ先端部の中心の軌跡に変換して読み取る。その軌跡は、測定面と、該測定面に垂直な面であってプローブが移動した線上を通る断面と、の交線を示している。換言すれば、その軌跡は、測定面、すなわちレンズ基材の切削面についての測定断面曲線を示している。したがって、レンズ基材の表面性状を測定した結果として、レンズ基材の切削面の測定断面曲線が得られる。該曲線は、x軸方向を測定長さとし、z軸方向を測定面に垂直な方向とした場合に、測定面の凹凸の変位プロファイルを示す。
触針の形状は、測定面の凹凸等に応じて適宜決定すればよい。また、測定長さも適宜決定すればよいが、本実施形態では、50〜80mm程度が好ましい。
C)第1算出工程
第1算出工程では、測定結果として得られるレンズ基材の切削面の測定断面曲線からうねり曲線を算出する。なお、測定断面曲線は、測定長さにおいて、連続した曲線として得られる。しかしながら、例えば測定時のノイズ等の影響を排除するために、測定長さよりも短い長さを抽出して、評価長さとしてもよい。そして、評価長さにおける測定断面曲線についてうねり曲線を算出してもよい。例えば、図4に示すように、測定長さが7mmである場合、7mmの間隔における測定断面曲線についてうねり曲線を算出するのではなく、評価長さを5mmとして、5mmの間隔における測定断面曲線についてうねり曲線を算出してもよい。
測定断面曲線には、レンズ基材の切削面の断面形状に起因する因子と、レンズ基材の切削面の表面粗さに起因する因子と、レンズ基材の切削面のうねりに起因する因子と、が主に含まれており、測定断面曲線は、これらの因子が合成されて得られる曲線である。これらの因子は、周期(波長)の長さにより区別され、表面粗さに起因する因子は周期が短く(波長が短く)、断面形状に起因する因子は周期が長く(波長が長く)、うねりに起因する因子はそれらの中間の周期を有している。
うねり曲線を算出するために、本実施形態では、まず、測定断面曲線からレンズ基材の切削面の断面形状に起因する因子を除去する。除去する方法としては、例えばJIS B0632:2001に準じて、所定のカットオフ値(λ)を設定し、カットオフ値よりも短い波長成分のみを通過させる位相補償フィルタ(高域フィルタ)を測定断面曲線に適用することにより、λよりも短い波長成分からなる曲線、すなわち、断面形状に起因する因子が除去された断面曲線を得る方法が例示される。
ところで、本実施形態では、レンズ基材の切削面について表面性状を測定している。切削加工されたレンズ基材は、通常、所定の曲率を有しているため、上記で得られる測定断面曲線は、平面を測定して得られる測定断面曲線よりも湾曲している。そのため、JIS B0632:2001に記載されているカットオフ値を設定した位相補償フィルタを適用することが適切でない場合もありうる。そこで、本実施形態では、断面曲線を算出する方法として、上記の方法とは異なる方法を採用することが好ましい。
すなわち、本実施形態では、x軸方向を評価長さとし、z軸方向を測定面に垂直な方向とした場合の測定断面曲線を、xの関数(z=f(x))とみなす。そして、カーブフィッティングにより、該関数f(x)の近似曲線をxの多項式(ax+bxn−1+・・・)として求める。次に、得られたxの多項式を、断面形状に起因する因子とみなして、測定断面曲線からxの多項式を引くことで、断面形状に起因する因子が除去された断面曲線が得られる。多項式を求める方法としては特に制限されず、公知のプログラム等を用いて求めればよい。
多項式の次数nは、関数f(x)の極大値および極小値の数に関係し、この極大値および極小値の数は、評価長さにおいて現れる凹凸のピークの数に関係している。そのため、評価長さに応じてnを決定すればよいが、評価長さ中に3波長以上の曲線が存在している必要があるため、次数nは3以上であることが好ましい。本実施形態では、評価長さが10mm以下である場合には、多項式の次数を6としている。
関数f(x)の近似曲線としては、xの多項式に限定されず、例えばsinカーブ、NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline:非一様有理Bスプライン)、フーリエ級数等が例示される。
