JP2014045680A - 受粉装置 - Google Patents

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均 大原
Takeshi Ito
豪 伊藤
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Abstract

【課題】植物を傷つけずに効率よく受粉させることができる受粉装置を提供する。
【解決手段】スピーカ11は、植物Aの葯の固有周波数又は葯の固有周波数に近い周波数f1の波形と周波数f1よりも低い周波数f2の波形とを合成した波形の振動を空気に与える。即ち、スピーカ11は、前述の振動を非接触で植物Pに与える。この振動は、周波数f1の波形の振動に比べて減衰し難く、しかも、周波数f2の波形の振動に比べて植物Pの葯を大きく揺らし易い。葯が大きく揺れれば、葯から効率よく花粉が放出される。この結果、植物を効率よく受粉させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、植物を揺らすことによって受粉させる受粉装置に関する。
イチゴ又はトマト等を栽培する場合、特に農家では、ハチを利用して受粉させることが多い。しかしながら、低温時、又は薬剤散布時等には、ハチを利用することができない。また、衛生上の問題、又は周辺の生態系への配慮等により、ハチを利用することができない場合がある。
かといって、栽培者が筆又は綿棒等を用いて個々の花に受粉をさせていく作業、或いは、個々の花に植物ホルモンを噴霧する作業等は、栽培者に多大な負担を強いる。その上、未熟な栽培者は、植物を傷つけたり、確実に受粉させることができなかったりする虞がある。
従来、植物に振動を伝える装置を用いて自動的に受粉させる手法が提案されている(特許文献1〜5)。
特許文献1〜3には、ピアノ線、ワイヤ、又は棒材等を用いてなる加振部材を備える受粉装置が記載されている。特許文献1〜3に記載の受粉装置の場合、植物に取り付けられた加振部材を振動させることによって、植物を全体的に揺すり、延いては複数の花を一度に揺らす。
特許文献4,5には、スピーカを用いてなる加振部を備える受粉装置が記載されている。特許文献4,5に記載の受粉装置は、加振部の振動板が植物の周囲の空気を振動させることによって、非接触で、植物に咲いている花を揺らす。
ところで、イチゴ及びトマト等の花粉は、葯という器官に収容されている。植物が大きく揺れるほど、花粉は葯から効率よく放出される。
特開2002−112653号公報 特開2011−244750号公報 特開2011−244771号公報 特開2011−147377号公報 特開2012−085586号公報
特許文献1〜3に記載の受粉装置は、植物の一株一株に加振部材を取り付ける作業を必要とするため、受粉作業が煩雑である。しかも、植物と加振部材とが接触するため、加振部材を取り付けるときに、又は、振動する加振部材によって、植物が損傷する虞がある。従って、特許文献4,5に記載の受粉装置のように、空気を介して非接触で植物に咲いている花を揺らす方が望ましい。
ところが、特許文献4,5に記載の受粉装置は、植物を直接的に揺するものではないため、植物の周囲の空気を漫然と振動させたのでは植物を大きく揺らすことが困難である。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、加振部が所定の周波数の振動を空気に与える構成とすることにより、植物を傷つけずに効率よく受粉させることができる受粉装置を提供することにある。
第1発明に係る受粉装置は、空気を媒介として植物を揺らすことによって受粉させるための受粉装置において、所定の周波数の振動を前記空気に与える加振部を備えることを特徴とする。
第2発明に係る受粉装置は、前記所定の周波数は、前記植物の葯の固有周波数を含むことを特徴とする。
第3発明に係る受粉装置は、前記加振部は、前記所定の周波数の波形と、該周波数よりも低い周波数の波形とが合成された波形の振動を空気に与えるようにしてあることを特徴とする。
第4発明に係る受粉装置は、前記加振部は、回転及び/又は移動可能にしてあることを特徴とする。
第1発明にあっては、加振部は、所定の周波数の振動を空気に与える。振動を与えられた空気は植物を揺らす。即ち、加振部は、空気を媒介として非接触で植物を揺らす。このとき、植物本体と共に葯も揺れるため、葯からの花粉の放出が促される。この結果、植物は受粉する。
所定の周波数としては、理論的又は実験的に得られた好適なものが用いられる。この場合、特に葯が大きく揺らされるため、葯から効率よく花粉が放出される。
第2発明にあっては、加振部は、所定の周波数として、葯の固有周波数を含む所定の周波数の振動を空気に与える。振動を与えられた空気は植物を揺らす。この結果、植物は受粉する。