このようにして得られる断面曲線は、レンズ基材の切削面のうねりに起因する因子と、レンズ基材の切削面の表面粗さに起因する因子と、が合成されて得られる曲線である。したがって、この断面曲線から表面粗さに起因する因子を除去することで、うねりに起因する因子が反映された曲線、すなわち、うねり曲線を算出することができる。
具体的には、JIS B0632:2001に準じて、所定のカットオフ値(λcおよびλf)を設定し、λcとλfとの間の波長成分のみを通過させる位相補償フィルタ(帯域フィルタ)を断面曲線に適用することで、λcとλfとの間の波長成分からなるうねり曲線を算出する方法が例示される。カットオフ値(λcおよびλf)としては、JIS B0632:2001に記載されている値に限定されない。本実施形態では、λfが2.5mmであり、λcが0.25mmであることが好ましい。また、他の方法を用いてうねり曲線を算出してもよい。
以上より、第1算出工程において、測定断面曲線からうねり曲線が算出される。
本実施形態では、うねり曲線を算出することに加え、断面曲線から、粗さ曲線を算出することが好ましい。具体的には、JIS B0632:2001に準じて、所定のカットオフ値(λsおよびλc)を設定し、λsとλcとの間の波長成分のみを通過させる位相補償フィルタ(帯域フィルタ)を断面曲線に適用することで、うねりに起因する因子が除去された粗さ曲線を算出する方法が例示される。位相補償フィルタの重み関数は正規分布と一致するため、位相補償フィルタとして、ガウシアンフィルタを用いる。また、カットオフ値としては、JIS B0632:2001に記載されている値に限定されない。本実施形態では、λsが0.025mm、λcが0.8mmであることが好ましい。また、他の方法を用いて粗さ曲線を算出してもよい。
さらに、本実施形態では、算出された粗さ曲線から、最大断面粗さを示すRtを算出することが好ましい。具体的には、Rtは、評価長さにおいて、粗さ曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和として算出される。
D)第2算出工程
第2算出工程では、上記で算出されたうねり曲線から振幅および波長に関するパラメータを算出する。本実施形態では、振幅に関するパラメータとして、うねり曲線の最大断面高さを示すWt[μm]を算出することが好ましい。具体的には、Wtは、測定長さにおいて、うねり曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和として算出される。
本実施形態では、波長に関するパラメータとして、評価長さにおけるうねり曲線の波長を算出して波長の平均値を示すS[μm]を算出することが好ましい。具体的には、ISO4287−1997に準じて、うねり曲線の波長を、評価長さにおいて、現れるピークとピークとの間隔と定義し、評価長さにおける波長の平均値をSとする。
以上より、第2算出工程において、うねり曲線から、うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータとしてWtおよびSが算出される。
E)評価工程
評価工程では、算出されたパラメータを用いて、レンズ基材の良否を評価するが、まず、これらのパラメータが、レンズ基材の切削面上に形成された切削痕が視認されるか否かと相関していることを以下に示す。
まず、従来の評価方法である所定の光源を用いた透過光による投影検査において、切削痕が視認される原因について説明する。
なお、この投影検査は、日本工業規格の屈折補正用単焦点眼鏡レンズ(JIS−T7313)に規定されている視覚的な検査およびシュリーレン法を基にしている。JIS−T7313に規定されている視覚的な検査方法は、光源と観察者の間に検査対象のレンズを配置してレンズ上の表面欠陥の有無を目視により検査する方法である(JIS−T7313の附属書A「材料および表面の品質評価方法」参照)。
投影検査において切削痕が視認されるとは、光源からレンズ基材の一方の光学面に入射して透過した透過光を他方の光学面側に設置されたスクリーン上で観察する場合に、スクリーン上に明暗の縞が観察されることをいう。この明暗の縞は、レンズ基材の切削面上に形成された切削痕に起因する凹凸により、光源から入射して透過する光の屈折度合いが変化するために生じると考えられる。