葯の固有周波数の振動を与えられた空気と葯とは共振する。故に、葯の固有周波数の振動を与えられた空気は、固有周波数とは異なる周波数の振動を与えられた空気よりも、葯を大きく揺らす。葯が大きく揺れれば、葯から効率よく花粉が放出される。この結果、植物を効率よく受粉させることができる。
第3発明にあっては、加振部は、所定の周波数の波形と、所定の周波数よりも低い周波数の波形とが合成された波形の振動を空気に与える。この場合、葯を確実に揺らすことができる。何故ならば、所定の周波数の振動に比べれば、所定の周波数の波形と、所定の周波数よりも低い周波数の波形とが合成された波形の振動は減衰し難いからである。
第4発明にあっては、加振部は、回転及び/又は移動可能である。
加振部が回転及び/又は移動すれば、振動の伝播方向又は到達地点等が変化する。振動の伝播方向及び到達地点等が一定である場合よりも、可変である場合の方が、複数の葯を同時的又は連続的に、且つ効率よく揺らすことができる。
本発明の受粉装置による場合、好適な周波数の振動を与えられた空気で植物を揺らすため、葯を大きく揺らすことができる。従って、植物を効率よく受粉させることができる。
本発明の実施の形態に係る受粉装置の要部構成を模式的に示す説明図である。 周波数f1,f2夫々の波形を示すグラフである。 周波数f1,f2夫々の波形が合成された波形を示すグラフである。 実験装置の要部構成を示す模式図である。 振幅及び周波数と花粉の飛散の有無との関係を示すテーブルである。
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る受粉装置1の要部構成を模式的に示す説明図である。以下では、図1の上下左右及び紙面垂直方向を受粉装置1の上下左右及び前後方向という。
本実施の形態における受粉装置1は、植物P,P,…を栽培する植物工場の構内に設置されている。植物P,P,…は、1株又は複数株ずつ栽培容器Bに植栽されている。
受粉装置1は、スピーカ(加振部)11、可動機構12、及び制御装置13を備えている。
可動機構12は、走行体121、レール122,122、走行モータ123、回転モータ124、及び回転軸125を備えている。
レール122,122は、植物工場に設置されている。図1には、複数個の栽培容器B,B,…(1個のみ図示)が前後方向に並置されており、レール122,122が、栽培容器B,B,…の並置方向に沿って、栽培容器B,B,…の左方に敷設されている場合が示されている。
走行体121は、図示しないチェーンに取り付けられている。このチェーンを走行モータ123が駆動することによって、走行体121は、レール122,122に案内されつつチェーンと共に走行する。走行モータ123の作動/作動停止に伴い、走行体121は走行/走行停止する。
走行体121には、回転モータ124、回転軸125、スピーカ11、及び図示しない位置検出部が搭載されている。
位置検出部は、栽培容器Bの有無又は位置を検出し、検出結果を後述する制御部130に与える。
回転軸125は、縦姿勢で、走行体121に回動可能に支持されている。回転軸125の一端部には、スピーカ11が、回転軸125と共に回動可能に固定されている。回転軸125の他端部には、回転モータ124の出力軸が連結されている。回転モータ124は正/逆に回転可能である。回転モータ124の作動/作動停止に伴い、回転軸125を回転中心としてスピーカ11が回転/回転停止する。
スピーカ11は、コーン状の振動板111と、電磁式のアクチュエータ112と、これらを収容する直方体状の筐体113とを備える。
筐体113の底壁には、回転軸125が固定されている。筐体113の右壁には、複数個の貫通孔114,114,…が形成されている。
振動板111は、横姿勢に配されている。つまり、振動板111のコーンの軸方向は、回転軸125の径方向に等しい。振動板111のコーンの底部側は、筐体113の右壁の、貫通孔114,114,…が形成されている部分に対向配置されている。
アクチュエータ112は、振動板111を振動させる。振動板111が振動すると、筐体113の内部における振動板111近傍の空気が振動する。このような空気の振動は、筐体113の貫通孔114,114,…を通して、筐体113の外部へ伝わる。
制御装置13は、制御部130、アクチュエータ駆動部131、回転モータ駆動部132、走行モータ駆動部133、表示部134、操作部135、及び記憶部136を備えている。
制御部130は、装置各部の動作を制御し、各種処理を実行する。
表示部134は、例えば液晶ディスプレイを用いてなる。表示部134には、受粉装置1の作動状況、又は栽培者に対する操作指示等が表示される。