図5は、レンズ基材の切削面に凹凸が形成されている場合において、レンズ基材の光学面の一方から等間隔の光が入射し、レンズ基材を透過する様子を示している。マクロ的には、レンズ基材の切削面に入射する光10は垂直に入射している。しかしながら、局所的には、レンズ基材の切削面に対し垂直に入射しない光がある。
すなわち、図5(a)から明らかなように、レンズ基材の切削面に対し光が垂直に入射する場合(図5(a)の10a)には、光10aはレンズ基材内を直進して、レンズ基材を透過した光は入射光の延長線上を進む。これに対し、レンズ基材の切削面に対し光が垂直に入射しない場合(図5(a)の10b)には、光10bはレンズ基材内で屈折し、レンズ基材を透過する際にさらに屈折してしまう。その結果、透過光は入射光の延長線から大きく逸れて進行する。そうすると、光10bが入射する光学面とは反対の光学面側にスクリーン20を設けた場合、直進する透過光と、直進せずに入射光の延長線上から逸れる透過光と、が混在するため、透過光が集中する箇所と、透過光が集中しない箇所と、が生じる。すなわち、図5(a)に示すように、スクリーン20上において、透過光の光量に差が生じる箇所が存在することになり、明暗の縞が生じることとなる。
なお、上記のレンズ基材の切削面上に被膜が形成され、レンズ基材の屈折率と被膜の屈折率とが異なる場合には、レンズ基材と被膜との界面においても屈折が生じる。この場合にも、上記の説明が同様に適用できる。
一方、図5(b)に示すように、レンズ基材の切削面に形成されている凹凸が比較的小さい場合、レンズ基材の切削面に対し光10が垂直に入射しなくても、透過光はそれほど屈折しないため、入射光の延長線上の近傍に到達する。そのため、光10が入射する光学面とは反対の光学面側にスクリーン20を設けた場合にも、透過光の光量に差が生じる箇所がほとんど存在せず、明暗の縞が生じない。
上記では、レンズ基材の切削面に形成された凹凸の大きさにより、明暗の縞が生じることを説明したが、凹凸の大きさと他の要因との結びつきにより明暗の縞が生じる場合がある。他の要因としては、凹凸の間隔が例示される。凹凸の間隔が入射光の屈折に直接的に与える影響はそれほど大きくないと考えられる。しかしながら、凹凸の大きさと凹凸の間隔とがリンクすることにより、透過光の光量に差が生じる箇所の分布等が変化すると考えられる。例えば、凹凸の大きさが同じであっても、凹凸の間隔が異なることで、透過光の光量に差が生じる箇所が変化することが考えられる。そのため、凹凸の大きさと凹凸の間隔との組み合わせについても考慮する必要があると考えられる。
以上より、明暗の縞の有無は、レンズ基材の切削面上に形成された凹凸(切削痕)の存在状態に関係していると考えられる。凹凸の存在状態は、レンズ基材の切削面の表面性状に関係すると考えられる。したがって、凹凸の存在状態が、切削面の表面性状に関するパラメータのうち、どのパラメータに起因しているのかが問題となる。
そこで、明暗の縞の有無と、凹凸の存在状態と、がどのように関連しているかを調査する。まず、レンズ基材の切削面上に被膜を形成した眼鏡レンズについて、上記の投影検査を行う。
なお、切削面上に形成された凹凸は、該切削面上に被膜が形成されても、切削面に形成された凹凸の形状が、被膜の表面において、その形状は反映されやすいが、その大きさは小さくなる傾向にある。そのため、下記に示すように、レンズ基材の切削面上に被膜が形成された眼鏡レンズについて、明暗の縞の有無と、凹凸の存在状態と、の関係を調査することにより、切削面上における明暗の縞の有無と、凹凸の存在状態と、の関係を調査することができる。
まず、投影検査を行い、投影検査の透過光がスクリーン上に明暗の縞として生じる箇所を含む画像を取得する。そして、取得した画像について輝度に関する画像処理を行い、該画像において、最低輝度を0、最高輝度を255として、画像の輝度を256段階に数値化する。そして、図6(a)に示す線上における輝度を、線の長さを横軸、輝度を縦軸として、グラフ化することで、図6(b)に示すように、図6(a)に示す線上における輝度プロファイルが得られる。このプロファイルと縞の画像とを比較すると、グラフ中の輝度の高い部分と低い部分とが明暗の縞に対応していることが分かる。このようにすることで、明暗の縞を輝度の変化として捉えることができる。
さらに、表面性状測定装置を用いて、図6(a)に示す線に沿って表面性状を測定する。上述したように、この測定結果に基づき、上述したように、レンズの形状に起因する因子を除去することで、図6(c)に示す断面曲線が得られる。さらに、この断面曲線から、図6(d)に示すうねり曲線と、図6(e)に示す粗さ曲線と、が算出される。
上記で得られる表面性状に関する曲線と、明暗の縞に対応する輝度のプロファイルと、を比較すると、図6(b)の輝度のプロファイルと、図6(d)のうねり曲線と、がよく一致していることが理解される。図6に示す眼鏡レンズは、レンズ基材の切削面上に被膜が形成されているが、被膜の表面には、切削面上に形成された凹凸の形状が反映されている。したがって、図6は、レンズ基材を透過する光によりスクリーン上に生じる明暗の縞(切削痕)と、レンズ基材の切削面のうねり曲線と、は相関していることを示している。すなわち、レンズ基材の切削面上に形成された凹凸に起因する明暗の縞の有無は、レンズ基材の切削面のうねり曲線を用いることで、評価できると考えられる。
次に、うねり曲線に関するパラメータのうち、どのパラメータが、明暗の縞の有無、すなわち、切削痕が視認されるか否かに関係するのかが問題となる。
そこで、図7(a)に示すように、1枚のレンズ基材2の切削面上に厚みの異なる被膜3を形成することで、同一の眼鏡レンズ上に切削痕が視認される箇所と視認されない箇所とを設ける。そして、該レンズについて、投影検査および表面性状の測定を行い、切削痕が視認される箇所および視認されない箇所におけるうねり曲線をそれぞれ算出する。
具体的には、切削加工された切削面を有するレンズ基材2を被膜溶液中に30秒間浸漬させた後に引上げる。引き上げる際に、余分な被膜溶液の除去を行わないことにより、被膜の厚みを天地方向で連続的に変化させることができる。その後、上述したように、被膜溶液を加熱硬化させて被膜3を形成する。なお、レンズ基材2の直径は75mmとし、眼鏡レンズ1の天地方向の中央部分に存在する線の部分における被膜3の厚さを約30μmとしている。
上記で得られる被膜の厚みに傾斜を持たせたレンズについて、超高圧水銀ランプの透過光による眼鏡レンズ1の投影検査の結果および算出されたうねり曲線を図7(b)に示す。
図7(b)に示すように、眼鏡レンズ1の被膜溶液側の位置(天地の地側から15mmの部分)では切削痕が視認されず、うねり曲線の振幅は比較的に小さいことが分かる。一方、眼鏡レンズ1の幾何中心近傍(天地の地側から25mmの部分)では切削痕が視認され、うねり曲線の振幅は比較的に大きいことが分かる。さらに、眼鏡レンズ1の引上げ側の位置(天地の地側から45mmの部分)では切削痕が明確に視認され、うねり曲線の振幅はより大きいことが分かる。
図7(b)より、うねり曲線の振幅が大きくなるにつれ、切削痕がより明確に視認される傾向にあることが理解される。また、上述したように、切削痕(凹凸)の間隔も視認されるか否かに関係していると考えられる。したがって、切削痕が視認されるか否かは、うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを用いて評価することができる。具体的なうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータとしては、図8に示すパラメータを用いることができる。
図8は、図7に示した眼鏡レンズについて、天地方向の測定位置におけるうねり曲線の振幅に関するパラメータ等の変化を示すグラフである。図8(a)は眼鏡レンズ1における測定位置(横軸)と、Wt(縦軸)と、の関係を表すグラフであり、図8(b)は切削痕が視認される位置(横軸)と、WtおよびSの比(Wt/S)(縦軸)と、の関係を表すグラフであり、図8(c)は切削痕が視認される位置(横軸)と、Rt(縦軸)と、の関係を表すグラフである。なお、グラフ中で網掛け部分が示す測定位置が、眼鏡レンズ1において切削痕を視認できない測定位置である。また、図8(a)〜(c)の眼鏡レンズ1における測定位置(横軸)は、眼鏡レンズ1の被膜溶液側(天地の地側)を起算点(0mm)として、天地の天の方向に向かった場合の距離を表す。