操作部135は、キーボード又はマウス等を用いてなる。操作部135は、栽培者の操作を受け付ける。
栽培者は、表示部134を視認しつつ操作部135を操作する。栽培者による操作部135の操作内容は、制御部130に与えられる。
記憶部136は、例えば大容量記憶装置を用いてなる。記憶部136には、後述する周波数f1,f2及び振幅aが記憶してある。周波数f1,f2及び振幅aは、例えば栽培者が操作部135を操作することによって制御部130に予め与えたものである。制御部130は、与えられた周波数f1,f2及び振幅aを記憶部136に記憶させる。
周波数f1は、植物Pの葯の固有周波数、又は、この固有周波数を含む所定範囲内から栽培者によって選定された周波数である。故に、周波数f1は、植物Pの種類又は生育状態等に応じて、異なるものが用いられる。周波数f1は、例えば実験によって予め求められる。なお、周波数f1は、所定範囲でスイープされてもよい。
葯の固有周波数の振動を与えられた空気と葯とは共振する。故に、葯の固有周波数の振動、又は固有周波数に近い周波数の振動を与えられた空気は、固有周波数から遠い周波数の振動を与えられた空気よりも、葯を大きく揺らす。
周波数f2は、周波数f1よりも低い。周波数f2は、植物Pの種類又は生育状態等とは無関係でもよいが、植物Pの種類又は生育状態等に関連する周波数(例えば、植物Pの茎の固有周波数)でもよい。なお、周波数f2は、所定の範囲でスイープされてもよい。
振幅aは、例えば実験によって予め求められる。一般に、振幅aが大きいと、植物Pは大きく揺れ易いが、揺れによって損傷し易くなる。
制御部130は、記憶部136に記憶してある周波数f1,f2及び振幅aに基づく振動制御信号をアクチュエータ駆動部131へ出力する。
アクチュエータ駆動部131は、制御部130から入力された振動制御信号に応じて、アクチュエータ112を駆動する。この結果、周波数f1及び振幅aの波形と周波数f2及び振幅aの波形とが合成された波形の振動(以下、合成振動という)が振動板111に生じる。この結果、スピーカ11は合成振動を空気に与える。
また、制御部130は、前述した位置検出部の検出結果に基づいて、走行体121を所要の栽培容器Bに相対する位置まで走行させるための走行制御信号を走行モータ駆動部133へ出力する。走行モータ駆動部133は、制御部130から入力された走行制御信号に応じて、走行モータ123を駆動する。この結果、前述のチェーンと共に走行体121が走行し、そして、所要の栽培容器Bに相対する位置で停止する。
更にまた、制御部130は、スピーカ11に首振りさせるための回転制御信号を回転モータ駆動部132へ出力する。回転モータ駆動部132は、制御部130から入力された回転制御信号に応じて、回転モータ124を駆動する。この結果、回転モータ124、延いては回転軸125が正逆に反復回転し、スピーカ11が首振りする。
以上のような受粉装置1を用いれば、スピーカ11は、栽培容器Bに相対する位置へ走行し、この位置で走行停止する。そして、スピーカ11は、栽培容器Bに相対する位置で、首振りする。ここで、スピーカ11の首振りの中心位置は、栽培容器Bに植栽されている植物Pと、スピーカ11の振動板111とが、筐体113の貫通孔114,114,…を介して相対する位置である。
植物Pの、スピーカ11の右壁に相対する部位には合成振動が伝わり易い。故に、スピーカ11が首振りすれば、スピーカ11が空気に与えた合成振動が、植物P全体に伝わり易い。
仮に、スピーカ11が首振りしない場合、植物Pの、スピーカ11の右壁に相対する部位以外には、合成振動が伝わり難い虞がある。
図2は、周波数f1,f2夫々の波形を示すグラフである。図2の横軸は時間[秒]であり、0秒から0.05秒までを示している。
図3は、周波数f1,f2夫々の波形が合成された波形を示すグラフである。図3の横軸は時間[秒]であり、0秒から0.1 秒までを示している。
図2及び図3共に、縦軸は振幅[mm]である。図2及び図3では、周波数f1,f2として、500Hz 及び30Hzを例示し、振幅aとして1mmを例示している。図2には、周波数f1の波形は実線で示し、周波数f2の波形は破線で示してある。
周波数f1及び振幅aの波形の振動を与えられた空気と、植物Pの葯とは共振し易い。共振によって、植物Pの葯は大きく揺れる。しかしながら、周波数f1及び振幅aの波形の振動は、周波数f2及び振幅aの波形の振動よりも減衰し易い。とはいえ、周波数f2及び振幅aの波形の振動を与えられた空気と植物Pの葯とは共振し難い。
一方、周波数f1及び振幅aの波形と周波数f2及び振幅aの波形とが合成された波形の振動、即ち合成振動は、周波数f1及び振幅aの波形の振動よりも減衰し難い上に、周波数f2及び振幅aの波形の振動よりも植物Pの葯を大きく揺らすことができる。特に、周波数f2及び振幅aの波形の振動を与えられた空気と植物Pの茎とが共振し易い場合には、合成振動は、植物Pの葯を更に大きく揺らすことができる。