上述したように、切削面の凹凸の形状は被膜上にも反映されているため、図8より、レンズ基材の切削面のうねり曲線に関するパラメータ(Wt/S、Wt)が、特定の範囲内である場合に、切削痕が視認されない傾向にあることが理解される。また、表面粗さRtも、うねり曲線の振幅に関するパラメータほどではないが、切削痕が視認されない条件に影響を与えていることが理解される。すなわち、うねり曲線に関するパラメータ(Wt/S、Wt)、あるいは、各パラメータおよび最大断面高さRtを用いることで、切削痕が視認されるか否かについての有意な閾値を決定できる。
図8に示す結果およびその他の実験結果に基づき、レンズ基材の切削面に切削痕が視認されない、すなわち、レンズ基材が良品であると評価するには、本実施形態では、以下に示すパラメータが以下の範囲にあることが好ましい。
WtとSとの比であるWt/Sが、Wt/S≦4.0×10−5である場合に、レンズ基材が良品であると評価することが好ましい。Sはうねり曲線の波長の平均値を示しており、表面の凹凸の変位方向に対して垂直な方向についてのパラメータである。
このSは凹凸の間隔に対応しており、S単独では切削痕が視認されるか否かに与える影響は小さいが、上述したように、表面の凹凸の方向のパラメータと、表面の凹凸に垂直な方向のパラメータと、がリンクすることで切削痕が視認されるか否かに対して影響していると考えられる。したがって、凹凸の方向のパラメータ(Wt)と、凹凸に垂直な方向のパラメータ(S)と、の比が上記の範囲内である場合には、切削加工に起因する切削痕がほぼ視認されない。
また、Wt/Sが上記の範囲内であることに加え、Wtが、Wt≦0.025μmである場合に、眼鏡レンズが良品であると評価することが好ましい。Wtが上記の範囲内である場合には、切削加工に起因する切削痕がほぼ視認されない。
さらに、本実施形態では、WtおよびWt/Sが上記の範囲内であることに加え、Rtが、Rt≦0.020μmである場合に、レンズ基材が良品であると評価することがより好ましい。レンズ基材の切削面上に切削痕が視認されるか否かについては、うねり曲線に関するパラメータほどではないが、表面粗さのパラメータも影響を与える。したがって、うねり曲線に関するパラメータ(Wt/S、Wt)に加え、Rtが上記の範囲内である場合には、切削加工に起因する切削痕が視認されない。
以上より、切削痕が視認されるか否かは、切削面のうねり曲線の振幅および波長に関するパラメータと相関があり、該パラメータに閾値を設定することで、レンズ基材の良否を評価できることが理解される。
<4.実施形態に係る効果>
本実施形態では、うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを算出し、該パラメータの閾値を設定することで、レンズ基材の表面上に切削痕が視認されるか否か、すなわち、レンズ基材が良品であるか否かを数値化して明確に評価することができる。しかも、この評価は眼鏡レンズの形状に依存しない。したがって、切削痕が視認されるか否かを明確に評価することができるため、従来の超高圧水銀ランプの透過光による眼鏡レンズの投影検査とは異なり、検査者によるバラツキも生じない。その結果、良品であると評価されたレンズ基材に被膜の形成等の所望の処理を行うことで、眼鏡レンズの完成品を得ることができる。
特に、うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータとして、Wt/SやWtを用いることでレンズ基材の良否をより明確に評価することができる。また、粗さ曲線から、Rtを算出し、Wt/SおよびWtと組み合わせて用いることで、レンズ基材の良否をより明確に評価することができる。
また、評価結果が数値として得られるため、フィードバック工程を設けることで、評価工程で得られた結果をフィードバックして、切削加工条件を調整することができる。そして、調整された条件で製造されたレンズ基材では、視認される切削痕を低減させることができる。その結果、次回の評価工程において、良品であると評価される確率(歩留まり)を高めることができ、完成品としての眼鏡レンズの歩留まりを高めることができる。しかも、評価結果は数値化されているので、条件の調整も容易である。
また、良品であると評価される確率が高くなれば、レンズ基材の研磨工程を省略しつつ、完成品としての眼鏡レンズの歩留まりを高めることができる。その結果、コストや生産時間の削減を実現できる。
また、加工調整工程を設けることで、不良品であると評価されたレンズ基材の切削面が研磨され、切削面の凹凸が平坦になり、良品のレンズ基材を得ることができる。研磨を行うのは、不良品であると評価されたレンズ基材のみであるため、研磨工程が製造工程に与える負荷を最低限とすることができる。その結果、製造工程の負荷を低減しつつ、歩留まりを高めることができる。
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
(うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータおよびその他のパラメータ)
うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータとして、上記の実施形態では、Wt/SやWtを例示したが、これら以外のパラメータであってもよい。例えば、算術平均うねりを示すWa[μm]であってもよい。Waは、基準長さにおけるうねり曲線の絶対値の平均として算出される。Waを用いる場合、Wa≦0.0025であることが好ましい。また、うねり曲線の波長の平均値SとWaとを用いて、Wa/S≦4.0×10−6であることが好ましい。
また、表面粗さに関するパラメータとして、上記の実施形態では、Rtを例示したが、Rt以外のパラメータであってもよい。例えば、算術平均粗さを示すRa[μm]であってもよい。Raは、基準長さにおける粗さ曲線の絶対値の平均として算出される。Raを用いる場合、Ra≦0.0020であることが好ましい。
なお、Wt/SおよびWa/S(あるいは、WtおよびWa、RtおよびRa)は一方のみを評価してもよいし、両方を評価してもよい。両方を評価する場合には、少なくとも一方のパラメータが上記の範囲内であれば、レンズ基材が良品であると評価すればよい。
(表面性状測定)
上記の実施形態では、表面性状測定装置として、接触式の測定装置を用いたが、非接触式の測定装置を用いてもよい。この場合には、うねり曲線およびうねり曲線に関するパラメータを算出するための各条件が異なることがある。
上記の実施形態では、測定断面曲線から、レンズ基材の表面の形状に関する因子を除去するために、多項式の近似曲線を用いたが、JISに規定されているカットオフ値を用いて該因子を除去してもよい。
上記の実施形態では、多項式の次数として6を設定しているが、6以外でもよい。評価長さにおいて、山と谷とが3つ以上現れるように次数を設定することが好ましい。
(切削面)
上記の実施形態では、眼球側の光学面(凹面)を切削加工して切削面を得て、物体側の光学面(凸面)は切削加工しない場合について述べた。しかしながら、物体側の光学面のみを切削加工してもよいし、両面を切削加工して、切削面を設けてもよい。
(螺旋状加工)
なお、上記の実施形態においては、レンズ基材2を螺旋状に加工したが、それ以外の形状に加工してもよい。例えば、レンズ基材2を天地方向や水平方向に向かって切削してもよい。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例1)
レンズ基材2としては、平面状のものを用い、製品名EYAS(HOYA社製、屈折率1.60)を用いた。このレンズ基材2の主表面に対し、SDを、100μm,50μm,25μm,8μm,5μm,1μmの各条件でCG加工して切削面を有するレンズ基材を得た。また、レンズ基材2の回転数は3500rpmとし、切り込み0.2mmとした。
得られた眼鏡レンズAについて、超高圧水銀ランプの透過光による投影検査および表面性状の測定を行った。
投影検査は、日本工業規格の屈折補正用単焦点眼鏡レンズ(JIS−T7313)に規定されている視覚的な検査およびシュリーレン法を基にして行った。なお、JIS−T7313に規定されている視覚的な検査方法は、光源と観察者の間に検査対象のレンズを配置してレンズ上の表面欠陥の有無を目視により検査する方法である(JIS−T7313の附属書A「材料および表面の品質評価方法」参照)。結果を表1に示す。