以上のように、受粉装置1は、空気を媒介として非接触で植物Pの葯を大きく揺らすことができる。葯が大きく揺れれば、葯から効率よく花粉が放出される。この結果、植物Pを効率よく受粉させることができる。
スピーカ11による合成振動の出力は、例えば所定時間、継続して行なわれる。一の栽培容器Bに植栽された植物Pに対する合成振動の出力が終了すると、再び走行体121が走行する。そして、他の栽培容器Bに植栽された植物Pに対する合成振動の出力が行なわれる。
なお、スピーカ11は、横移動に限らず、縦移動又は回転移動等を行なう構成でもよい。
また、スピーカ11の移動方向は、栽培容器B,B,…の並置方向に限定されるものではない。例えば、スピーカ11の移動方向は、栽培容器B,B,…が収容される栽培棚の高さ方向でもよい。
更に、栽培容器B,B,…が円周上に並置され、スピーカ11が360 °回転する構成でもよい。
次に、周波数f1及び振幅aを決定するための実験について説明する。
図4は、実験装置2の要部構成を示す模式図である。
実験装置2は、加振器21、増幅器22、ファンクションジェネレータ23、固定台24、固定具25、及び花粉受け26を備えている。
ファンクションジェネレータ23は、振動波形生成装置である。ファンクションジェネレータ23に設けられている図示しない操作部を操作すると、任意の周波数及び振幅の波形が生成される。
ファンクションジェネレータ23が生成した波形は、増幅器22によって電気的に増幅されてから加振器21に入力される。
加振器21は、振動発生装置である。加振器21には、板状の固定台24が横姿勢で取り付けられている。加振器21は、ファンクションジェネレータ23から増幅器22を介して入力された波形の振動を固定台24の下面に与える。
固定台24の上面には、トマトの葯Aが固定具25を用いて固定される。このとき、葯Aは、葯Aの一部が固定台24から横方向へ突出するように配される。
葯A及び固定台24の下方には、シート状の花粉受け26が横姿勢で配される。花粉受け26の上面は例えば黒色である。このため、実験者は、花粉受け26の上面に飛散した花粉を容易に目視することができる。
図5は、振幅及び周波数と花粉の飛散の有無との関係を示すテーブルである。
本実験では、ファンクションジェネレータ23に、33Hzから550Hz までの6種類の周波数と0.006mm から4mmまでの22種類の振幅との組み合わせで波形を生成させた。
図5において、丸印「○」は、葯Aから花粉受け26へ十分な量の花粉が放出され、且つ、葯Aに無用な損傷が生じなかったことを示している。
また、三角印「△」は、葯Aから花粉受け26へ十分な量の花粉が放出されたが、葯Aに無用な損傷が生じたことを示している。
更に、無印は、葯Aから花粉受け26へ十分な量の花粉が放出されなかったことを示している。
図5から、トマトの葯Aに関する合成波形の好適な周波数の範囲は、丸印の範囲である440Hz 以上550Hz 以下であることがわかる。
一方、トマトの葯Aに関する合成波形の好適な振幅の範囲は、図5の丸印の範囲である0.1mm 以上0.02mm以下の下限値及び上限値夫々を1/2 にした範囲(即ち、0.05mm以上0.01mm以下)であることがわかる。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、受粉装置1に、実施の形態に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
1 受粉装置
11 スピーカ(加振部)
P 植物

Claims (4)

  1. 空気を媒介として植物を揺らすことによって受粉させるための受粉装置において、
    所定の周波数の振動を前記空気に与える加振部を備えることを特徴とする受粉装置。
  2. 前記所定の周波数は、前記植物の葯の固有周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載の受粉装置。
  3. 前記加振部は、前記所定の周波数の波形と、該周波数よりも低い周波数の波形とが合成された波形の振動を空気に与えるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の受粉装置。
  4. 前記加振部は、回転及び/又は移動可能にしてあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の受粉装置。
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