表面性状の測定は、テーラーホブソン(Taylor Hobson)社製のフォームタリサーフ装置を用いて行った。測定長さは75mmとし、75mm中、60mmを5mm間隔で解析した。すなわち、評価長さは5mmであり、12回の評価を行った。得られた測定断面曲線から、断面形状に起因する因子を除去して、断面曲線を得た。
断面形状に起因する因子を除去する際には、測定断面曲線をxの関数とみなし、カーブフィッティングを行って、xの関数の近似曲線を、6次の多項式(ax+bx+cx+dx+ex+fx+g:a〜gは任意の係数)を用いて求めた。求めた近似曲線を、測定断面曲線から引くことで、断面曲線を得た。得られた断面曲線に対し、周波数解析により波長λが0.25mm以下の成分を除去して、表面粗さに起因する因子を除去し、うねり曲線を算出した。
得られたうねり曲線から、WtおよびSを算出し、WtおよびWt/Sを求めた。また、断面曲線から、粗さ曲線を算出し、この粗さ曲線から、Rtを算出した。
上記の測定を複数回行って、それぞれWt、Wt/SおよびRtを算出し、その相加平均をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
表1より、SDが100、50、8、5および1μmの場合には、切削痕が視認された。一方、SDが25μmの場合には、切削痕が視認されなかった。切削痕が視認されなかったSDが25μmの場合には、Wt/S、WtおよびRtの各値が最も小さくなっていることが確認できる。したがって、切削痕が視認されるか否かは、Wt、Wt/SおよびRtを用いることで明確に評価することができる。
以下、その他の好ましい形態を付記する。
上記の実施形態では、レンズ基材の良否を評価するパラメータとして、Wt/S、WtおよびRtを用いている。そして、これらのパラメータが特定の範囲内である場合に、眼鏡レンズが良品であると評価している。
しかしながら、切削痕は、その上に形成された被膜を介して観察されるため、被膜の材質や形成条件等が異なると、その見え方も変化する。そのため、上記のパラメータの範囲内であっても、切削痕が観察される場合がある。あるいは、上記のパラメータの範囲外であっても、切削痕が観察されない場合がある。
したがって、本発明は、上記のパラメータの範囲(閾値)を決定する工程を有していてもよい。この工程は、生産効率を向上させるために、眼鏡レンズの生産を行う前の予備工程として行うことが好ましい。この予備工程では、試験的に切削加工されたレンズ基材に、形成する被膜の材質や形成条件に基づいて被膜を形成し、被膜形成後のレンズについて、切削痕が視認されるか否かの閾値を決定する。
このようにすることで、レンズ基材上に形成される被膜の材質や形成条件に応じて、上記のパラメータの閾値を最適化することができ、多品種小生産の眼鏡レンズであっても、レンズ基材の研磨工程が与える工程上の負荷を低減できる。その結果、トータルでのコストや生産時間の削減を実現し、しかも、眼鏡レンズの歩留まりをも向上させることができる。
[付記1]
前記振幅に関するパラメータが、前記うねり曲線の算術平均うねりを示すWa[μm]であり、前記波長に関するパラメータが、前記うねり曲線の波長の平均を示すS[μm]であることを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
[付記2]
前記評価工程において、前記Waと前記Sとの比を示すWa/Sが下記の関係を満足するときに、前記眼鏡レンズが良品であると評価することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
Wa/S≦4.0×10−6
[付記2]
前記第1算出工程において、前記表面性状の測定結果から、前記レンズ基材の切削面の断面形状に起因する因子および前記レンズ基材の表面粗さに起因する因子を除去することで、前記うねり曲線を算出することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
[付記3]
前記表面性状測定工程において、前記切削面の表面性状として、前記切削面の測定断面曲線を測定し、
前記第1算出工程において、前記測定断面曲線に基づき、前記切削面のうねり曲線を算出することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
[付記4]
前記評価工程において不良品であると評価されたレンズ基材の切削面を研磨する加工調整工程をさらに有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
[付記5]
前記振幅に関するパラメータが、前記うねり曲線の最大断面高さを示すWt[μm]および/または前記うねり曲線の算術平均うねりを示すWa[μm]であることを特徴とする眼鏡レンズの評価方法。
[付記6]
前記第1算出工程において、前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面の粗さ曲線を算出して、前記粗さ曲線の最大断面高さを示すRa[μm]を算出した場合に、
前記評価工程において、前記Wt、前記Wtと前記Sとの比を示すWt/Sおよび前記Rtが下記の関係を満足するときに、前記レンズ基材が良品であると評価することを特徴とする眼鏡レンズの評価方法。
Wt≦0.0025μm
Rt≦0.0020μm
1…眼鏡レンズ
2…レンズ基材
2a…(眼球側の)光学面
2b…(物体側の)光学面
3…被膜

Claims (6)

  1. 眼鏡レンズの光学面に対応する表面を有するレンズ基材を準備する準備工程と、
    前記レンズ基材の表面のうち、少なくとも一方の面を切削加工して、切削面を得る切削工程と、
    前記切削面の表面性状を測定する表面性状測定工程と、
    前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面のうねり曲線を算出する第1算出工程と、
    算出された前記うねり曲線から、前記うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを算出する第2算出工程と、
    前記振幅および前記波長に関するパラメータを用いて、前記レンズ基材の良否を評価する評価工程と、を有することを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記評価工程における評価結果をフィードバックして、前記切削工程における切削加工条件を決定するフィードバック工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 前記振幅に関するパラメータが、前記うねり曲線の最大断面高さを示すWt[μm] であり、前記波長に関するパラメータが、前記うねり曲線の波長の平均を示すS[μm]であることを特徴とする請求項1または2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 前記評価工程において、前記Wtと前記Sとの比を示すWt/Sが下記の関係を満足するときに、前記眼鏡レンズが良品であると評価することを特徴とする請求項3に記載の眼鏡レンズの製造方法。
    Wt/S≦4.0×10−5
  5. 前記第1算出工程において、前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面の粗さ曲線を算出して、前記粗さ曲線の最大断面高さを示すRt[μm]を算出した場合に、
    前記評価工程において、前記Wt、および前記Rtが下記の関係を満足するときに、前記レンズ基材が良品であると評価することを特徴とする請求項4に記載の眼鏡レンズの製造方法。
    Wt≦0.025μm
    Rt≦0.020μm
  6. 眼鏡レンズの光学面に対応する表面を有し該表面の少なくとも一方が切削加工された切削面であるレンズ基材を準備する準備工程と、
    前記レンズ基材の前記切削面の表面性状を測定する表面性状測定工程と、
    前記表面性状の測定結果に基づき、前記切削面のうねり曲線を算出する第1算出工程と、
    算出された前記うねり曲線から、前記うねり曲線の振幅および波長に関するパラメータを算出する第2算出工程と、
    前記振幅および前記波長に関するパラメータを評価して、前記レンズ基材の良否を評価する評価工程と、を有することを特徴とする眼鏡レンズの評価方法。
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